リチウムイオン・バッテリ管理システムの精度を最大

リチウムイオン・バッテリ管理システムの精度を最大にする簡単な較正回路
デザインノート471
Jon Munson
はじめに
リチウムイオン・バッテリ・システムでは、
各セルの充電状態を
整合させてバッテリパックの性能と寿命を最大化することが
重要です。セルの寿命は深放電と過充電の両方を防ぐと改
善されるので、
標準的なシステムでは20%~80%の充電状態
(SOC)の動作を目標にします。充電の不均衡の検出と補正
は、
全てのセルが望みのSOCウィンドウから外れることがない
ようにして、
バッテリパック全体の容量を台無しにするおそれ
のある一部のセルの早過ぎる経時劣化を防ぎます。
リチウム
イオン・セルの放電特性は並外れてフラットなので、
低電圧の
ケミストリでは特にそのSOCを決めるのに高精度の測定が必
要です(図1の例を参照)。
VOLTAGE (V)
1
2
LTC6802IG-2
35
GPIO1
VREG
VTEMP1
V–
1M
3
4
31
LT1461AIS8-3.3
7
VIN
SHDN
GND
8
VOUT
6
5
28
26
1µF
分りやすくするため
他のピンは示されていない
2.2µF
DN471 F02
図2.LTC6802リチウムイオン・バッテリ・モニタの
ための外部較正源としてのLT1461
4.0
3.5
誤差源の評価
3.0
2.5
基本的に、
全体の精度の仕様を構成するいくつかの主要特性
があります。
2.0
• ADCの量子化誤差
1.5
• ADCの初期精度(つまり較正基準)
1.0
25°C, 2.3A
0°C, 2.3A
–20°C, 2.3A
0.5
0
0
20
40
60
CAPACITY (%)
80
100
DN471 F01
図1.3.3Vリチウムイオン・セルの放電特性
広く知られているLTC ®6802バッテリ・スタック・モニタは高
精度のA/D変換を行いますが、
アプリケーションによっては専
用の電圧リファレンスICでなければ得られない精度が要求さ
れます。LT®1461は高性能較正源として特に適しており、
小
型SO-8パッケージで供給されます。この構成を図2に示しま
す。通常は温度測定用のADCチャネルを使って較正リファレ
ンスを測定します。プログラム可能なI/Oビットがリファレンス
への電力を制御します。
10/09/471
Si2351DS
• チャネル間のバラツキ
• 温度による変化
• 主に半田工程のヒステリシス効果
• 動作時間による変化(長期ドリフト)
LTC6802IG-2のデータシートの最大規定誤差には最初の
4つのアイテムが含まれており、
±0.22%です。つまり、
放電曲
線の最も要求の厳しい領域である3.3Vを測定するとき約±
7mVです。−40℃~85℃の動作温度範囲での最大変化と
して±3.3mV(±0.1%)の許容範囲が仕様で与えられていま
す。ADCの差動非直線性(DNL)は約±0.3 LSBなので、
量
子化誤差の寄与分は約±0.8 LSB、
つまり±1.2mVです。
、
LT、
LTC、
LTM、
Linear TechnologyおよびLinearのロゴはリニアテクノ
ロジー社の登録商標です。
他の全ての商標はそれぞれの所有者に所有権があります。
チャネル間の標準的バラツキは微小であり
(±1mV未満)、
トリ
ミングの分解能とICの製造プロセスの精度に約±1.5mVが
残されます。熱的ヒステリシスは100ppmとして規定されてお
り、
追加の約±0.1%の誤差がプリント回路基板の半田工程の
変化によって生じる可能性があります。
予測される長期ドリフトは60ppm/√khr未満です。実際の車
載バッテリ
・システムの動作寿命サイクルが5khr(約15年また
は150,000マイル)を目標にしているとすれば、
約±0.5mVの
不確定性が生じる可能性があります。これは全体の誤差に対
して比較的小さな寄与分です。
の測定値を正規化します。
リファレンスの許容誤差とドリフトお
よびチャネル間のバラツキは補正されないままですが、
正味不
確定性はほとんど2倍改善され±6.2mVになります。
いくらか複雑な手法(方法2)では、
高精度テストフィクスチャ
計装装置を使って測定した真の基準電圧を計算に入れた単
一の補正係数を保存しておきます。これはLT1461の初期誤
差を除去し、
全体の精度を±4.1mVに改善します(全体で3倍
に近い改善です)。
小さいとはいえ、
まだチャネル間のバラツキがありますが、
さら
にテストフィクスチャによる初期測定を使う方法による較正で
LT1461AIS8-3.3電圧リファレンスICの出力許容誤差は 除去することができます(方法3)。これは方法2に似ています
(リファレンスを含む)全チャネルの高精度測定を行い、
そ
±0.04%であり、
全温度範囲での変動は±1.2mVより小さ が、
誤差
く、
その代表的なワーストケースの安定性は3ppm/℃です。 れぞれの個別補正係数を保存しておきます。これにより、
LT1461は60ppm√kHr未満の長期ドリフトと75ppmの熱ヒ がさらに±3.1mVに減少します(全体でほとんど4倍の改善
ステリシスを示します。半田リフローによるシフトは250ppm です)。
(±0.8mV)であると予測されます。
まとめ
LTC6802のADCの誤差の大きな部分はICの出荷後に累積す LT1461のような精密電圧リファレンスはLTC6802をベー
るので、
外部較正手法により最終製品の精度が改善されます。 スにしたバッテリ管理システムの精度をワーストケースで約±
較正手法の検討
システムの精度を改善するいくつかのオプションがあります
が、
複雑になるという代償を払います。図2の簡単な回路で
は、
外部較正基準の利点を利用するいくつかのオプションが
あります。いくつかの方法の精度予測を表1に示し、
以下説明
します。
3mVまで改善することができます。予備の汎用ADCチャネル
を利用できるおかげで、
高度に集積化されたLTC6802のリチ
ウムイオン・モニタ・ソリューションへのリファレンスの追加は簡
単です。LT1461電圧リファレンスは動作電流が低いので、
こ
のアプリケーションや他のバッテリ駆動アプリケーションに最
適です。
参考文献
最も簡単な方式(方法1)ではローカルメモリがなく、
製造時に 「ハイブリッド電気自動車のリチウムイオン・バッテリの寿命
測定を行いません。この方法では、
公称3.300Vの較正電圧 を延ばすバッテリ・スタック・モニタ」、
Linear Technology
を定期的に測定し、
計算された同じ補正係数で全てのADC Magazine, Volume 19, Number 1, March 2009, ページ1。
表1.3.3V測定のために説明されている較正方法の精度
外部較正方法
製造時 半田工程に チャネル
(示されている許容誤差の単位は全て mV) 量子化 トリミング よるシフト の整合
熱による
変化
熱
長期
ヒステリシス ドリフト
合計
誤差
外部較正なしのLTC6802
1.2
1.5
3.3
1.0
3.3
0.3
0.5
11.1
1: LT1461を使った較正、
保存された情報なし
1.2
1.3
0.8
1.0
1.2
0.2
0.5
6.2
2: LT1461を使った較正、
基準電圧の較正値を保存
1.2
-
-
1.0
1.2
0.2
0.5
4.1
3: LT1461を使った較正、
基準電圧および各入力の較正値を保存
1.2
-
-
-
1.2
0.2
0.5
3.1
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