Vol.25 No.1 高耐圧FRDモジュール PD100F12型 PD300F12型 小宮 明* 福田 永吾* 1.はじめに 近年,IGBTを始めとするスイッチングデバイスは目 覚しい進展を続けています。このスイッチングデバイス と共に使用されるファースト・リカバリ・ダイオード (FRD)は,スイッチンクデバイスそのものの特性を最 大限に引き出す為に必要不可欠であり,同時に特性の改 善が常に求められています。 スイッチングデバイスを取り扱う上で相互の特性がい かにバランスの取れたものになるかが最大の課題といえ ます。当社でもこの要求に応えるべく高耐圧のFRDモ ジュールをシリーズ化したので,紹介します。 写真1 PD300F12型逆回復電流波形 2.特 長 従来のFRDは逆回復時間の短さを追求しており,波 IF:100A/div 形がハードリカバリになっているため,スイッチン時に VR:100V/div 発生するdv/dtは非常に大きくなっています。この dv/dtによってスパイク電圧が発生するためスナッバ回 路が必要になるばかりでなく,電源に振動を与え機器の 誤動作を引き起こす可能性があります。 gnd 本製品は,高耐圧型FRDでありながら,これらの逆 -di/dt=1,213A/μs IRrM=251A,trr=318ns 回復特性を改善し,電圧振動の極めて少ない特性を得ま した。 Inductive-Load, Halfe-Bridge VCC=600V,IF=300A TC=150℃ 200ns/div 3.リカバリ特性 gnd PD300F12型の逆回復時の電流波形を写真1に示しま す。オフ後の電流に振動は見られません。 写真2は,同型の逆回復時の電流・電圧波形です。電 圧波形にも殆ど振動は認められません。 9 表 紙 写真2 PD300F12型逆回復特性 Vol.25 No.1 4.定格・特性 5.外形寸法 PD100F12型およびPD300F12型の最大定格・電気的 特性を表1および表2に示します。 図1にPD100F12型,図2にPD300F12型の外形寸法 を示します。 最大定格 94.0 2--φ5.5 C2E1 E2 C1 定格値 単位 項 目 記号 条 件 100 平均出力電流 *1 Io(AV) 商用周波数180°通電 Tc=60℃ A *1 IF(RMS) 157 実効順電流 A 1000 サージ順電流 *1 IFSM 50Hz正弦半波,1サイクル,非くり返し A 5000 A2s 電流二乗時間積 *1 I2t 2∼10ms 動作接合温度範囲 Tjw −40∼+150 ℃ Tstg −40∼+125 ℃ 保存温度範囲 V Viso 端子―ベース間, AC1分間 2500 絶縁耐圧 2.8 2.6 N・m 内は推奨値 取付部 M5{ 28.6 26.5 {kgf・cm} } F 締付トルク 2.8 2.6 N・m M5{ 28.6 26.5 {kgf・cm} ネジ端子部 } 電気的特性 条 件 記号 特性値(最大) 単位 項 目 mA VRM=1200V 20 ピーク逆電流 *1 IRM Tj=150℃, V IFM=100A 2.60 ピーク順電圧 *1 VFM Tj=25℃, ns 250 IFM=10A, −di/dt=50A/μs *1 trr Tj=25℃, 逆回復時間 ℃/W 0.28 *1 Rth( j-c)接合部―ケース間 熱抵抗 ℃/W 0.1 Rth(c-f)ケース―フィン間,サーマルコンパウンド 接触熱抵抗 nH 30 内部リードインダクタンス*1 Ls 接合部―アノード及びカソード端子の和 質量―約210g *1:1アーム当りの値を示す。 23.0 16.0 7.0 23.0 16.0 7.0 17.0 (単位㎜) 16.0 6.0 銘 板 質量:220g(標準値) (C2E1) (E2) (C1) A2K1 K2 A1 図1 PD100F12型外形寸法 108.0 93.0 4--φ6.5 表1 PD100F12型定格・特性 35.0 V V 12.0 3--M5 12.0 くり返しピーク逆電圧 *1 VRRM 非くり返しピーク逆電圧 *1 VRSM PD100F12 1200 ― 80.0 単位 30.0 記号 23.0 項 目 耐圧クラス 14.0 最大定格 E2 C1 25.0 62.0 C2E1 V V 定格値 単位 項 目 記号 条 件 *1 IF(DC) 直流電流 通電 Tc=81℃ 300 直流順電圧 A *1 IF(RMS) 300 実効順電流 A 3000 サージ順電流 *1 IFSM 50Hz正弦半波,1サイクル,非くり返し A 45000 A2s 電流二乗時間積 *1 I2t 2∼10ms 動作接合温度範囲 Tjw −40∼+150 ℃ Tstg −40∼+125 ℃ 保存温度範囲 Viso 端子―ベース間, V 絶縁耐圧 AC1分間 2500 2.5∼ 3.0 N・m 取付部 M6{ 25.5∼30.6 {kgf・cm} } F 締付トルク 2.5∼ 3.0 N・m M6{ 25.5∼30.6 {kgf・cm} ネジ端子部 } 電気的特性 記号 条 件 特性値(最大) 単位 項 目 mA VRM=1200V 60 ピーク逆電流 *1 IRM Tj=150℃, V IFM=300A 2.60 ピーク順電圧 *1 VFM Tj=25℃, ns 250 IFM=10A, −di/dt=50A/μs 逆回復時間 *1 trr Tj=25℃, ℃/W 0.10 熱抵抗 *1 Rth( j-c)接合部―ケース間 ℃/W 0.06 Rth(c-f)ケース―フィン間,サーマルコンパウンド 接触熱抵抗 nH 30 内部リードインダクタンス*1 Ls 接合部―アノード及びカソード端子の和 質量―約450g *1:1構成素子当りの値を示す。 表2 PD300F12型定格・特性 3--M6 48.0 単位 25.0 (単位㎜) 18.0 7.0 18.0 7.0 18.0 銘 板 30.4 くり返しピーク逆電圧 *1 VRRM 非くり返しピーク逆電圧 *1 VRSM 耐圧クラス PD300F12 1200 ― 23.0 記号 7.0 項 目 質量:450g(標準値) (C2E1) (E2) (C1) A2K1 K2 A1 図2 PD300F12型外形寸法 6.PD100F12型の代表的な特性曲線 平均順電力損失特性を図3,平均順電流−ケース温度 定格を図4に示します。 10 表 紙 Vol.25 No.1 400 直流 方形波180゜ 正弦半波 方形波120゜ 350 平 300 均 順 電 力 損 失 (W) 方形波60゜ 250 平均順電力損失特性を図6,平均順電流−ケース温度 定格を図7に示します。 200 150 100 50 0 7.PD300F12型の代表的な特性曲線 0 40 80 120 160 平 均 順 電 流 (A) 図3 PD100F12型平均順電力損失特性 直流 160 120 方形波180゜ 平 正弦半波 均 方形波120゜ 順 80 電 方形波60゜ 流 (A)40 0 0 25 50 75 100 125 150 ケ ー ス 温 度 (℃) 図4 PD100F12型平均順電流−ケース温度定格 次に−di/dtを5A∼120A/ μsとした時の逆回復特性 を図5に示します。 100 700 直流 方形波180゜ 600 正弦半波 平 方形波120゜ 500 均 方形波60゜ 順 400 電 力 300 損 失 200 (W) 100 0 0 50 100 150 200 250 300 350 平 均 順 電 流(A) 図6 PD300F12型平均順電力損失特性 350 直 流 300 平 250 方形波180゜ 均 順 200 正弦半波 電 方形波120゜ 流 150 方形波60゜ (A) 100 50 0 0 25 50 75 100 125 150 ケ ー ス 温 度(℃) 50 Tj=150℃,IFM=100A 図7 PD300F12型平均順電流−ケース温度定格 20 IR 10 8.まとめ 5 Qr IR (A) Qr (μs) 以上,高耐圧型のFRDモジュールを紹介いたしまし 2 た。今後もパワーエレクトロニクスの高周波化,高機能 化する市場ニーズに対応するため,よりハイバワー化・ 1 ta tb (μs) 0.5 高機能化したモジュールを開発・販売してまいります。 ta tb ∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼ 0.2 *筆者紹介 小宮 明 Akira Komiya 0.1 −di/dt 0.05 IFM ta IR 1973年入社 現在,生産本部モジュール tb Qr 0.02 技術部勤務 福田永吾 Eigo Fukuda 1987年入社 現在,生産本部モジュール 技術部勤務 0.01 2 5 10 20 50 100 200 図5 PD100F12型逆回復特性(代表値) 11 表 紙