2012.8 エンタープライズ用SSD クラウドコンピューティングにおける ストレージ・ソルーションのキープロダクツ Page | 1 はじめに 企業(エンタープライズ)で運用されるデータセンタ ーやクラウドコンピューティングシステムにおいて、情 報量の急増にともない、ますます『大容量・高性能』な ストレージが要求されています。一方で、TCO(Total Cost of Ownership)削減のために、『省電力化および 省スペース』が強く望まれています。 大容量化を行うため、ストレージの数を増やし ていては省電力・省スペースは実現できません。 この、『大容量・高性能』と『省電力・省スペー ス』の相反する要求を同時に満たすストレージ・ ソリューションの実現が課題として顕在化されて きました。 市場要求 ストレージ機器への要求 ・日々扱われるデータ量の増大 ⇒大容量ストレージ ・クラウド対応のアクセス性能向上 ⇒高性能ストレージ ・TCO の削減 ⇒省電力・省スペース 図1 生み出される情報の増大とストレージ機器への要求 エンタープライズ用途へのソリッドステートドライブ(eSSD)導入 従来のコンピュータシステムでは、主記憶メモリ (DRAM)とエンタープライズハードディスクドライブ (eHDD)で構成されています。このシステムでは、 DRAM と eHDD のデータアクセス速度差が約5桁と大 きいことが問題になります。つまり、この中間に相当 するデータを高価な DRAM に格納すれば価格が上 がり、eHDD に格納すれば性能が低下するといったよ うに、ストレージ間の速度差がシステム最適化のボト ルネックとなっています。 これを解消するための方策として、エンタープライズ 用途のソリッドステートドライブ(eSSD)の活用が本 格化してきています。eSSD とは NAND 型フラッ シュメモリを記憶媒体としているストレージプロ ダクツです。 図 2 は、性能指標の例として、データアクセス 性能(データ呼び出し時間)を比較したものです。 eSSD は DRAM と eHDD の間の性能を有してい ることがわかります。 eSSD の導入により、DRAM と eHDD の性能差 によるボトルネックが解消され、システムの最適 化が可能になります。 Page | 2 5桁のギャップ DRAM DRAM 3桁のギャップ nsec eSSD eSSD μsec 高速回転HDD eHDD msec 大容量HDD 大容量HDD ( NL HDD*1) n se1E-07 c μse c 1E-09 1E-08 1E-06 1E-05 1E-04 0.001 msec 0.01 0.1 eSSD 採用により、5桁の性能差を解消 *1 NL HDD:Near Line HDD 図 2 データアクセス性能 また、eHDD は大容量化に有利であることに対し、e SSDはアクセス性能や電力消費効率(ランダム読み 出し速度/消費電力)に優れています。 両者の、互いの長所を発揮させ共存させるこ とで、システムスペックの向上に繋がると考えら れます。 ◎:非常に優れる ○:優れる △ :若干劣る × :劣る eHDD を標準(○:優れる)としたときの相対評価による(東芝調べ) 性能 特長比較 ランダム アクセス 消費電力 シーケンシャル アクセス性能 アクセス あたり 装置価格 TCO削減効果 記憶容量 あたり アクセス性能 あたり 記憶容量 あたり 高速処理 大容量 ストレージ eSSD ◎ ○ ◎ ○ ◎ × ◎ △ eHDD ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 大容量HDD (NL HDD) × △ △ ◎ × ◎ × ◎ 図 3 特長比較 Page | 3 eSSD適用形態 eSSD は、サーバ用途では eHDD 置き換え、ストレ ージシステムでは eHDD との混合搭載の2形態で使 用されています。 いずれの場合もシステム性能のボトルネックとなっ サーバー; データ処理 アプリケーション処理 CP U ている eHDD のアクセス性能を解決するため の手段として有効であり、市場性は極めて高い と考えられます。 アプリケーション 高速ロード 多数クライアントへの高い処理能力 CP U eSSD Memory Cache Storage I/F ICH (I/O Controller Hub) OR eHDD SAN *2 (FC/iSCSI) ストレージ; サーバーへのデータ 読出し/書込み 大容量データ記憶 高速なデータ読み書き 高速なレスポンスが可能 Memory Cache ICH I/O Controller Hub) Storage I/F 高アクセス頻度 eSSD eSSD eSSD eHDD eHDD eHDD NL HDD NL HDD NL HDD 低アクセス頻度 保存データ 階層ストレージ システム *1) SAN: Storage Area Network 図 4 エンタープライズシステムにおける eSSD 採用形態 (イメージ図) 階層ストレージシステム ストレージシステムに適用する場合、全てのストレ ージを eHDD から eSSD にすればシステムのアクセ ス性能は格段に向上します。しかし、それでは高速性 が要求されないアクセス頻度が低いデータまでもが 高価な eSSD に格納されるため、システム全体の価 格は高いものになります。 一般的に、ストレージシステムでのデータへのアクセ ス頻度は均一ではなく、高アクセス頻度、中アクセス頻 度、低アクセス頻度のデータに分けられます。 このデータ特性を活かして、高アクセス頻度のデ ータを eSSD、中アクセス頻度を eHDD、低アクセス 頻度のデータを大容量HDD(NL HDD)に保管 することで、性能を向上させ、且つ、コストにもメ リットのある、効率的なシステムを構築すること ができます。 図 5 は、システム全体容量の 5%を eSSD、15% を高速HDD、80%を大容量 HDD の階層化システ ムの例です。 全体容量 5%の eSSD が全体アクセス頻度の 50%を占めており、また、全体容量の 80%は安 価な大容量 HDD で実現されています。 Page | 4 eSSD eHDD Data access locality 容 量 5 % 15 % アクセス頻 度 5 0% 0% eSSD eHDD NL HDD 80 % 20% 30 % 4 0% 60 % 20% 80 % NL HDD 階層システム 1 00 % IOPS Mix. operation 70% Read, 30% Write ・ 68k IOPS/units 図 5 データアクセス頻度と階層化ストレージシステムの例 eSSD 階層システムの効果、電力削減 図 6 に、従来型の eHDD で構成されたストレージ(e HDD100%)と、eSSD/HDD 混在の階層ストレージでの 性能改善の計算例を示します。 なお、想定は 200TBのストレージシステムで、階層 ストレージは上述の比率構成としています。 ① ② ③ ④ ①省電力、②省スペース、③アクセス性能、④ 電力消費効率(アクセス性能/消費電力)の改 善効果はそれぞれ次の通りです。 eSSD は全体容量の 5%に過ぎないが、システ ム性能と消費電力を大幅に改善できることがわ かります。 電力 ドライブ台数 アクセス性能 電力消費効率 (ランダム読み出し速度/消費電力) 40%削減 1/2 削減 17 倍向上 省電力 省スペース 高性能 26 倍向上 Page | 5 - eSSD採用の階層ストレージシステム 25 5% 10k RPM HDD 600GB 50 15% 2TB 80 80% 0 従来システム 従来システム 500 省電力 約 -40% 削減 300 NL HDD eH DD eSSD 334台 250 200 150 100 155台 50 0 省スペース、スロット数 ドライブ台数 1/2 削減 System total IOPS [ k IOPS ] 1000 350 従来シ ステ ム 従来システム 1,500W 400 階層システム eSSD 階層 2,340W Number of Slot (drives) [ units ] 1500 階層システム eSSD 階 層 Power consumption [ W ] 2000 N L H DD eH DD eSSD 台数 容量比率 334 100% 従来システム 階層システム 2500 容量 600GB 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 1,730k N L H DD eH DD eSSD 100k 高性能、アクセス性能 x17 倍向上 1 ,4 0 0 1 ,2 0 0 1 ,0 0 0 1,156 800 600 400 200 0 43 従来システム 従来システム 400GB eSSD 階層 階層システム eSSD 7.2k RPM NL HDD ストレージ構成 ドライブ eHDD 10k RPM HDD 台数 容量比率 Power efficiency [ IOPS/W ] NL HDD 容量 従来システ ム 従来システム eHDD ストレージ構成 ドライブ 階層システム e SSD 階層 eSSD - 従来型 エンタープライズHDD ストレージシステム 電力消費効率 x26 倍 図 6 eSSD 階層システムの効果(200TB ストレージ システム想定試算) 東芝製 eSSD の特徴 東芝製 eSSD は、次の技術を適用し、業界トップクラ スの信頼性と性能を確保しています。 (1)大容量・高性能: 32nm NAND 型フラッシュメモリ 技術を競合他社に先駆けて eSSD に適用し、最大 400GB の大容量を達成しました。また、装置当り消費 電力と高速性能とを両立させるため、NAND 型フラッシ ュメモリへの 16 並列読出し・書込み処理技術を採用し ました。平均消費電力 6.5W, ランダム読出し性能 90,000IOPS(1 秒間当りの入出力処理数), シーケンシ ャル読出し転送速度 510MB/s は、業界最高水準*3 を 達成しました。 (2)高寿命: 書込み寿命特性に優れた単一ビット記 憶(SLC)NAND 型フラッシュメモリの適用に加えて、ファ ームウェアによる高度な書込み平準化技術(ウェ アレベリング)により、24 時間連続稼動、製品ライ フ 5 年間の長寿命化を可能にしました。 (3)高信頼性: NAND 型フラッシュメモリおよび 装置内部の全てのデータ転送経路に対してエラ ー検出・訂正機能を備えると共に、NAND 型フラ ッシュメモリの偶発的故障時でもデータの復元が 可能な独自のデータ保護機能を導入し、代表的 なストレージプロダクツである HDD を凌駕する高 信頼性を実現しました。 *3: 2010 年 12 月東芝調べ Page | 6 コネクタ SAS (Serial Attached SCSI)コネクタ採用 6GbpsのDual Port採用により通信高速化 コントローラ NAND制御コントローラ 16並列処理、NANDの寿命制御/エラー訂正技術 により高信頼性のSSDを実現 NAND型フラッシュメモリ データを蓄積するNAND型フラッシュメモリ。 32nmのプロセスNAND採用により省電力化。 SLC(Single Level Cell)採用による高信頼性を実現 形状 2.5型のSFF(Small Form Factor)採用 eHDDとのコンパチ形状により、容易なシステム 置換を実現 図 7 東芝製エンタープライズ SSD の概要 まとめ eSSD の導入により、従来のストレージシステムで のボトルネックが解消されます。また、DRAM と eHDD の中間の性能を持つ eSSD を開発することでシステム 高性能化が可能となりました。高速 eSSD と 大容量 HDD を組合せた、階層ストレージでは、従来のストレ ージシステムと同容量で比較した場合、『省電力・省ス ペース』、『高性能』が実現できることを示しました。 また、東芝は階層化ストレージを構築するため のエンタープライズストレージのトータルラインア ップを提供しており、お客様の用途・規模に応じて、 大容量ストレージもご選択いただけます。 今後も東芝は、高性能・高信頼性を備えるエン タープライズ向けストレージの製品展開をいたし ます。 市場要求 ストレージ機器への要求 ・日々扱われるデータ量の増大 ⇒大容量ストレージ ・クラウド対応のアクセス性能向上 ⇒高性能ストレージ ・TCO の削減 ⇒省電力・省スペース ⇒階層化ストレージにより実現可能 Page | 7