技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 1 技術紹介 4 0.5mm ピッチ ZIF-FPC/FFC 用コネクタ(FA5シリーズ)の開発 Development of Zero Insertion Force Connector for 0.5mm Pitch FPC and FFC 工藤 高明 Takaaki Kudo コネクタ事業部 技術一部 廣瀬 くみ Kumi Hirose 斎藤 雄一 Yuichi Saito コネクタ事業部 技術一部 キーワード Keywords コネクタ事業部 技術一部 コネクタ、SMT、FPC、FFC、ZIF、鉛フリー connector, SMT, FPC, FFC, ZIF, lead-free ■ SUMMARY ■ 要旨 近年、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯機器 は小型・多機能化が進み、それとともに内部実装基 板上のスペース確保の面からコネクタの小型薄型化が 要求されるようになってきています。その中で自由度、 軽量化が図れることから FPC/FFC が多く採用され、 それに対応したコネクタが必要となっています。また、 コスト面からコネクタのアッセンブリ作業のし易さ、 携 帯機器であるということで持ち歩きの際の振動や衝撃 に対する強さも合わせて要求されています。 当社では、 これらのニーズにこたえるべく、 また、 FPC だけでなく FFC にも嵌合可能な高さ 1.45mm(落 し込みタイプでは基板からの高さ 1 mm)の 0.5mm ピ ッチ FPC/FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)を開発しま For downsizing and realizing of multi functions of hand-held appliances such as notebook PC and digital camera, needs for smaller and thinner connector is growing in order to provide space on printed circuit board inside the appliances. For this purpose, FPC (Flexible Print Circuit) and FFC (Flexible Flat Cable) are widely used due to the merit of flexibility and lightweight, and connectors suitable for FPC/FFC are naturally requested. Easiness of assembling work is also important in view of cost. In addition, for hand-held devices resistance to vibration and shock during being carried must be considered. For meeting such requirements and enabling connection with FFC as well as FPC, JAE has developed the 0.5mm pitch connector (FA5 series) with 1.45mm height (1mm from board in case of bottom type). した。 写真 1 FA5 の外観 Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 2 1 まえがき 近年、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯機器は小型・多機能化が進み、それとともに 内部実装基板上のスペース確保の面からコネクタの小型薄型化が要求されるようになってきてい ます。 また、コスト面からコネクタのアッセンブリ作業のし易さ、携帯機器であるということで持ち 歩きの際の振動や衝撃に強さが要求されています。さらに、コネクタの開発においては小型化 に伴う製造限界や接触信頼性も配慮して行う必要性があります。 それらの要求を盛り込んだ 0.5mm ピッチFPC/FFC用コネクタ(FA5シリーズ)の開発 について紹介します。 FPC:Flexible Printed Circuit FFC:Flexible Flat Cable 2 開発要求条件 本コネクタの主な開発要求条件は以下の通りです。 コスト面から、 (1)一般に市販されている FFC を嵌合可能な仕様であること。 (FPC / FFC 厚さ 0.3 ± 0.05 mm に対応) (2)FPC / FFC の挿入性・コネクタの作業性が良いこと。 使用される環境面から、 (3)小型であっても FPC / FPC の嵌合後の保持が強いこと。 (4)鉛フリー対応であること。 小型化に伴う品質の面から、 (5)組立のバラツキがあっても安定した接触信頼性が得られること。 Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 3 3 製品説明 3.1 製品仕様 FA 5 コネクタ概略図を図 1 に、仕様を表 1 に示します。 落し込みタイプ 1.45 1 標準タイプ 図 1 FA5 コネクタ概要 表 1 仕様 定格電流 AC,DC 各 0.8A/1 端子当り 定格電圧 AC,DC 50V 使用温度 − 40℃ ∼ + 85℃ 接触抵抗 40m Ω以下 絶縁抵抗 100M Ω以上 ピッチ 0.5 mmピッチ メッキ 適合FPC/FFC厚さ 接触部:Sn-Cu メッキ or Au メッキ 端子部:Sn-Cu メッキ 裏打有 t 0.3 ± 0.05 mm 6, 8, 10, 15, 16, 18, 極数 20, 22, 26, 30, 36, 40, 45, 50 Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 4 3.2 製品データ FA5 コネクタの製品データ(抜粋)を表 2、図 2 に表示します。 表 2 FPC 保持力(水平方向、 50 極) AVE. 従来品 FA5 コネクタ 19.9(N) 30.2(N) ※ 本データは JAE 評価用 FPC によるデータ。(FPC 厚t0.3 mm) FPC(FFC)の層構成によってこの値は異なります。 �������� ����� ���� ��� � ����� ��� �� 図 2 温度上昇データ 3.3 製品の特長 FA 5 コネクタの特長を図 3 に示します。 回転式によって操作性の良いアクチュエータ FPC挿入時の位置決めをし易いように 大きくスペースを確保 FPC挿入時位置決めと少極数時のFPCからの 煽り受けを兼ね備えた金属翼 図 3 FA 5 コネクタの特長 Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 5 4 FA 5 コネクタの開発 FA 5コネクタの開発時の検討内容について、以下に説明します。 4.1 ZIF 構造の検討 一般的に FPC/FFC とアクチュエータを併用した場合、 FPC/FFC の挿入時に反力がな いため、 ZIF(Zero Insertion Force)コネクタと呼ばれています。それに対して FPCの厚みの みを利用するものは NON-ZIF コネクタと呼ばれています。 図 4 に示すように、 どちらの場合でも FPC/FFC 用コネクタでは FPC/FFC およびアク チュエータの厚みを利用して梁を変形させその反力をもって電気的接続を行っています。 <一般的なNON-ZIFコネクタ> A B C アクチュエータ A <一般的なZIFコネクタ> FPC C 梁 梁 FPC 梁の変形量=(B+C)−A 梁の変形量=C−A 図 4 一般的な FPC コネクタの構造 FA5 コネクタでは ZIF 構造としてカム機構を採用することによって FPC 挿入時のガイドス ペースを確保するとともに操作性を改善しております。また、図 5 に示すカムは図6のように作 用しアクチュエータのロック機構も兼ねています。 � � � P��� ��� �M 閉じモーメント �������� M カム � � � � � ��� ��� ��� ��� ��� �� ��� ��� 接触力 P ���� � ��� � 0��� ���� 0 ���� ���� ���� ���� ���� ����� �� ���� ���� � ー �� ����M � �� �� �� �� ��� ���� ��� アクチュエ−タ開放角度 θ(゜) ��������������� 図 5 FA 5 コネクタのカム Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 図 6 カムの作用 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 6 4.2 低背化の検討 4.2.1 カム構造の検討 図 7 に従来のアクチュエータ回動式FPCコネクタを示します。従来のコネクタではアクチュ エータの開放時にアクチュエータのリブの厚さとコンタクト軸の突部の高さが重なるためこの部 分が低背化の障害になっていました。 突部の高さ リブの厚さ 従来のコネクタ 図 7 従来の回転式 FPC コネクタ FA5 コネクタではコンタクトをアクチュエータに貫通させ、 アクチュエータのカムの突部とコ ンタクトの突部をお互いの凹部にかみ合せることで低背化を実現しました。 さらにこの構造の採用によりアクチュエータを開放方向に過度に回動させようとしたときの 強度が格段に上がる効果が得られます。これはアクチュエータの回動方向の押えが従来は両 端のアクチュエータの軸で行っていたのが、 FA 5コネクタでは貫通したコンタクトによって押え が行われることによります。 左図の円部の拡大図 図 8 FA5 コネクタのアクチュエータ貫通構造 Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 7 4.2.2 梁の変位の検討 従来のコネクタでは下部の梁の変位によって接触力を得ていましたが、その変位のためのス ペースが低背化の障害になっていました。ハウジングの下部の壁を取り去ることで変位のための スペースを確保することも考えられますが、コンタクトと基板との接触の恐れがあることから基 板の配線がそこにできず大きなデメリットとなってしまいます。 (図 11) また、 底面の壁が必要と同じように、 SMT コネクタでは基板へ実装する際の吸着面として 上面の壁が必要となります。上下の壁を備えることからコネクタの組立時にはコンタクトを左 右方向から挿入して組立する必要があります。そのとき図 9 に示すハウジングの上部が使われ ないスペースとして空いてしまいます。 上部のスペース 梁の変位のためのスペース 図9 従来のコネクタ そこで FA 5 コネクタでは図 10 に示すように梁の変位のスペースとしてハウジングの上部のス ペースを有効利用するために、コンタクトをU字状のコンタクトを梁で連結した音叉形とし、ハ ウジングの下部の壁に当接したときにハウジングの上部のスペースに移動するように工夫をしま した。 U字状コンタクトを上部スペースに移動 当接部 底面 連結部 図 10 FA5 コネクタ Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC/FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 8 底面はコンタクトが露出しない 図 11 FA5 コネクタの底面 この構造では低背化のメリットのほかに、 連結部によってコンタクトが独立して上下に移動 できる機能によって、コネクタ組立時のバラツキ(図 12)による接触力低下を低減するというメ リットがあります。 従来のコネクタ FA 5のコネクタ 図 12 組立時のバラツキ Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 9 4.3 FPC/FFC 挿入性の検討 4.3.1 FPC 挿入時のガイド検討 人が穴にものを入れるとき図 13 のようにXYの 2 軸を同時にきめて入れるのは困難なもので す。図 14 のように 1 軸をきめるだけでも多少は入れやすくなりますが、図 15 のように 2 軸をき められるようになると格段に入れやすくなります。 低背化のコネクタではFPC挿入口の両端の壁の高さが必然的に低くなりFPCの挿入性低 下に至っていました。 図 13 ガイド無し 図 14 ガイド 1 軸 図 15 ガイド 2 軸 FA 5コネクタでは金属翼を設けることによって FPC の挿入性を改善しました。 図 16 のように FPC を挿入することによって位置決めが楽にできます。また、回動式のアクチュ エータによって確保されるFPC挿入口のスペースが挿入性をさらに向上させます。 � � 金属翼 � � � � � � � 図 16 FA5 コネクタ FPC 挿入ガイド � � � Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 10 また、 図 17 に示す金属翼は FPC からの負荷によってアクチュエータが開放してしまうこと を防ぐことを補助します。 FA 5 コネクタではアクチュエータのカムがコンタクト1本1本と連動 してロックとして機能するため、 極数が少ないときはそれに応じてロック力が低下します。よっ て極数が少ないときにはアクチュエータが開放してしまう力はそれとともに小さくなってしまいま すが、金属翼はこれを防ぐ有効な手段となります。 金属翼 図 17 FPC からの負荷 4.3.2 FPC 挿入時のアクチュエータ回動防止検討 アクチュエータ回動式コネクタでは、 図 18 のように FPC 挿入時にアクチュエータが回動し 挿入口高さ てしまうと FPC 挿入口高さが確保できず FPC の挿入性が低下してしまいます。 図 18 アクチュエータが回動した場合の挿入口高さ Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3) 技術紹介 4 0.5 mmピッチ ZIF-FPC / FFC 用コネクタ(FA5 シリーズ)の開発 11 FA5 コネクタではアクチュエータの両端にコンタクトと連動させたカム機構を設けることによ り挿入性の確保を行っています。図 19 に示すカム機構はアクチュエータが閉じた状態では閉じ た状態に、開いた状態では開いた状態に保つように機能します。 アクチュエータ姿勢維持カム 図 19 FA5 コネクタの姿勢維持カム 5 あとがき 今回紹介しましたFA5コネクタはモバイルPC、携帯電話などの情報通信関連機器の小型 化、薄型化に対応するコネクタとして、従来のコネクタより低背化、作業性を改善し開発しま した。 今後も新たな市場のニーズに応えられる製品の研究開発に努めていきたいと思います。 Copyright 2003, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.26 (2003.3)