技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 1 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 Development of Connector for Small Motor 松本 悦夫 Etsuo Matsumoto コネクタ事業部 技術三部 岡村 敏生 Toshio Okamura コネクタ事業部 技術三部 キーワード: コネクタ、小型モータ、I/O、低背、オールプラスチック Keywords : Connector, Small motor, I/O, Low profile, All plastic 要 旨 SUMMARY 近年、小型モータ業界において急速に小型化への In the small motor industry, downsizing is in process lately, raising request for a space-saving, low-cost connector used for I/O interface of motor. Responding to the needs, JAE has developed the JN5 series connector for small motors. The newly developed JN5 connector is a new type with a total of 6 terminals, 3 for power, 2 for brake and 1 for grounding, which can cope with the request for small-size, low profile and low-cost. In this article, we introduce the features, structure and performance of the JN5 connector. 検討が進んでおり、モータへの I/O 接続として、省ス ペースかつローコストとなるコネクタの要求が高まっ ています。これらの要求に対応するため、航 空電子 では小型モータ用コネクタとして JN5 シリーズを開発 しました。開発した JN5 コネクタは電源用 3 極、ブ レーキ用 2 極、アース用 1 極を合わせた計 6 極のコ ネクタで、小型・低背・ローコストの要求に対応した 新タイプのコネクタとなります。ここでは JN5 コネク タの特徴、構造、性能につきましてご紹介いたします。 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 2 1 はじめに 主に FA 機器に使用されている小型モータにおいて、機器の省スペース化に伴い、モー タの更なる小型化が進んでいます。また、従来はケーブルを直接接続するケースの多かっ た小型モータにも、近年ケーブル接続部をコネクタ化する傾向が見られ、小型モータに使 用可能な省ペース対応コネクタの要求が増えている状況です。このような要求にこたえる ため、小型モータの動力用コネクタとして JN5 シリーズの開発を行いました。JN5 シリー ズは形状、構造、材質をシンプルとして、小型化、低背化、ローコスト化を追求したコネク タとなります。ローコストを実現するため、外殻はオールプラスチックタイプとしています。 また、小型化への対応として、接触部と圧着部が斜めに配置されたコンタクトを採用し、 コネクタを低背化すると共に結線作業性を改善しています。 今回開発した JN5 シリーズは、小型モータの電源 (3 極 )、アース (1 極 ) およびブレー キ (2 極 ) へ接続する動力用のコネクタとなります。 .. 電源用コネクタとして安全に使用していただける様、TUV 認定対応の製品設計を行って おり、また、小型モータの使用環境に対応できるよう、防水性、耐油性、耐熱性に優れた コネクタとなっています。 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 3 2 コネクタ仕様 小型モータ用 JN5 コネクタの仕様を表 1 に示します。小型モータの電源およびブレー キ配線に対応したコネクタ仕様となっています。JN5 コネクタは 6 極となりますが、電源 に 3 極、ブレーキに 2 極、アースに 1 極使用することを想定して極数を設定しています。 表 1 JN5 コネクタ仕様 項 目 仕 様 及び 性 能 6 極 ( 電源 3 極 + ブレーキ 2 極 + アース 1 極 ) 1 定格電流 7A 以下 (1 極当り ) 2 定格電圧 250VAC( 汚染度 2, 過電圧範疇Ⅱ ) 3 耐電圧 2500VAC 4 絶縁抵抗 1000M Ω以上 (500VDC にて ) 5 防水性能 IP67( コネクタ嵌合時 ) 6 使用温度範囲 − 40 ∼ + 110℃ 7 結線仕様 レセプタクル : ストレートスルーホール プラグ : 圧着結線 8 プラグ適用ケーブル ケーブル外径 : φ 6.5 ∼φ 7.5 適用電線サイズ :AWG#22 ∼ #18 図 1 に JN5 コネクタの製品図を示します。レセプタクルは基板へ接続するスルーホー ルタイプで、プラグはケーブル接続タイプのコネクタとなります。 JN5CW06UJ1 ( レセプタクル ) JN5FW06SJ1 ( プラグ ) 図 1 JN5 コネクタ製品図 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 4 3 製品構造 3.1 レセプタクル 図 2 にレセプタクルの部品構成を示します。レセプタクルはコンタクト ( アース端子含 む )、インシュレータ、アース端子止めネジ、カバーで構成されています。コンタクトはバー 形状であり、基板にスルーホールにて固定、接続する方式を採用しています。アース端子 止めネジは、モータ本体上にネジ固定しアースを取ります。カバーは基板に半田付けされた スルーホール部の保護及び基板への保持補強のために使われます。 3.2 プラグ 図 3 にプラグの部品構成を示します。プラグは、ソケットコンタクト、インシュレータ、 フード、ガスケット ( ネジ用、フード用 )、取付ネジ、ブッシング、グランドナットにて構成 されます。外殻部品 ( フード及びグランドナット ) は樹脂材を適用しており、コンタクトは 圧着結線を採用しています。また、プラグの固定はレセプタクルと嵌合後、取付ネジにより 固定されます。 ���� ��� ������� ��� ������� ����� ����� ����� ������� �������� ��������� 図 2 レセプタクル部品構成 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. ��������� �������(����) 図 3 プラグ部品構成 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 5 4 製品の特徴 小型モータへの搭載を考慮し、小型化及び取り扱い性を重視した製品です。端子構成 は、電源 (U,V,W 相の 3 極 ) とブレーキ (2 極 ) およびアース (1 極 ) を想定した設定とし ています。 (1) 小型低背 プラグ寸法 : 幅 30mm ×全長 31mm ×高さ 14mm (2) オールプラスチック 軽量・ローコスト (3) 簡易配線 圧着結線、ソケットコンタクトの簡易装着 (4) 防水性能 IP67( コネクタ嵌合時 ) (5) 嵌合補正 プラグとレセプタクルの位置ずれを吸収して嵌合 (6) 嵌合固定 プラグをモータ本体にネジ止めにて確実に固定 4.1 低背コンタクト形状 製品高さをより低くするため、接触部に対して電線圧着部を斜め方向に配置したコンタ クトを新たに開発しました。図 4 にプラグ用ソケットコンタクトを、図 5 にコンタクト配線 状態図を示します。 コンタクトは接触部分と圧着部分にて構成されていますが、従来のコンタクトでは接触 部と圧着部が一直線上に配置されており、この形態ではコンタクト全長を短くするのに限 界がありました。また、嵌合面に対してケーブル引出口を 90°回転させたアングルタイプ のプラグへ配線する場合、アングル形状に合わせてケーブルを折り返すため、コネクタ内 部には折り返す分のスペースを確保しておく必要もありました。 JN5 コネクタでは、コンタクトの接触部に対し、圧着部を斜め方向に配置することで、 コンタクトの全長を短くしています。また、コンタクトに結線したケーブルがあらかじめ斜 め方向に引き出されるため、配線時にケーブルを折り返す必要がなく、コネクタ内部のスペ ースを小さくすることが可能となりました。これらにより、コネクタの低背化が実現してい ます。 コンタクトはプレス成形品で、バラまたはリール状にて供給されます。バラの場合は手 動圧着工具、リール状の場合は半自動圧着機を使用し、容易で安定した結線作業を行うこ とができます。 ����� ���� ��� ��� 4 ソケットコンタクト ��� 図 ��������� Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 図 5 コンタクト配線状態図(断面図) 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 6 4.2 簡易コンタクト挿入方式 二体構造のインシュレータは図 6 のように回転しながら開閉する構造となっています。 ベースインシュレータに、結線したコンタクトを並べて挿入し、カバーインシュレータを 閉じてロックさせることで、ソケットコンタクトの保持が一括で完了します。ソケットコンタ クトの保持方法を図 6 に示します。 従来はインシュレータあるいはコンタクトに保持機構を設け、1 本ずつコンタクトをイン シュレータへ保持させていましたが、本構造により一括での保持が可能となりました。ま た、アングル形状のコンタクトをベースインシュレータとカバーインシュレータで挟み込ん で保持させる構造のため、従来品に比べ強固なコンタクト保持力が得られています。 ����� ���������� ��� ���������� ��� ������������� 図 6 ソケットコンタクト保持方法 4.3 コネクタの嵌合ズレ吸収構造 レセプタクルのコンタクトはバー形状となっており、ソケットコンタクトとの接触面を大 きくとることができる構造となっています。そのため、図 7 に示すように、コネクタの嵌合 時のズレにより、ソケットコンタクトが上下、前後に移動しても、バーコンタクトとの接触 状態は変わらず、安定した接触性能が確保されます。この構造により、コネクタの嵌合時 のズレ量として、上下方向に± 0.3mm、前後方向に± 0.5mm を許容することが可能と なり、モータ側基板の設置位置の精度に余裕をもたせることができます。 図 7 嵌合ズレ吸収構造 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 7 4.4 防水構造 プラグはモータ本体に直接ねじ止めして固定する嵌合方式となります。プラグにはゴム 製のガスケットが装着されており、このガスケットをモータ本体に押し付けることでコネク タ嵌合部の防水シールを行います。ガスケットにはシール面を二列設けており、より確実 なシール構造となっています。ガスケットのシール構造を図 8 に示します。 また、プラグとケーブル間の防水シールにはゴム製のブッシングを使用しています。グラ ンドナットの締付によってブッシングが圧縮変形し、ケーブルとコネクタに密着してシール する構造となります。ブッシングのシール構造を図 9 に示します。 これらの防水シール構造により、コネクタ嵌合時において IP67 相当の防水性能を満足 しています。 ������� ����� 図 8 ガスケットシール構造 �� ������ グランドナット ������� ��� ����� ���� �� 図 9 ブッシングシール構造 4.5 優れた耐油性 モータは主に FA 機器等に用いられますが、工場内に設置される場合、切削油等がコネ クタ部にかかるケースが想定されます。そこで、JN5 コネクタでは防水性能の他、耐油性 能も考慮した設計となっています。 シール用部材には耐油性と耐熱性に優れたゴムを用いており、高熱の油に対してもシー ル性を失うことはありません。様々な切削油にて耐油試験を行っておりますが、防水性能 に問題は無く、良好な耐油性が得られています。 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 8 4.6 コンタクト接触性能 接触端子であるコンタクトは通電性の良い金めっきを施しています。ソケットコンタクト は 2 枚バネ構造で、相手側のバー状のコンタクトを挟み込むように接触します。 ソケットコンタクトが上下、前後および回転方向にズレを生じた場合でも、安定した接触 が保たれるコンタクト構造となっています。 (1) バネ特性 ソケットコンタクトのバネ特 ��� 性グラフを 図 10 に 示しま す。 ��� ンタクトがインシュレータ内で 最大に傾いたことを想定した最 悪状態について、接触バネの変 ������� 通常の接触状態と、ソケットコ ��� ��� ������ ������ ��� ��� 位量と荷重の関係をグラフ化し ��� ています。接触時のコンタクト � � 変位量はグラフに点線で示した � � � ����� � � 範囲となります。最悪状態を想 定しても、通常の状態から接触 図 10 コンタクトバネ特性グラフ 力は約 15% 低下するのみで十 分な接触力が得られおり、良好 なバネ特性を示しています。 � (2) 温度上昇試験 通電電流によるコンタクトの 発熱量について確認を行いまし �� た。コンタクトの温度上昇グラ �� フを図 11 に 示します。定 格 電 �� 流 7A に対し、コンタクトの温 度 上 昇値は 従 来 品よりも、約 30% 低下しています。これは、 ������� � ��� ��� �� �� コンタクトの接触面を大きくと っていることで、接触抵抗が低 く抑えられている効果となって � � � � � � ������� � �� います。電流容量が大きく、発 熱量が懸念されるような動力系 図 11 コンタクト温度上昇グラフ の用途に対しては、より適した コンタクト構造となっています。 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3) 技術紹介 6 小型モータ用コネクタの開発 9 5 コネクタの使用方法 レセプタクルは基板接続してモータ本体に 表 2 コネクタの配線方法 ネジ止めします。プラグを嵌合し、モータ本 端子 No. 体へネジ止めにて固定し、コネクタの接続が 1 完了となります。図 12 にモータへのコネク 2 タ設 置 状 態図を示します。 また、モータ 3 の基板とコネクタとの接続を図解した断面図 4 アース を図 13 に示します。 5 信号ライン ( ブレーキ用の 2 極 ) コネクタの配線方法は表 2 の通りとなりま 用 途 電源ライン (U,V,W 相の 3 極 ) 6 す。電源ラインと信号ライン間には十分な絶 縁距離をとってコンタクトが配置されていま すので、電源用と信号用に電圧差があっても 安全にご使用いただけます。 � ������� � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � ����� � ����� �� � � � ���� 図 12 モーターへのコネクタ設置状態図 � � 図 13 基板との接続 � � 6 むすび � � 今回の JN5 コネクタで小型モータに対応する製品開発を行いましたが、今後も様々な ニーズに対応すべく、本製品の仕様を基にバリエーション展開 ( 極数、結線方法、ケーブル サイズ ) を検討し、製品展開を推進していく方針です。 Copyright c 2005, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd. 航空電子技報 No.28(2005.3)