「ジッタと位相雑音の基礎知識」公開。

Technical Notes
ジッタと位相雑音
ジッタおよび位相雑音の基礎知識
【序文】
近年、映像配信などの普及に伴い、インターネットのバックボーンを流れるトラフィック量は増加の一途を辿って
おり、通信の高速化、大容量化が進んでいます。このように高速化する通信インフラには、高周波、かつ出力信号の
安定した基準信号源を強く求められます。この出力信号波形の安定性を評価する指標の 1 つに、ジッタ(Jitter)と呼ぶ
指標があります。英単語のジッタ(Jitter)とは「神経質」
「不安定」
「イライラする」といった意味を持ちますが、高周
波の水晶発振器の安定度を表すときには、デジタル信号を伝送するときに波形に生じる時間軸のずれや揺らぎを指し
ます。今回はこのジッタや位相ノイズに関する基本的な内容を解説します。
【1】 通信機器に重要な指標「ジッタ」
デジタル信号の波形をオシロスコープで見ると、単一の周期で発振しているはずの波形の輝線が太く幅を持 って
いることがあります。この幅の広がりがジッタです。
ジッタ
振幅
理想波形(黒)
実際の波形
実際の波形
(赤:早い)
(青:遅い)
時間
図 1 基準信号源の出力波形を評価する指標「ジッタ」の概念
図1は 1 周期の単位で波形を見たときに、数種類の周期を持つ信号が見えてしまうことを示しています。
理想
波形が単一の周期で繰り返されるのに対して、実際の波形は部分的にタイミングが早く変化(赤)したり、遅く変化
(青)したりします。
ジッタは、電気信号の読み取りデバイスのわずかな不安定さや信号の伝送経路の悪影響などが原因で発生します。
ジッタがあまりにも大きいと、信号が隣接する信号と干渉し、映像や音楽を伝送する信号の場合には、画像や音質
の劣化を引き起こしてしまいます。先に述べたように、ジッタはデジタル信号の時間軸でのタイミングの揺らぎを
示しますが、ジッタの種類は1つではありません。ジッタは時間とともに細かく変動し、時間に対する変動パター
ンもさまざまですので、ジッタを1つの数値だけで評価することは難しいのです。
【2】ジッタの種類に関する説明
ジッタには以下の種類のものがあります。
・Period Jitter (Peak to Peak)
・RMS Jitter (1-sigma)
・Random Jitter (RJ)
・Deterministic Jitter (DJ)
・Accumulated Jitter (Long Term Jitter)
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そしてジッタを減らして行くことと言うのは Deterministic Jitter (DJ)をいかに減らしていくのかと言うことで、
この成分の最適化によって左右 RJ の間が重なりそして理想的な正規分布として存在できるようになってきます。
Deterministic Jitter 成分
Random Jitter
成分
Random Jitter
成分
より低Jitterを実現して行く
より低ジッタを実現していく
Peak to Peak Jitter
Peak to Peak jitter
図 4 Deterministic Jitter に関する説明
(5) Accumulated Jitter (Long Term Jitter)
これまで説明してきたジッタは 1 周期長と言うものが基準
になり、そのばらつきを測定してきましたが、それだけで
1
2
3
4
n
は表すことのできないジッタがあります。
それが Accumulated jitter です。
Accumulated jitter は 1 周期長のばらつきだけではなく、
2 周期長、3 周期長と連続する多周期長の波形のばらつきを
示したもので、右記のグラフで表しています。
横軸は何周期長目まで測定したかを表し、縦軸はそれぞれの
周期長での 1-sigma として示しています。
このジッタをみることによって、連続する周期長が持つジッタ
の挙動をみることができます。
累積された周期長のジッタはある周期長から 1-sigma が収束
して行く傾向が見られます。これにより PLL 回路のバンド幅
図 5 Accumulated Jitter に関する説明
や過渡応答特性を判断できます。
【3】発振器の出力とジッタの関係
水晶発振器は、本来発振すべき周波数以外の周波数成分も出力します。
図 6 に示した水晶発振器の出力信号の周波数特性を見ると、基本周波数の近辺にある他の周波数の「裾」が
見られます。
振幅
基本周波数
電力
基本周波数(中心周波数f0)
位相雑音
位相雑音
1Hz
オフセット周波数(f)
図 6 水晶発振器の出力信号の周波数特性の概略図
周波数
f0+f
図 7 SSB(Single Side Band)位相雑音特性の概略図
3
周波数
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これはランダムな信号による位相変調、つまり雑音源が発振器を変調することによって生じるものです。
一般に位相雑音と呼ばれ、これらの周波数はほとんどの場合、ノイズフロアよりも高く、キャリア周波数に
近い部分に現れます。雑音を数式で表すと以下のようになります。
理想的な信号V(t)  A  sin2f 0 t
... (1)式
実際の信号V(t)  (A  E(t))sin(2f 0 t   (t))
... (2)式
ここで E(t)は振幅の変動(AM 雑音)で、φ(t)は位相の変動(PM 雑音)です。φ(t)が位相雑音となります。
位相雑音は通常、キャリアから離れたオフセット周波数における雑音電力とキャリア電力の比として規定さ
れます。位相雑音は全てジッタになります。
一般に、位相雑音を表現するのに「SSB(Single side Band)位相雑音 L(f)」を使用します。L(f)はオフセッ
ト周波数 f の関数で、単位は dBc/Hz です。位相変動による SSB 電力で定義し、搬送波周波数から fHz 離れ
た周波数における 1Hz 帯域幅の電力信号の総電力で規格化します(図 7)。数式で表現すると以下のように表
せます。
L(f)  (中心周波数  fHz)の1Hzバンド幅での電力/信号の全電力
... (3)式
L(f)は雑音ですので、1Hz 単位に換算しなければ比較できません。位相雑音を測定したときの測定帯域幅を
A とすれば、測定された位相ノイズを A で割って算出します。例えば、1kHz の測定帯域幅で-70dBc と測定
されたのならば、-70dBc-30dB となるので、-100dBc/Hz という結果になります。1Hz は 1kHz の 1/1000 な
ので、帯域幅当たりの出力も 1/1000(=-30dB)になります。dBc/Hz は、位相雑音を表す標準的な単位です。
位相雑音は、水晶発振回路に起因するものの他、PLL 回路を使用した場合には、各回路部や雑音成分や、ル
ープ特性に起因した雑音によって発生します。位相雑音は、信号の位相の揺らぎを表していますので、これ
は時間軸で観測すると、先に説明した波形のジッタになります。
【4】位相ジッタ
位相雑音とジッタはともに信号の安定性を表しており、
お互いに関係があります。具体的には、位相雑音は
時間領域における信号波形の揺らぎになります。
位相雑音は先に説明したとおり横軸:オフセット周波数、
位相雑音
周波数領域で表現した周波数の不安定さで、ジッタは
面積
縦軸:位相雑音で示されますが、この位相雑音の積分値
(図 8 の斜線部)にあたる部分が、位相ジッタとなり
図 8 位相ジッタのイメージ
キャリア周波数
RMS ジッタに相当します。
位相ジッタは、特定のオフセット周波数範囲の積分値を計算することで、特定の周波数範囲の成分を持つジッタ値
を得ることが出来ます
市場ではさまざまなアプリケーションに応じた特性が要求されます。EPSON の水晶デバイス製品には、
先に紹介したジッタやノイズに関する特性も含め、顧客が望む性能を有した水晶製品を今後も提供して
まいります。
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