FEJ 71 08 427 1998

富士時報
Vol.71 No.8 1998
富士電機の IC の現状と展望
目黒 謙(めぐろ けん)
まえがき
(30 V,60 V,120 V)の紹介をする。
(3) C/DMOSIC
富士電機の IC は,特定用途向け分野に特化し,特徴あ
Si ゲート CMOS の高耐圧構造として,DMOS を共存さ
る技術を基に製品開発を実施している。具体的には,高耐
せたプロセスとして電源用 IC やプラズマディスプレイド
圧 技 術 [ C/DMOS( Complementary/Double Diffused
ライバ IC に 適用 されているが, 内蔵 するパワー MOS
MOS) 技術 ]やセンサ 内蔵技術 (ホトダイオード,ピエ
FET( Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transis-
ゾ抵抗センサ)により電源用 IC,フラットパネルディス
tor)の 小形化 に 有効 な 技術 である。オン 抵抗 と 面積効率
プレイドライバ IC(プラズマディスプレイ,液晶),カメ
について,図2に示す。なお本特集号では誘電体分離技術
ラ用オートフォーカス IC,自動車用圧力センサ,ハイブ
(SOI)を用いたプラズマディスプレイドライバ IC の例を
リッド IC などで製品展開をしてきた。
紹介する。
半導体市場は好不況の波が激しく,かつ競争がますます
その他,Bi-CMOSIC やベアチップ実装に適したバンプ
激化している。こうした背景下で生き残るためには,特長
(はんだ,金)プロセスも保有しており,多様な顧客要求
ある技術に磨きをかけるとともに,さらにコアとなる技術
に対応している。
を開発し,他社にはないユニークな製品を提供することが
重要である。以下に,その技術の概要,製品例,今後の展
望を述べる。
2.2 実装技術
プラスチックモールドパッケージは,DIP(Dual Inline
,SOP(Small Outline Package),QFP(Quad
Package)
富士電機の IC の現状
Flat Package)をはじめ TSSOP(Thin Shrink SOP)と
2.1 プロセス・デバイス技術
CSP(Chip Size Package)の検討も実施中だが,前述し
いった 狭 ピッチ, 薄形 パッケージも 準備 している。また
富士電機のプロセス・デバイス技術の特長は,高耐圧と
アナログ・ディジタル共存技術である。微細加工と高耐圧
図1 富士電機の IC のプロセス技術
を共存させるためのプロセスの工夫や,アナログ精度を上
げるための工夫を行っている。代表的なプロセスは次に記
すとおりである(図1)。
(1)
バイポーラ IC
低 コスト, 高精度 を 生 かして 自動車用 イグナイタ IC,
圧力センサや電源用 IC に製品展開されている。
1995
1996
デザインルールでは 現在 0.6 μm 級 CMOSIC まで 量産化
IC として幅広く用いられており,電源用 IC,携帯電話機
用 IC,オートフォーカス用 IC,液晶ディスプレイドライ
1999
2000
Bi-CMOSIC:2μm 20V
CMOSIC:1μm 5V
30V
60V
120V
CMOSIC:0.8μm 5V
0.6μm 5V
プロセスを開発し,次に高耐圧 IC の開発を実施している。
している。製品展開としては,アナログ・ディジタル共存
1998
バイポーラIC:8μm 20∼40V
2μm 20V
(2 ) Si ゲート CMOSIC
微細加工 のリード 役 であり, 標準 ロジック 用 ( 5 V 級 )
1997
<0.5μm 5V
C/DMOSIC:2μm 700V
1μm 150V
1μm 30V/60V
1μm 250V(SOI)
バンプ:Au
Pb-Sn
鉛レス
バ IC などがある。 本 特 集 号 では 高 耐 圧 CMOSIC 技 術
目黒 謙
半導体デバイス,特に集積回路の
開発に従事。現在,松本工場半導
体開発センター IC 開発部長。
427( 3 )
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富士電機の IC の現状と展望
Vol.71 No.8 1998
図2 富士電機の DMOSIC のオン抵抗の面積効率
図3 プラスチックパッケージ IC の例
面積抵抗率(Ω・mm2)
1
他社品
60V DMOSIC
0.1
30V DMOSIC
0.01
10
100
50
S/D耐圧(V)
図4 富士電機の電源用 IC と応用回路例
力率改善
DC-DC
AC-DC
+
+
C/DMOSIC
FA3629V
FA3621
バイポーラIC
+
+
FA5331
FA5332
バイポーラIC
FA53シリーズ
バイポーラIC
FA76シリーズ
FA13842/44
CMOSIC
たとおり富士電機ではベアチップ実装に適したバンププロ
FA3630V
FA13843/45
CMOSIC
図5 富士電機のオートフォーカス IC モジュール
セスを保有しており,製品の小形化に適した実装技術をそ
ろえている(図3参照)。
一方,オートフォーカス IC ではレンズ付きモジュール
やクリアモールド樹脂パッケージ技術があり,圧力センサ
では高信頼性用途の金属パッケージから樹脂封止パッケー
ジまで用途に応じて系列化している。
1cm
2.3 富士電機の IC
富士電機の IC は,フルカスタムから出発して特定用途
向け標準 IC(ASSP)に狙いを絞った製品展開をしている。
代表的な製品として,電源用 IC がある。地球環境保護
カラープラズマディスプレイドライバ IC は,大画面テ
の観点から省資源,省エネルギーが求められている背景下,
レビやモニタ用途に製品化されている。また本特集号では
マッチした製品として低消費電力形 CMOS や力率改善 IC
系列化が進んだ小形液晶コントローラの紹介をする。また,
などの系列をそろえている(図4,表1参照)。
圧力センサではディーゼルエンジン用の紹介をする。
カメラ用オートフォーカス IC はレンズ付きモジュール
の 系列化 が 進 み, 薄形 カメラ( APS 用途 )に 適 した 小形
今後の展望
モジュールや,従来のディジタル方式に加えて低価格アナ
ログ 方式 センサの 開発 を 終了 させている( 図5 , 表2 参
。
照)
428( 4 )
富士電機の IC が,今後生き残るためには,市場ニーズ
にマッチした製品を供給していくことは当然だが,他社に
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富士電機の IC の現状と展望
Vol.71 No.8 1998
表1 富士電機の電源用 IC
(a)AC-DCコンバータ
適用回路
項目
形 式
D max
フライ
バック
分類
バ
イ
ポ
ー
ラ
I
C
制
御
専
用
M
I O
CS
フォ
ワード
動作モード
MOSIC
駆動
力率改善
FA5301
100%
FA5304
46%
⃝
FA5305
46%
⃝
FA5310
46%
⃝
FA5311
70%
FA5314
46%
FA5315
70%
FA5316
46%
FA5317
70%
FA5321
50%
FA5331
92%
⃝
FA5332
92%
⃝
FA13842
96%
FA13844
48%
⃝
⃝
⃝
⃝
カレント
⃝
⃝
OVP
OTP
16ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
⃝
16ピン
⃝
⃝
⃝
16ピン
⃝
⃝
OCP
⃝
⃝
⃝
保護回路
外 形
ボル
テージ
⃝
16ピン
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
8ピン
(b)DC-DCコンバータ
電圧範囲
項目
チャネル
数
形 式
分類
制
御
専
用
パ
ワ
ー
内
蔵
2.5∼22V
系
3.6∼22V
系
適用回路
1.4∼12V
系
10∼50V
系
ステップ
ダウン
FA7610
1
⃝
FA7611
2
⃝
⃝
FA7612
1
⃝
⃝
FA7613
1
FA7615
2
FA7616
2
FA7617
1
⃝
FA7622
2
⃝
⃝
FA7630
2
⃝
⃝
M
O
S
I
C
FA3630
2
FA13843
1
FA13845
1
M
O
S
I
C
FA3621
6
FA3629
3
FA36XX
1
バ
イ
ポ
ー
ラ
I
C
8ピン
⃝
16ピン
⃝
16ピン
⃝
⃝
16ピン
⃝
⃝
16ピン
8ピン
⃝
⃝
⃝
⃝
⃝
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
20ピン
⃝
⃝
20ピン
⃝
⃝
⃝
16ピン
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
8ピン
⃝
⃝
⃝
16ピン
8ピン
ている。本特集号では,システム IC 設計技術として紹介
ディジタル方式/
21 mピッチ
センサ
アナログ方式/
21 mピッチ
センサ
アナログ方式/
12 mピッチ
センサ
3倍以下のズーム
FM6234T
FM6254T
FM6255T
3倍以上のズーム
FM6232T
FM6252T
(FM6256T)
適用カメラ
⃝
⃝
⃝
表2 富士電機のオートフォーカス IC
センサ方式
⃝
⃝
⃝
外 形
アップ・
ダウン
⃝
⃝
MOS 駆動
ステップ
アップ
〈注〉
( )付きは開発中
する。
あとがき
富士電機の IC 技術の現状と展望について述べた。今後
も特長ある技術により,お客さまに喜ばれる製品を開発し
供給していく所存である。
ないユニークな技術を有することと同時に,多様化する要
望に短期にこたえられる設計技術が必要である。そのため
IP(Intellectual Property)コアの導入や自動設計化に向
けた CAD(Computer Aided Design)技術開発に注力し
参考文献
(1) 目黒謙:富士電機 の IC の 現状 と 展望 , 富士時報 , Vol.69,
No.8,p.407-409(1996)
429( 5 )
*本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する
商標または登録商標である場合があります。