1.8V低電力CMOSレールtoレール 入力/出力オペアンプ AD8515 ピン配置 特長 単電源動作:1.8∼5V オフセット電圧:最大6mV 小型SOT23パッケージ スルーレート:2.7V/µs 帯域幅:5MHz レールtoレール入力/出力スイング 低入力バイアス電流:2pA(標準) 低電源電流:1.8Vで最大450µA 5ピンSOT23 (略号RT) OUT 1 V– 2 +IN 3 5 V+ AD8515 4 –IN アプリケーション 移動通信 携帯電話 センサー・インターフェース レーザー・スキャナー PCMCIAカード バッテリ駆動機器 次世代電話 PDA(携帯情報端末) 概要 AD8515は、1.8Vの低い単電源電圧で動作するレールtoレール のアンプです。 SOT23-5Lパッケージ、シングル・アンプのAD8515は、セン サーの隣に置けるくらい小型で、外部からのノイズによる影響 を軽減できます。 ゲイン帯域幅5MHz、標準オフセット電圧(1.8Vの電源)1mV のレールtoレール入力/出力アンプは、電源電流が小さいため、 バッテリ駆動のアプリケーションに理想的です。また、 2.7V/µsのスルーレートは、音声コーデックなどのASIC入力の 駆動にも最適です。 AD8515は、–40∼+85℃という広範な工業温度範囲で動作する よう設計されています。 REV. 0 アナログ・デバイセズ株式会社 アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の 利用に関して、あるいは利用によって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いま せん。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利の使用を暗示的または明示的に許諾するもので もありません。 ※日本語データシートはREVISIONが古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。 本 社/ 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話03(5402)8200 大阪営業所/ 〒532-0003 大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪MTビル2号 電話06(6350)6868(代) AD8515 ― 仕様 電気的特性(特に指定のない限り、V S = 1.8V、VCM = VS/2、TA = 25℃) パラメータ 記号 条件 入力特性 オフセット電圧 VOS VCM = VS/2 –40℃<TA<+85℃ VS = 1.8V –40℃<TA<+85℃ 入力バイアス電流 IB 入力オフセット電流 IOS 最小 標準 最大 単位 1 6 8 30 600 10 300 1.8 400 4 mV mV pA pA pA pA V dB V/mV µV/℃ 20 V V mV mV mA 2 1 –40℃<TA<+85℃ 入力電圧範囲 コモンモード除去比 大信号電圧ゲイン オフセット電圧ドリフト CMRR AVO ∆VOS/∆T 0V≦VCM≦1.8V RL = 100KΩ、0.3V≦VCM≦1.5V 出力特性 出力電圧ハイレベル VOH 出力電圧ローレベル VOL IL = 100µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 750µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 100µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 750µA、–40℃<TA<+85℃ 短絡限界 ISC 0 50 80 1.79 1.77 10 30 電源 アンプ当たりの電源電流 ISY VOUT=VS/2 –40℃<TA<+85℃ 300 ダイナミック性能 スルーレート ゲイン帯域幅積 SR GBP RL = 10kΩ 2.7 5 V/µs MHz en en in f = 1kHz f = 10kHz f = 1kHz 22 20 0.05 — nV/√Hz — nV/√Hz — pA/√Hz ノイズ性能 電圧ノイズ密度 電流ノイズ密度 ―2― 450 500 µA µA REV. 0 AD8515 電気的特性(特に指定のない限り、V S = 3.0V、VCM = VS/2、TA = 25℃) パラメータ 記号 条件 入力特性 オフセット電圧 VOS VCM = VS/2 –40℃<TA<+85℃ VS = 3.0V –40℃<TA<+85℃ 入力バイアス電流 IB 入力オフセット電流 IOS 最小 標準 最大 単位 1 6 8 30 600 10 300 3 mV mV pA pA pA pA V dB V/mV µV/℃ 2 1 –40℃<TA<+85℃ 入力電圧範囲 コモンモード除去比 大信号電圧ゲイン オフセット電圧ドリフト 0 54 200 CMRR AVO ∆VOS/∆T 0V≦VCM≦3.0V RL = 100kΩ、0.3V≦VCM≦2.7V 出力特性 出力電圧ハイレベル VOH 2.99 2.98 出力電圧ローレベル VOL IL = 100µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 750µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 100µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 750µA、–40℃<TA<+85℃ 65 1,000 4 10 20 V V mV mV 450 500 dB µA µA 電源 電源除去比 アンプ当たりの電源電流 PSRR ISY VS = 1.8∼5.0V VOUT = VS/2 –40℃<TA<+85℃ ダイナミック性能 スルーレート ゲイン帯域幅積 SR GBP RL = 10kΩ 2.7 5 V/µs MHz en en in f = 1kHz f = 10kHz f = 1kHz 22 20 0.05 — nV/√Hz — nV/√Hz — pA/√Hz ノイズ性能 電圧ノイズ密度 電流ノイズ密度 REV. 0 ―3― 85 300 AD8515 電気的特性(特に指定のない限り、V S = 5.0V、VCM = VS/2、TA = 25℃) パラメータ 記号 条件 入力特性 オフセット電圧 VOS VCM = VS/2 –40℃<TA<+85℃ VS = 5.0V –40℃<TA<+85℃ 入力バイアス電流 IB 入力オフセット電流 IOS 最小 標準 最大 単位 1 6 8 30 600 10 300 5.0 mV mV pA pA pA pA V dB V/mV µV/℃ 5 1 –40℃<TA<+85℃ 入力電圧範囲 コモンモード除去比 大信号電圧ゲイン オフセット電圧ドリフト 0 60 300 CMRR AVO ∆VOS/∆T 0V≦VCM≦5.0V RL = 100kΩ、0.3V≦VCM≦4.7V 出力特性 出力電圧ハイレベル VOH 4.99 4.98 出力電圧ローレベル VOL IL = 100µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 750µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 100µA、–40℃<TA<+85℃ IL = 750µA、–40℃<TA<+85℃ 65 75 2,000 4 10 20 V V mV mV 550 600 dB µA µA 電源 電源除去比 アンプ当たりの電源電流 PSRR ISY VS = 1.8∼5.0V VOUT = VS/2 –40℃<TA<+85℃ ダイナミック性能 スルーレート ゲイン帯域幅積 SR GBP RL = 10kΩ 2.7 5 V/µs MHz en en in f = 1kHz f = 10kHz f = 1kHz 22 20 0.05 — nV/√Hz — nV/√Hz — pA/√Hz ノイズ性能 電圧ノイズ密度 電流ノイズ密度 ―4― 85 350 REV. 0 AD8515 絶対最大定格* 電源電圧 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6V 入力電圧 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . GND∼VS 差動入力電圧 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ±6Vまたは±VS GNDへの出力短絡時間 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 軽減曲線に従う 保管温度範囲 R、RT、RMパッケージ . . . . . . . . . . . . . . . . . –65∼+150℃ 動作温度範囲 AD8515 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . –40∼+85℃ 接合温度範囲 R、RT、RMパッケージ . . . . . . . . . . . . . . . . . –65∼+150℃ ピン温度範囲(ハンダ付け60秒) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 300℃ パッケージ・タイプ θJA* θJC 単位 5ピンSOT23(RT) 230 146 ℃/W * θJAは、最悪の条件の仕様規定、すなわち表面実装パッケージの回路ボード にハンダ付けした場合の値です。 *特に指定のない限り、絶対最大定格は25℃の値です。 オーダー・ガイド モデル 温度範囲 パッケージ パッケージ・オプション ブランド情報 AD8515ART –40∼+85℃ 5ピンSOT23 RT-5 BDA 注意 ESD(静電放電)の影響を受けやすいデバイスです。人体や試験機器には4,000Vもの高圧の静 電放電が容易に蓄積され、検知されないまま放電されます。AD8515は当社独自のESD保護回 路を内蔵してはいますが、デバイスが高エネルギーの静電放電を被った場合、回復不能の損傷 を生じる可能性があります。したがって、性能劣化や機能低下を防止するため、ESDに対する 適切な予防措置を講じることをお勧めします。 REV. 0 ―5― WARNING! ESD SENSITIVE DEVICE AD8515 ― 代表的な性能特性 450 6 VS = 2.5V 5 電源電圧(V) 電源電流(µA) 400 350 300 4 3 2 250 1 200 4.65 4.7 4.75 4.8 4.85 帯域幅(MHz) 0 4.65 4.95 4.9 4.7 4.75 TPC 1. 電源電流と帯域幅 4.95 4.9 TPC 4. 電源電圧と帯域幅 450 160 400 140 VS = 2.5V VOL 350 120 300 ∆出力電圧(mV) 電源電流(µA) 4.85 4.8 帯域幅(MHz) 250 200 150 VOH 100 80 60 40 100 20 50 0 1 0 2 3 電源電圧(V) 4 5 0 6 0 TPC 2. 電源電流と電源電圧 10 負荷電流(mA) 5 15 20 TPC 5. 電源レールへの出力電圧と負荷電流 500 270 120 VS = 2.5V 480 100 460 80 VS = 2.5V 振幅 = 20mV 225 180 ゲイン 420 400 380 90 40 位相 45 20 0 0 位相(度) 135 60 ゲイン(dB) ISY(µA) 440 360 –20 –45 340 –40 –90 320 –60 –135 300 –60 –40 –20 0 20 40 温度(℃) 60 80 –80 100 TPC 3. ISY(アンプ当たりの電源電流)と温度 1k 10k 100k 1M 周波数(Hz) 10M –180 50M TPC 6. ゲインと位相と周波数 ―6― REV. 0 AD8515 96.0 120 VS = 2.5V 100 95.9 80 95.8 60 95.7 PSRR(dB) ACL(dB) VS = 2.5V 40 20 0 95.6 95.5 95.4 –20 95.3 –40 95.2 –60 95.1 –80 10k 100k 1M 周波数(Hz) 10M 95.0 –60 30M TPC 7. ACLと周波数 –20 0 20 40 温度(℃) 60 80 100 TPC 10. PSRR(電源除去比)と温度 430 120 100 –40 VS = 2.5V 振幅 = 50mV VS = 2.5V 344 80 40 アンプの数 CMRR(dB) 60 20 0 258 172 –20 86 –40 –60 –80 10k 100k 1M 周波数(Hz) 10M 0 –6.24 100M –4.27 –2.29 –0.32 VOS(mV) 1.66 3.63 TPC 11. VOS(オフセット電圧)分布 TPC 8. CMRR(コモンモード除去比)と周波数 150 120 VS = 2.5V VS = 2.5V 振幅 = 50mV 100 出力インピーダンス(Ω) 80 PSRR(dB) 60 40 20 10 0 100 50 ゲイン = 100 ゲイン = 10 –20 ゲイン = 1 –40 –60 100 1k 10k 100k 周波数(Hz) 1M 0 1k 10M TPC 9. PSRR(電源除去比)と周波数 REV. 0 10k 100k 周波数(Hz) 1M TPC 12. 出力インピーダンスと周波数 ―7― 10M AD8515 26 VS = 2.5V VS = 2.5V VIN = 6.4V 25 24 電圧(2V/DIV) 23 ISC(mA) –SC 22 21 +SC 20 19 18 17 16 –60 –40 –20 0 20 40 温度(℃) 60 80 100 時間(200µS/DIV) TPC 13. ISC(短絡限界)と温度 TPC 16. 非位相反転 VS = 2.5V CL = 50pF VIN = 200mV 電圧(13µV/DIV) 電圧(100mV/DIV) VS = 2.5V 0 250 500 750 1k 1.25k 1.5k 1.75k 2.0k 2.25k 2.5k 周波数(Hz) 時間(1µs/DIV) TPC 17. 小信号過渡応答 TPC 14. 電圧ノイズ密度 VS = 2.5V CL = 500pF VIN = 200mV 電圧(100mV/DIV) 電圧(200mV/DIV) VS = 2.5V ゲイン = 100kΩ 時間(1s/DIV) 時間(1µs/DIV) TPC 15. 入力電圧ノイズ TPC 18. 小信号過渡応答 ―8― REV. 0 AD8515 120 VS = 2.5V CL = 300pF VIN = 4V VS = 1.5V 振幅 = 50mV 100 80 CMRR(dB) 電圧(1V/DIV) 60 40 20 0 –20 –40 –60 –80 10k 時間(1µs/DIV) TPC 19. 大信号過渡応答 100k 1M 周波数(Hz) 10M 100M TPC 22. CMRR(コモンモード除去比)と周波数 VS = 1.5V ゲイン = 40 VIN = 100mV 電圧(1V/DIV) 電圧(100mV/DIV) VS = 0.9V CL = 50pF VIN = 200mV 時間(2µs/DIV) 時間(1µs/DIV) TPC 20. 飽和回復 TPC 23. 小信号過渡応答 120 ゲイン(dB) 電圧(1V/DIV) 100 TPC 21. 飽和回復 REV. 0 225 80 180 60 135 40 90 20 45 0 0 –20 –45 –40 –90 –60 –135 –80 10k 時間(2µs/DIV) 270 VS = 0.9V 振幅 = 20mV 100k 1M 周波数(Hz) 10M TPC 24. ゲインと位相と周波数 ―9― 位相(度) VS = 1.5V ゲイン = 40 VIN = 100mV –180 30M AD8515 200 10 VS = 0.9V 150 VS = 5V IL = 750µA VOL(mV) 8 100 7 6 5 ゲイン = 100 50 ゲイン = 10 0 1k 10k 100k 周波数(Hz) 4 ゲイン = 1 3 1M 2 –60 10M TPC 25. 出力インピーダンスと周波数 –40 –20 0 20 40 温度(℃) 60 80 100 TPC 27. VOL(出力電圧ローレベル)と温度 4.9950 VS = 0.9V VIN = 3.2V VS = 5V IL = 750µA 4.9945 4.9940 VOH(V) 電圧(1V/DIV) 出力インピーダンス(Ω) 9 4.9935 4.9930 4.9925 4.9920 4.9915 –60 時間(200µs/DIV) TPC 26. 非位相反転 –40 –20 0 20 40 温度(℃) 60 80 100 TPC 27. VOH(出力電圧ハイレベル)と温度 ― 10 ― REV. 0 AD8515 機能の説明 VS = 2.5V CL = 50pF ゲイン = +1 電圧(100mV/DIV) 小型SOT23パッケージのAD8515は、1.8Vという低い電源電圧 で動作するレールtoレール入力/出力オペアンプです。0.6ミク ロンのCMOSを使用し、業界最高の消費電力対速度(帯域幅) 比を実現します。わずかな電源電流(400µA未満)で、 4.5MHzの広いユニティ・ゲイン帯域幅を使用して信号処理が できます。 入力段は、並列相補型の差動PMOSとNMOSの2対で構成され ています。入力信号が供給電源を0.6V超過して上回る場合も、 位相反転が生じません。入力ピンへの電流は、外部に直列抵抗 を用いて 5mA 以下に制限する必要があります。 AD8515 は、 ESD(静電放電)に非常に強い設計で、最大4,000VのESD電 圧に耐えることができます。 時間(1µs/DIV) 電力消費対帯域幅 図1a. AD8515の最大の特長の1つは、消費電流はわずかなまま、指定 の温度範囲全体にわたって安定した帯域幅を持つことです。 TPC 1∼TPC 3にこの効果を示します。本製品は、多くのアプ リケーションで要求される速度/電力の要件を満たしていま す。低い電源電圧で動作するときも、広い帯域幅で安定してい ます。TPC 4は、AD8515の電源電圧と帯域幅の関係を示して います。 電圧(100mV/DIV) VS = 2.5V CL = 500pF ゲイン = +1 AD8515は、ごく普通の電池の終端放電電圧で動作可能なため、 バッテリ駆動の計装機器やハンドヘルド機器に最適です。表1 に、標準的なバッテリの定格電圧と最終放電電圧を示します。 表1. 容量性負荷駆動(CL = 50pF) 標準的なバッテリ寿命の電圧範囲 バッテリ 定格電圧(V) 最終放電電圧(V) 鉛蓄電池 リチウム電池 ニッケル水素電池 ニカド電池 炭素亜鉛電池 2 2.6∼3.6 1.2 1.2 1.5 1.8 1.7∼2.4 1 1 1.1 時間(1µs/DIV) 図1b. 容量性負荷駆動(CL = 500pF) 図2 に示すように、AD8515 は–1 の非反転ゲインでも大きな容 量性負荷を駆動できます。 容量性負荷の駆動 VS = 0.9V CL = 800pF ゲイン = –1 電圧(100mV/DIV) ふつうアンプでは、大きな容量性負荷の駆動が困難です。また、 出力側での容量が大きくなるほど、アンプのステップ応答にお けるオーバーシュートとリンギングの量が増大し、デバイスの 安定性に影響を与えることがあります。これは、容量性負荷に よって生じる余分な位相遅れによって、位相マージンの低下が 生じるためです。発振する前にアンプが駆動できる容量性負荷 の値は、ゲイン、電源電圧、入力信号、温度などによって異な ります。容量性負荷の駆動では、ユニティ・ゲインが非常に難 しい構成になります。AD8515なら、外部からの補償なしで大 きな容量性負荷の駆動が可能です。図1のグラフに、+1のユニ ティ・ゲインで構成した場合のアンプの容量性負荷駆動の性能 を示します。 時間(1µs/DIV) 図2. REV. 0 ― 11 ― 容量性負荷駆動(CL = 800pF) AD8515 フル・パワー帯域幅 アンプのスルーレートで、大入力信号に応答できる最大周波数 が決まります。このフル・パワー帯域幅(FPBW)と言われる 歪みをもたらす周波数については、次式で計算できます。 SR FPBW = ————— 2π×VPEAK アンプの帯域幅がフィルタの中心周波数に近くなると、アンプ の内部位相シフトによって、100kHz で過度の位相シフトが生 じ、これによってフィルタの応答が変化します。実際、使用す るオペアンプの帯域幅が100kHz に近いと、オペアンプの位相 シフトによってループに発振が生じることになります。 VCCとグラウンド間に接続された2本の抵抗器からなる抵抗分 割器に非反転入力を接続すると、コモンモードのバイアス・レ ベルを簡単に生成できます。このバイアス点も1µFのコンデン サでグラウンドにデカップリングされます。 AD8515のFPBWは、図3に示すようにほぼ200kHzです。 電圧(2V/DIV) 1 fL = —————— 2π×R1×C1 1 fH = —————— 2π×R1×C1 R2 H0 = 1 + —–— R1 VCC = 1.8V – 5V ここで、 fL = 低∼3dbの周波数 fH = 高∼3dbの周波数 H0 = 中間周波数ゲイン VCC VCC 時間(2µs/DIV) 図3. フル・パワー帯域幅 R5 2kΩ R6 1MΩ 3 単電源回路は多くの場合、電源電圧の半分にバイアスがかけら れた回路構成になっています。この場合、アンプがバッファ回 路となる分圧器を使用することで、擬似グラウンド基準が生成 されます。図 4 にこのような回路を示します。 2 本の 1MΩ 抵抗 器が、わずか0.9µAの電流を1.8V電源から引き込んで基準電圧 を生成しています。反転端子とオペアンプの出力間に結合され たコンデンサで補償を行うことにより、バイパス・コンデンサ を基準出力に接続できるようにしています。このバイパス・コ ンデンサによって、基準出力の AC グラウンドを確保できるよ うになります。 400mV C3 1µF 4 C1 2nF R8 1MΩ U9 1 V+ V11 マイクロパワー基準電圧発生器 VOUT V– AD8515 R1 5kΩ R2 20kΩ C6 10pF 図5. 二次帯域通過フィルタ 2 R2 1MΩ C3 1µF R1 1MΩ 3 U1 V+ 4 1 R4 100Ω 出力電圧(V) 1.8∼5V 0.9∼2.5V V– AD8515 C1 1µF 1 C2 0.022µF R3 10kΩ 図4. 0 1k マイクロパワー基準電圧発生器 10k 図6. 100kHz単電源の二次帯域通過フィルタ 100k 1M 周波数(Hz) 10M 100M 帯域通過フィルタの周波数応答 図5 は、低い消費電力と広い帯域幅が求められる移動型アプリ ケーションでよく使われる回路です。図に示す回路は、中心周 波数が100kHz の単電源帯域通過フィルタ回路です。精確な中 心周波数を維持するためには、オペアンプのループ・ゲインは 100kHzでなければなりません。このループ・ゲインの要件の ために、AD8515など、高ユニティ・ゲインのクロスオーバー 周波数を備えたオペアンプを選択する必要があります。 AD8515の4.5MHzの帯域幅があれば、図6の応答が示すように、 100kHzの中心周波数を精確に生成することができます。オペ ― 12 ― REV. 0 AD8515 図7の回路を使うと、最も基本的な波形の1つである正弦波を生 成することができます。この回路は、ウィーン・ブリッジ発振 器として知られ、低電力アンプは1 つしか必要としないという 利点があります。この利点は、消費電力が重大なバッテリ駆動 のアプリケーションにとって、特に重要なポイントとなります。 式を簡単にするため、抵抗器とコンデンサには、常に同じ値を 使用します。発振が生じるためには、次の2 つの条件を満たす 必要があります。第1 に、入力から出力への位相シフトがゼロ であることが必要です。これは、次式で求められる発振周波数 で生じます。 AD8515は、その帯域幅の広さから、高周波発振器を構築する ことができます。ここに示す値を使用すれば、図8 に示すよう に130kHzの発振周波数が得られます。R11の値が小さすぎると 発振が収束する可能性があり、大きすぎると発振が発散して、 や が て 出 力 が ク リ ッ プ さ れ ま す ( V S = ± 2.5V 、 F OSC = 130kHz)。 1 FOSC = —————— 2πR10×C10 第2に、この周波数において、プラス入力(3ピン)の電圧に対 するVOUTの比率が3でなければなりません。つまり、R11/R12 の比率が2より大きくなければならないということです。 C9 1nF 電圧(2V/DIV) ウィーン・ブリッジ発振器 R10 1kΩ 時間(2µs/DIV) VCC 3 図8. U10 1 V+ C10 1nF R13 1kΩ 4 V– AD8515 VEE R12 1kΩ 図7. 1 R11 2.05kΩ 低電力ウィーン・ブリッジ発振器 VisualDSP++はアナログ・デバイセズ社の登録商標です。 REV. 0 ― 13 ― ウィーン・ブリッジ発振器の出力 AD8515 外形寸法 5ピン・プラスチック表面実装パッケージSOT-23 (RT-5) 寸法はミリメートルで表示 2.90 5 4 2.80 BSC 1.60 BSC 1 2 3 ピン1 0.95 BSC 1.30 1.15 0.90 1.90 BSC 1.45(最大) 0.15(最大) 0.50 0.30 実装面 0.22 0.08 10° 0° 0.60 0.45 0.30 JEDEC規格MO-178AAに準拠 ― 14 ― REV. 0 ― 15 ― ― 16 ― PRINTED IN JAPAN C03024-0-8/02(0)