日本語版

デュアル、超低ノイズの
可変ゲイン・アンプ
AD604
特長
機能ブロック図
最大ゲインでの超低入力ノイズ:
0.80 nV/√Hz、3.0 pA/√Hz
dBリニアな2個の独立チャンネル
チャンネルごとにプログラム可能な絶対ゲイン・レンジ:
0 dB∼+48 dB(プリアンプ・ゲイン=+14 dB)から
+6 dB∼+54 dB(プリアンプ・ゲイン=+20 dB)
±1.0 dBのゲイン精度
帯域幅:40 MHz(−3 dB)
300 kΩの入力抵抗
可変ゲイン・スケーリング:20 dB/V∼40 dB/V
温度変化、電源変化に対応する安定したゲイン
単一終端ユニポーラ・ゲイン・コントロール
ゲイン制御の低終端での電源遮断
A/Dコンバータを直接駆動可能
アプリケーション
超音波およびソナーのタイム・ゲイン・コントロール
高性能AGCシステム
信号計測
概要
5∼10(+14 dB∼+20 dB)のプリアンプのゲインにより、チャン
AD604は超低ノイズ、超高精度、デュアル・チャンネル、dBリニ
ネルごとの全ゲイン・レンジを0 dB∼+48 dBから+6 dB∼+54 dB
アな可変ゲイン・アンプ(VGA)で、超音波を扱うアプリケーショ
まで変更できます。2番目のチャンネルのプリアンプをバイパスす
ンでタイムベースの可変ゲイン・コントロールに最適化されていま
ることで、AD604の2つのチャンネルをカスケードに接続してより
す。低ノイズ、広帯域の可変ゲイン制御を要求されるアプリケー
広範囲のゲイン・レンジを得ることができます。しかしマルチ・
ションにも使用できます。AD604の各チャンネルには300 kΩの入
チャンネルのシステムではAD604をAD60xのVGAファミリーの中の
力抵抗があり、使いやすいユニポーラ・ゲイン制御を備えていま
他のデバイス(プリアンプは含まない)とカスケード接続したほう
す。ユーザー定義が可能なゲイン・レンジ、ゲイン・スケール(dB/
が、より効率的な解決方法となります。AD604ではプリアンプの出
V)、出力側のdcレベル・シフトによりさらに良好なアプリケーショ
力側へアクセスでき、プリアンプと差動減衰器段の間で外部フィル
ン性能を実現しました。
タリングが可能になります。
AD604の各チャンネルは入力時のノイズ電圧0.8 nV√Hzを実現す
ゲイン・コントロール・インタフェースによって、約2 MΩの入
る高性能のプリアンプを使用しています。AD604の高精度のdBリ
力抵抗、および2.5 V∼1.67 VのVREF入力電圧に対して20 dB/V∼30
ニアな応答性は差動入力指数アンプ
(DSX-AMP)
アーキテクチャに
dB/Vのスケール・ファクタが得られます。30 dB以上のスケールに
よって実現しました。各DSX-AMPは0 dB∼48.36 dBの可変減衰器
たいしても、精度は低下しますが40 dBのスケール・ファクタまで
と高速固定ゲイン・アンプから成ります。減衰器は7段のR-1.5Rラ
使えます。ゲインは20 dB/Vのスケールで0.4 V∼2.4 Vの制御電圧
ダー・ネットワークに基づきます。タップ・ポイント間の減衰は
範囲ではdBリニアです。このゲイン・コントロール・レンジの上
6.908 dBで、ラダー・ネットワーク全体で48.360 dBです。
下では、ゲインは理想的なdBリニアな制御法則から離れ始めます。
AD604の個々に独立したチャンネルは48 dBのゲイン・レンジを
0.1 V未満のゲイン・コントロール領域はゲイン・コントロールに
持ち、アプリケーションごとに最適化できます。これはプリアンプ
は使用されません。実際、ゲイン・コントロール電圧が50 mVより
をそのフィードバック・パス内の1個の外部抵抗でプログラムする
少ない場合はアンプのチャンネルは1.9 mAまでパワーダウンしま
ことによって行います。AD604のdBでリニアなゲインの応答性は
す。
次の式で表されます。
G(dB)=(ゲイン・スケーリング(dB/V)x VGN(V))+(プリ
AD604には24ピンのプラスチック製のSSOP、SOIC、DIPがあり、
−40℃∼+85℃の温度範囲で動作が保証されています。
アンプゲイン(dB)−19 dB)。
アナログ・デバイセズ社が提供する情報は正確で信頼できるものを期していますが、
当社はその情報の利用、また利用したことにより引き起こされる第3者の特許または権
利の侵害に関して一切の責任を負いません。さらにアナログ・デバイセズ社の特許また
は特許の権利の使用を許諾するものでもありません。
REV.0
アナログ・デバイセズ株式会社
本 社/東京都港区海岸1 - 1 6 - 1 電話03(5402)8200 〒105−6891
ニューピア竹芝サウスタワービル
大阪営業所/大阪市淀川区宮原3 - 5 - 3 6 電話06(6350)6868㈹ 〒532−0003
新大阪第2森ビル
AD604―仕様
(特に指定のない限り各アンプのチャンネルは、TA=+25℃、VS=±5 V、RS=50Ω、RL=500Ω、CL=5 pF、VREF=2.50 V(スケーリング=
20 dB/V)、0 dB∼+48 dBゲイン・レンジ(プリアンプ・ゲイン=+14 dB)、VOCM=2.5 V、C1およびC2=0.1μF(図35参照))
パラメータ
入力特性
プリアンプ
入力抵抗
入力容量
入力バイアス電流
ピーク入力電圧
入力電圧ノイズ
入力電流ノイズ
雑音指数
DSX
入力抵抗
入力容量
ピーク入力電圧
入力電圧ノイズ
入力電流ノイズ
雑音指数
同相電圧除去比
出力特性
−3 dB帯域幅
スルー・レート
出力信号レンジ
出力インピーダンス
出力短絡電流
高調波歪み
HD2
HD3
HD2
HD3
ツートーン相互変調歪み(IMD)
第3次インターセプト
1 dB圧縮点
チャンネル間クロストーク混信
グループ・ディレイ変動
VOCM入力抵抗
精度
絶対ゲイン・エラー
0 dB ∼ +3 dB
+3 dB ∼ +43 dB
+43 dB ∼ +48 dB
ゲイン・スケーリング・エラー
出力オフセット電圧
出力オフセット変動
条 件
Min
Typ
Max
単位
プリアンプ・ゲイン=+14 dB
プリアンプ・ゲイン=+20 dB
VGN=2.9 V、RS=0Ω
プリアンプ・ゲイン=+14 dB
プリアンプ・ゲイン=+20 dB
ゲインに依存しない
f=1 MHz、VGN=2.9 V
RS=50Ω、
RS=200Ω、f=1 MHz、VGN=2.9 V
300
8.5
−27
±400
±200
kΩ
pF
μA
mV
mV
0.8
0.73
3.0
2.3
1.1
nV/√Hz
nV/√Hz
pA/√Hz
dB
dB
VGN=2.9 V
VGN=2.9 V
f=1 MHz、VGN=2.9 V
RS=50Ω、
RS=200Ω、f=1 MHz、VGN=2.9 V
f=1 MHz、VGN=2.65 V
175
3.0
2.5±2
1.8
2.7
8.4
12
−20
Ω
pF
V
nV/√Hz
pA/√Hz
dB
dB
dB
40
170
2.5±1.5
2
±40
MHz
V/μs
V
Ω
mA
−54
−67
−43
−48
dBc
dBc
dBc
dBc
−74
−71
−12.5
dBc
dBc
dBm
+15
dBm
−30
dB
dB
ns
kΩ
ゲインに対して一定
VGN=1.5 V、出力=1 Vステップ
RL>500Ω
f=10 MHz
VGN=1 V、VOUT=1 Vp-p
f=1 MHz
f=1 MHz
f=10 MHz
f=10 MHz
VGN=2.9 V、VOUT=1 Vp-p
f=1 MHz
f=10 MHz
f=10 MHz、VGN=2.65 V、
VOUT=1 Vp-p、リファレンス入力
f=1 MHz、VGN=2.9 V、リファレンス出力
VOUT=1 Vp-p、f=1 MHz
Ch#1:VGN=2.65 V、短絡入力
Ch#2:VGN=1.5 V
(ミッドゲイン)
1 MHz<f<10 MHz、フルゲイン・レンジ
0.25 V<VGN<0.400 V
0.400 V<VGN<2.400 V
2.400 V<VGN<2.65 V
0.400 V<VGN<2.400 V
VOCM=2.500 V
VREF=2.500 V、
VREF=2.500 V、
VOCM=2.500 V
−2−
±2
45
−1.2
−1.0
−3.5
−50
+0.75
+0.3
−1.25
±0.25
±30
30
+3
+1.0
+1.2
+50
50
dB
dB
dB
dB/V
mV
mV
REV.0
AD604
パラメータ
ゲイン・コントロール・インタフェース
ゲイン・スケーリング・ファクタ
ゲイン・レンジ
入力電圧(VGN)レンジ
入力バイアス電流
入力抵抗
応答時間
VREF入力抵抗
電源
規定動作レンジ
消費電力
ゼロ入力時電源電流
パワー・ダウン
パワー・アップ応答時間
パワー・ダウン応答時間
条 件
Min
Typ
VREF=2.5 V、0.4 V<VGN<2.4 V
VREF=1.67 V
プリアンプ・ゲイン=+14 dB
プリアンプ・ゲイン=+20 dB
20 dB/V、VREF=2.5 V
19
20
21
30
0 ∼ +48
+6 ∼ +54
0.1 ∼ 2.9
−0.4
2
0.2
10
dB/V
dB/V
dB
dB
V
μA
MΩ
μs
kΩ
±5
+5
220
95
32
19
−12
1.9
−150
0.6
0.4
V
V
mW
mW
mA
mA
mA
mA
μA
μs
μs
ゲイン変化48 dB
完全なチャンネル1個
DSX1個のみ
完全なチャンネル1個
DSX1個のみ
VPOS、完全なチャンネル1個
VPOS、
DSX1個のみ
VNEG、プリアンプ1個のみ
VPOS、
VGN<50 mV、1チャンネル
VNEG、VGN<50 mV、
1チャンネル
ゲイン変化48 dB、VOUT=2 Vp-p
絶対最大定格
−15
Max
36
23
3.0
単位
オーダー・ガイド
電圧電圧±VS
パッケージ・
ピン17、18、19、20(ピン16、22=0 V)………………… ±6.5 V
モデル
入力電圧
ピン1、2、11、12 ………………………… VPOS/2±2 V(連続)
ピン4、9 ……………………………………………………… ±2 V
ピン5、8 …………………………………………… VPOS、VNEG
温度範囲
θJA
オプション*
AD604AN
−40℃ ∼ +85℃
75℃/W
N-24
AD604AR
−40℃ ∼ +85℃
70℃/W
R-24
AD604ARS
−40℃ ∼ +85℃
112℃/W
R-24
*N=Plastic DIP、R=Small Outline IC(SOIC)
、RS=Shrink Small Outline Package(SSOP)
。
ピン6、7、13、14、23、24 ………………………………… BPOS、0
内部消費電力
プラスチック・パッケージ(N) ………………………… 2.2 W
SOパッケージ(R) ………………………………………… 1.7 W
SSOPパッケージ(RS) …………………………………… 1.1 W
動作温度範囲
…………………………………… −40℃ ∼ +85℃
保管温度範囲
…………………………………
−65℃ ∼ +150℃
リード温度、はんだ付け60秒間 …………………………… +300℃
注
1
“絶対最大定格”の項にある値を超えたストレスをかけると、
デバイスに致命的
な損傷を与える場合があります。ここにあるのはストレス定格値のみであっ
て、これらの条件あるいは仕様書の操作編で指示されている以上の条件でデバ
イスが機能するという意味ではありません。絶対最大定格の条件であっても、
長時間その状態が続くと装置の信頼性に影響を与える場合があります。
2
ピン1、2、11、12、13、14、23、24は単電源回路の一部ですので、偶発的にVNに
3
外付けの低インピーダンス源で駆動する場合
接続されると破損する場合があります。
注意
ESD(静電放電)の影響を受けやすいデバイスです。4000 Vもの高圧の静電気が人体やテスト装置に容易に帯電し、検知さ
れることなく放電されることもあります。このAD605には当社独自のESD保護回路を備えていますが、高エネルギーの静
電放電にさらされたデバイスには回復不能な損傷が残ることもあります。したがって、性能低下や機能喪失を避けるため
に、適切なESD予防措置をとるようお奨めします。
REV.0
−3−
WARNING!
ESD SENSITIVE DEVICE
AD604
ピンの説明
ピン番号
ニーモニック
説 明
ピン1
−DSX1
CH1のDSX1への負信号入力。
ピン2
+DSX1
CH1のDSX1への正信号入力。
ピン3
PAO1
CH1のプリアンプ出力。
ピン4
FBK1
CH1のプリアンプ・フィードバック・ピン。
ピン5
PAI1
CH1のプリアンプ正入力。
ピン6
COM1
CH1のシグナル・グラウンド。正電源に接続するとプリアンプ1はシャットダウンします。
ピン7
COM2
CH2のシグナル・グラウンド。正電源に接続するとプリアンプ2はシャットダウンします。
ピン8
PAI2
CH2のプリアンプ正入力。
ピン9
FBK2
CH2のプリアンプ・フィードバック・ピン。
ピン10
PAO2
CH2のプリアンプ出力。
ピン11
+DSX2
CH2のDSX2への正信号入力。
ピン12
−DSX2
CH2のDSX2への負信号入力。
ピン13
VGN2
CH2のゲイン・コントロール入力、およびパワーダウン・ピン。グラウンド接続でデバイスはオフ、そうで
ピン14
VOCM
このピンへの入力はOUT1とOUT2での出力のコモン・モードを定義します。
ピン15
OUT2
CH2の信号出力。
ピン16
GND2
グラウンド。
ピン17
VPOS
正電源。
ピン18
VNEG
負電源。
ピン19
VNEG
負電源。
ない場合は正の電圧でゲイン増加。
ピン20
VPOS
正電源。
ピン21
GND1
グラウンド。
ピン22
OUT1
CH1の信号出力。
ピン23
VREF
このピンへ入力すると、両方のチャンネル(2.5 V=20 dB/V、1.67 V=30 dB/V)にゲイン・スケーリングを
ピン24
VGN1
CH1のゲイン・コントロール入力、およびパワーダウン・ピン。グラウンド接続でデバイスはオフ、そうで
かけることになります。
ない場合は正の電圧でゲイン増加。
ピン配列
−4−
REV.0
代表的な特性(チャンネルごと)―AD604
AD604
(特に指定のない限りG(プリアンプ)=+14 dB、VREF=2.5 V(20 dB/Vスケーリング)、f=1 MHz、RL=500Ω、CL=5 pF、TA=+25℃、
VSS=±5 V)
図1.ゲインとVGN
図2. 異なるプリアンプ・ゲインに
対するゲインとVGN
図4.ゲイン・スケーリングとVREF
図5.異なる温度でのゲイン・エラー
とVGN
図7. 異なるゲイン・スケーリングに
対するゲイン・エラーとVGN
REV.0
図3. 異なるゲイン・スケーリングに
対するゲインとVGN
図6. 異なる周波数でのゲイン・エラー
とVGN
図8. ゲイン・マッチ、
VGN1=VGN2=1.0 V
−5−
図9. ゲイン・マッチ、
VGN1=VGN2=2.50 V
AD604―代表的な特性(チャンネルごと)
図10.ACレスポンス
図11.出力オフセットとVN
図12.出力換算ノイズとVGN
図13.入力換算ノイズとVGN
図14.入力換算ノイズと温度
図15.入力換算ノイズと周波数
図16.入力換算ノイズとRSOURCE
図17.雑音指数とRSOURCE
図18.雑音指数とVGN
−6−
REV.0
AD604
REV.0
図19.高調波歪みと周波数
図20.高調波歪みとVGN
図21.高調波歪みとRSOURCE
図22.相互変調歪み
図23.1 dB圧縮とVGN
図24.第3次インターセプトとVGN
図25.大信号パルス応答
図26.小信号パルス応答
図27.パワーアップ/ダウン・レスポンス
−7−
AD604
図28.ゲイン応答
図29.クロストーク(CH1 Vs CH2)と周波数
図30.DSXコモン・モード除去と周波数
図31.入力インピーダンスと周波数
図32.入力バイアス電流と温度
図33.電源電流(1チャンネル)と温度
図34.グループ・ディレイと周波数
−8−
REV.0
AD604
動作原理
2つのチャンネルは同じですから、
チャンネル1の説明だけで全体
AD604は超低ノイズのプリアンプ付きの、デュアル・チャンネル
の動作がわかることになります。VREFとVOCMだけが2つのチャ
の可変ゲイン・アンプです。図35に1チャンネル分のブロック図を
ンネルに共有の入力で、
両方とも通常はacグラウンドですから、
2つ
簡略化して示します。各チャンネルは次のものから成ります。
のチャンネル間の混信は最小限に抑えられます。
もっとも高いゲイ
(1)ゲイン設定抵抗R5、R6、R7付きのプリアンプ
ン・スケーリング精度を得るためには、VREFには低インピーダン
(2)単電源のX-AMP(以降DSX:Differential Single-supply X-AMPと
スの外部電源が必要です。20 dB程度の精度の低いアプリケーショ
ンでは、VREF入力はコンデンサを使ってアースにデカップリング
呼ぶ)。これは次のものから成ります。
(a)精密受動減衰器(差動ラダー)
できます。このモードではゲイン・スケーリングは+VCCとGNDの
(b)ゲイン・コントロール・ブロック
中間点で決まりますから、供給電圧を+5 Vに制御するよう注意が
(c)VOCMバッファ(電源分割用抵抗R3、R4付き)
必要です。VREFピンに対する入力抵抗は10 kΩ±20%です。
1
(d)アクティブフィードバック・アンプ(AFA)
(ゲイン設定用
AD604のDSX部は単電源回路で、この回路の部分の中間点のdcレ
ベルを確立するためにVCOMピンを使用します。VCOMには供給
抵抗R1、R2付き)
プリアンプはDSXが単電源+5 Vを使用している間、
±5 V電源で
電圧(+5V、GND)の中間点を位置決めするために、アースにデ
動作します。AD604のdBリニアゲインの応答性は一般的に式1で表
カップリングする外部コンデンサだけが必要ですが、
出力のdcレベ
されます。
ルが重要なユーザーの場合は(AD9050の例はアプリケーションの
G(dB)=(ゲイン・スケーリング(dB/V))×
(ゲイン・コントロール(V))+
章を参照)
、VOCMは規定値に設定できます。VOCMピンに対する
入力抵抗は45 kΩ±20%です。
((プリアンプ・ゲイン(dB))−19 dB) (1)
各チャンネルはユーザーが設定するプリアンプ・ゲインにした
がって0 dB∼+48.8 dBから+6 dB∼+54.4 dBのゲインを供給しま
す。
ゲインレンジの上下端ではゲインエラーが増加しますが中央の
40 dBの範囲では完全にdBリニアな特性を持っています。
プリアン
プのゲインは通常+14 dBまたは+20 dBですが、
1個の外部抵抗
(詳
プリアンプ
次に述べる単電源のDSX(+5 V電源で2.5±2 V)により、14 dB
のゲイン設定ではプリアンプの最大入力電圧は±400 mV、
あるいは
20 dBのゲイン設定では±200 mVに制限されています。
プリアンプのゲインは+14 dBまたは+20 dBにプログラムされ
細はプリアンプの章を参照)を使って中間の値に設定されます。
ます。これはFBK1をPAO1(+14 dB)に接続するか、あるいはノー
DSXのゲインは−14 dB∼+34.4 dBまで変化でき、これはゲイン・
ドFBK1(+20 dB)をオープンのままにしておくかのいずれかに
コントロール電圧(VGN)で設定されます。VREF入力はゲイン・ス
よって行います。この2種類の設定はオンチップ抵抗の比で設定す
ケールを確立し、
2.5 V∼1.25 VのVREF電圧に対して有用なゲイン・
るため、非常に正確です。中間ゲインはすべて式2および3にした
スケーリング・レンジは20 dB/V∼40 dB/Vです。たとえばプリア
がってPAO1とFBK1の間に適当な抵抗値を接続することで得られ
ンプ・ゲインが+14 dBに設定され、VREFを2.50 Vに設定した場合
ます。
(20 dB/Vのゲイン・スケールを得るために)、ゲインの式は次のよ
うに簡単になります。
VOUT (R7‖REXT)+R5+R6
G=――=―――――――――――
VIN
R6
(2)
[R6×G−(R5+R6)]×R7
REXT=―――――――――――――
R7−(R6×G)+(R5+R6)
(3)
G(dB)=(20(dB/V))×(VGN(V))−5 dB
ここでユニポーラ・ゲイン・コントロール(VGN)を定格動作範
囲内0.25 V∼2.65 Vの電圧(20 dB/Vのゲイン・スケーリングに対し
て)
に設定することで希望のゲイン値が得られます。ゲインは0.1 V
∼2.9 Vの全ゲイン・コントロール電圧レンジに対して単調で、
最大
ゲインはVGNが2.9 Vのときです。
図35.AD604の1チャンネルブロック図
脚注1: アクティブ・フィードバック・アンプについてはAD830のデータ・シー
トを参照してください。AD830はこのアイデアを実際に製品化したもの
です。
REV.0
−9−
AD604
内部抵抗には±20%の絶対許容範囲がありますから、
REXTが30Ω
AD604を最高の仕様で実現するためには、
電源とアースの管理は
の場合、ゲインは最大0.33 dBのエラー状態となります。ここでREXT
大変重要です。必要なノイズ特性を得るため低抵抗なので、大きな
は正確であると仮定します。
動電流が流れます。問題の大半は、DSXを含め全入力換算ノイズを
プリアンプのゲインがどのように+14 dB、+17.5 dB、+20 dBに
0.8 nV/√Hzに抑えるためにプリアンプのゲイン設定抵抗が非常に低
設定されるかを図36に示します。AD604の1チャンネルのゲイン・
いことに関係しています。
その結果として流れる大きな動電流は信
レンジは、プリアンプが+14 dBに設定されると0 dB∼+48 dB(図
号レベルが大きい場合であっても性能を維持するために慎重に取り
36a)、プリアンプ・ゲインが+17.5 dBだと3.5 dB∼+51.5 dB(図
扱わなければなりません。
グラウンド・リファレンスの入力と同様に、この大容量の動電流
36b)、一番高いプリアンプ・ゲイン+20 dBだと6 dB∼54 dB(図
に適応するためにプリアンプはデュアルの±5 V電源で動作されま
36c)となりなす。
す。この結果、プリアンプの出力がグラウンド・リファレンスにも
なり、これにはコモン・モードのレベル・シフトを単電源DSXにす
る必要があります。PAO1と+DSX、−DSXとアースにおのおの接
続された2個の外部カップリング・コンデンサ(図35のC1、C2)が
この機能を果たします(ACカップリングの章を参照)
。されにこの
a.プリアンプ・ゲイン=14 dB
コンデンサはプリアンプが原因のオフセットもすべて取り除きま
す。DSXの入力側において1 mVのオフセットはゲイン制御電圧が
一番高いときに+34.4 dB(x52.5)
増幅され、これは出力側の52.5mV
と同じであることにも注意してください。従ってACカップリング
はオフセットによって出力信号レンジが劣化しないようにするため
に必要です。
b.プリアンプ・ゲイン=17.5 dB
プリアンプのゲインを設定するための内部フィードバック抵抗
は非常に小さいですから(通常8Ω∼32Ω)、ピンCOM1の“アース”
接続で1Ω増えたとしても(これは入力のコモン・モード基準とし
て働きます)、ゲイン精度とノイズ性能は著しく低下します。この
ノードは非常に敏感ですから、アース・インピーダンスをなるべく
c.プリアンプ・ゲイン=20 dB
小さくするには十分注意してください。COM1への接続はすべてで
図36.プリアンプのゲインはプログラム可能
きるだけ短くしてください。
ゲイン設定用抵抗を含むプリアンプのノイズ性能は0.71 nV/√Hz
プリアンプ・ゲインが+14 dBの場合、プリアンプの−3 dBとい
および3 pA/√Hzです。合計入力換算電圧ノイズの大部分はフィー
う小信号の帯域幅は130 MHzで、ゲインが一番高い場合(+20 dB)
ドバック抵抗によるものであることに注意してください。R5とR6
帯域幅は半分の65 MHzまで減少します。上に述べた3個のプリアン
を並列にして得られる同等なノイズ抵抗は定格6.4Ωで、
合計入力リ
プ・ゲインに対するac応答を図37に示します。40ΩのREXTに対する
ファレンス電圧ノイズは0.33 nV/√Hzとなります。入力リファレン
ゲインは17.5 dBでなければなりませんが、
内部抵抗と外部抵抗の不
ス電圧ノイズは大部分0.63 nV/√Hzのアンプからくるものです。電
一致によってこの特殊なプリアンプに対する実際のゲインは17.7
流ノイズはゲインと無関係で、
プリアンプの入力段内のバイアス電
dBとなることに注意してください。AD604(プリアンプとDSX)の
流(3 pA/√Hz)にのみ依存します。
プリアンプは40Ω(定格フィードバック抵抗)とそれに続くDSX
1個の独立したチャンネルの−3 dBという小信号の帯域幅は40 MHz
で、ゲインとは無関係です。
のラダー負荷175Ωを低い歪みで駆動します。たとえば10 MHz、出
力側±1 Vで低い(25Ω)電源抵抗で駆動する場合、プリアンプの第
二、第三の高調波歪みは−45 dB未満です。
48 dB以上のゲイン・レンジが必要な場合は、AD604の2つのチャ
ンネルをカスケードに接続できます。
プリアンプには限られた入力
信号レンジしかなく、また全電源(220 mW)の半分(120 mW)以上
を消費し、
さらに超低ノイズは最初のチャンネルの後では必要あり
ませんから、
そのプリアンプだけを無効にする電源遮断機構が組み
込まれています。プリアンプを電源遮断するのには、COM1 と
COM2ピンの両方あるいはいずれかを正電源に接続します。
DSXは
影響を受けず、前と同じように使用できます(詳細はアプリケー
ションの章を参照)。
図37.図36のプリアンプ・ゲインのAC応答
− 10 −
REV.0
AD604
+DSXと−DSXの間にかかる差動信号によってMIDに電流は流れな
くなりますが、
他方の入力がacアースされている間に+DSXまたは
−DSXのどちらかの入力が単一終端信号にかかると、
電源が供給す
る電流はMIDを経由してVOCMバッファに流れるようになります。
175Ωというラダー抵抗値はプリアンプの負荷駆動能力と抵抗の
ノイズ増加分のバランスをうまくとるように選定されました。XAMPのアーキテクチャの特徴の1つに、出力換算ノイズがほとんど
のゲイン・レンジにおいてゲインに対して一定であるということが
あります。これは図39にあるように、入力したところから少ししか
離れていないタップはすべて抵抗値が同じであるということから容
易に説明がつきます。各タップにかかる抵抗値は54.4Ωで、ジョン
ソン・ノイズ・スペクトル密度で0.95 nV√Hzとなります。減衰器は
図38.プリアンプのみの電源遮断
2個ありますから、ラダー・ネットワークによる全体のノイズお増
加分は√2 x 0.95 nV/√Hzすなわち1.34 nV√Hzで、全DSXのノイズの
差動ラダー(減衰器)
大部分です。残りのDSX回路コンポーネントは別の1.20 nV/√Hzを
DSXの固定ゲイン・アンプの前にある減衰器は、未調整の入力抵
抗が単一終端で175Ωまたは差動の350Ωの差動7段のR-1.5R抵抗性
生成し、
これによって減衰器と合わせて合計DSX入力換算ノイズ1.8
nV/√Hzが生成されます。
ラダー・ネットワークです。ラダー・ネットワークの入力側に入る
信号(図39)はタップあたり6.908 dB減衰します。このように、最初
ACカップリング
のタップでの減衰は0 dB、2番目は13.816 dBと続き、最後は48.356
すでに述べたようにAD604のDSX部分は1つの単電源回路ですか
dBとなります。タップ・ポイント間を連続的に内挿できる当社独
ら、グラウンド・ベースの信号に適合するように入力はACカップ
自の回路技術が使われていますので、
その結果0 dB∼−48.36 dBま
リングする必要があります。図35にある外部コンデンサC1とC2は、
で連続的に減衰していきます。ラダー・ネットワークと内挿メカニ
グラウンド換算のプリアンプ出力をグラウンドからVOCM(定格
ズムとを合わせて、
電圧制御された電位差計と見なすことができま
2.5 V)が生成するdc値までレベル・シフトします。C1とC2、各DSX
す。
入力
(+DSXと−DSX)
にかかる175Ωは、
C1とC2用に選択される値
DSXは単電源回路ですから、
入力に対してバイアスをかける何ら
に依存するコーナー周波数を持ったハイパス・フィルタとして動作
かの方法がなくてはなりません。MIDとVOCMバッファはこの機
します。たとえばC1とC2が0.1μFの場合、DSXの差動ラダーの各側
能を行います。内部バイアスがない場合は、ユーザーは外部的に入
面にある175Ωの入力抵抗と合わせて、−3 dBのハイパス・コー
力にdcバイアスをかけねばなりません。注意深く行わないと、バイ
ナーが9.1 kHzで生成されます。
アス回路が余計なノイズやオフセットを発生します。
内部バイアス
AD604の出力をアース基準にする必要である場合は、レベル・シ
をかける方式ではユーザーはこの仕事から開放され、
信号をDSXに
フトするために別のACカプリングコンデンサが必要です。このコ
acカップリングするだけでよくなります。
差動でドライブされた場
ンデンサはDSXによって発生するdcオフセットも取り除きます。
合は、
DSXへの入力はまだ完全に差動のままであることを再確認し
500Ωの定格負荷と0.1μFのカップリング・コンデンサを使うと、
てください。すなわち+DSXと−DSXのピンでは同じ信号ですが、
このコンデンサによってハイパス・フィルタは−3 dBのコーナー周
極性は反対です。
(差動入力VGAアプリケーションを参照)
。ドライ
波数(約3.2 kHz)で生成されます。
バから見えるように、変わったものは負荷です。各入力が単一終端
この全部で3個のカップリング・コンデンサの選択基準はアプリ
でドライブされた場合は負荷は175Ωですが、
差動の場合は350Ωで
ケーションに依ります。これらはシステム内の低周波ノイズを抑え
す。これはラダー・ネットワークで、ちょうど2つの175Ωの抵抗が
るのに使える一方で、対象の入力信号は減衰なしに通せなくてはな
M I D ポ イ ン ト を 中 心 に 上 下 に 接 続 さ れ 、V O C M バ ッ フ ァ
りません。
でバイアスをかけたものと考えれば、容易に説明がつきます。
図39.R-1.5Rデュアル・ラダー・ネットワーク
REV.0
− 11 −
AD604
ゲイン・コントロール・インタフェース
アクティブ・フィードバック・アンプ(固定ゲイン・アンプ)
ゲイン・コントロール・インタフェースはピンVGN1のところで
単電源動作およびDSXの完全な差動入力を実現するために、アク
約2 MΩの入力抵抗、および2.5 V∼1.25 VのVREF入力電圧に対し
ティブ・フィードバック・アンプ(AFA)が利用されます。AFAは
て20 dB/V∼40 dB/Vのゲイン・スケール・ファクタを提供します。
基本的には2個のgmステージがあるオペアンプで、片方のステージ
ゲインは中心の40 dBのゲイン・レンジに対してはdBリニアで、こ
はフィードバック・パスで使われ(したがってこの名前が付いてい
れは20 dB/Vスケールに対してはVGNは0.4 Vから2.4 V、
40 dB/Vス
ます)、もう一方は差動入力として使われます。差動入力はオープ
ケールに対して0.2 V∼1.2 Vです。図40に示すのは定格のプリアン
ン・ループのgmステージであり、通常の入力信号レンジに対してき
プのゲインが14 dBの場合の理想的なゲイン曲線で、次の計算式で
わめて直線的である必要があることに注意してください。
この設計
求められます。
では減衰器の電圧を検出するgmステージは分布されていて、
たとえ
G(20 dB/V)=20×VGN−5、VREF=2.500 V
G(30 dB/V)=30×VGN−5、VREF=1.666 V
(4)
ばラダー・ネットワークのタップ数と同じだけのgmステージがあり
(5)
ます。その中のほんのわずかだけがゲイン・コントロール電圧にし
G(40 dB/V)=40×VGN−5、VREF=1.250 V
(6)
たがって一度にオンします。
AFAの入力(G1)の1つは完全に差動ですから、
AFAは差動入力構
造の生成が可能で、この入力は分布されたgm ステージから成りま
す。2番目の入力(G2)はフィードバックに使われます。G1の出力
は減衰器のタップ上で検出される電圧のある関数で、
それは高ゲイ
ンのアンプ(A0)に入力されるものです。負のフィードバックであ
るため、
高ゲインのアンプに達する差動入力はゼロでなければなら
ず、このことはG2への差動入力電圧とgm2の積(G2の相互コンダク
タンス)と、G1への差動入力電圧とgm1の積(G1の相互コンダクタ
ンス)は等しくなければならないことを意味します。したがって
AFAの全ゲイン機能は、
VOUT
gm1
R1+R2
―――=―――×――――
VATTEN
gm2
R2
(8)
ここで、VOUTは出力電圧、
VATTENは減衰器で検出される実効電圧、
(R1+R2)/R2=42、gm1/gm2=1.25、よって全ゲインは52.5(34.4 dB)
となります。
図40.理想的なゲイン曲線とVREF
AFAにはそれ以外の特徴もあります。
(1)ラダー・ネットワーク
これらの方程式からすべてのゲイン曲線は−5 dBの点で交差し、
に対する正負の入力を切り替えることにより信号を反転。
(2)2番
プリアンプ・ゲインが+20 dBに設定されている場合は6 dB高く
目の入力信号としてDSX1入力を使う可能性。
(3)2個のプリアンプ
なって+1 dBの点で、プリアンプが使われていない場合は14 dB下
と1個のDSX(もう1個のDSXは依然単独で使用)が使われた場合の
の−19 dBの点で交差することがわかります。中央の直線部分の外
完全差動の高インピーダンス入力。
(4)DSXコモン・モード電圧の
側ではゲインは理想的な制御法則からずれ始めますが、
それでも8.4
独立制御。通常の動作条件ではデカップリング・コンデンサをピン
dBのレンジが使用可能です。式7を使うと与えられたゲイン・ス
VOCMにつなげばよく、この場合DSXのコモン・モード電圧は供給
ケーリングに対してVREFを計算できます。
2.500 V×20 dB/V
VREF =―――――――――
ゲイン・スケール
電圧の半分です。こうして最高の信号スイングが可能になります。
(7)
使用可能なゲイン・コントロール電圧レンジは20 dB/Vスケール
に対して0.1 V∼2.9 V、40 dB/Vスケールに対して0.1 V∼1.45 Vで
それにもかかわらずコモン・モード電圧はVOCMに直接電圧をか
けて上下にシフトできます。また、別の信号入力として使うことも
できます。唯一の制限はVOCMバッファのスルー・レートが低い
ことです。
す。0.1 V未満のVGN電圧はゲイン・コントロールには使われませ
出力信号のdcレベルが重要でない場合は、通常もう1つのカップ
ん。なぜなら50 mV未満ではチャンネル(プリアンプとDSX)はパ
リング・コンデンサをDSXの出力側で使用します。これは再度レベ
ワーダウンするからです。
この機能は電力を節約すると同時に信号
ル・シフティングのために行われ、DSXで生成されたあらゆるdcオ
をゲート・オフするために使うことができます。パワーがダウンし
フセットを除去するために行われます(ACカップリングの項を参
たチャンネルに必要な電源電流は1.9 mA、デバイスにパワーをオ
照)。
ン・オフするのに必要な応答時間は1μs未満です。
− 12 −
REV.0
AD604
アプリケーション
ここにあるように、最高の性能を実現するために出力はACカッ
図41にあるようなもっとも基本的な回路をみると、
AD604の1個の
プリングされます。AD9050に接続する場合は、AD9050と同じ3.3 V
チャンネルの接続方式がわかります。
信号はピン5に入力されます。
のコモン・モード電圧でピンVOCMにバイアスがかかっている限
RGNは通常ゼロで、この場合プリアンプはゲイン5(14 dB)に設定
り、ACカップリングは取り除けます(図50参照)。
されます。ピンFBK1がオープンの場合、プリアンプはゲイン10(20
40 dB/V∼20 dB/Vのゲイン・スケーリングに対して、ピンVREF
dB)に設定され、ゲイン・レンジは6 dB上がります。ピン−DSX1
には1.25 V∼2.5 Vの電圧が必要です。電圧VGNがゲインを制御し
と+DSX1の前にあるACカップリング・コンデンサを、低い方の
ます。この定格動作レンジは20 dB/Vのゲイン・スケーリングに対
カットオフ周波数にしたがって選択します。この例では、0.1μFの
して0.25 V∼2.65 V、
40 dB/Vのスケーリングに対して0.125 V∼1.325
コンデンサを各DSXの入力ピンにある175Ωの抵抗と組み合わせる
Vです。このピンをアースに接続するとチャンネルはパワーダウン
と、−3 dBのハイパス・コーナーが約9.1 kHzで生成されます。カッ
し、出力は停止します。
トオフ周波数の上限はチャンネルの帯域幅で決まり、ここでは40
ピンCOM1はプリアンプのメインのシグナル・グラウンドで、入
MHzです。プリアンプの出力をピン+DSX1の代わりに−DSX1に
力グラウンドにはできるだけ短くして接続する必要があります。
プ
接続すれば信号は簡単に反転することができ、
これはDSXの完全な
リアンプの内部フィードバック抵抗はノイズ対策のために非常に小
差動入力によるものであることに注意してください。
さいですから(定格8Ω∼32Ω)、この部分の抵抗はできる限り小さ
くしておくことが非常に大切です。また、この接続部に余分なイン
ダクタンスがかかると発振が発生する場合があります。
AD604が超低ノイズで帯域幅が広いため、
大容量の動電流が電源
との間に双方向流れます。部品の安定性を保証するために、電源の
デカップリングにはくれぐれも注意してください。
電源ピンのとこ
ろに大容量のコンデンサに小さな高周波用コンデンサを並列に抱か
せたものを接続し、電源のフェライト・ビードと一緒に使えば高周
波での安定性を確実にするのに有効です。
さらに柔軟性を増したいときは、ピンCOM1を使ってプリアンプ
の電源を落とすことができます。COM1がVPに接続されるとDSX
部は独立して使用することはできますが、
プリアンプはオフになり
ます。これはAD604の2つのDSX段をカスケードにしたい場合には
有効です。この場合、最初のDSXのノイズに関する出力信号は大き
図41.1チャンネルの基本配線
く、ここで2 番目のプリアンプを使うと電力の浪費となります
(AGCアンプのアプリケーションの項を参照)。
図42.82 dBのゲイン・レンジでのAGCアンプ
REV.0
− 13 −
AD604
超低ノイズAGCアンプ(82∼96 dBのゲイン・レンジ)
わかるように、
このAGC回路が修正できる25μVrmsの信号はMDS
図42に示すのはAD604を1個使って82 dBのゲイン・レンジで
よりもちょうどわずかに上です。
もちろん信号の帯域幅を制限する
AGCアンプを配置した場合です。まず最初にAD604の2つのチャン
ことで入力感度を上げることはできます。ノイズの帯域幅を1/4に
ネルの接続方法を述べ、
次にループを閉じる検出回路がどう働くか
下げて10 MHzにすると、50Ωの終端抵抗をつけたAGC回路のノイ
を述べます。
ズ・フロアーは3.25μVrms(−96.7 dBm)に下がります。ノイズを
信号はコネクタVINに入力され、信号源は50Ωですから、50Ωの
終端抵抗(R1)が追加されました。ここで信号はチャンネル1のプ
さらに改善するには入力マッチング・ネットワークあるいは入力信
号の変圧器のカップリングが必要です。
次に説明するのはスクエアラ、ローパス・フィルタ、インテグ
リアンプを通って14 dBだけ増幅され(ピンFBK1はPAO1に接続)、
さらにチャンネル1のDSXで加工されます。次に信号はチャンネル
レータから成る検出回路の機能です。ここで、入力信号に関してい
2のDSXに直接入力されます。すでにプリアンプの章で述べたよう
くつか前提を立てることが必要です。
次の検出回路の説明は振幅変
に、2番目のアンプはCOM2ピンを正電源につなぐことによってパ
調RFキャリアを仮定したもので、変調信号の周波数はRF信号に比
ワーダウンします。コンデンサC1とC2はプリアンプから最初の
べて非常に低くなっています。
AD835乗算器はAD604の出力信号を
DSXへ入る信号をレベルシフトし、同時にプリアンプのオフセット
整形することで検出器として機能します。次にあるローパス・フィ
の増加分をすべて取り除きます。同様に、C3とC4は2番目のDSXに
ルタは低周波数のAM情報を通過しながら入力信号周波数の2倍で
対してオフセットをキャンセルする目的があります。
各コンデンサ
RF信号の要素を取り除きます。次のインテグレータはR8とC11で
のセットとそれに対応するDSXの175Ωの入力抵抗を組み合わせる
設定する2 msの時定数でローパス・フィルタによるエラー信号を積
と、約9.1 kHzのコーナー周波数を持つ−3 dBのハイパス・フィル
分し、エラー信号がVSETになるまでVGを変更します。
たとえば検出器へ入る信号が図42にあるようにV1=A★cos(ωt)
タができます。
ピンVOCMは0.1μFのコンデンサでグラウンドにデ
カップリングされ、一方VREFは外部から供給されます。このアプ
の場合、スクエアラの出力は−(V1)2/1 Vです。検出回路にすべて
リケーションでは、
ゲイン・スケールは2.500 Vを入力することで20
マイナス符号があるのは制御ループに負のフィードバックを生成す
dB/Vに設定されています。
各DSXアンプは単電源+5 Vで動作しま
る必要があるからです。実際、
VSETが0 Vを超えると制御ループは正
すから、出力はC6、C7経由でacカップリングされます。出力信号は
のフィードバックを生成します。A★cos(ωt)を2乗すると2つの項
RF OUTのラベルのついたコネクタでモニターできます。
となり、1つがdcでもう1つが2ωです。次のローパス・フィルタは
図のように接続されたAD604に対するゲイン・レンジとゲイン・
−(A)2/2dc項だけを通します。
エラーを図43と図44に示します。ゲイン・レンジは−14 dB∼+82
dBで、RF出力振幅が±400 mV(+2 dBm)に制御されているとき、
有用なレンジは0 dB∼+82 dBです。信号レンジに下限の制限があ
るのはおもにプリアンプの入力能力によるものです。
これはプリア
ンプの前に減衰器を置くことで解決できますが、
超低ノイズのプリ
アンプであるという長所を消すことにもなります。2番目のプリア
ンプは使用しないことに注意してください。なぜなら2番目のプリ
アンプの超低ノイズ性と、それに伴う大きな電力は1番目のDSX段
の後では余計なものになるからです。このアプリケーションでは
COM2ピンを正電源につないで無効にしてあります。
それにもかか
わらず、
必要な場合は2番目のプリアンプを使うことができ、
有用な
ゲイン・レンジは14 dB上がって0 dB∼+96 dBのゲインとなりま
す。
これによって、同じ+2 dBmの出力に対してはわずか−94 dBm
図43.AD604のカスケード・ゲインとVGN
という信号まで測定できます。
最高のゲインを得るためにはノイズを抑えるために入力信号は
できる限り帯域制限がされている必要があります。これは2番目の
プリアンプを使う場合は特に当てはまります。AD604のピンOUT2
での最大の信号が±40 mV(+2 dBm)に制限されている場合では、
AGCのしきい値での入力信号レベルは25μVrms
(−79 dBm)です。
図にある回路のノイズ帯域は約40 MHzで、AD604の入力換算電圧
ノイズ・スペクトル密度0.8 nV/√Hzによって、rmsノイズは40 MHz
の帯域幅で5.05μVとなります。50Ωの終端抵抗と信号発生器の50
Ωの電源抵抗はプリアンプ入力側から見ると組み合わされて25Ωの
実効抵抗となり、40 MHzで4.07μVのrmsノイズを発生します。こ
のチャンネルのノイズ・フロアーはつまりこの2個の主ノイズ源の
rmsの合計で、6.5μVrmsです。
これはこの回路の最小検出可能信号
(MDS)が6.5μVrms(−90.7 dBm)であることを意味します。一般
的な経験則により、測定される信号はノイズ・フロアーよりも約3
倍大きくなければならず、この場合は19.5μVrmsです。これからも
− 14 −
図44.AD604のカスケード・ゲイン・エラーとVGN
REV.0
AD604
ここでこのDC電圧は制御ループによって強制的に電圧VSETと等
しくなります。スクエアラとローパス・フィルタは平均平方の検出
器として機能します。当然ですが、V S E T の値を制御することで
AD835の入力側で電圧V1の振幅を設定することができます。VSETが
−80 mVの場合、AGC出力信号の振幅は±400 mVとなります。
図45に示すのは出力調整レベルが+2 dBm(800 mVp-p)におい
て周波数が1 MHz(実線)および10 MHz(破線)の場合の制御電圧
VGNと入力電力の関係です。AGC限界値はP IN(約−79 dBm)で
はっきりしています。適合でき得る最大の入力電力は約+3 dBmで
した。このレベルではプリアンプのクリッピング(訳注:電気信号
の波形の歪み)のため、出力は歪み始めます。
図46. 96 dBのゲイン・レンジを得るためのAGCアンプの変更
図45.図42の制御電圧と回路の入力電力
すでに述べたように、2番目のプリアンプは図42のAGC回路のレ
ンジを拡張するために使用できます。図46に示すのは96 dBのゲイ
ン・レンジとダイナミック・レンジを得るために図44に対して必要
な変更点です。ゲインは非常に高いので、ノイズをある程度排除す
るために帯域幅を制限する必要があります。さらに、帯域幅を制限
すると高周波数の振動を抑えることになります。追加した部品は
ローパス・フィルタおよびDCブロックとして動作します(C5は最
初のDSXの出力を2.5 Vからアースまでレベル・シフトします)。
フェライト・ビードはおよそ、1 MHzで5Ω、10 MHzで30Ω、100
MHzで70Ωのインピーダンスがあります。ビードはR2とC6とを合
わせ、高い周波数を減衰するローパス・フィルタを生成します。1
MHzで減衰両は約−0.2 dBで、一方10 MHzでは−6 dB、100 MHz
では−28 dBに増えます。ここで信号は、追加した回路に重大な影
響を受けないように約1 MHz未満でなければなりません。
図47に示
してあるのは、
図46の回路で1 MHzにおける制御電圧と入力電力の
関係です。AGCの限界値は−95 dBmのものであることに注意して
ください。出力信号レベルはVSETコネクタに−80 mVをかけること
で800 mVp-pに設定されました。
REV.0
− 15 −
図47. 図46の制御電圧と回路の入力電力
AD604
超低ノイズ、差動入力−差動出力VGA
格負荷を確保するためにR1とR2が挿入されました。この回路の差
高いインピーダンスの差動入力−差動出力可変ゲイン・アンプ
動ゲインは1 Vの制御電圧VGNをかけることで+20 dBになり、2.500
を生成するためのプリアンプとDSXの使用方法を図48に示します。
VのVREFではゲイン・スケーリングは20 dB/V、入力周波数は10
このアプリケーションはDSXに対する差動入力を利用しています。
MHz、差動入力の振幅は100 mVp-pでした。この結果得られる差動
この入力は入力信号の振れを最大にするために、コモン・モード電
出力の振幅は、縦の目盛りを200 mV/divのとき、スコープ写真にあ
圧はアース・レベルである必要があるという意味で、正確には差動
るように1 Vp-pでした。
ではないことを指摘しておかなくてはなりません。
これはおもにプ
リアンプの出力ドライバの限られた出力スウィング能力と関係があ
ります。これは約30Ωの有効負荷を駆動しなければならないため、
±2.2 V前後に留まります。別の入力コモン・モード電圧に適合す
る必要がある場合は、
(図46で行ったように)ACカップリングを推
奨します。この回路の差動ゲイン・レンジは+6 dB∼+54 dBです。
これはAD604の個々のチャンネルよりも6 dB高くなっています。な
ぜなら、
ここでこのDSXの入力は単一終端で駆動したときに比べて
信号が2倍の振幅だからです。
図49.図48でVG=1 VのときのVGAの出力
10ビット、40MSPS A/DのAD9050を駆動する
医療用超音波TGC
A D 6 0 4 は医療用超音波システムに必要なT G C(T i m e G a i n
Control)アンプに理想的な製品で、A/Dコンバータに供給される信
号のダイナミック・レンジを制限するためのものです。図50は典型
的な医療用超音波アプリケーションでAD9050を駆動するAD604を
図示化したものです。
ゲインはAD7226のA/Dコンバータに入力されるデジタル・バイ
トを使って制御され、
コンバータはアナログのゲイン制御信号を出
力します。AD604の出力コモン・モード電圧は内部電圧ディバイダ
を使ってVPOS/2に設定されます。VOCMピンは0.1μFでグラウン
ドにバイパスされます。
図48.超低ノイズ、差動入力−差動出力VGA
DSX出力はフィルタをかけることもでき、
その後歪みとノイズの
少ないAD9631オペアンプでバッファーされます。オペアンプの出
図49は図48の453Ωの2つの抵抗とオシロスコープのプラグイン
力はACカップリングされてAD9050のA/Dコンバータの自己バイア
による50Ωの負荷で形成された−20 dBの減衰器を通った後の出力
ス入力になり、これは40MSPSのサンプリング・レートで10ビット
信号VOUT+とVOUT−の波形です。各出力点において500Ωの定
を出力する能力があります。
− 16 −
REV.0
AD604
図50. 医療用超音波アプリケーション用のTGC回路
図52.ゲイン測定の設定
図51.基本的なテスト基板
REV.0
− 17 −
AD604
外形寸法
サイズはインチと(mm)で示します。
SOパッケージ
プラスチック・DIPパッケージ
(R-24)
(N-24)
SSOPパッケージ
(RS-24)
− 18 −
REV.0
AD604
REV.0
− 19 −
うにやさ
ゅ
い
し
ちき
PRINTED IN JAPAN
AD604
み
る
「この取扱説明書はエコマーク認定の再生紙を使用しています。
」
ど
りをまも
− 20 −
REV.0