超高速4ns 単電源コンパレータ AD8611/AD8612 特長 ピン配置 5Vにおいて4nsの伝播遅延 単電源動作:3∼5V 100MHz入力 ラッチ機能 8ピン狭体SO (SO-8) 高速タイミング クロック再生およびクロック分配 ライン・レシーバ デジタル通信 位相検出器 高速サンプリング リード・チャンネル検出 PCMCIAカード ゼロ交差検出器 高速A/Dコンバータ LT1394およびLT1016の設計のアップグレード AD8611 8ピンMSOP (RM-8) 1 V+ +IN ーIN Vー 8 OUT OUT GND LATCH AD8611 4 5 14ピンTSSOP (RU-14) 概要 AD8611(シングル)AD8612(デュアル)は、ラッチ機能 およびコンプリメンタリ出力を備えた4nsコンパレータで す。 4nsという高速な伝播遅延を備えたAD8611/AD8612は、タイ ミング回路およびライン・レシーバに好適です。立ち上が り/立ち下がりの伝播遅延は近接してマッチしており、温 度変化にも追随します。このマッチした遅延により、出力 と入力のデューティ・サイクルがマッチするため、 AD8611/AD8612はクロック再生に最適です。 AD8611は、LT1016およびLT1394と同じピン出力を持ち、 より低い供給電流とより広いコモン・モード入力範囲を実 現し、負極性の電源レールを備えています。 AD8611/AD8612は、工業用温度範囲(−40∼+85℃)で仕 様規定されています。AD8611は8ピンMSOPおよび8ピン狭 体SO表面実装型パッケージで供給され、AD8612は14ピン TSSOP表面実装型パッケージで供給されます。 OUT OUT GND LATCH V+ +IN ーIN Vー アプリケーション QA 1 14 QB QA 2 13 QB GND 3 12 GND 11 LE B LE A Vー 4 AD8612 上面図 5 (縮尺は異なり 10 ます) V+ IN A ー 6 9 IN B ー IN A+ 7 8 IN B+ アナログ・デバイセズ社が提供する情報は正確で信頼できるものを期していますが、そ の情報の利用または利用したことにより引き起こされる第3者の特許または権利の侵害 に関して、当社はいっさいの責任を負いません。さらに、アナログ・デバイセズ社の特 許または特許の権利の使用を許諾するものでもありません。 REV.0 アナログ・デバイセズ株式会社 本 社/東京都港区海岸1-16-1 電話03 (5402)8400 〒105-6891 ニューピア竹芝サウスタワービル 大阪営業所/大阪市淀川区宮原3-5-36 電話06(6350)6868(代) 〒532-0003 新大阪第二森ビル AD8611/AD8612―仕様 電気的特性(特に指示のない限り、V+=5.0V、V−=VGND=0V、TA=25℃) パラメータ 記号 条件 Min Typ Max 単位 1 7 8 mV mV μV/℃ μA μA μA V dB V/V pF 入力特性 オフセット電圧 VOS −40℃≦TA≦+85℃ オフセット電圧ドリフト 入力バイアス電流 入力オフセット電流 入力コモン・モード電圧範囲 コモン・モード除去比 大信号電圧ゲイン 入力容量 ΔVOS/ΔT IB IB IOS VCM CMRR AVO CIN VCM=0V −40℃≦TA≦+85℃ VCM=0V −6 −7 0.0 55 0V≦VCM≦3.0V RL=10kΩ 4 −4 −4.5 ±4 3.0 85 3,000 3.0 ラッチ・イネーブル入力 ロジック“1”電圧スレショルド ロジック“0”電圧スレショルド ロジック“1”電流 ロジック“0”電流 ラッチ・イネーブル パルス幅 セットアップ・タイム ホールド・タイム VIH VIL IIH IIL 2.0 VLH=3.0V VLL=0.3V −1.0 −5 tPW(E) tS tH 1.65 1.60 −0.3 −2.7 0.8 V V μA μA 3 0.5 0.5 ns ns ns 3.35 3.4 0.25 V V V デジタル出力 ロジック“1”電圧 ロジック“1”電圧 ロジック“0”電圧 VOH VOH VOL IOH=50μA,ΔVIN>250mV IOH=3.2mA,ΔVIN>250mV IOL=3.2mA,ΔVIN>250mV 3.0 2.4 fMAX tP 400mVp-pサイン波 200mVステップ、100mVオーバードライブ1 −40℃≦TA≦+85℃ 100mVステップ、5mVオーバードライブ 100 4.0 5 5 ΔtP 100mVステップ、100mVオーバードライブ1 20∼80% 80∼20% 0.5 2.5 1.1 電源除去比 V+供給電流2 PSRR I+ 4.5V≦V+≦5.5V グラウンド供給電流2 IGND V−供給電流2 I− 0.4 ダイナミック特性 入力周波数 伝播遅延 伝播遅延 差動伝播遅延 (立ち上がり伝播遅延対 立ち下がり伝播遅延) 立ち上がり時間 立ち下がり時間 tP 5.5 2.0 MHz ns ns ns ns ns ns 電源 −40℃≦TA≦+85℃ VO=0V,RL=∞ −40℃≦TA≦+85℃ 55 73 5.7 3.5 2.2 −40℃≦TA≦+85℃ 10 10 7 7 4 5 dB mA mA mA mA mA mA 注 1 設計により保証。 2 コンパレータあたりの値。 仕様は予告なく変更されることがあります。 2 REV.0 AD8611/AD8612 電気的特性(特に指示のない限り、V+=3.0V、V−=VGND=0V、TA=25℃) パラメータ 記号 条件 Min VCM=0V −40℃≦TA≦+85℃ −6 −7 0 55 Typ Max 単位 1 −4.0 −4.5 7 mV μA μA V dB 入力特性 オフセット電圧 入力バイアス電流 入力コモン・モード電圧範囲 コモン・モード除去比 VOS IB IB VCM CMRR 0V≦VCM≦1.0V 1.0 出力特性 出力ハイ電圧 出力ロー電圧 VOH VOL IOH=−3.2mA,VIN>250mV IOL=+3.2mA,VIN>250mV PSRR 2.7V≦V+≦6V VO=0V,RL=∞ 1.21 0.3 V V 電源 電源除去比 供給電流 V+供給電流2 46 I+ dB 4.5 −40℃≦TA≦+85℃ グラウンド供給電流2 IGND 2.5 −40℃≦TA≦+85℃ V−供給電流2 I− 2 −40℃≦TA≦+85℃ 6.5 10 3.5 5.5 3.5 4.8 mA mA mA mA mA mA 6.5 ns ダイナミック特性 伝播遅延 tP 100mVステップ、20mVオーバードライブ3 4.5 注 1 出力ハイ電圧はプルアップ抵抗なしのものです。3Vの動作ではV+に対するプルアップ抵抗を付加すると良いでしょう。 2 コンパレータあたり。 3 設計により保証。 仕様は予告なく変更されることがあります。 絶対最大定格 全アナログ電源電圧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.0V デジタル電源電圧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.0V 入力電圧1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・±4V 差動入力電圧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・±5V パッケージ・タイプ θJA2 θJC 単位 8ピンSO(R) 8ピンMSOP(RM) 14ピンTSSOP(RU) 158 240 240 43 43 43 ℃/W ℃/W ℃/W 注 グラウンドに対する出力短絡期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不定 1 アナログ入力電圧は±4Vまたはアナログ電源電圧のうち低い方です。 2 θJAは最悪条件についての仕様です。即ち、θJAはP-DIPのソケットに実装されたデバイスに ついての仕様であり、また、θJAはSOICおよびTSSOPパッケージを基板にハンダ付けしたデ バイスについての仕様です。 保管温度範囲 R,RU,RMパッケージ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・−65∼+150℃ 動作温度範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・−40∼+85℃ 接合温度範囲 R,RU,RMパッケージ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・−65∼+150℃ ピン温度範囲(ハンダ付け、10秒)・・・・・・・・・・・・・・・・・300℃ オーダー・ガイド モデル 温度範囲 パッケージ パッケージ・オプション ブランド情報 AD8611ARM AD8611AR AD8612ARU −40∼+85℃ −40∼+85℃ −40∼+85℃ 8ピンμSOIC 8ピン・スモール・アウトラインIC 14ピン薄型シュリンク・スモール・アウトライン RM-8 SO-8 RU-14 G1A 注意 ESD(静電放電)の影響を受けやすいデバイスです。4000Vもの高圧の静電気が人体やテスト装置に容易に帯電し、 検知されることなく放電されることがあります。本製品には当社独自のESD保護回路を備えていますが、高エネル ギーの静電放電を受けたデバイスには回復不可能な損傷が発生することがあります。このため、性能低下や機能喪 失を回避するために、適切なESD予防措置をとるようお奨めします。 REV.0 3 WARNING! ESD SENSITIVE DEVICE AD8611/AD8612 8 18 V+ = 5V オーバードライブ>10mV 7 V+ = 5V TA = 25 ℃ オーバードライブ=5mV 14 τPD‐ 12 5 伝播遅延−ns 伝播遅延−ns 6 τPD‐ 4 τPD+ 3 τPD+ 8 6 2 2 1 0 ‐50 0 ‐25 25 50 75 0 100 0 0.5 1.0 温度−℃ 図1 温度による伝播遅延 2.5 8 V+ = 5V TA = 25 ℃ 16 7 TA = 25 ℃ ステップ = 100 mV オーバードライブ> 10mV τPD+ τPD‐ 14 6 伝播遅延−ns 12 伝播遅延−ns 2.0 図4 伝播遅延 対 ソース抵抗 18 τPD+ 10 8 5 τPD‐ 4 3 6 2 4 1 2 0 0 5 10 15 20 0 25 2 3 4 オーバードライブ−mV 5 6 電源電圧−V 図2 伝播遅延 対 オーバードライブ 図5 伝播遅延 対 電源電圧 35 8 V+ = 5V TA = 25℃ オーバードライブ>10mV 7 τPD‐ TA = 25 C ステップ = 100 mV オーバードライブ=50mV 30 6 25 伝播遅延−ns τPD+ 伝播遅延−ns 1.5 ソース抵抗−kΩ 5 4 3 τPD+ 20 15 10 2 5 1 0 τPD‐ 0 0 20 40 60 80 2 3 4 5 6 コモン・モード電圧−V 容量−pF 図3 伝播遅延 対 負荷容量 図6 伝播遅延 対 コモン・モード電圧 4 REV.0 AD8611/AD8612 1.2 0.40 VS = 3V +25℃ 0.35 1.0 +85℃ 40℃ 0.30 負荷電流−V VOS – mV 0.8 VS = 5V 0.6 0.4 40℃ 0.25 0.20 +85℃ 0.15 +25℃ 0.10 0.2 0.05 0 ‐60 ‐40 0 ‐20 20 40 60 80 0 100 6 シンク電流−mA 図7 オフセット電圧 対 温度 図10 各温度の出力ロー電圧 対 負荷電流(シンク) V+ = 5V TA = 25 ℃ 35 4 8 10 12 3.8 +85℃ 3.6 出力ハイ電圧−V 30 25 20 15 3.4 +25℃ 3.2 2.8 5 2.6 1 10 – 40℃ 3.0 10 0 2 4.0 40 ISY+ – mA 0 温度−℃ 2.4 100 0 2 4 6 8 10 12 入力周波数−MHz 負荷電流−mA 図8 供給電流 対 入力周波数 図11 出力ハイ電圧 対 温度による負荷電流(ソース) 2.0 8 V+ = 5V 1.8 7 1.6 VS = 5V 5 1.2 ISY – mA タイミング−ns 6 1.4 1.0 セットアップ時間 0.8 4 VS = 3V 3 0.6 2 0.4 ホールド時間 0.2 0 ‐50 ‐25 0 25 1 50 75 0 100 ‐60 温度−℃ ‐20 0 20 40 60 温度−℃ 図9 各温度のラッチ・セットアップ 対 ホールド・タイム REV.0 ‐40 図12 供給電流 対 温度 5 80 100 AD8611/AD8612 0 V+ = 5V TA = 25℃ ‐0.5 ‐1.0 VIN ‐2.0 電圧 I GND – mA ‐1.5 VS = 3V 0V VOUT ‐2.5 ‐3.0 VS = 5V ‐3.5 VIN トレース– 10mV/DIV VOUT トレース – 1V/DIV ‐4.0 ‐4.5 ‐50 100 50 0 温度−℃ 時間−2ns/DIV 図13 IGND 対 温度 図16 立ち下がりエッジ応答 0 V+ = 5V TA = 25℃ ‐0.5 VOUT ISY – mA ‐1.0 電圧 VS = 3V ‐1.5 VIN VS = 5V ‐2.0 ‐2.5 ‐3.0 ‐60 VIN トレース – 10mV/DIV VOUT トレース– 1V/DIV ‐40 ‐20 0 20 40 60 80 100 温度−℃ 時間−mA 図14 ISY− 対 温度 図17 50MHz,100mV入力サイン波に対する応答 V+ = 5V TA = 25 ℃ 電圧 0V VOUT 0V VIN VIN トレース – 10mV/DIV VOUT トレース – 1V/DIV 時間−2ns/DIV 図15 立ち上がりエッジ応答 6 REV.0 AD8611/AD8612 号は入力電流を増加させコンパレータの動作を遅くすることに注 意してください。 AD8611へのバイアス電流は温度範囲(−40∼+85℃) にわたり 最大7μAです。これはLT1394の最大入力バイアス電流と同じ であり、LT1016の最大IBの半分です。AD8611とLT1394への入 力バイアス電流はコンパレータの入力から流出しますが、これは、 LT1016のバイアス電流が入力に流入するのとは対照的です。コ ンパレータの周囲で低い値の抵抗を用い、低インピーダンスの ソースとすることにより、バイアス電流による電圧シフトは最小化 されます。 AD8611は、グラウンドから200mVおよび正極の電源電圧から 1.5V以内でのスイングが可能です。これは。LT1016の出力電 圧のスイングをわずかに超えます。AD8611では、また、LT1016 よりも消費電流が少なく、代表的な供給電流の25mAに比べて 5mAとなっています。 AD8611の伝播遅延の代表値は4nsですが、LT1394および LT1016の伝播遅延の代表値は、それぞれ、7nsおよび10nsとな っています。 高速性能の最適化 ど のような高 速コンパレータまたはアンプを使う場 合 でも、 AD8611/AD8612から最適な性能を得るためには、適切な設計 とレイアウトが必要です。大きすぎる浮遊容量や不適切なグラウ ンド処理は、高速回路の最高性能を制限することがあります。 回路の伝播遅延を最小化するためには、ソースからコンパレータ の入力への抵抗を最小化する必要があります。ソース抵抗は AD8611/AD8612の等価入力容量とともにR-Cフィルタを形成し、 コン パレータの 入 力 に おける電 圧 上 昇 を 遅 延させ ます。 AD8611/AD8612の入力容量は、入力ピンからグラウンドへの浮 遊容量とともに数pFの等価容量を形成します。表面実装型パッ ケージを用いて入力経路の長さを最小に抑えれば、この容量の 代表値は3∼5pF程度となります。3kΩのソース抵抗と3pFの容 量による時定数は9nsとなり、AD8611/AD8612の伝播遅延であ る4nsより長くなります。 他の重要な配慮事項としては、コンパレータの周囲の電源バイ パス・コンデンサが挙げられます。1μFのバイパス・コンデンサ は、デバイスから0.5インチ以内において各電源ピンとグラウン ドの間に設置してください。また、10nFのセラミック・コンデンサ を1μFのバイパス・コンデンサと並列に、できる限りデバイスの 近くに設置してください。1μFのコンデンサは電源からのすべて の電圧リップルを低減し、10nFのコンデンサは高周波のスイッ チングでのコンパレータに対する電荷を貯蔵します。 また、プリント基板に連続的なグラウンド・プレーンを設けること を推奨します。グラウンド・プレーンは、基板の上に連続的な導 電性のプレーンを設けて、必要な配線とビアにのみ不連続領域 を設けて形成できます。グラウンド・プレーンは、電源のフィード バック経路にインダクタンスの小さな電流フィードバック経路を設 け、 「グラウンド・バウンス」による回路基板全体の異なるグラウン ド・ポイントにおいて電圧が異なることを防止します。適切なグ ラウンド・プレーンは、回路基板上の浮遊容量の影響も最小に抑 えます。 最大入力周波数およびオーバードライブ AD8611は、100MHzまでの入力信号を10mVを下回るオーバー ドライブで正確に比較できます。必要なオーバードライブのレベ ルは周囲温度とともに増加し、100MHzの入力信号に対するオ ーバードライブは50mVまで、周囲温度は+85℃までが推奨され ます。 基本周波数が100MHzを超える入力信号を使用することは、 AD8611が20mAの供給電流を引き込み、出力が一定の状態で 安定しない場合が考えられるため推奨できません。デバイスは、基 本入力周波数が100MHzより下に戻ると仕様の動作に戻ります。 出力負荷における配慮 AD8611は、伝播遅延を増加させることなく10mAまでの出力電 流を発生できます。デバイスの出力は、40を超えるTTLゲートに 接続したり、400Ω未満の負荷抵抗をドライブすることはできま せん。 AD8611の出力は、グラウンドから正極の電源から1V下までの 代表的な出力スイングを持っています。グラウンドに対する出力 負荷抵抗を減少させると、出力電流の増加により最大出力電圧 が低下します。表Iに代表的な出力ハイ電圧とグラウンドに対す る負荷抵抗の関係を示します。 LT1394およびLT1016のアップグレード AD8611のシングル・コンパレータは、LT1394およびLT1016とピ ン・コンパチブルで、双方のコンパレータに比較して伝播遅延の 向上を実現します。両コンパレータは、高性能のAD8611に簡単 に置き換えできますが、いくつかの相違点があるため適正な動 作のためには相違点を調べておく必要があります。 AD8611とLT1016の間の5つの大きな相違点としては、入力電圧 範囲、入力バイアス電流、伝播遅延、出力電圧スイング、消費電 力があります。入力コモン・モード電圧は、コンパレータの入力に おける2つの電圧を平均して得られます。LT1016は、負極の電 源電圧の1.25V上から正極の電圧の1.5V下までの入力電圧範 囲を持っています。AD8611の入力電圧範囲は、負極の電源電 圧からV+の2V以内までの範囲にわたります。入力コモン・モー ド電圧を超える場合には、 「高速性能の最適化」の項のソース抵 抗に留意しながら、入力信号をシフトするか減衰して範囲内にす る必要があります。 表Ⅰ 最大出力電圧対抵抗性負荷 グラウンドに対する V+−VOUT,HI 出力負荷 (typ) 300Ω 500Ω 1kΩ 10kΩ >20kΩ 例:5V単電源からのAD8611の電源は、非反転入力が2.3Vを中 心とする1Vp-pの高周波信号に接続されており、反転入力は固 定された2.5Vのリファレンス電圧に接続されています。AD8611 に対する最悪の条件における入力コモン・モード電圧は2.65V です。これは、このコンパレータに対する3.0Vの入力コモン・モ ード電圧範囲を十分に下回っています。3.0Vを大きく超える信 REV.0 1.5V 1.3V 1.2V 1.1V 1.0V 500Ωから2kΩのプルアップ抵抗を出力のV+に接続することによ り、出力電圧を正極のレールに近づけることができます。しかしなが ら、この構成では出力電圧がスイッチしてから少なくとも20∼50ns を経過しなければ出力電圧は最大値に達しません。これは、プル アップ抵抗および出力と負荷の容量との間のR-Cの時定数による ものです。出力のプルアップ抵抗は伝播遅延を改善しません。 7 AD8611/AD8612 AD8611は、すべての値の容量性負荷について安定しています が、出力に30pFを超える負荷を接続すると、そのチャンネルの 伝播遅延が増加します。500pFを超える容量性負荷は、また、出 力波形に幾分かのリンギングを生じさせます。表IIに伝播遅延 といくつかの負荷容量の値の関係を示します。AD8611のある 出力に負荷を接続しても、他の出力の伝播遅延には影響を与え ません。 コンパレータ 信号 VREF R1 R2 CF 図18 AD8611/AD8612にヒステリシスを 付加する構成 表Ⅱ 伝播遅延 対 容量性負荷 CL τPD立ち上がり τPD立ち下がり <10pF 33pF 100pF 390pF 680pF 3.5ns 5ns 8ns 14.5ns 26ns 3.5ns 5ns 7ns 10ns 15ns ここでは、入力信号はコンパレータの反転入力に直接に接続さ れています。出力はR1とR2を介して非反転入力にフィードバッ クされます。R1のR1+R2に対する比はヒステリシス・ウィンドウ の幅を決定し、VREFはウィンドウの中央、即ち平均的スイッチン グ電圧を設定します。Q出力は、入力電圧がVHIより高いときに ローに切り替わり、式1に示すように入力電圧がVLOより小さくな るまでは再びハイになりません。 R1 = V+ − 1 .5−VREF) VHI ( +VREF R1+R2 ラッチを使ったコンスタントな出力の維持 AD8611/AD8612のラッチ入力は、コンパレータの出力にデータを保 持するために使用できます。ラッチの電圧がハイとなったときに、入力 VLO = VREF × 電圧の変化にかかわりなく出力の電圧は直前の値を保持します。 (1) R2 R1+R2 AD8611/AD8612のセットアップ・タイムは0.5ns、ホールド・タイムは0.5ns です。セットアップ・タイムは、ラッチが適正に機能するためにラッチが ここで、V+は正極の電源電圧です。 起動されるまでの間に入力電圧が有効に保持されなければならない コンデンサCFは任意に付加でき、付加することによりフィードバック・ 最小の時間と定義されます。ホールド・タイムは、出力がラッチされた ネットワークに極を設定できます。これは、高周波でヒステリシスを増 状態となるためにラッチの電圧がハイとなった後に入力が一定の状態 加させる効果を持っており、高周波ノイズの環境で比較的遅い信号 に保持されなければならない時間と定義されます。 を比較する場合に有用です。fPを超える周波数では、ヒステリシス・ ラッチの入力はTTLおよびCMOSコンパチブルであるため、ロジック・ ウィンドウはVHI=V+−1.5VおよびVLO=0Vに近づきます。fPより低い ハイは最低2.0V、ロジック・ローは最高0.8Vです。AD8611/AD8612の 周波数では、スレショルド電圧は式1に示すとおりです。 ラッチ回路には、ビルトインされたヒステリシスは存在しません。 クロック・タイミング再生 入力段およびバイアス電流 コンパレータは、しばしば、デジタル・システムでのクロック・タイミン AD8611およびAD8612は、バイポーラPNPの差動入力を採用してい グ信号の再生に用いられます。高速の矩形波が一定の距離を伝送 ます。これは、入力コモン・モード電圧を正極の電源から2.0V以内か されると、その距離がわずか数10cmでも、浮遊容量およびインダク ら負極の電源電圧の200mV下まで拡張します。このため、5Vの単電 タンスのために歪みを生ずることがあります。レイアウトが悪い場合 源を使用した場合に、入力コモン・モード電圧範囲は−200mV∼ や終端が不適切な場合にも伝送ラインに反射が生じて、信号波形は +3.0Vとなります。入力コモン・モード電圧は、2つの入力の電圧の平 さらに歪みます。高速のコンパレータは、遅延を最小限に保ったまま 均値です。適正な動作のためには、入力コモン・モード電圧は、コモ 歪んだ波形を再生するために用いることができます。 ン・モード電圧範囲の中になければなりません。 図19は、AD8611を用いて65MHz、100mVp-pの歪んだクロック信号 AD8611/AD8612の入力バイアス電流は4μAであり、これはコンパレ を4Vp-pの矩形波に再生する様子を示したものです。下側の波形は ータの各入力から流出する電流の量です。このバイアス電流はハイ AD8611への入力で、上側の波形はコンパレータのQ出力の波形で の入力ではゼロとなり、ローの入力では2倍となりますが、これはバイ す。AD8611は5V単電源を供給されています。 ポーラのコンパレータのすべてに共通する特性です。コンパレータの 周囲に接続する抵抗を選択する際には、大きな抵抗値では入力バイ アス電流によって大きな電圧降下が生じるので、注意が必要です。 VOUT AD8611/AD8612の入力容量は、代表値で3pFです。この測定は、 2V/DIV 5kΩのソース抵抗を入力と直列に挿入して伝播遅延の変化を測定し て行います。 20mV/DIV ヒステリシスの利用 VIN ヒステリシスは、正のフィードバックの負荷によって簡単にコンパレー タに付加できます。コンパレータにヒステリシスを付加すると、ノイズの 多い環境で入力信号がスイッチングのスレショルドに近く、出力が各 状態の間を行き来してしまう好ましくない状況で有利に働きます。図18 に、AD8611/AD8612にヒステリシスを付加するための簡単な構成を 時間 −10ns/DIV 示します。 図19 AD8611を用いたノイズの多いクロック信号の再生 8 REV.0 AD8611/AD8612 5V高速ウィンドウ・コンパレータ ウィンドウ・コンパレータは、信号が2つの固定した電圧の間にあ るときを検出します。図20に示すように、AD8612を使った高速 コンパレータが構成できます。ここでリファレンス・ウィンドウ電圧 は次のように設定されます。 5V 5V VHI 6 V HI V LO R4 = R 3+R 4 3 REV.0 =200mV +5V =200mV VIN<VLO VLO<VIN<VHI VIN>VHI Q1 AD612 9 R4 VLO A2 8 5 14 1kΩ 12 11 500Ω ピン2および13は無接続 図20 高速ウィンドウ・コンパレータ 9 Q2 500Ω AD612 Q1, Q2 = 2N3960 5V R3 表Ⅲ ウィンドウ・コンパレータ出力状態 入力電圧 1kΩ VIN A1コンパレータの出力は入力信号がVHIを超えたときにハイにな り、A2コンパレータの出力はVINがVLOより下になったときだけハ イになります。入力電圧がVHIとVLOの間にあるときは、双方のコ ンパレータの出力がローとなりQ1とQ2の双方をオフにし、VOUT をハイの状態とします。入力信号がリファレンス電圧ウィンドウの 外に出たときには、VOUTはローになります。 スイッチングの遅延を最小化するために、Q1およびQ2には高速 のトランジスタを用いることを推奨します。AD8612とともに2N3960 トランジスタを使用した場合、VINからVOUTへの合計の伝播遅延 を10ns未満にできます。 VOUT 1 A1 7 R2 VOUT 10 4 R2 = R 1+R 2 1kΩ 5V R1 AD8611/AD8612 SPICE Model * AD8611 SPICE Macro-Model Typical Values * 1/2000, Ver.1.0 * TAM /ADSC * * Node assignments * non-inverting input * | inverting input * | | positive supply * | | | * | | | | Latch * | | | | | DGND * | | | | | | Q * | | | | | | | * | | | | | | | QNOT | .SUBCKT AD8611 1 2 99 50 80 51 45 65 negative supply * * INPUT STAGE * * Q1 4 3 5 PIX Q2 6 2 5 PIX IBIAS 99 5 800E-6 RC1 4 50 1E3 RC2 6 50 1E3 CL1 4 6 3E-13 CIN 1 2 3E-12 VCM1 99 7 DC 1.9 D1 EOS 5 7 DX 3 1 POLY(1)(31,98) 1E-3 1 * * Reference Voltages * EREF 98 0 POLY(2)(99,0) (50,0) 0 0.5 0.5 RREF 98 0 100E3 * * CMRR=66dB, ZERO AT 1kHz * ECM1 30 98 POLY(2)(1,98)(2,98) 0 0.5 0.5 RCM1 30 31 10E3 RCM2 31 98 5 CCM1 30 31 15.9E-9 * * Latch Section * 10 REV.0 AD8611/AD8612 RX 80 51 100E3 RB4 60 62 2000 E1 10 98 (4,6) 1 CB3 99 61 0.5E-12 S1 10 11 (80,51) SLATCH1 CB4 62 51 1E-12 R2 11 12 1 RO3 66 64 1 C3 12 98 5.4E-12 D5 64 65 DX E2 13 98 (12,98)1 RO4 67 65 500 R3 12 13 500 EO3 63 51 (20,51) 1 * EO4 97 60 (20,51) 1 * Power Supply Section * * * MODELS GSY1 99 52 POLY(1)(99,50)4E-3-2.6E-4 * GSY2 52 50 POLY(1)(99,50) 3.7E-3 -.6E-3 .MODEL PIX PNP(BF=100,IS=1E-16) RSY 52 51 10 .MODEL NOX NPN(BF=100,VAF=130,IS=1E-14) * .MODEL DX D(IS=1E-14) * GainStageAv=250 fp=100MHz .MODEL SLATCH1 VSWITCH(ROFF=1E6,RON=500, * +VOFF=2.1,VON=1.4) G2 98 20 (12,98) 0.25 .ENDS AD8611 R1 20 98 1000 C1 20 98 10E-13 E3 97 0 (99,0) 1 E4 52 0 (51,0) 1 V1 97 21 DC 0.8 V2 22 52 DC 0.8 D2 20 21 DX D3 22 20 DX * * Q Output * Q3 99 41 46 NOX Q4 47 42 51 NOX RB1 43 41 2000 RB2 40 42 2000 CB1 99 41 0.5E-12 CB2 42 51 1E-12 RO1 46 44 1 D4 44 45 DX RO2 47 45 500 EO1 97 43 (20,51) 1 EO2 40 51 (20,51) 1 * * Q NOT Output * Q5 99 61 66 NOX Q6 67 62 51 NOX RB3 63 61 2000 REV.0 11 AD8611/AD8612 外形寸法 8ピンμSO (RM-8) 8ピン・スモール・アウトラインIC (SO-8) 0.1968 (5.00) 0.1890 (4.80) 0.122 (3.10) 0.114 (2.90) 8 8 5 0.1574 (4.00) 0.1497 (3.80) 1 0.199 (5.05) 0.187 (4.75) 0.122 (3.10) 0.114 (2.90) 1 5 4 0.2440 (6.20) 0.2284 (5.80) 4 ピン1 0.0098 (0.25) 0.0040 (0.10) ピン1 0.0256 (0.65) BSC 0.120 (3.05) 0.112 (2.84) 0.120 (3.05) 0.112 (2.84) 0.018 (0.46) 0.008 (0.20) 33° 0.011 (0.28) 27° 0.003 (0.08) 0.0688 (1.75) 0.0532 (1.35) 0.0500 0.0192 (0.49) 0.0098 (0.25) 実装面 (1.27) 0.0138 (0.35) 0.0075 (0.19) BSC 0.043 (1.09) 0.037 (0.94) 0.006 (0.15) 0.002 (0.05) 実装面 TDS10/2000/1000 サイズはインチと(mm)で示します。 0.0196 (0.50) x 45° 0.0099 (0.25) 8° 0° 0.0500 (1.27) 0.0160 (0.41) 0.028 (0.71) 0.016 (0.41) 14ピン薄型シュリンク・スモール・アウトライン (RU-14) 0.201 (5.10) 0.193 (4.90) 8 1 7 0.256 (6.50) 0.246 (6.25) 0.177 (4.50) 0.169 (4.30) 14 ピン1 0.006 (0.15) 0.002 (0.05) 0.0256 (0.65) BSC 0.0118 (0.30) 0.0075 (0.19) 0.0079 (0.20) 0.0035 (0.090) 8° 0° 0.028 (0.70) 0.020 (0.50) PRINTED IN JAPAN 実装面 0.0433 (1.10) MAX このデータシートはエコマーク認定の再生紙を使用しています。 12 REV.0