日本語参考資料 最新英語アプリケーション・ノートはこちら AN-1192 アプリケーション・ノート AD8338 を使用したデザイン 著者: David Hunter はじめに 低消費電力でダイナミックレンジの広い AD8338 可変ゲイン・ アンプ (VGA) は、デバイスの豊富な機能セットにより多くのソ リューションを提供します。従来、VGA は信号レベルの正規化、 プログラマブルなゲイン・システム、ダイナミックレンジの拡 張、自動ゲイン制御(AGC)などの多くのアプリケーションで使 用されてきました。 このデバイスのコア回路は、GAIN ピン入力を使って設定され る 80 dB の総合ダイナミックレンジを提供します。デザインを 最小構成とする場合、18 mm2 の小さいボード面積でゲイン = 1~ 10,000 の回路を実現することができます。外付け抵抗を使用す るとこのデバイスは市販品として最も柔軟な VGA の 1 つになり、 低入力ノイズ、可変減衰/利得アンプとして機能できる VGA、 または大きな総合ゲインのアンプ機能を提供します。 このアプリケーション・ノートでは、AD8338 のデザインと 様々な状況でのこのデバイスの使い方について説明します。ま た、一般的なデザイン手法、および特別な拡張動作モードにつ いての情報も記載してあります。幾つかのアプリケーション例 も示してあります。 図 1.ブロック図 アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用によって 生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利の使用を明示 的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標は、それぞれの所有 者の財産です。※日本語版資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。 Rev. 0 ©2015 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本 社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話 03(5402)8200 大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー 電話 06(6350)6868 AN-1192 アプリケーション・ノート 目次 はじめに .............................................................................................. 1 AD8338 の出力 ............................................................................... 3 改訂履歴 .............................................................................................. 2 AD8338 に対する入力 ................................................................... 6 デザイン上の考慮事項 ...................................................................... 3 デザイン例: 電圧制御の減衰/利得アンプ .............................. 10 効果的なデザイン .......................................................................... 3 改訂履歴 6/13—Revision 0: Initial Version Rev. 0 - 2/10 - AN-1192 アプリケーション・ノート デザイン上の考慮事項 効果的なデザイン AD8338 を用いた効果的なデザインには、デバイスの長所と短所 を理解することが必要です。デバイスはもともと低消費電力で あるため、バッテリ-・アプリケーションで長い動作時間を提 供し、固定設置のシステムでは低消費電力を実現します。しか しながら AD8338 の特長であるこの低動作電流のために幾つか の制限が生じ、デバイスを最も効果的に使用するためには、こ れらを理解する必要があります。一般に、消費電力のトレード オフは、帯域幅とスルーレートとの間で行われます。 スルーレートと出力振幅の仕様は、デバイスの大信号機能につ いての情報を提供します。規定値では、各出力は 1.5 V のリファ レンス電圧から約 700 mV 変化します。 図 2 に、1.5 V リファレンスを中心に±700 mV の出力振幅を示し ます。2 つの出力の差が実効振幅 ±1.4 V になります (データ・シ ートに規定するように差動で 2.8 V p-p を実現)。 中程度のゲイン (40 dB)での AD8338 の消費電流は 3 mA (typ)で す。したがって、3 V 電源での通常動作では、静止消費電力は僅 か 9 mW です。これを姉妹品である AD8330 の消費電力、5V で 20mA と 比 較 す る と そ の 10% に し か な り ま せ ん 。 た だ し 、 AD8338 は、AD8330 より低速で、1.5 kV/µs のスルーレートも、 150 MHz の−3 dB ポイント動作も持っていません。そのかわり、 AD8330 とは異なり、30 dB 大きいゲインを提供し、デザイン性 能を決める多くの機能が追加されています。このため、AD8338 は注目する信号が 18 MHz より低くかつ振幅が小さいベースバン ドまたは低周波中間周波数 (IF) アプリケーションで最もよく使 用されます。 電源については、このデバイスは 3.0 V~5.0 V で動作しますが、 1.50 V の内蔵リファレンス電圧を使って、電源電圧とは無関係 にデバイスのバイアスを設定しています。これは、AD8338 の信 号経路は電源とは無関係に、3.0 V システムに正規化されること を意味します。 LFCSP-16 パッケージは、この高集積デバイスに対して非常に 小型なソリューションを提供しています。最適な使用には、幾 つかのレイアウト上の考慮が必要です。一般に、次のレイアウ ト考慮事項に注意する必要があります。 • • • • 入力 INMR/INMD と入力 INPR/INPD は同じ長さで近づけて 配置する必要があります。 電源バイパス・コンデンサは、デザイン上可能な限りデバ イス・ピン近くに配置します。 INPD 入力と INMD 入力に外付け抵抗を付けて使用する場合、 INMR 入力と INPR 入力は直接または適切な値の抵抗を介し て短絡して、不安定を防止します。 変調効果を小さくするため GAIN ピンと VAGC ピンの配線 に注意します。 図 2.差動信号とその出力波形の合計振幅 オーバードライブ状態では波形がクリップされるため、振幅情 報が失われて信号の品質が損なわれるます。オーバードライブ 出力の他に注意する必要がある問題は、スルーレートの制限で す。 小信号帯域幅が 18 MHz ですべてのゲインに対して規定されてい ますが、これはこの周波数で差動出力が±1.4 V 変化できること を意味するのではありません。フル帯域幅 18 MHz でシングルエ ンド振幅 0.7 V の出力を期待するものとすると、関数計算は次の ようになります。 𝑉𝑉(𝑡𝑡) = 0.7 sin(2𝜋𝜋18 × 106 𝑡𝑡) 変化率は信号の微分で得られ、 • • • = 2π18 × 106 × 0.7 cos(2π18 × 106 t) (2) dV(t) = 79.17 × 106 V/s (3) t = 0 のとき、変化のピーク・レートは次のようになり、79 V/μs です。 dt これは、AD8338 の性能より 30 V/μs 大きな値です。大振幅の出 力信号に対する最大実効周波数は、次のようになります。 小信号帯域幅 : 18 MHz スルーレート: 50 V/μs 出力ピーク to ピーク振幅: 2.8 V Rev. 0 dV(t) dt AD8338 の出力 AD8338 の最適性能を得るためには、シグナル・チェーンのデザ インを出力から始める必要があります。データ・シートの次の 3 つの重要機能に注意します。 (1) 50V µs f= - 3/10 - = 0.7×2πf 106 50×106 2π0.7 (4) (5) AN-1192 アプリケーション・ノート 式 5 から、大振幅周波数の計算値は約 11.3 MHz になります。図 3 に、周波数に対する大信号出力振幅値のクイック・リファレ ンスを示します。 図 4.2 トーン歪み解析、出力無負荷 図 3.大信号振幅の周波数特性、シングル・エンド 出力に対するその他のデザイン考慮事項は負荷です。ドライバ は周波数に対して低い出力インピーダンスを持ちますが、直線 性性能は 1 kΩ 以下の差動負荷から低下し始めます。 図 4 に、AD8338 の最小負荷での出力 (1.0 kΩ)を示します。ここ では、2 トーン相互変調歪みは妥当な低さです。図 5 に、200 Ω 差動負荷での出力の動作を示します。 図 4 に比較して相互変調歪みが高レベルであることに注意して ください。AD8338 の後段のデバイスが 1 kΩ より小さい入力イ ンピーダンスを持つ場合、AD8138 のようなバッファを使うこと で、この障害を克服することができます。 図 5.2 トーン歪み、差動負荷 = 200 Ω Rev. 0 - 4/10 - AN-1192 アプリケーション・ノート AD8338 のピン配置も、出力ステージで使用する帰還抵抗値を容 易に変更できるようになっています。これは主に、1.50 V の設 定ポイントからの同相モード出力を調整する手段を提供します。 帰還抵抗の値を小さくしたい場合がありますが、値を小さくす ると、出力は比例して小さくなります。これは、内部電流モー ド VGA ブロックが電流出力のために起こります。この電流の最 大振幅はデザインにより固定で、最大出力振幅は帰還抵抗で決 まります。内部帰還抵抗 9.5 kΩ の場合、出力は±0.7 V に制限さ れます。並列に 9.5 kΩ 抵抗を追加接続すると、出力は半分の ±0.35 V に低下します。 デザイン例: AD8130 の駆動 5.0V 5.0V 0.1µF この例は、AD8338 の差動出力をシングルエンド出力へ変換す る際の Mini-Circuits 社製トランス ADT16-6T+についての例です。 多くの RF デザインでは、50 Ω の特性インピーダンスを使用す るため、ADT16-6T+も 50 Ω を中心としてデザインされています。 トランス・アプリケーションの考慮事項を使って注意深くデザ インすると、50 Ω の制限から離れて、他のインピーダンスで使 用することも可能です。 トランスの効果的な使用のためには、トランスのモデル化で使 用する次式を理解する必要があります。 0.1µF 𝑉𝑉2 OUTP 𝑁𝑁2 5.0V 2.5V REF OUTM FB ADR5041 0.1µF 𝑉𝑉 = 𝑁𝑁1 1 (6) 𝑁𝑁 𝑉𝑉2 = 𝑉𝑉1 𝑁𝑁2 AD8130 AD8338 (7) 1 𝐼𝐼2 𝑁𝑁2 = 𝐼𝐼1 𝑁𝑁1 𝐼𝐼2 = 𝐼𝐼1 11509-006 INPR INMR トランスは、Mini-Circuits 社や Coilcraft 社などの多くの製造者が 市販しています。特にフェライト・コアを使用するトランスは、 適切な範囲の帯域幅で優れたインピーダンス整合を提供します。 これに対して、集中定数 LC 回路は非常に狭い範囲の帯域幅で の性能に優れています。 (8) 𝑁𝑁1 (9) 𝑁𝑁2 添字 2 が付いた項は 2 次側(Secondary Stage)の部品を表し、添字 1 が付いた項は 1 次側(Primary Stage)の部品を表します。項 N は、 トランスの対応する側の巻数を表します。 図 6.AD8130 アンプを使用した シンプルな差動/シングルエンド変換ソリューション 最適な直線性を維持して、AD8338 の差動出力をシングルエンド 信号へ変換が必要な場合には、AD8130 のような後段アンプが優 れた選択肢になります。 式 10~式 13 は、理想的なケースでの 1 次側から 2 次側への関係 または逆向きの関係を表します。これらの項を使って、2 次巻 線側から見たインピーダンスを計算します。 𝑍𝑍2 = AD8130 は高速高入力インピーダンスの差動/シングルエンド変 換アンプであり、外付け部品なしで完全なソリューションを提 供します。AD8130 は、6 MΩ の差動入力インピーダンスと 4 MΩ の同相モード入力インピーダンスを持っています。 ただし、幾つかのトレードオフがあります。AD8130 の最小電源 電圧は 4.5 V で、このために全体のデザインは、 5.0 V 電源固有 になってしまいます。AD8130 の出力は、各レールから 1.1 V 内 側の範囲 (1.1 V~3.9 V)に制限されますが、出力でフル信号振幅 2.8 V p-p が実現でき、AD8338 からの差動出力に一致します。 AD8130 のアプリケーションにはリファレンス電圧も必要です。 リファレンス電圧が 2.5 V の中心より外れて設定されると、出力 の実効範囲は小さくなります。 デザイン例: 出力ステージの受動部品結合 消費電力の制限が厳しい場合には、能動素子数を少なくする必 要があります。この場合、ボード面積と部品価格が犠牲になり ますが、非抵抗受動部品が効果的なソリューションを提供しま す。 一般に、受動結合に対してはトランスとインダクタ・コンデン サ (LC 回路)の 2 つのデザイン方法があります。 Z2 = 𝑉𝑉2 𝐼𝐼2 V1 I1 𝑍𝑍2 = 𝑉𝑉1 𝑍𝑍1 = 𝑉𝑉1 ここで、 𝐼𝐼1 = 𝑁𝑁 𝑉𝑉1 𝑁𝑁2 1 𝑁𝑁 𝐼𝐼1 𝑁𝑁1 2 ×� N2 N1 𝑁𝑁 (10) × × �𝑁𝑁2� 1 2 N2 N1 � (11) (12) (13) 𝐼𝐼1 したがって、 𝑁𝑁 𝑍𝑍2 = 𝑍𝑍1 × �𝑁𝑁2� 1 2 (14) 式 14 から、2 次インピーダンスと 1 次インピーダンスの関係は、 巻数比の 2 乗で表されることが分かります。ADT16-6T+ トラン スのデータ・シートでは、インピーダンス比を 16:1 と規定して います。これは巻数比とは異なります。この固有のケースでは、 巻数比 1:4 に対して、1 次インピーダンスが 50 Ω に、2 次インピ ーダンスが 800 Ω(16 倍)に、それぞれなります。 最適な直線性を得るためには、AD8338 出力の負荷を少なくと も 1 kΩ にする必要があります。式 14 から、インピーダンス Z2 を 1.0 kΩ に設定しようとすると、計算によりインピーダンス Z1 は 62.5Ω になります。ただし、Z2 を 1.2 kΩ に設定すると、イン ピーダンス Z1 は 75 Ω になり、これは業界の標準値になります。 トランスが 1 次巻線から 2 次巻線へのエネルギー結合を開始す る前に、デバイスの磁化インダクタンスが、使用できる下側周 波数を設定します。このケースでは、50 Ω システムの場合、デ バイスの結合は 3 dB ポイントの 100 kHz から 70 MHz までにな ります。 Rev. 0 - 5/10 - AN-1192 アプリケーション・ノート このデザインの場合、出力は 75 Ω に設定され、入力は 1.2 kΩ に 設定されています。トランスの 2 次巻線が AD8338 出力に直接接 続されている場合、トランスは 3 dB 結合ポイントより下の周波 数では短絡となります。したがって DC カット用コンデンサが 必要になり、その値はトランスの結合周波数で決定されます。 そのために、トランスの 3 dB ハイパス・コーナー(AD8338 にイ ンターフェースする 2 次側が基準)を計算する必要があります。 結合周波数の変化は 50 Ω を超える負荷の変化の比に比例すると いう簡単な近似を行うことができます。したがって、75 Ω ポー トの新しいインピーダンスは、 75 𝐹𝐹𝐻𝐻𝐻𝐻 = 100𝑘𝑘𝑘𝑘𝑘𝑘 × 50 𝐹𝐹𝐻𝐻𝐻𝐻 = 150𝑘𝑘𝑘𝑘𝑘𝑘 (15) (16) トランスのハイパス 3 dB コーナーの近似値が得られたので、ト ランス結合が実効的に始まるポイントで AC 結合が有効に働く ように出力コンデンサを選択します。シンプルな方法は、注目 するコーナー周波数で約 10 Ω となるように出力コンデンサ値を 選択することです。このケースでは、150 kHz のコーナー周波数 に対して、 1 𝐶𝐶 ≈ 𝜔𝜔𝜔𝜔 𝐶𝐶 ≈ 巻数比の性質から、出力最大信号振幅での 1 次電圧は、 N V1 = N1 V2 2 (20) 信号 V2 は、OUTP と OUTM との差から構成されているため、 1 𝑉𝑉1 = 4 (±0.7 − ∓0.7) 𝑉𝑉1 = ±0.350𝑉𝑉 (21) (22) 式 21 は電圧 V1 を表し、 2 つの信号の差の瞬時値として変化す ることに注意してください。OUTP が正の場合、OUTM は負に なります。OUTP が負の場合、OUTM は正になります。 覚えておくべき重要な性質は、電力はこのインピーダンス変換 で保存されることです。(いいかえると、電圧が増幅されても、 電力は増幅されません)75 Ω 負荷で、4.67 mA のピーク電流が 得られ、 AD8338 出力は 1.2 kΩ の等価負荷に 1.17 mA を供給し ます。 (17) 1 2𝜋𝜋150𝑘𝑘𝑘𝑘𝑘𝑘×10𝛺𝛺 𝐶𝐶 ≈ 0.1𝜇𝜇𝜇𝜇 (18) (19) 図 7.トランスを使用する回路例 これらの技術を 1:1 バラン・トランスを使った回路にも適用する ことができますが、十分低い周波数で磁気結合できる既成品ト ランスを探すことが困難です。 図 8.図 7 に示す短絡からの差動入力信号 (CH2/CH3、青/灰色) からのトランス出力 (CH1、黄色) 図 8 で、各出力は 162 mV の rms 合計出力を発生し、トランス出 力は 40 mV rms になります。 AD8338 に対する入力 間違いなく、AD8338 の入力ステージは他の VGA と比べてユニ ークです。デバイスの入力は、入力のダイナミックレンジ、ノ イズ、帯域幅、電力整合の限界を設定します。入力ステージの デザインに注意すると、デバイスをアプリケーションに合わせ て微調整することができます。 Rev. 0 - 6/10 - AN-1192 アプリケーション・ノート 入力抵抗のゲインに対する影響 50 入力抵抗を選択する際に注意する 2 つ目の問題は、ゲインへの 影響です。データ・シートが式 6 で規定するように、GAIN ピン に加える電圧が 0.1V の場合、最小ゲインは、 40 𝑅𝑅𝐼𝐼𝐼𝐼𝐼𝐼𝐼𝐼𝐼𝐼 � − 26 20 (23) 9.5 kΩ の帰還抵抗を維持し、上の例で 210 Ω の入力抵抗を使用 すると、最小ゲインは、 9500 𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺(𝑑𝑑𝑑𝑑) = 20 × log � 210 � − 26 (25) 𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺(𝑑𝑑𝑑𝑑) = 80 + 7.1 (26) –40 –50 0.1 CALCULATED MEASURED 0.3 0.5 0.7 0.9 VGAIN VOLTAGE (V) 𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺(𝑑𝑑𝑑𝑑) = 87.1𝑑𝑑𝑑𝑑 1.1 (27) 図 9 に、 210 Ω の入力抵抗を使用した場合の、測定ゲインと計 算ゲインを示します。 100 80 60 20 0.5 1.0 11509-009 CALCULATED MEASURED VGAIN VOLTAGE (V) 図 10 では、式 23 から得られる最小ゲインが −38.7 dB の減衰に なります。この実際の意味は、AD8338 を減衰器として設定する と、電源レールより大きい入力信号を処理することができるこ とです。図 10 を得るために行った測定では、10 V p-p の入力信 号を 41.2 kΩ の入力抵抗に入力しました。理論上、内部トランス コンダクタンス・ステージの 3 mA の入力電流制限値を超えない 限り、非常に高い入力電圧を使うことができます。 ゲインは入力抵抗の関数として変化するため、設計に注意が必 要です。低インピーダンス・ソースまたは受動 LC フィルタに よりフィルタが短絡状態として機能する場合、式 23 はゲインが 非常に大きくなることを示しています。AD8338 を駆動するソー スのソース抵抗が 1 Ω とすると、最小ゲインは 53 dB になりま す。信号がない場合、内部デバイス・ノイズは 53 dB だけ増幅 されます。 40 0 図 10.VGAIN 対ゲイン、測定値と計算値、入力抵抗 = 41.2 kΩ 図 9.VGAIN 対ゲイン、測定値と計算値、入力抵抗 = 210 Ω 同様に、このゲイン調整は大きな入力抵抗値にも有効であり、 図 10 に示す減衰/利得 VGA 特性が得られます。この例では、 210 Ω の入力抵抗を 41.2 kΩ の抵抗で置き換えています。 入力ノイズに敏感なシステムの場合、注目する周波数に対して 入力が特定の抵抗値になるような方法で、入力を整形する必要 があります。注目する周波数の外側では、入力回路のインピー ダンスは大きな値になる必要があります。図 11 に、この動作を 得るための一般的な構成を示します。 RIN LIN CIN RIN LIN CIN OUTP AD8338 OUTM 11509-011 GAIN (dB) –10 –30 GAIN ピンに加える電圧を 1.1 V とすると、最大ゲインは、 0 0 –20 (24) 𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺(𝑑𝑑𝑑𝑑) = 7.1𝑑𝑑𝑑𝑑 10 11509-010 𝑅𝑅𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹 GAIN (dB) 𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺𝐺(𝑑𝑑𝑑𝑑) = 20 × log � 30 図 11.帯域外周波数で高入力インピーダンスを実現し、帯域内 周波数で固定の低入力インピーダンスを得るための入力調整 Rev. 0 - 7/10 - AN-1192 アプリケーション・ノート 同じ手順を繰り返して、CIN 値を求めます。 デザイン例 この設計例では、10 MHz の IF 周波数で AD8338 をレシーバ・シ グナル・チェーンで使用するものとし、システム・インピーダ ンスは 50 Ω でシングルエンド (不平衡)とします。注目信号の帯 域幅は 2 MHz 幅と想定します。 𝑋𝑋𝐶𝐶 = 5 × 2𝑅𝑅𝐼𝐼𝐼𝐼 𝑋𝑋𝐶𝐶 = 250𝛺𝛺 C = 2π107×250Ω (41) 𝐶𝐶 = 63.7𝑝𝑝𝑝𝑝 (42) 30 25 20 15 GAIN (dB) 𝑅𝑅𝐼𝐼𝐼𝐼 = 25𝛺𝛺 (40) 1 トランスを使うと、シングルエンド・システムを AD8338 に容 易に結合することができます。ここでは、注目周波数で、LC 回 路の等価インピーダンスが 0Ω (短絡)になります。見えるインピ ーダンスは 2 本の RIN 抵抗だけになります。AD8338 入力の内部 ノードは低インピーダンスとして現れるため、トランスから見 えるインピーダンスは 2 RIN になります。最大電力変換(伝送電 力の最適化した値)では、この入力インピーダンスは 50 Ω にし なければなりません。 2𝑅𝑅𝐼𝐼𝐼𝐼 = 50𝛺𝛺 (39) (28) (29) 10 5 RIN = 25 Ω で、式 23 から計算した最小システム・ゲインは、 25 0 � − 26 = 25.6𝑑𝑑𝑑𝑑 (30) –5 AD8338 での不安定性の要因を回避するため、使用しないときは INPR 入力と INMR 入力に DC パスが必要です。これにより、帯 域外信号に対してアンプから見たインピーダンスが設定される ため、値 191 kΩ が使用されます。この値は INMR から INPR へ の差動で使用されるため、シングルエンド・ゲインは、この値 の 1/2(95.5 kΩ)で計算されます。したがって、帯域外信号に対し て、最小ゲインは、 1 𝑄𝑄 = 𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵𝐵ℎ 300 (31) (32) デザイン仕様から、中心周波数は 10 MHz で、帯域幅は 2 MHz となります。そうすると、Q は、 𝑄𝑄 = 107 2×106 𝑋𝑋𝐿𝐿 = 5 × 2𝑅𝑅𝐼𝐼𝐼𝐼 (35) 𝐿𝐿 ≈ 3.97𝜇𝜇𝜇𝜇 100 50 (36) (37) (38) 10 FREQUENCY (MHz) 100 図 13.実効入力インピーダンス (シングルエンド) の周波数特性 図 12 に示すように、AD8338 の実効最小ゲインは注目信号に対 して高く、注目帯域外信号に対しては小さくなります。さらに、 図 13 に、結合トランスから見た実効インピーダンスを示します。 このインピーダンスが大きくなると、結合される着信エネルギ ーが小さくなり、不要信号の除去比が向上します。 この実験に対して実際のフィルタを構築しました。帯域幅が 1 MHz であることを測定し、Q = 10 が得られました。RIN は 25 Ω です。式 35~式 38 より、L と C の値は、 • • Rev. 0 150 1 Q を求めたら、抵抗 RIN に対する LIN 部品と CIN 部品のインピー ダンスはすぐに計算できます。 𝐿𝐿 = 2𝜋𝜋107 200 0 (34) 250 250 (33) 𝑄𝑄 = 5 𝑋𝑋𝐿𝐿 = 250𝛺𝛺 100 図 12.L = 3.97 µH、C = 63.7 pF を使った最小ゲインの計算 注目信号が結合され、かつ注目帯域外信号が結合されないよう に入力を整形するときは、図 11 に示す LIN と CIN の値の選択に は注意が必要です。これらの値を選択する 1 つの方法は、式 32 で与えられる共振回路の Q を求めることです。 𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶 10 FREQUENCY (MHz) EQUIVALENT INPUT IMPEDANCE (Ω) 9500 20 log �95500� − 26 = −46𝑑𝑑𝑑𝑑 –10 11509-012 9500 11509-013 20 log � - 8/10 - L = 8 μH C = 30 pF AN-1192 アプリケーション・ノート 図 14 に、これらの部品の測定した応答を示します。挿入損失が 2.6 dB あることに注意してください。 フィルタに入力した後、これら 2 つのトーンをゲイン = +0 dB (VGAIN = 0.10 V)の AD8338 に入力しました。 図 14. フィルタの周波数応答 図 16.AD8338 の後段の信号スペクトル VGAIN = 0.1 V 2 つの正弦波トーンを電力カプラーに入力し、カプラーからの 出力を図 15 に示す信号レベルで 50 Ω 終端に供給しました。こ の信号から 20 mV 振幅の合計出力が得られました。 図 16 に、AD8338 の無負荷出力を示します。不要信号が 18.8 dB だけ減衰され、注目信号は 11.3 dB 増幅されていることに注意し てください。これは、入力フィルタにより整形されたゲインを 示しています。 図 15.2 つのトーンのスペクトル F1 (1 MHz) のレベルは−32.8 dB F2 (10 MHz) のレベルは −30.7 dB Rev. 0 図 17. AD8338 の出力 VGAIN = 0.27 (ゲイン = +13.5 dB) - 9/10 - AN-1192 アプリケーション・ノート 3.0V ゲインが大きくなると結果は続きます。ここで、ゲインは+13.5 dB に設定されています。帯域内信号の実効ゲインは+21.3 dB で、 帯域外信号は 6.1 dB 減衰しています。測定されたゲインからの 目標ゲインのずれは、フィルタ、入力、トランスでの損失の関 数になっています。インダクタとコンデンサの等価直列抵抗 (ESR)は周波数の関数であり、システム全体の動作にも影響を与 えます。高度な性能が必要な場合は、シルバー・マイカコンデ ンサの使用が推奨されます。この応答に対するもう 1 つの改善 策は、この回路の直列 LC 素子の前に接続するシンプルなフィル タから得ることができます。 デザイン例: 電圧制御の減衰/利得アンプ 図 18 に、図 10 のデータを得るために使用した減衰/利得アン プ・デザインの回路図を示します。 このアンプは、減衰 −38.7 dB に対する GAIN = 0.1 V (測定値−37 dB)から利得 +33.2 dB に対す る GAIN= 1.0 V (測定値+32.1dB)までのゲイン範囲に対して検証 されました。減衰量の大きなレンジに対して、アンプ入力は 20 V p-p の差動入力、または 10 V p-p のシングルエンドで駆動され ました。 ©2015 Analog Devices, Inc. All rights reserved. Rev. 0 OUT+ C3 0.1µF AD8338 INMR C5 0.1µF OUT– C4 0.1µF 11509-018 OUTM VREF INMD COMM IN– R2 41.2kΩ C2 0.1µF OUTP INPD INPR OFSN IN+ R1 41.2kΩ VBAT DETO C1 1µF 図 18.減衰/利得アンプの回路図 (MODE、GAIN、VAGC の各 ピン接続は省略) これは、注目信号に対して、アンプは ADC 駆動用アンプ、調整 可能な自動ゲイン・コントローラ、または広い入力範囲を必要 とするその他のシグナル・コンディショニング・アプリケーシ ョンとして機能できることを意味します。 表 1.VGAIN 対ゲイン、計算値と測定値 Gain Voltage Calculated Gain (dB) 0.1 −38.7 −37 0.2 −30.7 −29.4 0.3 −22.7 −22 0.4 −14.7 −14.4 0.5 −6.7 −1.7 0.6 +1.3 +1.7 0.7 +9.3 +10 0.8 +17.3 +17.2 0.9 +25.3 +25 1.0 +33.3 +32.1 商標および登録商標は、それぞれの所有者の財産です。 - 10/10 - Measured Gain