dm00047102

AN4043
アプリケーションノート
SLLIMM™-nano
small low-loss intelligent molded module
By Carmelo Parisi, Giovanni Tomasello
and Mitsuhiro Ohkubo
イントロダクション
近年、さまざまなモータ制御分野において高性能かつ低損失で、よりコンパクトでより信頼
性の高いものが求められています。例として家庭用途では食器洗い洗浄器、冷蔵庫コンプレッ
サ、エアコンのファン、脱水・再循環ポンプなど、また低パワー産業用アプリケーションとし
て小型ファン、ポンプなどが上げられます。
ST マイクロエレクトロニクスはこれらの要求にあった新しい製品ファミリ SLLIMMTM-nano
シリーズ(SLLIMMTM-nano: small low-loss intelligent molded module nano)を開発しました。
本製品ファミリは高効率を非常にコンパクトに実現したデュアルインラインの IPM(インテリ
ジェントパワーモジュール)で、特別なオプション機能(後述)も搭載しています。
SLLIMM-nano 製品ファミリは最適なシリコンチップを組み込んでさらに 3 つの主要インバー
タブロックを搭載しています。
• パワーステージ
− 6 つの高速 IGBT
− 6 のフリーホイリングダイオード
• ドライバ回路
− 3 つの高耐圧ゲートドライバ
− 3 つのゲート抵抗
− 3 つのブートストラップダイオード
• 保護回路とオプション機能
− 電流センス用高性能オペアンプ
− 過電流、短絡検出用コンパレータ
− スマートシャットダウン機能
− デッドタイム、インターロッキング機能
− 電源電圧低下検出ロックアウト機能
これらの機能と、内部で完全に絶縁された SLLIMM-nano の小型パッケージ(NDIP)が、上記
アプリケーションで求められるより小さな組み立てスペースでの電力コントロールを、放熱性
能や信頼性を損なわずに実現します。
ディスクリートで実現されたインバータ(パワーデバイス、ドライバ、保護回路などを含む)
に比べて、SLLIMM-nano ファミリは、主要機能が最適化され組み込まれているため、回路設計
をより容易にし、部品点数を削減し、高い信頼性を実現できます。
July 2012
Doc ID 022726_JA Rev 1
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SLLIMM™-nano small low-loss intelligent molded module
本 ア プ リ ケ ー シ ョ ン ノ ー ト は 、 こ の 新 し い SLLIMM-nano フ ァ ミ リ の 詳 細 を 紹 介 し 、
SLLIMM-nano ファミリを使用するモータドライバ設計者の方々へ、効率・信頼性の高い設計を
するためのガイドラインを提供します。
1 インバータ設計
インバータ設計の
設計の基本と
基本と SLLIMM-nano ソリューション
インバータのスイッチングによるメリット(効率、信頼性、サイズ、コスト等)は多くの市場
の要求に応えられるため、数十ワットから数十メガワットの範囲の多くのモータドライブアプ
リケーションではインバータにより機能を実現することが求められています。
Figure1 はモータドライブアプリケーション例です。IGBT とフリーホイリングダイオードで
実現されるパワーステージ、IGBT のゲートドライバ回路、DSP やマイコンで実現される制御
機能、それから保護機能のためのセンサと制御信号のためのフィードバック信号から構成され
ます。
これらをディスクリートで実現しようとすると高い組み立てコストが発生し、高い信頼性リ
スクがあり、部品点数が増えるため製品そのものの重量も多くなります。また、回路設計、レ
イアウト設計においても多くの部品を、寄生のインダクタなども考慮して配置することが必要
になってきます。近年では SLLIMM-nano のような IPM を使用することでそれらの設計工数と
リスクを大幅に減らすことが可能になりました。
Figure 1: インバータモータドライバブロック図
インバータモータドライバブロック図
Mains
Microcontroller
Gate driver
Bridge rectifier
Power stage
M
Sensors
Feedback
ST の SLLIMM-nano ファミリでは多くの部品を一つのパッケージに組み込んでおり、20 点
以上のディスクリート部品を減らすことが可能です。Figure 2 は ST の SLLIMM-nano ファミリ
を使用した場合と、ディスクリートで同機能を構成した場合の SLLIMM-nano のメリットを示
しています。
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ST の SLLIMM-nano ファミリを使用することで設計時間が短縮され、製造時に要求されるさ
まざまな注意が不要になります。また高い自由度を持った広範囲のアプリケーションで、高い
信頼性と高い品質が実現できます。
内部でのパワーステージとドライバチップは最適化されたシリコンチップと回路で実現され
ており、最適化されているボードレイアウトとともに効率の最大化、ノイズ及び EMI の低減が
可能となりました。また短遅延での高いレベルの保護機能も実現できるようになっています。
Figure 2: ディスクリート
ディスクリート構成と
構成と SLLIMM-nano ソリューションの
ソリューションの比較
受動部品
ダイオード 抵抗
HV ゲートドライバ
トータルシステム
コストの
コストの削減
IGBT + FWD
レイアウト
設計が
設計が容易
ノイズ、
ノイズ、EMI
の低減
nano
SLLIMM
高品質
高信頼性
1.1
効率改善
先進的な
先進的な
保護機能
小型で
小型で緊密
コンパクト
製品概要
SLLIMM-nano ファミリはヒートシンクなしで 100W までの広い範囲のアプリケーションに適
合するよう設計されています。アプリケーション例として以下のようなものが挙げられます。
•
•
•
•
•
•
食器荒い洗浄器
冷蔵庫のコンプレッサ駆動
エアコンのコンプレッサ駆動
脱水、再循環ポンプ
低パワー産業用アプリケーション
小型ファン、ポンプ
SLLIMM-nano に組み込まれている主要な性能、機能は以下の通りです。
•
•
•
定格 600V、3A
3 相 IGBT インバータ
− 6 つの低損失 IGBT
− 6 つの低順電圧・ソフトリカバリ・フリーホイリングダイオード
3 つのゲートドライバ IC と保護回路
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− スマートシャットダウン機能
− 過電流、短絡検出用コンパレータ
•
•
•
•
− 電流センス用高性能オペアンプ
− 3 つのブートストラップダイオード
− インターロック機能
− 電源電圧低下保護機能 UV
各相電流センス毎のオープンエミッタ端子
内部で絶縁された小型パッケージ
スイッチングスピードを最適化するゲート抵抗
ゲートドライバの最適化されたバイアス回路
Figure3 は SLLIMM-nano でインバータを構成したブロック図です。
Figure 3: SLLIMM-nano ブロック図
ブロック図
Mains
Bridge rectifier
Gate driver
UVLO /
Dead time
Level
Shift
Smart
Comparator Shut
Down
Bootstrap
diode
Half bridge
Op-Amp
Gate driver
Microcontroller
UVLO /
Dead time
Level
Shift
Smart
Comparator Shut
Down
Bootstrap
diode
Half bridge
M
Op-Amp
Gate driver
UVLO /
Dead time
Level
Shift
Smart
Comparator Shut
Down
Bootstrap
diode
Half bridge
Op-Amp
SLLIMM-nano
Feedback
IGBT とフリーホイリングダイオードで構成された 3 つのハーフブリッジは、モータ制御ア
プリケーションで全体的に効率が向上するようモータ制御アプリケーションに最適に設計され
ています。この最適な設計により dV/dt、di/dt が低くなっており、定常損失、スイッチング損
失、EMI エミッションも改善されています。
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また、内部のゲートドライバ IC は 2 種類選択されています。一つは基本機能をもった基本バ
ージョンで低コストソリューション向けです。もう一つは高機能制御向きオプションをもった
フル機能バージョンです。
完全に絶縁された NDIP パッケージで、スペースの限られた用途で装置の小型化を実現でき、
同時に高い放熱性能と高い信頼性レベルを達成します。
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1.2
製品ラインアップ
製品ラインアップと
ラインアップとネーミング
Table 1: SLLIMM-nano ラインアップ
Features
基本バージョン
基本バージョン
フル機能
フル機能バージョン
機能バージョン
STGIPN3H60A
STGIPN3H60
600
600
Voltage (V)
Current @ TC = 25 °C (A)
3
3
Rth(j-a) max (°C/W)
50
50
Package type
NDIP-26L
NDIP-26L
Package size (mm) X, Y, Z
29.5x12.5x3.1
29.5x12.5x3.1
Integrated bootstrap diode
Yes
Yes
SD function
No
Yes
Comparator for fault protection
No
Yes (1 pin)
Smart shutdown function
No
Yes
Op amp for advanced current sensing
No
Yes
Interlocking function
Yes
Yes
Undervoltage lockout
Yes
Yes
Yes (3 pins)
Yes (3 pins)
Yes
Yes
High-side IGBT input signal
Active high
Active high
Low-side IGBT input signal
Active high
Active low
Open emitter configuration
3.3 / 5 V input interface compatibility
Figure 4: SLLIMM-nano ネーミング
ST
G
IP
zz
iii
w
vvv
x
Option
A = Basic version
…
VCES voltage divided by 10
IGBT
Technology
H = Very fast
K = Short circuit rugged
W = Ultra fast
IPM
SLLIMM™ & SLLIMM™-nano
Package
N = NDIP-26L molded (SLLIMM-nano)
S = SDIP-25L molded (SLLIMM)
L = SDIP-38L molded (SLLIMM)
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Nominal current
IC current at TC=25°C
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1.3
内部回路
Figure 5: STGIPN3H60A 内部回路
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Figure 6: STGIPN3H60 内部回路
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1.4
絶対最大定格
絶対最大定格は各値のデバイスの許容限界を表し、通常は設計の最悪条件として使用されま
す。絶対最大定格の仕様は温度、周波数、電圧等の仕様決め時のテスト条件に依存するため、
実際に使用するアプリケーションの条件で変わってしまうことに注意が必要です。
例として Table 2 に SLLIMM-nano STGIPN3H60 の条件を示します。これはデータシートに
記載がありますので、詳細についてはそれぞれデータシートから確認可能です。
Table 2: インバータ部
インバータ部
Symbol
Parameter
(1)
コレクタエミッタ間電圧 (VIN
VCES
= 0)
Value
Unit
600
V
(2)
各 IGBT の連続電流(TC = 25 °C)
3
A
(3)
各 IGBT の瞬時電流
10
A
各 IGBT のトータル消費電力(TC = 25 °C)
7.5
W
±IC
±IC
PTOT
(1) HINU, HINV, HINW; LINU , LINV , LINW と GND 間
(2) 下記 式(1)の反復計算による
(3) パルス幅は最大ジャンクション温度の制限有
I C ( TC ) =
•
T j max − TC
Rth( j −c ) ⋅VCE( sat )(max)(@T j max,I C ( TC ))
(1)
VCES: コレクタ-エミッタ間電圧
SLIMM-nano は VCES 定格 600V で、パワーステージは IGBT(及びフリーホイリングダイ
オード)から構成されています。許容可能な P-N 間の最大サージ電圧 VPN(surge)はこの VCES
以下です。
下記、Figure 7 に示すように一般的に IPM 内部の寄生インダクタンスはサージ電圧を発
生させます。また、デバイスと外部の DC リンクコンデンサ間の寄生インダクタンスもサ
ージ電圧を発生させます。これらを考慮し(定常状態での) P-N 間に印加される最大電圧
VPN(surge)は VCES 以下でなければなりません。SLLIMM-nano は小型パッケージで 100W 以下
までが使用範囲となりますが、より大きなパワーを必要とする IPM に比べれば寄生インダ
クタンスの影響は少ないといえます。
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Figure 7: パワーステージの
パワーステージの寄生インダクタ
寄生インダクタ
IGBT の電圧は絶対最大定格
以上になりうる
平坦な
di/dt と寄生インダクタンスの
- SLIMM ピン V PN
影響でスパイク電圧が
から観測される
V PN
V PN(surge )
P
高い
di/dt
HVIC
to motor
U, V, W
C
+
V bus
N
SLLIMM-nano
SLLIMM-nano 内部レイアウトに
起因する寄生インダクタンス
PCB レイアウトに起因する
寄生インダクタンス
• ±IC: IGBT 毎のコレクタ電流
許容可能なコレクタ DC 連続電流(TC = 25 °C) 。Ic は式 1(9ページ)から計算されます。
Table 3: STGIPN3H60 の制御部
Symbol
Parameter
Value
Unit
VOUT
OUTU,OUTV,OUTW, と GND (VCC=15 V)間の出力許容電圧
Vboot -21 to Vboot +0.3
V
VCC
低電圧側電源
-0.3 to 21
V
VCIN
コンパレータ入力電圧
-0.3 to VCC +0.3
V
VOP+
オペアンプ非反転入力
-0.3 to VCC +0.3
V
VOP
オペアンプ反転入力
-0.3 to VCC +0.3
V
Vboot
ブーストストラップ電圧
-0.3 to 620
V
VIN
HIN, LIN とGND間、ロジック入力電圧
-0.3 to 15
V
オープンドレイン電圧
-0.3 to 15
V
許容される出力のスルーレート
50
V/ns
V
SD / OD
dVOUT/dt
•
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VCC: 制御部電源電圧
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Vcc は制御部の電源電圧です。SLLIMM-nano のノイズ耐性を高めるため外部でのフィル
タリングが推奨されます。通常、無視できない ESR をもつ比較的大きな電解コンデンサと、
数百 nF オーダーのセラミックコンデンサをそれぞれ一つ使用して構成されます。
SLLIMM-nano を適切に使用するための Vcc 条件については Table 4 を参照ください。
Table 4: 電源電圧と
電源電圧とデバイス動作
デバイス動作
VCC 電圧 (typ. )
デバイス動作
デバイス動作
STGIPN3H60A STGIPN3H60
< 10 V
< 12 V
UV(制御電源の電圧低下検出)スレッショルド以下のため、制御回路は完
全には ON にならず、デバイス動作は保障されません。
12 V – 17 V
13.5 V – 18 V
通常の使用条件です。
> 18 V
> 21 V
制御回路破壊の可能性があります。
Table 5: システム全体
システム全体
Symbol
Parameter
Value
Unit
Tj
動作時のジャンクション温度
-40 to 150
°C
TC
モジュールケースの動作温度
-40 to 125
°C
2 電気的特性と
電気的特性と機能
本章ではパワーステージの主な機能と、SLLIMM-nano のすべての機能の詳細をあわせて紹介
します。
2.1
IGBT
SLLIMM-nano は、その進んだ PowerMESHTM プロセスで製造された IGBT を使用し、インバ
ータ機能の低損失化を実現しました。このパワーデバイスは標準的なスイッチング周波数を使
用するモータ制御向けに設計されており、VCE(sat)電圧ドロップとスイッチング速度(tfall)の優れ
たバランスを提供します。定常時及びスイッチング時の損失が最小化される結果、身の回り品
の環境負荷を減らすことができます。実システムの詳細な損失解析については 4 章で紹介しま
す。
2.2
フリーホイリングダイオード
フリーホイリングダイオード
SLLIMM-nano ファミリは Turbo 2 超高速高耐圧ダイオードを搭載し、フリーホイリングダ
イオードの trr/VF のトレードオフ関係、逆回復ソフトネスのバランスを注意深く調整しています。
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その結果インバータの全体的な性能を改善し、モータ制御で特に重要になりうる EMI の大幅な
低下を達成しています。
2.3
高耐圧ゲートドライバ
高耐圧ゲートドライバ
SLLIMM-nano は BCD(Bipolar, CMOS, DMOS)オフラインテクノロジーを使って設計された
汎用の高耐圧ゲートドライバ IC(HVIC)を搭載しています(Figure 8 参照)。特に FOC:フィールド
オリエンテッドコントロール向けモータ制御に最適であり、この分野おいて必要なすべての機
能を提供し、ローサイド、ハイサイドの両方の IGBT ドライブに必要な電流を供給できます。
このゲートドライバは高電圧のレベルシフトコントロールがもとめられるすべてのアプリケー
ションで使用でき、内部にブートストラップダイオード(特許取得済み)を搭載しています。
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Figure 8: 高耐圧ゲートドライバ
高耐圧ゲートドライバ IC イメージ
それぞれのゲートドライバ IC はハーフブリッジを構成する 2 つの IGBT をコントロールし、
デッドタイム、インターロック、内部ブートストラップダイオード等の基本的な機能をもつと
ともにスマートシャットダウン(特許取得済み)、異常検出用コンパレータ、電流センス用高性
能オペアンプも搭載されています。Table 1(6 ページ)にデバイスごとの機能が一覧になってい
ます。
このアプリケーションノートでは SLLIMM-nano に関連する高耐圧ゲートドライバの特徴に
ついて紹介します。さらに詳細を確認したい場合は AN2738 を参照ください。
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Figure 9: 高耐圧ゲートドライバブロック
高耐圧ゲートドライバブロック図
ゲートドライバブロック図
Bootstrap driver
VCC
Floating structure
BOOT
+
VCC
UV
detection
from µC
HIN
Logic
CSD
OUT
SD/OD
GND
to motor
U,V,W
VCC
VBias
Shutdown
latch
Smart
shut
down
LVG
driver
LVG
N
+5V
CP+
+
CIN
Comp
-
RSF
CSF
+
VREF
DT
CDF
RDF
Dead
time
VBias
VCC
OPOUT
to ADC
to DC-link
CBOOT
HVG
S
R
Level
shifter
LIN
from µC
from/to µC
HVG
driver
Shoottrough
prevention
+5V
RSD
P
UV
UV
DETECTION
detection
from LVG
VBOOT
+
Op-amp
HVIC
-
SLLIMM-nano
OP+
OPRSHUNT
2.3.1 駆動信号入力
高耐圧ゲートドライバ IC は 2 つの駆動信号入力があり、ハイサイドとローサイドを別々に制
御可能です。製品毎の入力仕様については Table1(6 ページ)を参照してください。
ハイサイドとローサイドの IGBT が両方同時に ON となり貫通電流が流れてしまう(クロスコ
ンダクション)のを防ぐために内部でデッドタイムをもっています(詳細は 2.3.4)。
駆動信号入力は TTL/CMOS 3.3V に対応しており、ノイズ耐性対策として約 1V のヒステリ
シスを持っています。この低電圧駆動が可能なことによりマイコンや DSP、FPGA 等の高性能
なコントローラから直接制御可能となっています。
Figure 10 と Figure 11 に示すように駆動信号入力は内部プルダウン(またはプルアップ)抵
抗が内蔵されていて、駆動入力信号が途切れた場合でも論理が安定するようになっています。
もし駆動信号入力がオープンになってしまった場合でもハイサイド、ローサイドのゲートドラ
イブ信号はローレベルになります。外部のプルダウン(またはプルアップ)抵抗は必要なく、部
品点数と回路スペースの削減が可能です。
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Figure 10: STGIPN3H60A の論理入力構成
Bootstrap driver
VBOOT
P
VCC
電源電圧低下検出
電源電圧低下検出
High side
level
shifting
driver
Logic
HIN
貫通電流防止
OUT
Low side
driver
LIN
HVIC
N
SLLIMM -nano
Figure 11: STGIPN3H60 の論理入力構成
論理入力構成
Bootstrap driver
VBOOT
P
VCC
電源電圧低下検出
電源電圧低下検出
High side
level
shifting
driver
Logic
HIN
+5V
貫通電流防止
Low side
driver
LIN
シャットダウン
SD
OUT
N
Smart SD
CIN
+
HVIC
-
VREF
SLLIMM -nano
Table 6 に代表的な内部プルダウン(プルアップ)抵抗を示します。
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Table 6: 内部プルアップ
内部プルアップ/プルダウン
プルアップ プルダウン抵抗値
プルダウン抵抗値
入力論理
内部プルアップ
内部プルアップ
内部プルダウン
内部プルダウン
Input pin
PN
ハイサイドゲートドライブ
HINU, HINV, HINW
STGIPN3H60A
Active high
500 kΩ
ローサイドゲートドライブ
LINU, LINV, LINW
STGIPN3H60A
Active high
500 kΩ
STGIPN3H60
Active high
85 kΩ
STGIPN3H60
Active low
STGIPN3H60
Active low
ハイサイドゲートドライブ
HINU, HINV, HINW
ローサイドゲートドライブ
LINU , LINV , LINW
SD / OD シャットダウン
720 kΩ
125 kΩ
2.3.2 高電圧レベルシフト
高電圧レベルシフト
高電圧のレベルシフト回路も内蔵されていて、低電圧の駆動制御入力と 600V までの高耐圧
のハーフブリッジを直接つなげることができます。これは BCD オフラインテクノロジーによ
りバイポーラトランジスタ、低・中電圧 CMOS のアナログ・デジタル回路、600V 越のブレーク
ダウン電圧をもつ高耐圧 DMOS トランジスタを一つのシリコン上に組み込めるため可能になっ
ています。
この機能により外部でのフォト・カプラを使用した絶縁が不要となり、部品点数と消費電力
の削減が可能です。その他の利点として高速ドライブと、入力から出力までの遅延が短いこと
が挙げられます。
2.3.3 電源電圧低下保護
SLLIMM-nano の Vcc 電圧は常に電源電圧低下保護機能 (UVLO:アンダーボルテージロック
アウト)により監視されています。電源電圧が OFF スレッショルド VCC_thOFF を下回るとゲート
ドライバの出力が OFF になり、ON スレッショルド VCC_thON を上回るとゲートドライバ出力を
ON にします。ノイズ耐性改善のため約 1.5V のヒステリシスを持っています。この VCC_thOFF
と VCC_thON の関係・動作は後述されるブートストラップ電圧 Vboot の VBS_thOFF と VBS_thON と同
様の動作です。(ブートストラップについては 2.3.11~2.3.13 参照)
もし本デバイスが UVLO 検出された状態になると両サイドのゲートドライバ出力はローレベ
ルになり、パワーステージの出力を Hi-Z にします。
UVLO のタイミングチャートを Figure 12 に示します。各ステップは以下の通りです。
•
•
•
•
•
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t1: Vcc 電圧が ON スレッショルドを超えると、ゲートドライバは次の駆動信号入力か
ら動作しはじめます。回路はまだリセット状態です。
t2: 駆動信号入力が受けられるようになり、IGBT が ON します。
t3: Vcc が OFF スレッショルドを下回ると UVLO が検出されます。IGBT は駆動信号入
力にかかわらず OFF します。ここではまだ回路はリセット解除状態です。
t4: ゲートドライバは Vcc が ON スレッショルドを上回ると再スタートします。
ゲートドライバはリセット状態で、次の駆動信号入力にから動作しはじめます。
t5: 駆動信号入力が再び受けられるようになり、IGBT が再度 ON します。
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Figure 12: 電源電圧低下保護タイミングチャート
電源電圧低下保護タイミングチャート
VCC_thON
VCC
≈
≈
VCC_thOFF
IC
SET
Circuit state
RESET
Time
t1
≈ ≈
HIN/LIN
RESET
t2
t3
t4 t5
2.3.4 デッドタイムと
デッドタイムとインターロック機能
インターロック機能
ハイサイドとローサイドの IGBT が同時に ON 状態になり貫通電流がながれてしまう(クロス
コンダクション)のを防ぐため SLLIMM-nano はデッドタイムとインターロック機能を内蔵して
います。
インターロック機能は、駆動信号入力がハイサイドとローサイドが両方とも同時に ON にな
った際、内部で両ゲートドライバ出力をローレベルにします。デッドタイムはゲートドライバ
ー間の立ち上がり信号と立下り信号の間に挿入されます。もしデッドタイムの終了前に外部か
らゲートドライバ出力を立ち上げるよう駆動入力が入っても、デッドタイムが終了するまでは
無視されます。
Table 7: STGIPN3H60A のインターロック論理表
インターロック論理表
Condition
インターロック
ハーフブリッジトライステート
0 “logic state”
ハーフブリッジトライステート
1 “logic state”
ローサイドダイレクトドライブ
1 “logic state”
ハイサイドダイレクトドライブ
Logic Input (VI)
Outputs
LIN
HIN
LVG
HVG
H
H
L
L
L
L
L
L
H
L
H
L
L
H
L
H
STGIPN3H60A のデッドタイムは標準で 320ns に設定されています。
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Table 8: STGIPN3H60 インターロック論理表
インターロック論理表
Logic Input (VI)
Condition
シャットダウンイネーブル
ハーフブリッジトライステート
インターロック
ハーフブリッジトライステート
0 “logic state”
ハーフブリッジトライステート
1 “logic state”
ローサイドダイレクトドライブ
1 “logic state”
ハイサイドダイレクトドライブ
Note:
Outputs
SD
LIN
HIN
LVG
HVG
L
X
X
L
L
H
L
H
L
L
H
H
L
L
L
H
L
L
H
L
H
H
H
L
H
X: は Don’t Care
STGIPN3H60 のデッドタイムは標準で 180ns に設定されています。
安全のため SLIMM-nano の持つデッドタイムに、さらに外部コントロールから 1.2µs~1.5µs
のデッドタイムを追加してください。
Figure 13 に STGIPN3H60 のデッドタイムとインターロック機能について図解します。
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Figure 13: デッドタイムタイミングチャート
2.3.5 異常検出コンパレータ
異常検出コンパレータ
SLLIMM-nano の STGIPN3H60 は過電流・温度異常など電圧を通して検出される異常に対し
優れた保護機能を実現するためにコンパレータを搭載しています。このコンパレータの反転入
力はデータシートに規定されるリファレンス電圧になっており、非反転入力が CIN ピンから利
用可能になっています。(Figure 9 参照)
このコンパレータ入力に外部のシャント抵抗を接続し、過電流・短絡検出機能を容易に構成
することができます。詳細は次の 2.3.6 で説明します。
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2.3.6 短絡検出と
短絡検出とスマートシャットダウン
フル機能バージョン SLLIMM-nano(STGIPN3H60)はスマートシャットダウン機能をもち、出
力電流をモニタし、過電流・短絡保護時に 200ns というかなり短かい遅延時間でコンパレータ
がゲートドライバを OFF します。
スマートシャットダウンは斬新な回路(特許取得済み)で実現されており、保護時操作までの
遅延を短くできその時間とは独立して、ユーザーが異常検出時の保護時間を設定でき、
2.3.5 及び Figure 9 でも触れましたが、シンプルな過電流検出機能を実現するためにコンパ
レータ入力を外部シャント抵抗に接続できます。誤検出を防ぐために RC フィルタ(RSF,CSF)が
必要です。コンパレータの出力は内部の MOSFET をコントロールしますが、この MOSFET は
SD /OD ピンからのオープンドレイン出力になっています。また、このピンは SD 入力と共通
になっています。
コンパレータが動作するとゲートドライバデバイスはシャットダウン状態に入り、このデバ
イスのすべての出力はローレベルになりハーフブリッジはトライステートのままです。通常の
過電流検出機能の構成では、コンパレータ出力は単安定機能と、異常検出時に保護時間を付加
するための RC 遅延回路のついた SD /OD ピンに接続されます。
一般的な異常検出システムとは異なって、この新しいスマートシャットダウン機能は内部に
専用の制御信号を持ち、異常検出時に外付けキャパシタの放電を待たずに、ゲートドライバ出
力を瞬時に OFF にします。これにより異常検出からゲートドライバ出力 OFF までの時間を最
短にできます。実際に異常検出からゲートドライバ OFF までの時間は外部 SD /OD ピンの RC
回路の影響を受けることはありません。ゲートドライバ出力を瞬時に OFF にすると、SD 信号
がスレッショルド以下になるまではオープンドレインを ON し続けますが、SD 信号がスレッ
ショルドを下回るとオープンドレインは OFF します。(Figure 15 参照)
このように、スマートシャットダウン機能は SLLIMM-nano 保護の遅延に影響することなく、
SD ピンからの RC 回路による遅延を自由に延長できます。Figure 14 にスマートシャットダウ
ンのブロック図を示します。
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Figure 14: スマートシャットダウン機能構成回路
スマートシャットダウン機能構成回路
LIN
LVG
HIN
HVG
VBias
SD
Q
FSD
S
+
CP+
Comp
-
+
VREF
Q
R
SET dominant FF
HVIC
SLLIMM-nano
STGIPN3H60A は除く
通常動作では出力は駆動入力信号に従います。もし異常が検出されると、FSD(Fault Signal)
が1にセットされて FF(フリップフロップ)がその信号を受け取ります。その結果 FF 出力は
SLLIMM-nano 出力をローレベルにし、同時にオープンドレイン出力の MOSFET を ON します。
もし、FSD が異常検出後直ちに 0 に戻った場合でも、ゲートドライバ出力は SD ピンからの立
ち下がり信号と、立ち上がり信号の両方が検出されるまではローレベルを保ちます。
実際、ゲートドライバを OFF している FF 出力が SD ピンからの立ち下がり信号の入力によ
りリセットされる場合でも、AND 回路により SD ピン入力がゲートドライバ出力を OFF する
ように働きます。また、一旦オープンドレインの MOSFET が ON すると、MOSFET は SD ピ
ン電圧がローレベルと検出されるまでは OFF されません。
また FF は SET 優先回路になっているため FSD がハイレベルを保っている時に SD ピンから
ローレベルが入力されても FF 出力が不安定になることはありません。
2.3.7 短絡保護タイミングチャート
短絡保護タイミングチャートと
タイミングチャートとスマートシャットダウン機能
スマートシャットダウン機能
短絡保護機能の各タイミングの動作について Figure 15 に示します。各ステップは以下の通
りです。
♦ t1: 出力電流が最大許容値以下のとき SLLIMM-nano は通常動作です。
♦ t2: 出力電流が最大許容値(ISC)を超えると過電流・短絡異常が検出されて保護機能が働き
ます。CIN ピン(コンパレータ入力ピン)に接続されたシャント抵抗の電圧が VREF を超え
てコンパレータ出力がトリガし、ゲートドライバをシャットダウン状態にいれます。両
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サイドのドライバ出力をローレベルにし、ハーフブリッジをトライステートにします。
IGBT のゲートドライブは専用制御信号で約 200ns で OFF にして、ハーフブリッジを
トライステートに保つとともに、内部の MOSFET M1 を ON します。(スマートシャ
ットダウン機能)。SD 信号レベルは時定数τA で下がり始めます。τA は式(2)から計算さ
れます。
τ A = (RON _ OD // RSD )⋅ CSD
(2)
♦ t3: SD 信号レベルがロースレッショルド Vsd_L_THR を下回ると、駆動信号入力が無効に
なります。スマートシャットダウン機能は終了し M1 は OFF になり SD 信号レベルは
時定数τB で上がりはじめます。τB は式(3)から計算されます。
τ B = RSD ⋅ CSD
(3)
♦ t4: SD 信号レベルがハイスレッショルド Vsd_H_THR 上回ると駆動信号入力が有効になり
ます。
Figure 15: スマートシャットダウンの
スマートシャットダウンのタイミングチャート
ISC
時間要素
SD の放電時間
τA = (RON_OD //RSD )*CSD
IC
VREF
SD の再充電時間
τB = RSD *CSD
RC 回路時定数
VSHUNT (··VCIN)
シャットダウン回路
シャットダウン回路
HVG/LVG
VBias
RSD
SD
Vsd_H_THR
Vsd_L_THR
τA
τB τ
Α << τΒ
from/to µC
CSD
SD/OD
Smart
shut
M1 down
M1
RON_OD
SLLIMM-nano
HIN/LIN
Time
22/62
t1
t2
t3
t4
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2.3.8 電流検出シャント
電流検出シャント抵抗
シャント抵抗の
抵抗の選択
CIN と GND 間につないだシャント抵抗で過電流検出が可能です。電流が短絡とみなされる
電流量 ISC を超えると CIN ピンの電圧レベルが VREF を超えるため短絡保護機能が働きます。保
護機能を十分な信頼性をもって安定に動作させるために、電流センス抵抗はノンインダクティ
ブタイプで高い性能と高い環境耐性が要求されます。また、過電流の誤検出を防ぐために、レ
イアウト、回路依存の寄生インダクタンスも最小になるよう注意が必要です。
以上の理由からシャント抵抗と RC フィルタ部品はできるだけ SLLIMM-nano のピン側に配
置します。さらに追加の注意事項について 5.1 で説明します。電流センス抵抗の値は、設計仕
様・要求性能毎に異なったガイドラインに従って計算しますが、共通する手順は次の通りです。
•
•
•
•
過電流のスレッショルド(IOC_th)を決める。例えば IGBT の通常動作電流+20%~30%。
シャント抵抗の値を計算。Figure 19 に例を示します。より詳細についてはユーザマニ
ュアル UM1483 と UM1517 を参照してください。
計算値に近い入手可能なシャント抵抗を決める。
シャント抵抗の定格を計算する。抵抗の自己発熱による温度上昇を考慮して定格に余裕
を持たせることに注意します。ディレーティング率∆P(T)%から式(4) のように計算して
ください
2
RSHUNT ⋅ I RMS
PSHUNT ( T ) =
∆P( T )%
(4)
IRMS は IGBT 電流の実効値です。
シャント抵抗の定格マージンは少なくとも計算された電力の 30%以上とることを推奨します。
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2.3.9 RC フィルタ回路
フィルタ回路の
回路の選択
Figure16 に示すようにシャント抵抗は 2 通りの方法で使用可能です。
Figure 16: 短絡保護回路例
NU
NV
NW
CIN
NU R SHUNT_U
R
NV SHUNT_V
NW R SHUNT_W
R SF
RSHUNT C SF
SLLIMM -nano
SLLIMM -nano
1 シャント抵抗回路
シャント抵抗回路
CIN
R SF
R SHUNT CSF
3 シャント抵抗回路
シャント抵抗回路
前述したように、シャント抵抗部にはノイズ対策のため RC 回路が必要です。Figure16 のい
ずれの方法でもインバータの 3 相全ての合計電流を検出できます。
RC フィルタは RSF と CSF で構成されますが、時定数は以下式(5)の通りです。
tSF = RSF ⋅ CSF
(5)
RC 回路の時定数に加えてゲートドライバのターンオフ遅延 tisd と IGBT のターンオフ時間
toff(数十 ns オーダー)を、短絡が検出されてから IGBT を OFF するまでの全遅延時間 tTotal とし
て考える必要があります。そのため tTotal は式(6)のようになります。
tTotal = tSF + tisd + toff
(6)
RC フィルタの時定数 tSF は 1~2us が推奨です。
3 つのシャント抵抗を使用する回路では各相の電流をモニタすることができます。
Figure 17 に短絡検出の例を示します。スマートシャットダウン機能により短絡検出後、瞬時に
保護機能が動作するのが分かります。主なステップは以下の通りです。
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•
t1: Ic は増加し始めますが、CN ピンの RC 回路の遅延により短絡はまだ検出されていま
せん。
• t2: VCIN 電圧が VREF を超えて短絡が検出されます。スマートシャットダウン機能が動作
しはじめます。
• t3: SD ピンが Vsd_H_THR を下回り、M1(MOSFET)が ON になります。
• t4: SLLIMM-nano は過電流検出から 580ns で IGBT を OFF にしています。
出力 Disable までの時間は t2-t4 となり、全 SC 時間は t2-t4 になります。
Figure 17: 短絡発生例
HIN
SC イベント発生例
イベント発生例
580ns
P
V sd_H_THR
to DC -link
SD
HIN
U, V, W
to motor
HVIC
CIN
IC
IC
VREF
N
SLLIMM-nano
R SHUNT
Time
IC = 5A/Div
t1
t2
CIN = 2V/Div
t3
t4
HIN = 2V/Div
SD = 2V/Div
t = 200ns/Div
CIN
IGBT ローサイドでの
SC イベント
2.3.10 電流センスオペアンプ
電流センスオペアンプ
フル機能バージョン SLLIMM-nano(STGIPN3H60)は FOC(フィールドオリエンテッドコント
ロール)向けにオペアンプを内蔵しています。典型的な FOC アプリケーションでは 3 つのハー
フブリッジの電流をシャント抵抗でモニタしています。連続的な電流変動はハーフブリッジを
コントロールする PWM と同じ周期の離散的な電圧値に変換されます。これはバイポーラのア
ナログ信号で、電流の方向は電圧の極性に反映されます。 (Figure 18 参照)
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Figure 18: 3 相システム
センシング
fPWM 周波数での離散電圧
3-phase driver
ベクトル制御サイン波
VS
VS
VS
Power
stage
3-phase
motor
IPHASE
この電圧値は AD コンバータから読み取る必要がありますが、AD コンバータのダイナミック
レンジを最大限利用するためにレベルシフト、ゲイン調整の必要があります。Figure 19 に一般
的な構成例と波形例を示します。
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Figure 19: 一般的な
一般的な電流センス
電流センス構成
センス構成と
構成と波形
to DC-link
センス電圧波形
to motor
ゲイン調整後
シフト後
フィルタリング後
VREF
R3
R5
RSHUNT
Vsense
ROUT
OP+ +
Op -amp
OP- R
2
R4
to ADC
COUT
C2
ハーフブリッジ
電流検出
V sense 電圧の
レベルシフト
R1
ゲイン調整と
フィルタリング
ROUT
オペアンプ
発振防止
COUT
ADC の折り返し防止
ベクトル制御に使用される AD コンバータのフルスケールは通常約 3.3V です。電圧として読
み込まれた値はシフトされてフルスケールの 1/2 (1.65V)シフトされて、想定される最大電圧が
AD コンバータのフルスケールに合うようにゲイン調整されます。
いくつかのセンス回路についてはユーザーマニュアル UM1483 と UM1517 にも紹介がありま
すので参照可能です。
2.3.11 ブートストラップ回路
ブートストラップ回路
3 相インバータの IGBT のローサイドのエミッタは共通リファレンス GND としてマイナス
DC(VDC-)に接続され、ローサイドのゲートドライバからも共通となります。一方ハイサイド
IGBT のエミッタは動作状態中に VDC+と VDC-が切り替わります。ゲートドライバ電圧 VGE の基
準となるエミッタが VDC+/VDC-と切り替わるための VGE を安定してドライブするのは一見困難
です。しかし、ブートストラップ回路を使用することでシンプルで安価なハイサイドのドライ
ブ電圧を実現できます。
ブートストラップ回路は通常高耐圧のファスト・リカバリ・ダイオードを使用して実現され
ます。SLLIMM-nano ファミリはブートストラップ回路用ダイオードを内蔵しています。(特許
取得済み) Figure 20 にブートストラップ回路の動作を示します。
高耐圧 DMOS がローサイドのドライバと同期して動作します。内部のチャージポンプが
DMOS ドライバ電圧を供給します。ブートストラップダイオードと DMOS を通した電流路で、
VOUT 電圧が VCC 電圧より低いとき(ローサイド IGBT が ON)、フローティングになっているコン
デンサ CBOOT に電荷が充電されます(Figure 20 ブートストラップ充電経路参照)。ハイサイド
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の IGBT が ON になるときは充電された VBOOT からドライブに必要な電荷が供給されます
(Figure 20 ブートストラップ放電経路参照)。
このブートストラップ回路は 3 つのハーフブリッジでそれぞれに組み込まれており、同様に
動作します。
Figure 20: ブートストラップ回路
ブートストラップ回路
CBOOT の値を決めるためには以下の点について考慮が必要です。
•
•
•
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CBOOT 電圧は電源電圧低下保護(UVLO)レベルより高くなければなりません。これによ
りハイサイドの IGBT ゲートが適切な電圧でドライブされます。この電圧が UVLO を下
回ると、異常検出を示すことなく IC が OFF となり出力がなくなりますので注意が必要
です。
CBOOT 電圧はローサイド IGBT やブートストラップ回路中の電圧低下の影響を受けます。
ハイサイド IGBT が ON の間に CBOOT の電荷は主に IGBT ゲートに供給されますが、リ
ーク電流、自己消費電流なども考慮が必要です。
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2.3.12 ブートストラップコンデンサ
ブートストラップコンデンサの
コンデンサの選択
ブートストラップコンデンサのサイズは、単純にはハイサイドのドライバがフローティング
で、IGBT ゲートの一回のドライブで必要な充電電荷量だけから計算します。この場合は IGBT
ドライブに使われる PWM の デューティー比や、PWM 変調(6 ステップ、12 ステップ、サイン
波)の影響は考慮していませんが、実際はそれぞれの用途に応じて最適なブートストラップコン
デンサを決める必要があります。
ブートストラップコンデンサの充電時はローサイドの IGBT が ON になり、VCBOOT 電圧は式
(7)のようになります。
VCBOOT = VCC − VF − VRDS( on ) − VCE( sat ) max
(7)
VCC: ゲートドライバ電源電圧
VF: ブートストラップダイオード順電圧
VCE(sat)max: ローサイド IGBT のエミッタ-コレクタ電圧間最大電圧
VRDS(on): DMOS の ON 電圧ドロップ
IGBT ゲートに電荷を供給することで VCBOOT 電圧は低下しますが、IGBT を ON しつづけられ
る電圧を保つだけの CBOOT コンデンサ容量を持つ必要があります。IGBT が ON の間の電圧低下
最小値(ΔVCBOOT)は式(8)のように計算されます。
∆VCBOOT = VCC − VF − VRDS( on ) − VGE(min) − VCE( sat ) max
(8)
また、VCBOOT はブートストラップ ON スレッショルド(VBV_thON)以上でなければなりません。
VCBOOT (min) > VBS _ thON
(9)
VGE(min): ハイサイド IGBT のエミッターコレクタ間最小電圧
VBS_thON: ブートストラップ ON スレッショル電圧(データシート参照)
VCBOOT 電圧低下要因を考慮して、ハイサイド IGBT が ON の間に供給する電荷は式(10)のよ
うに計算されます。
QTOT = QGATE + (I LKGE + I QBO + I LK + I LKDiode + I LKCap )⋅ t Hon + QLS
(10)
QGATE: IGBT ゲートチャージのトータル電荷
ILKGE: IGBT ゲート・エミッタ間リーク電流
IQBO: ブートストラップ回路自己消費電流
ILK: ブートストラップ回路リーク電流
ILKDiode: ブートストラップダイオードリーク電流
ILKCap: ブートストラップコンデンサリーク電流(電解コンデンサ使用時のみ)
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tHon: ハイサイド ON 時間
QLS: 内部のレベルシフタに必要な電荷
最終的にブートストラップコンデンサの最小値は式(11)のようになります。
C BOOT =
QTOT
∆VCBOOT
(11)
ブートストラップの選択を容易にするため、式 11 に基いて Figure 21 にブートストラップコ
ンデンサ容量とスイッチング周波数の関係を最小許容低下電圧(∆VCBOOT)毎に示します。このグ
ラフでのデューティーサイクルは 50%で変調はサイン波です。
Figure 21: ブートストラップコンデンサと
ブートストラップコンデンサとスイッチング周波数
スイッチング周波数
5
STGIN3H60A
STGIN3H60
δ=50%
CBOOT Calculated (uF)
4
3
∆VCBOOT=0.1V
2
∆VCBOOT=0.3V
∆VCBOOT=0.5V
1
0
0
5
10
15
20
fsw (kHz)
PWM コントロールやさらなるリーク電流、それからボードレイアウトの影響から最悪の状
況を考慮すると、実際のコンデンサ容量は Figure 21 から求められた値の 2~3 倍とする必要が
あります。また、ブートストラップコンデンサは ESR の低いことがもとめられ、電解コンデン
サを使用する場合はセラミックコンデンサを電解コンデンサに並列に SLLIMM-nano のピンに
直接おくことが推奨されます。
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2.3.13 ブートストラップコンデンサの
ブートストラップコンデンサの初期充電
電源投入時にブートストラップコンデンサは初期充電時間(tCHARGE)で充電されて、式(9)で示
されたように VCBOOT は ON スレッショルド VBS_thON を超える必要があります。通常動作時は
VCBOOT は常にブートストラップ OFF スレッショルド(VBS_thOFF)以上を保つ必要があります。
電源投入時は最初ローサイド IGBT のみが ON になる期間があり、その後 PWM 動作が開始し
ます。その様子を Figure 22 に示します。
•
•
•
t1: ブートストラップコンデンサはローサイド IGBT を経由して充電を開始します。
t2: ブートストラップコンデンサ電圧(VCBOOT) はブートストラップ ON スレッショルド
電圧に到達します。
t3: ブートストラップコンデンサの充電が完了しハイサイド IGBT ゲートチャージのた
めの電荷供給が開始されます。ブートストラップコンデンサはローサイド IGBT が ON
の間に再充電されます。
Figure 22: ブートストラップ初期充電時間
ブートストラップ初期充電時間
VCC
DC Bus VPN
HVG
LVG
VBS_thON
VBS_thOFF
VCBOOT
Time
t1
t2
t3
この初期充電の時間は式(12)で計算されますが、安全のため少なくともこの 3 倍は見る必要
があります。
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tCHARGE ≥
CBOOT ⋅ RDS ( on )
δ
 VCC 

* ln
∆
V
 CBOOT 
(12)
δは PWM のデューティー比で RDS(on) は 120 Ωがデータシートにある標準値です。
実用的な例として PWM 周波数 16kHz、デューティー比 50%、∆VCBOOT = 0.1 V のモータ制
御を考えます。ゲートドライバ電源(VCC)は 17.5V です。Figure 21 を参考にブートストラップ
コンデンサは 1.0µF と選べますが、実際の容量 CBOOT はレイアウト等の影響を考慮して、その
2~3 倍の 2.0~3.0µF になります。実際に入手可能な容量値を選択して 2.2µF とします。すると
式(12)から初期充電時間は次のように計算されます。
2.2 ⋅ 10−6 ⋅ 120  17.5 
tCHARGE ≥
⋅ ln
 = 2.7 ms
0.5
 0.1 
(13)
安全のため初期充電時間は、少なくともその 3 倍の 8.1ms とします。
3 パッケージ
SLLIMM-nanoではトランスファモールド構造の26リード、デュアルインラインパッケージ
(NDIP-26L)が使用可能になっていて、消費者向けのインバータ製品で小型・低コストを実現で
きます。内部では銅リードフレームとパワーステージ、コントロールステージがトランスファ
モールド法で封止されています。熱特性の優れた銅を使い、リードフレーム厚とレイアウトを
最適化した結果、優れた熱の拡散・伝導を実現するとともに、さらに熱抵抗を減らしています。
パッケージのピンはPCB設計を容易にするよう高電圧ピン-低電圧ピン間距離を最大にするよ
う設計されており、該当ピンはパッケージの反対側に配置されています。
SLLIMM-nanoはトランスファモールド法と内部設計の最適化により高電力密度、優れた放熱
特性、絶縁、高信頼性を小型低損失で提供します。
3.1
パッケージ構造
パッケージ構造
Figure23 に NDIP-26L の内部構造を示します。
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Figure 23: NDIP-26L パッケージの
パッケージの概観と
概観と内部
MM
SLLI
-nan
o
Top view
Bottom view
z
x
SLLIMM-nano
y
NDIP-26L
HVIC
IGBT
Main dimensions
FWD
Internal view
x = 29.5 mm
y1 = 12.5 mm (body only)
y2 = 22 mm (including leads)
z1 = 3.1 mm (body only)
z2 = 7 mm (including leads)
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3.2
パッケージ外形
パッケージ外形と
外形と寸法
Figure 24: パッケージの
パッケージのパッケージ外形
パッケージ外形と
外形と寸法
STGIPN3H60 データシート Figure 8 参照
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Table 9: NDIP-26L パッケージ寸法
パッケージ寸法
(mm)
Dimension
A
A1
A2
A3
A4
b
b1
b2
b3
c
c1
D
D1
D2
D3
E
e
e1
eB1
eB2
L
3.3
Min.
Typ.
0.8
3
1.7
5.7
0.53
0.52
0.83
0.82
0.46
0.45
29.05
0.5
0.35
1
3.1
1.8
5.9
12.35
1.7
2.4
16.1
21.18
1.24
Max.
0.5
29.15
4.4
1.2
3.2
1.9
6.1
0.72
0.68
1.02
0.98
0.59
0.55
29.25
12.45
1.8
2.5
16.4
21.48
1.39
29.55
12.55
1.9
2.6
16.7
21.78
1.54
0.6
0.9
入出力ピン
入出力ピン
ここでは SLLIMM-nano の入出力ピンを紹介します。より詳細な推奨レイアウトについては
5.1 を参照してください。
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Figure 25: Pinout (top view)
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Table 10: 入出力ピン
入出力ピン
Name
Description
Pin #
STGIPN3H60A
1
2
STGIPN3H60
GND
NC
3
4
SD / OD
VCC W
HINW
5
LINW
LINW
6
7
8
9
10
NC
NC
NC
OP+
OPOUT
OP-
11
LINV
12
13
14
NC
15
NC
SD / OD
16
LINU
LINU
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
STGIPN3H60
Ground
シャットダウン(アクティブ
接続無し
ロー)/オープンドレイン
(コンパレータ出力)
W 相コントロール電源
W 相ハイサイド駆動入力
W 相ローサイド駆動入力
W 相ローサイド駆動入力
(アクティブハイ)
(アクティブロー)
接続無し
オペアンプ非反転入力
接続無し
オペアンプ出力
接続無し
オペアンプ反転入力
V 相コントロール電源
VCC V
HINV
LINV
CIN
V 相ハイサイド駆動入力
V 相ローサイド駆動入力
V 相ローサイド駆動入力
(アクティブハイ)
(アクティブロー)
接続無し
コンパレータ入力
U 相コントロール電源
VCC U
HINU
VbootU
P
U
NU
VbootV
V
NV
VbootW
W
NW
STGIPN3H60A
U 相ハイサイド駆動入力
シャットダウン(アクティブ
接続無し
ロー)/オープンドレイン
(コンパレータ出力)
U 相ローサイド駆動入力
U 相ローサイド駆動入力
(アクティブハイ)
(アクティブロー)
U 相ブートスラップ電圧
DC プラス電圧入力
U 相出力
U 相マイナス DC 入力
V 相ブートスラップ電圧
V 相出力
V 相マイナス DC 入力
W 相ブートスラップ電圧
W 相出力
W 相マイナス DC 入力
ハイサイドバイアス電圧
ハイサイドバイアス電圧ピ
電圧ピン/ハイサイドバイアス電圧
ハイサイドバイアス電圧リファレンス
電圧リファレンス
ピン: VbootU-U, VbootV-V, VbootW-W
• 電源リップル、ノイズの影響による誤動作を防ぐため、ESR, ESL の低いコンデンサを
これらのピン側に配置します。
• ブートストラップの値はアプリケーションに大きく依存します。(2.3.11 参照)
ゲートドライババイアス電圧
ゲートドライババイアス電圧
ピン: VCC U, VCC V, VCC W
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•
•
内部コントロール部電源供給ピン
電源リップル、ノイズの影響による誤動作を防ぐため、ESR, ESL の低いコンデンサを
これらのピン側に配置します。
ゲートドライバグランド
ピン: GND
• 内部 IC の基準グランド
• ノイズの影響を避けるため、主な電力回路の電流がこのピンを通らないようにします。
(5.1 参照)
信号入力
ピン: HINU, HINV, HINW; LINU, LINV, LINW; LINU , LINV , LINW
•
•
•
内蔵 IGBT のコントロール信号入力
それぞれの入力ピンは可能な限り短くしノイズの影響を受けないようにします。
R=100Ω、C=1nF (推奨値)の RC カップリング回路を入力信号発振防止のために挿入し
ます。
コンパレータ非反転入力
のみ)
コンパレータ非反転入力(STGIPN3H60のみ
非反転入力
のみ
ピン: CIN
• 電流センス用シャント抵抗が各相に接続されてて短絡検出機能を構成できます。
• シャント抵抗は検出レベルにあったものを選択する必要があります。
• ノイズ除去のためRCフィルタ(通常~1µs)を接続します。
• シャント抵抗とCINピン間の距離はできるだけ短くします。
• もしVref (データシート参照)より高い電圧が入力されるとSLLIMM-nanoは自動でシャッ
トダウンして、 SD / ODピンがプルダウンされます。
シャットダウン、
シャットダウン、オープンドレイン (STGIPN3H60のみ
のみ)
のみ
ピン: SD / OD
•
SD / ODピンは全く同じピンが2つあります。これらはそれぞれパッケージの反対側に
ありPCB設計の自由度を高めます。いずれか1ピンで適切な機能を実現できます。
•
SD / ODピンはEnable/Disableピンとして動作します。
•
SD / ODピン信号はアクティブローです。これらのピンに仕様上のスレッショルド以下
の電圧が入力されると、SLLIMM-nanoはシャットダウンして、各ハーフブリッジはトラ
イステートになります。
•
SD / ODピン状態は、内部ステータス(2.3.6参照)にも接続されていて、コンパレータが
トリガすると SD / ODピンはFALUTピンとしてプルダウンされます。
•
SD / ODピンがオープンドレインでプルダウンされるときは、プルアップ抵抗を介して
3.3Vか5Vにプルアップされる必要があります。
内蔵オペアンプ
のみ)
内蔵オペアンプ(STGIPN3H60のみ
オペアンプ
のみ
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ピン:
ピン OP+, OP-, OPOUT
• このオペアンプは内部で使用されておらず、完全に自由に使えます
• FOCに最適化されています。
• コンパクトで効率的なレイアウトを可能にし部品点数を減らせます。
プラスDC
プラス
ピン: P
• インバータのプラス電源ピンで、内部でIGBTのハイサイドコントロールに接続されてい
ます。
• DCリンクコンデンサまでの配線や、PCBレイアウトのインダクタンスによるサージ電圧
を抑えるためPピン側にスムージングフィルタ用コンデンサをおきます。通常0.1から
0.22µFの高周波、高耐圧のノンインダクティブタイプが推奨されます。
マイナス DC
ピン: NU, NV, NW
• インバータのマイナス電源ピンです。
• IGBTの各相エミッタに接続されています。
• アプリケーションのパワーグランドはロジックグランドから切り離し、またスター結線
のように一点につなげる必要があります。
インバータ出力
インバータ出力
ピン: U, V, W
• モータ等のインバータの負荷に接続されます。
4 電力消費と
電力消費と損失
インバータの全損失は定常損失、スイッチング損失、OFF 時損失の合計です。それらは基本
的に IGBT とフリーホイリングダイオードのようなインバータ部のパワーデバイスで発生しま
す。定常損失(Pcond)は導通状態に ON 抵抗で発生する損失です。また、スイッチング損失(Psw)
はスイッチが ON/OFF する際に発生する損失であり、OFF 時損失は阻止電圧とリーク電流から
発生するもので無視できるレベルの損失です。
したがって全損失はこれら全ての合計になり、式(14)ようになります。
Ptot ≈ Pcond + Psw
(14)
Figure 26 にハードスイッチングの例を示します。通常このようにしてモータドライバ制御な
どのスイッチングアプリケーションで発生する主な損失を規定します。
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Figure 26: IGBT の損失
VCE
IC
10% VCE
10% IC
VCE(sat)
10% VCE
Esw(off)
Esw(on)
tc(on)
4.1
10% IC
tc(off)
conduction
定常損失
定常損失
定常損失は IGBT とフリーホイリングダイオードの定格電流時の順電圧ドロップで発生しま
す。これは IGBT とダイオードの順方向特性の線形近似を使用して計算できます。IGBT のスレ
ッショルド VTO、ダイオードのスレッショルド VFO を DC 電圧で表して、コレクタ-エミッタ間
の ON 抵抗を RCE、ダイオードの順方向 ON 抵抗を RAK とした直線近似例を Figure 27(水色)に
示します。
Figure 27: IGBT とダイオードの
ダイオードの出力特性近似
出力特性近似
RAK = ∆VFM / ∆IFM
∆IFM
RCE = ∆VCE / ∆IC
∆ IC
∆VFM
∆VCE
VTO
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VFO
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IGBT、ダイオードのいずれも順方向特性は温度依存性があり、規定された温度以下で検討す
る必要があります。
IGBT の線形近似は式 15、ダイオードの線形近似は式 16 のようになります。
vce (ic ) = VTO + RCE ⋅ ic
(15)
v fm (i fm ) = VFO + RAK ⋅ i fm
(16)
IGBT とダイオードの定常損失は導通電流と電圧の積分からもとめられ、式 15,16 を代入して
それぞれ式 17、18 のようになります。
Pcond_IGBT =
Pcond_Diode =
(
)
1 T
1 T
v
⋅
i
(t)dt
=
VTO ⋅ ic (t) + Rce ⋅ ic2 (t) dt
ce c
∫
∫
0
0
T
T
(17)
(
(18)
)
1 T
1 T
v
⋅
i
(t)dt
=
VFO ⋅ i f (t) + RAK ⋅ i 2f (t) dt
f
f
∫
∫
0
0
T
T
T は基本周期です。
実際の PWM 変調などを考慮すると SLLIMM-nano の実使用状況での損失を計算することは
非常に困難です。そのため以下の想定をします。
1. VVVF インバータを PWM でサイン波に変調している
2. スイッチング周波数は十分高く、出力電流はサイン波になっている
3. 付加は理想インダクタとする
これらの想定のもと、インバータ出力電流は式 19 のようになります。
i = Î cos(θ - φ )
(19)
Î:ピーク電流値、θ:ωt、φ:電圧電流間の位相


定常時の電力損失は次のように求められます。  dt =
Pcond_IGBT
V ⋅ Î
= TO
2π
π
dθ
ω
T=
,
π
+φ
2π 

ω 
+φ
RCE ⋅ Î 2 2
2
∫−π +φ ξ cos(θ - φ )dθ + 2π ∫−π +φ ξ cos (θ - φ )dθ
2
2
(20)
2
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π
V Î
Pcond_Diode = FO
2π
+φ
RAK Î 2
∫−π +φ (1 − ξ ) cos(θ - φ )dθ + 2π
2
2
π
+φ
∫ (1 − ξ ) cos (θ - φ )dθ
2
2
(21)
π
− +φ
2
ξは PWM のデューティー比で次のように表せます。
ξ=
1 + ma ⋅ cosθ
2
(22)
ma は PWM の変調度です。
以上から式 20,21 を計算して定常時の電力損失として、式 23 及び 24 が得られます。
Pcond_IGBT
2
 1 ma ⋅ cosφ  RCE ⋅ Î  1 ma ⋅ cosφ 
= VTO ⋅ Î 
+
+
 +

8
2π  8
3π 
 2π

2
 1 ma ⋅ cosφ  RAK ⋅ Î  1 ma ⋅ cosφ 
Pcond_Diode = VFO ⋅ Î 
−
+
 −

8
2π  8
3π
 2π


(23)
(24)
IGBT とダイオードをあわせた損失はその合計で式 25 のようになります。
Pcond = Pcond_IGBT + Pcond_Diode
(25)
これは IGBT,ダイオード一つの損失なので、3 相インバータの全損失はこの 6 倍になります。
4.2
スイッチング損失
スイッチング損失
スイッチング損失は、Figure 26 に示すようにスイッチングの遷移期間(ton 及び toff)に発生す
るパルス状の電力消費です。スイッチング損失はスイッチング遷移中のコレクタ電流とコレク
タ-エミッタ間電圧の電力積分として実験波形からも求められます。しかし、計算から損失を求
める場合には、実動作中の損失が電圧・電流・温度などの多くのパラメータに依存して変化し
てしまうため、4.1 節(4.1 定常損失)と同様の仮定をします。
この仮定の下での OFF から ON、ON から OFF へのそれぞれのスイッチング損失は式 26,27
のようになります。
Eon ( θ ) = Êon cos(θ - φ )
42/62
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(26)
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Eoff ( θ ) = Êoff cos(θ - φ )
(27)
Êon/Êoff:Tjmax、と最大 Îc の時の最大値、θ :ωt、φ:電圧と電流間の位相。
デバイスの損失はそのスイッチング周波数 fsw を考慮して式 28 のようになります。
π
1
Psw =
2π
∫
2
π
+φ
( EIGBT + EDiode ) ⋅ f swdθ =
( EIGBT + EDiode ) ⋅ f sw
(28)
π
- +φ
2
EIGBT と EDiode で IGBT とフリーホイリングダイオードの全損失を表します。また 3 相インバ
ータの全損失はこの 6 倍になります。
Figure 28 は STGIPN3H60 の実際のターンオンとターンオフの波形です。条件は以下の通り
です。
•
VPN=300V、IC=0.5A、Tj=100°C 、フルブリッジ、誘導性負荷、波形はローサイド IGBT
緑の波形が、スイッチング遷移期間に発生するパルス状の損失で、IC (赤)と VCE(黄)の掛け算
から求められたものです。それぞれの波形で µJ 表示されているエネルギーはデジタルオシロ
スコープの積分機能で求められたもので、スイッチング損失のエネルギー値です。
Figure 28: STGIPN3H60 通常の
通常のスイッチング波形
スイッチング波形
ターンオン
ton = 270ns
toff = 905ns
STGIPN3H60
ローサイド
Tj=100°C
VLIN
VLIN
VCE
VCE
IC
IC
Eoff=5.1µJ(*)
Eon=23.5µJ(*)
VLIN = 2V/Div
ターンオフ
STGIPN3H60
ローサイド
Tj=100°C
VCE = 100V/Div IC = 500mA/Div
(*) Eon and Eoff are the areas under the red plots
t = 100ns/Div
VLIN = 2V/Div
VCE = 100V/Div IC = 200mA/Div
t = 200ns/Div
E = ? (VCE · IC) dt
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4.3
熱抵抗について
熱抵抗について
動作中に発生する損失によってSLLIMM-nano中の半導体のジャンクション温度が上がり、そ
れは製品の性能と寿命に影響します。また、製品の信頼性と安全ため、ジャンクション温度は
データシートで記載された限界以下でなくてはならず、適切な冷却システムでパワーICから環
境へ熱を逃がす必要があります。
SLLIMM-nanoはヒートシンクなしで100Wまでモータをドライブできます。そのため放熱設
計は高効率と高信頼性のために非常に重要になってきます。そして、パッケージとその熱抵抗
が放熱を考える際の基本的な要素になります。
熱抵抗は熱の伝導路の熱伝導能力を定量化したものであり、通常その伝導路の電力消費とそ
こでの温度上昇から式29のようにあらわされます。
Rth =
∆T
∆P
(29)
データシートに規定されている熱抵抗は Rth(j-a)は自然空冷または強制空冷システムで一般的
に使われます。これはジャンクション温度と周囲温度間の温度差を、電力消費で割ったもので、
式 30 のようにあらわされます。
R th(j-a) =
T j − Tamb
PD
Figure 29にジャンクションと周囲までの熱抵抗を等価回路で示します。
Figure 29: 熱抵抗等価回路 Rth(j-a)
44/62
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(30)
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電力損失 Ptot は周期的に発生しますので、遷移期間の熱インピーダンスも考慮されなければ
なりません。これは同じ熱伝導路の温度差の時間変化を対応する電力で割って式 31 のように
あらわされます。
Zth ( t ) =
∆T ( t )
∆P
(31)
先ほどの熱抵抗の抵抗だけのモデルとは異なりますが、熱インピーダンスは RC 回路で等価
的にあらわすことができます。損失がパルス状に変化したときは、熱コンデンサの働きでジャ
ンクション温度の上昇に遅れが発生します。この特徴を使うことで SLLIMM-nano の短い時間
での過電流時の熱解析が可能です。Figure 30 にシングル IGBT の SLLIMM-nano 製品でのジャ
ンクションから周囲までの熱インピーダンスの時間変化を示します。
Figure 30: シングル IGBT の熱インピーダンス Zth(j-a)特性
SLLIMM-nano Zth(j-a)
60
50
Zth(j-a) (°C/W)
40
30
20
10
0
1.E-05
1.E-04
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
1.E+03
time (sec)
一般的には消費電力も時間変化します。デバイス温度は式31の畳み込み積分をから式32のよ
うに計算されます。
t
∆T ( t ) = ∫ Zth ( t − τ ) ⋅ P( τ )dτ
(32)
0
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この計算を実施するにあたってはシミュレーションツールを使うのが非常に便利です。熱イ
ンピーダンスの遷移モデルにより時間的に変化するジャンクション温度上昇を簡単に見積もる
ことが可能です。
熱の電気的モデルを使うことで熱インピーダンスZth(t)はRC回路であらわせます。RCの繰り
返し回路の段数がモデルの精度に該当してきます。シミュレーションでの計算では12段のRC
の合成によりそれぞれのモデルの精度を高めています。
Figure 31とFigure 32にカウエルの方法とフォスターの方法のそれぞれで、熱インピーダンスの
RC等価回路を示します。
Figure 31: カウエル RC 等価回路
Tj
Ptot(t)
R1
Zth(t)
R3
R2
C1
C2
Rn
C3
Cn
Tamb
Figure 32: フォスター RC 等価回路
Tj
Ptot(t)
R1
R2
R3
Rn
Zth(t)
Tamb
C1
C2
C3
Cn
熱伝導のRC回路モデルでは熱抵抗と熱容量を、抵抗とコンデンサで表します。温度差はRC
回路モデル中の電圧、電力はRC回路モデル中の電流となります。ケース温度はDC電圧源とあ
らわされジャンクション温度の初期値となります。
熱インピーダンスモデルは測定データに合わせた方程式から生成しています。Table 11にそ
の方程式の変数である抵抗、コンデンサの値をカウエル、フォスターそれぞれの方式毎に示し
ます。
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Table 11: カウエルと
カウエルとフォスターの
フォスターの RC 熱回路定数
Element
Zth(j-a) カウエル等価回路
カウエル等価回路
Zth(j-a) フォスター等価回路
フォスター等価回路
R1 (°C/W)
8.96E-01
R2 (°C/W)
9.37E-01
R3 (°C/W)
5.92E-01
R4 (°C/W)
1.37E-02
1.81E-01
1.71E-01
8.12E-02
5.11E-02
1.86E-01
6.58E-01
5.00E-04
6.95E-02
5.14E-01
4.43E+00
7.90E+00
3.58E+01
1.55E-01
1.67E-01
1.19E+00
9.09E-01
1.84E-02
1.07E-03
1.77E-03
8.80E-02
1.19E-02
4.74E-02
2.35E-01
1.75E+00
R5 (°C/W)
2.11E-02
R6 (°C/W)
2.84E+00
R7 (°C/W)
1.26E-01
R8 (°C/W)
4.48E-02
R9 (°C/W)
4.06E-01
R10 (°C/W)
4.93E+00
R11 (°C/W)
9.38E+00
R12 (°C/W)
2.99E+01
C1 (W·sec/°C)
6.25E-04
C2 (W·sec/°C)
3.81E-03
C3 (W·sec/°C)
4.69E-03
C4 (W·sec/°C)
2.41E-03
C5 (W·sec/°C)
4.39E-03
C6 (W·sec/°C)
3.27E-03
C7 (W·sec/°C)
1.82E-02
C8 (W·sec/°C)
1.32E-02
C9 (W·sec/°C)
3.63E-03
C10 (W·sec/°C)
6.72E-02
C11 (W·sec/°C)
2.75E-02
C12 (W·sec/°C)
2.22E+00
4.4
電力損失計算例
前節まで電力損失の計算と熱の取り扱いについて見てきましたが、それらを利用して、3相
VVVF インバータの、最大コレクタ電流とスイッチング周波数特性がシミュレーションできま
す。ドライブ条件はサイン波変調PWM、 6ステップ 120°通電です。
Figure 33にSLLIMM-nanoの安定状態での最大電流を示します。周囲温度が25℃、50℃、
75℃のときのそれぞれでジャンクション温度が最大の150℃まで上がった場合になっています。
これはシステムの信頼性が保障される一般的な動作条件です。シミュレーションで考慮された
条件は以下の通りです。
• VPN = 300 V, ma = 0.8, cosφ = 0.6, Tj = 150 °C, f SINE = 60 Hz, duty-cycle = 60% (6 ステッ
プ 120°通電時) 最大の Rth(j-c),、定常時の VCE(sat) と Etot
Doc ID 022726_JA Rev 1
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Figure 33: 最大電流 IC(RMS) vs スイッチング周波数
スイッチング周波数 fsw シミュレーション結果
シミュレーション結果
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5 設計と
設計と実装の
実装のガイドライン
このセクションでは SLLIMM ファミリを適切に製品に組み込むために、メインレイアウトの
最適設計と実装、適切なハンドリングと組み立てについての主要な推奨について紹介します。
5.1
推奨レイアウト
推奨レイアウト
高電圧、高周波スイッチングを使用した製品では、PCBレイアウトの最適化は非常に重要で
場合によっては致命的な影響を引き起こします。PCBレイアウト設計は配線長・配線幅や部
品・回路の配置場所、配線の適切な引き回しや、さまざまなシステムのトレードオフ関係を持
つ要素の調整等、多方面からの検討が必要であり非常に複雑です。
よいレイアウトは、適切な機能と期待された性能を発揮する助けになります。逆に、レイア
ウト設計がよくなければ、EMIノイズの増加や回路寄生成分によるスパイク電圧の上昇が発生
し、損失が増加し、さらに制御やセンシングの誤動作を引き起こす要因にもなります。
SLLIMM-nanoを使ったコンパクトソリューションは最適化されたゲートドライバ回路を搭載
してます。内部は寄生成分を減らすように最適に設計されており、ユーザはグランド回りとノ
イズフィルタ等の検討に注力することができます。
ここでは3相のアプリケーションを念頭において、レイアウト設計のガイドラインを紹介し
ます。
5.1.1 一般的な
一般的なガイドライン
•
•
•
•
•
•
•
•
PCB 配線はできるだけ短く、回路はできるだけ小さくしノイズの発生を抑える
高電圧スイッチング信号と信号線の距離を保つ。特に各相出力線は大電流、大電圧の変
動があるので、信号線はオペアンプ、コンパレータを使うアナログ回路から隔離する。
センス抵抗 RSENSE はローサイドのピン SLLIMM-nano (NU, NV, NW)のできる限り近くに
配置する。また、センス抵抗を SLLIMM-nano のグランドラインに直接つなげることで
寄生インダクタンスを減らす。寄生インダクタンスを更に減らすために、低インダクタ
ンスタイプの表面実装抵抗を使用する。
グランドループを作らないため、シングル配線は 2 箇所の異なった場所でグランド接続
する。
RC フィルタは効果を高めるため、SLLIMM-nano のできるだけピンそば近くに置く。
サージ破壊を防ぐため、整流コンデンサと P, N ピンの間はできるだけ短く配線する。
高周波、高耐圧のノンインダクティブタイプ 0.1 から 0.22µF のコンデンサを P と N ピ
ンの間に置くことが推奨される。
GND や HV のような固定電圧線はデジタル・アナログの信号線をスイッチング(OUTU,
OUTV OUTW 等)から発生するノイズのシールドとして使用可能。
一般的にそれぞれのハーフブリッジはスター結線にして、RSENSE はそれぞれ近くに配
置するとともに、パワーグラウンドの近くに置く。
Figure 34 に全ての SLIMM-nano 製品の標準的な推奨項目をまとめます。
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Figure 34: 標準的な
標準的な推奨項目
特にいくつかのレイアウト間違いには注意が必要です。Figure 35, 36 に間違った PCB 設計
例を示します。
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Figure 35:悪
悪いレイアウト例
レイアウト例 1
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Figure 36: 悪いレイアウト例
レイアウト例 2
Ground path
WRONG!
長いグランドループ
推奨されたスター結線不使用
内外グランド線は高電圧の
スイッチング配線から影響を受ける
可能性があり性能の劣化に繋がります
センス抵抗
センス抵抗
コールド端子
端子
コールド
WRONG!
センス抵抗のコールド端子が
スター結線の中央になっていない
SLLIMM-nano
ground
WRONG!
SLLIMM-nano とグランド間の
接続が最短になっていない
Bulk
capacitor
5.2
SLLIMM-nano
実装と
実装と放熱
SLLIMM-nano はとてもコンパクトな IPM 製品で基板上にヒートシンクや冷却システムを使
用することなく 100W までのモータ駆動が可能です。ねじ穴無しの NDIP トランスファモール
ド構造パッケージなので、もしより高い電力で使用する際は専用の冷却技術を使う必要があり
ます。
もっとも簡単なものは自然冷却と適切な PCB 設計によって実現するものです。このとき
PCB とパッドは、ここのパッケージに対し効率的にボードと周囲に放熱するヒートシンクとし
て機能します。そのため、電源とパッケージのグランドピンの置かれるメタル配線を最大化す
るのが熱抵抗を下げ電力効率をあげるのに重要です。
熱の観点から重要なピンは+DC ピン(P)と各相の出力ピン(U, V, W)です。それぞれ銅のリー
ドフレームに直結されていますが、そこに主な熱源である IGBT ダイオードも実装されます。
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SLLIMM™-nano small low-loss intelligent molded module
メタル配線の広さ・銅プレートの厚み、それらの置き場所や PCB 上の SLIMM-nano と他の
熱源からの距離等もトータルの熱性能に影響します。PCB の両面から直接銅を介して、またサ
ーマルビアを介して接続し PCB の両面を使うことで放熱特性を向上させレイアウトの複雑性を
減らせます。
Figure 37はPCBでの放熱に使用されるメタル配線例です。
Figure 37: 放熱手法
放熱手法:
手法 PCB 上の銅プレート
より高い放熱性能には、小型で十分大きな外部のヒートシンクをSLIMM-nanoに密着させて
使用します。ヒートシンクはパッケージ上面にFigure 38の用に粘着性の放熱シート、接着剤な
どで固定できます。
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Figure 38: 放熱手法
放熱手法 パッケージに
パッケージに密着させた
密着させたヒートシック
させたヒートシック
Figure 38の例とは別に、Figure 39 にねじ止めを利用したヒートシンク固定例を示します。
PCBを通してねじ止めするので固定方法としてはより強固なものです。この方法でヒートシン
クを使用するには、SLLIMM-nanoの側面からの安全な距離を確保するのに熱伝導グリース層や
熱伝導ゴムが必要です。
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Figure 38: 放熱手法 PCB にねじ止
にねじ止めするヒートシンク
めするヒートシンク
Heatsink
Thermal grease or thermal rubber
(100~200 µm thickness)
SLLIMM-nano
PCB
Mounting
screw
Keep safety distance
between heatsink and cut pins
Figure 38, 39の例以外にもさまざまなヒートシンクがあり、ボードを完全に金属ケースに入
れてしまうという方法もあります。どんなヒートシンクを使うにしても効果を最大に発揮させ
るために何らかの使用上の注意があります。表面の凹凸をなくすことはSLIMM-nanoとヒート
シンクの密着度を高めるために基本的な要素です。シリコングリース層や放熱接着剤を使用す
る際もパッケージとヒートシンクの間隔は100µmから200µmにして接着部の熱抵抗を低くしま
す。接着面は均一に薄くコーティングし、空隙のできないように注意します。SLLIMM-nanoの
動作温度範囲で性質の安定した高品質グリースを使用してください。
6 ハンドリングと
ハンドリングと保存について
保存について
半導体デバイスへの不適切な取り扱いによる温度や物理的ストレスは電気的特性や信頼性に
重大な影響を及ぼします。SLLIMM-nano は ESD に敏感なデバイスであり ESD ショックによ
り破壊されてしまう可能性があります。パワーデバイスを取り扱う全ての装置は、標準の ESD
対策(運搬、保管、組み立てを含む)に沿っている必要があります。
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運搬
SLLIMM-nano を運搬する際には注意が必要です。運搬中に物理的な変動やショックにさらされ
てはいけません。
• SLLIMM-nano の動作の信頼性を組み込み前に損なわないため、投げたり、落としたり
することは厳禁です。
• 濡れた状態は危険で、湿度もパッケージに悪影響を及ぼす可能性があります。
• 実装中にはパッケージのみをつかむようにして、リードを触らないようにします。
• パッケージを、曲げたり、上下さかさまにして押したり、均一でない力を与えたりする
と端子や樹脂が破壊される可能性があります。
保管
•
•
•
•
•
保管中に外部から圧力、負荷を加えない
湿度は 40%から 75%の範囲に保ち、温度は 5℃から 35℃の間に保つ。
リードの半田付け性能は参加や腐食で劣化します。保管場所の温度変化は最小にするこ
とが求められます。
ほこりの多いような汚い環境や、有害なガスがあるところでは保管できません。
帯電防止の容器を使用します。
電気的ショック
電気的ショックと
ショックと温度による
温度による損傷
による損傷
• 怪我や損傷をさけるため動作中の SLLIMM-nano 製品やヒートシンクにはさわってはい
けません。
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6.1.1 パッケージ仕様
パッケージ仕様
Figure 39: NDIP-26L のパッケージ仕様
パッケージ仕様
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7 References
[1] AN3338 application note
[2] STGIPN3H60A datasheet
[3] STGIPN3H60 datasheet
[4] AN2738 application note
[5] UM1483 user manual
[6] UM1517 user manual
[7] Minimum-Loss Strategy for Three-Phase PWM Rectifier, IEEE, JUNE 1999
8 Revision history
Date
xx-Jul-2012
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Version
1
Changes
Initial release, corresponds to version xx of English
document.
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INDICE
アプリケーションノート................................................ Error! Bookmark not defined.
SLLIMM™-nano ............................................................... Error! Bookmark not defined.
small low-loss intelligent molded module nano ................ Error! Bookmark not defined.
イントロダクション.............................................................................................................. 1
1
インバータ設計の基本と SLLIMM-nano ソリューション ....................................... 2
1.1
製品概要.................................................................................................................. 3
1.2
製品ラインアップとネーミング.......................................................................... 6
1.3
内部回路.................................................................................................................. 7
1.4
絶対最大定格.......................................................................................................... 9
2
電気的特性と機能........................................................................................................ 11
2.1
IGBT ...................................................................................................................... 11
2.2
フリーホイリングダイオード............................................................................ 11
2.3
高耐圧ゲートドライバ........................................................................................ 12
2.3.1 駆動信号入力.................................................................................................... 14
2.3.2 高電圧レベルシフト........................................................................................ 16
2.3.3 電源電圧低下保護............................................................................................ 16
2.3.4 デッドタイムとインターロック機能............................................................ 17
2.3.5 異常検出コンパレータ.................................................................................... 19
2.3.6 短絡検出とスマートシャットダウン............................................................ 20
2.3.7 短絡保護タイミングチャートとスマートシャットダウン機能................ 21
2.3.8 電流検出シャント抵抗の選択........................................................................ 23
2.3.9 RC フィルタ回路の選択 ................................................................................. 24
2.3.10 電流センスオペアンプ.................................................................................... 25
2.3.11 ブートストラップ回路.................................................................................... 27
2.3.12 ブートストラップコンデンサの選択............................................................ 29
2.3.13 ブートストラップコンデンサの初期充電.................................................... 31
3
パッケージ.................................................................................................................... 32
3.1
パッケージ構造.................................................................................................... 32
3.2
パッケージ外形と寸法........................................................................................ 34
3.3
入出力ピン............................................................................................................ 35
4
電力消費と損失............................................................................................................ 39
4.1
定常損失................................................................................................................ 40
4.2
スイッチング損失................................................................................................ 42
4.3
熱抵抗について.................................................................................................... 44
4.4
電力損失計算例.................................................................................................... 47
5
設計と実装のガイドライン........................................................................................ 49
5.1
推奨レイアウト.................................................................................................... 49
5.1.1 一般的なガイドライン.................................................................................... 49
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5.2
実装と放熱 ............................................................................................................ 52
6
ハンドリングと保存について .................................................................................... 55
6.1.1 パッケージ仕様 ................................................................................................ 57
7
References ...................................................................................................................... 58
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Disclaimer for Japanese
Japanese translation
この資料は、STMicroelectronics NV 並びにその子会社(以下 ST)が英文で記述した資料(以下、
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ら和文へ翻訳して作成したものです。この資料は現行の正規英語版資料の近時の更新に対応してい
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規英語版資料を事前にご確認下さい。ST 及び ST マイクロエレクトロニクス㈱は、現行の正規英語版
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更新がなされていないこの資料の情報に基づいて発生した問題や障害などにつきましては如何なる責
任も負いません。
English translation for above Japanese
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to the renewal of the current Regular English Document, despite the fact that such Renewal provides the
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よくお読
よくお読み下さい:
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ビスに言及する場合、そのような言及は、ST が当該第三者の製品、サービスまたはそれらに含
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ありません。
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販売条件に規定される
規定される場合
される場合を
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商品性、特定目的への
特定目的への適合性
への適合性(その
適合性 その他管轄
その他管轄の
他管轄の如
何を問わず法律
わず法律で
法律で認められる同等
められる同等のもの
同等のもの)、
のもの 、若しくは特許権
しくは特許権、
特許権、著作権その
著作権その他
その他の知的財産権の
知的財産権の侵害
に関する黙示
する黙示の
黙示の保証を
保証を含め、ST 製品の
製品の使用または
使用または販売
または販売に
販売に関する明
する明示または黙示
または黙示の
黙示の保証をすべ
保証をすべ
て放棄します
放棄します。
します。
権限のある
権限のある ST の代表者二人
代表者二人による
二人による書面
による書面で
書面での明示の
明示の許可がある
許可がある場合
がある場合を
場合を除き、ST 製品を
製品を軍事用
軍事用、
航空技術
航空技術、
技術、宇宙用、
宇宙用、救命用
救命用、若しくは生命維持
しくは生命維持用
生命維持用に用いること、
いること、または
または不具合若
不具合若しくは
しくは誤動作
により負傷
により負傷または
負傷または死亡事故
または死亡事故、
死亡事故、深刻な
深刻な財産上または
財産上または環境上
または環境上の
環境上の損害を
損害を招くおそれのある製品
くおそれのある製品または
製品または
システムへ
システムへ使用することは
使用することは、
することは、推奨、
推奨、認可、
認可、保証されておりません
保証されておりません。「
されておりません。「自動車向
。「自動車向け
自動車向け」として指定
として指定
されていない ST 製品を
製品を自動車用
自動車用に用いることは
いることは、使用者自身
使用者自身の
自身の責任において
責任においてなさ
においてなされるものと
なされるものと
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します。
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