AN-1040: ワイヤレス・トランスミッタの性能を改善する RF 電力キャリブレーション (Rev. 0) PDF

AN-1040
アプリケーション・ノート
ワイヤレス・トランスミッタの性能を改善する RF 電力キャリブレーション
著者:Eamon Nash
はじめに
dB~30 dB 低くなります。この方法で電力を分岐すると、送信
パスで電力損失が発生します。この方向性カプラーの挿入損失
は、通常、数十分の 1 デシベルです。
ワイヤレス・トランスミッタをデザインする際には、RF 電力の
測定と制御は重要事項です。ハイパワーRF アンプ(PA)はオープ
ン・ループ・モードで動作することはほとんどありません。す
なわち、アンテナに供給される電力がモニタされることはあり
ません。送信電力、ネットワークの堅牢性、他の無線ネットワ
ークとの共存性についての規制条件などの外部要因から送信電
力の厳しい管理が必要とされます。これらの外部条件の他にも、
RF 電力を正確に制御すると、スペクトル性能が向上するため、
トランスミッタのパワー・アンプでコストとエネルギを節約す
ることができます。
最大送信電力範囲 30 dBm~50 dBm (1 W~100 W)のワイヤレ
ス・インフラストラクチャ・アプリケーションでは、方向性カプ
ラーからの信号はそれでも測定する RF ディテクタにとって大
き過ぎます。このため、カプラーと RF ディテクタの間に減衰
量の追加が必要です。
現代の rms および非 rms 応答の RF ディテクタは、30 dB~100 dB
の電力検出範囲を持ち、温度と周波数に対して安定な出力を提
供します。大部分のアプリケーションでは、ディテクタ出力が
A/D コ ン バ ー タ (ADC) に 入 力 さ れ ま す 。 不 揮 発 性 メ モ リ
(EEPROM)に格納されているキャリブレーション係数を使って、
ADC 出力コードが送信電力測定値に変換されます。この電力測
定値は、セットポイントの電力レベルと比較されます。セットポ
イントと電力測定値が一致しない場合、電力の調整が行われま
す。この電力調整は、シグナル・チェーン内にある多数のポイ
ントの内のいずれかのポイントで行うことができます。無線を
駆動するベースバンド・データの振幅、可変ゲイン・アンプ(IF
または RF)、または PA のゲインを調節することができます。こ
の方法では、ゲイン制御ループ自体が制御して、送信電力を所
望の範囲内に維持します。VVA と PA のゲイン制御伝達関数は
非直線性を持つことが多いことに注意することは重要です。こ
のため、ゲイン調整から発生する実際のゲイン変化に不確定性が
生じます。このため、生じた変化を帰還してその後の操作にガ
イダンスを提供する制御ループが必要になります。
送信電力を調節するためには、PA 出力電力の何らかのキャリブ
レーションが必要になります。キャリブレーション・アルゴリ
ズムは、複雑さと有効性の面から大幅に変わります。このアプリ
ケーション・ノートでは、一般的な RF 電力制御方式の実現方
法について説明し、種々の出荷時キャリブレーション・アルゴ
リズムの有効性と効率を比較します。
電力制御機能を内蔵する代表的なワイヤレス・ト
ランスミッタ
図 1 に、送信電力の計測機能と制御機能を持つ代表的なワイヤ
レス・トランスミッタのブロック図を示します。方向性カプラ
ーを使って、PAからの信号の小さい部分を分岐してRFディテク
タに入力します。この場合、カプラーはデュプレクサとアイソ
レータの後ろのアンテナの近くに配置します。これらに対応す
る電力損失は、キャリブレーション時に考慮されます。
方向性カプラーは一般に 20 dB~30 dB の結合係数を持つため、
カプラーから出力される信号は、アンテナへ行く信号より 20
TO
RECEIVER
PIN
VGA/
VVA
HPA
DUPL
ATTN
DAC
MICROCONTROLLER
OR DSP
ADC
RF
POWER
METER
RF
DETECTOR
08385-001
EEPROM
POUT
図 1.送信電力制御機能を内蔵する代表的な RF パワー・アンプ(内蔵 RF パワー・
ディテクタが送信電力について電流レベルの連続帰還を提供し、外部 RF 電力計
と RF パワー・ディテクタとの組み合わせを使ってトランスミッタをキャリブレ
ーションします)
Rev. 0
本
社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル
電話 03(5402)8200
大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー
電話 06(6350)6868
AN-1040
目次
はじめに..............................................................................................1
RF電力制御ループのキャリブレーション ......................................5
電力制御機能を内蔵する代表的なワイヤレス・トランスミッタ1
RF電力制御ループのフィールドでの動作 ......................................6
出荷時キャリブレーションの必要性...............................................3
ポストキャリブレーション誤差.......................................................7
RFディテクタの伝達関数 .................................................................3
結論......................................................................................................8
Rev. 0
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AN-1040
が、絶対精度を持つ内蔵電力計のように動作します。この内蔵
電力計は、トランスミッタが常に既定の偏差内で所望電力を放
射できるようにします。
出荷時キャリブレーションの必要性
前述の代表的なワイヤレス・トランスミッタ・システムでは、
非常に優れた絶対ゲイン精度仕様を提供する部品はほとんどあ
りません。±1 dB の送信電力誤差目標について考えます。PA、
可変電圧減衰器(VVA)、RF ゲイン・ブロック、シグナル・チェ
ーン内のその他の部品のようなデバイスの絶対ゲインはデバイ
スごとに変わるため、出力電力の不確定性が±1 dB 以上になる
ことがあります。さらに、シグナル・チェーンのゲインは温度
と周波数の変化に対して変わります。このため、送信電力を連
続的にモニタ/制御することが必要です。
出荷時キャリブレーション手順は、RF電力制御ループのキャリ
ブレーションのセクションで説明します。まず、代表的なRFパ
ワー・ディテクタの特性を調べる必要があります。システムの
RFディテクタの、温度と周波数に対する直線性と安定性が、キ
ャリブレーション作業の複雑さと実現可能なポストキャリブレ
ーション精度に大きな影響を与えます。
RFディテクタの伝達関数
出力電力キャリブレーションは、外部リファレンスの高精度を
被キャリブレーション・システムに移転することと定義するこ
とができます。キャリブレーション手順には、図 1 に示すよう
に、アンテナを切り離してRF電力計のような外部測定リファレ
ンスで置き換えることが含まれます。この方法では、高精度外
部電力計の精度がトランスミッタの内蔵パワー・ディテクタに
移転されます。キャリブレーション手順には、電力レベルの設
定、電力計値とRFディテクタ電圧の取得、これらすべての情報
の不揮発性メモリ(EEPROM)への格納が含まれます。次に、電
力計を取り外してアンテナを再接続すると、トランスミッタ出
力電力が正確に制御されるようになります。アンプ・ゲインの
温度特性、送信周波数、所望出力電力レベルのようなパラメー
タが変化すると、キャリブレーションされた内蔵RFディテクタ
図 2 に、対数応答RFディテクタ(ログアンプ)の温度特性の伝達
関数を示します(説明のために誇張してあります)。ログアンプ
の伝達関数は、直線動作範囲内でシンプルな 1 次式を使ってモ
デル化することができます。+25°C、+85°C、−40°Cでの出力電圧
対入力電力の 3 本のカーブを示します。25°Cでのディテクタ出
力電圧は、入力電力−60 dBmで約 1.8 Vから 0 dBmで 0.4 Vまで
の範囲になります。伝達関数は、上書きしてある理想直線に良
く一致しています。伝達関数は両端でこの直線から乖離してい
ますが、−10 dBm~−5 dBmの電力レベルで非直線性の傾向がみ
られることにも注意してください。
DETECTOR OPERATING RANGE
2.2
VOUT AT –40°C
VOUT AT +25°C
VOUT AT +85°C
2.0
1.8
1.6
VOUT (V)
1.4
DETECTOR SLOPE = Y/X
X
1.2
Y
1.0
DETECTOR
NONLINEARITY
0.8
0.6
0.4
INTERCEPT
0
–65 –60 –55 –50 –45 –40 –35 –30 –25 –20 –15 –10 –5
PIN (dBm)
0
5
10 15 20
08385-002
0.2
図 2.対数応答 RF パワー・ディテクタの伝達関数(VOUT 対 PIN)、説明のために温度ドリフトを誇張
Rev. 0
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簡単な計算で、このディテクタは約−25 mV/dB のスロープを持
っていることが分かります。すなわち、入力電力が 1 dB 変化す
ると、出力電圧が 25 mV 変化します。このスロープは、ダイナ
ミック・レンジの直線部分で一定です。このため、非直線性が
少し低下しますが (約−10 dBm)、25°C での伝達関数を次式を使
ってモデル化することができます。
定値の変化に対応します。これは大部分の実際のシステムでは許
容できない値です。実用的には、温度ドリフトが小さい伝達関
数を持つディテクタが必要です。これにより、周囲温度で実行
されるキャリブレーション手順が温度に対しても有効になり、
トランスミッタの周囲温度での出荷時キャリブレーションが可
能になるため、高温と低温での、費用と時間を要するキャリブ
レーション・サイクルを回避することができます。
VOUT =スロープ× (PIN −インターセプト)
トランスミッタが周波数に即応し、一定の周波数帯域内で複数
の周波数を送信する必要がある場合、ディテクタの周波数特性
に注意する必要があります。理想的には、一定の周波数帯域内
で応答が大きく変化しない RF ディテクタを使う必要があります。
これにより、1 つの周波数(一般に帯域中心)でのトランスミッタ
のキャリブレーションが可能になるため、周波数が変化した際
の精度の低下が無視できるようになります。
ここで、インターセプトは外挿した直線がx軸と交わるポイント
です(図 2 参照)。
したがって、ディテクタの伝達関数はこのシンプルな 1 次式を
使ってモデル化することができます。キャリブレーション手順
では、2 点だけの電力レベルを測定して、この式を使うことに
よりディテクタの伝達関数を得ることができるため、キャリブ
レーションでこの式は便利です。
次に、この理想ディテクタの温度に対する動作を検討します。
入力電力–10 dBm では、出力電圧が周囲温度から−40°C または
+85°C までに対して約 100 mV 変化することに注意してください。
スロープの前述の計算(−25 mV/dB)から、これは±4 dB の電力測
表 1 に、アナログ・デバイセズが提供する種々のrmsおよび非
rms応答ディテクタの検出範囲と温度安定性を示します。
表 1.RMS および非 RMS 応答 RF パワー・ディテクタ
Device
AD8317
AD8318
AD8319
ADL5513
ADL5519
AD8361
ADL5501
AD8362
AD8363
AD8364
Rev. 0
Max Input
Frequency (GHz)
10
8
10
4
10
2.5
6
3.8
6
2.7
Dynamic Range (dB)
55
70
45
80
62
30
30
65
50
60
Temperature
Drift (dB)
±0.5
±0.5
±0.5
±0.5
±0.5
±0.25
±0.1
±1.0
±0.5
±0.5
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Package
2 mm × 3 mm 8-lead LFCSP
4 mm × 4 mm 16-lead LFCSP
2 mm × 3 mm 8-lead LFCSP
3 mm × 3 mm 16-lead LFCSP
5 mm × 5 mm 32-lead LFCSP
6-lead SOT-23, 8-lead MSOP
2.1 mm × 2 mm 6-lead SC-70
6.4 mm × 5 mm 16-lead TSSOP
4 mm × 4 mm 16-lead LFCSP
5 mm × 5 mm 32-lead LFCSP
Comments
Non-rms log detector
Non-rms log detector
Non-rms log detector
Non-rms log detector
Dual non-rms log detector
Linear in V/V rms detector
Linear in V/V rms detector
RMS log detector
RMS log detector
Dual rms log detector
AN-1040
SET RF POWER TO MAX POWER (APPROXIMATELY)
MEASURE CODE FROM RF LOG DETECTOR ADC (CODEHIGH)
USE RF POWER METER TO
MEASURE POWER AT ANTENNA CONNECTOR (PWR HIGH) (UNIT = dBm)
SET RF POWER TO MIN POWER (APPROXIMATELY)
MEASURE CODE FROM RF LOG DETECTOR ADC (CODELOW)
USE RF POWER METER TO
MEASURE POWER AT ANTENNA CONNECTOR (PWR LOW)
SLOPE = (CODEHIGH – CODELOW)/(PWRHIGH – PWRLOW) (UNIT = CODES/dB)
STORE SLOPE AND INTERCEPT IN NONVOLATILE RAM
08385-003
INTERCEPT = PHIGH – (CODEHIGH/SLOPE)
図 3.ログ・ディテクタ内蔵のトランスミッタをキャリブレーションするシンプルな 2 ポイント・キャリブレーション手順
RF電力制御ループのキャリブレーション
図 3 に、図 1 に示したようなトランスミッタのキャリブレーシ
ョンに使用できるフローチャートを示します。このシンプルで
迅速な 2 ポイント・キャリブレーションは、高精度な電力レベ
ルの設定を必要としない場合(ただし測定は高精度)に有効です。
このキャリブレーションを有効にするためには、内蔵RFディテ
クタは温度と周波数に対して安定であり、かつシンプルな式で
モデル化できる予測可能な応答を持つ必要があります。
トランスミッタの動作電力範囲を RF ディテクタの直線動作範
囲に対応させます。始めに、アンテナを切り離し、電力計をア
ンテナ・コネクタに接続します。次に、出力電力レベルを最大
Rev. 0
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電力の近くに設定します。電力計でアンテナ・コネクタでの電
力を測定して、トランスミッタの内蔵マイクロコントローラまた
はデジタル信号プロセッサ(DSP)に送信します。同時に、RF デ
ィテクタ ADC でサンプルし、読み出し値をトランスミッタのプ
ロセッサへ入力します。
次に、トランスミッタの出力電力を最小電力に近いレベルに減
少させて、手順(アンテナ・コネクタでの電力測定と RF ディテク
タ ADC でのサンプル)を繰り返します。
これらの 4 個の読み出し値(低電力レベルと高電力レベル、小さ
いADCコード値と大きいADCコード値)を使って、スロープとイ
ンターセプトを計算して(図 3 参照)、不揮発性メモリへ格納す
ることができます。
AN-1040
DETERMINE DESIRED OUTPUT POWER (PSET )
SET OUTPUT POWER-BASED ON BEST FIRST GUESS
ENSURING THAT (POUT < PSET )
MEASURE CODE FROM RF LOG DETECTOR ADC (CODEOUT)
CALCULATE TRANSMITTED POWER
POUT = INTERCEPT + CODEOUT/SLOPE
IS ABS |PSET – POUT|
≤0.5dB
YES
NO
INCREMENT VGA GAIN
BY APPROXIMATELY 0.5dB
POUT > PSET
IS POUT > PSET
OR IS POUT < PSET
DECREMENT VGA GAIN
BY APPROXIMATELY 0.5dB
08385-004
POUT < PSET
図 4.キャリブレーション後のトランスミッタの動作
電力レベルが偏差内に収まったとき、連続的にモニタし、必要に
応じて調節します。例えば、シグナル・チェーン内の部品のゲ
インが温度変化により変動する場合、電力測定値が±0.5 dB のセ
ットポイント範囲を超えたときループが動作を開始します。
RF電力制御ループのフィールドでの動作
図 4 に、キャリブレーション後にトランスミッタで電力を正確
に設定する際に使用できるフローチャートを示します。この例
では、送信電力誤差を±0.5 dB以下にすることが目標です。最初
に、出力電力レベルを最適な推測値に設定します。次に、ディ
テクタADCでサンプルします。スロープとインターセプトをメ
モリから取得して、送信する出力電力レベルを計算します。
このアルゴリズムには他の変動も存在します。例えば、出力電
力をできるだけ小さくして、セットポイントから 0.5 dB 以上超
えないようにする場合は、別の手法を使う必要があります。こ
の場合、最初に電力設定値を所望電力レベルより小さいレベル
に設定します(偏差の外側)。次にループにより電力を測定しま
すが、セットポイントのインクリメントは小さくなります(たと
えば+0.1 dB)。この方法では、出力電力は常にセットポイントよ
り小さい値からセットポイントに近づきます。 −0.5 dB 範囲に
入ると、直ちに電力のインクリメントが停止します。これによ
り、実際のレベルは必ずセットポイント・レベルより低くなり、
かつ偏差以内に収まることが保証されます。
出力電力が PSET の±0.5 dB に収まらない場合は、出力電力を可変
電圧減衰器(VVA)を使って約 0.5 dB だけインクリメントまたは
デクリメントします。この"約"という用語は、VVA の伝達関数
が非直線になることがあるために使っています。送信電力を再
度測定し、送信電力誤差が±0.5 dB より小さくなるまでさらに電
力をインクリメントします。
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2.0
1.5
1.8
1.5
1.6
1.0
1.6
1.0
1.4
0.5
1.4
0.5
1.2
0
1.2
0
1.0
–0.5
1.0
–0.5
0.8
–1.0
VOUT1
0.8
–1.0
0.6
–1.5
0.6
–1.5
0.4
–2.0
0.4
–2.0
PIN2
PIN (dBm)
0
5
PIN1
INTERCEPT
0.2
–65 –60 –55 –50 –45 –40 –35 –30 –25 –20 –15 –10 –5
図 5.キャリブレーション・ポイントをディテクタの直線動作範囲内
に設定し、優れた全体性能を提供する 2 ポイント・キャリブレーシ
ョン
2.0
2.0
1.5
1.6
1.0
1.4
0.5
1.2
0
1.0
–0.5
VOUT (V)
1.8
–1.0
0.8
–1.5
0.6
58dB DYNAMIC RANGE
–2.0
0.2
–65 –60 –55 –50 –45 –40 –35 –30 –25 –20 –15 –10 –5
PIN (dBm)
0
5
2.5
VOUT AT –40°C
VOUT AT +25°C
VOUT AT +85°C
ERROR AT –40°C
ERROR AT +25°C
ERROR AT +85°C
2.0
1.8
1.5
1.6
1.0
1.4
0.5
1.2
0
1.0
–0.5
0.8
–1.0
0.6
–1.5
0.4
–2.0
0.2
–65 –60 –55 –50 –45 –40 –35 –30 –25 –20 –15 –10 –5
–2.5
08385-006
0.4
PIN1
2.2
2.5
ERROR AT –40°C
ERROR AT +25°C
ERROR AT +85°C
–2.5
図 7.キャリブレーション・ポイントを互いに接近させた 2 ポイン
ト・キャリブレーションでは狭い範囲で精度が向上します
ERROR (dB)
2.0
VOUT AT –40°C
VOUT AT +25°C
VOUT AT +85°C
5
PIN (dBm)
PIN2
2.2
0
08385-007
0.2
–65 –60 –55 –50 –45 –40 –35 –30 –25 –20 –15 –10 –5
VOUT (V)
2.0
ERROR (dB)
VOUT2
ERROR AT –40°C
ERROR AT +25°C
ERROR AT +85°C
PIN (dBm)
0
5
ERROR (dB)
1.8
2.5
VOUT AT –40°C
VOUT AT +25°C
VOUT AT +85°C
–2.5
08385-008
VOUT1
ERROR AT –40°C
ERROR AT +25°C
ERROR AT +85°C
08385-005
VOUT (V)
VOUT2
VOUT AT –40°C
VOUT AT +25°C
VOUT AT +85°C
VOUT (V)
2.2
2.0
2.0
ERROR (dB)
2.5
2.2
図 8.マルチポイント・キャリブレーションでは、ディテクタ範囲が
広くなり、直線性を改善できますが、キャリブレーション手順が複
雑になります
図 6.キャリブレーション・ポイントを互いに離して直線性の良くな
い動作範囲に移動すると、動作範囲は広くなりますが精度は低下し
ます
ポストキャリブレーション誤差
図 5 ~ 図 8 に、異なる選択とキャリブレーション・ポイント数
を使用した場合の、同じRFディテクタのデータを示します。 図
5 に、 8 GHzまで動作する広いダイナミック・レンジを持つRFロ
グ・ディテクタ AD8318 の 2.2 GHzでのディテクタ伝達関数を示
します。このケースでは、ディテクタは 2 ポイント・キャリブ
レーション(−12 dBmと−52 dBmで)を使ってキャリブレーション
されています。キャリブレーションが完了したとき、残留測定
誤差をプロットすることができます。キャリブレーションを実
行した周囲温度においても、誤差がゼロでないことに注意して
ください。これは、ログアンプが動作領域内でも理想的なVOUT
対PINの式 (VOUT =スロープ× (PIN −インターセプト))に完全に従わ
ないことによります。ただし、−12 dBmと−52 dBmのキャリブレ
ーション・ポイントでの誤差は定義によりゼロになります。
多くのアプリケーションでは、最大電力で PA が送信するとき高
精度であることが望まれます。これは多くの点から意味あること
です。1 つ目は、最大電力または定格電力でこの高いレベルの
精度を要求する規制条件が存在する可能性がありますが、シス
テム・デザインの点からも、定格電力での高精度化に価値があ
ります。45 dBm (約 30 W)を送信するようにデザインされたトラ
ンスミッタについて考えます。キャリブレーションで±2 dB の最
大精度を提供できる場合、PA 回路(パワー・トランジスタとヒ
ート・シンク)は、47 dBm すなわち 50 W もの大きい電力を安全
に送信できるようにデザインする必要があります。これは費用
とスペースの浪費になります。代わりに、45.5 dBm すなわち約
36 W を安全に送信するだけのために PA サイズを大きくするよう
に、ポストキャリブレーション精度±0.5 dB のシステムをデザイ
ンすることができます。
図 5 には、−40°Cと+85°Cでの出力電圧の誤差プロットも示しま
す。これらの誤差プロットは、25°Cでのスロープとインターセ
プト・キャリブレーション係数を使って計算したものです。温度
に基づくキャリブレーション・ルーチンを使用しない限り、小
さい残留温度ドリフトを持つ 25°Cキャリブレーション係数を使
う必要があります。
Rev. 0
キャリブレーションを行うポイントを変えることにより、実現
可能な精度は場合によって大きな影響を受けることがあります。
図 7 に、異なるキャリブレーション・ポイントを使用した、図
5 と同じ測定データを示します。図 7 の−10 dBm~−30 dBmで、
精度が非常に高い(約±0.25 dB)ことに注目してください。ただし、
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キャリブレーション・ポイントから離れた低い電力レベルで精
度が低下します。
図 6 に、直線性を犠牲にしてダイナミック・レンジを広くするた
めにキャリブレーション・ポイントを移動する方法を示します。
この場合、キャリブレーション・ポイントは−4 dBmと−60 dBm
です。これらのポイントはデバイス直線範囲の端です。この場
合も、25°Cでのキャリブレーション・ポイントで誤差が 0 dBと
なり、AD8318 が±1 dB以下の誤差を維持する範囲は 25°Cで 60
dBに、温度に対して 58 dBに広がります。この方法の欠点は、
全体の測定誤差が、このケースでは特にディテクタの範囲の上
限で大きくなることです。
図 8 に、さらに複雑なマルチポイント・アルゴリズムを使った
ポストキャリブレーション誤差を示します。このケースでは、
複数の出力電力レベル(この例では 6 dB間隔)をトランスミッタ
に使用して、各電力レベルでディテクタの出力電圧を測定しま
す。これらの測定値を使って、伝達関数を各セグメントが固有
のスロープとインターセプトを持つ複数のセグメントに分割し
ます。このアルゴリズムはディテクタの非直線性による誤差を
大幅に小さくする傾向を持つため、温度ドリフトが主な誤差原
因になります。この方法の欠点は、キャリブレーション手順に
時間がかかり、複数のスロープとインターセプト・キャリブレ
ーション係数を格納するメモリが増えることです。
図 8 に、パワー・ディテクタのダイナミック・レンジの下限と
上限での動作の興味深い違いを示します。マルチポイント・キ
ャリブレーションはダイナミック・レンジの上限まで広がりま
すが、この範囲の拡張は、温度ドリフトが大きくなるため、あ
まり役立ちません。周囲温度、高温、低温でのカーブが−10
dBmを超えて広がることに注意してください。低い電力レベル
では、この結果は役立ちます。この場合も、マルチポイント・
キャリブレーションはダイナミック・レンジの下限を広げるの
に役立ちますが、このケースでは、高温と低温のカーブが周囲
温度でのカーブが非直線になったとしてもこれに密接に追従し
ます。したがって、この非直線性がマルチポイント・キャリブ
レーションを使って除去されても、このキャリブレーションは
温度に対して非常に良く動作します。これにより、AD8318 の
伝達関数の下限が−65 dBmまで有効に広げられます。
結論
正確な RF 電力送信が必要とされるアプリケーションでは、何ら
かのシステム・キャリブレーションが必要です。現代の IC を採
用した RF パワー・ディテクタは直線の応答を持ち、温度と周
波数に対して安定しています。これによりシステム・キャリブ
レーションが大幅に簡素化され、±0.5 dB より優れたシステム精
度を提供することができます。キャリブレーション・ポイント
の配置と数は、実現可能なポストキャリブレーション精度に大
きな影響を与えることがあります。
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