新製品紹介 高強度高靱性球状黒鉛鋳鉄のサスペンション用部材 Automotive Suspension Parts Made of High-Strength and High-Toughness Ductile Cast Iron Automotive suspension parts made of NMS600CM 自動車の足回り部品は,構造材料 ベースに,Si,Mn,Cu 等の成分を (−40 ℃)の低温度の範囲でFCD370 としての強度と衝突時の衝撃に耐え コントロールするとともに特殊熱処 と同等の衝撃値を示した(図3)。 る靱性を兼ね備え,軽量であること 理を施すことにより引張り強さを改 NMS600CM および NMS380CM に が望まれる。日立金属は,こうした 善し,高い曲げ変形量や衝撃特性を よるサスペンション部品を自主試作 ニーズに対応し,球状黒鉛鋳鉄製サ 得た。引張り強さは FCD370 の約 1.6 (図1)し,それを使って台上試験 スペンション用部材 NMS600CM を 倍を示す(表1)。断面が幅 30 ×厚 を行った結果を図4に示す。適切な 開発し,量産化の目処を得た。 さ 10 mm,支持点スパンが 150 mm 材料および形状を組み合わせた結 の 3 点曲げ試験片の中央に静的負荷 果,降伏強度,破断強度および変形 一般に FCD370(旧 JIS 材)が知られ を印加し,き裂発生に至るまでの負 量で従来品の NMS380CM と同等以 ているが,日立金属は,2005 年に 荷点の変位量と破断荷重(最大曲げ 上となっており軽量化約 20 %を達 FCD370 より靭性を高めた NMS380 荷重)を測定した曲げ変形試験の結 成している。 CM を発売した。それをさらに発展 果,NMS600CM は FCD370 を上回る 日立金属は,NMS600CM を採用 させた NMS600CM は,軽量化を目 変形量と約 1.4 倍の破断強度を示し することで従来材 FCD370 等の鋳鉄 的として靭性を確保しつつ材料強度 た(図2)。また,断面が幅 10 ×厚 製品の軽量化をはじめ,鍛造サスペ を向上させたものである(図1)。 さ 10 mm の試験片を用いた衝撃試験 ンション部品の鋳物化を進めている。 では,NMS600CM は室温から 233 K (自動車機器カンパニー) サスペンション用部材としては, NMS600CM は,NMS380CM を (a) 単重1.50 kg 表1 機械的性質と変形特性 Table 1 Mechanical properties and deformation characteristics (b) 単重1.85 kg 約20 % 軽量化 (肉薄化) 日立金属 新材質 日立金属 従来材 旧JIS一般材 Hitachi new material Hitachi current material Current JIS-material NMS600CM NMS380CM FCD370 ≧600 MPa ≧380 MPa ≧370 MPa ≧390 MPa ≧250 MPa ≧230 MPa ≧6 % ≧15 % ≧17 % 18 mm 28 mm 11 mm 材質 50 mm Material 50 mm 引張強度 図1 NMS600CM および NMS380CM 製自主試作品の形状 比較 (a)NMS600CM(b)NMS380CM Fig. 1 Comparison of the prototype configuration between (a)NMS600CM and (b)NMS380CM Tensile strength 耐力 Proof strength 伸び Elongation 鋳肌試験片の 3点曲げ負荷点変形量 Deformation displacement in 3-point bending test 荷重方向 10 1,200 ) 1,000 20.0 15.0 10.0 FCD370 NMS380CM 5.0 0.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 曲げ変位(mm) 図2 鋳肌試験片による3点曲げ試験結果 Fig. 2 Results of 3-point bending test on each of the specimens with casting surface 64 日立金属技報 Vol. 26(2010) 鋳肌 10 NMS380CM 55(mm) 800 600 NMS600CM 400 200 0 200 FCD370 250 300 Load(arb. unit) 150( NMS600CM 衝撃値(×103J/m2) 最大曲げ荷重(kN) 25.0 NMS600CM NMS380CM 降伏強度 変形量 降伏強度 Displacement(arb. unit) 試験片温度(K) 図3 シャルピー衝撃試験結果 図4 サスペンションアームの荷重-変位 特性(台上試験実測値) (鋳肌平滑試験片) Fig. 4 Load-displacement curves of Fig. 3 Relationship between Charpy suspension arm on the bench test value and test temperature on each of the specimens with casting surface