カタログ

概要
1955年オーストラリアの物理学者Dr. A. Walshの提唱により開発された原子吸光分析法は、その原理や分析技術上の手法から高精
度の測定が比較的簡単に行え、微量金属元素の分析に最適な方法です。
浜松ホトニクス製ホローカソードランプは、これまで培った放電管製造技術により、高精度測定に必要な純度の高いシャープな
輝線スペクトルを実現しました。
■ホローカソードランプの種類
■用途
・原子吸光分光光度計
・原子蛍光分析装置
・多元素分析機器
・環境分析機器
単元素ランプは、一般に複合元素ランプに比べて吸収感度・分析線放射強度
に優れています。複合元素ランプは、多元素同時定量という長所はありますが、
組み合わせる金属の性質を十分考慮して陰極組成を決める必要がありますので、
任意の元素の組み合わせで陰極を構成することはできません。
構造
ランプの構造は図1に示すように、石英・紫外線透過ガラスまたは硼硅酸ガラスで作られた分析線取出窓(図1④)を有するバル
ブ内に、中空(Hollow)円筒状の陰極(図1②)とリング状の陽極(図1①)が設けられ、数百Paの希ガスなどが封入されています。
陰極は分析しようとする目的の単一元素あるいは合金で作られ、極めて妨害スペクトルのないシャープな分析線が得られるよう
構成・製作しています。
図1. ホローカソードランプの構造
図2. 窓ガラスの分光透過特性
hv
100
4
合成石英
80
5
7
1
2
6
3
1陽極
2陰極(ホロー陰極)
3ベース
4面板(窓)
5バルブ
6ステム
7ゲッター
8段継部
透過率 (%)
8
60
40
紫外線
透過ガラス
(UVガラス)
硼硅酸ガラス
20
0
160
200
240
280
320
360
400
440
波長 (nm)
動作原理
ホローカソードランプは中空陰極(Hollow Cathode)を用いて発光強度を高めたグロー放電管です。中空陰極を使用した場合、電
流密度は平行平板電極のそれに比べ10倍以上にもなり、それにともない光強度も著しく増加し、ランプの降下電圧が減少します。
この効果を中空陰極効果(ホロー効果)と呼びます。
ホローカソードランプの電極間に電圧をかけ放電させると電子が陰極の内面から陰極降下部、負グロー部を通り陽極に向かって
流れ、ランプに封入されたガス原子を非弾性衝突で電離します。ガスの電離作用によって生じた陽イオンは電界に引っ張られ陰
極面に衝突し、この運動エネルギーは陰極表面から陰極物質を原子状にスパッター(飛散)させます。この金属蒸気は基底状態
にある単原子などからなり、中空陰極の内部に熱拡散されます。
一方電子群は電界によって陽極方向に加速されます。この加速電子は拡散中の基底状態の金属電子と衝突し、金属原子を励起させ、
極めて短い時間(10-8秒程度)に再び基底状態に遷移します。その際、そのエネルギー差に等しい原子固有の単色光が発せられま
す。
この電子の遷移は定量目的元素のみでなく、色々な陰極構成元素の何通りものエネルギー遷移がありますので、広い波長範囲に
ついて観測すればこれら元素の非常に多くのスペクトル線、および封入ガスのスペクトル線が観測できます。特にNi、Co、Feの
ような遷移金属元素ではスペクトル線は非常にたくさんあります。
2
通常の原子吸光分析用
ホローカソードランプ ラインアップ
●L233シリーズ(38 mm径): 単元素ホローカソードランプ(66品種)1
型名
原子
番号 (サフィックス)
元 素
Ag
銀
47
-47NB
Al
ア ルミニ ウ ム
13
-13NB
As
ヒ
素
33
-33NQ
Au
金
79
-79NQ
B
ホ
ウ
素
5
-5NQ
Ba
バ リ ウ ム
56
-56NB
Be
ベ リリウ ム
4
-4NQ
Bi
ビ ス マ ス
83
-83NQ
Ca
カ ル シウ ム
20
-20NU
Cd
カド ミウ ム
48
-48NQ
Co
コ バ ル ト
27
-27NU
Cr
ク
ム
24
-24NB
Cs
セ シ ウ ム
55
-55NB
ロ
Cu
29
-29NB
Dy
ジスプロシウム
銅
66
-66NB
Er
エ ル ビウム
68
-68NB
Eu
ユ ーロピウ ム
63
-63NB
Fe
26
-26NU
Ga
ガ リ ウ ム
31
-31NU
Gd
ガドリ ニ ウ ム
64
-64NB
Ge
ゲ ル マ ニウム
32
-32NU
Hf
ハフニウム
72
-72NU
Hg
水
銀
80
-80NU
Ho
ホ ル ミウ ム
67
-67NB
In
イン ジ ウ ム
49
-49NB
Ir
イリジ ウ ム
77
-77NQ
K
カ リ ウ ム
19
-19NB
La
ラ ン タ ン
57
-57NB
Li
リ チ ウ ム
3
-3NB
Lu
ル テチウム
71
-71NB
Mg
マ グ ネシ ウ ム
12
-12NU
鉄
Mn
マ ン ガ ン
25
-25NU
Mo
モリブ デ ン
42
-42NB
Na
ナトリウ ム
11
-11NB
Nb
ニ
ブ
41
-41NB
Nd
ネ オ ジ ム
60
-60NB
Ni
ニ ッ ケ ル
28
-28NQ
Os
オ スミウ ム
76
-76NU
Pb
82
-82NQ
Pd
パ ラジウム
46
-46NQ
Pr
プ ラセ オジ ム
59
-59NB
Pt
白
金
78
-78NU
Rb
ル ビジウム
37
-37NB
オ
鉛
分析線
(nm)
328.07 ※
338.28
309.27 ※
396.15
193.70 ※
197.20
242.80 ※
267.59
249.68 ※
249.77
553.55 ※
234.86 ※
223.06 ※
306.77
422.67 ※
228.80 ※
240.73 ※
346.58
357.87 ※
425.44
852.11 ※
324.75 ※
327.40
404.59 ※
421.17
400.79 ※
415.11
459.40 ※
462.72
248.33 ※
371.99
287.42
294.36 ※
407.87
422.58 ※
265.16 ※
286.64 ※
307.29
253.65 ※
410.38 ※
416.30
303.94 ※
325.61
208.88 ※
266.47
766.49 ※
769.90
357.44
550.13 ※
610.36
670.78 ※
328.17
331.21 ※
285.21 ※
279.48 ※
403.08 ※
313.26 ※
320.88
589.00 ※
589.59
334.91 ※
405.89
463.42
492.45 ※
232.00 ※
341.48
290.90 ※
305.86
217.00 ※
283.30
244.79 ※
247.64
495.13 ※
513.34
265.95 ※
299.80
780.02 ※
794.76
動作電流 最大電流
(mA) (mA)
型名
原子
番号 (サフィックス)
元 素
10
20
Re
レ ニ ウ ム
75
-75NB
10
20
Rh
ロ ジ ウ ム
45
-45NB
10
12
Ru
ル テニウム
44
-44NB
10
16
Sb
アンチ モン
51
-51NQ
10
20
Sc
スカン ジ ウ ム
21
-21NB
10
20
Se
セ
34
-34NQ
14
-14NU
Sm
サ マリウ ム
62
-62NB
Sn
ス
ズ
50
-50NQ
20
Si
10
12
10
18
イ
ン
素
10
ケ
レ
5
12
Sr
ストロンチウム
38
-38NB
10
20
Ta
タ ン タ ル
73
-73NU
10
20
Tb
テ ルビウム
65
-65NB
10
20
Te
テ
52
-52NQ
ル
10
20
Ti
チ
ン
22
-22NB
15
15
Tl
タ リ ウ ム
81
-81NU
15
15
Tm
ツ リ ウ ム
69
-69NB
15
15
V
バ ナジウム
23
-23NB
10
20
W
タン グ ス テ ン
74
-74NU
4
6
Y
イット リ ウ ム
39
-39NB
12
12
Yb
イッテルビウム
70
-70NB
10
20
Zn
亜
鉛
30
-30NQ
20
25
Zr
ジ ル コ ニウ ム
40
-40NB
D2
重
1
-1DQ
4
6
15
20
10
15
20
20
10
15
Na-K
10
20
Ca-Mg
10
20
Si-Al
15
15
Fe-Ni
10
18
Sr-Ba
10
20
10
20
10
15
20
30
15
15
10
20
15
15
10
15
10
20
15
15
10
20
10
20
タ
ル
水
素
分析線
(nm)
動作電流 最大電流
(mA) (mA)
346.05 ※
346.47
343.49 ※
349.89 ※
217.58 ※
231.15
390.74
391.18 ※
196.03 ※
251.61 ※
288.16
429.67 ※
484.17
224.61 ※
286.33
460.73 ※
271.47 ※
275.83
431.88
432.64 ※
214.27 ※
364.27 ※
365.35
276.78 ※
377.57
371.79 ※
410.58
306.64
318.40 ※
255.14 ※
400.87
410.23 ※
412.83
346.43
398.79 ※
213.86 ※
307.59
360.12 ※
468.78
240.00
(ピーク値)
20
25
10
20
20
25
10
15
10
15
20
25
10
20
15
20
20
20
10
20
10
20
15
15
10
15
10
20
7
10
10
15
10
20
10
25
15
15
10
10
7
15
20
20
30
35
●L733シリーズ(38 mm径): 複合元素ホローカソードランプ(11品種)1
元 素
Al-Ca-Mg
Ca-Mg-Zn
Cu-MoCo-Zn
Cd-CuPb-Zn
Cu-FeMn-Zn
Co-Cr-CuFe-Mn-Ni
ナト リ ウ ム
カ リ ウ ム
カ ル シ ウ ム
マ グ ネシ ウ ム
ケ
イ
素
ア ル ミニ ウ ム
鉄
ニ ッ ケ ル
ストロンチウム
バ リ ウ ム
ア ル ミニ ウ ム
カ ル シ ウ ム
マ グ ネシ ウ ム
カ ル シ ウ ム
マ グ ネシ ウ ム
亜
鉛
銅
モ リブ デ ン
コ バ ル ト
亜
鉛
カド ミ ウ ム
銅
鉛
亜
鉛
銅
鉄
マ ン ガ ン
亜
鉛
コ バ ル ト
ク
ロ
ム
銅
鉄
マ ン ガ ン
ニ ッ ケ ル
原子
型名
分析線
動作電流 最大電流
番号 (サフィックス)
(nm)
(mA) (mA)
11
Na 589.00 ※ 10
-201NB
15
19
K 766.49 ※
20
12
14
13
26
28
38
56
13
20
12
20
12
30
29
42
27
30
48
29
82
30
29
26
25
30
27
24
29
26
25
28
422.67 ※
-202NU Ca
Mg 285.21 ※
251.61 ※
-203NU Si
Al 309.27 ※
248.33 ※
-204NQ Fe
Ni 232.00 ※
460.73 ※
-205NB Sr
Ba 553.55 ※
-321NU
-322NQ
-401NQ
-402NQ
-405NQ
-601NQ
Al
Ca
Mg
Ca
Mg
Zn
Cu
Mo
Co
Zn
Cd
Cu
Pb
Zn
Cu
Fe
Mn
Zn
Co
Cr
Cu
Fe
Mn
Ni
309.27 ※
422.67 ※
285.21 ※
422.67 ※
285.21 ※
213.86 ※
324.75 ※
313.26 ※
240.73 ※
213.86 ※
228.80 ※
324.75 ※
217.00 ※
213.86 ※
324.75 ※
248.33 ※
279.48 ※
213.86 ※
240.73 ※
357.87 ※
324.75 ※
248.33 ※
279.48 ※
232.00 ※
10
18
10
20
10
20
10
20
10
18
10
15
10
15
10
15
8
15
10
20
※印は各元素における最大吸収波長です。各元素は複数のスペクトル線を持っているため、試料濃度に合わせて適宜選択してください。
NOTE: 1保証寿命期間は製品の動作電流値と累計動作時間の積で示し、5000 mA・hrsとします。但し、As、Ga、Hgの保証寿命期間は、3000 mA・hrsとします。
記載の動作電流値、最大電流値は、ピーク電流値で定めてありますが、パルス点灯
方式の装置によりましては、ランプ電流値をそのピーク値もしくは平均値で表示す
る方式になっています。従いまして、ご使用の装置によって、指定の電流値で動作
いただきますようお願いいたします。
パルス点灯方式時のランプ電流波形
ピーク値
電流
L233 / L733シリーズの電流値についてのお願い
平均値
時間
3
S-H方式バックグラウンド補正法を用いた原子吸光分析用
ジャイアントパルス・ホローカソードランプ ラインアップ
●L2433シリーズ(38 mm径): 単元素ホローカソードランプ(46品種)
銀
47
-47NB
Al
ア ルミニ ウ ム
13
-13NB
As
ヒ
素
33
-33NQ
Au
金
79
-79NQ
B
ホ
ウ
素
5
-5NQ
Ba
バ リ ウ ム
56
-56NB
234.86 ※
Be
ベ リリウ ム
4
-4NQ
Bi
ビ ス マ ス
83
-83NQ
Ca
カ ル シウ ム
20
-20NU
Cd
カド ミウ ム
48
-48NQ
Co
コ バ ル ト
27
-27NU
Cr
ク
ロ
ム
24
-24NB
Cu
銅
29
-29NB
Dy
ジスプロシウム
66
-66NB
Er
エ ル ビウム
68
-68NB
Eu
ユ ーロピウ ム
63
-63NB
Fe
26
-26NU
Ga
ガ リ ウ ム
31
-31NU
Ge
ゲ ル マ ニウム
32
-32NU
鉄
2
Hf
ハフニウム
72
-72NU
Hg
水
80
-80NU
銀
Ho
ホ ル ミウ ム
67
-67NB
K
カ リ ウ ム
19
-19NB
La
ラ ン タ ン
57
-57NB
Li
リ チ ウ ム
3
-3NB
Mg
マ グ ネシ ウ ム
12
-12NU
Mn
マ ン ガ ン
25
-25NU
Mo
モリブ デ ン
42
-42NB
Na
ナトリウ ム
11
-11NB
Ni
ニ ッ ケ ル
28
-28NQ
Pb
82
-82NQ
Pd
パ ラジウム
46
-46NQ
Pt
白
金
78
-78NU
Ru
ル テニウム
44
-44NB
鉛
Sb
アンチ モン
51
-51NQ
Se
セ
レ
ン
34
-34NQ
Si
ケ
イ
素
14
-14NU
Sm
サ マリウ ム
62
-62NB
Sn
ス
ズ
50
-50NQ
Sr
ストロンチウム
38
-38NB
Te
テ
ル
ル
52
-52NQ
Ti
チ
タ
ン
22
-22NB
V
バ ナジウム
23
-23NB
Y
イット リ ウ ム
39
-39NB
Yb
イッテルビウム
70
-70NB
Zn
亜
30
-30NQ
鉛
328.07 ※
338.28
309.27 ※
396.15
193.70 ※
197.20
242.80 ※
267.59
249.68 ※
249.77
553.55 ※
223.06 ※
306.77
422.67 ※
228.80 ※
240.73 ※
346.58
357.87 ※
425.44
324.75 ※
327.40
404.59 ※
421.17
400.79 ※
415.11
459.40 ※
462.72
248.33 ※
371.99
287.42
294.36 ※
265.16 ※
286.64 ※
307.29
253.65 ※
410.38 ※
416.30
766.49 ※
769.90
357.44
550.13 ※
610.36
670.78 ※
285.21 ※
279.48 ※
403.08 ※
313.26 ※
320.88
589.00 ※
589.59
232.00 ※
341.48
217.00 ※
283.30
244.79 ※
247.64
265.95 ※
299.80
349.89 ※
217.58 ※
231.15
196.03 ※
251.61 ※
288.16
429.67 ※
484.17
224.61 ※
286.33
460.73 ※
214.27 ※
364.27 ※
365.35
306.64
318.40 ※
410.23 ※
412.83
346.43
398.79 ※
213.86 ※
307.59
1
2
2
低電流 高電流 累積寿命時間 動作寿命時間
(mA) (mA) (mA・ms・h)
(h)
10
400
20 000
500
10
600
30 000
500
12
500
7500
150
10
400
20 000
500
10
500
5000
100
15
600
30 000
500
10
600
6000
100
10
300
6000
200
15
600
30 000
500
8
100
5000
500
15
400
2000
500
10
600
12 000
200
10
500
25 000
500
15
600
6000
100
15
500
5000
100
10
600
6000
100
12
400
20 000
500
4
400
4000
100
20
500
5000
100
20
600
6000
100
12
400
4000
100
10
600
6000
100
目的元素の吸収は、低電流動作によ
って得られます。記載の電流値を超
えないように、最も良好な分析感度
の得られる電流値に設定してください。
10
600
30 000
500
電流波形図(低電流動作)
20
600
9000
150
15
500
25 000
500
10
500
25 000
500
30 000
500
600
9000
150
600
12 000
200
10
400
20 000
500
10
300
15 000
500
10
300
3000
100
10
300
3000
100
20
600
6000
100
15
500
75 000
150
15
300
4500
150
10
500
10 000
200
15
600
6000
100
20
500
25 000
500
10
500
25 000
500
15
400
4000
100
10
600
12 000
200
10
700
7000
100
15
600
6000
100
5
200
2000
100
10
300
15 000
500
10
600
10
10
L2433シリーズの電流値
についてのお願い
●低電流動作値
10 ms Min. (100 Hz Max.)
電流
Ag
1
分析線
(nm)
1 ms Max.
低電流値
時間
●高電流動作値
高電流動作により自己反転現象を起
こし、バックグランド吸収を得るこ
とができます。低電流動作と同様に
電流値を超えないように電流値を設
定してください。
電流波形図(高電流動作)
10 ms Min. (100 Hz Max.)
0.1 ms Max.
電流
型名
原子
番号 (サフィックス)
元 素
高電流値
時間
●時間幅
上図に示す放電電流波形の時間幅を
超えた動作はしないようにしてくだ
さい。
※印は各元素における最大吸収波長です。各元素は複数のスペクトル線を持っているため、試料濃度に合わせて適宜選択してください。
NOTE: 1最大放電電流: ピーク値(低電流及び高電流波形の規定は電流波形図参照)
2・各元素に定められた最大放電電流以下の条件で点灯した場合
低電流と時間幅の積、
または高電流と時間幅の積のいずれか大きい方に予備点灯時間を含む動作時間を乗じた累積寿命時間(mA・ms・h)
で示す。
・各元素に定められた最大放電電流値で点灯した場合
保証寿命時間(動作寿命時間)は、予備点灯時間を含む累計動作時間で示す。
上記のどちらかで保証寿命時間を規定する。
4
ランプ電流と吸収感度
ホローカソードランプから放射される分析線プロファイルは理想的には自然幅の広がり以外の幅のない線スペクトルでなければ
なりません。しかし実際にはある広がりをもってスペクトル線は放射されています。この広がりの原因は、ドップラー広がり・
自己吸収による線幅のひずみ、ローレンツ広がり(圧力広がり)、ホルツマルク広がり(共鳴広がり)、マーゼン効果による広がり、
シュタルク効果による広がりなどがありまが、ドップラー広がりと自己吸収による線幅のひずみが最も大きく、他の広がりは通
常無視できるとされています。
ドップラー広がりとは、ガス温度の影響を受け全くランダムに熱運動している発光原子が、観測点と光源とを結ぶ直線と垂直な
平面内を運動している場合には問題になりませんが、その線に平行な運動(観測点から見て前後の運動)をしている場合、発光
観測点における振動数は発光点と観測点が近づく運動では高く(短波長側に)、遠ざかる運動では低く(長波長側)シフトされる
というドップラー効果による現象をいいます。陰極ホロー内では発光原子はランダムに熱運動していますので、このスペクトル
に基づくある広がりを持つことになります。このドップラー広がり幅λ0は、光速度をc、気体定数をR、気体の絶対温度をT、目的
とする原子の原子量をMaとすると次式で表されます。
ΔλD=1.67×
λ0
c
2RT
Ma
また、自己吸収は陰極ホローの原子蒸気層に温度勾配が有る場合、すなわち陰極ホロー内から外側に原子蒸気が流出している場合、
温度の高い内部の原子蒸気層では温度の低い外側の原子蒸気層より多くの原子が励起され発光しますので、この光が外側の温度
の低い原子蒸気層を透過する際、基底状態の原子によって吸収されます。この現象を自己吸収といい、ドップラー効果と同様に
分析線の線幅に影響を与え、吸収感度を低下させます。
このように分析線プロファイルの悪化はランプ電流値に依存します。従ってランプ電流を高め、過剰に原子蒸気を増やすことは
この点からも考慮しなくてはいけません。実際の測定においては、分析線出力の大きさと吸収感度の両面から最適な電流値で点
灯させることが大切になります。
一般に自己吸収の影響は、Cdのような高い蒸気圧の元素で大きく、またMoのような低い蒸気圧の元素は少ないのが普通で、前者
の通常使用電流値は低い値に規定しています。
図3. ランプ電流と吸収感度(代表例)
●L233-48NQ (Cd)
●L233-42NB (Mo)
0.6
0.6
分析線波長
248.33 nm ※
0.5
0.5
0.4
140 µg/ml
0.4
1.6 µg/ml
0.3
1.2 µg/ml
0.2
相対吸光度
相対吸光度
分析線波長
313.26 nm ※
0.3
0.2
70 µg/ml
0.8 µg/ml
0.1
0.1
0
0
0
2
4
6
8
10
ランプ電流 (mAdc)
12
14
0
10
20
ランプ電流 (mAdc)
※印は最大吸収波長です。
5
光学的バンド幅(S.B.W.)と吸収感度
分析線の近傍に同一あるいは他の元素のスペクトル線があると吸収感度は低下します。(この分析線近傍のスペクトル線を近接線
といいます。)近接線が存在する場合は、分光器のスリット幅を狭め、近接線の影響が軽減できるように光学的バンド幅(S.B.W)
を小さくする必要があります。
図4. 光学的バンド幅と吸収感度(代表例)
SBW 0.08 nm
Ni 341.48 nm
Ni 232.00 nm
SBW 0.08 nm
●L233-28NQ (Ni)
0.3
分析線波長
232.00 nm ※
相対吸光度
0.2
4 µg/ml
0.1
2 µg/ml
0
-2
0
+2
-2
0
+2
0
0.1
0.2
(放射スペクトル)
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
光学的バンド幅 (nm)
※印は最大吸収波長です。
分析線放射強度の時間安定性
スペクトル線が発光する過程で述べましたように、スパッターされた金属原子は電子との非弾性衝突を繰り返しながら熱拡散され、
この時金属原子密度が平衡状態に達するまでの間、分析線放射出力強度は変化します。
この変化は通常点灯初期には増加する方向に10∼20分間変化しますが、元素・動作電流値によっても変わります。平衡状態に達
した後は、分析線放射出力強度の変化は非常に小さくなります。
高い蒸気圧の元素のランプでは、過大な電流値で動作させますと、過剰に蒸発された金属原子が、光軸方向の陰極空間外まであ
ふれてくるため、温度勾配が生じ、自己吸収などによって分析線放射出力強度は減少方向に変化する場合があります。
また、長期間ランプを無動作状態で放置した場合、元素(特にアルカリ系の元素)によっては、陰極表面が経時変化などで点灯
初期に分析線放射出力強度が安定するまで、多少時間のかかることがあります。このような場合でも、1度点灯することにより次
回からは通常の立ち上がり特性を示します。
図5. 分析線出力強度の時間安定性(代表例)
●L233-42NB (Mo)
120
分析線相対出力強度 (%)
100
80
60
ランプ電流: 10 mAdc
S.B.W.: 0.16 nm
分析線: 313.26 nm ※
周囲温度: 25 °C
40
20
0
0
15
30
45
60
時間 (min)
※印は最大吸収波長です。
6
75
90
105
寿命
ランプの寿命は動作電流値によって大きく影響を受けます。これは陰極面に衝突する陽イオンエネルギーが大きくなりスパッタ
リングが激しく行われることに起因します。またパルス点灯の場合もパルス毎に陰極表面に衝突するイオンエネルギーは変わり
ませんので、寿命はそのピーク電流値とそのパルス幅(時間幅)で決まります。
ランプが寿命になると生じる現象は、
(1)放電がホロー陰極で生じず、電流つまみを可変しても電流値が変化しない。また分析線出力も検出できない。
(2)分析線強度の変化が激しくなり、場合によってはランプ電流値が変動する。
(3)分析線強度が著しく弱くなって、S/Nが悪くなる。
などですが、これらの現象は封入ガス圧の低下が主因と考えられます。このガス圧の低下は放電時にスパッターされた陰極金属原子
が飛散中にガスを抱き込み、温度の低いバルブ壁や電極にいっしょに付着してしまうクリーンアップ(clean-up)現象のためです。
またランプを使い込んでいくと、陰極ホロー形状が放電によるスパッターで消耗し変形してきます。
この特性は、元素が異なれば変わり、同一元素でもランプによって多少差があります。
外形寸法図(単位: mm)
●L233 / L733シリーズ
オクタル2ピンベース
61.0 ± 1.5
A
陰極
陰極
25.5 ± 1.3
陽極
39 MAX.
44.0 MAX.
発光点
147 ± 3
165 MAX.
発光点位置寸法公差
Aに対して±1.5 mm
●L2433シリーズ
オクタル2ピンベース
61.0 ± 1.5
A
陰極
陰極
147 ± 3
165 MAX.
25.5 ± 1.3
陽極
39 MAX.
44.0 MAX.
発光点
発光点位置寸法公差
Aに対して±1.5 mm
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ご注意・保証
■ご注意
1.長期保管上のご注意
ランプは、納入後速やかにご使用いただきますようお願いいたします。もし、6ヶ月以上の長期にわたり無動作保管されます
場合には、次の点にご配慮いただきますようお願いいたします。
・腐食性ガスがなく、低湿度および常温で温度変化の少ない場所に保管してください。
・特性を安定化させるために、3ヶ月間に一回、ランプに記載の通常使用電流値の1/2の電流値で3時間程度点灯されますこと
をお勧めいたします。
2.取り扱い上のご注意
・ランプの点灯には高電圧が供給されますので、感電にご注意ください。
・ランプは点灯中、面板(窓)方向から目や皮膚に有害な紫外線を放射しますので、点灯中のランプを直視しないでください。
・ホローカソードランプの廃棄方法について
ホローカソードランプの陰極には、廃棄物処理法において有害物質として規定されている元素が含まれているものがあり
ます。これらの陰極を用いたホローカソードランプを廃棄する場合は、有害物質の中間処理・最終処理が可能な専門処理
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・原子吸光分析に用いられる主な分析線は、200 nm∼300 nmの紫外波長域にあります。この波長域の光は、ミラーやレンズ
などの効率が一般的に低いので、分光器の波長ダイヤルを目安に出力表示メータの指針が最大になるようにランプの位置
調整と波長ダイヤルを交互に微調整し、正しく分析線波長に合わせてください。分析線波長合わせが正しく行われませんと、
高い測定精度が得られない場合があります。
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不必要にランプを劣化させます。ランプ点灯時には電流を徐々に上昇させて規定の電流値に設定し、また消灯時にも同様
に減少させることがランプを長く安定にご使用いただける適切な操作方法といえます。
・ランプに表示してあります最大電流値は絶対最大値(広義的には非破損保証値)を示します。高い蒸気圧の元素(例えば、
Hg、Cd、Znなど)をベースにしたランプは低い電流値に設定してあります。これらのランプではこの値を超えて使用され
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■保証
保証期間
製品の納入日より起算して一年間とします。
保証範囲
製品の無償修理または無償交換をいたします。尚、これを保証範囲の限度とします。
保証基準
保証期間内であっても、次に該当する場合には上記の保証は適用されません。
・保証寿命時間を超える動作のある場合。
・製品の仕様値を満足しない誤った使用、使用上の不注意による故障、または改造などが行われた場合。
・天災などの不可抗力によって発生または誘発された故障などが生じた場合。
●本資料の記載内容は平成25年7月現在のものです。製品の仕様は、改良等のため予告なく変更することがあります。
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FAX (06)6271-0450
FAX (092)482-0550
TLS 1014J01
JUL. 2013 IP