製品ラインアップ 電子増倍管(Electron Multiplier)は、主に正負イオンの検出器として用いられます。その他の用途として、真空紫外線・軟X 線などの検出・測定に使用されることもあります。弊社の電子増倍管はゲイン(増倍率)が高く、暗電流が小さいため、カウ ンティング法を用いて非常に小さい入射粒子及びエネルギー量の測定を行うことができます。そのため、質量分析や電界 イオン顕微鏡をはじめ、ESCA (エスカ)・Auger (オージェ) 等の電子分光や真空紫外分光などに適しています。 ダイノード 型 名 構 造 特 性 段 数 材 質 入射口 寸法 供給 電圧 (mm) (V) ゲイン Typ. 上昇 時間 Typ. (ns) 暗電流 総抵抗 値 Typ. (pA) 検出 イオン 極性 陽極− 他電極 間静電 容量 (pF) (MΩ) R4146-10 ラインフォーカス型 18 Cu-BeO 8×1 -1800 1× 3.5 1 21 正 4.0 R6985-80 ラインフォーカス型 19 Al2O3 φ11 -1900 1 × 106 4.5 1 17.15 正/負 2 1.8 105 107 R8811 サーキュラケージ型 13 Al2O3 φ3 -1500 1× 1.6 1 13 正 0.8 R2362 コースメッシュ型 23 Cu-BeO φ20 -2700 1 × 106 3.5 5 23 正 23 106 1.7 5 19.5 正 4.0 9.3 5 16 1 正 5.0 R5150-10 ボックスライン型 17 Cu-BeO φ8 -2000 5× ボックス型 16 Cu-BeO 8×6 -2400 1 × 106 R474 R515 ボックス型 16 Cu-BeO 8×6 -2400 1× 9.3 5 16 1 正 4.0 R596 ボックス型 16 Cu-BeO 12 × 10 -2400 1 × 106 10 5 16 正 9.0 Cu-BeO 12 × 10 -3000 4× 12 5 20 正 9.0 R595 ボックス型 20 106 107 1第1ダイノード – 第2ダイノード間に1 MΩの抵抗を接続した場合 2コンバージョンダイノードには、正イオンを検出する際はマイナス電位、負イオンを検出する際はプラス電位を供給してください。 R6985-80 ■特長 薄型で並列配置可能 ■特長 コンバージョンダイノード 35.0 ± 0.5 3.0 ± 0.1 取付部位の電位 前面プレート: -HV 背面プレート: GND 19.0 ± 0.2 1.1 ± 0.1 12.0 ± 0.2 6.0 ± 0.2 入射口 (8 × 1) 21.0 ± 0.2 58 ± 1 11.0 ± 0.2 R4146-10 入射口 取付部位の電位 背面プレート: GND 2- 2.2 前面プレート コンバージョンダイノード 前面プレート 電子増倍部 背面プレート GNDピン 93 ± 1 20.0 ± 0.5 コンバージョン ダイノードピン (単位: mm) 50.0 ± 0.5 30.0 ± 0.5 2- 2.2 19.0 ± 0.2 背面プレート 高圧ピン 11.0 ± 0.2 12.0 ± 0.2 2- 1 22.0 ± 0.5 12 ± 1 15 ± 1 20.0 ± 0.5 1 2- 1 出力ピン 30.0 ± 0.5 71.8 ± 1.0 +0 56.9 - 0.2 抵抗 出力ピン (単位: mm) 2- 3.1 TPMHA0588JB R8811 TPMHA0587JB R2362 19.5 ± 0.5 ■特長 小型・軽量・ファラデーカップ付 10 ■特長 広い検出面積 入射口 50 ± 1 20.0 ± 0.2 取付部位の電位 前面プレート: -HV 20.0 ± 0.5 3 ± 0.2 取付部位の電位 前面プレート (ケース): GND 10 44.0 ± 0.5 2- 3.2 入射口 前面プレート 60 MAX. 20.0 ± 0.5 前面プレート 抵抗 出力リード 高圧リード 3- 1.5 背面プレート 30 ± 1 GNDピン 20.0 ± 0.5 出力ピン 高圧ピン (単位: mm) (単位: mm) ファラデーカップリード TPMHA0608JA 2 TPMHA0609JA 本カタログに掲載されている電子増倍管は一般品となります。 その他カスタム対応も可能ですので、お問い合わせください。 ●ゲイン特性 最大定格 平均 陽極 電流 (µA) ベーク アウト 温度 1×10-4 Pa (°C) 動作 真空度 108 107 (Pa) 108 2500 350 — — 10 350 1 × 10-2 1 × 108 3000 150 ±10 2 — 10 —3 1 × 10-2 106 2000 150 — -200 10 350 1× 1 × 108 4000 350 — — 10 350 1 × 10-2 1 × 108 3500 350 — — 10 350 1 × 10-2 1 × 108 4000 350 — -100 10 350 1 × 10-2 1× 108 4000 350 — -100 10 350 1 × 10-2 1 × 108 4000 400 — — 10 350 1 × 10-2 1 × 108 5000 400 — — 10 350 1 × 10-2 10-2 105 104 R4146-10 R6985-80 R8811 R2362 R5150-10 R474, R515, R596 R595 103 102 101 1000 2000 3R6985-80はベーキングを行わないでください。 4最大動作ゲインを超えない供給電圧で使用してください。 2- 3.2 抵抗 90 MAX. 66.0 ± 0.5 4 10.0 ± 0.5 3- 1.2 12.0 ± 0.5 2- 3.2 1 背面プレート セミフレキシブル リード 2- 1 3- 0.3 高圧ピン (DY1) (単位: mm) 高圧 (DY1) (単位: mm) TPMHA0611JA TPMHA0612JA R595 2- 4.2 6.5 取付部位の電位 前面プレート: -HV 背面プレート: GND 6.5 前面プレート 150 MAX. 140 MAX. 131 ± 2 前面プレート 130 MAX. 120 MAX. 111 ± 2 2- 4.2 抵抗 7- 1.5 10.0 ± 0.5 10.0 ± 0.5 抵抗 1 背面プレート 7- 1.5 GNDピン 50 ± 1 44.0 ± 0.5 30.0 ± 0.5 入射口 42.0 ± 0.5 12.0 ± 0.2 10.0 ± 0.2 ■特長 高ゲイン 広い検出面積 入射口 42.0 ± 0.5 12.0 ± 0.2 10.0 ± 0.2 GNDピン 出力ピン 3- 3.5 高圧ピン (DY1) (単位: mm) TPMHA0613JA 50 ± 1 44.0 ± 0.5 30.0 ± 0.5 11.0 ± 0.5 2- 3.2 39 MAX. (単位: mm) R596 取付部位の電位 前面プレート: -HV 背面プレート: GND DY2 34.0 ± 0.5 出力 高圧ピン TPMHA0610JA ■特長 広い検出面積 前面プレート 抵抗 DY2ピン GNDピン 4 取付部位の電位 前面プレート: -HV 背面プレート: GND 出力ピン 出力ピン 入射口 6.0 ± 0.2 入射口 前面プレート HAMAMATSU 73 MAX. シールドケース 6.0 ± 0.2 20.0 ± 0.5 ■特長 第1ダイノードを ファラデーカップ として使用可能 82 MAX. 取付部位の電位 前面プレート: -HV 20.0 ± 0.5 リード長 90 MIN. 入射口 8.0 ± 0.2 8.0 ± 0.2 70 ± 2 ■特長 第1ダイノードを ファラデーカップ として使用可能 34.0 ± 0.5 取付部位の電位 シールドケース: GND R515 17.0 ± 0.5 R474 ■特長 ケース入りで扱いやすい 4000 供給電圧 (V) 26.0 ± 0.5 R5150-10 3000 8.0 ± 0.2 5× 106 21.0 ± 0.5 1× TPMHB0929JA 79 ± 2 陽極− 陽極− 最終ダイ コンバー ファラデー 第1ダイ カップ ノード間 ノード間 ジョン 電圧 電圧 電圧 電圧 (kV) (V) (V) (V) 26.0 ± 0.5 動作 ゲイン 4 ゲイン 4 1 背面プレート 出力ピン 3- 3.5 高圧ピン (DY1) (単位: mm) TPMHA0614JA 3 技術情報 構造・動作原理 入射口、電子増倍部(ダイノード部)、陽極、電圧分割用抵 抗により構成されています。 真空中で動作させ、検出・測定対象(正負イオン、真空紫外 線、軟X線等)を第1ダイノードに入射させます。第1ダイノ ードは、検出・測定対象により表面の電子が励起され二次電 子を放出します。放出された電子は、第2ダイノード以降の ダイノードで増倍され、二次電子群として陽極に達し、信号 として出力されます。 電子増倍部 電子増倍管は、低雑音で高いゲインを持っているため高SN 比になっています。電子増倍部は13段∼23段のダイノード で構成されています。電子増倍管を使用する際、大気に一度 さらしてから装置に取り付けることになります。そのため、 大気にさらしても特性劣化の少ない材質を使用しています。 また、弊社の電子増倍部は、光電子増倍管の技術を応用して いるため、高性能を有しています。 以下に電子増倍部の構造を紹介します。 1) ボックス型 四半円筒を並べたような構造をしています。 電子の収集効率が良く、ユニフォミティに優れています。 高電圧供給時における耐圧特性が良い傾向にあります。 4) ボックスライン型 ボックス型とラインフォーカ ス型を組み合わせた構造をし ています。 ボックス型と比較して時間応 答性が良く、ラインフォーカス 型と比較して収集効率が高い という特長を有します。 5) コースメッシュ型 山形状のダイノードを積重ね た構造をしています。 リニアリティに優れ、磁界の影 響も受けにくくなっています。 また、他の構造よりも有効面積 の広い検出器の設計が可能です。 イオン 1 mm TPMHC0257JA コンバージョンダイノード(CD) イオンは質量の違いにより、加速度が異なります。第1ダイ ノードへのイオン入射時の速度は、二次電子発生効率に影響 を与え、速度が速いほど効率が良くなります。一方、質量の 大きなイオン(例えば高分子化合物)などは、高電位で加速 させないと、十分な速度が得られず二次電子発生効率が下が ってしまいます。コンバージョンダイノード(CD)は、質 量の大きなイオンに高電位を与える場合に使用します。 GND ダイノード1: -HV TPMHC0256JA ダイノード17 4 Sample: Per fluore tri-buthyl amine TPMHB0934JA 感度比= コンバージョンダイノード付電子増倍管の感度 電子増倍管の感度 イオン アノード: GND ダイノード3 ダイノード2 ダイノード18 TPMHC0254JA 2) サーキュラケージ型 コンパクトで時間応答特性が優 れています。 GND 感度比 3 2 1 ファラデーカップ 0 150 200 250 300 350 400 450 500 550 質量電荷比 (m/z) -1500 V 感度特性 TPMHC0255JA 3) ラインフォーカス型 時間応答特性に優れ、薄型で設 計しやすい構造です。 TPMHC0265JA 第1ダイノードの物質選択により、イオン・真空紫外線・軟X 線などの検出・測定に用いることができます。 1) イオン 入射イオン1個に対して複数の電子が第1ダイノードから 放出されます。また、放出される電子の数はイオンの質 量と加速電圧に影響します。図に窒素イオンでの加速電 圧と電子放出比の関係を示します。 そのため、磁場偏向型質量分析装置など、複数の検出器 を並列に設置する必要がある装置によく使用されます。 10 9 8 7 電子増倍管 (R4146-10) 重イオン TPMHB0927JA 6 信号 イオ ン 信号 軽イオン 薄さ: 6 mm 電子放出比 5 磁石 4 3 2 1 102 イオン源 TPMHC0249JA 4 103 イオン加速電圧 (V) 104 2) 光 弊社の電子増倍管の第1ダイノードは、酸化ベリリウム銅 (Cu-BeO)や酸化アルミニウム(Al2O3)を採用しています。 酸化ベリリウム銅は、軟X線から300 nm辺りまでの紫外 線に感度を有します。 また、第1ダイノードへの入射波長や使用状況によって、 アルカリハライド物質を蒸着したダイノードに置き換え ることができます。これにより、数nmから分光感度特性 を得ることも可能です。 3) 電子 第1ダイノードに使用している物質は、オージェ電子、 二次電子、反射電子などのエネルギーを持った電子にも 感度があります。図に酸化ベリリウム銅と酸化アルミニ ウムの一次電子加速電圧と二次電子放出比の関係図を示 します。一次電子加速電圧が約400 V∼500 Vの時、二次 電子放出比が最大になります。 6 イオン 電子増倍管 プリアンプ 高圧電源 電流計 波高分析器 TPMHC0258JA また、オシロスコープを使用する場合は「出力パルス波形の 面積(電荷量)/電気素量」で算出することもできます。ファ ラデーカップ付電子増倍管では、ファラデーカップ単体の入 力電流とダイノードによる増倍後のアノード出力電流比で表 すこともできます。 暗電流・ノイズ特性 ダイノードの二次電子面に使われている酸化ベリリウム銅や 酸化アルミニウムは仕事関数が大きいため、暗電流やノイズ は非常に小さくなっています。暗電流やノイズの要因として は、以下の3つが考えられます。 TPMHB0928JA 酸化アルミニウム (Al2O3) 5 二次電子放出比 ゲイン測定のブロック図 4 ①ダイノード二次電子面の熱電子放出 ②ダイノード保持材などの漏洩電流 ③ダイノードの電界放出電子による電流 酸化ベリリウム銅 (Cu-BeO) 3 弊社製電子増倍管はゲイン10 6 を得る供給電圧で暗電流が 1 pA程度になります。 2 1 0 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 一次電子加速電圧 (V) ゲイン特性 ゲインは以下の式で求められます。 ゲイン (μ) = A × Ebbkn A :定数 Ebb:供給電圧 k :電極の構造・材質で決まる数値 n :ダイノード数 この式よりゲイン (μ)は供給電圧に比例することが分かりま す。図に代表的な電子増倍管の供給電圧とゲインの関係を示 します。 108 イオン源由来のノイズ 質量分析装置のなかには、イオン化部-分析部-イオン検出部 が直線上に配置されているものがあります。イオン化部はサ ンプルのイオン化を行うと同時に、紫外線やX線なども生成 してしまいます。これら紫外線やX線が分析部を通過し電子 増倍管に入射するとノイズの原因となります。このノイズを 「イオン源由来のノイズ」と呼んでいます。このノイズ成分 を低減させるために、第1ダイノードまたはコンバージョン ダイノードをイオン入射口からずらして配置し、特殊電極が 作り出す電界レンズを使ってサンプルイオンのみを第1ダイ ノードまたはコンバージョンダイノードに入射させる方法が あります。この構造をoff-axis構造といいます。図にoff-axis 構造をもった電子増倍管のイオン検出メカニズムを示します。 GND TPMHB0929JA 四重極 107 ノイズ源 (紫外線、X線等) ゲイン 106 イオン 電極 四重極 105 104 R4146-10 R6985-80 R8811 R2362 R5150-10 R474, R515, R596 R595 103 102 101 1000 ファラデーカップ 2000 3000 4000 供給電圧 (V) ゲインの測定方法として、シングルイオン入射条件下では、 右上図のブロック図の回路系で測定できます。波高分析器で 1秒当たりのカウント総数を測定し、同じ条件で電流計を用 いて出力電流値を測定します。ゲインは「出力電流/電気素 量/1秒間あたりのカウント数」で算出できます。 -1000 V TPMHC0259JA 真空度とノイズの関係 電子増倍管は真空度によりノイズの発生具合に影響が出ます。 高真空度(例えば10-5 Pa)ではノイズが少ないのですが、 低真空(例えば0.1 Pa)になるにつれてノイズが増加してい きます。動作ゲインや検出器の種類にもよりますが、おおむ ね10-2 Paより高真空で動作されることをお勧めします。 5 技術情報 DCリニアリティ特性 入射口 出荷時より内蔵されている電圧分割回路に流れる電流値は、 供給電圧と電圧分割抵抗の総抵抗値の除算で算出できます。 入射イオンエネルギーと平均陽極電流値の関係は、ある一定 範囲では理想の直線性を維持していますが、入射イオンエネ ルギーを大きくしたり、入射イオン量が多くなると出力電流 が増えて、電圧分割回路に流れる電流値付近で飽和します。 そのため、理想の直線性を維持するために、電圧分割回路に 流れる電流に対して、平均陽極電流は少なくとも1/20程度に 抑えることを推奨します。 高い計数率を得るためには、高速応答性の優れたラインフォ ーカス型ダイノードを選び、電圧分割回路の総抵抗値を低く したタイプが必要になります。しかし、抵抗値を低くするこ とで、発熱しやすくなるため注意が必要です。 寿命特性 寿命特性は動作ゲイン・出力電流・動作真空度の影響を受け ます。寿命特性のメカニズムとしては、以下の3つが挙げら れます。 ①イオン入射による第1ダイノードやコンバージョンダイノー ドの劣化 ②多量の電子が衝突したことによる、最終段付近のダイノー ドの二次電子変換能力の劣化 ③ダイノード二次電子面への汚れ吸着 DY 電極間電圧は、抵抗を直列につないだ電圧分割回路で供給さ れます。 以下に検出イオンの極性ごとの接続方法を示します。 カ ッ プ リ ン グ コ ン デ ン サ +HV1 +HV2 TPMHC0261JA ③コンバージョンダイノード付電子増倍管を用いた正イオン検出 正イオンを測定する場合、コンバージョンダイノードに負 高電圧(-10 kV程度)を、第1ダイノードに負高電圧を供給し、 最終段ダイノードを接地します。正イオンはコンバージョ ンダイノードで電子に変換されます。 コンバージョンダイノード: -10 kV 電子 正イオン 残留ガス(カーボン)がある条件下での弊社の分析結果では、 電子密度の高い後段側でカーボンの付着物を多く検出したこ とから、分析器(特にチャンバー)内部の汚れ(残留ガス等) が寿命に大きく影響すると考えています。 また、光電子増倍管と異なり密封されていませんので、保管 時に周囲のガス、水分、油分等に触れて劣化してしまう場合 もあります。 接続方法 陽極 負イオン DY1: -HV 最終段: GND TPMHC0262JA ④コンバージョンダイノード付電子増倍管を用いた負イオン検出 負イオンを測定する場合、コンバージョンダイノードに正 高電圧(+10 kV程度)を、第1ダイノードに負高電圧を供給し、 最終段ダイノードを接地します。負イオンは、コンバージ ョンダイノードで正イオンに変換され、正イオンは第1ダ イノードで電子に変換されます。 ①正イオン検出 下図のように、入射口と最終段ダイノードを接地して、第1 ダイノードに負高電圧を供給させて動作します。 コンバージョンダイノード: +10 kV 入射口 陽極 正イオン 正イオン 負イオン DY 電子 DY1: -HV 最終段: GND TPMHC0263JA -HV TPMHC0260JA ②負イオン検出 右上図のように、入射口を接地し、第1ダイノードには負 イオンを引き込むために正高電圧(+HV1)を、最終段ダイ ノードに正高電圧(+HV2)を供給します。+HV1と+HV2の 差が電位差となります。最終段ダイノードと陽極は抵抗で つなぎ、正高電圧が後続測定機器に入るのを防ぐため、カ ップリングコンデンサを陽極に設けます。従って、この測 定方法では、直流信号を取り出すことは不可能になります。 6 ⑤ファラデーカップ 弊社電子増倍管のなかには、ファラデーカップ機能を搭載 した製品があります。ただし、ファラデーカップと電子増 倍機能は同時に使用することができません。ファラデーカッ プを動作させる際に電子増倍部に高電圧を供給すると、イ オンが電子増倍部側に軌道を変えるため、ファラデーカッ プにイオンが到達しない原因になります。 ⑥デュアルモード型電子増倍管 デュアルモードとは、1つの検出器でアナログ出力とパル ス出力が計測できることを指します。図の通り、電子増倍 部の中段でアナログ出力を測定し、最終段でパルス出力を 測定します。 入射口 アナログ出力 使用上のご注意 ゲート パルス 出力 DY GND -HV GND カップリング コンデンサ +HV TPMHC0264JA イオン量が微量の場合は、ゲインが高いパルス出力機能で カウンティング測定を行い、イオン量が多量の場合はゲイ ンが低いアナログ出力で計測します。これにより、検出器 の飽和(サチレーション)を抑制し、微量のイオンから多量 のイオンまで測定することが可能になり、図のように9桁 の広いダイナミックレンジが得られます。 TPMHB0930JA 10-3 1010 陽極カウントレート (s-1) 109 10-4 カウンティング信号 アナログ信号 10-5 108 10-6 107 10-7 106 10-8 105 10-9 104 10-10 103 10-11 102 10-12 101 10-13 アナログ出力電流 (A) 1011 安全上のご注意 電子増倍管および関連製品は、高電圧を使用します。ご使用 にあたっては作業者の感電防止、機器の損傷防止などに注意 し、充分な安全対策を施してください。 100 10-14 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106 相対入力 弊社では、お客様の要望に合わせてデュアルモード型電子 増倍管を開発・製造することも可能です。 (1)電子増倍管は精密に組み立てられた電極と基板で構成さ れています。過度な力や衝撃を与えると、変形して正常 動作しない可能性があります。できる限り丁寧に扱うよ うお願いします。 (2)電子増倍管は出荷時に窒素(N2)ガスを封入したパッケー ジで納入します。ただし、輸送用の梱包ですので、長期保 管には適しません。保管する場合は、開封前・開封後共に 清浄な容器内にて、次のa) b)どちらかの方法で保管を行っ てください。 a) 真空度13 Pa以下で、オイル拡散を極力避けた清浄な 容器内 b) 0.45μm以下のフィルタによりろ過された乾燥窒素が 常に流れている清浄な容器内(湿度20 %以下) (3)電子増倍管や周辺の部品などを初めて使用する場合や、 保管後に再度使用する場合は、あらかじめベーキングな どを実施するか、使用前に高真空下(10-2 Pa以下)で24時 間以上排気することを推奨します。 (4)ベーキングについては、構成材料や処理などの制限によっ てはベーキングが不可能な製品もありますので、実施前 にご確認ください。また、ベーキング後は50 ℃以下にな るまでは電子増倍管を動作させないでください。 (5)装置に取付ける際は、以下の点にご注意ください。 ・ 洗浄されたパウダーフリーのビニールやポリエチレン 手袋を装着して、直接素手で触らないように取り扱っ てください。 ・ 電子増倍管のリード線は、他の金属部分との距離を常 に最低5 mm程度は離して配線してください。 ・ 異常放電を防ぐため、電子増倍管付近に突起物を近づ けないようにしてください。 ・ アノード出力からアンプや後続機器までは、信号線に シールドケーブルを使用し、可能な限り短い配線とな るようにしてください。 (6)各電子増倍管は、最大動作真空度より高真空下で使用し てください。これより低真空下で動作させると、残留ガ ス分子による放電や発光が発生して、電子増倍管に致命 的な損傷を与える可能性があります。 (7)ご使用の際は規格以上のゲインや供給電圧で動作させな いでください。ゲインや供給電圧が高い状態で動作させ ると、ゲイン劣化を早め、出力のドリフト、ノイズの増 大、リニアリティの低下などを招く恐れがあります。 (8)必要以上の出力電流を取り出さないでください。大きな 出力電流は、信号のリニアリティを悪化、ライフ特性の 低下を招きます。 その他 (1)弊社は品質・信頼性の向上に努めておりますが、電子増 倍管の安全を保障するものではありません。特に人の生 命、身体又は財産を侵害する恐れのある機器へご使用さ れる場合は、通常発生しうる不具合を充分に考慮した適 切な安全設計などの対策を施すようお願いいたします。 (2)最終需用者における稼動の指導にあたっては、電子増倍 管及びこれを使用した機器等の機能・性能や取り扱いの 説明、並びに適切な警告・表示等を充分に行うよう、ご 配慮いただきたくお願いいたします。 7 保証 浜松ホトニクスの電子増倍管およびその関連製品は、原則として納入後1年間保証いたします。保証の範囲は製品の代替納 入を限度といたします。ただし、以下に該当する場合については保証対象外となります。 (1)使用上のミス及び改造等による損傷 (2)天変地異、その他の不可抗力によって発生または誘発された事故 廃棄方法 電子増倍管を廃棄する場合は、廃棄物処理法に則り、自ら適正に処理していただくか、もしくは許認可を受けた適正な産 業廃棄物処理業者へ委託して処理してくださるようにお願いします。 国外で使用し、その国で廃棄する場合は、それぞれ の国、州の廃棄物処理に関する法令に従って適正に処理してくださるようお願いします。 ●本資料の記載内容は平成27年6月現在のものです。製品の仕様は、改良等のため予告なく変更することがあります。 □仙台営業所 〒980-0011 □筑波営業所 〒305-0817 □東京営業所 〒105-0001 □中部営業所 〒430-8587 □大阪営業所 〒541-0052 □西日本営業所 〒812-0013 WEB SITE www.hamamatsu.com 仙台市青葉区上杉1-6-11(日本生命仙台勾当台ビル2階) TEL (022)267-0121 つくば市研究学園5-12-10(研究学園スクウェアビル7階) TEL (029)848-5080 東京都港区虎ノ門3-8-21(虎ノ門33森ビル5階) TEL (03)3436-0491 浜松市中区砂山町325-6(日本生命浜松駅前ビル4階) TEL (053)459-1112 大阪市中央区安土町2-3-13(大阪国際ビル10階) TEL (06)6271-0441 福岡市博多区博多駅東1-13-6(竹山博多ビル5階) TEL (092)482-0390 □電子管営業推進部 〒438-0193 静岡県磐田市下神増314-5 TEL (0539)62-5245 FAX (0539)62-2205 FAX (022)267-0135 FAX (029)855-1135 FAX (03)3433-6997 FAX (053)459-1114 FAX (06)6271-0450 FAX (092)482-0550 TPMH1354J01 JUN. 2015 IP