LEDの性能を最大限に発揮させる上で、必須要件となっているのが放熱設計です。 適切な放熱設計をしていただくために、本書では製品の詳細な放熱構造と照明機器などの 熱設計時に必要と思われる資料を参考として提供します。 CONTENTS 1. はじめに P.2 2. パッケージ構造と熱抵抗 P.2 3. パッケージ外の熱設計 P.3 4-1. シミュレーション(CL-L103-C3) P.4 4-2. シミュレーション(CL-L103-C6) P.5 LEDが発した熱を効率的に伝導できる、 放熱構造となっています。 1. はじめに 放熱構造の重要性について LEDの発光素子は投入電力に応じた光と熱を発します。し 郭部の特定部位の温度(ケース温度) :Tc[℃]を測定し、 ジャン かしLEDパッケージでの表面積は非常に小さく、パッケージレ クションとケース間の熱抵抗:Rj-c[℃/W]及び、発熱量㲈投入 ベルでの大気中への熱放射はほとんど期待できません。その 電力:Pd[W]を用いてTj[℃]を計算します。 ため、ヒートシンクなどの外部放熱器が必要となり、その放熱 CL-L103シリーズのパッケージは、熱抵抗:Rj-cを最小限 器との接続部位までは、主に熱伝導を利用した放熱構造とな に抑える構造により、発光素子で発生した熱を効率的に外部 ります。 放熱器まで伝導させることが可能です。 LEDパッケージでは、発光素子のジャンクション温度:Tjの 本書では、CL-L103シリーズの詳細な放熱構造を示すとと 管理が大変重要で、いかなる条件下においても仕様書の絶対 もに、照明機器などの熱設計時に必要な資料を提供する事で 最大定格値以下にする必要があります。 しかしながら、Tjを直 LEDの持つ性能を最大限に活かしていただく事を目的として 接的に測定することは困難であるため、通常はパッケージ外 います。 2. パッケージ構造と熱抵抗 ジャンクション温度把握のために CL-L103シリーズのパッケージを外部ヒートシンクに接続 に伝わります。ここで、発 光 素 子のジャンクション部からパッ した場合の断面構造例を図1(a)に示します。パッケージは、ア ケージ外郭部のアルミニウム基板面までの熱抵抗がRj-cとな ルミニウム基板と絶縁層ならびに通電用銅箔パターンの積層 り、パッケージ固有の熱抵抗値となります。 構造になっています。 従って、以下の式が成り立ちます。 ここで特徴的なのは、発光素子は熱伝導率の低い絶縁層上 Tj = Rj-c・Pd + Tc ではなく熱伝導率の高いアルミニウム基板に直接マウントされ ていることです。 これにより、発光素子で発生した熱を効率よく さらにパッケージ外部のグリース(接着剤)の熱抵抗はRb パッケージ外部へ伝導することが可能となります。 [℃/W]、 ヒートシンクの熱抵抗はRh[℃/W]、周囲環境温度は パッケージ外郭部のアルミニウム基板面は、放熱性のグリー Ta[℃]となります。 ス(または接着剤)を介してヒートシンクに熱的に接続されま 図1(b)は図1(a)の断面図に沿っ す。前述したように、発光素子のジャンクション部で発生する た等価熱抵抗を示しています。 このよ 熱は主に熱伝導を利用し、発光素子→素子マウント用接着剤 うに、ジャンクション温 度:T jと周囲 →アルミニウム基板→グリース (接着剤)を介して、 ヒートシンク 環 境 温 度:Taの間に、熱 抵 抗 R j - c 、 Tj ■図1(a)Cross Section Rb、Rhが直列に接続されることとな Rj-c ります。ここで、パッケージ 外の熱 抵 Tc 抗であるR bとR hをまとめて熱 抵 抗 Rb Rc-aとすることもできます。 Rh Cross-section diagram Aluminum Bond Heat Sink LED die Tj Rj-c Tc Rb Rh つまり、以下の式も成り立ちます。 Tj = ( Rj-c + Rc-a )・Pd + Ta Ta ■図1(b)Thermal Resistance Connection Ta Tj Rj-c Tc Rc-a Ta パッケージ外熱抵抗と周囲環境温度の相関を 外部放熱機構を設計する上での参考としてお役立て下さい。 3. パッケージ外の熱設計 外部放熱機構のポイントについて 放熱用グリース (接着剤) とヒートシンクを合わせたパッケー 度:Taとパッケージ外熱抵抗:Rc-aの関係を駆動電流別に表 ジ外熱抵抗:Rc-a[℃/W]は、投入電力:Pd[W]、および周囲 したグラフです。 環境温度:Ta[℃]、ならびにパッケージ熱抵抗:Rj-c[℃/W]で 周囲環境温度:Taが高くなるほど、そして駆動電流値が大き 制限されます。 くなるほど許容されるパッケージ外熱抵抗:Rc-a=Rb+Rhが つまり、 小さくなっていきます。 つまりTjを仕様書上の絶対最大定格値である120℃に抑え Tj = ( Rj-c + Rc-a )・Pd + Ta Rc-a = ( Tj - Ta ) / Pd - Rj-c るためには、周囲環境温度が高くなるほど、そして駆動電流値 が大きくなるほど、 より熱抵抗の小さい㲈放熱性能の高いグリー これをTjの関数にすると、 ス(接着剤)およびヒートシンクが必要になることを示していま Rc-a = -Ta / Pd + Tj / Pd - Rj-c す。 よって、外部放熱部材選定の際には図2をひとつの目安とし ていただき、最終的には実機による熱検証をお願い致します。 となり、傾き-1/ Pdで切片がTj / Pd - Rj-cの直線になります。 図2はCL-L103-C3パッケージにおいて、Tjを仕様書上の ■図2 Ta-Rc-a(CL-103-C3) ■図3 Ta-Rc-a(CL-103-C6) (℃/W) Rj-c=6.4(℃/W) 100 80 Rj-c=5.0(℃/W) 35 150mA 30 350mA 240mA 25 480mA 700mA 20 420mA Rc-a Rc-a (℃/W) 350mA 60 40 840mA 15 10 20 0 また参考のために、図3にCL-L103-C6パッケージにおける 同様のグラフを示します。 絶対最大定格値である120℃に想定した場合の、周囲環境温 5 0 20 40 60 Ta 80 100 (℃) 0 0 20 40 60 Ta 80 100 (℃) 4-1. シミュレーション(CL-L103-C3) 有効な熱設計のために 熱設計を行う際には、シミュレーションも有効な手段のひと Structure figure of analytical model つになります。参 考のため、下 記 条 件のもと、C L- L 1 0 3 - C 3 パッケージを熱伝導性シートでヒートシンクに接続した時の、 Thermal conductive grease シミュレーション結果を図4(a)、 ( b)に示します。 CL-L103-C3 境界条件 周囲環境温度 : Ta=25℃ 熱伝導率 : 5W/m・K ヒートシンクの放熱係数 : 0.2 接触抵抗 : 考慮しない L W ( Variable ) モデル条件 H 熱伝導性シートの熱伝導率 : 4.5W/m・K 熱伝導性シートの厚み : t=0.12mm ヒートシンクの材質 : アルミ (フィン数=6) 外形 : W : 64mm H : 40mm L : (変化させる)mm ■図4(b)Characteristic of input power - junction temperature Tj ( Ŋ)70 80 ( Ŋ) Input Power : 3.255W ( Rated input ) 65 Junction temperature Tj Junction temperature Tj ■図4(a)Characteristic of heat sink surface area - junction temperature Tj 60 55 50 45 0 50000 100000 150000 Surface area of the heatsink 200000 250000 ( mm ) ※上記データはシミュレーション値であり、実際の測定値を保障したものではありません。 実際に使用する条件で、評価、検証を行って下さい。 2 70 S=26,613m m 2 60 50 40 30 20 0 1 2 Pd 3 4 ( W) 4-2. シミュレーション(CL-L103-C6) また、下記の条件のもと、CL-L103-C6パッケージを熱伝 Structure figure of analytical model 導性シートでヒートシンクに接続した時の、シミュレーション 結果を図5(a)、(b)に示します。 Thermal conductive grease CL-L103-C6 境界条件 周囲環境温度 : Ta=25℃ 熱伝導率 : 5W/m・K ヒートシンクの放熱係数 : 0.2 接触抵抗 : 考慮しない L W ( Variable ) モデル条件 熱伝導性シートの熱伝導率 : 4.5W/m・K H 熱伝導性シートの厚み : t=0.12mm ヒートシンクの材質 : アルミ (フィン数=6) 外形 : W : 64mm H : 40mm L : (変化させる)mm ■図5(a)Characteristic of heat sink surface area - junction temperature Tj ( Ŋ)95 ( Ŋ)130 120 85 Junction Temperature Tj Junction temperature Tj 90 Input Power : 6.51W ( Rated input ) 80 75 70 65 60 ■図5(b)Characteristic of input power - junction temperature Tj 110 100 90 80 70 S = 26,613mm2 60 50 40 30 0 50000 100000 150000 Surface area of the heatsink 200000 250000 ( mm2 ) ※上記データはシミュレーション値であり、実際の測定値を保障したものではありません。 実際に使用する条件で、評価、検証を行って下さい。 20 0 2 4 6 Pd( W ) 8 10 12 (W) ● 本書に掲載している技術情報及びデータの使用によって生じる、 あるいは、使用できな かったことによって生じる不利益や損害、訴訟原因に対する責任、 その他あらゆる損害、 損失について、 シチズン電子株式会社はその責任を一切負いません。 ● 本技術情報及びデータは利用者に対し、現状で提供されるものであり、 シチズン電子株 式会社は、本技術情報及びデータ上の誤りその他の瑕疵のないこと、本技術情報及び データが特定目的に適合すること並びに本技術情報及びデータ及びその使用が利用者 又は利用者以外の第三者の権利を侵害するものでないこと、 その他のいかなる内容につ いての保証も行うものではありません。 ● シチズン電子株式会社は通知なしに技術情報及びデータを変更する権利を留保します。 掲載されている情報 (文章、写真、 画像など) は、著作権の対象であり、 法律によって保護されています。 これらの情報について、 「私的使用のための複製」 や 「引用」 など著作権法上認められた場合を除き、 シチズン電子株式会社の許可なく複製、 転用等する事は法律で禁止されています。