LTC3261 - 高電圧、低静止電流の反転型チャージポンプ

LTC3261
高電圧、低静止電流の
反転型チャージポンプ
特長
n
n
n
n
n
n
n
概要
入力電圧範囲:4.5V ∼ 32V
反転型チャージポンプにより–VIN を発生
Burst Mode® 動作での静止電流:60µA
チャージポンプの出力電流:最大 100mA
設定可能な発振器周波数:50kHz ∼ 500kHz
短絡保護 / 過熱保護
高さの低い熱特性の向上した12ピンMSOP パッケージ
アプリケーション
n
n
n
n
両極性 / 反転型電源
産業用 / 計測装置用バイアス発生器
携帯型医療機器
携帯型計測器
LTC®3261は、4.5V ∼ 32Vの広い入力電圧範囲で動作する
高電圧の反転型チャージポンプで、最大 100mAの出力電流
を供給できます。
チャージポンプは低静止電流のBurst Mode 動作または低
ノイズの固定周波数モードで動作します。Burst Mode 動作
では、チャージポンプのVOUT は–0.94 • VIN で安 定 化し、
LTC3261に流れる静止電流はわずか 60µAです。固定周波
チャージポンプが–VINに等しい出力を発生し、
数モードでは、
固定の500kHz か、外付け抵抗を使用して50kHz ∼ 500kHz
の設定周波数で動作します。LTC3261は、熱特性の向上した
12ピンMSOP パッケージで供給されます。
L、LT、LTC、LTM、Burst Mode、Linear Technologyおよびリニアのロゴはリニアテクノロジー
社の登録商標です。ThinSOTはリニアテクノロジー社の商標です。その他すべての商標の所有
権は、それぞれの所有者に帰属します。
標準的応用例
15V 入力 –15V 出力のインバータ
1µF
C+
15V
VOUT のリップル
C–
–15V
VOUT
VIN
10µF
10µF
VOUT
10mV/DIV
AC-COUPLED
MODE = L
VOUT
200mV/DIV
AC-COUPLED
MODE = H
VOUT = –14.8V
LTC3261
EN
MODE
RT
VOUT = –14.1V
GND
100µs/DIV
3261 TA01a
VIN = 15V
fOSC = 500kHz
IOUT = 5mA
3261 TA01
3261fb
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
1
LTC3261
絶対最大定格(Note 1、3)
ピン配置
VIN、EN、MODE .......................................................–0.3V ~ 36V
VOUT ........................................................................–36V ~ 0.3V
RT .............................................................................–0.3V ~ 6V
VOUT の短絡時間............................................................ 無期限
動作接合部温度範囲(Note 2)......................... –55°C ~ 150°C
保存温度範囲.................................................... –65°C ~ 150°C
リード温度(半田付け、10 秒)..........................................300°C
TOP VIEW
NC 1
RT 2
NC 3
VOUT 4
C– 5
NC 6
13
GND
12
11
10
9
8
7
NC
MODE
EN
VIN
C+
NC
MSE PACKAGE
12-LEAD PLASTIC MSOP
TJMAX = 150°C, θJA = 40°C/W
EXPOSED PAD (PIN 13) IS GND, MUST BE SOLDERED TO PCB
発注情報
無鉛仕上げ
テープアンドリール
製品マーキング *
パッケージ
温度範囲
LTC3261EMSE#PBF
LTC3261EMSE#TRPBF
3261
12-Lead Plastic MSOP
–40°C to 125°C
LTC3261IMSE#PBF
LTC3261IMSE#TRPBF
3261
12-Lead Plastic MSOP
–40°C to 125°C
LTC3261HMSE#PBF
LTC3261HMSE#TRPBF
3261
12-Lead Plastic MSOP
–40°C to 150°C
LTC3261MPMSE#PBF
LTC3261MPMSE#TRPBF
3261
12-Lead Plastic MSOP
–55°C to 150°C
さらに広い動作温度範囲で規定されるデバイスについては、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。* 温度グレードは出荷時のコンテナのラベルで識別されます。
非標準の鉛仕上げの製品の詳細については、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。
無鉛仕上げの製品マーキングの詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/leadfree/をご覧ください。
テープアンドリールの仕様の詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/tapeandreel/をご覧ください。
3261fb
2
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
LTC3261
電気的特性
l は全規定動作接合部温度範囲での規格値を意味する。それ以外は TA =25 Cでの値
(Note 2)。VIN =EN=12V、MODE=0V、RT=200kΩ。
SYMBOL
PARAMETER
チャージポンプ
VIN
Input Voltage Range
VUVLO
VIN Undervoltage Lockout Threshold
IVIN
VIN Quiescent Current
VRT
VOUT
RT Regulation Voltage
VOUT Regulation Voltage
fOSC
ROUT
ISHORT_CKT
VMODE(H)
VMODE(L)
IMODE
VEN(H)
VEN(L)
IEN
Oscillator Frequency
Charge Pump Output Impedance
Max IVOUT Short-Circuit Current
MODE Threshold Rising
MODE Threshold Falling
MODE Pin Internal Pull-Down Current
EN Threshold Rising
EN Threshold Falling
EN Pin Internal Pull-Down Current
CONDITIONS
MIN
l
VIN Rising
VIN Falling
Shutdown, = EN = 0V
MODE = VIN, IVOUT = 0mA
MODE = 0V, IVOUT = 0mA
l
l
MODE = 12V
MODE = 0V
RT = GND
MODE = 0V, RT = GND
VOUT = GND, RT = GND
4.5
3.4
450
l
100
l
l
0.4
VIN = MODE = 32V
l
l
VIN = EN = 32V
TYP
0.4
3.8
3.6
2
60
3.5
1.200
–0.94 • VIN
–VIN
500
32
160
1.1
1.0
0.7
1.1
1.0
0.7
MAX
32
4
5
120
5.5
550
250
2
2
UNITS
V
V
V
µA
µA
mA
V
V
V
KHz
Ω
mA
V
V
µA
V
V
µA
Note 1:絶対最大定格に記載された値を超えるストレスはデバイスに永続的損傷を与える可
能性がある。長期にわたって絶対最大定格条件に曝すと、デバイスの信頼性と寿命に悪影響
を与える恐れがある。
)
は周囲温度(TA(°C))
および電力損失(PD(W))
から次式に従って計算さ
接合部温度(T(
J °C)
れる。
Note 2:LTC3261はTJ が TA にほぼ等しいパルス負荷条件でテストされる。LTC3261Eは0°C ~
85°Cの接合部温度範囲で性能仕様に適合することが保証されている。–40°C ~ 125°Cの動
作接合部温度範囲での仕様は設計、特性評価および統計学的なプロセス・コントロールと
の相関で確認されている。LTC3261Iは–40°C ~ 125°Cの動作接合部温度範囲で保証されて
いる。LTC3261Hは–40℃~ 150℃の動作接合部温度範囲で保証されており、LTC3261MPは
–55℃~ 150℃の全動作接合部温度範囲で保証されている。接合部温度が高いと動作寿命が
短くなる。125°Cを超える接合部温度では動作寿命はディレーティングされる。これらの仕様
と調和する最大周囲温度は、基板レイアウト、パッケージの定格熱インピーダンスおよび他の
環境要因と関連した特定の動作条件によって決まることに注意。
ここで、θJA =40°C/Wはパッケージの熱インピーダンスである。
TJ = TA + (PD • θJA)
Note 3:このデバイスには短時間の過負荷状態の間デバイスを保護するための過熱保護機能
が備わっている。過熱保護機能がアクティブなとき接合部温度は150°Cを超える。規定された
最高動作接合部温度を超える動作が継続するとデバイスの劣化または故障が生じるおそれ
がある。
3261fb
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
3
LTC3261
標準的性能特性
(注記がない限り、TA = 25 C、CFLY = 1µF、CIN = COUT = 10µF)
600
RT = GND
500
400
300
RT = 200kΩ
200
100
0
0
5
10
15
20
25
SUPPLY VOLTAGE (V)
30
25
500
400
300
200
100
0
35
発振器周波数とRT
SHUTDOWN CURRENT (µA)
発振器周波数と電源電圧
OSCILLATOR FREQUENCY (kHz)
OSCILLATOR FREQUENCY (kHz)
600
1
10
100
RT (kΩ)
1000
14
RT = GND
80
VIN = 12V
60
VIN = 5V
40
20
0
10
8
6
4
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
45
40
35
30
25
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
VIN = 12V
7
fOSC = 500kHz
fOSC = 200kHz
fOSC = 50kHz
6
5
4
3
2
1
0
5
10
15
20
25
SUPPLY VOLTAGE (V)
30
0
–50 –25
35
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
VOUT 短絡電流と電源電圧
200
200
fOSC = 500kHz
150
100
fOSC = 200kHz
50
0
3261 G06
VOUT SHORT CIRCUIT CURRENT (mA)
fOSC = 500kHz
50
20
–50 –25
250
VOUT SHORT CIRCUIT CURRENT (mA)
EFFECTIVE OPEN LOOP RESISTANCE (Ω)
VIN = 32V
VIN = 25V
VIN = 12V
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3261 G05
実効開ループ抵抗と温度
55
0
8
3261 G04
60
5
9
2
0
–50 –25
10
静止電流と温度
(固定周波数モード)
fOSC = 500kHz
fOSC = 200kHz
fOSC = 50kHz
12
QUIESCENT CURRENT (mA)
QUIESCENT CURRENT (µA)
120
VIN = 32V
15
3261 G03
静止電流と電源電圧
(固定周波数モード)
静止電流と温度(Burst Mode 動作)
100
20
3261 G02
QUIESCENT CURRENT (mA)
140
VIN = 32V
VIN = 12V
VIN = 5V
0
–50 –25
10000
3261 G01
シャットダウン電流と温度
0
5
10
15
20
25
SUPPLY VOLTAGE (V)
30
3261 G07
35
3261 G08
VOUT 短絡電流と温度
VIN = 12V
RT = GND
180
160
140
120
100
–50
–25
0
25
50
75
TEMPERATURE (°C)
100
125
3261 G8b
3261fb
4
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
LTC3261
標準的性能特性
(注記がない限り、TA = 25 C、CFLY = 1µF、CIN = COUT = 10µF)
fOSC = 50kHz
fOSC = 200kHz
fOSC = 500kHz
VOLTAGE LOSS (V)
2.5
VIN = 12V
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0.1
1
10
OUTPUT CURRENT (mA)
90
EFFECTIVE OPEN LOOP RESISTANCE (Ω)
3.0
電圧損失(VIN – |VOUT|)
と
出力電流(固定周波数モード)
80
VOUT
500mV/DIV
AC-COUPLED
fOSC = 200kHz
70
60
50
–5mA
IOUT
–50mA
fOSC = 500kHz
40
30
20
VIN = 12V
fOSC = 500kHz
10
0
100
0
5
10
15
20
25
SUPPLY VOLTAGE (V)
30
VOUT のトランジェント
(MODE = L から H )
VIN = 12V
fOSC = 500kHz
IOUT = –5mA
2ms/DIV
3261 G12
AVERAGE INPUT CURRENT (mA)
100
MODE
2ms/DIV
3261 G11
35
3261 G10
3261 G09
VOUT
500mV/DIV
AC-COUPLED
VOUT 負荷トランジェント時の
Burst Mode 動作(MODE = H)
実効開ループ抵抗と電源電圧
平均入力電流と出力電流
10
VOUT のリップル
MODE = L
MODE = H
1
0.1
0.1
VIN = 12V
fOSC = 500kHz
1
10
OUTPUT CURRENT (mA)
100
VOUT
10mV/DIV
AC-COUPLED
MODE = L
VOUT
200mV/DIV
AC-COUPLED
MODE = H
100µs/DIV
3261 G14
VIN = 15V
fOSC = 500kHz
IOUT = 5mA
3261 G13
3261fb
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
5
LTC3261
ピン機能
NC(ピン1、3、6、7、12)
:接続されていないピン。これらのピン
はLTC3261のダイに接続されていません。これらのピンはフ
ロート状態のままにしておくか、接地してください。ピン6およ
び 7は隣接ピンに短絡しておくこともできます。
VIN
(ピン9)
:チャージポンプの入力電圧。VIN は低インピーダ
ンスのセラミック・コンデンサを使用してバイパスしてください。
EN(ピン10)
:ロジック入力。ENピンの電圧をロジック H に
すると、反転型チャージポンプがイネーブルされます。
RT(ピン2)
:スイッチング周波数をプログラムするための入力
接続ピン。ENピンをロジック H に駆動すると、RTピンは固
定の1.2Vにサーボ制御されます。RTとGNDの間に抵抗を
接続すると、
チャージポンプのスイッチング周波数が設定され
ます。RTピンをGNDに接続すると、スイッチング周波数はデ
フォルトで固定の500kHzになります。
MODE(ピン11)
:ロジック入力。MODEピンは、チャージポン
プの動作モードを決定します。MODEピンの電圧をロジック
H にすると、チャージポンプの動作は強制的にBurst Mode
動作になり、VOUT はヒステリシス制御によりほぼ –0.94 • VIN
に安定化します。MODEピンの電圧をロジック L にすると、
チャージポンプは強制的に、スイッチング周波数が一定の開
ループ・インバータとして動作するようになります。両方のモー
ドのスイッチング周波数は、RTピンとGNDの間に接続した外
付け抵抗によって決まります。Burst Modeでは、このスイッチ
ング周波数は、デバイスが低静止電流のスリープ状態に入る
前のバースト・サイクルの周波数を表します。
VOUT
(ピン4)
:チャージポンプの出力電圧。固定周波数モード
(MODE= L )
では、このピンは–VIN に駆動されます。Burst
Mode 動作(MODE= H )では、ヒステリシス制御を備えた
内部バースト・コンパレータにより、このピンの電圧は–0.94 •
VIN に安定化されます。
–
C(ピン5)
:フライング・コンデンサの負極側の接続ピン。
GND(露出パッドのピン13)
:グランド。パッケージの露出パッ
ドはグランドになっており、正常な機能と定格の熱性能を確
保するため、プリント回路基板のグランド・プレーンに半田付
けする必要があります。
+
C(ピン8)
:フライング・コンデンサの正極側の接続ピン。
ブロック図
8
5
C+
9
VIN
C–
S1
S4
11
EN
MODE
4
S2
S3
10
VOUT
CHARGE
PUMP
AND
INPUT
LOGIC
50kHz
TO
500kHz
OSC
13
RT
2
GND
3261 BD
3261fb
6
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
LTC3261
動作(ブロック図を参照)
シャットダウン・モード
シャットダウン・モードでは、内部バイアス回路を除くすべて
の回路がオフになります。LTC3261は、イネーブル入力
(EN)
にロジック L が入力されるとシャットダウン状態になります。
シャットダウン時にVIN 電源からLTC3261に流れる電流は、
わずか 2µA(標準)
です。
固定周波数動作
MODEピンにロジック L を入力すると、LTC3261は低ノイズ
の固定周波数動作になります。チャージポンプと発振器回路
はENピンを使用してイネーブルします。クロック・サイクルの
最初は、スイッチS1および S2 が閉じています。C+ ピンとC– ピ
ンの間に接続されている外付けのフライング・コンデンサは入
力電源電圧 VIN まで充電されます。クロック・サイクルの第 2
段階では、スイッチS1および S2は開きますが、S3および S4は
閉じます。この構成では、フライング・コンデンサのC+ 側が接
地されるので、電荷はC– ピンを介してVOUT に供給されます。
定常状態では、VOUT ピンの電圧は、VOUT から流れる負荷電
流に起因する電圧降下分を–VIN から減じた電圧で安定化し
ます。
電 荷 転 送 周 波 数 は、RTピンの 外 付 け 抵 抗 を 使 用して
50kHz ∼ 500kHzの範囲に調整できます。周波数が低い場合
はチャージポンプの実効開ループ出力抵抗(ROL)
が大きくな
るので、平均出力電流を小さくすることができます。図 1を使
用すると、必要な発振器周波数を実現するのに適したRTの
値を求めることができます。RTピンを接地すると、デバイスは
500kHzの固定周波数で動作します。
Burst Mode 動作
MODEピンにロジック H を入力すると、LTC3261は低消費
電力のBurst Mode 動 作になります。Burst Mode 動 作では、
VOUTピンの電圧がチャージポンプによって–0.94 • VIN
(標準)
まで充電されます。デバイスはその後内部発振器を停止して
スイッチング損失を減少させ、低電流状態に移行します。この
状態はスリープ状態と呼ばれ、その状態でのデバイスの消費
電流は約 60µAに過ぎません。出力電圧が低下してバースト・
コンパレータのヒステリシスの範囲を超えると、デバイスは起
動してチャージポンプ・サイクルを開始します。このサイクルは
出力電圧が–0.94 • VIN
(標準)
を超えるまで続きます。
このモー
ドでは動作電流が少なくて済みますが、その代わりに出力リッ
プルが大きくなるので、軽負荷動作に最適です。
充電サイクルの周波数は、RTピンに接続した外付け抵抗で
設定されます。チャージポンプのROL は、周波数が高いと小さ
くなります。Burst Mode 動作では、RTピンをGNDに接続する
ことを推奨します。こうするとチャージポンプのROL が最小に
なり、出力がバーストしきい値まで急速に充電され、低電流ス
リープ状態の期間が最適化されます。
600
OSCILLATOR FREQUENCY (kHz)
LTC3261は、高電圧の反転型チャージポンプです。4.5V ∼
32Vの広い入力電源電圧範囲をサポートしています。
500
400
300
200
100
0
10
1
100
RT (kΩ)
1000
10000
3261 F01
図 1.発振器周波数とRT
ソフトスタート
LTC3261は、起動時の過剰な電流を防ぐため、ソフトスタート
回路を内蔵しています。ソフトスタートは、出力の貯蔵コンデン
サに流れ込む電流量を緩やかに増加させる内部回路によって
実現されます。ソフトスタート回路は、強制的シャットダウンま
たはサーマル・シャットダウンが発生するとリセットされます。
短絡保護 / 過熱保護
LTC3261には短絡電流制限回路ならびに過熱保護回路が内
蔵されています。デバイスは、短絡状態時には出力電流を自
動的に約 160mAに制限します。接合部温度が約 175 Cを超
えると、サーマル・シャットダウン回路により、出力への電流供
給がディスエーブルされます。接合部温度が低下して約165 C
に戻ると、出力への電流供給が再開されます。過熱保護が作
動しているとき、接合部温度は規定の動作温度範囲を超えて
います。過熱保護が想定しているのは、瞬間的な過負荷状態
が通常動作の範囲外で発生した場合です。規定された最大
動作接合部温度を超えた動作が継続すると、デバイスの信頼
性を損なう恐れがあります。
3261fb
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
7
LTC3261
アプリケーション情報
実効開ループ出力抵抗
チャージポンプの実効開ループ出力抵抗(ROL)は、チャージ
ポンプの能力を表す非常に重要なパラメータです。このパラ
メータの値は、発振器の周波数(fOSC)、フライング・コンデンサ
(CFLY)
の値、非重複時間、内部スイッチの抵抗(RS)、外付け
コンデンサのESRなど、多くの要因に依存します。
標準的なROL の値を温度の関数として表したものを図 2に示
します。
EFFECTIVE OPEN LOOP RESISTANCE (Ω)
60
VIN = 32V
VIN = 25V
VIN = 12V
55
fOSC = 500kHz
50
45
40
VRIPPLE(P-P) ≈
⎞
IOUT ⎛ 1
•⎜
– tON ⎟
COUT ⎝ fOSC
⎠
ここで、fOSC は発振器周波数、tON は発振器のオン時間(標
準 1µs)、COUT は出力コンデンサの値です。
出力リップルの大きさが COUT の値によって制御されるのと同
様に、入力
(VIN)
ピンに現れるリップルの大きさはCIN の値に
よって制御されます。入力で要求されるバイパス容量の大き
さは、VIN を駆動する電源インピーダンスに依存します。最良
の結果を得るには、2µF 以上の低 ESR 容量でVIN をバイパス
することを推奨します。タンタルやアルミなどの高 ESRコンデ
ンサの入力ノイズは、低 ESRのセラミック・コンデンサより高く
なります。したがって、主なバイパス容量としてはセラミック・コ
ンデンサを使用し、必要に応じてタンタル・コンデンサまたは
アルミ・コンデンサと併用することを推奨します。
35
フライング・コンデンサの選択
30
チャージポンプの能力はフライング・コンデンサによって制御
されます。チャージポンプの最大定格出力電流が要求される
アプリケーションでは、フライング・コンデンサとして1µF 以上
のセラミック・コンデンサを推奨します。
25
20
–50 –25
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3261 F02
図 2.標準的な ROL と温度
入力 / 出力コンデンサの選択
LTC3261と一緒に使用されるコンデンサの種類と容量によっ
て、レギュレータ制御ループの安定性、出力リップル、チャー
ジポンプの能力、最小ターンオン時間など、いくつかの重要
なパラメータが決まります。ノイズとリップルを低減するには、
チャージポンプ出力に低 ESRのセラミック・コンデンサを使用
することを推奨します。チャージポンプの出力コンデンサは、
動作温度範囲およびバイアス電圧範囲全体にわたって2µF
以上を保持する必要があります。タンタル・コンデンサおよび
アルミ・コンデンサは、セラミック・コンデンサと並列に使用し
て全体の容量を増やすことができますが、ESR が高いので単
独では使用しないでください。固定周波数モードでは、与えら
れた負荷電流に対する出力リップルの大きさが COUT の値に
よって直接制限されます。COUT のサイズを大きくすると出力
リップルは減少しますが、代わりに最小ターンオン時間は長く
なります。VOUTピンでのピーク・トゥ・ピークの出力リップルは、
次式で概算されます。
非常に軽負荷のアプリケーションでは、フライング・コンデン
サの容量を低減してスペースやコストを節減することができま
す。たとえば、負荷電流が最大で20mAの場合は、0.2µFのコ
ンデンサで十分な場合があります。フライング・コンデンサの
容量が小さいと、実効開ループ抵抗(ROL)
が大きくなるので、
チャージポンプが供給できる最大負荷電流が制限されます。
セラミック・コンデンサ
異なる複数の材料で製造されたセラミック・コンデンサは、
高温および高電圧では異なる割合で容量が低下します。た
とえば、X5RまたはX7Rの材料で製造されたセラミック・コ
ンデンサは–40 C ∼ 85 Cの範囲で容量のほとんどを維持で
きますが、Z5U 型またはY5V 型のコンデンサは同じ範囲でか
なりの容量を失います。Z5Uおよび Y5Vのコンデンサは電圧
係数も劣ることがあり、その場合には定格電圧が印加される
と容量が 60% 以上低下します。したがって、異なるコンデン
サを比較するときは、規定容量値を比較するより、与えられ
たケース寸法に対して得られる容量を比較する方が多くの場
合適切です。コンデンサ・メーカのデータ・シートを参照して、
すべての温度範囲および電圧範囲で目的の容量が確保でき
3261fb
8
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
LTC3261
アプリケーション情報
るようにしてください。セラミック・コンデンサのメーカとその
Webサイトの一覧を表 1に示します。
表1
AVX
Kemet
村田製作所
太陽誘電
Vishay
TDK
www.avxcorp.com
www.kemet.com
www.murata.com
www.t-yuden.com
www.vishay.com
www.component.tdk.com
レイアウトに関する検討事項
LTC3261によって高いスイッチング周波数と大きなトランジェ
ント電流が生じるので、最適な性能を引き出すには基板のレイ
アウトに注意が必要です。真のグランド・プレーンを使用し、す
べての外付けコンデンサとの結線を短くすれば、性能が向上
し、あらゆる条件で適切なレギュレーションが保証されます。
LTC3261のレイアウトの一例を図 3に示します。
PD = (VIN – |VOUT|) • (IOUT)
ここで、IOUT はVOUT ピンでの出力電流を表します。
図 4のディレーティング曲線では、パッケージの熱抵抗 θJA
を最大で40 C/Wと仮定しています。この値を実現するため
に、2オンス厚の銅配線を含む4 層のプリント回路基板と、
LTC3261の露出パッドをグランドプレーンに接続する6つのビ
アを使っています。
連続動作を行う場合は、図 4に示すTJ ≤ 150 Cに対応する領
域でLTC3261を動作させることを推奨します。150 Cを超える
と、デバイスの性能が低下したり、寿命が短くなる恐れがある
ので、この温度を超えた状態での動作は避けてください。通
常、約 175 Cの高温で、デバイスはサーマル・シャットダウン
状態になり、出力はディスエーブルされます。再度デバイスの
温度が下がると
(通常、約 165 C)、出力は再びイネーブルさ
れ、デバイスは通常動作を再開します。
フライング・コンデンサのノードであるC+ および C– では、大
電流が高い周波数で切り替わります。これらのノードへの配
線は、RTピンなど、影響を受けやすいピンには近づけないで
ください。
GND
CFLY
熱管理
VIN
高温での電力のディレーティング
大電力アプリケーションで過熱状態を防止するには、図 4を
使用して、
周囲温度と電力損失の最大値の組み合わせを確認
してください。
LTC3261で消費される電力は、与えられた周囲温度に対して、
示されている線より下の領域に常に入っていることが必要です。
LTC3261の電力損失は次のとおりです。
EN
MODE
RT
GND
3261 F03
図 3.推奨レイアウト
6
MAXIMUM POWER DISSIPATION (W)
入力電圧が高く出力電流が最大の場合は、LTC3261での電
力損失がかなり大きくなることがあります。接合部温度が高く
なって約 175 Cを超えると、サーマル・シャットダウン回路に
より、出力は自動的に不動作状態になります。最大接合部温
度を下げるため、プリント回路基板のグランド・プレーンへの
熱的な接続を良好にすることを推奨します。2 層のプリント回
路基板でパッケージの露出パッドをデバイスの下のグランド・
プレーンに接続すると、パッケージおよびプリント回路基板の
熱抵抗を大幅に下げることができます。
VOUT
θJA = 40°C/W
5
4
3
2
RECOMMENDED
OPERATION
TJ = 150°C
1
0
–50 –25
0 25 50 75 100 125 150 175
AMBIENT TEMPERATURE (°C)
3261 F04
図 4.最大電力損失と周囲温度
3261fb
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
9
LTC3261
標準的応用例
入力電圧の高い 2 分割の分圧器
C2
1µF
50V
9V TO 32V
C1
4.7µF
50V
VIN
C+
EN
C–
VOUT
LTC3261
MODE
RT
GND
3261 TA04
VIN/2
C3
4.7µF
25V
NOTE: MINIMUM LOAD OF
120µA IS REQUIRED TO
ASSURE START-UP
両極性倍電圧器を備えた反転型チャージポンプ
D1
1N4148
4.5V TO 32V
C1
4.7µF
50V
C+
VIN
EN
LTC3261
C–
D3
1N4148
GND
VOUT
3261 TA06
~ 2VIN
C5
4.7µF
100V
C2
1µF
50V
C3
1µF
50V
C4
1µF
50V
MODE
RT
D2
1N4148
D4
1N4148
~ –2VIN
C6
4.7µF
100V
–VIN
C7
4.7µF
50V
NOTE: I2VIN • 2 + I–2VIN • 2 + IOUT < = 100mA
3261fb
10
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
LTC3261
標準的応用例
高電圧を入力して逆極性の低電圧を出力するチャージポンプ
4.5V TO 32V
C1
4.7µF
50V
VIN
VOUT
VOUT
C4
4.7µF
50V
EN
+
D1
MBR0540
C
C2
1µF
50V
 V –V – |I | •R

VOUT  –  IN f OUT OL –Vf 
2



LTC3261
D2
MBR0540
C3
1µF
50V
D3
MBR0540
C–
MODE
GND
RT
3261 TA07
3261fb
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
11
LTC3261
パッケージ
最新のパッケージ図面については、http://www.linear-tech.co.jp/designtools/packaging/を参照してください。
MSE
Package
MSE
パッケージ
12-Lead
Plastic
MSOP,
Exposed
Die・パッド
Pad
12ピン・プラスチックMSOP、
露出ダイ
(Reference LTC
LTC DWG
DWG ## 05-08-1666
05-08-1666 Rev
Rev F)
F)
(Reference
露出パッド・
オプションの底面
2.845 ± 0.102
(.112 ± .004)
5.23
(.206)
MIN
2.845 ± 0.102
(.112 ± .004)
0.889 ± 0.127
(.035 ± .005)
6
1
0.35
REF
1.651 ± 0.102
(.065 ± .004)
1.651 ± 0.102 3.20 – 3.45
(.065 ± .004) (.126 – .136)
DETAIL “B”
12
0.65
(.0256)
BSC
0.42 ± 0.038
(.0165 ± .0015)
TYP
4.039 ± 0.102
(.159 ± .004)
(NOTE 3)
推奨半田パッド・レイアウト
0.254
(.010)
7
12 11 10 9 8 7
0.12 REF
DETAIL “B”の
コーナー・テールは
リードフレームの輪郭の一部
参考のみ
測定を目的としない
0.406 ± 0.076
(.016 ± .003)
REF
DETAIL “A”
0° – 6° TYP
ゲージ・プレーン
3.00 ± 0.102
(.118 ± .004)
(NOTE 4)
4.90 ± 0.152
(.193 ± .006)
0.53 ± 0.152
(.021 ± .006)
DETAIL “A”
1.10
(.043)
MAX
0.18
(.007)
シーティング・
プレーン
0.22 – 0.38
(.009 – .015)
TYP
1 2 3 4 5 6
0.650
(.0256)
BSC
NOTE:
1. 寸法はミリメートル
(/ インチ)
2. 図は実寸とは異なる
3. 寸法にはモールドのバリ、突出部、
またはゲートのバリを含まない
モールドのバリ、突出部、
またはゲートのバリは、各サイドで 0.152mm(0.006")
を超えないこと
4. 寸法にはリード間のバリまたは突出部を含まない
リード間のバリまたは突出部は各サイドで 0.152mm
(0.006")
を超えないこと
5. リードの平坦度(成形後のリードの底面)
は最大 0.102mm (0.004") であること
6. 露出パッドの寸法には、
モールドフラッシュを含まない。
E-PAD 上のモールドフラッシュは、各サイドで 0.254mm
(.010")
を超えないこと。
0.86
(.034)
REF
0.1016 ± 0.0508
(.004 ± .002)
MSOP (MSE12) 0911 REV F
3261fb
12
詳細:www.linear-tech.co.jp/3261
LTC3261
改訂履歴
REV
日付
A
9/12
B
1/13
概要
「絶対最大定格」セクションの動作接合部温度を–55ºC~150ºCに変更
発注情報の表にLTC3261HMSEとLTC3261MPMSEを追加
電気的特性の見出しに「接合部」の語を追加
Note2のLTC3261Iに関する文章の後に、LTC3261HとLTC3261MPの保証温度範囲を追加
図4からサーマル・シャットダウンのグラフを削除
150ºCでの動作とサーマル・シャットダウンに関する2つの段落を変更
関連製品の表を更新
ページ番号
「ピン機能」のMODEピンのピン番号を修正
2
2
3
3
9
9
14
6
3261fb
リニアテクノロジー・コーポレーションがここで提供する情報は正確かつ信頼できるものと考えておりますが、その使用に関する責務は
一切負いません。また、ここに記載された回路結線と既存特許とのいかなる関連についても一切関知いたしません。なお、日本語の資料は
あくまでも参考資料です。訂正、変更、改版に追従していない場合があります。最終的な確認は必ず最新の英語版データシートでお願いいたします。
13
LTC3261
標準的応用例
24V 入力 –24V 出力のインバータ
C2
1µF
8
5
+
C–
C
9
24V
VOUT
VIN
C1
10µF
4
–24V
C3
10µF
LTC3261
10
11
EN
MODE
RT
2
GND
13
3261 TA03
関連製品
製品番号
説明
注釈
LT1054/LT1054L
レギュレータ付きスイッチトキャパシタ電圧コンバータ
VIN:3.5V ∼ 15V/7V、IOUT =100mA/125mA、N8、
SO8、SO16 パッケージ
LTC1144
シャットダウン機能を備えた入力電圧範囲の広い
スイッチトキャパシタ電圧コンバータ
広い入力電圧範囲:2V ∼ 18V、ISD < 8µA、
SO8 パッケージ
LTC1514/LTC1515
昇降圧スイッチトキャパシタ DC/DCコンバータ
VIN:2V ∼ 10V、VOUT:3.3V ∼ 5V、IQ =60µA、
SO8 パッケージ
LT®1611
150mA出力、1.4MHzマイクロパワー反転スイッチング・
レギュレータ
VIN:0.9V ∼ 10V、VOUT = 34V、
ThinSOT ™パッケージ
LT1614
250mA出力、600kHzマイクロパワー反転スイッチング・
レギュレータ
VIN:0.9V ∼ 6V、VOUT = 30V、IQ =1mA、MS8、
SO8 パッケージ
LTC1911
インダクタ不要の250mA、1.5MHz 降圧 DC/DC
コンバータ
VIN:2.7V ∼ 5.5V、VOUT =1.5V/1.8V、IQ =180µA、
MS8 パッケージ
LTC3250/LTC3250-1.2/ インダクタ不要の降圧 DC/DCコンバータ
LTC3250-1.5
VIN:3.1V ∼ 5.5V、VOUT =1.2V/1.5V、IQ =35µA、
ThinSOT パッケージ
LTC3251
500mA、インダクタ不要のスペクトル拡散降圧 DC/DC
コンバータ
VIN:2.7V ∼ 5.5V、VOUT:0.9V ∼ 1.6V、1.2V、1.5V、
IQ =9µA、MS10E パッケージ
LTC3252
デュアル、250mA、インダクタ不要のスペクトル拡散降圧
DC/DCコンバータ
VIN:2.7V ∼ 5.5V、VOUT:0.9V ∼ 1.6V、IQ =50µA、
DFN12 パッケージ
LTC3260
低ノイズの2 電源反転型チャージ・ポンプ
VIN:4.5V ∼ 32V、VOUT =–VIN、IOUT =100mA、
FOSC =50kHz ∼ 500kHz、VLDO+ =1.2V ∼ 32V、
ILDO+ =50mA、VLDO– =–1.2V ∼ –32V、
ILDO– =50mA、DE14および MSE16 パッケージ
3261fb
14
リニアテクノロジー株式会社
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6紀尾井町パークビル8F
TEL 03-5226-7291 ● FAX 03-5226-0268 ● www.linear-tech.co.jp
LT 0113 REV B • PRINTED IN JAPAN
 LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2012