センス抵抗を不要にする、小型DFNパッケージの電子回路ブレーカ デザインノート402 SH Lim はじめに 従来の電子回路ブレーカ(ECB)は、MOSFET、MOSFETコ ントローラおよび 電 流センス抵抗で構成されています。 LTC® 4213は外部MOSFETのRDS(ON)を利用することによ り、センス抵抗を不要にします。その結果、シンプルな小型ソ リューションが実現され、低い動作負荷電圧で挿入損失が大 幅に下がる利点が得られます。LTC4213は、選択可能な3つ のトリップ・スレッショルドおよび外部NチャネルMOSFETス イッチのハイサイド・ドライブによる、変化する過負荷条件に 対する2つの回路遮断応答を備えています。 過電流保護 SENSEPピンとSENSENピンは外部MOSFETのRDS(ON)に よって負荷 電 流をモニタし、トリップ・ポイントがそれぞ れV CB とV CB (FAST ) の2つの内部コンパレータ(SLOWCOMPとFASTCOMP)の入力として機能します。回路ブレ ーカは、過電流フォールトによってMOSFETの両端に大き な電圧降下が生じるとトリップします。過負荷電流がVCB/ R DS(ON) を超えると、SLOWCOMPが16µsの遅延の後回 路ブレーカをトリップします。VCB(FAST)/RDS(ON) を超え る過酷な過負荷や短絡電流が生じると、FASTCOMPが回 路ブレーカを1µs以内にトリップして、MOSFETと負荷の両 方を保護します。 両方のコンパレータの同相入力電圧範囲はグランドからVCC + 0.2Vです。このため、回路ブレーカは負荷電源がオンする とき0Vから動作します。 柔軟な過電流設定 LTC4213にはISELピンが備わっており、以下の3つの過電流 設定の1つを選択します。 なると、内部 OVP回路が アクティブになり、GATEピン が”L”に引き下げられ、外部MOSFETがオフします。OVP回 路は、(V IN 負荷電源がV CC バイアス電圧よりはるかに高 い)不正なブラグインからシステムを保護します。 電子回路ブレーカ(ECB)の標準的アプリケーション 両電源のECBアプリケーションに使われたLTC4213を図 1に示します。V IN 電源が立ち上がるとき、またはECBが過 電流状態に応答するときの過渡スパイクを防ぐため、入力 にバイパスコンデンサを推奨します。通常のパワーアップ・シ ーケンスを図2に示します。LTC4213は、VCCピンが内部低 電圧ロックアウト・スレッショルドを超え、ONピンが0.8Vを 超えて上昇すると、直ちにリセット・モードを終了します(図 2のトレース1を参照)。内部60µsのデバウンス・サイクルの 後、内部100µAの電流源によって、GATEピンの容量がグ ランドから充電されます(トレース2を参照)。GATEピンと MOSFETのゲートが充電するにつれてVGATEがMOSFETの スレッショルドを超えると、外部MOSFETがオンします。 ΔVGSARM (外部MOSFETが完全にエンハンスト状態にな り、RDS(ON)が最小になったとみなされる電圧)をVGATEが 超えると、回路ブレーカが作動可能状態になります。回路 ブレーカが作動可能状態になってから50µs後、READYピ ンが”H”になり(トレース3を参照)、システムにVINをパワ ーアップするよう合図を出します。トレース4は、VINがパワ ーアップするときの、関連したVOUT 波形を示しています。 スタートアップの間回路ブレーカがトリップしないように、 負荷電流はVCB/RSENSEより低くなければなりません。必 ������、 LT、 LTC、 LTMおよびBurst Modeはリニアテクノロジー社の登録商標です。 他のすべての商標はそれぞれの所有者に所有権があります。 CIN 100µF ISELがGNDだと、VCB = 25mVおよびVCB(FAST) = 100mV ISELがオープン状態だと、VCB = 50mVおよびVCB(FAST) = 175mV VBIAS 3.3V ISELがVCCだと、VCB = 100mVおよびVCB(FAST) = 325mV 過電圧保護 LTC4213はバイアス電源を超える負荷過電圧保護(OVP)を 与えることができます。65µsの間VSENSEP > VCC + 0.7Vと 10/06/402 Q1 SI4864DY VIN 1.25V OFF ON C1 0.1µF + CLOAD 100µF VCC SENSEP GATE SENSEN LTC4213 ON GND ISEL + VOUT 1.25V 3.5A VCC R4 10k READY DN402 F01 図1. 電子回路ブレーカのアプリケーションに 使われたLTC4213 要なら、ISELピンを、起動時には高い過電流スレッショルド に動的にステップさせ、負荷電流が安定したら低いスレッシ ョルドに動的にステップさせることができます。 センス抵抗を使った精度の高いECB RDS(ON) の電圧降下を検出する方法では、回路ブレーカの 精度を代価にしてシステムの簡単さを手に入れます。検出の 不精確さの大半は、動作温度や異なったVGSバイアス条件 によって変化する外部MOSFETのRDS(ON)に起因します。 また、MOSFETのベンダーは、製造時のばらつきのため、 RDS(ON)の分布を狭く規定はしません。代わりに、許容誤差 の小さな外部抵抗が電流検出に採用されると、LTC4213は 本来の±10%の回路ブレーカ精度を示します。許容できる RSENSE 抵抗の電圧降下と、精度の高いECBアプリケーシ ョンに使われたLTC4213を図3に示します。 (1) VON 1V/DIV Nチャネル・ロジックレベルMOSFET用ハイサイド・スイッチ ロジックレベルのNチャネルMOSFETのアプリケーショ ンは、通常4.5Vの最小ゲート・ドライブ 電 圧を必要とし ます。ハイサイド・スイッチのアプリケーションに使われた LTC4213を図4に示します。LTC4213の内部チャージポン プはGATEをロジックレベル・ゲート・ドライブの必要とする レベルよりも上に昇圧して、VCC ≥ 3VでMOSFETを完全に エンハンスト状態にします。標準的なゲート・ドライブとバイ アス電源の曲線を図5に示します。 まとめ LTC4213は小型パッケージのNo RSENSE電子回路ブレー カで、MOSFET挿入損失の低い低電圧アプリケーション に最適です。選択可能な2つの電流レベルと2つの応答時 間をもつ回路ブレーカ機能を備えています。この回路ブレ ーカはグランドからVCCまでの広い動作入力同相範囲を備 えています。 VIN 3V TO 6V (2) Q1 Si4420BDY + R4 10k 10µF VGATE 5V/DIV + VCC SENSEP SENSEN VOUT 3V TO 6V 5A CLOAD GATE READY LTC4213 (3) VREADY 2V/DIV OFF ON ON GND ISEL DN402 F04 (4) VOUT ≈ VIN 1V/DIV VIN POWERS UP 0.1ms/DIV DN402 F02 図4. ロジックレベル・NチャネルMOSFET用 ハイサイド・スイッチ(VCC > 3V) 図2. 通常の電源立上げシーケンス 8.0 VIN 1.9V + Q1 Si4420BDY + CIN 100µF SENSEP VBIAS 5V VCC OFF ON ON SENSEN GATE 7.5 VOUT 1.9V 5A VGATE – VSENSEN (V) RSENSE 7mΩ CLOAD 100µF VIN R4 10k LTC4213 6.5 6.0 5.5 5.0 4.5 READY GND 7.0 4.0 3.0 ISEL DN402 F03 3.5 4.0 5.0 5.5 4.5 BIAS SUPPLY VOLTAGE (V) 6.0 DN402 F05 図3. ハイサイド・センス抵抗を使った精度の高いECB 図5. ゲート・ドライブ電圧とバイアス電源電圧 データシートのダウンロード http://www.linear-tech.co.jp お問い合わせは当社または下記代理店まで(50音順) 株式会社立花エレテック 〒105-0011東京都港区芝公園2-4-1 TEL(03)5400-2529 FAX(03)3437-2696 リニアテクノロジー株式会社 株式会社トーメンエレクトロニクス 〒108-8510東京都港区港南1-8-27 TEL(03)5462-9615 FAX(03)5462-9695 102-0094 東京都千代田区紀尾井町 3-6秀和紀尾井町パークビル 8F TEL(03)5226-7291 FAX(03)5226-0268 http://www.linear-tech.co.jp 東京エレクトロンデバイス株式会社 〒224-0045横浜市都筑区東方町1 TEL(045)474-5114 FAX(045)474-7116 dn402f 1006 • PRINTED IN JAPAN LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2006