通信キャリア市場に向けた NEC の SDN/NFV <インタビュー> IT/ネットワーク技術を結集し、 キャリアに新たな価値をもたらすSDN/NFVソリューションを提供 日本電気株式会社 執行役員 兼 第一キャリアサービス事業部長 河村 厚男 氏 <統合運用・管理> レガシーにも対応した統合オーケストレーションで TCO削減や新サービスの早期構築を実現 <ネットワーク機能仮想化ソリューション> キャリアグレードの品質をNFV環境で実現 先行優位性生かして国内外に積極展開 <トランスポートSDN> 光トランスポートにSDN技術を適用して 設備コスト最適化や堅牢性確保などを実現 <データセンタSDN> マルチDC対応のキャリアグレードDC基盤を OpenStackとSDN技術を核に開発・提供中 特集 通信キャリア市場 NEC の SDN に向けた /NFV <インタビュー> IT/ネットワーク技術を結集し、 キャリアに新たな価値をもたらすSDN/NFVソリューションを提供 日本電気株式会社 執行役員 兼 第一キャリアサービス事業部長 河村 厚男 氏 <統合運用・管理> レガシーにも対応した統合オーケストレーションで TCO削減や新サービスの早期構築を実現 <ネットワーク機能仮想化ソリューション> キャリアグレードの品質をNFV環境で実現 先行優位性生かして国内外に積極展開 <トランスポートSDN> 光トランスポートにSDN技術を適用して 設備コスト最適化や堅牢性確保などを実現 <データセンタSDN> マルチDC対応のキャリアグレードDC基盤を OpenStackとSDN技術を核に開発・提供中 特集 通信キャリア市場に向けたNECのSDN/NFV [インタビュー] IT/ ネットワーク技術を結集し、 キャリアに新たな価値をもたらす SDN/NFV ソリューションを提供 先進 ICT 技術の活用による高度な社会インフラ実現を目指す「社会ソリューション事業」 に注力する NEC。 同社では、様々な社会課題の解決に取り組むと共に、事業規模拡大と収益 性向上に向けた活動を進めている。その 1 つが、SDN や NFV といった新パラダイムに基 づくキャリアネットワークの革新である。 同社のキャリア SDN/NFV ソリューションとキ ャリアビジネスの現状と今後の展開について、 河村厚男 執行役員にうかがった。 日本電気株式会社 執行役員 兼 第一キャリアサービス事業部長 河村 厚男氏 て お り、2013 年 度 の 数 値 は 2006 クで提供していた各種サービスを、 年度に比べて約 3 分の 2 にまで落ち シンプルな共通ネットワークでフレ 込んでいます。そのため、資源をう キシブルに提供できるようになりま まく共有する仕組みや、ネットワー す(図 1) 。これにより新サービス提 ク構築のコストを下げる工夫が必要 供に要するコストや時間を大幅に下 る取り組みを進めておられます。取り になっているのです。また、新しい げられますから、ビジネスチャンス 組み当初と現在で一番変わった点は何 サービスを迅速に提供するための仕 を逃すリスクを低減できます。また、 組みも求められています。 当社の側からも SDN/NFV プラット 河村 最も大きな変化は、キャリア ネットワークを集中管理可能にす フォームで提供可能な新しいソリュ 側の SDN/NFV 技術に対する認識が る SDN 技術と、ネットワーク機能 ーションやサービスを積極的に提案 大きく変わったことです。付加価値 を仮想化して汎用サーバの上で稼働 して行くつもりです。 の創造を求められるようになったキ 可能にする NFV 技術が注目される もちろん、CAPEX/OPEXの削減 ャリアにとって、SDN/NFV 技術を 理由はそこにあります。 という軸での取り組みも進めて行き ネットワークに導入する流れは止め ̶キャリア向けビジネスにおいて ます。そこで重要になるのは、オー られないものになってきています。 SDN/NFV 技 術 を 今 後 ど の よ う に 適 プンなエコシステムを構築すること 大きく変わったキャリアでの SDN/NFV 技術に対する認識 ̶NEC で は 数 年 前 か ら SDN/NFV 技術をキャリアネットワークに適用す かをお聞かせください。 多くのキャリアが検証や導入を進め 用・展開して行かれる計画でしょうか。 られている状況で、そうした世界の 河村 SDN/NFV 技術のリーディン 術によってキャリアの調達は大きく 実現を目指して活動を続けてきた私 グカンパニーとして自他ともに認め 様変わりします。汎用サーバに標準 どもの努力が実ったと喜びを感じる られている当社としては、現在求め 仮想化レイヤを載せ、その標準イン と同時に、大きなビジネスチャンス られているキャリアネットワークの タフェースの上でアプリケーション と捉えています。 CAPEX/OPEX削減にとどまらず、キ を稼働させる世界になりますので、 トラフィックが急増する一方、競 ャリアに新しい収益をもたらす新サ どこか1 社の製品ですべてをカバー 争の激化などによってキャリアの収 ービスを構築するための技術として するという状況ではなくなります。 益性は悪化しつつあります。例えば、 SDN/NFV 技術を活用・提案してい それに対応して当社においても、コ 日本国内での携帯電話の ARPU(1 く計画です。SDN/NFV 技術を活用 モディティ化が進んだ装置やサーバ 契約当たりの売上高)は減少し続け すれば、これまで個別のネットワー については、他ベンダー製でも優れ 4 だと認識しています。SDN/NFV 技 たものについては活用していくこと を考えています。ソフトウェア面で 音声、インターネット たスキルが必要だということです。 当社には、Linux をはじめとする多 農業 SDN/NFV 数のオープンソースソフトウェア開 統合運用・管理 発に携わってきた実績があります。 OSS/BSS TMS E2Eサービスオーケストレータ これにより、オープンなエコシステ オーケストレーション&マネジメント ムにおいてもキャリアの求めるグレ データセンタ SDN ードのシステムを構築できます。 NEC グループの総力を結集して SDN/NFV ソリューションを展開 I TS 農業ネットワーク M2M 行政 ITSネットワーク 専用線 医療 行政ネットワーク きポイントは、使う側にきちんとし モバイル OTT AP I OTTネットワーク 用を一層進めます。ここで注意すべ 固定電話 シンプルな共通ネットワークで フレキシブルにサービスを提供 医療ネットワーク もオープンソースソフトウェアの活 サービスの多様化 ブレイク スルー サービス毎に 専用ネットワークを 構築・運用 NFV トランスポート SDN ICTリソースの統合・仮想化 図 1 NEC のキャリア SDN/NFV ソリューションが実現する新たな価値 ̶具体的にはどのような SDN/NFV のネットワーク構成などを「ボタン あるクラウドやビッグデータ、セキ ソリューションの提供を考えておられ 1 つ」で構築できるような End-to- ュリティについての技術やノウハウ End ソリューションを提供できるよ を SDN ソリューションに適用するこ 河村 キャリアネットワークにおけ う に な る と 考 え て い ま す。 ま た、 とも視野に入れています。 る SDN/NFV 技術の適用領域として NetCracker 社の既存顧客を通じて、 例えば、ネットワーク状況をビッ は、①統合運用・管理、②ネットワー 当社の SDN/NFV ソリューションを グデータ分析によって把握し、それ ク機能仮想化(NFV)、③トランスポ グローバル展開していくことも可能 に応じて自律的にネットワーク構成 ート SDN、④データセンタ SDN、の になると期待しています。 を変更するといったソリューション 4 つを基本と考えています。当社で ̶SDN/NFV ソリューションの提供 を提供することなどが考えられま は、このそれぞれに先進的ソリュー に関する組織体制や売上げ目標につい す。キャリアに更なる価値をもたら るのでしょうか。 ションを提供していきます。 て教えてください。 サービスクリエイションという観 河 村 当 社 は2013年 に 発 表 し た 点で重視し、また当社の強みでもあ 「2015 中期経営計画」で、SDNをク キャリア向けのSDN/NFV ソリュ ると捉えているのが、①の統合運用・ ラウドやビッグデータ、セキュリテ ーションはビジネスの軌道に乗り始 管 理 の 分 野 で す。当 社 は、TOMS ィと並ぶビジネスの柱として位置付 めたところですが、今後市場は拡大 (Telecom Operation Management けました。それを受けて、グループ し、2017年には現在の7 倍以上に成 System)において高い実績を持つ の総力を挙げてSDN/NFV ソリュー 長すると試算しています。当社では、 子会社の米 NetCracker 社と連携し ションを展開していく体制を敷いて これを絶好の機会と捉え、グローバ て、既存ネットワークと SDN/NFV います。2014年末には、グローバ ル市場に積極的に打って出ること をトータルにオーケストレーション ルや国内の全体状況を見てSDN ビジ で、市場の成長度合いを超えるビジ 可能な仕組みを開発中です。これが ネスを創造するための横断的な取り ネスを獲得していく計画です。 完成すれば、サービスに必要な機能 組みをする新組織を設立しました。 ̶本日は有難うございました。 やリソース、ユーザの求める QoE 将来的には、他のビジネスの柱で すために、これからも総力を結集し ていくつもりです。 5 通信キャリア市場に向けたNECのSDN/NFV 特集 [統合運用・管理] レガシーにも対応した統合オーケストレーションで TCO 削減や新サービスの早期構築を実現 NEC は、付加価値ソリューションの提供や SDN/NFV 事業の拡大を目指して、End-to-End サービスを構築・管理する「E2E サ ービスオーケストレーション」を中核とした事業戦略を推進中である。E2E サービスオーケストレーションとは、SDN/NFV のサービスやリソースを運用管理する「MANO(Management and Orchestration) 」の考え方を世界に先駆けて拡張し、レガシ ー環境を含めた End-to-End でのサービス構築・管理に対応させたものである。 同社の MANO 事業戦略について紹介する。 NEC では、MANO のオーケスト 世界に先駆けて MANO を拡張 レガシー対応が大きな特長 レーション対象を SDN/NFV 環境だ SDN/NFV 環境で、サービスやリ り組みを 1 年以上前から進めてい ソースを統合的に運用管理する統合 る。同社では、この拡大 MANO 機能 オーケストレーション機能のことを を「E2E サービスオーケストレーシ 「MANO(Management and ョン」と呼ぶ。E2E サービスオーケ Orchestration) 」と呼ぶ。現在、同機 ストレーションの概要と利用メリッ 能の標準化が、欧州電気通信標準化 トを図 1 に挙げた。 けなくレガシー環境にも拡張する取 NEC 第二キャリアサービス事業部 機構(ETSI)や、テレコムオペレ 「今後、キャリアネットワークに ーションに関する業界団体である SDN/NFV 技術が適用されていくの Te l e M a n a g e m e n t F o r u m(T M は確実です。しかし、一気にすべて けてレガシー対応の MANO に意識 Forum) な ど で 進 め ら れ て い る。 が SDN/NFV の世界に置き換わるわ 的に取り組んできました。」 (NEC 第 MANO が注目される理由は、統合的 けではありません。移行期間という 二キャリアサービス事業部 事業部 なオーケストレーションによって、 ものが存在し、その期間中は、従来 長代理 三栖 利之氏) 新しいサービスを構築したり、イン 機器を含めたオーケストレーション 現在では他のベンダーも同様の取 テリジェントな運用管理を実現しや が必要になるはずです。そうした想 り組みを始めている。TM Forum で すくなったりするからである。 定に基づいて、私たちは世界に先駆 は、レガシーを含むオーケストレー ● 従来機器を含めたE2Eでの サービスオーケストレーション ● マルチベンダの製品を収容 顧客/通信事業者 OSS/BSS (NEC拡大MANO) MANO (標準MANO) VNF VNF VNF NFV ● NFV内のサービスオーケストレーション ● リソースオーケストレーション ● VNFのライルサイクル管理 ● ● ● ● TCOの大幅削減 Time-to-Marketの大幅短縮 既存NWから新NWへの スムースなマイグレーション ユーザやサービス事業者へ 柔軟にNWを切り出して提供 CAPEX/OPEXの最小化 「こうした動きは、私たちの考え方が 顧客/通信事業者 正しかったことを示すものだと考え OSS/BSS E2Eサービスオーケストレータ NWサービス オーケストレータ M2M専用 PNF MANO VNF サービスチェイニング VNF 緊急災害用 企業向け高セキュリティ 従来機器 SDN NFV VNF: Virtual Network Function PNF: Physical Network Function 図 1 E2E サービスオーケストレーションの概要と利用メリット 6 ションについての検討が始まった。 E2Eサービスオーケストレーション NFV向けMANO 事業部長代理 三栖 利之氏 ています。当社には先行開発による アドバンテージがありますから、そ れを活かして、積極的に事業展開し ていくつもりです。」 (三栖氏) マルチベンダー対応を意識しつつ 付加価値ソリューションを提供 NECグループのMA NO 事業戦略 の概要を図 2に挙げた。 図 2 で分かる通り、同社は MA NO に関する取り組みを子会社である米 NetCracker 社と共同で進めている。 OSS/BSS などの TOMS 分野に豊富 TOMS VAS OSS/BSSノウハウ MANO M2M MANO: Management and Orchestration TOMS: Telecom Operations Management System VAS: Value Added Service TMS: Traffic Management Solution 図 2 NEC グループが進める MANO 事業戦略の概要 多様なネットワークサービス機能を連携させることにより、企業やユーザごとに、柔軟かつ迅速に サービス構築を実現 ⇒ 新サービスの早期導入/カスタマイズ、 新たなレベニュー獲得 トレーションを実現する計画である。 OSS/BSS オーケストレーション機能につい ないようにマルチベンダー環境をサ E2Eサービスオーケストレータ ②サービスオーダ分解 → 従来装置とVNFへの 一括プロビジョニング → MANOへの動的リソース 制御指示 層的なアーキテクチャを採用するこ とで柔軟な対応ができるようにして います。 (三栖氏) 」 E2E サービスオーケストレーシ ョンの利点としては、①自動化によ る運用効率化や TCO 削減、②既存ネ ットワークから SDN/NFV へのスム ーズなマイグレーション、③ユーザ の要件を満たすネットワークサービ スを迅速にかつ安価に実現、といっ たことをアピールしていく。例えば ③については図 3 のようなものが考 えられる。これは、多様な仮想ネッ トワーク機能(VNF)をサービスチ ェイニングによって連携させて、企 業やユーザに合わせたサービスを迅 速に提供する例である。 ビジネス展開としては、既存ネッ トワークとの統合を図りながら SDN/NFV 導入を計画している通信 Firewall DPI DC1 GW アクセス トランスポート NW NW ①サービスオーダー (例:拠点追加) (例:Firewall追加) VNF ロード バランサ 「MANO 関連の標準化はまだ十分進 個別対応する必要がありますが、階 ③トラフィックや障害などの情報収集 → サービスレベルの見える化 → 制御へのフィードバック MANO ポートすることを心がけるという。 んでおらず、細かい部分については ④NetCrackerの顧客基盤を活用したグローバル 拡販 NEC NEC が協力し、さらにそこにビッグ ては、ベンダーロックインが発生し ③ソフト化 (仮想化) 機能を連携させたソリューショ ン提供による付加価値向上 SDN/NFV SDN/NFV 技術で世界をリードする とで先進的なE2E サービスオーケス ②オーケストレーション機能については、マルチベ ンダー環境をサポート Big Data TMS NWノウハウ なノウハウを持つNetCracker 社と、 データ分析技術などを加味していくこ ①レガシーから、NFV / Transport SDN / データ センタまで、シームレスな統合オーケストレー ションを実現 (E2Eオーケストレーション) NetCracker Media Optimizer ルータ 企業A 企業A 企業B 企業の NW管理者 DC2 サービスチェイニング レガシー 企業B SDN/NFV 図3 E2E サービスオーケストレーションによる新サービス提供 事業者に向けて、シームレスな統合 をオーケストレータ経由でネットワ オーケストレーションとして提案す ークに適用するというサイクルを回 ることと、NetCracker 社の既存顧 すことで、最適制御を実現できるこ 客基盤を活用したグローバル市場拡 とを実証することである。 販などを考えているという。 また前述の通り、ビッグデータ分 析技術をMA NOに適用することも計 ビッグデータ分析技術による インテリジェントな制御を目指す 画している。NEC は、研究所を中心 NEC グループでは、オーケスト 有している。そのビッグデータ分析技 レータによる自律的なネットワーク 術を使って適切な状況認識をするこ 制御を実現するための MANO 技術 とで、より効率的なオーケストレーシ の研究開発も進めている。 ョンが可能になると考えられる。 「リア に高度なビッグデータ分析技術を保 例えば、2014 年には TM Forum ルタイムなビッグデータ分析にはいく のプロジェクトに NetCracker 社が つかの技術的なハードルがあります 参加して実証試験を行っている。同 が、将来を見据えて挑戦していきま 試験の目的は、ネットワークの状況 す。目指すのはオーケストレータのイ 分析を基にポリシーを決定し、それ ンテリジェント化です。 ( 」三栖氏) 7 特集 通信キャリア市場に向けたNECのSDN/NFV [ネットワーク機能仮想化ソリューション] キャリアグレードの品質を NFV 環境で実現 先行優位性生かして国内外に積極展開 NFV に関する取り組みを他社に先んじて進めてきた NEC。 同社が提供するネットワーク機能仮想化ソリューションには、その 先進性や蓄積したノウハウ、同社の持つ ICT/ サービスに関する総合力などが遺憾なく反映されている。NEC が目指すのは、通 信事業者が求める「オープンエコシステム」を確立しながら、 収益力向上につながる付加価値を提供することである。 同社の通 信事業者向けネットワーク機能仮想化ソリューションの概要や最新動向について紹介する。 NECでは、こうしたエコシステム 仮想化技術の NW 適用について 2009 年の段階から検討 アプローチを、 通信事業者向けのハー NEC は、NFV というキーワード スのソリューションにおいて2005 が注目され始めた 2011 年以前から 年の段階から採用していた。 「標準ハ 仮想化技術をネットワーク領域に適 ードウェアの上で、Linuxなどのオー 用する研究開発を進めてきた。 プンソースソフトウェアをうまく活 ドウェア規格「Advanced TCA」ベー ネットワーク機能を仮想化する 用しながら、そこに私たちのミドル NFV 技術の利点は、コモディティ ウェアやアプリケーションを作り込 化した汎用サーバや、共通 API 上で む作業をしてきました。コモディテ 稼働するアプリケーション群によっ ィ化したプラットフォーム上でキャ てオープンなエコシステムを構築で リアグレードサービスを提供するこ 化技術の活用によって多種多様なネ きることにある。オープンなエコシ とに関しては10年近くの実績があり ットワーク機能を汎用サーバ上で稼 ステムによってベンダーロックイン ます。 」 (NEC 第一キャリアサービス 働させる技術の研究に同社が着手し を回避でき、その結果として TCO 事業部 部長 原崎 和彦氏) たのが 2009 年である。同じ考え方 このアプローチを発展させ、仮想 削減を実現できる。 統合運用・管理 OSS/BSS TMS NFV (vEPC, vCPE, vMVNO-GW他) vStorage vFirewall 東日本大震災を受けて総務省が開始 信ネットワークの動的制御技術の研 究開発」の実証実験などに生かされ NFV トランスポート SDN サーバ上に ネットワーク 機能を実現 ソフトウェア制御による ネットワークの効率的な リソース活用を実現 トランスポート ネットワーク ICTリソースの統合・仮想化 OSS : Operation Support System BSS : Business Support System TMS : Traffic Management Solution vEPC : Virtualized Evolved Packet Core 図 1 NEC の SDN/NFV ソリューションの全体像 8 の研究を NFV に先行して始めたの した「大規模災害時における移動通 オーケストレーション&マネジメント サーバと ネットワークの SDN化を実現 部長 原崎 和彦氏 である。研究成果は、2011 年 3 月の SDNの統合運用と 管理の自動化、 制御の最適化を実現 E2Eサービスオーケストレータ データセンタ SDN NEC 第一キャリアサービス事業部 ている。この実験は、通信サービス を仮想化することで、トラフィック 状況に合わせてネットワーク全体の システム構成を短時間に変化できる ことや、その結果、音声通信の処理 能力を 5 倍に改善できることなどを 実証したものである。 NFV が注目され始めてからは、標 ティで積極的に活動を続け、NFV のリーディングポジションを獲得す るに至っている。 「あるものを単に使 うだけでなく、通信事業者や業界が 求めるものを私たちが先行して見つ け出し、それをしっかり還元するこ とを意識して標準化や開発に取り組 んでいます。 (原崎氏) 」 グループの総力を結集した フルレンジのソリューション NEC が 提 供 す る SDN/NFV ソ リ END-TO-ENDターンキーデリバリ, プランニング、 コンサルティング 準化団体やオープンソースコミュニ OSS/BSS などを使った総合的なオ ている。 「ネットワーク機能を汎用サ ーバで稼働することによる CAPEX/ OPEX 削減は、確かに NFV のメリッ トです。しかし、それだけでは既存 特徴 くいのが実態です。導入してもらう には、単なる仮想化を超えて、クラ ウドなどとの連携を容易にしたり、 オーケストレーションレイヤ ポリシー エンジン サービス ライフサイクル キャパシティ プロビジョニング 管理 管理 サービス カタログ SDNコントロールレイヤ OpenFlow コントロール 経路計算 新規事業参入を加速 運用コストを削減 従来型の仮想ネットワーク基盤 パケット 光 vEPC vCPE クリティカルな事業課題を解決する ために、SDN/NFVソリューションを フルセットで提供 新たなサービスを創出 仮想テナント ネットワーク管理 vIMS 導入メリット ■汎用サーバ上でEPC機能を実現 ■スモールスタート、 オート・スケールアウトが可能 ■サーバリソース・NWリソースを柔軟にソフトウェア でアサイン可能に ■専用HWを採用した装置と比較して設備コストを大幅に低減 ■全サービスを汎用サーバ上で実現するため保守の簡易化を実現し、 運用コストを低減 ■NECのキャリアグレード仮想化プラットフォームにより高い信頼性・ サービス品質を実現 vMVNOソリューション 特徴 ■汎用サーバ上にMVNO事業に必要な機能群を実現 ■MVNO事業のスモールスタート、 コスト削減、多彩 なサービスを可能に 導入メリット ■汎用サーバ1台からMVNO事業をスタートでき、初期投資額を大幅に軽減 I Pアドレス割当 ■L2接続可能なMVNO-GW導入により認証・セッション管理・ を自由に制御可能に。新たな付加価値サービスを提供し、競争力を強化 ■NECがモバイルコア製品の実績とノウハウを活かして、新規参入する MVNO事業者を全力で支援 vCPEソリューション 特徴 導入メリット ■ユーザ宅内の通信設備 (CPE) の各種I P機能を ネットワーク側に集約 ■CPEの運用コスト (OPEX) や設備投資コスト (CAPEX) を低減 ■CPEの機能追加等のメンテナンスコスト低減(OPEX低減) ■CPEの簡素化によりCPEのコスト低減(CAPEX低減) M2Mソリューション 特徴 のネットワークをリプレースしてま で導入しようという動機にはなりに 収益管理 vEPCソリューション ーケストレーションによって NFV や SDN の真価が発揮できると考え 顧客管理 図 2 フルレンジをカバーする NEC の SDN/NFV ソリューション ューションの全体像は図 1 の通りで あ る。 こ れ で 分 か る 通 り 同 社 は、 OSS/BSSレイヤ サービス導入/ 運用・監視 リソース 管理 導入メリット ■M2Mサービス特性に特化した専用ネットワークを SDN/NFVで構築 ■OSS/BSSにより、M2MサービスをSLAに応じて 提供 ■マルチテナント、サービス収容設計、 システムリ ソースの自動的割当などを実現 ■SDN/NFVでM2Mに最適なネットワークを構築し、ネットワーク構築費用 を低減 ■オペレーションを簡素化することで運用費用を低減 Enterprise VASソリューション 特徴 導入メリット ■専用HWを採用した場合と比較して設備コストや運用管理コストを大幅に ■企業向けのリッチサービスを、仮想化装置によって 低減できる シンプルに提供 ■ダイナミックなサービス形態は、サービスチェイニング ■必要に応じて付加価値の高いサービスを迅速に利用できる により実現 図 3 ネットワーク機能仮想化ソリューションの例 サービスの高速配備を可能にしたり どの上位レイヤについては、NEC なお、ネットワーク機能仮想化ソ といった通信事業者にとっての新し の子会社である米 NetCracker 社が リューションにおいては、前述の通 い価値を提供する必要があります。 中心になって SDN/NFV 対応を進め り「オープンエコシステム」が重要 運用管理技術と NFV 技術をうまく ている。一方、仮想ネットワーク基盤 なキーワードとなる。そのため、フ 連携することで新しい価値を提供す や SDN コントロールレイヤ、VNF ルレンジのソリューションとして最 るというのが私たちの考えるビジョ (仮想ネットワーク機能)などは 適なソリューションを提供するだけ NEC が開発を進めている。 「 文字通 ではなく、お客様の環境条件やユー り NEC グループの総力を結集して、 スケースに合わせて自由な組み合わ をレイヤ分けして図示したものが図 SDN/NFV で必要とされるものをフ せを実現できるようにしているとい 2 である。このうち、OSS/BSS レイ ルレンジで提供することを目指して う。また、一部製品だけを他ベンダ ヤ、オーケストレーションレイヤな います。 ( 」原崎氏) ーの NFV プラットフォームと組み ンです。 (原崎氏) 」 同社の SDN/NFV ソリューション 9 通信キャリア市場に向けたNECのSDN/NFV 特集 合わせて使用するといったことも想 要な機能を提供する仮想アプライア チでそうした技術を開発する必要は 定している。 「海外を含めて多数の通 ンスを中核に据えたソリューション ありません。ミャンマーの事例で世 信事業者にヒアリングした結果、皆 である。モバイルネットワークは、 界初の事例ながら安定稼働を実現し 様が重視されているのはオープンエ 制御プレーンとデータプレーンのバ ているのも、そうした技術を活用し コシステムであると分かりました。 ランスが利用状況に応じて大きく変 ているからです。そこも私たちの製 その要望に応えるために、私たちの わるのが特徴である。vEPC は、サ 品の特色と言えます。」 (原崎氏) 製品を標準に準拠した形で開発する ーバリソースやネットワークリソー なお vEPC については、NTT ドコ のはもちろん、他ベンダー製品との スをソフトウェアで柔軟にアサイン モや複数のグローバルソリューショ 相互運用試験なども随時実施するよ する機能を提供し、そうした変化に ンベンダー(6 社)と共同でクロス うにしています。 (原崎氏) 」 無駄なく対応できる。また、基地局 ベンダー接続実証実験を 2014 年度 を収容する機能や資源を論理的に分 上期に実施している。同実験では、 割して、必要なものだけを随時追加 NEC 製の vEPC を他社の仮想化プラ できるようにする機能も提供する。 ットフォームで稼働させたり、他社 ネットワーク機能仮想化ソリュー これにより、スモールスタートやス 製の vEPC を NEC の仮想化プラット ションにおいて NEC が重視するの ケールアウトを容易に実現できる。 フォームで稼働させたりして、相互 が「新しい価値」の提供であること この vEPC ソリューションは、す 運用性を検証した(図 5)。参加ベン は前述した通りである。同社では、 でに実利用が始まっている。ミャン ダーは 6 社で、仮想アプライアンス NFV 技術を活用することで「こう マー国営郵便電気通信事業体が、通 と仮想化プラットフォームの相互接 いうことができる」 「こういうサービ 信インフラ構築に vEPC ソリューシ 続性と実用性を検証できたという。 スを提供できる」というユースケー ョ ン を 導 入 し て 2013 年 12 月 か ら 国内外の通信事業者から大きな注 スを提示するソリューション軸での 実稼働させているのである(図 4)。 目を集めているのが、ユーザ宅内の ビジネスを、国内外で積極的に展開 モバイルコアネットワークにおける 通信設備(CPE)の各種 IP 機能を する計画である。前頁図 3 にネット vEPC の実ソリューションとしては ネットワーク側に集約できる vCPE ワーク機能仮想化ソリューションの 世界初の事例だが、2015 年 2 月時 ソリューションである。同ソリュー 例を挙げた。 点までに大きな問題もなく安定稼働 ションを利用すれば、ユーザ宅内に しているという。 「私たちは、ソフト 置く CPE は「線さえつなげば良い」 ウェアを使って汎用サーバ上でキャ 単純なものに置き換えられる。NAT リアグレードの やルータの設定、IPv6 対応やバグ 信頼性を確保し 修正のためのファームウェア更新は た り、Active- 仮想アプライアンス側で実施すれば Standby 構成で 良くなる。 活用方法を積極的に提案する ソリューション軸のビジネス展開 例えば vEPC ソリューションは、 モバイルコアネットワークなどに必 ■2013年12月、 ミャンマーの国営郵便電気通信事業体向けに、vEPCを活用した 通信インフラを構築。東南アジア競技大会 (SEA Games) の円滑な運営に貢献 ■実サービスソリューションとしては世界初 ■2015年2月時点まで、大きな問題なく稼働中 Mandalay R LTE 30Gbps (100G ready Nay Pyi Taw R LTE 10Gbps LTE YangonR LTE無線ネットワーク vEPCが稼働する汎用サーバ 図 4 世界初となる vEPC の実サービス導入事例 10 の完全同期を実 vCPEの最大のメリットは、電話な 現したりするフ どによるサポートコストやユーザ宅 ィールド実証済 を訪問してのメンテナンスコストを みの技術を保有 削減できることである。 「こうしたコ し て き ま し た。 ストは、特に欧州や南米の通信事業 NFV だ か ら と 者で課題になっています。vCPEは いってスクラッ 主にそうした事業者の方に関心を持 っていただいています。現在、それ 般的には、仮想 らの事業者と共同でさまざまなPoC 化によって生じ を進めているところです。 ( 」原崎氏) るオーバーヘッ Enterprise VAS(Value Added ドによってデー NEC vEPC APL / 他社仮想化PF接続 ●他社仮想化PF上での正常動作を確認 ●他社仮想化PFでのオートスケールアウト/ オートヒーリング (障害自動再構成) も確認 NEC 他社 vEPC APL 仮想化PF 他社vEPC APL / NEC仮想化PF接続 ●他社vEPC APLが正常動作する事を確認 ●NEC仮想化PFでのオートスケールアウト/ オートヒーリング (障害自動再構成) も確認 他社 vEPC APL NEC 仮想化PF Service)ソリューションは、企業向 タプレーンの転 けのリッチなサービスを複数の仮想 送能力は低下す アプライアンスの組み合わせによっ るとされる。し て提供するサービスである。企業ユ かしNECでは、 ーザは、必要に応じて利用するサー ホ ス ト OS や ハ ビスをダイナミックに変更できる。 イパーバイザ、ゲスト OS をチュー う。同社はクラウド技術をより一層 ダイナミックなサービス構成変更 ニングすることなどで、数個のプロ 活用することで NFV の可能性は更 は、サービスチェイニング技術によ セッサコアで 10Gps 以上の転送能 に 広 が る と 考 え て い る。例 え ば、 って実現する。 「海外の通信事業者に 力を実現している。 EPC には複数の種類があり、現状の vEPCソフトウェア vEPCソフトウェア 仮想化レイヤ ハードウェア 仮想化管理 システム 仮想化レイヤ 仮想化管理 システム ハードウェア 図 5 マルチベンダー環境での接続実証実験の概要 工夫の一つが、インテルが開発し ネットワーク構成においては、必要 の課題として挙がることの一つが、 た「DPDK(Data Plane Development な種類のノードを利用される場所の 契約からサービスローンチまでに非 Kit) 」というライブラリの利用であ 近くに配備するという考え方に合理 常に時間がかかるということです。 る。通常のパケット転送処理では、 性がある。しかし、NFV のクラウ 収益性が悪化するというだけでな パケットの到着によって割り込みが ド化が進めば、ノードを集約配備す く、ビジネス機会損失につながる恐 発生して、それから CPU での処理が ることで一層の効率化を実現できる れがあるとしてしばしば問題視され 始まる。この仕組みが、遅延が大き 可能性がある。 「更なるクラウド化へ ます。Enterprise VAS ソリューショ くなったり、バラついたりする原因 の進化については、5G のタイムフ ンを利用すれば、帯域の増減やアプ だった。一方、DPDKのドライバは、 レームなども意識しながら、2016 リケーション追加などの作業を迅速 メモリー内を定期的に監視して、パ 年度後半や 2017 年度ぐらいを目標 に実施できますから、収益性悪化や ケットが到着したらすぐに転送処理 にいろいろやっていきたいと考えて 機会損失の恐れを小さくできます。 をする。そのため遅延を小さくでき、 い ま す。 ま ず は 2015 年 度 中 に、 私たちは北米の通信事業者に対し バラつきも抑えられる。 「NFVソリュ EPC をターゲットに『更なるクラ て、同ソリューションを使って必要 ーションとしてより有効的な活用を ウド化への進化』への“あるべき形” なサービスを短時間で提供する実証 するため、当社とインテルが共同で を描き出す予定です。そのために、 実験を進めています。」 (原崎氏) 性能を含めた改善を行い、当社の製 海外の通信事業者などと議論や検証 品にはその成果を組み込んでいま を進めている最中です。」 (原崎氏) ヒアリングして、既存ネットワーク こうした仮想アプライアンスを利 用すれば、既存のネットワーク機能 を仮想化できる。しかし、キャリア ネットワークで利用することを考え ると、懸念材料となるのが仮想化に す。 ( 」原崎氏) 今後はクラウド化を進める 2015 年度中に「あるべき形」を NFV のあるべき形については、標 準化団体や業界団体でも議論されて いる。それに伴って「次世代 NFV」 といった概念も語られるようになっ ネットワーク機能仮想化ソリュー てきた。 「次世代 NFV についても、新 例えば、モバイルネットワークで ションの今後の進化の方向性として たな価値を提供する良いきっかけと 今課題となっているのがデータプレ NEC が注目するコンセプトは「更 考えて積極的に議論や検討を進めて ーンのトラフィック増加である。一 なるクラウド化への進化」だとい いくつもりです。」 (原崎氏) よるパフォーマンス悪化である。 11 特集 通信キャリア市場に向けたNECのSDN/NFV [トランスポート SDN] 光トランスポートに SDN 技術を適用して 設備コスト最適化や堅牢性確保などを実現 クラウドサービスの普及によりデータセンタ間のトラフィックが増加しているため、キャリアネットワーク内のトラフィック パターンは大きく変化している。この変化に対応するために、従来静的な運用で十分であったトランスポートネットワークに も変化が求められ始めた。NEC は、SDN 技術をトランスポートに適用した「トランスポート SDN」でこうした変化に対応す ることを提案している。同社が提案するトランスポート SDN の概要や、その構成装置などについて紹介する。 トラフィックパターンの変化が 新伝送アーキテクチャを要求 適用である。宛先が固定ならばトラ ンスポートで一気に送ることでコス トの高い経路制御を不要となり、ト クラウドサービスの普及などによ ランスポートで帯域を動的に増減可 って、キャリアネットワーク内のト 能となればトラフィックの変動に効 ラフィックパターンは変化してい 率的に対応できる。 る。例えば、クラウド環境内に設置 しかし、従来のトランスポートア された特定サーバにアクセスが集中 ーキテクチャは静的な運用を前提に するハブ・アンド・スポーク型のト していた。動的な運用を可能にする ラフィックが増えてきた。また、サ には、新しいトランスポートアーキ ーバ間(データーセンタ間)のトラ テクチャが必要となる。 NEC コンバージドネットワーク事業部 主席技術主幹 中村 真也氏 からパケットレベルまでのネットワ フィックパターンがメッシュ化する NEC は、新しいトランスポートに だけでなく、トラフィック総量が増 求められる要件課題として、①運用 ークの網最適化、の 4 つを挙げる。 えており、さらにその時間的な変動 の自動化によるサービス提供までの そして同社が、これらの要件を実現 幅も大きくなってきている。 時間の短縮とサービス短期間提供の する方法として提案しているのが、 実現、②従来よりも高度な信頼性の SDN 技術をトランスポートネット トランスポートネットワークの構成 確保、③トランスポートとサービス ワークに適用した「トランスポート をダイナミックに変化させる方法の の相互関係把握と連携、④光レベル SDN」である。 こうした変化に対応する 1 つが、 トランスポートSDN では、トラン OSS / BSS スポートネットワークをいくつかの制 サービスオーケストレータ 上位システム ネットワークオーケストレータ トランスポート SDNコントローラ サービス アプリ マルチレイヤ PCE (MPLSプランナ) IP統合 トランスポート (vRouter) 光NW プランナ 抽象化レイヤ トランスポート SDNシステム オープンな インタフェースを提供 御アプリケーションで集中制御する。 コントローラの追加 でSDNに対応 -サービスアプリを 必要に応じて選択 軟化や効率化、堅牢性の確保、サー ソフトウェアアップ グレードでSDNに 対応 DW7000 パケット光統合 PCE: Path Computation Element 図 1 NEC が提案するトランスポート SDN の実現構成 12 ビスと連携したネットワーク最適化な どを実現できる見込みである。 EMS/NMS DW7000 パケット光統合 それによって、ネットワーク運用の柔 パケット光統合製品の SDN 化や 制御アプリの開発などで実現 NEC が提案するトランスポート SDN の実現構成を図 1 に挙げた。 トランスポートネットワークを制 御する各種サービスアプリは、トラ ・通信事業者5社とベンダー9社が参加 ・分散データセンタサイトとマルチトランスポート ネットワークドメインにおけるSDN製品の 相互接続性を検証 ンスポート SDN コントローラ上で稼 働する構成としている。 Webクライアント NEC VTN web API NEC トランスポートネットワーク コーディネータ サービスオーケストレータ OIF サービス/トポロジAPI SDN対応の転送ネットワーク機器 としては、NECが2011年から販売 しているパケット光統合トランスポ NEC PF 6800 OFコントローラ NEC PF 5240 OFスイッチ OF 1.3 ベンダーD (Non-OF) ベンダーB (OF 1.3+) 10Gリンク ベンダーC ート装置「SpectralWave DW7000」 (以下、 DW7000)などが利用できる。 NEC PF 6800 OFコントローラ ベンダーA 10Gリンク OF 1.3 ビデオ サーバ データセンタサイト1 トランスポートネットワーク データーセンタ間接続網のT-SDNによる統合運用 NEC PF 5240 OFスイッチ ビデオ クライアント データセンタサイト2 図 3 NEC が 2014 年に実施したトランスポート SDN の実証実験 DW7000 は、CDC(C olorless、 Directionless、Contentionless)機 ほとんどありません。DW7000 では、 よるマルチレイヤの統合運用を実現 能を保有している。様々なクライアン CDC 機能を、ほぼ完全に実現してお するデモンストレーションを実施した。 トサービスのトラフィックを収容し、波 り、柔軟性の面で優れていると自負し 「このデモンストレーションでは、現在 長あたり100Gbps(将来は同一プラ ています。 」 (NEC コンバージドネット 標準化作業が進行中のA PIを通じて ットフォームで400Gbps、1Tbps へ ワーク事業部 主席技術主幹 中村 真 マルチベンダー構成のトランスポート の拡張が可能)で、柔軟なネットワー 也氏) ネットワークを制御できることを示し ク構築を可能とする。たとえば、トラ DW7000 は SDN 対応可能なプラ ました。当社は、総務省のネットワーク ンスポンダ(クライアント接続用波長 ットフォームとなっている。 「トラン 仮想化技術研究プロジェクト(O3プ 変換インタフェース)を1 ヶ所に集約 スポート SDN 対応ソフトウェアは ロジェクト)においても、ネットワー し、 必要に応じて波長資源を配分する 2015 年度中に提供する予定です。 」 ク 抽 象 化 技 術 を 担 当して いま す。 「トランスポンダ・プール」機能を実 OIF/ONF 実証実験には、O3プロジ (中村氏) 現することで、網内資源の効率的な運 サービスアプリの開発も進めてい 用を可能にしている。 「CDC-ROA DM る。2014 年5 月から 10 月にかけて は他社も販売していますが、波長・方 OIF(Optical Internetworking Forum) 2015 年 度 は、 ト ラ ン ス ポ ー ト 路の衝突がない“Contentionless”と と ONF(Open Networking SDN コ ン ト ロ ー ラ に 適 用 で き る いう性質を実現している製品は、実は Foundation)が通信事業者や NECを 「ONOS」というオープンソースソ 含むベンダーと合 フトウェアを用いたコントローラプ 同で実施した実証 ラットフォームを活用した開発に力 実験では、同社が を入れる予定だという。 「トランスポ 試作開発した「ト ート SDN コントローラの開発にお ランスポートネッ いても、オープンソースソフトウェ トワークコーディ アの採用を多くのお客様が強く求め ネータ」というサ ています。ONOS は新しいソフトウ ービスアプリを使 ェアですが、キャリアグレードの信 って、 データセン 頼性とスケーラビリティを備えてい タ間接続網のトラ るため、当社も開発に積極的に参加 ンスポートSDNに する方針です。」 (中村氏) 100Gデジタルコヒーレント伝送技術をベースとした 光パケット (L2) 統合製品 特長① 400G/1Tへの拡張、 トランスポートSDN対応 など、将来に向けた高い拡張性 特長② CDC-ROADMによるトランスポンダプール 機能の実現で、網資源のより効率的な運用が 可能 CDC : Colorless, Directionless, Contentionless ROADM : Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer CDC-ROADMにより、 トランスポンダを1ヶ所に集約し、 どの方路、 どの波長にも制限なしに割り当て可能 Colorless 任意の波長を 出力可能 Directionless 任意の方路へ 出力可能 Contentionless 波長・方路の 衝突なし 図 2 パケット光統合トランスポート装置「SpectralWave DW7000」の概要 ェクトで培ったノウハウなども活用さ れています。 ( 」中村氏) 13 特集 通信キャリア市場に向けたNECのSDN/NFV [データセンタ SDN] マルチ DC 対応のキャリアグレード DC 基盤を OpenStack と SDN 技術を核に開発・提供中 NEC は 2014 年 4 月から、オープンソース IaaS クラウド基盤「OpenStack」と利用した「NEC Cloud IaaS」というクラウドサービ スを提供している。 同サービスでは、SDN(Software-Defined Networking)を活用し、 顧客構築システムからの移行の容易化や、 短時 間での ICT 資源の調達などを実現している。同サービスを始めとした各種サービスやデータセンタ(DC)運用実績に加え、これま でに培った豊富な SDN 実績と先端テクノロジーを融合させて、同社は「DC SDN ソリューション」というキャリアグレードデータ センタ向け IaaS 基盤ソリューションの開発を 2014 年度に開始した。 同ソリューションの特長や開発動向などについて紹介する。 ビス提供で培った経験、同社が世界 サービス志向 DC を実現する DC SDN ソリューション をリードする SDN 技術などを、DC SDN ソリューションにはふんだん に盛り込んでいる。 NEC が開発中の「DC SDN ソリ ューション」は、オープンソース 主な特長は図 1 に挙げた 6 つ。こ IaaS 基盤「OpenStack」とオープン れらの特長により、 「ロケーションフ な SDN 技術「OpenFlow」を全面的 リー」 「プロダクトフリー」という利 に採用したキャリアグレードデータ 点が生まれる。さらに、顧客が下位 センタ向け IaaS 基盤である(図 1) 。 レイヤの管理から解放されて上位レ 同社は 2011 年に OpenStack の開 イヤに注力できるようになること 発コミュニティに参加し、以降は常 で、サービスオリエンテッドなデー 時世界でトップ 10 に入る貢献を続 タセンタの実現に貢献していく。 NEC 通信業ソリューション事業部 シニアエキスパート 黒沢 和夫氏 顧客が自分自身で各種の管理や制御 けている(日本国内では 1 位)。そ 自社でクラウドサービスを提供し を実施できるように、管理用のWeb うした活動で得られた知見や、自社 た経験に基づいて力を入れたポイン ポータル画面に多数の機能を用意し クラウドデータセンタでの商用サー トが「ポータル画面」の整備である。 たのである。 「過去のクラウドサービ スでは、お客様の申請や相談に応じ ①オープンで標準化された技術を 採用(OpenStack, OpenFlow, …) ④オートスケーリングに よるリソース最適化 NECの データセンタ ソリューション の特長 ②マルチハイパーバイザ/ ベア・メタル対応 ③複数DCを シームレスに接続 ⑤テンプレート型 プロビジョニング キャリアグレードDC基盤 ⑥キャリアグレード技術を 適用し、NFVへ拡張可能 DC-B クラウドSDN コントローラ DC-A クラウドSDNコントローラ V V V V V V V VM VM VM VM V VM VTN1 V 仮想ネットワーク 仮想ネットワーク機能、 仮想アプライアンス 仮想サーバ・ストレージ サービスオリエンテッドDC 『ロケーションフリー』 ・ 『プロダクトフリー』 =下位レイヤの管理から解放、上位レイヤ (サービス) に集中 ・物理環境の意識不要 ・時間/資源の節約、運用負担軽減 ・迅速な新サービス開発・提供 ・安定品質/品質向上 図 1 DC ソリューション「NECCI 拡張クラウドリファレンス」の概要 14 上げる要因となっていました。お客 様自身が作業できる環境を整えるこ (NEC 通信業ソリューション事業部 WAN VTN:Virtual Tenant Network 顧客 のメリット これが双方の運用管理コストを押し とで、そうした無駄を削減できます。 」 VTN2 VM PFS て私たちが作業するケースが多く、 シニアエキスパート 黒沢 和夫氏) OpenStack を独自拡張して マルチ DC 接続管理に対応 DC SDN ソリューションの特長は、 マルチDC化管理をOpenSTACK で 実現する点である。データセンタ内 は L2 通信、DC 間を L3 通信上に L2 トンネル(VXLAN)で接続するN W環境を SDN で実現している(図 2) 。 ま た、OpenSTACK と 独 自 開 CE これにより、遠隔地にあるデータ センタ同士を、単一の LANに接続し 事業継続性(Business Continuity)確 CE CE カスタマエッジ ルータ VXLAN GW DC #2 DC 仮想 CE CE DC DC すべてのDC間はL3接続 ドメイン内はL2通信が必要となるため、それを実現するVXLANの技術を活用 OpenStackコントローラノード Neutron Glance Nova nova-scheduler Cinder Keystone OpenStackコンピュートノード AZ-KVM AZ-VMW AZ-BM nova-compute nova-compute nova-compute libvert vCenterドライバ Hyper-Vドライバ ironicドライバ Hyper-v ironic VM VM VM ベア・メタル KVM VM VM VM ネットワーク技術だけに着目すれ ば、同様のソリューションを提供す AZ-HPV nova-compute VM VM VM 点もあります。 ( 」黒沢氏) vSphere vCenter VMware ESXi VM VM VM VM VM VM 物理マシン 図 3 マルチハイパーバイザ/ベア・メタル対応を実現する OpenStack 機能 る ベ ン ダ ー は 複 数 あ る。 し か し、 を展開するベンダーは世界的にもま CE 図 2 VXLAN 技術を活用したマルチ DC 間ネットワークの概要 ための仕組みを構築しやすくなる利 続管理を可能にするソリューション GW DC GW 続 ) L2接 イーサ トロ :メ AN 例 ( L VX CE GW 保や災害復旧(Disaster Recovery) の OpenStack でマルチデータセンタ接 CE DC を使えば、データセンタの物理的な スの有効活用を実現できます。また、 GW DC DC て利用できるようになる。 「この機能 り、運用管理コストの低減やリソー DC 仮想DC#1 L2 CE た 1 つの仮想的なデータセンタとし 場所を顧客が意識する必要がなくな 国内 IP VPN/MPLS CE GW DC を跨った NW リソースとして、クラ ている。 インターネット VXLAN レガシー DC 発したマルチ DC 管理基盤で、DC ウドサービスで使用できるようにし 国際 IP VPN/MPLS 企業 / 個人 ユーザアクセスNW 2015年度にも拡張作業を継続 マルチハイパーバイザやNFV対応を計画 し、物理サーバの消去(解約)処理 などに未実装機能が残っており、今 後も機能拡充を進める。 だ稀。日本国内に限れば NEC が初と オンプレミス型クラウドからの移 また 2015 年度中には、キャリアグ いう。さらに NEC のソリューショ 行をスムーズにするため、NEC では レード技術を適用して NFV 対応を実 ンは SDN にも対応している。 「 今の DC SDN ソリューションのマルチハ 現する計画である。現在、NFVの仮 OpenStack は、そもそもマルチデー イパーバイザ/ベア・メタル対応も 想アプライアンスが稼働するサーバ タセンタに対応する仕組みになって 進めている(図3) 。 やネットワークを管 理する基盤とし いません。 当社では、本機能のような マイクロソフトの「Hyper-V」対 OpenStack に不足する機能を独自に 応は 2015 年度中に実現する計画で 化の動きが進んでいる。NEC では、 補完し提供します。DC SDN ソリュ ある。ベア・メタル対応については、 そうした標準化の動きを見据えなが ーションには、その先進開発成果を すでに仮想マシンのプロビジョニン ら、DC SDN ソリューションをNFV 取り込んでいます。 ( 」黒沢氏) グと同じ操作で物理サーバのプロビ の基盤としても使えるソリューション ジョニングを可能にしている。しか として整備していくという。 て、OpenStackをベースにした標準 15 お問い合わせ先 日本電気株式会社 テレコムキャリア企画本部 ■ E-mail : [email protected] ●本冊子中のシステム名、製品名、会社名、及びロゴは各社の商標または登録商標です。 ●本冊子に掲載された製品は改良のため予告なしに仕様・デザインを変更することがありますのでご了承ください。 日本電気株式会社 〒 108-8001 東京都港区芝五丁目 7-1 (NEC 本社ビル) 2015 年 3 月現在