アプリケーション ノート

NR117K
アプリケーション ノート
面実装タイプステップダウンレギュレータIC
NR117K
第 7 版 2015 年 09 月
サンケン電気株式会社
NR117K
---
目次
---
1.概要
1-1 特長
---------- 3~4
1-2 主な用途
---------- 4
1-3 種別
---------- 4
2-1 外形図
---------- 5
2-2 定格
---------- 6~8
2-3 回路図
---------- 9
3-1 端子記号、名称
---------- 10
3-2 端子機能説明
---------- 10
2.製品仕様
3.各端子の説明
4.NR117K の動作説明
4-1 PWM 出力制御
---------- 11~12
4-2 過電流・過熱保護
---------- 12
5.使用に際しての注意事項
5-1 外付部品選定上の注意
---------- 13~18
5-2 パターン設計上の注意
---------- 19~21
5-3 電源の安定性
---------- 22
6-1 ソフトスタート
---------- 23
6-2 出力 ON・OFF 制御
---------- 24
6-3 スパイクノイズの低減
---------- 24~25
6-4 逆バイアス保護
---------- 25
6-5 過電流保護開始の設定について
---------- 26
6.応用
7.用語解説
---------- 27
2
NR117K
1.概要
NR117K は、パワーMOS 内蔵のステップダウンレギュレータICです。また、電流制御
方式により、セラミックコンデンサのような超低 ESR のコンデンサに対応できます。過
電流保護、低入力禁止、過熱保護等のスイッチング・レギュレータとしての、保護機能
を有しています。起動時の突入電流を防ぐために、ソフトスタート機能も有しています。
外付けに、コンデンサを接続することで、ソフトスタート時間を設定できます。また、
外部信号でオンオフできる機能も有しており、EN 端子へ外部から信号を与えることで、
NR117K をターンオン/ターンオフできます。位相補償用回路を内蔵しているため、外付
けの位相補償用部品は不要です。過電流保護の設定値についても、外付け抵抗により調
整可能です。裏面にヒートスラグ付きの小型薄型の HSOP8 ピンパッケージで供給されま
す。軽負荷時の効率を上げるために、ある負荷電流において動作周波数が変化致します。
●1-1
特長
・出力電流 1.5A
・高効率
軽負荷効率 68% (VIN=12V/Vo=5V/Io=10mA)
・出力電圧可変
0.8~24V
・出力に低 ESR コンデンサ
セラミックコンデンサが使用可能
・動作周波数
30kHz
・過電流、過熱保護内蔵
過熱保護回路を内蔵しています。(自動復帰型)
外付け抵抗により過電流保護設定値を調整可能
・位相補償回路内蔵
・ソフトスタート機能
外付コンデンサの追加で、起動時に出力電圧立ち上がり速度を遅らせることが
出来ます。
・ON/OFF 機能
・小型 PKG 使用(NR117K)
ヒートスラグ付 HSOP8 ピンパッケージ
3
NR117K
●1-2
主な用途
・オンボードローカル電源
・OA機器用電源
・レギュレータ2次側出力電圧安定化
・テレコム用電源
●1-3
種別
・種別:半導体集積回路(モノリシックIC)
・構造:樹脂封止型(トランスファーモールド)
4
NR117K
2.製品仕様
●2-1
外形図
2-1-1
NR117K 外形図
8
7
6
5
NR117K*
SK *21
*3
1
2
3
4
2.70
NR117K
端子配列
PIN Assignment
1.BS
2.IN
3.SW
4.GND
5.FB
6.ISET
7.EN
8.SS
*1.品名標示
Type number
*2.ロット番号(3 桁)
Lot number (three digit)
第 1 文字
西暦年号下一桁
1st letter
The last digit of year
第 2 文字
月
2nd letter
Month
1~9 月:アラビア数字
10 月:O
11 月:N
12 月:D
(1 to 9 for Jan. to Sept.,
O for Oct. N for Nov. D for Dec.)
第 3 文字 製造週
3rd letter week
01~03:アラビア数字
Arabic Numerical
*3.管理番号(4 桁)
Control number (four digit)
● 外部端子処理:Sn-2.5Ag
5
NR117K
●2-2
定格
表1 絶対最大定格
項目
記号
規格
単位
入力電圧 VIN
VIN
35
V
BS 端子電圧 VBS
VBS
44
V
8
BS-SW 端子電圧 VBs-sw
VBS-SW
V
12
条件
DC
パルス幅 30ns 以内
SW 端子電圧 VSW
VSW
35
V
FB 端子電圧 VFB
VFB
5.5
V
EN 端子電圧 VEN
VEN
35
V
SS 端子電圧 VSS
VSS
5.5
V
許容損失 *1
Pd
1.69
W
接合温度
Tj
150
℃
保存温度
Tstg
-40~150
℃
熱抵抗(接合-ケース間) *2
θj-c
40
℃/W
熱抵抗(接合-周囲間) *2
θj-a
74
℃/W
*1 過熱保護を搭載しており Tj>160℃で動作する場合があります。
*2 ガラスエポキシ基板 30.0mm×30.0mm (銅箔エリア 25.0mm×25.0mm)実装時
表2 推奨動作条件
項目
記号
NR117K
単位
直流入力電圧
VIN
8.0 ~ 31
V
出力電流
IO
0~1.5
A
出力電圧
Vo
0.8~24
V
動作時周囲温度
Top
-40~+85
゚C
*3
*3 入力電圧範囲の最小値は、8.0V もしくは VO+3V のどちらか大きい値とする。
VIN<9V では、VIN-BS 間にダイオードを挿入することを推奨致します。もしくは BS 端子にダイオー
ドを接続して外部から電圧を印加することを推奨致します。
6
NR117K
表3 電気的特性
(特に指定が無い限りは、Ta=25℃、Vo=5.0V 設定時 R1=8.4kΩ,R2=1.6kΩ)
項目
Parameter
記号
Symbo
l
設定基準電圧
VREF
Reference voltage
出力電圧温度係数
Output voltage temperature coefficient
効率 *4
Efficiency *4
動作周波数
Operating frequency
ラインレギュレーション*6
規格値 Ratings
MIN
TYP
0.784
0.800
VREF/⊿
T
⊿
MA
X
0.816
単位
測定条件
Units
Test conditions
V
±0.05
mV/
℃
87
%
68
%
η
fo
21
39
kHz
VIN=12V,VEN=12V
IO=0.3A
VIN=12V,VEN=12V
IO=0.3A
Ta=-40℃ to +85℃
VIN=12V,VEN=12V
IO=0.3A
L=100uH/150uH
VIN=12V, VEN=12V
IO=0.01A
L=100uH/150uH
VIN=12V, VEN=12V
IO=0.3A, RISET=275kΩ
VIN=8V~30V
VEN=12V ,IO=0.3A
VIN=12V, VEN=12V
IO=0.1A~0.3A
VIN=12V, Vo=5.0V
RISET =1MΩ
VIN=12V, Vo=5.0V
RISET =GND
VLine
50
mV
VLoad
50
mV
0.3
A
2.1
A
IIN
1
mA
VIN= 12V,VEN=12V
Quiescent current 2
IIN(off)
1
uA
VIN=12V, VEN=0V
VIN 端子 UVLO 閾値電圧
VUVLO
V
VEN=12V,Io=0.05A
V
VEN=12V,Io=0.05A
Line regulation
ロードレギュレーション*6
Load regulation
過電流保護開始出力電流
Over current protection starting outpit
current
静止時回路電流 1
Quiescent current 1
静止時回路電流 2
VIN 端子 UVLO ヒステリシス電圧
SS 端子
*5
6.5
VUVLOhys
0.2
Low 時流出電流
Flow-out current at low level
voltage
流入電流
EN 端子
IS
Threshold voltage
オンスレシュ電圧
Threshold voltage
ISS
6
IEN
VEN/TH
0.7
10
14
μA
20
50
μA
1.4
2.1
V
VIN=12V ,VEN=12V
VSS=0V
VIN =12V ,VEN= 10V
VIN =12V
VIN =12V ,VEN=12V
開放電圧
ISET 端子 open voltage
Viset
1.5
V
最大 ON デユーティ― *6
DMAX
90
%
VIN =12V ,VEN=12V
最小 ON 時間 *6
DMIN
150
nsec
VIN =12V ,VEN=12V
165
℃
VIN =12V ,VEN=12V
20
℃
VIN =12V ,VEN=12V
150
mΩ
VIN =12V ,VEN=12V
過熱保護開始温度 *6
過熱保護復帰ヒステリシス *6
ハイサイド SW ON 抵抗 *6
TSD
TSD_h
ys
RonH
150
RISET =100kΩ
7
NR117K
*4 効率は次式により算出されます。
*5
VO・IO
η(%)= VIN・IIN ×100
4 番端子は、SS 端子で、コンデンサを接続することによりソフトスタートさせるこ
とが出来ます。
*6 設計保証値です。
8
NR117K
●2-3
回路図
2-3-① 内部等価回路図
■NR117K
図2
2-3-② 標準接続図
■NR117K
C1,C2: 22μF
R1: 100kΩ
C3:0.1uF
R3: 47Ω
C4: 220μF
C7: 0.1μF
R7: 0~1M(過電流設定)
R6: 1.6kΩ
R4+R5: 8.4kΩ (Vo=5V 設定) L1: 150μH
図3
9
NR117K
3.各端子の説明
●3-1 端子記号、名称
表4
端子番号
1
2
3
記号
BS
VIN
SW
名称
ハイサイド用ブースト端子
入力端子
スイッチング出力端子
4
5
6
7
8
GND
FB
ISET
EN
SS
グランド端子
基準電圧端子
過電流保護調整端子
ON/OFF 端子
ソフトスタート設定端子
●3-2
BS 1
8 SS
VIN 2
7 EN
SW 3
GND 4
6 ISET
5 FB
端子機能説明
・BS (端子番号 1):
ハイサイドスイッチ Nch-MOS のゲート駆動用の内部電源です。SW 端子と BS 端子間に 0.1uF 以上のコ
ンデンサを接続し、ハイサイド Nch-MOS を駆動させます。
・IN (端子番号 2):
IC の入力電圧です。
・SW (端子番号 3):
出力にパワーを供給するスイッチング出力端子です。
・GND (端子番号 4):
グランド端子です。
・FB (端子番号 5):
出力電圧設定用の端子です。R4、R5、R6 で出力電圧を設定します。
・ISET(端子番号 6):
端子に抵抗を接続することで過電流保護設定値を調整することができます。
・EN(端子番号 7):
IC を ON/OFF させるための端子です。
・SS(端子番号 8):
端子にコンデンサを接続することで出力電圧をソフトスタートさせることができます。
10
NR117K
4.NR117K の動作説明
●4-1 PWM出力制御
NR117K は、電流制御と電圧制御の2系統の帰還ループとスロープ補正を行う3つのブロッ
クで構成され、電圧制御帰還では出力電圧を PWM 制御に帰還するループとなり、NR117K では
出力電圧の抵抗分割を基準電圧 0.8V で比較するエラーアンプで構成されています。電流制
御帰還ではインダクタ電流を PWM 制御に帰還するループであり、センス MOSFET を使用して
分流されたインダクタ電流をカレントセンスアンプで検出を行っています。また、スロープ
補正では電流制御方式の特性上,サブハーモニック発振を回避するため電流制御スロープに
対して補正を行っています。図 4 に示すように,NR117K では,電圧制御帰還,電流制御帰還,
スロープ補正の信号を演算することで,電流制御方式による PWM 制御を行っています。
図 4 電流制御PWM制御チョッパ型レギュレータ基本構成
NR117K は UVLO が解除された時や、EN・SS 端子が閾値を超えた時に、スイッチング動作しま
す。最初は、MIN_ON デューティーもしくは MAX_ON デューティーでスイッチング動作します。 ハイサイ
ドスイッチ(M1、以下 M1と示す。) は出力にパワーを供給するスイッチング MOSFET で、ま
ずは、内部回路にて SW 端子を短時間に ON して、M1 を駆動させるためのブースト用コンデンサ C3 を
チャージします。M1:ON 時において、SW 端子とインダクタに電圧が印加されることにより、
インダクタ電流が増加し、それを検出する電流検出アンプの出力も上昇します。この電流検
出アンプの出力とスロープ補正信号とが加算された信号と、誤差増幅器の出力を比較します。
加算された信号が、誤差増幅器(Error amp)の出力を超えた時に、比較器の出力が“H”とな
り、RS フリップフロップがリセットされます。そして、M1が OFF し、外付けに SBD(D1)
に回生電流が流れます。
NR117K では毎周期にセット信号が発生し、RS フリップフロップがセットされます。また、
11
NR117K
加算された信号が誤差増幅器(Error amp)の出力電圧を超えなかった場合、OFF Duty 回路の信
号により、RS フリップフロップが必ずリセットされます。
●4-2
過電流・過熱保護
過電流時出力電圧特性
6.00
Vo [V]
5.00
出4.00
力
電3.00
圧
2.00
1.00
0.00
0.0
0.5
1.0
出力電流
1.5
2.0
Io [A]
図5
NR117K は、過電流保護回路を内蔵しています。過電流保護回路はスイッチングトランジスタ
のピーク電流を検出し、ピーク電流が設定値を超えると強制的にトランジスタのON時間を
短縮させて出力電圧を低下させ電流を制限しています。過電流状態が解除されると出力電圧
は自動的に復帰します。
過熱保護時出力電圧特性
出力電圧
復帰設定温度
保護設定温度
接合温度
図6
過熱保護回路は、ICの半導体接合温度を検出し、接合温度が設定値(約 160℃)を超える
と出力トランジスタを停止させ、出力をOFFとします。接合温度が過熱保護設定値より
20℃程度低下しますと自動的に復帰します。
※(過熱保護特性)注意事項
瞬時短絡等の発熱に対しICを保護する回路であり、長時間短絡等、発熱が継続する状態
での信頼性を含めた動作を保証するものではありません。
12
NR117K
5.使用に際しての注意事項
●5-1 外付部品選定上の注意
5-1-① チョークコイルL1
チョークコイルL1は、チョッパ型スイッチングレギュレータの中心的役割を果たしてい
ます。レギュレータの安定動作維持のため、飽和状態での動作や、自己発熱による高温動作
等の危険な状態は回避しなくてはなりません。チョークコイル選定のポイントとしては以下
の事項が挙げられます
a)スイッチングレギュレータ用であること
ノイズフィルタ用のコイルは、損失が大きく発熱が大となりますのでご使用を
避けて下さい。
b)サブハーモニック発振の回避
ピーク検出電流制御ではインダクタ電流がスイッチング動作周波数の整数倍の周期で変
動することがあります。このような現象をサブハーモニック発振と呼び、ピーク検出電
流制御モードでは原理的に発生する問題です。また、デューティー50%を越える条件に
おいて、サブハーモニック発振が起きます。その為、安定な動作をさせる為に IC 内部で
インダクタ電流に補正を行っており、出力電圧に対応した適切なインダクタ値を選定す
ることが必要です。
図 7 はデューティー50%を越える条件でのサブハーモニック発振を回避するためのインダク
タンス L 値選定範囲を示した図です。尚、インダクタンス L の上限については、入出力条件、
負荷電流によって変わることがあるため、目安としての値になります。
1200
1100
コイル(インダクタンス) [uH]
1000
900
800
700
600
インダクタンスL
選定範囲
500
400
300
200
100
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
出力電圧Vo [V]
図7
NR117K f=30kHz でのインダクタンス L 値選定範囲
チョークコイル電流の脈流部ΔIL およびピーク電流 ILp は、次式にて表されます。
IL 
(Vin  Vout )  Vout
L  Vin  f
---(A)
ILp 
IL
 Iout
2
---(B)
13
NR117K
この式よりチョークコイルのインダクタンス L が小さいほど、ΔIL,ILp ともに増大する
ことが分かります。よってインダクタンスが過小であるとチョークコイル電流の変動が
大きくなるためレギュレータの動作が不安定になるおそれがあります。過負荷・負荷短
絡時の磁気飽和によるチョークコイルのインダクタンスの減尐に注意願います。
図7
図 8.チョークコイル電流におけるリップル電流成分
c)定格電流を満足すること
チョークコイルの定格電流は、使用する最大負荷電流より大きくなくてはなりません。
負荷電流がコイルの定格電流を越えると、インダクタンスが激減し、ついには飽和状態
となります。この状態では、高周波インピーダンスが低下し、過大な電流が流れますの
でご注意下さい。
d)ノイズが尐ないこと
ドラム型のような開磁路型コアは、磁束がコイルの外側を通過するため周辺回路へノ
イズによる障害を与えることがあります。なるべくトロイダル型や EI 型、EE 型のよう
な閉磁路型コアのコイルをご使用下さい。
14
NR117K
5-1-② 入力コンデンサ CIN
入力コンデンサ CIN は、入力回路のバイパスコンデンサとして動作し、スイッチング時
の急峻な電流をレギュレータに供給しており、入力側の電圧降下を補償しています。従
って極力レギュレータICの近くに取り付ける必要があります。また、AC 整流回路の平
滑コンデンサが入力回路にある場合でも、NR117K の近くにレイアウトされていなければ
入力コンデンサは平滑コンデンサと兼用とすることが出来ません。
CIN 選定のポイントとして次のことが挙げられます。
a)耐圧を満足すること
b)許容リップル電流値を満足すること
CIN の電流の流れ
CINC1電流波形
IIN
VIN
1.VIN
リップル電流
0
Iv
Ip
CIN
C1
Ton
D
T
図9
Ton
T
図 10
入力コンデンサのリップル電流は負荷電流の
増加に伴って増大する。
これら耐圧や許容リップル電流値を、オーバーしたりディレーティング無しで使用した
場合、コンデンサ自身の寿命が低下(パンク、容量の減尐、等価インピーダンス増大、
等)するばかりでなく、レギュレータの異常発振を誘発する危険があります。従って、
十分なマージンをとった選択が必要です。尚、入力コンデンサに流れるリップル電流実
効値 Irms は下記の(2)式で求められます。
Irms  1.2 
Vo
 Io
Vin
--(2)
例えば VIN=20V,Io=3A,Vo=5V とすると、
Irms  1.2 
5
 3  0.9A
20
となりますので、許容リップル電流が、0.9A より大きいコンデンサを選ぶ必要がありま
す。CIN は標準接続図における C1/C2 です。
15
NR117K
5-1-③ 出力コンデンサ COUT
電流制御方式は,電圧制御方式にインダクタ電流を検出し、帰還するループを追加した
方式である。帰還ループにインダクタ電流を追加することで,LC フィルタの二次遅れ要
素の影響を考慮せず,安定な動作を実現できます。したがって、二次遅れを補正するた
めに必要であった LC フィルタの容量 C を小さいものにでき,さらに低 ESR のコンデンサ
(セラミックコンデンサ)を用いても安定した動作を得ることが可能です。
出力コンデンサ COUT は、チョークコイルL1と共にLCローパスフィルターを構成し、
スイッチング出力の平滑コンデンサとして機能しています。出力コンデンサにはチョー
クコイル電流の脈流部ΔIL と等しい電流が充放電されています。従って入力コンデンサ
と同様に、耐圧及び許容リップル電流値を十分なマージンを取った上で満足する必要が
あります。COUT は標準回路図における C4/C5 です。
IL
Vout
L1
ESR
COUTC2電流波形
Io
リップル電流
RL
0
⊿IL
出力コンデンサのリップル電流はチョークコイルのリップル
COUTC2
電流と等しく、負荷電流が増減しても変化
しない。
図 11 COUT の電流の流れ
出力コンデンサのリップル電流実効値は、下記の(3)式で求められます。
Irms 
IL
2 3
---(3)
例えばΔIL を 0.5A としますと、
Irms 
0.5
2 3
≒ 0.14 A
となり、許容リップル電流が 0.14A 以上のコンデンサが必要になります。
又、レギュレータの出力リップル電圧 Vrip は、チョークコイル電流の脈流部ΔIL(=
COUT 充放電電流)と出力コンデンサ COUT の等価直列抵抗 ESR の積によって定まります。
Vrip  IL  CoutESR
---(4)
従って出力リップル電圧を小さくするには、等価直列抵抗 ESR の低いコンデンサを選
ぶ必要があります。一般的に電解コンデンサにおいては同一シリーズの製品ならば、同
一耐圧で容量が大きい程、又は同一容量で耐圧が高い程(≒外形が大きくなる程)ESR
は低くなります。
16
NR117K
ここでΔIL=0.5A
Vrip=40mV としますと、
CoutESR  40  0.5  80m
となり、ESR が 80mΩ以下のコンデンサを選べば良いことになります。また ESR は温度
によって変化し一般に低温になると増加しますので、使用温度における ESR を確認する
必要があります。尚 ESR 値はコンデンサ固有のものですのでコンデンサメーカにご問い
合わせ下さい。
5-1-④ フライホイールダイオード・D1
フライホイールダイオードD1は、スイッチングオフ時にチョークコイルに貯えられた
エネルギーを放出させる為の物です。フライホイールダイオードには必ずショットキー
バリアダイオードを使用して下さい。一般の整流用ダイオードやファーストリカバリダ
イオード等を使用した場合、リカバリ及びオン電圧による逆電圧印可によりICを破壊
する恐れがあります。又 NR117K の SW 端子(3 番端子)から出力された電圧は入力電圧
とほぼ同等である為、フライホイールダイオードの逆方向耐圧が入力電圧以上あるもの
をご使用下さい。
フライホイール Di にはフェライトビーズは入れないでください。
17
NR117K
5-1-⑤ 出力電圧 Vo と出力コンデンサ COUT
NR117K では安定動作を確保するための目安として、出力電圧と出力コンデンサの対比を表 5
に示します。また、表中のアルミ電解コンデンサについては、ESR を 150mΩ相当とする。
インダクタ L については
表5.Vo・Cout 対比表
Vout[V]
1.2
1.8
3.3
5
12
15
5-1-① チョークコイルL1 を参照して選定して下さい。
30kHz
(セラミックコンデンサ使用)
4.7~180
4.7~120
4.7~56
4.7~47
4.7~18
4.7~12
Cout[uF]
(アルミ電解コンデンサ使用:ESR≒150mΩ)
4.7~1000
100~820 (*)
100~1200 (*)
(*):ESR を 150mΩ相当とした場合、下図のように FB 端子と Vout に
コンデンサ CFB(220pF~2200pF)が必要となります。
18
NR117K
●5-2 パターン設計上の注意
5-2-① 大電流ライン
接続図中の太線部分には大電流が流れますので、出来る限り太く短いパターンとして
下さい。
図 12 回路図
5-2-② 入出力コンデンサ
入力コンデンサ CIN(C1/C2)と、出力コンデンサ COUT(C4/C5)は、出来る限りICに近づけて下さ
い。入力側に AC 整流回路の平滑コンデンサがある場合には、入力コンデンサと兼用にすることが
可能ですが、距離が離れている場合には、平滑用とは別に入力コンデンサを接続することが必要
です。コンデンサ部分のパターン引き回しにも同様の配慮が必要です。
図 13 良いパターン例
図 14 悪いパターン例
19
NR117K
5-2-③ FB 端子(出力電圧設定について)
FB 端子は出力電圧を制御する為のフィードバック検出端子です。出来る限り出力コン
デンサ COUT に近い所に接続して下さい。遠い場合、レギュレーションの低下、スイッチ
ングリップルの増大により異常発振の原因となることがありますのでご注意下さい。
R4,R5 及び R6 を接続することで出力電圧の設定が可能です。
IFB が約 0.5mAになるように設定ください。
(IFB は下限 0.5mA で考え、上限は特に制限は
ありませんが、消費電流が増える方向なので効
率低下になりますので注意ください。
R4+R5、R6、出力電圧は次式で求められます。
IFB=VFB/R6
R4+R5=(Vo-VFB)/IFB
*VFB=0.8v±2%
R6=VFB/IFB
図 15
Vout=(R4+R5)×(VFB/R2)+VFB
安定動作する為にスイッチングノイズの
影響を受けない様、電圧検出ラインはコン
パクトにまとめたレイアウト設計が重要
です。
・Vo=0.8V に設定する際も、安定動作の為 R6 は接続ください。
・入出力電圧の関係については、SW 端子のオン幅がおよそ 200nsec 以上になるような
設定を推奨致します。
● FB 端子及び R4,R5,R6 の配線はフライホイール Di と並走する配線はしないでくださ
い。スイッチングノイズが検出電圧に干渉し異常発振する場合があります。
特に FB 端子から R6 の配線は短く設計することを推奨します。
20
NR117K
● 参考実装基板パターン例
図 16 表面:部品面(両面基板)
図 17 裏面:GND 面(両面基板)
・評価用デモボード回路図
Z1
図 18 デモボード回路図
C1, C2: 22μF
C3:0.1μF
C4, C5: 220μF
C6:オプション
C7: 0.1μF
C9: オープン
C10: R9 を実装
C11:オプション
C12:オプション
R1:510kΩ
R2:オプション
R3:47Ω
R4:18kΩ
R5:2.7kΩ
(Vo=5.0V)
R6:3.9kΩ
R7:オープン
R8:オプション
R9:調整必要
R10:オプション
L1: 150μH
D1:SJPW-T4(サンケン)
D2:オプション
Z1:NR117K
*R9 は図 24(P26)を
参照の上、調整願い
ます。
図 16、図 17 の弊社デモボードは、数種の IC 共用です。実験用のオプション部品実装を含んだ基板
です。
21
NR117K
5-3
電源の安定性
チョッパ型レギュレータの位相特性は、レギュレータIC内部の位相特性と出力コンデンサ
COUT・負荷抵抗 ROUT の合成になります。レギュレータIC内部の位相特性は、一般的には制御
部の遅れ時間と出力誤差増幅器の位相特性で定まります。この内、制御部の遅れ時間による
位相遅れは、実使用上はほとんど問題になることはありません。また出力誤差増幅器の位相
補正内蔵により、安定性を良くするための出力電圧及び出力コンデンサの設定については、
4-1-⑤ 出力電圧と出力コンデンサ を参照して下さい。
22
NR117K
6.応用
●6-1 ソフトスタート
8 番端子にコンデンサを接続すると入力電圧投入時にソフトスタートがかかるように
なります。Vout は Css の充電電圧に相関し立ち上がります。よって Css 充電の時定数計
算で概略求まります。
コンデンサCss はPWM制御の OFF 期間をコントロールして立ち上がり時間を制御する
為のもので、立ち上がり時間t_ss及びディレイ時間t_delay は
以下の式で概略求まります。
ソフトスタート機能を使用しない場合は 8 番端子をオープンとして下さい。
FB
Vin
Vin=6V
Iss
SS
時間
Vss3=2.50V
×0.9
Css
Vss1(th)
基準電圧
(0.8V)
Error Amp.
SS
IC内部
Vss2=1.79V
Vss1=0.90V
● t_delay ⇒ SS端子電圧 < Vss1(th) = Vss1(0.9V)
時間
● tss ⇒ Vss1(0.9V) ≦ SS端子電圧 ≦ Vss2(1.79V)
Vo
※Cssに0.1uFを使用した場合の例:
t_delay = Css*Vss1/Iss = 0.1uF*0.9v/10uA = 9ms
tss = Css*(Vss2-Vss1)/Iss/0.9 = 0.1uF*(1.79v-0.9v)/10uF/0.9 ≒ 9.9ms
時間
t_delay
tss
タイミングチャート
図 19 ソフトスタート特性
放電時間t_discharge [ms]
SSコンデンサ放電時間
6
5
SS 開放電圧=2.5V
4
SS 放電能力は 500uA
3
左記のグラフは SS 端子電圧が 2.5V⇒0V に
2
なるまでの時間を表している。
1
0
0.01
SSコンデンサ放電時間
0.1
SSコンデンサCss [uF]
1
Css がない場合や極端に小さい場合、過電流保護 Is で制限した出力電流で出力コンデンサを充電
する時定数で立ち上がります。
出力コンデンサ起動での時定数
t=(COUT×Vo)/Is ・・・・・・(無負荷時)
*負荷がある状態では Is 値より負荷電流分が減算されます。
23
NR117K
●6-2 出力の ON・OFF 制御
7 番・EN 端子を用いて、出力 ON・OFF 制御が可能です。オープンコレクタ等のスイッチ
により、7 番端子を VENL(1.4v)以下にすると出力は停止します図 20(A)。外部 ON/OFF を使用
しない場合は、図 20(B)のように 100kΩ のプルアップ抵抗を IN~EN 間に接続してください。
VIN 電圧印加で起動します。
100kΩ
100kΩ
(A)
(B)
図 20 ONOFF 制御
●6-3
スパイクノイズの低減
6.3.1 BS 直列抵抗の追加
図 21a の R3(オプション)を挿入することで、IC 内蔵の
パワーMOSFET のターンオンスイッチングスピードを
遅くすることが出来ます。スパイクノイズはスイッチング
スピード低下に連動して下がる傾向となります。
R3 を使用する場合は 22Ω を上限として設定してください。
※ご注意
1)誤って R3 の抵抗値を大きくしすぎると、IC 内蔵パワー
MOSFET はアンダードライブとなり、最悪破損する事が
有ります。
2)R3 が大きすぎると、起動不良を起こす事が有ります。
6.3.2 スナバ回路の追加
上記 6.3.1 の対策に図 21b のように抵抗とコンデンサ(RC ス
ナバ)を追加することにより、出力波形及び、ダイオードの
リカバリータイムを補正し、一層のスパイクノイズを低減さ
せることができます。6.3.1 項、6.3.2 項共に効率が低下します
ので注意して下さい。
※オシロスコープにてスパイクノイズを観測される際には、
プローブの GND リード線が長いとリード線がアンテナの作
用をしてスパイクノイズが大きく観測されることがあります。
スパイクノイズの観測に当たってはプローブのリード線を最
短にして出力コンデンサの根本に接続して下さい。
1.BS
NR11*K
図 21a. R3 の挿入
2.VIN
3.SW
NR11*K
4.GND
図 21b. スナバ回路の追加
24
NR117K
・6.3.3 ビーズコアの挿入に関するご注意
図 22
図 22 の赤の点線内ではフェライトビーズなどのビーズコアを挿入しないでください。プリント基
板パターン設計においては、IC の安全且つ安定動作のため、配線パターンの寄生インダクタンスを
小さく抑えていただくように推奨しております。
ビーズコアを挿入すると、元々配線パターンが持つ寄生インダクタンスに、ビーズコアが持つイン
ダクタンスが加算されるため、この影響によってサージ電圧の発生、或いは IC の GND が不安定/負
電位になるなど、誤動作が発生したり、最悪の場合破損に至る事があります。
ノイズの低減に関しては、基本的に 6.3.1 項「・スナバ回路の追加」及び、6.3.2 項「・BS 抵抗の追加」
で対策してください。
※オシロスコープにてスパイクノイズを観測される際には、プローブの GND リード線が長いとリ
ード線がアンテナの作用をしてスパイクノイズが異常に大きく観測されることがあります。スパイ
クノイズの観測に当たってはプローブのリード線を最短にして出力コンデンサの根本に接続して
下さい。
●6-4
逆バイアス保護
バッテリーチャージ等、入力端子より出力の電圧が高くなるような場合には、入出力間に
逆バイアス保護用のダイオードが必要となります。
2.VIN
3.SW
NR117K
図 23 逆バイアス保護用ダイオード
25
NR117K
●6-5
過電流保護開始の設定について
RISET の設定値により、OCP 動作開始点の調整が可能ですが、OCP は IC 固有のバラつき範囲を持つた
め、OCP 動作を開始するための検出 ILP の値は、曲線 A と曲線 B の間になります。(図 23)
過電流時ピークコイル電流 Ip[A]
4.00
3.50
3.00
VIN:入力電圧
↑曲線 A
Vo:出力電圧
2.50
Io:出力電流
2.00
L:インダクタンス
1.50
f:発振周波数
↑曲線 B
1.00
⊿IL:コイル脈流電流
0.50
Ip:過電流時ピーク電流
0.00
10
10k
100
100k
1000
1M
10000
10M
100000
100M
過電流設定抵抗 RISET[Ω]
図 24 過電流調整グラフ
また、過電流時ピーク電流 Ip から出力電流 Io に換算する場合は以下の計算式となります。
・コイル脈流電流
・・・
⊿IL 
Vo
Vo
 (1 )
L f
VIN
---(5)
・臨界条件(コイル電流連続モードと不連続モードの境界)
⊿IL
2
⊿IL
Io 
2
・・・コイル電流連続モード: Io ≧
・・・コイル不連続モード:
・コイル連続電流モードの場合の出力電流 Io
・・・
Io  Ip-
⊿IL
2
---(6)
・コイル不連続電流モードの場合の出力電流 Io
・・・
Io 
VIN  L f
1
 Ip2 
 2  Vo  (VIN - Vo )
2 ⊿IL
 Ip2
---(7)
オンデューディー50%以下の入出力条件における L 値推奨範囲につきましては、⊿IL を 0.3A~
1.2A の範囲内で設定し、入出力条件(VIN,Vo)及び図 24 過電流調整グラフの過電流ピーク電流
をもとに、使用する出力電流 Io を満足するような L 値を式(5)~(7)から算出し、L 値を選
定して下さい。
26
NR117K
7.用語解説
・ジッタ
異常スイッチング動作の一種で、入出力条件が一定にも関わらずスイッチングパルス
幅が変動する現象であります。ジッタが発生すると、出力のリップル電圧ピーク幅が
増加します。
・推奨動作条件
正常な回路機能を維持するために必要とされる動作条件を示すもので、実使用におい
ては当条件内とする必要があります。
・絶対最大定格
破壊限界を示す定格であり、瞬時動作及び定常動作において、一項目かつ一瞬たりと
も規格値を超えないように配慮する必要があります。
・電気的特性
各項目に示している条件で動作させた場合の特性値規格であります。動作条件が異な
る場合には、規格値から外れる可能性があります。
・PWM (Pulse width modulation)
パルス変調方式の一種で、変調信号波(チョッパ型スイッチングレギュレータの場合、
出力電圧)の変化に応じて、パルスの幅を変えて変調する方式であります。
・ESR (Equivalent series resistance)
コンデンサの等価直列抵抗値を示します。コンデンサに直列に接続された抵抗と同等
の作用を示します。
27
NR117K
注意
●本書に記載されている内容は、改良などにより予告なく変更することがあります。ご使用
の際には、最新の情報であることをご確認下さい。
●本書に記載されている製品のラインアップについては、開発状況などにより予告なく廃止・統合
することがあります。ご使用の際には、最新の情報であることをご確認下さい。
●本書に記載されている動作例及び回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに
起因する当社もしくは第三者の工業所有権、知的所有権、その他の権利の侵害問題につい
て当社はいっさい責任を負いません。
●本書に記載されている製品をご使用の場合は、これらの製品と目的物との組み合わせにつ
いて使用者の責任において検討・判断を行って下さい。
●当社は品質、信頼性の向上に努めていますが、半導体製品では、ある確率での欠陥、故障
の発生は避けられません。部品の故障により結果として、人身事故、火災事故、社会的な
損害等を発生させないよう、使用者の責任において、装置やシステム上で十分な安全設計
及び確認を行って下さい。
●本書に記載されている製品は、一般電子機器(家電製品、事務機器、通信端末機器、計測
機器等)に使用されることを意図しております。ご使用の場合は、納入仕様書の締結をお
願いします。高い信頼性が要求される装置(輸送機器とその制御装置、交通信号制御装置、
火災・防犯装置、各種安全装置など)への使用をご検討の際には、必ず当社販売窓口へご
相談及び納入仕様書の締結をお願いします。極めて高い信頼性が要求される装置(航空宇
宙機器、原子力制御、生命維持の為の医療機器など)には、当社の文書による合意がない
限り使用しないで下さい。
●本書に記載された製品は耐放射線設計をしておりません。
●本書に記載された内容を文書による当社の承諾無しに転記複製を禁じます。
28