アルミ電解コンデンサテクニカルノート

アルミニウム電解コンデンサの概要
1 . アルミニウム電解コンデンサの概要
1-1 アルミニウム電解コンデンサの原理
1-2 静電容量
アルミニウム電解コンデンサは、陽極用高純度ア
ルミニウム箔表面に形成された酸化皮膜を誘電体と
して、陰極用アルミニウム箔、電解液、コンデンサ
紙(電解紙)から構成されます。
酸化皮膜は電解酸化(化成)によって形成され、極
めて薄く整流性を持ちます。また高純度アルミニウ
ム箔を粗面化(エッチング)し、実効表面積を拡大
することによって、小形大容量で軽量なコンデンサ
が得られます。
実際のコンデンサは前述しました様に、陽極およ
び陰極電極にはアルミニウム箔(陽極箔および陰極
箔)を用い、両箔間に電解紙を挾み(箔が2層と電解
紙が2層となる)これを巻き取り電解液を含浸させた
構造となっています。構成を(図 1 - 1)に示します。
電解液(真の陰極)
陽極アルミニウム電極
陰極アルミニウム電極
(見かけの陰極)
電解液を含んだ電解紙
酸化皮膜
図 1-1
酸化皮膜は整流性を持つため、上記モデル図では
有極性コンデンサとなりますが、陽極側、陰極側の
双方に酸化皮膜を形成した電極を用いると両極性コ
ンデンサになります。
また、ここでは電解紙に電解液を含浸させるアル
ミニウム非固体電解コンデンサについて述べました
が、固体電解質を用いた導電性高分子アルミニウム
固体電解コンデンサもあります。
表1-1
アルミニウム電解コンデンサは平行板コンデンサ
と同様静電容量は次式で求められます。
--12 εS
(F)………(式 1 - 1)
C = 8.854×10
d
ここで、εは誘電体の比誘電率、S は誘電体の表
面積(m2)
、dは誘電体の厚さ
(m)
を示します。
静電容量Cを大きくするためには、比誘電率εが
大きいこと、表面積 S が大きいこと、誘電体の厚み
d が薄いことが条件となります。
各種コンデンサの誘電体の比誘電率εと誘電体厚
み dを比較すると(表 1 - 1)のようになります。
アルミニウム電解コンデンサの誘電体は、単位厚
みあたりの耐電圧が高いこと、またコンデンサの定
格電圧に応じた厚みを形成できることより、他のコ
ンデンサに比べて厚みd値を薄く出来ます。
さらに、アルミニウム箔表面をエッチングするこ
とにより、見掛け上の面積に比べ、実効面積が、低
圧用で80~100倍、中高圧用で30~50倍に拡大でき
ますので、見掛け面積当りの容量値は他のコンデン
サより大きくなります。
アルミニウム電極は、高純度アルミニウム箔を塩
化物水溶液中で直流、交流またはその交互および重
畳によって、電気化学的にエッチングし、表面積を
拡大しています。低圧用陽極箔は、交流電解を主体
として細かな海綿状エッチング(写真 1 - 1)
、中高圧
用陽極箔は、直流電解を主体としたトンネルエッチ
ング(写真 1 - 2)が主流となっています。陰極箔は、
交流電解を主体としたエッチングをして表面積を拡
大します。
各種コンデンサの誘電体と誘電体最小厚み
ε
コンデンサの種類
誘 電 体
アルミニウム電解コンデンサ
酸化アルミニウム
7~10
1.3×10-9~1.5×10-9
フィルムコンデンサ(金属蒸着)
ポリエステルフィルム
3.2
0.5×10-6~2×10-6
タンタル電解コンデンサ
酸化タンタル
24
1.0×10-9~1.5×10-9
セラミックコ ン デ ン サ(磁 器 )
(高誘電率)
チタン酸バリウム
500~20,000
2×10-6~3×10-6
セラミックコンデンサ(磁 器 )
( 温度補償用)
酸化チタン
15~250
2×10-6~3×10-6
比誘電率 誘電体厚み d(m)
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサの概要
表 面
断 面
写真 1 - 1
低圧用エッチング箔の表面・断面写真
表 面
断 面(レプリカ)
写真 1 - 2
中高圧用エッチング箔の表面・断面写真
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサの概要
1-3 誘電体
(アルミニウム酸化皮膜)
エッチングしていない箔(プレーン箔)表面上に形
成した誘電体(アルミニウム酸化皮膜)の拡大写真を
(写真 1 - 3)に示します。
誘電体(アルミニウム酸化皮膜)の生成反応は下記
で表されます。
2Al+3H2O → Al2O3+3H2(気体)+3e -(電子)
→
エッチングした高純度アルミニウム箔を硼酸-ア
ンモニア等の水溶液中で陽極酸化を行い、箔の表面
にアルミニウム酸化皮膜を形成させます。このアル
ミニウム酸化皮膜がアルミニウム電解コンデンサの
誘電体となります。陽極酸化を行うとき箔に印加す
る直流電圧を化成電圧と呼びます。
誘電体の厚みは、化成電圧にほぼ比例し1V当たり
およそ1.3×10 -9~1.5×10 -9mです。
誘
電
体
}
}
誘
電
体
誘
電
体
}
20V化成皮膜
写真 1 - 3
100V化成皮膜
250V化成皮膜
誘電体
(アルミニウム酸化皮膜)
断面写真(プレーン箔表面に誘電体を生成したもの)
写真 1 - 4 中高圧化成箔の断面写真
(ピットに生成された酸化皮膜の状態)
1-4 電解液の働き
陽極箔と陰極箔を対向させ、両極箔間に電解紙を
はさみ込んで円筒状に巻き込んだものを素子と呼び
ます。電解紙は絶縁物ですので、陽極箔上のアルミ
ニウム酸化皮膜と電解紙を誘電体としたコンデンサ
になっていますが、この状態では静電容量はわずか
です。
この素子に電解液を含ませる(以下、含浸という)
と、電解液によって陽極箔表面と陰極箔表面が電気
的につながり、陽極箔表面のアルミニウム酸化皮膜
を誘電体とした大きな静電容量を持ったコンデンサ
が得られます。すなわち、電解液は真の陰極の役目
を果たしています。次にこの電解液に要求される基
本的な特性を上げてみます。
(1)
電気伝導性を持つこと。
(2)
陽極箔表面の誘電体に欠陥部分があればそれ
を修復する能力を持つこと。すなわち化成性
を持つこと。
(3)
陽極箔、陰極箔、封口材料などに対して化学
的に安定であること。
(4)
含浸性が良好なこと。
(5)
蒸気圧が低いこと。
この電解液の特性が、アルミニウム電解コンデン
サの諸特性に大きくかかわり、コンデンサの定格、
温度範囲、用途に応じて適切なものを選択していま
す。
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アルミニウム電解コンデンサの概要
1-5 製造方法
工程
エッチング
(表面積拡大)
主な材料
内容
高純度アルミニウム箔
陽極箔は厚さ0.05~0.11mm、陰極箔は厚さ0.02~0.05mmの
塩化物
アルミニウム箔を塩化物水溶液中で直流や交流電流で電気
純水
化学的なエッチングを行い、実効表面積を拡大させる。こ
れによりコンデンサの小形化が可能となる。
化成
(誘電体形成)
エッチング箔
コンデンサの誘電体となるアルミニウム酸化皮膜
(Al 2O3)
を
硼酸塩等
形成する。
純水
陽極箔は、エッチングした箔に硼酸-アンモニア等の水溶
液中で直流電圧
(化成電圧)
を印加し、箔の表面にアルミニ
を形成させる。陰極箔は、低い直流電
ウム酸化皮膜
(Al 2O3)
圧で化成を行うものと、化成を行わないものとがある。
裁断
(スリット)
加締・巻取
陽極箔
コンデンサのケースサイズごとに規定の幅寸法に裁断する。
陰極箔
裁断箔(陽陰両極)
両極箔間に電解紙を挿入し円筒形の素子に巻取る。
(同時に
電解紙
電極リード材を両極に接続する。)
電極リード材
素子止め材
リード材
素子止め材
素子
箔
電解紙
図 1-2
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アルミニウム電解コンデンサの概要
工程
含浸
組立・仕上
主な材料
内容
素子
素子に電解液を含浸させる。箔の間隙に電解液が満たされ
電解液
初めてコンデンサの機能が得られる。
含浸素子
含浸済素子、ケース、封口材を組立てる。封口材には、ゴ
ケース
ムパッキング、端子付ラバーベーク板、端子付モールド樹
封口材
脂板等が用いられる。
(
)
ゴ ム パ ッ キ ン グ
組立後の製品に外装材を被覆する。但し、チップ等のラミ
端子付ラバーベーク板
ネートケース品にはスリーブを使いません。
端子付モールド封口板
外装材(スリーブ・底板等)
端 子
リード線
カーリング部
アルミリード
ゴムパッキング
カーリング部
※アルミケース
スリーブ
アルミリベット
ラバーベーク
アルミワッシャ
アルミリード板(タブ)
素子
アルミケース
※スリーブ
素子止めテープ
素子固定材
(用いるものと
用いないものがある)
素 子
底板
図 1-4
図 1-3
※チップ等ラミネート品はラミネートケース(スリーブ無し)
組立後の製品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高温下で直流電圧を印加し、酸化皮膜の修復を行う。
エージング
全数電気特性検査を行う。
チップ品は端子を加工し、座板をつける。
加工
座板
要求に応じてリードカット、フォーミング、スナップイン、
テーピング材
テーピングの加工を行う。
附属部品
取付けバンド等の附属部品を取り付ける。
(
取付けバンド
)
等
端子部ネジ
チップ加工 カット加工 フォーミング スナップイン加工
加工
テーピング加工
折り曲げ加工
バンド取付け
図 1-5
規定の仕様と検査基準に従い、検査を行い、製品の品質保
検査
証をする。
梱包
梱包材
梱包する。
出荷
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサの概要
1-6 電気的特性
またインピーダンスは
陽極箔誘電体部の静電容量
(Ca)
は、前述の
(式 1 - 1)
から
--12 εS
(F)
Ca = 8.854×10
d
となります。
また、陰極は低い化成電圧で形成した酸化皮膜、
または放置中に生成した自然酸化皮膜(通常1V以下
の化成電圧相当)を誘電体とする静電容量(Cc)を持
っています。アルミニウム電解コンデンサの構造上
CaとCcが直列接続になっていますので、コンデン
サの静電容量(C)は、
Ca×Cc
C=
Ca+Cc
となります。
静電容量の許容差は、±20%
(M)
品が標準ですが、
特殊用途用として±10%
(K)
品等も製造しています。
静電容量は、測定周波数および測定温度により変化
しますので、測定は周波数120Hz、温度20℃を基準
としています。
Z=
1
+ jωL + R で表わされ、その絶対値は
jω C
2
1
Z = R + ωL− ωC
(
)となります。
2
測定周波数との関係をモデルカーブ(図 1 - 8)
に示し
ます。インダクタンスLは電極箔の捲回部、引き出
しリード部が主であり、等価直列抵抗 R は電極箔の
抵抗、電解質の抵抗、引出しリードの抵抗および各
部接続抵抗によるものであります。
10
R(Ω),Z(Ω)
1-6-1 静電容量
1
10−1
Z
R
10−2
アルミニウム電解コンデンサの等価回路を次に示
します。なお等価直列抵抗はESRとも呼称します。
10−3
XL
XC
1-6-2 等価直列抵抗
(R)損失
(tanδ)インピーダンス
(Z)
102
103
104
105
106
f(Hz)
r
C:静電容量(F)
R
L
図 1-8
r :陽極酸化皮膜の等価並列抵抗(Ω)
R :等価直列抵抗(Ω)
C
L :等価直列インダクタンス(H)
図 1-6
1-6-3 漏れ電流
ここで低周波(50Hz~1kHz)では等価直列インダ
クタンスL によるリアクタンス
(X L)
は極く小さいた
め零とみると以下の関係になります。
Z
tanδ=
R
=ωCR
Xc
…
(式 1 - 2)
…
(式 1 - 3)
DF = tanδ × 100(%)
δ
Xc
(1/ωc)
R
PF = cosθ= =
Z
θ
R
Q=
1
Xc
= R
tanδ
(ω = 2πf)
図 1-7
R
2
R +
1
ωC
2
…
(式 1 - 4)
( )
…
(式 1 - 5)
アルミニウム電解コンデンサの漏れ電流の要因には
1)誘電体(アルミニウム酸化皮膜)の分極歪みに
よるもの
2)誘電体の溶解、生成に起因するもの
3)誘電体に湿気吸着によるもの
4)塩素分、鉄粉などの不純物の存在による誘電
体の破壊
などがあると言われています。基本材料、製造方法
を選ぶことでその値を低減することは可能ですが、
なくすことはできません。
また漏れ電流値は温度、時間、印加電圧などに依
存性を持っています。
漏れ電流の規格は室温で定格電圧を印加し、所定の
時間後の許容上限値で決められています。コンデンサ
の用途によっては、温度依存性、経時安定性などの観
点で適切なものを選定することが必要です。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサの概要
1-6-4 温度特性について
10
アルミニウム電解コンデンサは、電解液を使用し
ています。この電解液の物性(電気伝導度、粘度な
ど)は比較的顕著な温度特性を持っています。電気
伝導度は温度が高くなると、大きく、温度が下がる
と小さくなります。このためアルミニウム電解コン
デンサは他のコンデンサに比べて温度による電気特
性の変化が大きくなります。温度と静電容量・tan
δ・等価直列抵抗(ESR)・インピーダンスおよび漏
れ電流の関係を以下に示します。
50V1000μF 105℃品
−25℃
1
tan δ
+20℃
+65℃
+105℃
0.1
0.01
100
1)静電容量
静電容量は、温度が高くなると増加し、温度が下
がると減少します。温度と静電容量の関係を(図 1 9)に示します。
10
10k
1k
周波数(Hz)
200V470μF 105℃品
−25℃
2)tanδ、等価直列抵抗(ESR)、インピーダンス
1
+20℃
+65℃
tan δ
tanδ、等価直列抵抗(ESR)
、インピーダンスは、
温度および周波数によって変化します。
温度と周波数による変化を(図 1 - 10~図 1 - 11)に示
します。
+105℃
0.1
50V 1000μF 105℃品
10
0
−10
0.01
100
−20
図 1-10 tan δの周波数特性
−30
−40
−60
−40
−20
0
20
40
温度(℃)
60
80
100
ESR(Ω)
インピーダンス
(Ω)
10
200V 470μF 105℃品
0
−10
at 120HZ
−20
−30
−40
−60
−40
−20
0
10
120
20
静電容量変化率(%)
10k
1k
周波数(Hz)
at 120HZ
20
40
温度(℃)
60
80
100
120
50V 1000μF 105℃品
1
インピーダンス
ESR
−25℃
0.1
+20℃
0.01
100
1k
+65℃
+105℃
10k
100k
周波数(Hz)
図 1-9 静電容量の温度特性
10
200V 470μF 105℃品
ESR(Ω)
インピーダンス
(Ω)
静電容量変化率(%)
20
−25℃
1
インピーダンス
ESR
+20℃
0.1
+65℃
0.01
100
+105℃
1k
10k
100k
周波数(Hz)
図 1-11 インピーダンス,ESRの周波数特性
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサの概要
3)インピーダンス比
4)漏れ電流
1000
50V 1000μF 105℃品
定格電圧印加後1分後
漏れ電流(μA)
20℃のインピーダンスと各温度のインピーダンス
の割合をインピーダンス比と言います。温度に対す
るESR値および静電容量値の変化が少ないほどイン
ピーダンス比は小さくなります。特に低温での性能
の良否を120Hzでのインピーダンス比を用いて表し
ます。
漏れ電流は温度が高くなると大きくなり、温度が
下がると小さくなります。温度と漏れ電流の関係を
(図 1 - 12)に示します。
100
10
1
-20
0
20
40
60
温度(℃)
80
100
120
80
100
120
1000
200V 470μF 105℃品
漏れ電流(μA)
定格電圧印加後5分後
100
10
1
-20
0
20
40
60
温度(℃)
図 1-12 漏れ電流の温度特性
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2 . アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-1 ご使用上の注意事項
2-1-1 回路設計上の注意事項
(1)
使用環境および取付け環境を確認の上、コンデ
ンサのカタログまたは、仕様書、図面納入申請
書
(以下納入仕様書という)
に規定したコンデン
サの定格性能の範囲内としてください。
(2)
使用温度および使用リプル電流は、カタログまた
は、納入仕様書の規定の範囲内としてください。
qカテゴリ上限温度
(最高使用温度)
を超える温
度で使用しないでください。
w過電流
(定格リプル電流を超える電流)
を流さ
ないでください。
(3)
回路設計するとき、機器の寿命に合ったコンデ
ンサを選定してください。
(4)
コンデンサは有極性です。逆電圧または、交流
電圧が掛からないかを確認してください。
極性が反転する回路には両極性コンデンサをお
選びください。ただし両極性コンデンサも、交
流回路には使用できません。
(5)
急激な充放電を繰り返す回路には、使用条件に
対応したコンデンサを選定ください。
急激な充放電を繰り返す回路としては、溶接機、
フォトフラッシュなどがあります。また、回路
電圧が大きく変動する、サーボモータなどの回
転機器の制御回路でも、急激な充放電が繰り返
されます。
急激な充放電が繰り返される回路に使用される
コンデンサについては、ご相談ください。
(6)
コンデンサに過電圧
(定格電圧を超える電圧)
が
掛からないかを確認してください。
q直流電圧にリプル電圧
(交流成分)
を重畳した
ときのピーク値が定格電圧を超えないように
してください。
wコンデンサを2個以上直列に接続する場合、
個々のコンデンサにかかる電圧が定格電圧以
下になるようにしてください。なお、このと
き漏れ電流を考慮した分圧抵抗器を各コンデ
ンサと並列に入れてください。
(7)
コンデンサは次の間で回路的に完全に隔離して
ください。
(コンデンサのアルミケースと陰極端子間は、
ケース内側の自然酸化皮膜と電解液の不安定な
抵抗分で接続されています。
)
qケースと陰極端子
(CE02形:リード線端子反対
方向形を除く)
および陽極端子並びに回路パ
ターン間。
w基板自立形のブランク端子と他の陽極および
陰極端子並びに回路パターン間。
e両極性コンデンサの両端子とケース
(8)
コンデンサの外装スリーブは絶縁が保証されて
いません。絶縁機能が必要な箇所には使用しな
いでください。スリーブに絶縁機能が必要な場
合は、ご相談ください。
(9)
コンデンサは次の環境で使用すると故障する場
合があります。
q周囲環境
(耐候性)
条件
(a) 直接、水がかかる環境、高温高湿になる
環境および結露状態になる環境
(b) 直接、油がかかる環境および油成分がガ
ス状に充満している環境
(c) 直接、塩水がかかる環境および塩分が充
満している環境
(d)
有毒ガス
(硫化水素、亜硫酸、亜硝酸、塩
素、臭素、臭化メチル、アンモニアなど)
が充満する環境
(e)
直射日光、オゾン、紫外線および放射線が
照射される環境
(f)酸性およびアルカリ性溶剤がかかる環境
w振動または衝撃条件が納入仕様書の規定範囲
を超える過酷な環境
(10)
コンデンサをプリント配線板に取り付けるとき、
事前に次の内容を確認の上、設計してください。
qコンデンサの端子間隔にプリント配線板の穴
間隔を合わせてください。
wコンデンサの圧力弁部の上に配線や回路パタ
ーンがこない設計にしてください。
eコンデンサの圧力弁部の上は、納入仕様書に
規定のない限り、次の間隔を開けてください。
製品直径
間 隔
φ6.3~φ16mm
2mm以上
φ18~φ35mm
3mm以上
φ40mm以上
5mm以上
rプリント配線板側にコンデンサの圧力弁が付
く場合は、圧力弁の位置に合わせて、圧力弁
作動時のガス抜き穴を開けてください。
tネジ端子形の封口部は上向きとしてください。
また横に寝かせる場合には、圧力弁部を上側
とするか、陽極端子を上側にしてください。
(11)
コンデンサの封口部の下にパターンがあると、
万が一電解液の漏れが生じたとき、回路パター
ンを短絡させトラッキングまたはマイグレーシ
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
ョンが発生する場合がありますので、コンデン
サの封口部の下には回路パターンを配線しない
でください。
(12)
コンデンサの周辺およびプリント配線板の裏面
(実装されているコンデンサの基板を対称として、
その反対面)
への発熱部品の配置は避けてください。
(13)
チップコンデンサ用プリント配線板のランドパ
ターンはカタログまたは、納入仕様書の推奨パ
ターンを参照して回路設計してください。
(14)
温度および周波数の変動によってコンデンサの
電気的な特性が変化します。この変化分を確認
の上、回路設計してください。
(15)
両面のプリント配線板にコンデンサを取り付け
るとき、コンデンサの下に余分なプリント配線
板穴および表裏接続用貫通穴がこないように回
路設計してください。
(16)
ネジ端子の締め付けおよびコンデンサ本体取り
付け用ネジの締め付けトルクは、納入仕様書で
規定された範囲内としてください。
(17)
コンデンサを2個以上並列に接続するとき、電
流バランスを考慮してください。
(特に、導電性高分子アルミニウム固体電解コ
ンデンサと一般のアルミニウム電解コンデンサ
を並列接続する場合、考慮が必要です。
)
(18)
コンデンサを2個以上直列に接続するとき、電
圧バランスを考慮して、コンデンサと並列に分
圧抵抗器を挿入してください。
2-1-2 取り付け時の注意事項
(1)
セットに組み込んで通電したコンデンサは再使
用しないでください。定期点検時の電気的性能
を測定するために取り外したコンデンサを除い
て、再使用はできません。
(2)
コンデンサには一旦放電しても端子間に電圧が
発生
(再起電圧)
する場合があります。このとき
約1kΩの抵抗器を通じて放電してください。
(3)
2年以上保管のコンデンサは漏れ電流が増大し
ている場合があります。このとき約1kΩの抵抗
器を通して電圧処理してください。
(4)
コンデンサの定格
(静電容量および電圧)
を確認
してから、取り付けてください。
(5)
コンデンサの極性を確認してから取り付けてく
ださい。
(6)
コンデンサは床などに落下させないでください。
このとき落下したコンデンサは使用しないでく
ださい。
(7)
コンデンサ本体を変形させて取り付けないでく
ださい。
(8)
コンデンサの端子間隔とプリント配線板穴間隔
とが合っていることを確認してから取り付けて
ください。
(9)
基板自立形コンデンサは、その基板に密着する
(浮いた状態にない)
まで押し込んで取り付けて
ください。
(10)
自動挿入機によってコンデンサのリード線をク
リンチ固定する強さは、強すぎないようにして
ください。
(11)
自動挿入機および装着機の吸着具、製品チェッ
カーおよびセンタリング操作による衝撃力に注
意してください。
(12)
はんだごてによるはんだ付け
q はんだ付け条件
(温度、時間)
は、納入仕様書
に規定の範囲内としてください。
w 端子間隔とプリント配線板穴間隔が不整合の
ため、リード線端子を加工する必要がある場
合には、はんだ付けする前に、コンデンサ本
体にストレスがかからないように加工してく
ださい。
e はんだごてによる手直しをするとき、一度は
んだ付けしたコンデンサを取り外す必要があ
る場合には、コンデンサの端子にストレスが
かからないように、はんだが十分溶融してか
ら行ってください。
r はんだごての先がコンデンサの本体に触れな
いようにしてください。
(13)
フローはんだ付け
q コンデンサの本体をはんだの中に浸せきして
はんだ付けしないでください。プリント配線
板を介在させて、コンデンサのある反対側の
裏面のみにはんだ付けしてください。
w はんだ付け条件
(予備加熱、はんだ付け温度、
端子浸せき時間)
は、納入仕様書に規定した
範囲内としてください。
e 端子部以外にフラックスが付着しないように
してください。
r はんだ付けのとき、他の部品が倒れてコンデ
ンサに接触しないようにしてください。
(14)
リフローはんだ付け
q はんだ付け条件(予備加熱、はんだ温度、時
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
間、リフロー回数)
は、カタログおよび納入
仕様書に規定した範囲内としてください。
w 赤外線ヒータを使用するとき、コンデンサ
の色や材料によって赤外線吸収率が異なる
ため、加熱の度合いに注意してください。
(15)
ノンハロゲン系フラックスの中には、イオン性
ハロゲン化合物は含まないものの、非イオン性
ハロゲン化合物を大量に含んでいるものがあり
ます。この化合物がコンデンサの中に侵入した
場合には、電解液と化学反応して、洗浄した結
果と同じような悪影響を及ぼす可能性がありま
す。フラックスの中に、非イオン性ハロゲン化
合物を含まないフラックスを採用してください。
(16)
はんだ付け時やコンデンサ固定用の樹脂の硬化
等でコンデンサを150℃以上の雰囲気中に2分以
上放置したり、もしくは高温ガス、熱線を直接
コンデンサに当てると、外装スリーブに収縮、
膨張、亀裂を生ずる場合があります。
(17)
プリント配線板にコンデンサをはんだ付けした
後、コンデンサ本体を傾けたり、倒したり、ま
たはひねったりしないでください。
(18)
プリント配線板にコンデンサをはんだ付けした
後、コンデンサを把手がわりにつかんでプリン
ト配線板を移動しないでください。
(19)
プリント配線板にコンデンサをはんだ付けした
後、コンデンサに物をぶつけないでください。
また、プリント配線板を重ねるときコンデンサ
にプリント配線板、または他の部品などが当た
らないようにしてください。
(20)
洗浄・固定剤・コーティング剤
洗浄・固定剤・コーティング剤に関しては、2 10 - 2 、- 3 項に示します。
(21)
燻蒸処理について
薫煙処理に関しては2-10-4項に示します。
3 セット使用中の注意
(1)
コンデンサの端子に直接触れると感電する恐れ
があります。
(2)
コンデンサが高温になったり、コンデンサの異常
時に圧力弁が作動すると、+100℃を超える高温
蒸気が噴出するので、コンデンサへ手や顔など
を近づけたり、蒸気がかかる場所に近づかない
でください。火傷などの原因になります。
(3)
コンデンサの端子間を導電体でショートさせな
いでください。また、酸およびアルカリ水溶液
などの導電性溶液をコンデンサにかけないでく
ださい。
(4)
コンデンサを取り付けたセットの設置環境が、
次の環境でないことを確認してください。
q 直接、水が掛かる箇所、高温高湿になる箇
所および結露状態になる箇所
w 直接、油が掛かる箇所および油成分がガス
状に充満している箇所
e 直接、塩水が掛かる箇所、塩分が充満して
いる箇所
r 酸性の有機ガス(硫化水素および亜硫酸、亜
硝酸、塩素、臭素、臭化メチル)が充満し
ている箇所
t アルカリ性の有毒ガス(アンモニアなど)
が充満している箇所
y 酸性およびアルカリ性溶剤が掛かる箇所
u 結露する環境では、外装スリーブに収縮、
膨張、亀裂を生ずる場合がありますので、
ご使用にあたっては十分確認ください。な
お、温度急変、高温高湿試験などで結露す
ると、同様のスリーブ異常が発生する場合
があります。
4 保守点検
(1)
産業用機器に使用されているコンデンサについ
ては、定期点検をしてください。
点検項目は、次の内容を行ってください。
q 外観:圧力弁の作動、液漏れなどの著しい異
常の有無。
w 電気的性能:漏れ電流、静電容量、損失角の正
接およびカタログまたは納入仕様書に規定
した項目。
5 万一の場合
(1)一定サイズ以上のコンデンサは、異常な圧力を
逃がすために圧力弁を有しています。セットの
使用中、コンデンサの圧力弁が作動し、蒸気が
見えたときは、セットのメイン電源を切るか、
または電源コードのプラグをコンセントから抜
いてください。なお、コンデンサの圧力弁から
出る蒸気は、水素ガスと電解液が気化したもの
であり、燃焼による煙ではありません。
(2)
コンデンサの圧力弁作動時には、+100℃を超え
る高温蒸気が噴出しますので、手や顔などを近
づけたり、蒸気がかかる場所に近づかないでく
ださい。火傷などの原因になります。
噴出した蒸気が目に入ったり、吸い込んだりし
た場合には、直ちに水で目を洗ったり、うがい
をしてください。
コンデンサの電解液は、口に入れないでくださ
い。電解液が皮膚に付いたときは、石鹸で洗い
流してください。
(3)コンデンサの圧力弁から蒸気が見えなくなって
も、コンデンサは高温になっています。触れる
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
と火傷を起こす場合がありますので注意してく
ださい。
(2)
コンデンサを廃棄(それに伴う基板からの取り
外し)する際には放電されていることを確認し
てください。
6 保管の条件
(1)コンデンサの保管は、室温で5~35℃の温度、
75%以下の相対湿度を推奨します。
(2)
保管場所が、
「3項 セット使用中の注意
(4)
」に
記載の環境でないことを確認してください。
以上、アルミニウム電解コンデンサの使用上の
注意事項につきましては、EIAJ RCR-2367B
2002年3月発行「電子機器用固定アルミニウム電
解コンデンサの使用上の注意事項ガイドライン」
に準じておりますので、詳細につきましては、上
記ガイドラインをご参照ください。
7 廃棄の場合
(1)
コンデンサを廃棄する場合には、次のいずれか
の方法を取ってください。
q コンデンサに穴を開けるか、または十分つぶ
してから焼却してください。
w コンデンサを焼却しない場合は、専門の産業
廃棄物処理業者に渡して、埋め立てなどの処
理をしてください。
2-2 故障
2-2-1 故障の定義
アルミニウム電解コンデンサの故障を定義する
時、次の2つの形態が考えられます。
ショート・オープン等により完全にコンデンサの
機能がなくなった場合、いわゆる破局故障
(Catastrophic Failure)がその1つであり、他の1つは
コンデンサの特性がだんだん劣化して生ずる故障、
いわゆる劣化故障(Degradation)です。劣化故障は、
設備や機器の使用目的により故障判定基準が異なっ
てきます。従って、当社カタログまたは納入仕様書
で定めた規格値を判定基準としております。
2-2-2 フィールドにおける故障モード
1)ショート
市場でのショートはまれですが、振動、衝撃等に
より電極間がショートする場合と、定格電圧以上の
過電圧、過度なリプル電流、パルス電流等により、
絶縁破壊して電極間ショートする場合があります。
2)オープン
・コンデンサをプリント配線板に取り付ける際に過
度の力が加わった場合、使用中過度の振動・衝撃
が加わった場合、端子やタブが断線したり接触不
安定状態となりオープン状態となります。
・プリント配線板を洗浄した際の洗浄剤やコンデン
サ固定用の固定剤に含まれるハロゲン系物質がコ
ンデンサ内に浸入するとリード線やタブが腐食断
線し漏れ電流大となり、機器の動作に影響する場
合があります。
・カテゴリ上限温度を超える高温中での使用、近く
の発熱部品からの熱をプリント配線板のパターン
を通じて受けたこと、長期間使用したこと等によ
り封口部材が老化し、封口部の気密が保てなくな
ると、電解液が揮散しオープン状態となります。
・過度のリプル電流が加わるとコンデンサ内部の温
度上昇により電解液がガス化し、封口部材を透過
することにより電解液がドライアップしオープン
状態となります。
3)容量減少・損失大
逆電圧が継続して印加された場合、定格リプル電
流以上の電流が継続して印加された場合、または過
激な充放電で使用された場合、静電容量は減少し、
損失は増加します。
4)圧力弁の作動
逆電圧、過電圧、過リプル、交流が加わるとコン
デンサ内部でガスが発生し内圧が上昇し圧力弁が作
動する場合があります。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-2-3 故障モードの原因分析
故障モードの原因分析図を(図 2 - 1)
に示します。
故障モード
故障メカニズム
原 因
製造上
使用上
電極間ショート
電極切断バリ・金属微粒子
酸化皮膜の絶縁破壊
電解紙の脆弱部
ショート
過電圧印加
酸化皮膜の局部的欠陥
引出しタブ・端子部の断線
オープン
引出しタブ・端子部の接続不充分
過酷な機械的ストレス
電解液の劣化と減少
陽極箔の静電容量減少
過電圧印加
静電容量減少
tanδの増加
過大リプル電流
陰極箔の静電容量減少
逆電圧印加
外部からの過酷な電気的ストレス
酸化皮膜の劣化
漏れ電流の増加
腐蝕(電極・引出しタブ)
ハロゲン系物質の浸入
ハロゲン系物質の浸入
過激な充放電
圧力弁作動
内圧の上昇
経時劣化
封口部密閉不充分
液漏れ
電解液の減少
封口材老化
図 2-1
故障モードの原因分析図
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-3 使用電圧と安全性
2-3-1 緒言
(+)
100
試料;定格47μF
電流(μA)
50
25V
50V 100V
160V
逆方向・電圧(V)
6
4
2 0
200
100
順方向電圧(V)
300
50
160V
100V
50V
25V
電流(μA)
アルミニウム電解コンデンサに電圧を印加したとき
の、印加電圧と電流の関係を(図 2 - 2)に示します。
(図 2-2)より、
・コンデンサの極性に対して、順方向に電圧を印加
すると、漏れ電流は印加電圧が定格電圧を超える
と急激に大きくなる。
・コンデンサの極性に対して、逆方向に電圧を印加
すると低い電圧で大きな電流が流れる。
このような性質を持ったアルミニウム電解コンデン
サを、
1)極性を逆にして使用した場合
2)定格電圧以上の電圧で使用した場合
3)交流回路に使用した場合
の挙動およびアルミニウム電解コンデンサの安全性
試験方法について以下に述べます。
100
(−)
図 2-2 V - I 特性(電圧−電流特性)
2-3-2 極性を逆にして使用した場合
16V 100μF
印加電圧
周囲温度
20℃
85℃
−1V
−2V
静電容量変化率(%)
印加する逆電圧の程度によって次のようになりま
す。
(1)逆印加電圧が高いと大きな電流が流れます。
逆印加電圧Vcと、電流Icによるワット損失
(W=Vc×Ic)により発熱します。発熱によっ
てさらに電流は増加します。電流による発熱
と、電解液の電気分解によって発生したガス
によりコンデンサの内圧が上昇し短時間で圧
力弁作動状態となります。
(2)
逆印加電圧が低く、流れる電流が小さい場合
には、印加した当初はワット損失によって発
熱しますが電解液の化成性により、陰極アル
ミニウム箔表面に酸化皮膜が生成し、電流が
減少していきます。逆電圧を印加したときの
印加時間と静電容量変化を(図 2 - 3)に示しま
す。陰極アルミニウム箔表面に酸化皮膜が形
成されたことにより、陰極箔容量が減少した
ためです。また電解液の消費により、損失角
の正接(tanδ)は増加します。
アルミニウムは自然酸化皮膜により、通常1V程度
の耐電圧を持っていますのでダイオードの逆耐電圧
程度の逆電圧には耐えますが、それ以上の逆電圧が
加わった状態で使っていると、徐々にコンデンサの
内圧が上昇し圧力弁作動状態となりますので極性を
よく確認してご使用ください。
0
−10
−20
−30
−40
0 20
100
200
時間(h)
250
300
図 2-3 逆電圧印加による静電容量特性
2-3-3 定格電圧以上の電圧で使用した場合
(図 2 - 4)に示したように定格電圧を超える電圧を
印加すると漏れ電流は急激に増加します。発熱によ
って誘電体の耐電圧が低下し、誘電体が絶縁破壊す
ると、急激に大きな電流が流れ短時間で内圧が上昇
し圧力弁作動状態となります。圧力弁が作動すると
開口した圧力弁部からガス化した電解液が激しく放
出されます。コンデンサのエネルギーは電圧の2乗
1
に比例する
( J= C V 2 )ことから、印加電圧が高い
2
ほど圧力弁の作動状態は激しく、電極間がショート
することがあります。コンデンサの定格電圧以下の
電圧でご使用ください。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
試験の方法(例)
電圧印加3分後のV- I 特性
イオン電流域
漏れ電流(μA)
103
a 交流電圧法(JIS C5101-1, 4.28.1項)
(1)
(図 2 - 5)
に示す回路において、供試コンデンサの定
格 静 電 容 量 値 により 直 列 抵 抗 R を( 表 2 - 1)より
決める。
at 85℃
102
表 2-1
定格静電容量(μF)直列抵抗(Ω) 定格静電容量(μF) 直列抵抗(Ω)
電子電流域
at 20℃
101
0
10
20
30
35
40
電圧(V.D.C)
10%程度差が出る
60
50
A点(化成電圧)
44(S.V)
図 2-4 V - I 特性(35V定格品の例)
2-3-4 交流回路に使用した場合
コンデンサC(F)に交流電圧 E(V)を印加すると
I=ωCE(A)の電流が流れます。
(図 2 - 2 V - I 特性)に示したようにアルミニウム電
解コンデンサは逆方向に対して耐電圧を持っており
ません。したがってアルミニウム電解コンデンサを
交流回路で使用すると、I=ωCEで算出した値以上
の電流が流れます。アルミニウム電解コンデンサの
内部抵抗をR(Ω)とすると、電流によってW=I 2 R
(W)のワット損失により発熱します。アルミニウ
ム電解コンデンサは内部抵抗が大きいため発熱も大
きく、発熱によって電解液が蒸発しコンデンサの内
圧が上昇し、圧力弁作動状態となります。なお、両
極性アルミニウム電解コンデンサであっても連続交
流回路には使用できません。
2-3-5 圧力弁構造について
アルミニウム電解コンデンサに何らかの要因で、
過電圧・逆電圧・交流・過大なリプル電流が印加さ
れたり、過酷な充放電条件または許容以上の高温で
使用されるとコンデンサに流れる電流による発熱、
電解液の蒸発、電解液の電気分解によるガス発生な
どによってコンデンサの内圧が上昇します。このよ
うな時に内圧を逃がす目的で圧力弁を設けていま
す。
圧力弁構造は、大別して封口材の一部に設けたも
のとアルミニウムケースの一部に設けたものとに分
けられます。
1以下
1000±100
100を超え1000以下
1±0.1
1を超え10以下
100±10
1000を超え10000以下
0.1±0.01
10を超え100以下
10±1
10000を超えるもの
(注1)
(注1)
試験周波数でのインピーダンスの1/2に相当する抵抗値
(2)
供試コンデンサを接続し、次に示す交流電圧を印
加する。
定格電圧の0.7倍の電圧または、250Vrmsのいずれ
か低い方の電圧、但し30Arms以上流れる時は、
30Armsとなる様、電圧を調節する。電源周波数は
50Hzもしくは60Hzのいずれかとする。
A
∼
R
交流電
源装置
V
∼
C
50HZ
または60HZ
R:直列抵抗
V
:交流電圧計
∼
A
:交流電流計
∼
C:供試コンデンサ
図 2-5
b 直流逆電圧法(JIS C5101-1, 4.28.2項)
(1)
(図 2 - 6)
に示す回路において、供試コンデンサの公
称外径寸法により直流電流を
(表 2 - 2)
より決める。
表 2-2
公称外径寸法(mm)
φ22.4以下
φ22.4を超えるもの
直流電流(A)
1A一定
10A一定
(2)
直流電源に供試コンデンサを逆極性に接続し、
(1)
の電流を通電する。
A
ー
+
−
直 流
電 源
C
+
−
A
:直流電流計
 ̄
C:供試コンデンサ
図 2-6
判定基準
上記の試験において下記の状態となれば合格と
する。
(1)
供試コンデンサの圧力弁が作動したとき、コンデ
ンサから炎が出たり、素子や容器の一部が飛散し
て危険な状態にならないこと。
(2)
試験電圧を印加して30分経過しても何等異常のな
い場合。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-4 充放電
2-4-1 充放電による影響
2-4-3 充放電対策について
有極性アルミニウム電解コンデンサを(図 2 - 7)
のような充放電を繰り返す回路で使用した場合の現
象について以下に示します。
(図 2 - 7)の回路において陽極箔容量Ca、陰極箔
容量Ccからなるアルミニウム電解コンデンサを電源
電圧Vで充電すると、陽極箔の誘電体にはQ=Ca×V
(C:クーロン)の電荷が帯電する。次に放電抵抗を
通じて放電すると陽極箔に帯電していた電荷は移動
し陰極箔を充電する。陰極箔の誘電体が持っている
耐電圧は低く、陽極から移動した電荷で陰極の耐電
圧に達する。さらに電荷が移動し続けると陰極の誘
電体表面と電解液の界面で電気化学反応が起こる。
充放電を繰り返し行うと、電気化学反応により陰極
箔の誘電体の上に誘電体が生成する。誘電体が生成
すると陰極箔容量が次第に減少する。陰極容量の減
少に伴ってコンデンサの静電容量も減少します。ま
た酸化皮膜生成時に発生したガスはコンデンサの内
部に溜まり内圧を上昇させ、充放電の条件によって
は圧力弁作動状態となります。
SW
放電抵抗
充電抵抗
V
陰極箔への酸化皮膜生成を抑制する対策として主
に、
qあらかじめVc電圧以上の誘電体皮膜を形成し
た陰極箔を使用する。
w(式 2 - 1)
より
(式 2 - 2)
を導くと、VcはCc/Ca、
すなわち陽極箔と陰極箔の静電容量の比が大
きいほどVcは小さくなります。従って陽極箔
容量に対して充分大きい容量の陰極箔を使用
し、陰極箔の皮膜耐性よりもVcが小さくなる
ようにする。
Vc =
V
Cc
1+
Ca
………(式 2 - 2)
があります。
充放電対策品と、未対策品の充放電試験結果の一例
を(図 2 - 8)に示します。
・ 定格:63V 10000μF
・ サイズ:φ35×50L
・ 充放電試験条件
印加電圧:63V
充電抵抗:2Ω
放電抵抗:100Ω
充放電サイクル:1秒充電、1秒放電を1サイ
クルとする
温度:70℃
C
充放電対策品
(試験結果の一例)
10
0
図 2-7
2-4-2 酸化皮膜の生成について
放電時に陰極箔に加わる電圧は以下のようになり
ます。
充電時の陽極箔の電荷は、放電後は陽陰両極に同一
電圧(電圧の方向が互いに逆であり、端子間は零電
圧)になるまで電荷は移動します。
ここで陽極箔の持っている静電容量(Ca)
、陰極
箔が初期に持っている静電容量
(Cc)
、放電電圧
(V)
、
放電終了時の陽極・陰極箔に加わる電圧を(Vc)と
すると、次式が成り立ちます。
Ca × V = Ca × Vc + Cc × Vc
∴Vc =
Ca
× V ………(式 2 - 1)
Ca+Cc
以上のことより、充電と放電を繰り返し行う回路に
アルミニウム電解コンデンサを使用する際は、充放
電対策仕様のアルミニウム電解コンデンサをご使用
いただくことが必要です。
未対策品
静
電
容
量
変
化
率
(%)
-10
-20
-30
開弁
-10
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
充放電サイクル
(回)
図 2-8
なお、ACサーボアンプ電源、インバータ電源など
電圧変動の大きな回路に使用される場合は、高速充
放電対応QS、QR、NC、NUシリーズ品をご使用く
ださい。
特殊素子構造を採用することで、充放電に対する耐
性を高めています。
(特許登録済)
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アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-5 シリーズ結線におけるバランス抵抗の
選定方法
2-5-1
等価回路と漏れ電流の影響
アルミニウム電解コンデンサのシリーズ結線にお
けるバランス抵抗と漏れ抵抗との関係は等価回路的
に(図 2 - 9)のように示すことが出来ます。
V1
C1
r1
R0
V2
C2
r2
R0
V0
C1:アルミニウム電解コンデンサNo1
C2:アルミニウム電解コンデンサNo2
r 1:コンデンサNo1の漏れ抵抗
r 2:コンデンサNo2の漏れ抵抗
V1:コンデンサNo1の端子間電圧
V2:コンデンサNo2の端子間電圧
Ro:バランス抵抗
Vo:ライン電圧
図 2-9
電圧バランス
V1-V 2 = 400×0.1 = 40(V)
漏れ電流のばらつき範囲
3 C×V×2×1.4
i max - i min= 10
3 470×400×2×1.4
= 10
= 364
(μA)
40
∼ 109000 … 100kΩ
∴R 0=
364×10-6 ∼
なお、バランス抵抗を設定する際は、現在ご使用
されている方法も考慮して決定される様にお願いい
たします。
コンデンサC1,C2の漏れ電流をそれぞれi1,i2とすると
V1 , i2= V2 ………(式 2 - 3・式 2 - 4)
i 1= r1
r2
V0=V1+V 2 , 更に V1-V 2 =R 0×
(i 2-i 1)
より
R 0= V1-V2
i 2-i 1
………(式 2 - 5)
となります。
2-5-2
アルミニウム電解コンデンサの漏れ電流について
基板自立形コンデンサの漏れ電流のバラツキは定
格電圧をV(V)
、定格静電容量をC(μF)とすると常
温(20℃)ではおおむね、
C×V
imax - i min= C×V
2 − 5
1− 1
= C×V 2
5
3
= 10 C×V …
(μA)………(式 2 - 6)
( )
となります。
アルミニウム電解コンデンサの漏れ電流は温度が
上がれば増加します。おおむね20℃の時の漏れ電流
を1とすると65℃では2~3倍、85℃では3~5倍にな
ります。その他にも漏れ電流は印加電圧、放置等に
よりバラツキを生じますので漏れ電流バラツキ係数
を掛けて幾分余裕を持たせる必要があります。
2-5-3
バランス抵抗の設定例
基板自立形アルミニウム電解コンデンサ400V470
μFを周囲温度60℃中で2個直列にして使用する場合
のバランス抵抗の算出方法について下記に示しま
す。
常温に対する温度係数:2.0
電圧バランス率:10%
漏れ電流のバラツキ係数:1.4
とした場合。
2-6 保存性能
アルミニウム電解コンデンサを無負荷のまま長期
間放置すると、漏れ電流が増加する傾向があります。
漏れ電流が増加する原因は、陽極箔の酸化皮膜が電
解液と反応して、耐電圧の低下をきたすためですが、
電圧を印加すると電解液の修復作用により元のレベ
ルになります。漏れ電流が増加する度合いは、放置
中の温度が高いほど大きくなりますので保管場所
は、直射日光の当たらない常温、常湿の場所をお選
びください。長期間保管した製品を使用する場合は、
電圧処理を行なってください。電圧処理方法につい
ては、単品の場合約 1 kΩの抵抗を通して定格電圧
まで上昇させてから、そのまま30分程度印加してく
ださい。また、機器に組み込まれたものは、機器の
エージングをお願いいたします。機器のエージング
で、入力電圧および供給電源が調整できる場合には、
低い値(定格の1/2位)に設定して、10分間程度慣ら
し動作を行って、その後徐々に高い値に設定し、所
定の機能を確認しながら動作させてください。調整
できない場合には、スイッチを入れてから、30分程
度慣らし運転を行って、所定の機能が問題ないか確
認してください。その後、一旦スイッチを切って、
本格的な運転を行ってください。なお、通常の保存
温度5~35℃において、2年以内の放置であれば電圧
処理をせずにご使用いただけます。
室温で保存した場合の製品特性変化の一例を
(図 2 10)に示します。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
CAPACITANCE CHANGE(%)
記号
定格
25V 4700μF
400V 150μF
サイズ
φ22×25L
φ25×30L
温度
室温
室温
試験条件
無負荷放置
無負荷放置
10
0
-10
-20
-30
-40
10
tan δ
1
0.1
0.01
LEAKAGE CURRENT(μA)
1000
100
10
1
0.1
0
1
2
4
3
放置年数
図 2-10
2-7 再起電圧
アルミニウム電解コンデンサは検査後放電して出
荷しておりますが、一旦放電したにもかかわらず端
子間に電圧が現れます。この電圧を再起電圧もしく
は残留電圧と言います。コンデンサに電圧を印加す
ると誘電体の分極作用によって誘電体の表面に相対
して+-に帯電します。次に端子間を短絡すると表
面に帯電した電荷は放電し電荷を失いますが、端子
間を解放すると、誘電体の内部に分極して残ってい
た双極子が再び分極し端子間電圧として現れます。
これが再起電圧です。再起電圧は誘電体の厚さに関
係しますので、定格電圧が高いほど高くなります。
再起電圧が発生すると端子を回路に接続する際火花
が発生し作業者を驚かせたり、他の低電圧駆動素子
を破壊したりすることがあります。そのようなおそ
れがある場合は、ご使用される前に100Ω~1kΩ程
度の抵抗を有する抵抗器をコンデンサの端子間に接
触させ溜まった電荷を放電してからご使用されるよ
うお願いいたします。なお、高電圧で高容量のコン
デンサに対しては、アルミニウム箔や、導電性ゴム
で端子間が短絡状態になるような梱包方法も考えら
れますのでご相談ください。
2-8 高所で使用する場合
山岳地、航空機等高地で使用する機器にアルミニ
ウム電解コンデンサを使用する場合の注意事項につ
いて述べます。
高度が高くなると気圧は低下します。従ってコン
デンサを高所で使用すると、大気の圧力がコンデン
サの内圧より低くなります。アルミニウム電解コン
デンサは構造上、高度10,000m程度までの大気では
使用しても問題はありません。
しかし、高度が高くなると気温が低下します。ア
ルミニウム電解コンデンサは温度が下がると、静電
容量が減少し、損失は増加しますので温度に対する
電子機器の動作確認をお願いいたします。
表 2-3
高度
(m)
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
20,000
高度と気温、気圧の関係
気温
(℃)
15.0
2.0
- 11.0
- 24.0
- 37.0
- 50.0
- 56.5
気圧
(hPa)
1013.3
795.0
616.4
471.8
356.0
264.4
54.7
なお、詳細についてはお問い合わせください。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-9 寿命
2-9-1 緒言
保全を伴わない機器、部品の使用時間(t)と故障
率(λ)の関係は(図 2 - 11)に示すような形態を示し
ます。形態がバスタブ(西洋浴槽)に似ていることか
ら「バスタブ曲線」と呼ばれています。アルミニウム
電解コンデンサの故障もバスタブ形態となります。
アルミニウム電解コンデンサの寿命試験結果をワイ
ブル確率紙を用いて解析すると、
(図 2 - 12)
のように、
形状パラメータmが1より大きく、故障形態は摩耗
故障であることを示しています。
機器を設計するに当たり、故障率又は寿命時間を
用いますが、アルミニウム電解コンデンサの故障形
態は長期の寿命試験結果より一般的には摩耗故障形
となるため、故障率を寿命試験でとらえる時、同じ
総試験時間でも試験時間と試験数の組み合わせによ
って得られる数字が大きく変わってしまいます。
(例.100個×103時間・・・故障数=0、10個×104時間・・・
故障数=10)従って、アルミニウム電解コンデンサ
では故障率ではなく寿命に至る時間(実使用の場合、
故
障
率
λ
( )
2-9-2 評価方法
アルミニウム電解コンデンサは、静電容量変化
率・損失角の正接(tanδ)
・漏れ電流が規定の値を
超えたときおよび外観に著しい異常が発生した時を
寿命に達したと判定しております。アルミニウム電
解コンデンサの寿命に影響を与える要因は温度、湿
度、振動、等色々ありますが特に温度による要因が
大きく温度が高いほど寿命は短くなります。このこ
とから寿命試験はコンデンサに決められているカテ
ゴリ上限温度雰囲気中で直流電圧または直流電圧に
リプル電流を重畳して評価します。試験結果の一例
を(図2 - 13、2 - 14)に示します。
摩耗故障期間
時 間(t)
図 2-11 故障率曲線(バスタブ曲線)
定格 :400V 68μF
サイズ(mm)
:φ20×30L
試験温度 :105℃
寿命判定基準:tan δ>0.3
99
定格
200V 220μF
400V 68μF
サイズ
φ20×25L
φ20×30L
温度
105℃
105℃
試験条件
120HZ 1.00Arms+DC191V
120HZ 0.56Arms+DC384V
10
0
-10
-20
-30
-40
10
1
tan δ
偶発故障期間
CAPACITANCE CHANGE(%)
記号
初期故障期間
0.1
試験条件 形状パラメータ(m)平均寿命時間(h) プロット
11.7
9100
リプル印加
0.01
95
90
1000
LEAKAGE CURRENT(μA)
累積故障率(%)
推定寿命時間)で信頼性を考えることが一般的です。
アルミニウム電解コンデンサの寿命に影響を与える
主なファクターとして周囲温度による加速性(F T)
、
リプル電流による加速性(FI)
、印加電圧による加速
性(F U)があります。推定寿命は規定寿命(カタロ
グの耐久性)とF T、F IおよびF Uとの積で算出します。
アルミニウム電解コンデンサの寿命について以下に
述べます。
80
70
60
50
40
30
20
100
10
1
0.1
0
2000
4000
6000
8000
TIME(h)
10
図 2-13 高温負荷寿命試験データ
5
103
2
3
4
5
6 7 8 9104
時 間(h)
図 2-12 ワイブル確率紙による故障解析 アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
CAPACITANCE CHANGE(%)
記号
定格
50V 1000μF
16V 4700μF
サイズ
φ16×25L
φ16×31.5L
温度
105℃
105℃
試験条件
100kHZ 2235mArms+DC48V
100kHZ 3010mArms+DC15V
10
0
-10
-20
-30
2-9-4 印加電圧と寿命
アルミニウム電解コンデンサを定格電圧以下の電
圧で使用した場合の電圧が寿命に及ぼす度合は、周
囲温度およびリプル電流の寿命に及ぼす度合に比べ
て小さく、従って寿命を推定する際は印加電圧の寿
命係数(Fu)は1としております。試験結果の一例を
(図 2 - 16)に示します。
-40
10
記号
tan δ
CAPACITANCE CHANGE(%)
1
0.1
0.01
LEAKAGE CURRENT(μA)
10000
1000
定格
サイズ
50V 12000μF φ35×45L
50V 12000μF φ35×45L
50V 12000μF φ35×45L
温度
105℃
105℃
105℃
試験条件
DC 50V
DC 40V
DC 30V
10
0
-10
-20
-30
-40
10
100
1
tan δ
10
0
2000
4000
6000
8000
1
0.1
TIME(h)
図 2-14 高温負荷寿命試験データ
0.01
0
1000
2000
3000
4000
5000
TIME(h)
図 2-16 印加電圧を変えた場合の高温負荷特性
2-9-3 周囲温度と寿命
コンデンサ周囲温度(℃)
コンデンサのカテゴリ上限温度以下(一般に40℃
~カテゴリ上限温度の範囲以内)であればアレニウ
スの法則(熱エネルギーによる化学反応式)に従い
温度が10℃低くなると寿命はおおよそ2倍になると
いわれています。カテゴリ上限温度以下で使用した
場合の使用温度と推定寿命に関する早見表を(図 2 15)に示します。
105
100
95
90
85
80
75
70
65
60
55
50
45
時間(103h)
24h
稼働時間
(/日) 8h
e r
t
q 85℃ 2000時間保証品
w 85℃ 3000時間保証品
e105℃ 2000時間保証品
r105℃ 3000時間保証品
t105℃ 5000時間保証品
q w
2
5
なお、パワーエレクトロニクス機器の電源平滑用
に使用される高圧コンデンサにおいては、使用電圧
を下げるとコンデンサの漏れ電流が低下し電解液の
消費が少なくなり寿命が長くなる場合があります。
詳細につきましてはお問い合わせください。
10
20
100131
1年
3年 5年 10年 15年
3年
9年 15年
図 2-15 寿命推定早見表
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
表 2-4
2-9-5 リプル電流と寿命
アルミニウム電解コンデンサは、フィルムコンデ
ンサ等と比べると損失が大きく、リプル電流が流れ
るとワット損失による発熱が生じます。発熱はコン
デンサの温度上昇を伴うため寿命に大きく影響を与
えます。
1)リプル電流と発熱
直流電圧にリプル電流を重畳した時に、コンデン
サに発生するワット損失は
W=WAC+WDC
W=IAC2×Re+VDC×IDC ………(式 2 - 7)
W:コンデンサによる消費電力
(W)
WAC:リプル電流によって発生する
ワット損失
(W)
WDC:直流分によるワット損失
(W)
IAC:リプル電流
(A)
Re:コンデンサの損失
(等価直列抵抗)
VDC:直流電圧
(V)
IDC:漏れ電流
(A)
直流電圧が定格電圧以下であれば漏れ電流IDCは極め
て小さくWAC≫WDCとなることから、
2
W=IAC ×Re ………(式 2 - 8)
となります。
ワット損失による内部発熱とコンデンサ表面からの
放熱によって温度上昇が熱平衡に達すると
IAC2×Re=β×A×Δt ………(式 2 - 9)
IAC2×Re
Δt = ………(式 2 - 10)
β×A
β:放熱定数
(10-3W/℃ cm2)
A :表面積
(cm2)
製品のサイズがφD×L (cm)の時
ケース径
(mm) 5以下 6.3
8
10 12.5 16
β
2.18 2.16 2.13 2.10 2.05 2.00
α
1.0
0.94 0.90 0.85 0.80
18
20
22
25
30
35
40
1.96 1.93 1.88 1.84 1.75 1.66 1.58
0.77 0.75 0.74 0.71 0.67 0.64 0.62
α:温度上昇乗数 α=Δts/Δtc
β:放熱定数
(10-3W/℃ cm2)
2)リプル電流の周波数補正係数について
アルミニウム電解コンデンサの等価直列抵抗Re
は、周波数特性を持っています。周波数が高くなる
と等価直列抵抗は小さくなります。周波数foの時の
等価直列抵抗をRo、周波数fxの時の等価直列抵抗が
Rxの時、周波数foのリプル電流を流したときの温度
上昇が同じとなる電流は、
I02×R0=Iχ2×Rχ
0
∴Iχ= R
Rχ ×I0 ………(式 2 - 14)
即ち、 R0/Rχ が周波数補正係数K f となる。周波数
補正係数の一例を
(表 2 - 5)
に示します。
表 2-5
周波数
(Hz) 50
定格
電圧
(V)
16~100
また内部抵抗Re、静電容量C、損失角の正接
(tan
δ)
の関係が
tanδ
Re= ………(式 2 - 12)
ωC
但し、ω=2πf より、………(式 2 - 13)
IAC2×tanδ
IAC2×Re
Δt = β×A =
β×A×ωC
0.88
60
120
300
1k
0.90
1.00
1.07
1.15
1.15
1.15
1.32
1.45
1.50
1.30
1.41
1.43
160~250
0.81
0.85
1.00
1.17
315~450
0.77
0.82
1.00
1.16
10k 50k~
・リード線形コンデンサ(出力平滑用)
周波数
定格電圧 (μF) 周波数
(Hz) 50
(V)
静電容量
静電容量
π
A= D
4 (D+4L)………(式 2 - 11)
として求めたケース表面積
(cm2)
Δ
t:リプル温度上昇(℃)
周波数補正係数の例(個別規格による)
・基板自立形コンデンサ(入力平滑用)
6.3~100
120
300
1k
10k~
~56
0.20
0.30
0.50
0.80
1.00
68~330
0.55
0.65
0.75
0.85
1.00
390~1000
0.70
0.75
0.80
0.90
1.00
0.80
0.85
0.90
0.95
1.00
1200~
3)リプル電流の温度補正係数
カテゴリ上限温度以下で使用する場合に、流すこ
とができるリプル電流値は、素子中心部の温度上昇
の制限値以下でご使用ください。なお、各温度にお
ける素子中心部の発熱の限界値について一例を
(表 2 - 6)
に示します。
となります。
コンデンサのサイズ別放熱定数および温度上昇乗数
(素子中心温度上昇Δt cと表面温度上昇Δt sの比)
を
(表 2 - 4)
に示します。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
表 2-6
・高周波成分のリプル電流 IHはモデルeと考えて
各温度での素子中心温度上昇限界値の例
(定格電圧315V以上の基板自立形コンデンサ)
周囲温度
(℃)
Δ
t(
c ℃)
40
30
55
30
65
25
85
15
105
5
4)リプル電流波形から実効電流を求める方法
スイッチング電源やインバータ電源およびアクテ
ィブフィルタ回路のように商用周波数成分とキャリ
ア周波数成分が重畳されている場合の、観測した電
流波形を、形状モデルに近似させて実効値を求める
方法について下記に示します。
電流波形と実効値計算式を
(表 2 - 7)
に示します。
IH=IP×
t1
t
………(式 2 - 16)
となります。アルミニウム電解コンデンサの等価直
列抵抗Reは、周波数特性を持っていますので規定の
周波数と異なる場合には、規定の周波数に換算しま
す。低周波成分の周波数補正係数をK f L 、高周波分
の周波数補正係数をK f H とすると規定の周波数に換
算した合成リプル電流 Inは、
IL 2
IH 2
In = K f L + K f H ………(式 2 - 17)
( )( )
となります。
表 2-7 電流波形と実効値計算式
電流波形
q
5)
リプル電流から温度上昇を推定する方法
実効値計算式
Irms = IP
Ip
2
T1
Irms = IP T1
Ip
w
2T
T1
e
T
Irms = IP T1
Ip
T
T1
T
Irms = IP T1
Ip
r
3T
T1
T
入力平滑用コンデンサに流れる電流波形観測から商
用周波数によるリプル電流分IL、とキャリア周波数
によるリプル電流分IHが重畳した
(図 2 - 17)
のような
電流波形の実効値は周波数成分に分けて求めます。
(イ)
(ロ)
0
In 2
Δtn= I0 ×Δt 0 ………(式 2 - 18)
( )
として求めることが出来ます。105℃用基板自立形
コンデンサの温度上昇Δt0は約5℃です。しかしア
ルミニウム電解コンデンサの等価直列抵抗Reは温度
によって変化すること、リプル電流波形も実際には
複雑で高調波成分を多く含んでいることから熱電対
で実際に温度上昇を測定されることをお奨めいたし
ます。
2-9-6 推定寿命について
アルミニウム電解コンデンサの推定寿命は、2-9-1
で示したようにF T、F IおよびF Uの積で表します。大
形アルミニウム電解コンデンサと小形アルミニウム
電解コンデンサの算出方法を次に示します。なお、
詳細はお問い合わせください。
(大形)
Ip
(イ) 0
t
Ip
図 2-17
・低周波成分のリプル電流 ILはモデルwと考えて
T1
2T
1
Δtn
10 ×2 K
L n=L 0×2 t1
(ロ) 0
大形アルミニウム電解コンデンサの推定寿命算出
式を(式2-19)に示します。なお、ネジ端子形アル
ミニウム電解コンデンサについては別途お問い合わ
せください。
T0-Tn
T1
T
IL =IP×
ワット損失はリプル電流の2乗に比例することか
ら、定格リプル電流 I0(A)
を流したときの素子中心
部の温度上昇をΔt0とすると、リプル電流 In(A)
を
流したときの温度上昇Δtnは
………(式 2 - 15)
( )
In 2
Δt n= Δt 0× Im
…(式 2 - 19)
Ln:コンデンサの周囲温度Tn(℃)でリプル電流
In
(Arms)を印加したときの推定寿命時間(h)
L o:カテゴリ上限温度 T0(℃)
で定格リプル電流 Im
(Arms)を印加した時の寿命時間
(h)
T o:コンデンサのカテゴリ上限温度(℃)
Tn:コンデンサの周囲温度(℃)
to:温度 T0(℃)で定格リプル電流 I m(Arms)
を印
加したときのコンデンサの内部温度上昇(℃)
Δtn:周囲温度 Tn(℃)
でリプル電流 In
(Arms)を印
加した時のコンデンサの内部温度上昇(℃)
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
K:リプル温度上昇加速係数[以下の図参照:カテ
ゴリ上限温度 T0(℃)以下の温度の係数を適用]
※ な お 、 基 本 式 は 原 則 と し て 、 周 囲 温 度 T nが +
40℃からコンデンサのカテゴリ上限温度 T0までの
範囲に適用。また、上式で求められる推定寿命は、
一般には15年程度を上限の目安としております。
100
10
1
50
60
70
80
90
100
110
同じ周波数の許容値を算出し、Imとする。
I n: 周 囲 温 度 T n
( ℃ )で の 使 用 リ プ ル 電 流
(Arms)
Bn: 周 囲 温 度 T n( ℃ )で 使 用 リ プ ル 電 流 I n
(Arms)
を印加時のリプル加速係数
α :寿命定数
寿命定数についてはお問い合せください。
備考
推定寿命の算出式は、高温下での寿命試験
結果を基本とした実験式であり、算出され
た値は参考値としてお取り扱いください。
また、予測寿命式で導かれた値は保証値で
はありませんので、適用にあたっては、十
分テストの上ご判断願います。なお、算出
された寿命時間が15年を超える場合は15年
とします。
周囲温度 Tn(℃)
図 2-18 リプル温度上昇加速係数 K
(小形)
小形アルミニウム電解コンデンサの推定寿命算出
式は、耐久性の規定によって2方法があります。そ
れぞれの推定寿命算出式を(式2-20)および(式221)に示します。
(1)直流定格電圧印加品(耐久性で定格直流電圧を
印加し、リプル電流を重畳しない)
T -Tn
1
10
L n=L×2 × ………(式2 - 2 0 )
Bn
0
ここで
Bn=2
In 2
) ×2
α× ( Im
-Tn
- ( T )
0
30
(2)リプル電流印加品(耐久性で直流電流を加え、
リプル電流を重畳する)
α 1– (
{
×2 ×2 L n=L o
T0-Tn
10
T0-Tn
10
– T0-Tn
0
}
………(式 2 - 2 1 )
(式2-20)
、
(式2-21)
において
2
-Tn
( T )
) ×2 – 30
In 2
Im
T0-40
10
はTn(℃)≦40の時:2 としてください。
– T0-50
( ( )としてください。
30 )はTn(℃)≦50の時:
30
2 2 Ln:周囲温度 Tn
(℃)
でリプル電流 In
(Arms)
を
印加した時の寿命時間
(h)
L :カテゴリ上限温度 T(℃)
で定格直流電圧を
印加した時の寿命時間
(h)
L0:カテゴリ上限温度T(℃)
で定格リプル電流
Im(Arms)
を印加した時の寿命時間
(h)
T0:コンデンサのカテゴリ上限温度(℃)
Tn:コンデンサの周囲温度 (℃)
Im:カテゴリ上限温度 T(℃)
での定格リプル電
流(Arms)
Imはカタログ記載の定格リプル電流の周
波数補正係数を用いて、使用リプル電流と
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-10 ハロゲンの影響
2-10-1 緒言
アルミニウム電解コンデンサの内部にハロゲン化
物が浸入すると
ハロゲン化物の分解
R X + H2O → ROH + H+ + X-
ここでX-:ハロゲンイオン
電蝕反応 Al + 3X- → AlX3 + 3e-
+
-
AlX3 + 3H2O → Al(OH)
3 + 3H + 3X
この電蝕反応の繰り返しによって漏れ電流が増加
し、コンデンサの圧力弁の作動、オープン不良に至
る場合があります。このためハロゲン系の洗浄剤や、
基板への固定剤、コーティング剤の使用は望ましくな
く、ご使用をさけてください。ここでは、推奨する基
板洗浄方法および固定剤、コーティングを使用する
場合の選定のお願いについて記します。なお、洗浄
能力の関係でハロゲン系溶剤をやむえず使用しなけ
ればならない場合のお願いを2 - 10 - 3項に記します。
2-10-2 洗浄
洗浄方法
対 象:全品種、全定格
アルコール系洗浄剤
イソプロピルアルコール
水系洗浄剤
高級アルコール系
パインアルファST-100S(荒川化学工業)
ニューポールB -12(三洋化成工業)
界面活性剤系
クリンスルー750HS、750HN、750K、750J(花王)
洗浄条件:浸漬、超音波などの方法で洗浄時間の合
計が5分以内とする。
( 洗浄液温度は60℃
以下)
洗浄後コンデンサを実装済プリント配線
板とともに熱風で10分以上乾燥させてく
ださい。また、洗浄液がケースとスリー
ブ間に侵入した場合、熱風の温度が高す
ぎるとスリーブが軟化し、膨張すること
がありますので、熱風の温度はスリーブ
の軟化温度(80℃)を超えないようにし
てください。
なお、水すすぎ後の乾燥が不十分な場合
は、スリーブの二次収縮、底板の膨らみ
などの外観上の不具合を起こす場合があ
りますのでご注意ください。
また、洗浄剤の汚染管理(電導度、pH、
比重、水分量など)をしてください。洗
浄後、洗浄液の雰囲気中または密閉容器
での保管はしないでください。
なお、ジェット噴射洗浄の場合は、噴射
の角度や強さによってスリーブが膨張す
ることがあるためご注意ください。その
他洗浄方法によっては、製品表示消え、
表示のにじみ等発生する場合があります。
HCFC代替フロンは将来的に使用できなくなり、
また、地球環境の見地からも洗浄剤としての使用は
推奨致しません。
代替フロンで洗浄する必要がある場合は、下記の
条件範囲で洗浄することができます。
対 象:耐洗浄品
(カタログ記載)
洗 浄 剤:AK-225AES
洗浄条件:浸漬、蒸気、超音波、スプレーなどの方
法で洗浄時間の合計が5分以内。ただし、
面実装チップ品および超小形品の洗浄時
間は2分以内。
(溶剤温度40℃以下)
注意条件:洗浄剤の汚染管理(電導度、pH、比重、
水分量など)をしてください。洗浄後、
洗浄液の雰囲気中または密閉容器での保
管はしないでください。
推奨洗浄方法と異なる洗浄剤、洗浄方法については
必ずお問い合せください。
2-10-3 固定剤、コーティング剤
(1)
ハロゲン系溶剤などを含有する固定剤、コーテ
ィング剤は使用しないでください。
(2)
固定剤・コーティング剤を使用する前に、基板
とコンデンサの封口部間にフラックス残渣、お
よび汚れが残らないようにしてください。
(3)
固定剤・コーティング剤を使用する前に、洗浄
剤などを乾燥させてください。
(4)
固定剤・コーティング剤を使用する場合は、コ
ンデンサの封口部の全面をふさがないでくださ
い。
固定剤・コーティング剤は多種にわたりますので、
ご使用にあたり詳細はお問い合わせください。
2-10-4 その他
燻蒸処理について
輸出時の防虫対策などで、 臭化メチルなどのハ
ロゲン化合物で燻蒸処理をする場合があります。
アルミニウム電解コンデンサおよびアルミニウム
電解コンデンサを組込んだ機器を、直接燻蒸または
燻蒸処理をした木材をパレットに使用した場合に
は、燻蒸剤に含まれるハロゲンによって、コンデン
サ内部での腐食反応を起こすことがあります。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-11 CR時定数
Vc=V×e
2-11-1 緒言
アルミニウム電解コンデンサを利用したタイマー
回路、保持時間を検討する場合のCR時定数と使用
上の注意事項について下記に示します。
(図 2 - 19)の回路において、電源電圧 Vで抵抗Rを
通してコンデンサCを充電するときのコンデンサの
端子電圧について考察します。
(初期 t = 0 の時、コ
ンデンサの電荷は零とする。
)
充電開始とともに、コンデンサの両端電圧は、
(式
2 - 20)に従って上昇する。
(式 2 - 22)より、規定の電
圧Vnに到達するまでの時間 t nは、
(式 2 - 23)となり
ます。
R
Vc
V
C
図 2-19
t
CR
Vc=V
(1-e )
………(式 2 - 22)
V
tn=CRln V-V
n
( ) ………(式 2 - 23)
ここで
………(式 2 - 24)
tn=CR dln VVn
( )………(式 2 - 25)
ここで
2-11-2 充電回路
t
− CR
d
Rd:放電抵抗
(Ω)
C:コンデンサ容量
(F)
V:電源電圧
(V)
2-11-4 コンデンサの漏れ抵抗
コンデンサに直流電圧を印加すると、漏れ電流が
流れます。特にアルミニウム電解コンデンサは他の
コンデンサに比べて漏れ電流が大きく、また、温度、
印加電圧、印加時間によって漏れ電流が変化します。
等価回路で考えると、漏れ電流はコンデンサに並列
に接続した抵抗
(漏れ抵抗)
と考えることができます。
漏れ電流は充電時の電力損、放電時の自己放電とな
り2 - 11- 2 、2 - 11- 3 で示した理論式に対する誤差とな
ります。充電時の時定数は理論式より大きく、放電
時の時定数は小さくなります。
アルミニウム電解コンデンサを時定数回路に使用
する場合は、電子機器の使用温度範囲において要求
精度を満たすか充分に確認して選定いただくようお
願いします。
R:直列抵抗
(Ω)
C:コンデンサ容量
(F)
V:電源電圧
(V)
2-11-3 放電回路
(図 2 - 20)の回路においてスイッチSWを1側に倒
しコンデンサCを電源電圧 Vまで充電した後、スイ
ッチSWを2側に倒し抵抗 Rdで放電した場合の放電
時間(t)とコンデンサの端子電圧Vc(V)の関係は
(式 2 - 24)となります。
(式 2 - 24)より、放電後コン
デンサの端子電圧 Vc(V)がV n(V)となるまでの時
間tn
(s)
は、
(式 2 - 25)のようになります。
R
SW
1 2
V
C
R
Rd
SW
1 2
V
Vc
C
Rd
図 2-20
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
2-12 製品選定のポイント
2-12-1 緒言
(2)電源出力平滑用回路
アルミニウム電解コンデンサは電源の平滑回路用
として最も一般的に用いられているコンデンサで
す。その理由は、他のコンデンサと比較して体積あ
たりの容量が大きいこと、容量あたりの価格が安い
ことによるものです。
電源市場では電子機器の小形軽量化、高効率化、
高周波化、高信頼化、また最近は薄形化と生産の自
動化の要求とあいまって表面実装化が進んでおりま
す。さらにPL法(Product Liability=製造物責任法)
が施行され、今まで以上に安全性が重視されていま
す。このため、電源に用いられるアルミニウム電解
コンデンサに対しても小形・軽量・薄形・長寿命・
チップ化、安全性が求められています。それらの内
容をふまえアルミニウム電解コンデンサを上手にご
使用いただくポイントについて、下記に示します。
出力平滑用コンデンサは、安定した出力電圧を得
るために重要なコンデンサです。電源変換周波数が
高まるなか高周波領域でインピーダンス、等価直列
抵抗
(ESR)
の低いコンデンサが必要となっています。
また、小形のスイッチング電源、DC-DCコンバータ
電源には、表面実装部品が多く用いられております。
出力平滑用に用いられるリード線形アルミニウム電
解コンデンサのシリーズマトリクスを(表 2 - 9)に、
また表面実装タイプのシリーズマトリクスを(表 2 10)に示します。
表 2-9
形状
特長
リード線形コンデンサのシリーズマトリクス
標準品 105℃品 125℃品 両極性品
5mmL品
MA
MT
−
MP
MF
MV
7mmL品
SA,SR
ST
−
SP
SF
SV
VY,RZ
BT
VP
PA, PW
TT
11mmL∼品 VK,RS
2-12-2 アルミニウム電解コンデンサのシリーズと特長
(1)電源入力平滑回路用
電源入力平滑用コンデンサは、ダイオードの後段
に位置し、ダイオードで整流した脈流を平滑する役
割を担っており、特に高リプル、高信頼性、および
安全性が要求されます。基板自立形コンデンサのシ
リーズマトリクスを
(表 2 - 8)
に示します。
表 2-8
基板自立形コンデンサのシリーズマトリクス
85℃品
特長
105℃品
異常電圧
対応品
標準品
小形化品
標準品
小形化品 長寿命品
標準品
LS
LG
GU,GN
GG,GL GY,GX,GR AK,AQ
薄形品
−
−
GJ
形状
GJ(15)
−
−
105℃用コンデンサでは、GUシリーズを基準とし
て、小形化の要求に対しては、GG, GLシリーズを、
薄形化の要求に対してはGJシリーズをお奨めしま
す。さらに高信頼性の要求に対しては、5000時間保
証小形化品のGY, GXシリーズ、10,000時間保証の
GRシリーズをお奨めします。また、過電圧が加わ
ったとき、その過電圧が一定範囲であればショート
状態を起こさず弁作動する(発火の危険がない)仕
様と構造を特長とするAK , AQシリーズがあります。
24時間連続通電状態で用いられるファクシミリや複
写機など情報通信機器用としてお奨め致します。
低インピーダンス 長寿命品
品
(105℃5000h)
表 2 - 10
形状
表面実装形コンデンサのシリーズマトリクス
特長
標準品 105℃品 125℃品 両極性品 低インピーダンス 長寿命品
3.0mmL品
ZD
−
−
−
−
−
3.95mmL品
ZR
ZG
−
ZE
−
−
4.5mmL品
ZS
ZT
−
ZP
−
−
5.5mmL品
WX
WT
−
WP
WF,WG
−
5.8mmL∼品
UR
UT
UB
UP
大サイズ品
UG
UJ,CD
UE
UN
CD
UL
UJ
スイッチング電源の出力平滑回路用リード線形コ
ンデンサとしては、PWシリーズを基準として小形
化の要求に対しては、SFシリーズ(製品高さ7mm)
、
MFシリーズ(製品高さ5 mm)
、低インピーダンスで
小形化の要求に対してはPAシリーズをお奨めしま
す。また面実装品としてWTシリーズを標準に、低
背化したZT、ZGシリーズ、低インピーダンスのCD
シリーズ、また高電圧・大容量のUX、U Jシリーズな
どを揃えています。
(3)制御回路用
制御回路に用いられるコンデンサは、電子機器の
小形化、高容量化、高密度実装化などから周囲温度
が高くなり、発熱部品の近くに配置した為に故障を
起こす場合があります。当社は制御回路用コンデン
サとして、105℃仕様のVYシリーズ(小形化品)
、TT
シリーズ(長寿命品)
、SVシリーズ(製品高さ7mm)
、
MV(製品高さ5 mm)などを取りそろえております。
詳しくは当社最新のカタログをご参照ください。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G
アルミニウム電解コンデンサのご使用上の注意事項
電子機器の小形化・高容量化、高密度実装化に伴
い、コンデンサの周囲温度は高くなってきています。
しかも連続運転されるものも多く、いちだんの高信
頼性、長寿命化が求められています。アルミニウム
電解コンデンサの寿命は、周囲温度が高くなるほど
短くなります。アルミニウム電解コンデンサの長寿
命化のために次のようなご配慮をお願いいたしま
す。
qコンデンサの周辺およびプリント配線板の裏面
(コンデンサの下)への発熱部品の配置は避け
てください。
w放熱ファン等により、電子機器内部の熱を積極
的に筐体外部へ放出してください。
e筐体に適当な穴を開け、電子機器内部の温度を
下げると共に、穴から取り入れた外気でコン
デンサが冷却されるように配置してください。
r特に両面回路基板を用いた電子機器で、パワー
モジュール・発熱部品に近接して取り付ける
と、回路基板のパターンから高熱を受ける場
合が有ります。消費電力の大きな電源に使用
される場合にはご注意ください。
t電子機器の内部は上部ほど高温になっていま
す。機器使用状態でコンデンサの取り付け位
置はできるだけ下方にくるよう配置してくだ
さい。特に立てて使用する電子機器の場合に
ご配慮ください。
2-12-5 表面実装用
(チップ形アルミニウム電解コンデンサ)
チップ形アルミニウム電解コンデンサは、リード
線形コンデンサを表面実装用として、基板にリフロ
ーはんだ付けする際、安定性、はんだ付け性、耐熱
性をよくするため、リード線を偏平加工し、熱に強
い座板を取り付けた縦形チップタイプが主流です。
当社は縦形チップアルミニウム電解コンデンサと
して、ケースサイズφ3 , 4 , 5 , 6.3, 8 , 10mmで定格電
圧 4V~500V 静 電 容 量 0.1μF~2200μFと、ケース
サイズφ12.5, 16, 18, 20 mmで定格電圧 6.3 V~450V、
静電容量3.3μF~10000μFを取りそろえ広範囲をカ
バーしております。チップ形アルミニウム電解コン
デンサの外観を(図 2 - 21)に示します。なお、詳細
は当社カタログをご参照ください。
(表示例)
φ3∼φ10
N2
33C
WZ
2-12-3 高密度実装と長寿命化の留意点
(1)取り付け・配置
φ12.5∼φ20
図 2 - 21
2-12-4 突入電流と放電抵抗
コンデンサインプット形電源では、電源入力投入
時にコンデンサを充電するピーク電流(突入電流)
が流れます。突入電流は入力投入時のタイミングや
回路方式によって異なりますが、定常電流の数十倍
になることがあります。一日数回程度の繰り返しで
あれば問題ありませんが、頻繁に電源の投入・遮断
を繰り返す場合、および投入時に発生する電磁ノイ
ズが機器に支障をおよぼす場合には、入力側の回路
にインダクタンス又はアクティブフィルタを追加さ
れることをお奨めします。また電源を遮断した際自
動的にコンデンサを放電する回路方式の場合には、
1kΩ以上の放電抵抗で放電されるようお願いしま
す。
アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G