電流モード・スイッチング・レギュレータ・コントローラ

LT3724
高電圧、電流モード・
スイッチング・レギュレータ・コントローラ
特長
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
概要
広い入力範囲:4V∼60V
出力電圧:最大36V
(降圧)
Burst Mode®動作:100μA以下の消費電流
シャットダウン時の消費電流:10μA
±1.3%のリファレンス精度
200kHzの固定周波数
NチャネルMOSFETをドライブ
プログラム可能なソフトスタート
プログラム可能な低電圧ロックアウト
ゲートドライブ用の高電圧レギュレータを内蔵
サーマル・シャットダウン
デューティサイクルの影響を受けない電流制限
熱特性が改善された16ピンTSSOPパッケージ
LT ® 3724は、部品数の少ない、中電力、低コスト、高効率の
電源に使用されるDC/DCコンバータです。入力電圧範囲が
4V∼60V(最小起動電圧は7.5V)
と広く、降圧、昇圧、反転、
SEPIC構成が可能です。
LT3724はBurst Mode動作が可能なので、消費電流を100μA
以下に低減し、軽負荷時に高効率を維持します。
また、
内蔵の
高電圧バイアス・レギュレータによってシンプルなバイアスが
可能な上、
このバイアス・レギュレータを出力からドライブして
効率を向上させることができます。
この他に、固定周波数電流モード制御による高速の入力お
よび負荷過渡応答、大型NチャネルMOSFETをドライブ可能
なゲートドライバ、高精度の低電圧ロックアウト機能、10μAの
シャットダウン電流、短絡保護、起動時に出力電圧のスルー
レートを直接制御することで突入電流を制限し、オーバー
シュートを最小限に抑え、電源シーケンシングを容易にするプ
ログラム可能なソフトスタートなどの機能を備えています。
アプリケーション
産業用配電
■ 12Vおよび42Vの車載機器および重機
■ 高電圧シングルボード・システム
■ 配電システム
■ アビオニクス
■ テレコム電源
■
L、LT、LTC、LTM、Linear TechnologyおよびLinearのロゴはリニアテクノロジー社の登録商標
です。Burst Modeはリニアテクノロジー社の商標です。
その他すべての商標の所有権は、
それぞ
れの所有者に帰属します。5731694、6498466、6611131を含む米国特許によって保護されてい
ます。
標準的応用例
高電圧降圧レギュレータ
VIN
30V TO
60V
CIN
68µF
12
95
VIN
BOOST
68.1k
Burst_EN
VFB
40.2k
4.99k
1000pF
EFFICIENCY
Si7852
0.025Ω
10Ω
47µH
+
SS3H9
CSS
200k
120pF
SW
VCC
1µF
PGND
VC
SENSE+
SGND
SENSE–
10
90
0.22µF
VOUT
24V
75W
COUT
330µF
85
8
80
6
4
75
LOSS
70
POWER LOSS (W)
LT3724
SHDN
TG
EFFICIENCY (%)
1M
680pF
効率および電力損失と
負荷電流
2
VIN = 48V
65
93.1k
3724 TA01a
0.1
1
LOAD CURRENT (A)
0
10
3724 TA01b
3724fd
1
LT3724
絶対最大定格
ピン配置
(Note 1)
入力電源電圧(VIN)............................................... 65V~−0.3V
昇圧式電源電圧(BOOST).................................... 80V~−0.3V
スイッチ電圧(SW)
(Note 8)..................................... 65V~−1V
差動昇圧電圧
(BOOSTからSW)............................................... 24V~−0.3V
バイアス電源電圧(VCC)....................................... 24V~−0.3V
SENSE+とSENSE−の電圧 ...................................... 40V~−0.3V
差動センス電圧
(SENSE+からSENSE−)........................................... 1V~−1V
BURST_EN電圧 ...................................................... 24V~−0.3V
VC、VFB、CSS、SHDNの電圧 ....................................... 5V~−0.3V
CSSとSHDNピンの電流 ....................................................... 1mA
動作接合部温度範囲(Note 2、
3)
LT3724E ..........................................................−40℃~125℃
LT3724I ...........................................................−40℃~125℃
LT3724MP .......................................................−55℃~125℃
保存温度............................................................−65℃~150℃
リード温度(半田付け、10秒).......................................... 300℃
TOP VIEW
VIN
1
16 BOOST
NC
2
15 TG
SHDN
3
14 SW
CSS
4
BURST_EN
5
VFB
6
11 PGND
VC
7
10 SENSE+
SGND
8
9
17
13 NC
12 VCC
SENSE–
FE PACKAGE
16-LEAD PLASTIC TSSOP
TJMAX = 125°C, θJA = 40°C/W, θJC = 10°C/W
EXPOSED PAD IS SGND (PIN 17), MUST BE SOLDERED TO PCB
発注情報
鉛フリー仕様
テープアンドリール
製品マーキング
パッケージ
温度範囲
LT3724EFE#PBF
LT3724EFE#TRPBF
3724EFE
16-Lead Plastic TSSOP
–40°C to 125°C
LT3724IFE#PBF
LT3724IFE#TRPBF
3724IFE
16-Lead Plastic TSSOP
–40°C to 125°C
鉛ベース仕様
テープアンドリール
製品マーキング
パッケージ
温度範囲
LT3724MPFE
LT3724MPFE#TR
3724MPFE
16-Lead Plastic TSSOP
–55°C to 125°C
さらに広い動作温度範囲で規定されるデバイスについては、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。
非標準の鉛ベース仕様の製品の詳細については、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。
鉛フリー仕様の製品マーキングの詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/leadfree/ をご覧ください。
テープアンドリールの仕様の詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/tapeandreel/ をご覧ください。
電気的特性
●は全動作温度範囲の規格値を意味する。
それ以外はTA = 25℃での値。注記のない限りVIN = 20V、VCC = BOOST = BURST_EN = 10V、
SENSE­ = SENSE+ = 10V、
SGND = PGND = SW = 0V。
SHDN = 2V、
SYMBOL
PARAMETER
VIN
Operating Voltage Range (Note 4)
Minimum Start Voltage
UVLO Threshold (Falling)
UVLO Threshold Hysteresis
IVIN
VIN Supply Current
VIN Burst Mode Current
VIN Shutdown Current
CONDITIONS
MIN
l
l
l
VCC > 9V
VBURST_EN = 0V, VFB = 1.35V
VSHDN = 0V
4
7.5
3.65
TYP
MAX
60
3.8
670
20
20
10
3.95
15
UNITS
V
V
V
mV
µA
µA
µA
3724fd
2
LT3724
電気的特性
●は全動作温度範囲の規格値を意味する。
それ以外はTA = 25℃での値。注記のない限りVIN = 20V、VCC = BOOST = BURST_EN = 10V、
SENSE­ = SENSE+ = 10V、
SGND = PGND = SW = 0V。
SHDN = 2V、
SYMBOL
PARAMETER
CONDITIONS
VBOOST
Operating Voltage Range
Operating Voltage Range (Note 5)
UVLO Threshold (Rising)
UVLO Threshold Hysteresis
VBOOST - VSW
VBOOST - VSW
VBOOST - VSW
IBOOST
BOOST Supply Current (Note 6)
BOOST Burst Mode Current
BOOST Shutdown Current
VBURST_EN = 0V
VSHDN = 0V
VCC
Operating Voltage Range (Note 5)
Output Voltage
UVLO Threshold (Rising)
UVLO Threshold Hysteresis
IVCC
VCC Supply Current (Note 6)
VCC Burst Mode Current
VCC Shutdown Current
Short-Circuit Current
VBURST_EN = 0V
VSHDN = 0V
VFB
Error Amp Reference Voltage
Measured at VFB Pin
IFB
Feedback Input Current
VSHDN
Enable Threshold (Rising)
Threshold Hysteresis
VSENSE
Common Mode Range
Current Limit Sense Voltage
ISENSE
Input Current
(ISENSE+ + ISENSE–)
fSW
Operating Frequency
Over Full Line and Load Range
MIN
TYP
l
l
5
400
MAX
75
20
1.4
0.1
0.1
l
l
20
8.3
V
V
V
mV
1.7
80
20
–55
2.1
mA
µA
µA
mA
1.238
1.245
8
6.25
500
l
l
–30
l
1.224
1.215
1.231
l
1.3
1.35
120
l
l
0
140
VSENSE(CM) = 0V
VSENSE(CM) = 2.5V
VSENSE(CM) > 4V
MP Grade
150
190
175
165
200
200
V
V
nA
1.4
V
mV
36
175
V
mV
400
2
–150
l
l
V
V
V
mV
mA
µA
µA
25
VSENSE+ – VSENSE–
UNITS
µA
µA
µA
210
220
225
kHz
kHz
kHz
VFB(SS)
Soft-Start Disable Voltage
Soft-Start Disable Hysteresis
ISS
Soft-Start Capacitor Control Current
gm
Error Amp Transconductance
AV
Error Amp DC Voltage Gain
VC
Error Amp Output Range
1.2
V
IVC
Error Amp Sink/Source Current
±30
µA
VTG
Gate Drive Output On Voltage (Note 7) CLOAD = 3300pF
Gate Drive Output Off Voltage
CLOAD = 3300pF
9.8
0.1
V
V
tTG
Gate Drive Rise/Fall Time
60
ns
tTG(OFF)
Minimum Switch Off Time
tTG(ON)
Minimum Switch On Time
ISW
SW Pin Sink Current
VFB Rising
l
275
1.185
300
V
mV
2
µA
340
400
62
Zero Current to Current Limit
10% to 90% or 90% to 10%, CLOAD = 3300pF
dB
350
l
VSW = 2V
300
300
µmhos
ns
500
ns
mA
3724fd
3
LT3724
電気的特性
Note 1:絶対最大定格に記載された値を超すストレスはデバイスに永続的損傷を与える可能
性がある。長期にわたって絶対最大定格条件にさらすと、
デバイスの信頼性と寿命に悪影響
を与える可能性がある。
Note 4:VIN電圧が起動時スレッショルド
(7.5V)未満の場合は、VCCが6.5V超で外部からドライ
ブされる場合のみサポートされる。
Note 5:動作範囲はMOSFETのVGSの絶対最大値によって決まる。
Note 2:LT3724には短時間の過負荷状態の間デバイスを保護するための過熱保護機能が備
わっている。過熱保護機能がアクティブなとき接合部温度は125℃を超える。規定された最高
動作接合温度を超えた動作が継続すると、
デバイスの信頼性を損なう恐れがある。
Note 6:電源電流の規定値にはスイッチ・ドライブ電流は含まれない。
実電源電流はこれより
Note 3:LT3724Eは0℃~125℃の接合部温度範囲で性能仕様に適合することが保証されてい
る。−40℃~125℃の動作接合部温度範囲での仕様は設計、特性評価および統計学的なプロ
セス・コントロールとの相関で確認されている。LT3724Iは−40℃~125℃の動作接合部温度範
囲における動作が保証されている。LT3724MPは100%テスト済みで、−55℃~125℃の動作接
合部温度範囲における動作が保証されている。
Note 7:ゲートドライブ出力の
「オン」電圧の直流測定値は標準で8.6Vである。内部のダイナ
ミック・ブートストラップ動作では標準スイッチング動作中に9.8Vのゲート
「オン」標準電圧が
発生する。標準動作のゲート
「オン」電圧はテストされていないが、設計で保証されている。
大きくなる。
Note 8:SWピンの絶対最大定格−1Vは過渡条件である。
これは設計で保証されているが、
テス
トされていない。
標準的性能特性
シャットダウン・スレッショルド
(立ち上がり)
と温度
シャットダウン・スレッショルド
(立ち下がり)
と温度
1.37
1.36
1.35
1.34
1.33
1.32
–50 –25
0
25
50
75
TEMPERATURE (°C)
100
125
8.2
1.25
8.1
1.23
1.22
0
25
50
75
TEMPERATURE (°C)
7.5
–50 –25
125
70
ICC = 20mA
TA = 25°C
ICC CURRENT LIMIT (mA)
8
7
VCC (V)
6
5
4
7.6
0
5
10
15
20
25
30
35
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
VIN (V)
ICC (LOAD) (mA)
3724 G04
3724 G05
100
125
3724 G03
9
TA = 25°C
7.7
0
25
50
75
TEMPERATURE (°C)
3724 G02
8.0
VCC (V)
100
VCCとVIN
7.8
7.8
7.6
1.20
–50 –25
VCCとICC(LOAD)
7.9
7.9
7.7
1.21
8.2
8.1
ICC = 20mA
8.0
1.24
3724 G01
7.5
VCCと温度
1.26
VCC (V)
SHUTDOWN THRESHOLD, FALLING (V)
SHUTDOWN THRESHOLD, RISING (V)
1.38
ICC電流制限と温度
60
50
40
30
20
–50 –25
0
25
50
75
TEMPERATURE (°C)
100
125
3724 G06
3724fd
4
LT3724
標準的性能特性
ICCとVCC
(SHDN = 0V)
25
6.4
20
6.3
15
6.2
6.1
TA = 25°C
10
5
6.0
–50 –25
0
25
50
75
TEMPERATURE (°C)
100
0
125
0
2
4
6
8
230
動作周波数と温度
0
–100
–200
0
210
200
190
180
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
146
144
142
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
100
125
125
3724 G13
誤差アンプ基準電圧と温度
1.231
1.230
1.229
1.227
–50 –25
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
100
125
3724 G12
VIN UVLOスレッショルド
(立ち下がり)
と温度
3.86
4.52
3.84
4.50
3.82
4.48
4.46
3.80
4.44
3.78
4.42
4.40
–50 –25
125
VIN UVLO THRESHOLD, FALLING (V)
VIN UVLO THRESHOLD, RISING (V)
CURRENT SENSE THRESHOLD (mV)
148
140
–50 –25
100
4.54
150
100
1.232
VIN UVLOスレッショルド
(立ち上がり)
と温度
160
152
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
3724 G11
最大電流センス・スレッショルドと
温度
154
320
–50 –25
1.228
3724 G10
156
325
1.233
220
170
–50 –25
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0
VSENSE (CM) (V)
158
330
1.234
ERROR AMP REFERENCE (V)
OPERATING FREQUENCY (kHz)
I(SENSE+ + SENSE–) (µA)
100
335
3724 G09
TA = 25°C
200
340
3724 G08
I SENSE++SENSE­)
とVSENSE(CM)
(
300
誤差アンプ相互コンダクタンスと
温度
345
10 12 14 16 18 20
VCC (V)
3724 G07
400
350
ERROR AMP TRANSCONDUCTANCE (µMhos)
6.5
ICC (µA)
VCC UVLO THRESHOLD, RISING (V)
VCC UVLOスレッショルド
(立ち上がり)
と温度
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
100
125
3724 G14
3.76
–50 –25
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
100
125
3724 G15
3724fd
5
LT3724
ピン機能
VIN
(ピン1)
:主電源ピン。
ピンの近くに配置した低ESRのコン
デンサで、SGNDピンにデカップリングする必要があります。
NC
(ピン2)
:接続なし。
SHDN
(ピン3)
:1.35V(立ち上がり)、
ヒステリシス120mVの高
精度なICイネーブル・スレッショルドを持つピン。低電圧ロック
アウト
(UVLO)回路の実装に使われます。
「アプリケーション
情報」
のUVLO機能実現についてのセクションをご参照くだ
さい。SHDNピンがトランジスタのVBE(0.7V)
より低く引き下
げられると、低電流シャットダウン・モードが起動し、
内部回路
がすべてディスエーブルされ、VIN電源電流が約10μAになりま
す。
ピン入力バイアス電流の標準値は10μAより小さく、
ピンは
内部で6Vに固定されています。
C SS(ピン4 )
:ソフトスタート・ピン。電源ソフトスタート機能の
設定に使用します。
このピンはセラミック・コンデンサ
(CSS)
と
200kΩの直列抵抗を挟んでVOUTに接続されます。起動中、電
源出力電圧のスルーレートは、
ソフトスタートのカップリング・
コンデンサを通して平均で2μAの電流を出力するように制御
されます。特定の出力電圧スルーレートにおけるCSSは、次式
から計算します。
CSS = 2μA(tSS/VOUT)
出力電圧の起動時立ち上がり時間の設定については、
アプリ
ケーションのセクションをご参照ください。
このピンをSGND
に短絡させるとソフトスタート機能はディスエーブルになりま
す。
BURST_EN
(ピン5)
:Burst Mode動作のイネーブル/ディスエー
ブルを決めるピン。Burst Mode機能はこのピンをグランドに接
続するとイネーブルになり、VCCに接続するとディスエーブルに
なります。
VFB
(ピン6)
:出力電圧帰還ピン。抵抗分割器を介して出力電
源電圧に外部で接続されています。VFBピンは内部で誤差ア
ンプの反転入力に接続されています。安定化状態では、V FB
は1.231Vです。
V(
:誤差アンプの出力ピン。
この出力電圧は発振器サ
C ピン7)
イクルあたりの最大(ピーク)
スイッチング電流に相当します。
通常、誤差アンプはVCピンからSGNDピンへRC回路を接続
することで、積分回路として機能します。
この回路はコンバー
タのレギュレーション制御ループの支配極を形成します。特
定の積分特性を与えることで、過渡応答を最適化できます。
こ
のピンからグランドまでの間に100pF以上の高周波バイパス・
コンデンサに接続することを推奨します。Burst Mode動作が
イネーブルの場合(ピン5の解説参照)、VCピンの内部低イン
ピーダンス・クランプがBurst Modeのスレッショルドの100mV
下に設定され、
ピン電圧が負に落ちるのを防ぎます。
そのた
め、
このピンは低インピーダンスのソースで引き下げることは
できません。V Cピンを外部で制御する必要がある場合は、
1kΩの直列抵抗を使用してください。
SGND
(ピン8、17)
:低ノイズのグランド基準ピン。
出力コンデン
サの­V OUT 側に接続する必要があります。高電流がSGND
接続に流れないように注意してPCBのレイアウトを行ってくだ
さい。
グランドに関するPCBのレイアウトについては、
「アプリ
ケーション情報」
のセクションをご参照ください。
SENSE­
(ピン9)
:電流センス・アンプの負入力。
デバイスを降
圧に応用する場合、
センス抵抗のVOUT側に接続します。検出
されるインダクタ電流の制限値はSENSE入力間で150mVに
設定されています。
SENSE+
(ピン10 )
:電流センス・アンプの正の入力。
デバイス
を降圧に応用する場合、センス抵抗のインダクタ側に接続し
ます。検出されるインダクタ電流の制限値はSENSE入力間で
150mVに設定されています。
PGND
(ピン11)
:内部の下側のスイッチとVCCレギュレータ回
路で使用される高電流グランド基準ピン。
このピンはVCCのデ
カップリング・コンデンサの負極に直接接続してください。
グラ
ンドに関するPCBのレイアウトについては、
「アプリケーション
情報」
のセクションをご参照ください。
3724fd
6
LT3724
ピン機能
V CC
(ピン12 )
:内部バイアス電源のデカップリング・ノード。
こ
のノードは低ESRの1μFセラミック・コンデンサでPGNDにデ
カップリングしてください。
内部のIC機能の大部分はこのバイ
アス電源から供給を受けます。
メイン・パワー・スイッチがオフ
になっている間、VCCからBOOSTピンに接続された外部のダ
イオードがブートストラップ・コンデンサを充電します。降圧レ
ギュレータ電源のV OUT出力などの外部直流電源からVCCピ
ンをバック・ドライブすると、
このデバイスの全体的効率と電力
損失が改善されます。
シャットダウン・モードでは、
このピンは
ピン電圧が0Vになるまで20μAをシンクします。
NC
(ピン13)
:接続なし。
SW
(ピン14)
:降圧に応用する場合、SWピンは外付けのクラン
プ用ショットキー・ダイオードのカソードと、
パワーMOSFETの
ソースと、
インダクタに接続します。SWノードの電圧は、
パワー
MOSFETのオン時間中のVINから、
パワーMOSFETのオフ時
間中のグランドからショットキー・ダイオードの電圧降下分
下がった電圧の間で振幅します。起動時と動作モードでは、
ショットキー・ダイオードがフリーホィールするのに十分なイン
ダクタ電流が流れないため、
内部スイッチがオンになり、SWピ
ンがグランドに引き下げられ、BOOSTピンのコンデンサが充
電されます。SWピンの負の電圧振幅を抑えるために、
ショット
キー・ダイオードの選択には注意を払ってください。
TG
(ピン15)
:トップのNチャネルMOSFETのゲートをブートス
トラップ・ドライブするピン。
このピンからは高電流が非常に高
速でドライブされるため、
これをパワーMOSFETのゲートに接
続する場合、
そのPCB上の配線は短く、
かつ幅は0.02インチを
標準として広く取り、
インダクタンスをできるだけ小さくしてくだ
さい。
BOOST
(ピン16)
:ブートストラップ・ゲート・ドライブ用の電源。
SWピンの基準となる昇圧用低ESRセラミック・コンデンサに
外部で接続されます。BOOSTに接続するコンデンサCBOOST
の容量の推奨値は、
トップMOSFETの総入力容量の50倍の
値です。
ほとんどのアプリケーションでは0.1μFが適切です。
こ
のピンにかかる最大電圧はグランド基準でV INとV CCを足し
合わせた値です。
露出パッド
(SGND)
(ピン17)
:この露出リードフレームは内部
でSGNDに接続されています。電気的接続を確保し、最適な
熱性能を得るために、
露出パッドはPCBのグランドに半田付け
してください。
3724fd
7
LT3724
機能図
VIN
UVLO
(<4V)
8V VCC
REGULATOR
VIN
VCC
UVLO
(<6V)
1
VIN
CIN
CBOOST
3.8V
REGULATOR
RA
INTERNAL
SUPPLY RAIL
+
RB
5
R2
–
+
gm
ERROR
AMP
VOUT
COUT
D1
D3
(OPTIONAL)
OSCILLATOR
Q
S
R
SLOPE COMP
GENERATOR
CURRENT
SENSE
COMPARATOR
+
+
CC1
RSENSE
PGND
11
–
RC
SOFT-START
DISABLE/BURST
ENABLE
D2
CVCC
DRIVE
CONTROL
0.5V
VC
7
L1
+
6
R1
VCC
–
VFB
M1
12
–
BURST_EN
TG
15
SW
14
NOL
SWITCH
LOGIC
SHDN
3
BOOSTED
SWITCH
DRIVER
DRIVE
CONTROL
FEEDBACK
REFERENCE
1.231V
+
–
CC2
BOOST
16
BST
UVLO
~1V
–
+
–
BURST MODE
OPERATION
1.185V
2µA
CSS
4
CSS
–
+
SENSE+
10
SENSE–
SGND
8
9
3724 FD
3724fd
8
LT3724
動作 (機能図を参照)
メイン制御ループ
通常動作時、外付けNチャネルMOSFETスイッチが各周期の
開始時にオンになります。
スイッチはインダクタを流れる電流
が、電圧制御ループの出力である直流制御電圧VCで設定さ
れる電流スレッショルドを超えるまでオンに保たれます。電圧
制御ループはV FBピンの電圧から出力電圧を監視し、
それを
内部基準電圧1.231Vと比較します。VFBの電圧が基準電圧よ
り低い場合は電流スレッショルドを上げ、逆にV FBが基準電
圧より高い場合は電流スレッショルドを下げます。例えば、負
荷電流が増加すると、
出力電圧が下がってVFBの電圧が基準
の1.231Vから相対的に下がります。電圧制御ループはその降
下を検知して電流スレッショルドを上げます。
ピーク・インダク
タ電流は平均インダクタ電流が増加した負荷電流と等しくな
るまで増加し、
出力電圧は再び安定化します。
電流制限/短絡回路
インダクタ電流は直列挿入されたセンス抵抗(1ページの
「標
準的応用例」
を参照)
で測定します。センス抵抗間の電圧が
最大電流センス・スレッショルド
(通常は150mV)
に到達する
と、
その時点からサイクルの終わりまでTGのMOSFETドライ
バがディスエーブルになります。次サイクルの開始時点でも最
大電流センスのスレッショルドを超えている場合、
そのサイク
ルはスキップされます。
サイクルがスキップされることで、回路
の短絡中、特にV INが高いときでも、
インダクタ電流が制御さ
れた値に保たれます。
センス抵抗値の設定については
「アプリ
ケーション情報」
のセクションで紹介します。
VCC/昇圧電源
内部VCCレギュレータは、最大90nCのMOSFETゲート電荷負
荷をともなうすべての動作条件下で、起動のためにVINからの
ゲートドライブ電力を供給します。
このレギュレータは、VIN電
圧とMOSFETゲート電荷電流によるデバイスの電力損失が大
きくなりすぎない限り、VIN電圧が60V以下の条件下で連続
動作させることができます。
レギュレータを連続使用する場合
の安全動作条件を図1に示します。
この安全条件を超える範
囲で使用する場合は、VCCは起動後外部電源から派生させる
必要があります。
ただし、LT3724レギュレータは短時間のVIN
過渡が許容連続電圧を超えるような場合はフルタイムで使用
可能です。
70
60
50
VIN (V)
LT3724は固定周波数電流モード制御方式のPWMコント
ローラです。低∼中電力のスイッチング・レギュレータへの応
用向けに設計されています。動作電圧が高いため、60Vまで
の入力電圧を変圧器を使わずに昇圧または降圧できます。
LT3724は非同期整流のアプリケーションで使用されます。
つ
まり、
フリーホィーリング整流ダイオード
(機能図のD1)がボ
トムMOSFETの代わりに使用されています。回路動作につい
ては、
デバイスの機能図およびデータシートの最初のページ
の
「標準的応用例」
をご参照ください。LT3800が類似品にあ
たり、
こちらは降圧に応用される場合にダイオードの代わりに
MOSFETを使用して同期整流します。
40
30
SAFE
OPERATING
AREA
20
10
0
20
40
60
80
MOSFET TOTAL GATE CHARGE (nC)
100
3724 F01
図1. VCCレギュレータの連続動作条件
このデバイスの変換効率を高めたり、電力損失を少なくする
ために、VCCへの電源をコンバータ出力などの外部電源にす
ることもできます。
その外部電源が外部ダイオードを介して内
部VCCレギュレータをバック・ドライブし、VCC電圧が自身の安
定化電圧以上のダイオードに引かれる場合、内部レギュレー
タはディスエーブルされて低電流モードになります。VCCはほ
とんどのデバイス内部機能から見るとバイアス電源で、外付け
ダイオードを介してブートストラップ・コンデンサ
(C BOOST)
を
充電するのにも使用されます。外付けMOSFETスイッチはブー
トストラップ・コンデンサからバイアスがかけられます。外付け
MOSFETスイッチがオフの時、
コレクタがSWピンに、
エミッタ
がPGNDピンに接続されている内部BJTスイッチはオンになっ
てSWノードをPGNDにつなぐので、
ブートストラップ・コンデン
サが再び充電されます。BJTスイッチは次サイクル開始時また
はブートストラップ・コンデンサが完全に充電されるまでオン
のままです。
3724fd
9
LT3724
動作 (機能図を参照)
MOSFETドライバ
LT3724は、外付けNチャネルMOSFETスイッチをオン・オフ
する高速昇圧ドライバを備えています。MOSFETドライバは、
SWピンとMOSFETのソースを基準とする昇圧コンデンサから
電源を得ます。
このドライバは、大きな電流パルスを供給して
MOSFETを高速でオンし、遷移時間を最小限に抑えます。
よ
り高電流の動作に対して、MOSFETを複数並列に接続できま
す。
Burst Mode動作中、VINピン電流は20μAであり、VCC電流は
80μAまで減少します。外部ドライブがVCCに与えられない場
合、すべてのV CCバイアス電流はV INピンから発生し、合計
VIN電流は100μAになります。
出力から得られるソースを使用
してV CCをドライブする場合、VIN電流のVCC分がコンバータ
のデューティサイクル比だけ減少するため、バースト電流をさ
らに減らすことができます。
起動
以下の項では、電源の起動および降圧電流が一度起動し動
MOSFETと内部SWプルダウン・スイッチの間のシュート・ス
ルーの可能性を排除するために、適応型非重畳回路は、 作した後に4Vまで下がった動作について説明します。電気的
特性の表に示されているように、LT3724およびスイッチング電
MOSFETのゲートが自己のターンオン・スレッショルドを下回
源の保護のために、VIN、VCCおよびVBOOSTに対するヒステリ
るまで内部プルダウン・スイッチがオンにならないようにしま
シスを備えた内部低電圧ロックアウト
(UVLO)回路がありま
す。
す。UVLOがフォールト状態になっている間はTG MOSFETド
ライバがディスエーブルされるため、起動および連続動作を
低電流動作(Burst Mode動作)
行うには、3種類の低電圧ロックアウト条件のすべてを満たす
低 電 流 負荷 時 効 率を上げるためにLT 3 7 2 4は、外 付け
必要があります。起動の際、
ほとんどのアプリケーションでは、
MOSFETが負荷電流要求に基づいて断続的に動作する、
リニ
アテクノロジー独自のBurst Modeで動作することができます。 LT3724の高電圧リニア・レギュレータを介してVINからVCCに
電力が供給されます。
この場合、VIN電圧は低電圧ロックアウ
Burst Mode機能は、BURST_ENピンをV CCに接続するとディ
スエーブルされ、
そのピンをSGNDに接続するとイネーブルさ ト・スレッショルドよりも高くV CC電圧をドライブできるように
十分高くなければなりません。VCCもやはり同様に、BOOST電
れます。
圧が低電圧ロックアウト・スレッショルドを上回るように、外付
けダイオードを介してBOOSTコンデンサを充電できるように
V Cピンの電圧を介して検出された必要なスイッチ電流が最
十分に高くなければなりません。TGパワーMOSFETのオフ時
大値の15%より低い場合、Burst Mode動作が作動し、
そのセ
間中にサイクルごとにSWノードをグランドにするNPNスイッチ
ンス電流のレベルがICの制御経路に固定されます。
出力負荷
があり、
それによりBOOSTコンデンサは完全な充電状態に保
がこの固定された電流レベルより小さな電流しか必要としな
たれます。電源が起動して動作し始めると、電源の出力電圧は
い場合、
コンバータは各スイッチ・サイクル期間中、
出力をわず
外付けダイオードを介してVCCをバックドライブすることがで
かに過剰にします。
この過剰状態は内部で検出され、V Cピン
きます。内部回路は高電圧レギュレータをディスエーブルして
の電圧は低下し続けるように強制されます。VCの電圧が15%
VIN消費電流を保護します。
出力電圧がVCCをバックドライブ
の負荷レベルより150mV下がると、
スイッチングがディスエー
ブルされ、LT3724はほとんどの内部回路をシャットダウンし、 するのに低すぎたりあるいは高すぎたりする場合、電圧ダブラ
またはリニア・レギュレータなどの追加の回路構成が必要にな
合計消費電流は100μAに減少します。
コンバータの出力が下
ります。VCCがVIN以外の電源からバックドライブされるとき、
がり始めると、V Cピンの電圧が上昇し始めます。VCピンの電
圧が15%の負荷レベルまで回復すると、ICは通常動作に戻り、 通常の動作を維持しながらVINを4Vまで下げることができま
スイッチングが再開します。VCピンの内部クランプは出力ディ す。
スエーブル・スレッショルドより100mV低く設定されます。
これ
によりピン電圧の負方向への変位が制限され、Burst Mode動
作時のコンバータ出力リップルが最小限に抑えられます。
3724fd
10
LT3724
動作 (機能図を参照)
ソフトスタート
ソフトスタート機能は起動時の電源出力電圧のスルーレート
を制御します。制御された出力電圧ランプにより、
出力電圧の
オーバーシュートが最小に抑えられ、V IN電源からの突入電
流が減少し、電源のシーケンシングが簡単になります。電源の
VOUTとICのCSSピンの間に接続されているコンデンサC SSが
スルーレートをプログラムします。
コンデンサは、出力電圧の
dV/dtに比例する電流をCSSピンに供給します。
ソフトスタート
回路は制御ループを無効にし、
出力電圧のスルーレートがソ
フトスタート・コンデンサを介して2μAの電流を発生するまで
インダクタ電流を調整します。電流が2μAを上回ると、DC制御
電圧VCによって設定された電流スレッショルドが低下し、
イン
ダクタ電流が低下します。
そして、出力電流が低下し、出力電
圧のスルーレートが減少します。電流が2μAを下回ると、DC
制御電圧V Cによって設定された電流スレッショルドが上昇
し、
インダクタ電流が上昇します。
そして、出力電流が増大し、
出力電圧のスルーレートが増大します。
出力電圧が自身の安
定化電圧の5%以内になると、
ソフトスタート回路はディスエー
ブルされ、
メイン・コントロールが出力を安定させます。
出力電
圧が自身の安定化電圧の70%未満に下がると、
ソフトスタート
回路が再開します。
スロープ/アンチスロープ補償
ICは、電流制御ループに起こり得る低調波発振を排除するた
めにスロープ補償を組み込んでいます。ICのスロープ補償回
路では、
デューティサイクルの増加につれて立ち上りスロープ
を増加させるためにセンス電流を人為的にランプさせます。
残念なことに、
この追加ランプは通常センス電流の値に影
響を及ぼすため、達成可能な電流制限値は追加ランプが表
すのと同じ量だけ低下します。
このように、
デューティサイクル
が増加するにつれて、通常、電流制限は減少します。
しかし、
LT3724は、
スロープ補償に関連した電流制限の減少を排除
するためのアンチスロープ補償回路を備えています。
スロープ
補償ランプがセンス電流に追加されるため、類似のランプが
電流制限スレッショルドに追加されます。結局、電流制限が損
なわれることはないため、LT3724は必要なデューティサイクル
に関係なく全電力を供給することができます。
シャットダウン
LT3724が持つシャットダウン・モードでは、
IC内部の機能がす
べてディスエーブルされ、VINの電流が10μA未満になります。
シャットダウン・ピンの用途としては、
ヒステリシス付き低電圧
ロックアウト、
マイクロパワー・シャットダウン、
コンバータ出力
の汎用オン/オフ制御などがあります。
シャットダウン機能には
スレッショルド値が2つあり、
ひとつはヒステリシス120mVの高
精度な1.23Vのスレッショルドで、
コンバータのスイッチングを
ディスエーブルします。
もうひとつはSGNDを基準とする、
おお
よそ0.7Vのスレッショルド値で、
内部回路をすべてディスエー
ブルしてVIN電流を10μA未満に引き下げます。詳細は
「アプリ
ケーション情報」
のセクションをご参照ください。
3724fd
11
LT3724
アプリケーション情報
最初のページの
「標準的応用例」
に示されたLT3724の基本
的な降圧アプリケーションでは、正の入力電圧がそれよりも
小さい正または負の電圧に変換されて出力されます。
この
「ア
プリケーション情報」
セクションは、電源要件に合った外付け
部品の選定の際に参考にしてください。
スロープ補償回路の効率が下がり、50%よりも大きいデュー
ティサイクルで電流モードが不安定になります。逆にΔILが小
さい場合、
より大型で価格の高いインダクタが必要になりま
す。ΔILを0.3 • IOUT(MAX)
と仮定すると、電源の直流出力電流
に 15%のIOUT(MAX)のリップル電流が発生します。
センス抵抗(RSENSE)
の選定
電流センス抵抗RSENSEは電源のインダクタ電流(最初のペー
ジの
「標準的応用例」
を参照)
を監視するための抵抗です。抵
抗値は要求される出力負荷電流の最大値に基づいて決めま
す。LT3724の電流センス・アンプでは、最大電圧スレッショル
ドは標準値で150mVです。
そのため、インダクタ電流のピー
ク値は150mV/R SENSEになります。最大出力負荷電流I OUT
はインダクタのピーク電流からピーク-ピーク間リップル
(MAX)
電流ΔILの半分を引いた値です。
データシートに製品の印加電圧と印加時間の積を公表してい
るインダクタ・メーカーもあります。示されていない場合は、
イン
ダクタ・メーカーに問い合わせて設計上製品仕様から外れて
使用していないかどうか確認します。印加電圧と印加時間の
積は次式で求めます。
RSENSEの値は次の式から、
リップル電流と外付け部品の耐性
を考えて適当なマージンを取りつつ算出します。
RSENSE =
100mV
IOUT(MAX)
RSENSEの標準値は0.005Ω∼0.05Ωの範囲です。
インダクタの選定
インダクタの選定で鍵となるパラメータは、
インダクタンスの最
小値、印加電圧と印加時間の積、飽和電流およびRMS電流
です。
インダクタンスの最小値は次式で求められます。
L ≥ VOUT •
VIN(MAX) – VOUT
fSW • VIN(MAX) • ∆IL
です。
fSWはスイッチング周波数(200kHz)
ΔILの標準値は
(0.2 • IOUT(MAX))∼(0.5 • IOUT(MAX))
の範
ΔIL = 0.3 • IOUT
囲で、
IOUT(MAX)は電源の最大負荷電流です。
とすることで、
インダクタの性能、
インダクタの寸法およ
(MAX)
びコストのバランスをうまく取った設計が可能です。ΔILをそれ
より大きくするとピーク電流が大きくなり、電源の入出力のフィ
ルタリングを強くする必要が出てきます。ΔILが大きすぎると、
印加電圧・時間の積(μ秒)=
(VIN(MAX) – VOUT ) • VOUT
VIN(MAX) • fSW
飽和電流とRMS電流については、両方とも公表しているメー
カーもあれば片方だけのメーカーもあります。飽和電流を基
準にしてインダクタを選ぶ場合、
インダクタを導通するピーク
電流I OUT(MAX)+ΔIL/2を見ます。
インダクタの飽和電流の仕
様は、
ゼロ電流で測定したときのインダクタンスが、指定の量、
通常は30%の割合で減少するときの電流値です。
RMS電流値を基準にしてインダクタを選ぶ場合は、
インダクタ
を導通する平均電流値I OUT(MAX)を見ます。RMS電流の仕
様は、周囲温度25℃で、
デバイスの温度上昇が一定値のとき
(標準値で40℃)
の電流です。
設計におけるインダクタンスの最小値、印加電圧・時間の積、
飽和電流およびRMS電流を算出した後、既製品のインダクタ
を選定します。
インダクタ・メーカーの一覧をwww.linear.com
で公開しています。
または、
リニアテクノロジー社のアプリケー
ション部にお問い合わせください。
インダクタの選定についての詳細は、
リニアテクノロジー社の
アプリケーションノート44の
「インダクタの選択」
のセクション
をご参照ください。
降圧コンバータ:MOSFETの選定
外付けNチャネル標準レベルのパワーMOSFETを選ぶ基準
は、オン抵抗(R DS(ON))、帰還容量(C RSS )、最大ドレイン・
ソース間電圧(VDSS)、総ゲート電荷(QG)
および最大連続ド
レイン電流です。
3724fd
12
LT3724
アプリケーション情報
効率を最大化するには、RDS(ON)
とCRSSを最小にします。RDS
を小さくすると伝導損失が小さくなり、CRSSを小さくする
(ON)
と遷移損失が小さくなります。問題は、RDS(ON)はCRSSと逆相
関の関係にあることです。MOSFETの寸法を決めるときには
遷移損失と伝導損失のバランスを取るとよいでしょう。2種類
の損失のバランスが取れたMOSFETを選択します。
MOSFETの最大伝導損失は次式から求めます。
⎛V ⎞
PCOND = (IOUT(MAX) )2 ⎜ OUT ⎟ (RDS(ON) )
⎝ VIN ⎠
内部のV CCレギュレータの動作範囲により、MOSFETの総
ゲート電荷の最大値QGは90nC以下に抑えられています。QG
とVGSの仕様は通常MOSFETのデータシートに記載されてい
ます。VGSが8VのときのQGの値を用います。VCCが外部電源
からバックドライブされている場合は、MOSFETのドライブ電
流はLT3724の内部レギュレータからは供給されず、MOSFET
のQGはICからの制約を受けません。
ただし、VCCをバックドラ
イブする外部電源が起動時や短絡時のために使用できない
場合は、MOSFETのドライブ電流は内部レギュレータから供
給されます。
RDS(ON)は正の温度によって大きく変動します。MOSFETメー
カーのデータシートにはR DS(ON)
と温度の関係を示したグラ
フが掲載されています。
メーカーの示す最大連続ドレイン電流の仕様については、
ピークのスイッチング電流I OUT(MAX)+ΔIL/2より上でなけれ
ばなりません。
最大遷移損失は次式から求めます。
電源立ち上げ中、
ゲート駆動電位はVCC電圧レギュレータで
設定され、
これはおよそ8Vです。電源が立ち上がると、VCCは
VOUTなどの補助電源でバックドライブできるようになります。
メーカーの指定する最大V GSを超えないようにすることが重
要です。標準レベルのスレッショルドのMOSFETは一般的に
最大VGSが20Vです。
2
(VIN)
(I
(CRSS)
)
(fSW)
PTRAN =(k)
OUT(MAX)
kはゲートドライバ電流と逆相関する定数、LT3724のアプリ
ケーションではだいたいk = 2です。
MOSFETの最大総消費電力はこの2種類の損失の和です。
PFET(TOTAL)= PCOND+PTRAN
電源効率を高めるには、P FET(TOTAL)を総出力電力の3%未
満に抑えます。
また、MOSFETの接合部温度が仕様を超えな
いよう、温度解析を行なってください。
TJ = TA+PFET(TOTAL)• θJA
θJAはパッケージの温度耐性で、TAは周囲温度です。求められ
たTJが仕様の最大接合部温度(標準値で150℃)
を超えない
ようにしてください。
VINが高い場合、
遷移損失が大きな比重を占めることに留意し
てください。RDS(ON)が大きく、CRSSが小さいMOSFETの方が
高い効率を得られます。
VDSS電圧の仕様が高めのMOSFETの
方が、
たいていRDS(ON)が大きくCRSSが小さくなります。
MOSFETのVDSS仕様は、VIN(MAX)にスイッチング・ノードで
のリンギングを加えた値であるMOSFETのドレイン・ソース間
最大電圧を上回るものを選びます。
スイッチング・ノードのリン
ギングは優れたPCBレイアウトでは非常に小さくなります。
ま
た、必要に応じて、RCスナバを用います。
降圧コンバータ:整流器の選定
降圧コンバータの整流ダイオード
(機能図のD1)
は、
メイン・パ
ワー・スイッチがターン・オフされているときのインダクタ電流
の経路となります。整流器の選定基準は、順方向電圧、逆方
向電圧および最大電流です。
ショットキー・ダイオードを推奨
します。
これは順方向電圧が低いため、電力損失が小さく、効
率を最大限高めることができます。
ダイオードにかかる最大逆
方向電圧はVIN(MAX)です。
連続動作中は、
ダイオード電流の平均値は出力負荷電流の最
大値とVINの最大値から求められます。
IDIODE(AVG) =IOUT(MAX)
VIN(MAX) − VOUT
VIN(MAX)
効率を高めつつ、短絡時動作に備えて適切なマージンを確保
するために、最大平均ダイオード電流IDIODE(AVG)の1.5∼2倍
の定格を持つダイオードを推奨します。
3724fd
13
LT3724
アプリケーション情報
降圧コンバータ:入力コンデンサの選定
降圧コンバータには、入力電流が高速に立ち上がり・立ち下
がりを繰り返すため、近傍に入力バイパス・コンデンサが必要
です。入力コンデンサの選定基準は、バルク容量とRMS電流
許容量です。バルク容量によって電源の入力リップル電圧が
決まります。RMS電流許容量はコンデンサの過熱を抑える働
きがあります。
バルク容量は最大入力リップルΔVINから算出します。
CIN(BULK) =
IOUT(MAX) • VOUT
∆VIN • fSW • VIN(MIN)
ΔV IN はユーザの許容できるレベルで選定します。最初は
100mV∼200mVで選ぶとよいでしょう。
アルミ電解コンデンサ
は体積あたり容量が大きいため、高電圧で大きなバルク容量
の場合に適しています。
コンデンサのRMS電流は次から算出します。
ICIN(RMS) = IOUT
VOUT (VIN – VOUT )
(VIN )2
可能ならば、最悪条件であるVIN = 2VOUTで計算します。
コン
デンサの定格RMS電流はメーカーが指定しており、計算した
ICIN(RMS)より大きくなければなりません。
セラミック・コンデン
サは等価直列抵抗(ESR)
が低いため、高電圧で大きなRMS
電流を扱うのに適しています。
メーカーが提示しているアルミ
電解コンデンサのリップル電流定格は、寿命を2000時間とし
て算出されています。
そのため、
コンデンサの定格を低く見積
もるか、条件よりも高い温度で定格が設定されているコンデ
ンサを選ぶことをお勧めします。
アルミ電解コンデンサとセラミック・コンデンサを組み合わせ
て使うと、経済的に入力コンデンサの要件を満たすことができ
ます。
コンデンサの電圧定格はV IN(MAX)よりも高くなければ
なりません。複数のコンデンサを並列して設計における寸法・
高さの条件に合わせることもできます。
コンデンサはMOSFET
スイッチのすぐそばに配置し、間のPCB配線は短く、幅を広く
取って寄生インダクタンスを最小限に抑えます。
降圧コンバータ:出力コンデンサの選定
出力コンデンサCOUTの選定基準は設計上の出力電圧リップ
ルΔVOUT、
および過渡負荷条件です。ΔVOUTはΔILとCOUTの
ESRの関数で、次式から求めます。
⎞
⎛
1
∆VOUT = ∆IL • ⎜ ESR +
⎟
(8 • fSW • COUT ) ⎠
⎝
設計上のΔVOUT条件を満たすのに必要な最大ESRは次式か
ら求めます。
ESR(MAX) =
(∆VOUT )(L)(fSW )
⎛
⎞
V
VOUT • ⎜1– OUT ⎟
⎝ VIN(MAX) ⎠
最悪条件のΔVOUTは入力電圧が最高のときに起こります。複
数のコンデンサを並列してESR条件を満たすようにします。
イ
ンダクタンスを増やしてESR条件を下げることも選択肢のひと
つです。ΔVOUTを極端に低くする場合、電源出力にLCフィルタ
段を追加することができます。
「アプリケーションノート44」
に、
追加の出力フィルタの寸法を決めるのに役立つヒントが掲載
されています。
出力電圧の設定
抵抗分割器で、次の公式にしたがって直流出力電圧を設定し
ます。
⎞
⎛ V
R2 = R1⎜ OUT – 1⎟
⎝ 1.231V ⎠
図2のように、外付け抵抗分割器をコンバータの出力に接続し
ます。帰還抵抗の許容量から出力電圧に誤差が加わります。
例:VOUT = 12V;R1 = 10kΩ
⎛ 12V
⎞
R2 = 10kΩ ⎜
− 1⎟ = 87.48kΩ − 86.6kΩ1%を使用
⎝ 1.231V ⎠
3724fd
14
LT3724
アプリケーション情報
VSUPPLY
L1
VOUT
R2
RA
COUT
SHDN PIN
VFB PIN
RB
R1
3724 F03
3724 F02
図2. 出力電圧の帰還抵抗分割器
図3.低電圧ロックアウト回路
VFBピンの入力バイアス電流は標準値で25nAなので、非常に
抵抗値の大きい帰還抵抗を使うと、
コンバータの出力が期待
値よりわずかに大きくなる可能性があります。
出力のバイアス
電流の誤差は次式で見積もります。
追加されるヒステリシスがイネーブル機能に必要な場合、
LT3724レギュレータの出力から外付けの正帰還抵抗を使い
ます。
∆VOUT(BIAS)= 25nA • R2
電源のUVLOとシャットダウン
SHDNピンにはヒステリシス付きの高精度電圧スレッショル
ドが設定されており、電源の低電圧ロックアウト
(UVLO)の
スレッショルドとして活用できます。低電圧ロックアウト機能
は入力電源電圧がユーザーの設定した電圧値を超えるまで
LT3724をシャットダウン状態にしておく機能です。
ノイズが原
因でUVLOが誤ってオフになってしまうのを、
ヒステリシス電
圧で防ぎます。
抵抗はまずRBから選びます。
⎛ VSUPPLY(ON) ⎞
RA = RB • ⎜
– 1⎟
⎠
⎝ 1.35V
VSUPPLY(ON)は低電圧ロックアウトがディスエーブルされ、電
源がターン・オンするときの入力電圧です。
例:RB = 49.9kΩ、VSUPPLY(ON)= 14.5Vとする。
(最低入力電圧を15Vとする)
⎛ 14.5V ⎞
RA = 49.9kΩ • ⎜
– 1⎟
⎝ 1.35V ⎠
= 486.1kΩ(499kΩの抵抗を選択)
スタンバイ・モードで電源電流を小さくする必要がある場合、
RBの抵抗値を高くします。
電源のターン・オフ電圧はターン・オン電圧より9%低い値で
す。
この例では、VSUPPLY(OFF)は13.2Vになります。
シャットダウン機能は抵抗値の大きいプルアップ抵抗を介し
てSHDNピンをVINに接続することでディスエーブルにできま
す。
このピンには低インピーダンスの6Vクランプが付属してい
るので、SHDNピンはプルアップ抵抗(RPU)
から電流をシンク
します。
I SHDN =
VIN – 6V
RPU
この配置によってSHDNピンは6Vにクランプされるので、
ピン
の最大絶対電圧定格である5Vを超えてしまいます。
これは最
大絶対電流定格の1mAを超えない限り許容されます。SHDN
ピンの入力電流は100μA未満にすることを推奨します。
そのた
めに、
この構成では、1MΩ以上のプルアップ抵抗を使用する
のが一般的です。
ソフトスタート
ソフトスタート機能はコンバータの出力が安定化電圧の95%
に達するまで、設定された
(VFBピンで1.185Vに対応します)
スルーレートを強制する機能です。安定化電圧の95%に達し
たら、
ソフトスタート回路はディスエーブルされます。
ソフトス
タート回路はV FBピンが安定化電圧の70%を下回ると再び
イネーブルされます。
この値はVFBピンの制御ヒステリシスの
300mVに相当します。
これにより、
「ブラウンアウト」状態から安
定的に復帰できます。
LT3724
CSS1
VOUT
A
RSS
CSS
3724 F04
図4.ソフトスタート回路
3724fd
15
LT3724
アプリケーション情報
ソフトスタート立ち上がり時間(tSS)
は、
ソフトスタート期間中
の電流平均値2μAに対応する容量値によって、
プログラミン
グ・コンデンサC SS1を使って所望の値に設定します。
このコン
デンサの容量には次の関係が成り立ちます。
CSS1 =
VOUT
2 • 10 –6 • t SS
VOUT
RSSはほとんどのアプリケーションでは200kに設定します。
低電圧出力アプリケーションでの考慮点
LT3724のCSSピンはソフトスタート期間中は220mVにバイアス
され、
この電圧は図4のノード
「A」
で、RSSからの2μAの信号電
流によって上昇するので、
出力はソフトスタート機能が起動す
る前にこの値に達しなければなりません。
ソフトスタート起動
には次の関係が成り立
電圧オフセット出力の値(V OUT(SS))
ちます。
VOUT(SS)
V(VC)
TIME, 250µs/DIV
3724 F05
図5.過度のリップル成分を示すソフトスタート特性
VOUT
VOUT(SS)= 220mV+RSS • 2 • 10–6
VOUT(SS)
V(VC)
RSS = 200kでは、標準値は0.64Vになります。
低電圧出力アプリケーションによっては、
ソフトスタート起動
電圧オフセットを下げるのが望ましい場合があります。
これは
R SSの値を小さくすることで可能です。RSSの値を下げると、
ソ
フトスタートを正しく動作させるために出力の電圧リップルに
起因する信号成分を小さくしなければならなくなります。
ピーク-ピーク間出力電圧リップル
(ΔVOUT)
がコンデンサCSS1
からノード
「A」
にかかります。RSSの値は次の方程式から求め
ます。
RSS =
∆VOUT
1.3 • 10 – 6
LT3724の電圧コンバータの設計では、ESRの小さい出力コン
デンサを使い、
リップル電圧成分を最小限に抑えることが大
切です。設計におけるリップル成分が大きすぎるかどうかは起
動中にVCピンを監視することで判別できます。
ソフトスタート期間の評価でRSSの値を小さくしてもVCピンが
過度に変調することなく動作するかどうか確かめてから設計
を完成するようにしてください。
TIME, 250µs/DIV
3724F06
図6.望ましいソフトスタート特性
ソフトスタート期間中にVCピンに過度のリップル成分が発生
する場合、
コンバータの出力リップルを軽減しなければなりま
せん。
それには、
出力コンデンサを大きくするか、
または出力コ
ンデンサのESRを小さくするか、
またはその両方を行ないます。
外部電流制限フォールドバック回路
LT3724のソフトスタート回路がアクティブ化される前の期間
に、付加的な起動電圧オフセットが発生することがあります。
ソフトスタート回路が出力電圧の上昇に呼応してVCピンを制
動する前に、設定したピーク電流制限値(IMAX)
と同じ電流が
スイッチングしたインダクタに流れる可能性があります。
スイッ
チングはソフトスタート回路が起動してVCピンの電圧が下が
ると停止しますが、
インダクタに蓄えられたエネルギーが出力
コンデンサに伝わるため、
出力電圧は上がり続けます。
インダ
クタにI MAXが流れた状態で、
インダクタに蓄積されたエネル
ギーから発生するVOUTの最後の立ち上がりには、次の関係
が成り立ちます。
⎛ L ⎞
∆VOUT =IMAX • ⎜
⎟
⎝ COUT ⎠
1/2
3724fd
16
LT3724
アプリケーション情報
インダクタ電流はソフトスタートが起動するまでの短い期間に
IMAXまで達することは通常ありませんが、入力電圧が高いと
きやインダクタが小さい場合にはありえますので、上記の関係
式は最悪のシナリオとして有効です。
このエネルギー転移による出力電圧の上昇は通常は軽微で
すが、出力コンデンサの比較的小さい低電圧アプリケーショ
ンでは大きくなることがあります。電圧上昇は出力コンデンサ
の容量を大きくすることで抑えられますが、
この方法では低電
圧電源のCOUTにさらなる制約が加わってしまいます。
また、電
流制限フォールドバック回路を外付けし、起動中のIMAXの値
を小さくするという方法もあります。
外部電流制限フォールドバック回路は、
ダイオード1N4148と
47kΩの抵抗をコンバータの出力
(VOUT)
からLT3724のVCピン
の間に置くことで、
LT3724のDC/DCコンバータへのアプリケー
ションに簡単に組み込むことができます。
これにより、VOUT =
0Vのときにピーク電流は0.25 • IMAXに抑えられます。
電流制限
フォールドバック回路は、回路短絡故障の条件下でDC/DCコ
ンバータの出力電流を小さくするという利点もあるので、
ソフト
スタート機能がディスエーブルのときでも役立ちます。
CSSピンがグランドに短絡したためにソフトスタート回路がディ
スエーブルした場合、
外部電流制限フォールドバック回路はダ
イオードと抵抗を追加して修正する必要があります。次に示し
た2ダイオード、2抵抗のネットワークでも、VOUT = 0Vのときに
ピーク電流は0.25 • IMAXとなります。
VC
1N4148
1N4148
39k
27k
VOUT
3724 F07
図8.ソフトスタートがディスエーブル
(CSSピンがSGNDに短絡)
されているアプリケーションでの電流制限フォールドバック回路
効率について
スイッチングレギュレータの効率は出力電圧を入力電圧で除
算し、100をかけて求められるパーセンテージと等価です。効
率のパーセンテージを次のように表します。
% 効率 = 100%−(L1+L2+L3+...)
L1、L2、...は入力電力のパーセンテージで表される個々の損
失要素。
回路中の電力消費要素はすべて損失を生むといえますが、
LT3724の損失のほとんどは4つの主要因で説明できます。
1. LT3724のVINおよびVCCでの電流損失
2. I2R導通損失
3. MOSFETの遷移損失
VC
4. ショットキー・ダイオードの伝導損失
1N4148
47k
VOUT
3724 F03
図7.ソフトスタートを利用するアプリケーション
での電流制限フォールドバック回路
1.VINおよびVCCの電流は、LT3724の消費電流とMOSFETド
ライブ電流の和です。消費電流はLT3724の電気的特性表に
示されています。MOSFETのドライブ電流は、
サイクルごとにパ
ワーMOSFETのゲート電荷に所定の電荷QGをかける結果発
生します。QGはMOSFETのデータシートに記載されています。
平均電荷電流はQG • fSWで求められます。
これらの電流によ
る電力損失要素はVCCをVINより電圧の低いVOUTなどでバッ
クドライブすることで軽減することができます。
3724fd
17
LT3724
アプリケーション情報
2.I2R損失はMOSFETの直流抵抗、
インダクタ、
センス抵抗お
よび入力・出力コンデンサから計算します。連続的に通電する
モードでは、平均出力電流がインダクタとRSENSEに流れます
が、MOSFETとショットキー・ダイオードの間で切断されます。
MOSFETの抵抗値(RDS(ON))
とデューティサイクルをかけた
R SENSEは、
インダクタとRSENSEの抵抗値にまとめ、回路の全
直列抵抗を得ることができます。総伝導電力損失は抵抗に比
例し、効率の損失の2∼5%を占めます。
3.入力電圧が20Vを超える場合、MOSFETの遷移損失が大き
くなることがあります。
「MOSFET選定」
のセクションを参照。
4.ショットキー・ダイオードは特に入出力電圧比が大きい
(デューティサイクルが小さい)場合、
ダイオードがスイッチ期
間中のほとんどで導通するため、電力損失の主要因になるこ
とがあります。Vfを下げると損失も軽減します。注意すべきは、
ダイオードの寸法を大きくしても、
ダイオードが発熱するとV f
が下がり、
ダイオードの損失要素が減少するため、
あまり有効
でない場合があることです。
負荷電流が大きい場合、I2Rの損失とショットキー・ダイオード
の損失が大部分を占めます。CINやCOUTのESRの消費電力や
インダクタ芯の損失など、他の損失は効率損失全体の2%未
満です。
PCBレイアウトのチェックリスト
プリント基板をレイアウトする場合、正常動作を達成するため
に次のチェックリストをご活用ください。次に示す項目は図9の
レイアウト図に図示されています。
1. 信号のグランドと電源のグランドは離します。信号のグラン
ドはLT3724のSGNDピン、LT3724底面の露出パッドおよび
(­)極です。信号のグランドはゼロ入力のグランドで、
VOUTの
高速・大電流は流れません。電源グランドはショットキー・ダイ
オードのアノード、入力コンデンサの
(­)極およびV CCコンデ
ンサのグランド帰還です。電源グランドは非常に高速な大電
流が流れていて、
ノイズの多いグランドといえます。
この2つの
グランドはVOUTの
(­)極でのみ互いに接続しています。
2. MOSFET、
ショットキー・ダイオードおよび入力コンデンサで
構成されるループの配線は短く、幅を広く取り、高周波ノイズ
と寄生インダクタンスからかかる電圧を最小限に抑えます。表
面実装型部品が便利です。
SENSE­ピンなどの他のノードとは独立して、
帰還
3. VFBピンは、
抵抗に直に接続します。帰還抵抗はCOUTの
(+)極と
(­)極の
間に接続します。
帰還抵抗はLT3724の近傍に配置し、
ハイ・イン
ピーダンスのノードであるVFBをなるべく短くします。
できる限り短
4. SENSE­およびSENSE+の配線は一緒にして、
くします。
5. VCCコンデンサとBOOSTコンデンサはICのすぐ近傍に配置
します。
これらのコンデンサにはMOSFETドライバの高ピーク
電流が荷電されています。小信号部品は高周波スイッチング・
ノード
(BOOST、SWおよびTG)
から離して配置します。図9の
レイアウトでは、
すべての小信号部品はICの片側に配置し、電
力部品は逆側に配置しています。
こうすることで信号のグラン
ドと電源グランドを分けやすくなります。
6. 小容量のデカップリング・コンデンサ
(100pF)
は帰還ノード
とセンス・ノードの高周波ノイズをフィルタするのに有効なとき
があります。使う場合はできる限りICの近くに置きます。
7. LT3724のパッケージはICの熱を底面の露出パッドで効率
的に逃がしています。露出パッドはPCBの銅の部分に半田付
けします。銅の部分をできるだけ広くして周囲空気に対するIC
パッケージの熱抵抗を高めるようにします。
これはLT3724の
温度上昇を抑えるのに有効です。
8. ゲートMOSFET M1をLT3724のTGピンに接続する配線を
短く、幅広く取ります。
3724fd
18
LT3724
アプリケーション情報
VIN+
RA
1
RB
3
4
RCSS
CSS
5
6
7
R2
RC
R1
8
CC1
VIN
BOOST
LT3724
SHDN
CSS
SW
15
CIN
M1
VIN–
L1
14
RSENSE
+
D2
17
BURST_EN
VFB
TG
CBOOST
16
VCC
PGND
VC
SENSE+
SGND
SENSE–
12
11
COUT
CVCC
10
D3
VOUT
D1
9
–
CC2
3724 F06
図9.LT3724のレイアウト図(PCBレイアウトのチェックリストを参照)
最短オン時間の考察
(降圧コンバータ)
最短オン時間(t TG(ON))
はLT3724がMOSFETをオンにして
から再びオフにするまでの最短時間です。
これは内部のタイ
ミング遅延とMOSFETのゲート電荷から決まります。入力電
圧と出力電圧の差が大きいアプリケーションでは、動作中
のデューティサイクルが低く、
この最短オン時間(標準値で
300nS)
に近づきます。LT3724のスイッチング周波数は内部で
200kHzに決まっているため、MOSFETスイッチの最小デュー
ティサイクルは6%です。6%を下回るデューティサイクルが必要
な場合、
それでも出力は制御できますが、
サイクルのスキップ
が起こることがあります。
サイクルのスキップが起こると、
インダ
クタのリップル電流が増大します。
サイクルのスキップが起こら
ないようにすべき場合は、最悪条件のf SWとtTG(ON)を勘案し
た次のガイドラインに従ってください。
VIN(MAX)≤ 9 • VOUT
この問題はVOUT < 7Vの場合にだけ起こります。
3724fd
19
LT3724
標準的応用例
12Vから24V/50Wの昇圧コンバータ
D1
BAV99
1
VIN
8V TO16V
CIN
33µF ×2
25V
C1
1500pF
0.1µF
25V
R3
4.7M
3
RCSS
200k
4
5
R2
187k
6
7
R1
10k
C2
120pF
R6
40.2k
8
VIN
BOOST
LT3724
SHDN
TG
SW
RSENSE
0.015Ω
16
L1
10µH
D2
SBM540
15
14
VOUT
24V AT 50W
CSS
BURST_EN
VFB
VCC
PGND
VC
SENSE+
SGND
SENSE–
M1
12
C4
1µF
25V
11
10
9
C3
4700pF
3724 TA02
COUT1
330µF
35V
COUT2
2.2µF x3
50V
CIN = SANYO, 25SVP33M
L1 = VISHAY, IHLP-5050FD-011
M1 = SILICONIX, Si7370DP
COUT1 = SANYO, 35CV330AXA
COUT2 = TDK, C4532X7R1H225K
D2 = DIODESINC., SBM540
RSENSE = IRC LRF2512-01-R0I5-F
効率および電力損失と負荷電流
100
98
2.5
VIN = 16V
96
2.0
VIN = 12V
94
92
1.5
1.0
VIN = 8V
0.5
90
88
POWER LOSS (W)
EFFICIENCY (%)
3.0
LOSS
VIN = 12V
0.1
1
LOAD CURRENT (A)
0
10
3724 F08
3724fd
20
LT3724
標準的応用例
調光制御付き高電圧LEDドライバ
LED
L1
300µH
VIN
8V TO 60V
C1
(OPTIONAL)
CIN
22µF
1
OPTIONAL
DIMMER
CONTROL
1kHz
R1
4.7M
M2
2N7002
3
4
5
6
C1 = OPTIONAL TO REDUCE LED RIPPLE CURRENT
CIN = TDK, C4532X7R2A225K
D1 = DIODESINC., B170
M1 = ZETEX, ZXMN10A07F
RSENSE = VISHAY, WSL2010R0150FEA
L1 = COILTRONICS, CTX300-4
7
C1
100pF
8
VIN
BOOST
LT3724
SHDN
TG
SW
16
15
VFB
VCC
PGND
VC
SENSE+
SGND
SENSE–
M1
ZXMN10A07F
14
CSS
BURST_EN
D1
B170
12
CVCC
1µF
16V
ADJUST ILED:
0.15V
ILED =
RSENSE
11
10
RSENSE
0.5Ω
9
3724 TA03
3724fd
21
LT3724
標準的応用例
60V過渡入力が可能な、
入力4.5V∼20V、
出力25W 12VのSEPICコンバータ
VIN
4.5V TO 20V
TO 60V
TRANSIENT
CIN1
22µF
2x
25V
CIN2
25V
1µF RA
100k
1
3
C1
390pF
RB
49.9k
R3
200k
4
5
R2
130k
6
7
R1
14.7k
R4
47k
C2
120pF
R5
40.2k
C3
680pF
8
VIN
BOOST
TG
SHDN
CSS
LT3724
BURST_EN
VFB
SW
VCC
PGND
VC
SENSE+
SGND
SENSE–
D1B
GSD2004
16
L1
20µH
C7
0.1µF
15
M1
•
C5
22µF
3x
25V
D2
14
R6
10Ω
12
C4
1µF
25V
11
10
C6
56pF
R7
10Ω
9
L1
20µH
•
RSENSE
0.010Ω
D1A
GSD2004
VOUT
12V AT 25W
COUT1
330µF
16V
COUT2
22µF
25V
3724 TA07a
C5, CIN1, COUT2 = TDKC453X7R1E226M
COUT1 = SANYO, OS-CON 16SVP330M
D2 = ON SEMI, MBRD660
L1 = COILCRAFT VERSAPAC VP5-D83
M1 = VISHAY, Si7852DP
D3
D1N4148
効率および電力損失と
負荷電流
92
3.5
VIN = 20V
91
3.0
VIN = 15V
EFFICIENCY (%)
VIN = 10V
89
2.0
1.5
88
LOSS
VIN = 15V
87
1.0
0.5
86
85
POWER LOSS (W)
2.5
90
0.1
1
LOAD CURRENT (A)
0
10
3724 TA07b
3724fd
22
LT3724
標準的応用例
VCCをVOUTでバック・ドライブし、
出力フィルタにセラミック・コンデンサを使用した12V降圧コンバータ
VIN
15V TO 60V
CIN
100µF
100V
+
2.2µF x2
100V
R3
49.9k
C1
3300pF
R2
499k
3
RCSS
200k
R4
130k
1
4
5
6
7
R5
14.7k
C2
120pF
R6
15k
8
VIN
BOOST
TG
SHDN
LT3724
SW
C6
0.1µF
16V
16
15
R7
20Ω
14
CSS
BURST_EN
VFB
VCC
PGND
VC
SENSE+
SGND
SENSE–
M1
Si7852DP
D2A
BAV99
12
11
10
C4
1µF
16V
D2B
BAV99
L1
47µH
VOUT
12V AT 50W
RSENSE
0.020Ω
COUT
33µF x3
16V
D1
9
C3
680pF
CIN: TDK, C4532X7R2A225MT
COUT: TDK, C4532X7R1C336MT
D1: DIODESINC., PDS5100H
L1: COEV DU1971-470M
M1: VISHAY Si7852DP
3724 TA04
3724fd
23
LT3724
パッケージ
FEパッケージ
16ピン・プラスチックTSSOP
(4.4mm)
(Reference LTC DWG # 05-08-1663 Rev I)
露出パッド・バリエーションBC
4.90 – 5.10*
(.193 – .201)
3.58
(.141)
16 1514 13 12 11
6.60 ±0.10
4.50 ±0.10
0.48
(.019)
REF
3.58
(.141)
2.94
(.116)
10 9
DETAIL B
6.40
2.94
(.252)
(.116)
BSC
SEE NOTE 4
0.45 ±0.05
1.05 ±0.10
0.51
(.020)
REF
DETAIL B IS THE PART OF
THE LEAD FRAME FEATURE
FOR REFERENCE ONLY
NO MEASUREMENT PURPOSE
0.65 BSC
1 2 3 4 5 6 7 8
推奨半田パッド・レイアウト
4.30 – 4.50*
(.169 – .177)
0.09 – 0.20
(.0035 – .0079)
0.50 – 0.75
(.020 – .030)
NOTE:
1. 管理寸法:ミリメートル
ミリメートル
2. 寸法は
(インチ)
3. 図は実寸とは異なる
0.25
REF
1.10
(.0433)
MAX
0° – 8°
0.65
(.0256)
BSC
0.195 – 0.30
(.0077 – .0118)
TYP
0.05 – 0.15
(.002 – .006)
FE16 (BC) TSSOP REV I 1210
4. 露出パッド接着のためのPCBメタルサイズ推奨最小値
* パッケージ底面の露出パッドの寸法にはモールドのバリを含まない
モールドのバリは各サイドで0.15mm
(0.006インチ)
を超えないこと
3724fd
24
LT3724
改訂履歴 (改訂履歴はRev Dから開始)
REV
日付
D
3/11
概要
ページ番号
「概要」
の最後の段落を削除
「ピン機能」
セクションのSWピンの文章を小修正
「動作」
の
「電流制限 / 短絡回路」
の文章を小修正
「標準的応用例」
の
「調光制御付き高電圧 LEDドライバ」
を更新
「標準的応用例」
の図と
「関連製品」
を更新
1
7
9
21
26
3724fd
リニアテクノロジー・コーポレーションがここで提供する情報は正確かつ信頼できるものと考えておりますが、その使用に関する責務は一切負い
ません。また、ここに記載された回路結線と既存特許とのいかなる関連についても一切関知いたしません。なお、日本語の資料はあくまでも参考資
料です。訂正、変更、改版に追従していない場合があります。最終的な確認は必ず最新の英語版データシートでお願いいたします。
25
LT3724
標準的応用例
反転出力­12V 1.5Aコンバータ
VIN
18V TO 36V
1
VIN
0.1µF
LT3724
3
4
R1
88.7k
CSS
1000pF
RCSS
200k
R2
10.2k
CC2
680pF
CC1
120pF
SHDN
TG
SW
CSS
VCC
6
R6, 40.2k
BOOST
7
8
VFB
VC
GND
PGND
SENSE+
SENSE–
D1 = BAV99
D2 = ON SEMI, MBRD350
L1 = COEV, DU1311-470M
M1 = VISHAY, Si7370DP
CIN1 = SANYO, 50CV220KX
COUT1 = SANYO, 16SVP330M
0.1µF
16V
16
15
M1
14
12
11
10
9
+
D1A
D1B
CIN1
220µF
50V
L1
47µH
D2
1µF
16V
VOUT
–12V
1.5A
RSENSE
0.040Ω
+
R3
2M
COUT1
330µF
16V
3724 TA05
関連製品
製品番号
LT3845A
説明
低消費電流、60V、高電圧同期整流式降圧
DC/DCコントローラ
注釈
調整可能な固定周波数:100kHz∼500kHz 、4V≤ VIN ≤ 60V、
1.23V ≤ VOUT ≤ 36V、IQ = 120µA, TSSOP-16パッケージ
低消費電流、60V、高電圧同期整流式降圧
DC/DCコントローラ
フェーズロック可能な固定周波数:50kHz∼900kHz、4V ≤ VIN ≤ 60V、
0.8V ≤ VOUT ≤ 24V、IQ = 50µA
LT3741
高電力の定電流/定電圧降圧コントローラ
LTC3824
100%デューティサイクルの低消費電流、
60V、降圧コントローラ
固定動作周波数:200kHz∼1MHz、電流安定化精度: 6%、
6V≤ VIN ≤ 36V、VOUT:最大(VIN­2V)
LTC3891
LT3844
低消費電流、60V、
シングル出力降圧
DC/DCコントローラ
同期可能な固定周波数:50kHz ∼600kHz、4V≤ VIN ≤ 60V、
1.23V ≤ VOUT ≤ 36V、IQ = 120µA、TSSOP-16パッケージ
選択可能な固定周波数:200kHz∼600kHz、4V≤ VIN ≤ 60V、
0.8V ≤ VOUT ≤ VIN、IQ = 40µA、MSOP-10Eパッケージ
LTC3834/LTC3834-1 99%デューティサイクルの低消費電流、
シングル出力、フェーズロック可能な固定周波数:140kHz∼650kHz、4V≤ VIN ≤ 36V、
0.8V ≤ VOUT ≤ 10V、IQ = 30µA/80µA
LTC3835/LTC3835-1 同期整流式降圧DC/DCコントローラ
LTC3859
低消費電流、
トリプル出力、
同期整流式降圧/降圧/昇圧DC/DCコントローラ
コールドクランク時にも全ての出力がレギュレーション状態を維持、
2.5V≤ VIN ≤ 38V、VOUT(降圧)
:最大24V、VOUT(昇圧)
:最大60V、
IQ = 55µA
3724fd
26
リニアテクノロジー株式会社
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6紀尾井町パークビル8F
TEL 03-5226-7291 FAX 03-5226-0268 www.linear-tech.co.jp
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LT 0311 REV D • PRINTED IN JAPAN
 LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2005