Stratix V デバイスの消費電力管理

12. Stratix V デバイスの消費電力管理
SV51013-1.1
Stratix® V デバイスは、低消費電力動作のためのプログラマブル・パワー・テクノロ
ジを提供します。これらの機能はスピード・グレードの選択と併せて、さまざまな
順列で使用して、消費電力と性能の最適な組み合わせを得ることができます。
Stratix V 温度検知ダイオード (TSD) は、放熱管理のために、アナログ / デジタル・コ
ンバータ ( 以下 ADC) を使用しており、設計者はこの機能をデザインに容易に組み込
むことができます。デバイスのジャンクション温度をいつでもモニタできるため、
デバイスへの空気流量が制御できるようになり、システム全体の消費電力の節約も
可能になります。
Stratix V FPGA は、ハイエンド・アプリケーションに革新的なシステム帯域幅および
消費電力効率を提供し、妥協のない技術革新を実現します。Stratix V デバイスは先進
的な消費電力管理技術により、集積度と性能両方を向上させる同時に、消費電力の
減少も実現できます。
FPGA の全消費電力には、スタティック消費電力とダイナミック消費電力が含まれま
す。
■
スタティック消費電力とは、FPGA がコンフィギュレーションされているが、ク
ロックが動作していないときに FPGA が消費する電力です。
■
ダイナミック電力とは、デバイスがコンフィギュレーションされ、動作している
ときのスイッチング消費電力です。ダイナミック消費電力は、式 12–1 に示す式
で計算されます。
式 12‒1. ダイナミック消費電力を求める式(1)
1
2
P = --- CV × frequency
2
式 12–1 の注:
(1) P = 消費電力 ; C = 負荷の容量 ; および V = 電源電圧レベルです。
式 12–1 に示すように、周波数はデザインに依存します。ただし、ダイナミック消費
電力値は電圧差の 2 乗によって変化するため、電圧の変更でダイナミック消費電力
を低減することができます。Stratix V デバイスは、高度なプロセス最適化およびプロ
グラマブル・パワー・テクノロジによって、スタティック消費電力とダイナミク消
費電力を最小限に抑えます。これらのテクノロジにより、Stratix V のデザインは、可
能な最小消費電力でデザイン固有の性能要件を最適な形で満たすことができます。
Quartus® II ソフトウェアは、Stratix V パワー・テクノロジによってすべてのデザイン
を最適化し、最小消費電力で性能要件を満たします。この自動プロセスにより、設
計者はデザインの消費電力を気にすることなく、デザインの機能に集中することが
できます。
消費電力は放熱管理にも影響を与えます。Stratix V デバイスは、デバイスのジャンク
ション温度を自己モニターし、FPGA への空気流量の制御などを行うために外部回路
を付加して使用する温度検知ダイオード(以下 TSD)を備えています。
2010 年 12 月
Altera Corporation
Stratix V デバイス・ハンドブック Vol 1:デバイス・インタフェースおよびインテグレーション
第 12 章 : Stratix V デバイスの消費電力管理
Stratix V プログラマブル・パワー・テクノロジ
12–2
この章は、以下の項で構成されています。
■
「
「温度検知ダイオード」」
■
「Stratix V 外部電源要件」
■
「温度検知ダイオード」
Stratix V プログラマブル・パワー・テクノロジ
Stratix V デバイスでは、ユーザの介入なしで Quartus II ソフトウェアによってタイル
と呼ばれるコアの一部を、高速モードまたは低消費電力モードに設定することがで
きます。タイルを高速モードまたは低消費電力モードに設定する動作はオンチップ
回路で完成させるため、Stratix V デバイスに電源を追加する必要はありません。デザ
インのコンパイルにおいて、Quartus II ソフトウェアはデザインのタイミング制約に
基づき、タイルを高速モードまたは低消費電力モードのいずれにする必要があるか
を判断します。
Stratix V のタイルは、以下のもので構成できます。
■
ペアへの配線を持つ MLAB(メモリ・ロジック・アレイ・ブロック )/ LAB(ロジッ
ク・アレイ・ブロック)ペア
■
ペアおよび隣接する DSP(デジタル信号処理)/ メモリ・ブロック配線への配線を
持つ MLAB/LAB ペア
■
TriMatrix メモリ・ブロック
■
DSP ブロック
■
PCI Express® (PCIe) ハード IP
■
フィジカル・コーディング・サブレイヤ (PCS)
タイルに関連するすべてのブロックおよび配線は、高速または低消費電力のいずれ
かで同じ設定を共有します。DSP ブロックまたはメモリ・ブロックを含むタイルは、
デザインで使用されるときに最適な性能を達成するために、デフォルトでは高速
モードに設定されます。未使用の DSP ブロックおよびメモリ・ブロックは、スタ
ティック消費電力を低減するために低消費電力モードに設定されます。クロック・
ネットワークは、プログラマブル・パワー・テクノロジをサポートしません。
プログラマブル・パワー・テクノロジにより、高スピード・グレードの FPGA は、低
スピード・グレードの FPGA に比べて高速 MLAB および LAB ペア数が少なくなるた
め、より少ない消費電力で動作することもあります。低スピード・グレードのデバ
イスでは性能要件を満たすためにより多くの高速 MLAB および LAB ペアが必要する
場合がありますが、高スピード・グレードのデバイスでは MLAB および LAB ペアが
低消費電力モードで性能要件を満すことができます。
Quartus II ソフトウェアでは、デザイン内の未使用デバイス・リソースを低消費電力
モードに設定して、スタティック消費電力およびダイナミック消電力を低減するこ
とができます。Quartus II ソフトウェアでは、デザインで使用しない場合は以下のリ
ソースを低消費電力モードに設定することがきます。
■
LAB および MLAB
■
TriMatrix メモリ・ブロック
■
DSP ブロック
Stratix V デバイス・ハンドブック Vol 2:デバイス・インタフェースおよびインテグレーション
2011 年 5 月
Altera Corporation
第 12 章 : Stratix V デバイスの消費電力管理
Stratix V 外部電源要件
12–3
デザインで PLL がインスタンス化される場合は、areset ピンを High にアサートし
て PLL を低消費電力モードに維持します。
表 12–1 に、Stratix V デバイスのプログラマブル・パワー機能を示します。スピー
ド・グレードの選択を考慮することにより、システムの設計における柔軟性を向上
させることが可能です。
表 12‒1. Stratix V プログラマブル・パワー機能
機能
プログラマブル・パワー・テクノロジ
LAB
使用可
配線
使用可
メモリ・ブロック
固定設定 (1)
DSP ブロック
固定設定 (1)
グローバル・クロック・ネットワーク
使用不可
表 12–1 の注 :
(1) デザインで使用される DSP ブロックおよびメモリ・ブロックを含むタイルは、常に高速モードに設
定されます。未使用の DSP ブロックおよびメモリ・ブロックはデフォルトで低消費電力モードに設
定されます。
Stratix V 外部電源要件
この項では、Stratix V デバイスに電力を供給するのに必要な各種外部電源について説
明します 。電源ピンが同じ電圧を必要とされる場合には、それらのピンに同一電源
で給電することが可能です。
f
電源ピン接続に関するガイドラインおよび電源レギュレータの共有について詳しく
は、「Stratix V GX Device Family Pin Connection Guidelines」を参照してください。
f
アルテラが推奨した電源の動作条件について詳しくは、「Stratix V デバイスの DC およ
びスイッチング特性」の章のを参照してください。
温度検知ダイオード
Stratix V TSD(温度検知ダイオード)は、PN ジャンクション・ダイオードの特性を使
用してダイ温度を決定します。放熱管理にとっては、ジャンクション温度を把握す
ることが非常に重要です。従来、ジャンクション温度は、周囲温度またはケース温
度、ジャンクションから周囲まで(ja)の熱抵抗、またはジャンクションからケース
まで(jc)の熱抵抗、およびデバイスの消費電力を使用して計算されていました。
Stratix V デバイスは、TSD を外部 ADC と併用して、ダイ温度をモニタできます。これ
により、デバイスへの空気流量が制御可能です。
2011 年 5 月
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第 12 章 : Stratix V デバイスの消費電力管理
温度検知ダイオード
12–4
内部温度検知ダイオード
Stratix V の内部温度検知ダイオードは 2 種類の動作モードで動作します。パワーアッ
プ・モードでは、内部 TSD は ALTTEMP_SENSE メガファンクションはデザインがイ
ネーブルされている場合、コンフィギュレーション間のダイ温度を読み取ります。
ALTTEMP_SENSE ファンクションは、内部の TSD 回路に clken 信号をアサートするこ
とによって、デバイスのユーザー・モード時に温度を検出することができます。デ
バイスのスタティック消費電力を低減するために、使用中の内蔵 ADC 回路しないと
きは、内部 TSD を無効にすることができます。不使用の時にビルトイン ADC 回路に
よって内部 TSD をディセーブルできます。
表 12–2 に、内部 TSD の仕様を示します。
表 12‒2. 内部温度検知ダイオード
温度範囲
正確さ
キャリブレー
ションされる
オフセットの
オプション
-40°C ~ 100°C
±8°C
なし
サンプリン
グ・レート
変換時間
分解能
1MHz、
500KHz
<100 ms
8 ビット
紛失したコー
ドなしの最小
分解能
8 ビット
表 12–2 の注:
(1) シリコン特性評価待ちです。
f
「 ALTTEMP_SENSE
ALTTEMP_SENSE メガファンクションについて詳しくは、
Megafunction User Guide」を参照してください。
外部 ADC は Stratix V デバイスの TSD を流れるバイアス電流を操作して、順方向電圧
を測定し、この測定値を 8 ビット符号付数値 (7 ビットと符号 ) の形式で温度に変換
します。この 8 ビットの出力値は、Stratix V デバイスのジャンクション温度を表し、
インテリジェント電源管理に使用されることができます。
外部ピン接続
Stratix V TSD には電圧リファレンス用の 2 本のピンが必要とされます。図 12–1 に示
すように、TSD に外部 ADC デバイスを接続することができます。例えば、MAX1619、
MAX1617A、MAX6627、および ADT 7411 などの外部温度検知デバイスを 2 本の TSD
ピンに接続して Stratix V デバイスのダイ温度を読み取ることができます。
図 12‒1. Stratix V TSD 外部ピン接続
外部TSD
TEMPDIODEP
外部
アナログ-デジタル
コンバータ
Stratix Vデバイス
TEMPDIODEN
f 外部 TSD 仕様について詳しくは、、
「Stratix V デバイスの DC およびスイッチング特性」
を参照してください。
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2011 年 5 月
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第 12 章 : Stratix V デバイスの消費電力管理
改訂履歴
12–5
TSD は、ボード上ほかのトレースから混入されたノイズ(デバイスの使用によって
デバイス・パッケージ自体にも起こり得る)に影響される恐れがある、非常に敏感
な回路です。インタフェース・デバイスは温度を TSD での電圧差のミリボルト
(mV)として記録します。TSD ピン付近にあるスイッチング I/O は温度の読み取りに
影響することがあります。そのため、アルテラはデバイスが動作していない期間に
温度を読み取ることを推奨しています。
次は TSD 外部ピン接続のボード接続ガイドラインです。
■
TEMPDIODEP/ TEMPDIODEN の最大トレース長は 8 インチ以下でなければなりませ
ん。
■
両トレースを平行で配線し、各側にグランドされたガード・トラックを付けて、
お互いに近接して配置します。
■
アルテラは両トレースの間に 10 ミルの幅とスペースをすることを推奨していま
す。
■
トレースを最小数のビアおよびクロスアンダーで配線して、熱電対効果を最小限
に抑えます。
■
両トレースのビアは同数であることを確認します。
■
両トレースのトレース長がほぼ一致であることを確認します。
■
ダイオードのトレースおよび高周波数信号の間に GND プレーンを配置して、トグ
ルする信号(例えば、クロック信号および I/O 信号)との結合を避けます。
■
高周波ノイズをフィルタするには、TEMPDIODEP/ TEMPDIODEN トレースの間に外
部コンデンサを(外部チップに近づけるよう)配置します。
■
Maxim デバイスの場合には、2200 pF ∼ 3300 pF の外部コンデンサを使用します。
■
外部デバイスの近くに 0.1 uF のバイパス・コンデンサを配置します。
■
ビルトイン ADC 回路の内部 TSD および外部 TSD を同時に使うことができます。
■
内部 ADC 回路のみ使用する場合、TSD のピンが使用されていないため、外部 TSD ピ
ン(TEMPDIODEP/ TEMPDIODEN)は GND に接続することができます。
f 外部TSDが使用されていない場合のTEMPDIODEP/ TEMPDIODEN ピンの接続に
ついて詳しくは、「Stratix V Device Family Pin Connection Guidelines」を参照し
てください。
f
デバイス仕様および接続ガイドラインについては、デバイス・メーカーからの外部
ADC/ 温度センサー・デバイスのデータシートを参照してください。
改訂履歴
表 12–3 に、本資料の改訂履歴を示します。
表 12‒3. 改訂履歴
日付
バージョ
2011 年 5 月
1.2
本章は 11.0 リリースのために Volume 2 に更新。
2010 年 12 月
1.1
Quartus II ソフトウェア 10.1 のためのこの章の内容に変更はあり
ません。
2010 年 7 月
1.0
初版。
2011 年 5 月
Altera Corporation
変更内容
Stratix V デバイス・ハンドブック Vol 2:デバイス・インタフェースおよびインテグレーション
12–6
第 12 章 : Stratix V デバイスの消費電力管理
改訂履歴
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