IGBT V-IPM PDF [1.36MB]

富士 IGBT V – IPM
アプリケーション マニュアル
2015 年 7 月
URL http: //www.fujielectric.co.jp/products/semiconductor/
RH985b
目 次
第 1 章 特長と構造
1. IGBT-IPM の特長 ............................................................................. 1-2
2. パッケージ別 IPM の特長 ................................................................... 1-3
3. 型式・ロット No.が示す内容 ................................................................. 1-5
4. ラインナップ ........................................................................................ 1-6
5. 外形図................................................................................................ 1-7
6. 構造 ................................................................................................. 1-12
第 2 章 端子記号、用語の説明
1. 端子記号の説明 ................................................................................ 2-2
2. 用語の説明 ....................................................................................... 2-3
第 3 章 機能の説明
1. 機能一覧表 ....................................................................................... 3-2
2. 機能の説明 ....................................................................................... 3-4
3. 真理値表 .......................................................................................... 3-9
4. IPM ブロック図 ............................................................................... 3-11
5. タイミングチャート............................................................................. 3-17
第 4 章 応用回路例
1. 応用回路例 ....................................................................................... 4-2
2. 注意事項 .......................................................................................... 4-6
3. フォトカプラ周辺回路 ......................................................................... 4-9
4. コネクタ ........................................................................................... 4-11
第 5 章 放熱設計
1. 冷却体(ヒートシンク)の選定方法........................................................ 5-2
2. ヒートシンク選定の注意事項 ............................................................... 5-2
3. IPM の取り付け方法 ......................................................................... 5-3
第 6 章 使用上の注意
1. 主電源 .............................................................................................. 6-2
2. 制御電源 .......................................................................................... 6-3
3. 保護機能 .......................................................................................... 6-4
4. パワーサイクル寿命 ........................................................................... 6-5
5. その他 .............................................................................................. 6-6
第 7 章 トラブル発生時の対処方法
1. トラブル発生時の対処方法 ................................................................ 7-2
2. 故障要因解析図................................................................................ 7-2
3. アラーム要因解析図 .......................................................................... 7-8
−
第 1 章
−
特長と構造
目次
ページ
1
IGBT-IPM の特長
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1-2
2
パッケージ別 IPM の特長
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1-3
3
型式・ロット No.が示す内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1-5
4
ラインナップ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1-6
5
外形図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1-7
6
構造
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1-12
1-1
第1章
1
特長と構造
IGBT-IPM の特長
IPM(インテリジェント・パワーモジュール)は、IGBT モジュールにドライブ回路と保護回路を内蔵した
制御 IC が搭載されたインテリジェント型モジュールで、次の特長を持っています。
1.1 ドライブ回路内蔵
・最適に設定された条件で IGBT をドライブします。
・ドライブ回路−IGBT 間配線長が短く、ドライブ回路のインピーダンスが低いため、逆バイアス電源が
不要です。
・必要となる制御電源は下アーム側 1、上アーム側 3、合計 4 電源です。
1.2 保護回路の内蔵
・過電流保護(OC)、短絡保護(SC)、制御電源電圧低下保護(UV)、過熱保護(TjOH)、およびこれらアラー
ムの外部出力(ALM)を内蔵します。
・OC、SC は IGBT を過電流、負荷短絡による破壊から保護する機能であり、各 IGBT に内蔵した検出
素子によりコレクタ電流を検出して行う為、どの IGBT に発生した異常でも保護可能で、さらにアーム
短絡も保護可能です。
・UV はドライブ電源の電圧低下に対して動作する保護機能であり、全制御 IC に内蔵しています。
・TjOH は各 IGBT チップ上に温度検出素子を設け、チップの異常発熱に対して高速に保護が機能します。
・ALM はアラーム信号を外部に出力する機能であり、OC、SC、UV、TjOH の保護動作時に、IPM を制
御するマイコンへアラーム信号を出す事により、システムを確実に停止する事が可能です。*1
*1 各 IPM の保護機能は、第 3 章 機能の説明をご参照下さい。
1.3 ブレーキ回路の内蔵(7in1 IPM)
・減速時の電力を消費する抵抗を付加する事でブレーキ回路を構成できます。
・インバータ部と同様にドライブ回路、保護回路を内蔵します。
1.4 RoHS 規制準拠
・V-IPM シリーズでは、全型式において、RoHS 規制に準拠しています。
1-2
第1章
2
特長と構造
パッケージ別 IPM の特長
2.1 小容量タイプ(下アームのみアラーム出力機能搭載
6in1)
600V 系 20A∼50A、1200V 系 10A∼25A を小容量タイプとしてラインナップしています。
(P629 パッケージ)
・P629 パッケージ製品は、銅ベースタイプです。放熱性に優れます。
・制御入力端子は 2.54mm 標準ピッチです。
・主端子形状が平型端子形状で、制御入力端子と同一高さである為、同一プリント板で
半田付け接続可能です。
・第 6 世代 IGBT の適応により、Vce(sat)とスイッチング損失のトレードオフを改善し、トータル損失
を低減しています。
・IGBT チップ過熱保護によりチップを異常発熱から保護します。*1
・IGBT 過電流保護は、センス IGBT 方式により検出しています。*1
・R-IPM シリーズ P619 と取付け互換があります。
*1 上アーム側では保護機能はありますが、アラーム出力機能はありません。
2.2 中容量小型タイプ(上下アームアラーム出力機能搭載
6in1)
600V 系 50A∼75A、1200V 系 25A∼50A を中容量小型タイプとしてラインナップしています。
(P626 パッケージ)
・制御入力端子は 2.54mm 標準ピッチです。
・主端子形状が平型端子形状で、制御入力端子と同一高さである為、同一プリント板で
半田付け接続可能です。
・第 6 世代 IGBT の適応により、Vce(sat)とスイッチング損失のトレードオフを改善し、トータル損失
を低減しています。
・IGBT チップ過熱保護によりチップを異常発熱から保護します。
・IGBT 過電流保護は、センス IGBT 方式により検出しています。
2.3 中容量薄型タイプ(上下アームアラーム出力機能搭載
6in1、7in1)
600V 系 50A∼200A、1200V 系 25A∼100A を中容量薄型タイプとしてラインナップしています。
また、600V 系 100A∼200A、1200V 系 50A∼100A を通常品と高放熱タイプから選択できます。
(P630 パッケージ)
・制御入力端子は 2.54mm 標準ピッチで、汎用コネクタ並びに半田付けで接続可能です。
ガイドピンによりプリント板用コネクタの挿入も容易です。
・主端子は M4 ネジです。
・ヒートシンクへの取り付けネジ径は、主端子と共通の M4 です。
・電気的接続はすべてネジ及びコネクタで、半田付けの必要がなく、取り外しも容易です。
1-3
第1章
特長と構造
・第 6 世代 IGBT の適応により、Vce(sat)とスイッチング損失のトレードオフを改善し、トータル損失
を低減しています。
・IGBT チップ過熱保護によりチップを異常発熱から保護します。
・IGBT 過電流保護は、センス IGBT 方式により検出しています。
2.4 大容量タイプ(上下アームアラーム出力機能搭載
6in1、7in1)
600V 系 200A∼400A、1200V 系 100A∼200A を大容量タイプとしてラインナップしています。
(P631 パッケージ)
・主電源入力(P1,P2,N1,N2)、ブレーキ入力(B)、及び出力端子(U,V,W)が各々近接して配置され、
メイン配線が容易なパッケージ構造です。P1 及び P2、N1 及び N2 端子は、内部で接続されています。
・主端子は M5 ネジにより、大電流接続が確実に行えます。
・ヒートシンクへの取り付けネジ径は主端子と共通の M5 です。
・電気的接続はすべてネジ及びコネクタで、半田付けの必要がなく、取り外しも容易です。
・第 6 世代 IGBT の適応により、Vce(sat)とスイッチング損失のトレードオフを改善し、トータル損失
を低減しています。
・IGBT チップ過熱保護によりチップを異常発熱から保護します。
・IGBT 過電流保護は、センス IGBT 方式により検出しています。
・R-IPM シリーズ P612 と取付け互換があります(制御端子部分は除く)。
2.5 中容量小型タイプ(上下アームアラーム出力機能搭載 6in1、7in1)
600V 系 50A∼100A、1200V 系 25A∼50A を中容量小型タイプとしてラインナップしています。
(P636 パッケージ)
・制御入力端子は 2.54mm 標準ピッチです。
・主端子形状が平型端子形状で、制御入力端子と同一高さである為、同一プリント板で
半田付け接続可能です。
・フタ上面に高さの異なる2種類の突起を設けており、ベース面から装置制御プリント板までの高さを
17.0mm、18.5mm から選択できます。
(図 1-12 参照)
・第 6 世代 IGBT の適用により、Vce(sat)とスイッチング損失のトレードオフを改善し、トータル損失
を低減しています。
・IGBT チップ過熱保護によりチップを異常発熱から保護します。
・IGBT 過電流保護は、センス IGBT 方式により検出しています。
1-4
第1章
3
型式・ロット No.が示す内容
・形式
6 MBP
50
V B A 060 -50
機種の追番
電圧定格
060:600V
120:1200V
シリーズの追番
パッケージ
A:P629
B:P626
D:P630
E:P631
F:P636
シリーズ名
インバータ部電流定格
IGBT-IPMを表す
主素子数
7:ブレーキ内蔵
6:ブレーキ無し
・ロット No.
2 1 0 0 0
追番(001~999)
生産月
1:1月
・
・
・
O:10月
N:11月
D:12月
生産年
2:2012年
3:2013年
4:2014年
・
・
・
・ラベル
6MBP50VBA060-50
50A 600V
ロットNO.
製造国 製造場所
データマトリックス
1-5
特長と構造
第1章
4
特長と構造
ラインナップ
600V系
パッケージ
P629
P626
P630
P631
P636
20A
30A
50A
75A
6MBP20VAA060-50
6MBP30VAA060-50
6MBP50VAA060-50
-
6MBP50VBA060-50
6MBP75VBA060-50
-
7/6MBP50VFN060-50
7/6MBP75VFN060-50
100A
-
-
-
7/6MBP100VFN060-50
150A
-
-
-
-
200A
-
-
7/6MBP50VDA060-50
7/6MBP75VDA060-50
7/6MBP100VDA060-50
7/6MBP100VDN060-50
7/6MBP150VDA060-50
7/6MBP150VDN060-50
7/6MBP200VDA060-50
7/6MBP200VDN060-50
-
7/6MBP200VEA060-50
-
7/6MBP300VEA060-50
7/6MBP400VEA060-50
-
電流定格
300A
400A
注) 7/6MBP***VDN060-50は高放熱タイプです。
1200V系
パッケージ
P629
P626
P630
P631
P636
10A
15A
25A
35A
6MBP10VAA120-50
6MBP15VAA120-50
6MBP25VAA120-50
-
6MBP25VBA120-50
6MBP35VBA120-50
-
7/6MBP25VFN120-50
7/6MBP35VFN120-50
50A
-
6MBP50VBA120-50
-
7/6MBP50VFN120-50
75A
-
-
-
-
100A
-
-
7/6MBP25VDA120-50
7/6MBP35VDA120-50
7/6MBP50VDA120-50
7/6MBP50VDN120-50
7/6MBP75VDA120-50
7/6MBP75VDN120-50
7/6MBP100VDA120-50
7/6MBP100VDN120-50
-
7/6MBP100VEA120-50
-
7/6MBP150VEA120-50
7/6MBP200VEA120-50
-
電流定格
150A
200A
注) 7/6MBP***VDN120-50は高放熱タイプです。
1-6
第1章
5
特長と構造
外形図
注) 1. □は理論寸法を示す。
2. 端子ピッチは根元寸法とする。
3.( )内寸法は、参考値とする。
4. 端子: Sn系メッキ
(半田付け仕様)
[ 寸法: mm]
図 1-1 外形図
(P629)
対象型式: 6MBP20VAA060-50、6MBP30VAA060-50、6MBP50VAA060-50
6MBP10VAA120-50、6MBP15VAA120-50、6MBP25VAA120-50
1-7
第1章
特長と構造
注) 1.□は理論寸法を示す。
2.端子ピッチは根元寸法とする。
3.端子: Sn系メッキ
(半田付け仕様)
[寸法: mm]
図 1-2 外形図
(P626)
対象型式:6MBP50VBA060-50、6MBP75VBA060-50
6MBP25VBA120-50、6MBP35VBA120-50、6MBP50VBA120-50
1-8
第1章
特長と構造
注) 1.□は理論寸法を示す。
2.端子ピッチは根元寸法とする。
3.( )内寸法は、参考値とする。
4.主端子: Niメッキ
制御端子: 下地Ni+表面Auメッキ
(コネクタ、半田付け仕様)
5.制御端子両側にあるガイドピンは、黄銅(しんちゅう)です。
(内部は、絶縁されており、どの部分にも接続されていません。)
[寸法:mm]
図 1-3 外形図
(P630)
対象型式:
7/6MBP50VDA060-50、7/6MBP75VDA060-50、7/6MBP100VDA060-50、7/6MBP100VDN060-50、7/6MBP150VDA060-50
7/6MBP150VDN060-50、7/6MBP200VDA060-50、7/6MBP200VDN060-50、7/6MBP25VDA120-50、7/6MBP35VDA120-50
7/6MBP50VDA120-50、7/6MBP50VDN120-50、7/6MBP75VDA120-50、7/6MBP75VDN120-50、7/6MBP100VDA120-50
7/6MBP100VDN120-50
1-9
第1章
特長と構造
注) 1.□は理論寸法を示す。
2.端子ピッチは根元寸法とする。
3.( )内寸法は、参考値とする。
4.主端子: Niメッキ
制御端子: 下地Ni+表面Auメッキ
(コネクタ、半田付け仕様)
5.制御端子両側にあるガイドピンは、黄銅(しんちゅう)です。
(内部は、絶縁されており、どの部分にも接続されていません。)
[寸法:mm]
図 1-4 外形図
(P631)
対象型式:7/6MBP200VEA060-50、7/6MBP300VEA060-50、7/6MBP400VEA060-50
7/6MBP100VEA120-50、7/6MBP150VEA120-50、7/6MBP200VEA120-50
1-10
第1章
特長と構造
注) 1.□は理論寸法を示す。
2.端子ピッチは根元寸法とする。
3.( )内寸法は、参考値とする。
4.端子: Sn系メッキ
(半田付け仕様)
[寸法: mm]
図 1-5 外形図
(P636)
対象型式:7/6MBP50VFN060-50、7/6MBP75VFN060-50、7/6MBP100VFN060-50
7/6MBP25VFN120-50、7/6MBP35VFN120-50、7/6MBP50VFN120-50
1-11
第1章
6
特長と構造
構造
※本図は、材料説明のための図であり、正確なチップサイズやレイアウトを表記したものではありません。
No.
部品名
材料(主)
1 絶縁基板
2 IGBT チップ
セラミック
シリコン
3 FWD チップ
4 プリント基板 (PCB)
5 IC チップ
シリコン
6 ベース
7 主端子
銅
銅
ガラスエポキシ
備考
ハロゲンフリー
シリコン
ニッケルメッキ
下地:ニッケルメッキ
表面:すずー銅メッキ
8 フタ
9 ケース
PPS樹脂
PPS樹脂
UL 94V-0
UL 94V-0
10 ワイヤー
11 ゲル
アルミニウム
シリコーン樹脂
12 制御端子
黄銅(しんちゅう)
下地:ニッケルメッキ
表面:すずー銅メッキ
*1:鉛ガラスは、RoHS対象外。
図 1-6 構造(P629)
1-12
第1章
特長と構造
※ 本図は、材料説明のための図であり、正確なチップサイズやレイアウトを表記したものではありません。
No.
部品名
1 絶縁基板
材料(主)
備考
セラミック
2 IGBT チップ
シリコン
3 FWD チップ
4 プリント基板 (PCB)
5 IC チップ
シリコン
6 ベース
7 主端子
銅
銅
ガラスエポキシ
ハロゲンフリー
シリコン
ニッケルメッキ
下地:ニッケルメッキ
表面:すずー銅メッキ
8 フタ
9 ケース
PPS樹脂
PPS樹脂
UL 94V-0
UL 94V-0
10 ワイヤー
11 ゲル
アルミニウム
シリコーン樹脂
12 制御端子
黄銅(しんちゅう)
下地:ニッケルメッキ
表面:すずー銅メッキ
*1:鉛ガラスは、RoHS対象外。
図 1-7 構造(P626)
1-13
第1章
特長と構造
※本図は、材料説明のための図であり、正確なチップサイズやレイアウトを表記したものではありません。
No.
部品名
1 絶縁基板
材料(主)
備考
セラミック
2 IGBT チップ
シリコン
3 FWD チップ
4 プリント基板 (PCB)
5 IC チップ
シリコン
6 ベース
7 主端子
銅
銅
ニッケルメッキ
表面:ニッケルメッキ
8 フタ
PPS樹脂
UL 94V-0
9 ケース
10 ワイヤー
PPS樹脂
アルミニウム
UL 94V-0
11 ゲル
12 制御端子
シリコーン樹脂
黄銅(しんちゅう)
ガラスエポキシ
ハロゲンフリー
シリコン
下地:ニッケルメッキ
表面:金メッキ
13 ガイドピン
*1:鉛ガラスは、RoHS対象外。
黄銅(しんちゅう)
図 1-8 構造(P630)
1-14
第1章
特長と構造
※本図は、材料説明のための図であり、正確なチップサイズやレイアウトを表記したものではありません。
No.
部品名
1 絶縁基板
材料(主)
備考
セラミック
2 IGBT チップ
シリコン
3 FWD チップ
4 プリント基板 (PCB)
5 IC チップ
シリコン
6 ベース
7 主端子
銅
銅
ニッケルメッキ
表面:ニッケルメッキ
8 フタ
PPS樹脂
UL 94V-0
9 ケース
10 ワイヤー
PPS樹脂
アルミニウム
UL 94V-0
11 ゲル
12 制御端子
シリコーン樹脂
黄銅(しんちゅう)
ガラスエポキシ
ハロゲンフリー
シリコン
下地:ニッケルメッキ
表面:金メッキ
13 ガイドピン
*1:鉛ガラスは、RoHS対象外。
黄銅(しんちゅう)
図 1-9 構造(P631)
1-15
第1章
※ 本図は、材料説明のための図であり、正確なチップサイズやレイアウトを表記したものではありません。
No.
部品名
材料(主)
備考
1 絶縁基板
セラミック
2 IGBT チップ
シリコン
3 FWD チップ
4 プリント基板 (PCB)
シリコン
5 IC チップ
シリコン
6 ベース
銅
ニッケルメッキ
7 主端子
銅
表面:すず系メッキ
8 フタ
PBT樹脂
UL 94V-0
9 ケース
PPS樹脂
UL 94V-0
ハロゲンフリー
ガラスエポキシ
10 ワイヤー
アルミニウム
11 ゲル
シリコーン樹脂
12 リング
SUS
13 制御端子
黄銅(しんちゅう)
図 1-10 構造(P636)
1-16
表面:すず系メッキ
特長と構造
第1章
特長と構造
・IPM の主端子(ネジタイプ)
主端子部の構造を以下に示します。
電極
A 部断面図
図 1-11
IPM の主端子部の構造(例 P630)
表 1-1 IPM 主端子部の仕様
PKG
ネジ規格
主端子
ナット部
ネジ部
厚さ(B)
深さ(C)
深さ(D)
P630
M4
0.8
3.5
8.5±0.5
P631
M5
1
4
9.0±0.5
〔単位:mm〕
・IPM のガイドピン
P630 及び P631 の制御端子部の両側にあるガイドピンは黄銅(しんちゅう)です。内部は絶縁されて
おり、どの部分にも接続されていません。
1-17
第1章
・P636 パッケージ
特長と構造
フタ上面の突起高さについて
P636 のフタ上面突起の活用方法を変える事により、突起部で支える装置制御プリント板高さを
IPM 底面から 17.0mm ・ 18.5mm の2種類から選択する事が可能です。
(a)
18.5 ㎜高さとする場合
(b)
図 1-12 突起高さ活用方法
1-18
17.0 ㎜高さとする場合
−
第 2 章
−
端子記号、用語の説明
目次
ページ
1
端子記号の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2-2
2
用語の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2-3
2-1
第2章
1
端子記号、用語の説明
端子記号の説明
主端子
端子記号
P (P1、P2)
N (N1、N2)
B
U
V
W
内容
インバータ装置の整流コンバータ平滑後の主電源Vdc入力端子
P:+側、N:-側
ブレーキ入力端子:減速時に回生動作用抵抗電流を入力する端子
三相インバータ出力端子
*P1、P2、N1、N2 端子は P631 パッケージのみ。
制御端子
端子記号
GND U
Vcc U
Vin U
ALM U
GND V
Vcc V
Vin V
ALM V
GND W
Vcc W
Vin W
ALM W
GND
Vcc
Vin X
Vin Y
Vin Z
Vin DB
ALM
P629
P626
P630
P636
P631
①
③
②
-
④
⑥
⑤
-
⑦
⑨
⑧
-
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
-
⑮
①
④
③
②
⑤
⑧
⑦
⑥
⑨
⑫
⑪
⑩
⑬
⑭
⑯
⑰
⑱
⑮
⑲
①
③
②
④
⑤
⑦
⑥
⑧
⑨
⑪
⑩
⑫
⑬
⑭
⑯
⑰
⑱
⑮
⑲
内容
上アームU相の制御電源Vcc入力
Vcc U:+側、GND U:-側
上アームU相の制御信号入力
保護回路動作時の上アームU相のアラーム出力
上アームV相の制御電源Vcc入力
Vcc V:+側、GND V:-側
上アームV相の制御信号入力
保護回路動作時の上アームV相のアラーム出力
上アームW相の制御電源Vcc入力
Vcc W:+側、GND W:-側
上アームW相の制御信号入力
保護回路動作時の上アームW相のアラーム出力
下アーム共通の制御電源Vcc入力
Vcc :+側、GND :-側
下アームX相の制御信号入力
下アームY相の制御信号入力
下アームZ相の制御信号入力
下アームブレーキ相の制御信号入力
保護回路動作時の下アームのアラーム信号ALM出力
*P626 の⑮ピンは no contact です。
*P636(6in1)、P631(6in1)、P630(6in1)の⑮ピンは no contact です。
2-2
第2章
2
端子記号、用語の説明
用語の説明
2.1 絶対最大定格
用語
電源電圧
電源電圧(短絡時)
コレクタ・エミッタ間電圧
記号
VDC
VSC
VCES
コレクタ電流
FWD順電流
コレクタ損失
IC
ICP
-IC
IF
PC
制御電源電圧
入力電圧
アラーム印加電圧
アラーム出力電流
チップ接合部温度
動作時ケース温度
保存温度
半田温度
絶縁耐圧
VCC
Vin
VALM
IALM
Tj
Topr
Tstg
Tsol
Viso
締付けトルク
端子
取付
-
内容
PN端子間に印加できる直流電源電圧
短絡・過電流保護可能なPN端子間直流電源電圧
内蔵するIGBTチップのコレクタ・エミッタ間最大電圧及び、
FWDチップの繰返しピーク逆電圧(ブレーキ部はIGBTのみ)
IGBTチップに許容される最大直流コレクタ電流
IGBTチップに許容される最大パルスコレクタ電流
FWDチップに許容される最大直流順電流
ブレーキ部FWDチップに許容される最大直流順電流
IGBTチップ1素子で消費できる電力の最大値
Tc=25℃の時、Tj=150℃となる損失
Vcc-GND端子間に印加できる電圧
Vin-GND端子間に印加できる電圧
ALM-GND端子間に印加できる電圧
ALM-GND端子間に流せる電流の最大値
IGBT,FWDチップが連続動作できるチップ接合温度の最大値
電気的動作ができるケース温度範囲(ケース温度Tc測定点を図5-4に示す。)
電気的負荷をかけずに保存または輸送できる周囲温度の範囲
半田付け時の最大温度
全端子を短絡した状態で、端子と冷却体取付け面間に許容される
正弦波電圧の最大実効値
所定のネジで、端子と外部配線を接続する際の最大トルク
所定のネジで、素子を冷却体(ヒートシンク)に取付ける際の最大トルク
2.2 電気的特性
2.2.1 主回路
用語
コレクタ・エミッタ間遮断電流
記号
ICES
コレクタ・エミッタ間飽和電圧
VCE(sat)
ダイオード順電圧
ターンオン時間
VF
ton
ターンオフ時間
toff
立下り時間
tf
逆回復時間
trr
デッドタイム
tdead
内容
全入力信号HでIGBTのコレクタとエミッタ間に指定の電圧
を印加した時の漏れ電流
測定対象素子の入力信号のみをL(=0V)、他の全素子の入力をHとした時、
コレクタ電流を流した時のコレクタ・エミッタ間電圧
全入力信号Hで、ダイオードに電流を流した時の順方向電圧
入力信号が入力閾値電圧Vinth(on)を下回ってから、コレクタ電流が所要電流の90%以上に
なるまでの時間。図2-1に示す。
入力信号が入力閾値電圧Vinth(off)を上回ってから、コレクタ電流が減少する接線上で
所要電流の10%以下になるまでの時間。図2-1に示す。
IGBTターンオフ時にコレクタ電流が所要電流の90%から、
減少する電流の接線上で10%以下になるまでの時間
図2-1に示す。
内蔵ダイオードの逆回復電流が減少する接線上で消滅するまでに要する時間
図2-1に示す。
上下アーム入力信号休止期間。図2-5に示す。
2-3
第2章
端子記号、用語の説明
2.2.2 制御回路
用語
制御電源消費電流
記号
Iccp
Iccn
Vinth(on)
Vinth(off)
内容
上アーム側 制御電源Vcc-GND間に流れる電流
下アーム側 制御電源Vcc-GND間に流れる電流
制御ICが入力電圧をON信号と認識できる電圧
制御ICが入力電圧をOFF信号と認識できる電圧
記号
Ioc
tdoc
Isc
tsc
TjOH
TjH
内容
過電流保護(OC)動作するIGBTコレクタ電流
過電流保護トリップから保護開始までの遅れ時間。図2-3に示す
短絡保護(SC)動作するIGBTコレクタ電流
短絡保護トリップから保護開始までの遅れ時間。図2-4に示す
IGBTチップ接合部温度Tjが過熱して、IGBTを遮断するトリップ温度
保護動作後、出力停止がリセットされるまでに必要な降下温度
VUV
VH
制御電源電圧Vccが低下して、IGBTをソフト遮断するトリップ電圧
保護動作後、出力停止がリセットされるまでに必要な復帰電圧
tALM(OC)
tALM(UV)
tALM(TjOH)
RALM
過電流保護(OC)動作によるアラーム信号出力パルス幅
制御電源電圧低下保護(UV)動作によるアラーム信号出力パルス幅
チップ過熱保護(TjOH)動作によるアラーム信号出力パルス幅
アラーム端子に直列に接続された内蔵抵抗の値
フォトカプラ1次側順電流を制限する
ケース・フィン間熱抵抗
記号
Rth(j-c)Q
Rth(j-c)D
Rth(c-f)
ケース温度
Tc
内容
IGBTのチップ・ケース間の熱抵抗
ダイオードのチップ・ケース間の熱抵抗
サーマル・コンパウンドを用いて推奨トルク値にて冷却体
に取り付けた状態でのケース・冷却体間の熱抵抗
IPMのケース温度(IGBTあるいはダイオード直下の銅ベース下面の温度)
入力閾値電圧
2.2.3 保護回路
用語
過電流保護動作電流
過電流遮断遅れ時間
短絡保護動作電流
短絡保護遅れ時間
チップ過熱保護温度
チップ過熱保護
ヒステリシス
制御電源電圧低下保護電圧
制御電源電圧低下保護
ヒステリシス
アラーム出力保持時間
アラーム出力抵抗
2.3 熱特性
用語
チップ・ケース間熱抵抗
2.4 ノイズ耐量
用語
コモンモードノイズ
記号
-
内容
弊社テスト回路におけるコモンモードノイズ耐量
2.5 その他
用語
質量
スイッチング周波数
逆回復電流
逆バイアス安全動作領域
スイッチング損失
逆電圧
入力電流
記号
Wt
fsw
Irr
RBSOA
Eon
Eoff
Err
VR
Iin
内容
IPM単体の重量
制御信号入力端子に入力できる制御信号周波数範囲
逆回復電流のピーク値。図2-1に示す
ターンオフ時に指定の条件にてIGBTを遮断できる電流と電圧の領域
この領域を越えて使用すると、素子が破壊する可能性があります
ターンオン時のIGBTスイッチング損失
ターンオフ時のIGBTスイッチング損失
逆回復時のFWDスイッチング損失
ブレーキ部FRDチップの繰返しピーク逆電圧
Vin-GND端子に流せる電流の最大値
2-4
第2章
Vinth(on)
端子記号、用語の説明
Vinth(off)
off
on
Input signal
trr
Irr
90%
90%
Collector current
tf
toff
ton
図 2−1 スイッチング時間
With protection factor
Protection factor
High
Without
protection factor
tALM
VALM
Low
OFF
High
Vin
Low
ON
IC
IGBT
guard
state
Protected period
図 2−2 アラーム出力保持時間(tALM)
2-5
10%
第2章
端子記号、用語の説明
off
on
Input signal
IOC
Collector current
Alarm output
①
②
< t doc
図 2−3 過電流遮断遅れ時間(tdoc)
tSC
Isc
IC
VALM
図 2−4 短絡保護遅れ時間(tsc)
2-6
alarm
≧tdoc
第2章
Vin Vinth(off)
ターンオフ側
Ic
Vin
tdead
Vinth(on)
ターンオン側
Ic
図 2−5 デッドタイム
2-7
端子記号、用語の説明
−
第 3 章
−
機能の説明
目次
ページ
1
機能一覧表
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3-2
2
機能の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3-4
3
真理値表
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3-9
4
IPM ブロック図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3-11
5
タイミングチャート
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3-17
3-1
第3章
1
機能の説明
機能一覧表
V-IPM に内蔵する機能を表 3-1、3-2 に示します。
表 3-1 IPM 内蔵機能 600V 系
素子数
6 in 1
7 in 1
型式
6MBP20VAA060-50
6MBP30VAA060-50
6MBP50VAA060-50
6MBP50VBA060-50
6MBP75VBA060-50
6MBP50VDA060-50
6MBP75VDA060-50
6MBP100VDA060-50
6MBP100VDN060-50
6MBP150VDA060-50
6MBP150VDN060-50
6MBP200VDA060-50
6MBP200VDN060-50
6MBP200VEA060-50
6MBP300VEA060-50
6MBP400VEA060-50
6MBP50VFN060-50
6MBP75VFN060-50
6MBP100VFN060-50
7MBP50VDA060-50
7MBP75VDA060-50
7MBP100VDA060-50
7MBP100VDN060-50
7MBP150VDA060-50
7MBP150VDN060-50
7MBP200VDA060-50
7MBP200VDN060-50
7MBP200VEA060-50
7MBP300VEA060-50
7MBP400VEA060-50
7MBP50VFN060-50
7MBP75VFN060-50
7MBP100VFN060-50
Drive
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
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○
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○
内蔵機能
上下アーム共通
UV TjOH
OC / SC
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上アーム 下アーム パッケージ
ALM
ALM
○
P629
○
○
○
○
P626
○
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○
P630
○
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P631
○
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P636
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P630
○
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○
○
○
○
P631
○
○
○
○
○
○
P636
○
○
○
○
Drive:IGBT 駆動回路、UV:制御電源電圧低下保護、TjOH:チップ温度過熱保護、OC:過電流保護、
SC:短絡保護、ALM:アラーム信号出力
3-2
第3章
機能の説明
表 3-2 IPM 内蔵機能 1200V 系
素子数
6 in 1
7 in 1
型式
6MBP10VAA120-50
6MBP15VAA120-50
6MBP25VAA120-50
6MBP25VBA120-50
6MBP35VBA120-50
6MBP50VBA120-50
6MBP25VDA120-50
6MBP35VDA120-50
6MBP50VDA120-50
6MBP50VDN120-50
6MBP75VDA120-50
6MBP75VDN120-50
6MBP100VDA120-50
6MBP100VDN120-50
6MBP100VEA120-50
6MBP150VEA120-50
6MBP200VEA120-50
6MBP25VFN120-50
6MBP35VFN120-50
6MBP50VFN120-50
7MBP25VDA120-50
7MBP35VDA120-50
7MBP50VDA120-50
7MBP50VDN120-50
7MBP75VDA120-50
7MBP75VDN120-50
7MBP100VDA120-50
7MBP100VDN120-50
7MBP100VEA120-50
7MBP150VEA120-50
7MBP200VEA120-50
7MBP25VFN120-50
7MBP35VFN120-50
7MBP50VFN120-50
Drive
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
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内蔵機能
上下アーム共通
OC / SC
UV TjOH
○
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上アーム 下アーム パッケージ
ALM
ALM
○
P629
○
○
○
○
P626
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
P630
○
○
○
○
○
○
○
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○
○
P631
○
○
○
○
○
○
P636
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
P630
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
P631
○
○
○
○
○
○
P636
○
○
○
○
Drive:IGBT 駆動回路、UV:制御電源電圧低下保護、TjOH:チップ温度過熱保護、OC:過電流保護、
SC:短絡保護、ALM:アラーム信号出力
3-3
第3章
2
機能の説明
機能の説明
2.1 三相インバータ用 IGBT、FWD
図 3-1 に示すように、三相インバータ用 IGBT 及び FWD を内蔵し、IPM 内部で三相ブリッジ回路を構成
しています。P、N 端子に主電源を、U、V、W 端子に三相出力線を接続すれば主配線は完成します。
サージ電圧を抑えるために、スナバ回路を接続して使用下さい。
2.2 ブレーキ用 IGBT、FWD
図 3-1 に示すように、ブレーキ用 IGBT 及び FWD を内蔵し、IGBT のコレクタ電極が B 端子として外部
に出力されています。ブレーキ抵抗を P−B 端子間に接続して、ブレーキ IGBT を制御することで、減速時
の回生エネルギーを消費し、P−N 端子間の電圧上昇を抑えることができます。
P-side
PWM input
Alarm
output
Alarm
output
Alarm
output
IPM
Pre-Driver
Pre-Driver
Pre-Driver
P
B
U
V
W
N
Pre-Driver
Pre-Driver
Brake
input
図 3-1
Pre-Driver
N-side
PWM input
Pre-Driver
Alarm
output
3 相インバータ適用例(例:7MBP200VDA060-50 ブレーキ内蔵)
3-4
第3章
機能の説明
2.3 IGBT ドライブ機能
図 3-2 に Pre-Driver のブロック図を示します。IPM は IGBT のドライブ機能を内蔵しているので、フォ
トカプラ出力を IPM に接続すれば、ゲート抵抗値を設計することなく、IGBT を駆動することができます。
本ドライブ機能の特長を次に紹介します。
□
独立したゲート出力制御
単一のゲート抵抗を用いず、ターンオン及びターンオフ専用のドライブ回路を内蔵しています。これ
により、ターンオンとターンオフの dv/dt を独立に制御できるため、素子の特性を十分に発揮することが
できます。
□
ソフト遮断
各種の異常モード時の保護動作で IGBT を遮断する際にゲート電圧を緩やかに低下させ、IGBT の遮
断に伴うサージ電圧の発生を抑制し、サージ電圧によって素子が破壊することを防止します。
□
誤オン防止
IGBT のゲート電極を低インピーダンスでエミッタ接地する回路を設けているため、ターンオフ時に
ノイズ等で VGE が上昇し誤ってオンすることを防止します。
□
逆バイアス電源不要
IPM は制御 IC と IGBT 間の配線が短いので、配線インピーダンスが小さく、逆バイアス無しで駆動
することができます。
VCC
VCC
IN
OUT
VCC
ALM
PGND
OC
VCC
VCC
OH
ロジック回路
SGND
VCC
図 3-2
Pre-Driver ブロック図(例:7MBP200VDA060-50)
3-5
第3章
機能の説明
2.4 保護機能
IPM は保護回路を内蔵しており、素子破壊の要因となる異常モードから IPM を保護します。異常モード
の要因に合わせて 4 種類の保護機能が働きます。異常モードは、OC(過電流保護)、SC(短絡保護)、UV(制
御電源電圧低下保護)、TjOH(チップ温度過熱保護)です。
保護機能が動作すると、アラーム出力用 MOS がオンし、アラーム出力端子電圧が、High から Low に変
化し、アラーム出力端子は各基準電位 GND に対して導通します。また、制御 IC とアラーム出力端子間に
直列に 1.3KΩ の抵抗を内蔵しているため、ALM 端子と VCC 端子との間に接続するフォトカプラを直接駆
動できます。
□
アラーム信号出力機能
保護動作期間中は、オン信号を入力しても IGBT は動作しません。各種の異常モードを識別して IGBT
をソフト遮断し、異常モードを検知した相からそれぞれアラーム信号出力が可能です。
・ アラーム信号出力期間(tALM)以上が経過し、アラーム要因が解消され、かつ入力信号がオフなら、保
護動作は解除され通常動作を再開します。
・ アラーム信号出力期間(tALM)内にアラーム要因が解消された場合でも、アラーム信号出力期間(tALM)
までは保護動作が継続するため、IGBT は動作しません。アラーム信号出力期間(tALM)経過後に入力
信号がオフであれば保護動作は解除され通常動作を再開します。
また、下アーム側はブレーキを含め各相についてアラーム間相互接続しているため、下アーム側が保護
動作すると保護動作期間は下アーム全 IGBT がソフト遮断して動作を停止します。
*P629 パッケージは、上アーム側の保護機能は内蔵しておりますが、アラーム信号出力機能は内蔵して
おりません。下相については、保護機能とアラーム信号出力機能を内蔵しております。
□
アラーム要因識別機能
各種の異常モードの要因に応じてアラーム信号出力期間(tALM)が異なるので、出力されるアラーム信
号パルス幅によって、装置側で異常モードの要因識別を行うことができます。
アラーム信号出力期間 (tALM)
アラーム要因
過電流保護(OC)
2ms(typ.)
短絡保護(SC)
制御電源電圧低下保護(UV)
4ms(typ.)
チップ温度過熱保護(TjOH)
8ms(typ.)
ただし、アラーム用フォトカプラの 2 次側におけるアラーム信号出力時間は、フォトカプラの遅れ時
間や周辺回路の影響で変わります。設計にあたっては、この影響を考慮する必要があります。
3-6
第3章
機能の説明
2.5 過電流保護機能:Over Current(OC)
IGBT チップに内蔵する電流センス IGBT に流れるセンス電流を制御回路に取り込むことで、IGBT の順
方向のコレクタ電流を検出します。設定する電流保護レベル(IOC)以上の電流が約 5μs(tdOC)期間連続
して流れると、OC 状態と判定して IGBT をソフト遮断し、過電流による破壊を防ぎます。OC 状態と判定
された時、保護機能とアラーム信号出力機能が動作します。
OC 状態のアラーム信号出力期間(tALM)は約 2ms
です。
・ アラーム信号出力から約 2ms(tALM)後に IOC レベルを下回り、かつ入力信号がオフなら、保護動作は解
除され通常動作を再開します。
・ 約 2ms (tALM)内にアラーム要因が解消された場合でも、約 2ms (tALM)までは保護動作が継続するため、
IGBT は動作しません。約 2ms (tALM)経過後に入力信号がオフであれば保護動作は解除され通常動作を
再開します。
2.6 短絡保護機能:Short Circuit(SC)
SC 保護機能は、負荷短絡やアーム短絡時のピーク電流を抑制します。IGBT の順方向のコレクタ電流を
検出し、設定する電流保護レベル(ISC)以上の電流が tdSC 期間連続して流れると、SC 状態と判定して IGBT
をソフト遮断し、短絡による破壊を防ぎます。SC 状態と判定された時、保護機能とアラーム信号出力機能
が動作します。SC 状態のアラーム信号出力期間(tALM)は約 2ms です。
・ アラーム信号出力から約 2ms(tALM)後に ISC レベルを下回り、かつ入力信号がオフなら、保護動作は解
除され通常動作を再開します。
・ 約 2ms (tALM)内にアラーム要因が解消された場合でも、約 2ms (tALM)までは保護動作が継続するため、
IGBT は動作しません。約 2ms (tALM)経過後に入力信号がオフであれば保護動作は解除され通常動作を
再開します。
2.7 制御電源電圧低下保護機能:Control Supply Under-Voltage(UV)
UV 保護機能は、制御電源電圧(VCC)の低下により生じる制御 IC の誤動作や IGBT の VCE(sat)損失増加に
よる熱破壊を防止します。VCC が設定された電圧保護レベル(VUV)を約 20μs 期間連続して下回ると、UV 状
態と判定して IGBT をソフト遮断し、制御電源電圧低下による誤動作と破壊を防ぎます。UV 状態と判定さ
れた時、保護機能とアラーム信号出力機能が動作します。UV 状態のアラーム信号出力期間(tALM)は約 4ms
です。
・ ヒステリシス VH を設けてあるので、アラーム信号出力から約 4ms(tALM)後に VCC が VUV+ VH を上
回り、かつ入力信号がオフなら、保護動作は解除され通常動作を再開します。
・ 約 4ms (tALM)内にアラーム要因が解消された場合でも、約 4ms (tALM)までは保護動作が継続するた
め、IGBT は動作しません。約 4ms (tALM)経過後に入力信号がオフであれば保護動作は解除され通
常動作を再開します。
また、制御電源電圧 VCC の立ち上がり時・立ち下り時には、UV 状態を判定するアラーム信号が
出力されます。
3-7
第3章
機能の説明
2.8 チップ温度過熱保護機能:IGBT chip Over Heat protection (TjOH)
TjOH 保護機能は全ての IGBT チップに内蔵された温度検出用素子により、IGBT チップ温度を直接検出
します。保護レベル(TjOH)を約 1.0ms 期間連続して上回ると、過熱状態と判定して IGBT をソフト遮断し、
TjOH 保護機能により素子の破壊を防ぎます。TjOH 状態と判定された時、保護機能とアラーム信号出力機
能が動作します。UV 状態のアラーム信号出力期間(tALM)は約 8ms です。
・ ヒステリシス TjH を設けてあるので、アラーム信号出力から約 8ms(tALM)後に Tj が TjOH−TjH を下
回り、かつ入力信号がオフなら、保護動作は解除され通常動作を再開します。
・ 約 8ms (tALM)内にアラーム要因が解消された場合でも、約 8ms (tALM)経過までは保護動作が継続す
るため、IGBT は動作しません。約 8ms (tALM)経過後に入力信号がオフであれば保護動作は解除さ
れ通常動作を再開します。
なお、旧シリーズに内蔵されていたケース温度過熱保護機能(TCOH)は、本 V シリーズでは内蔵されてお
りません。TjOH 保護機能により IGBT チップ過熱状態については保護可能です。
3-8
第3章
3
機能の説明
真理値表
故障発生時の真理値表を、表 3-3∼3-5 に示します。
表 3-3 真理値表(P629)
IGBT
アラーム要因
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
U相
V相
W相
下アーム側
X、Y、Z 相
アラーム信号出力
U相
OFF
OFF
OFF
OFF
V相
W相
下アーム側
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
ALM-Low side
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
Low
Low
Low
Low
*入力信号に依存
表 3-4 真理値表(P626)
アラーム要因
U相
V相
W相
下アーム側
X、Y、Z 相
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
IGBT
U相
OFF
OFF
OFF
OFF
V相
W相
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
*
*
下アーム側 ALM-U
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*入力信号に依存
3-9
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
Low
Low
Low
Low
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
アラーム信号出力
ALM-V ALM-W ALM-Low side
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
第3章
機能の説明
表 3-5 真理値表(P630、P631、P636)
アラーム要因
U相
V相
W相
下アーム側
X、Y、Z、B 相
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
OC
SC
UV
TjOH
U相
OFF
OFF
OFF
OFF
V相
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
*
*
*
*
*
IGBT
W相
下アーム側 ALM-U
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
OFF
OFF
OFF
OFF
*入力信号に依存
3-10
*
*
*
Low
Low
Low
Low
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
アラーム信号出力
ALM-V ALM-W ALM-Low side
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
High
High
Low
第3章
4
機能の説明
IPM ブロック図
IPM ブロック図を、図 3-3∼3-10 に示します。
P
VccU ③
VinU ②
Pre-Driver
U
GNDU ①
VccV ⑥
VinV ⑤
Pre-Driver
V
GNDV ④
VccW ⑨
VinW ⑧
Pre-Driver
W
GNDW ⑦
Vcc ⑪
VinX ⑫
VinY ⑬
Pre-Driver
VinZ ⑭
GND ⑩
ALM ⑮
N
RALM
図 3-3 IPM ブロック図(P629)
3-11
第3章
P
VccU ④
VinU ③
ALMU ②
機能の説明
Pre-Driver
RALM
U
GNDU ①
VccV ⑧
VinV ⑦
ALM V ⑥
Pre-Driver
RALM
V
GNDV ⑤
VccW ⑫
VinW ⑪
ALM W ⑩
Pre-Driver
RALM
GNDW ⑨
W
Vcc ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
VinZ ⑱
Pre-Driver
⑮
ALM ⑲
N
RALM
図 3-4 IPM ブロック図(P626)
3-12
第3章
P
VccU ④
VinU ③
ALMU ②
機能の説明
Pre-Driver
RALM
U
GNDU ①
VccV ⑧
VinV ⑦
ALM V ⑥
Pre-Driver
RALM
GNDV ⑤
V
VccW ⑫
VinW ⑪
ALM W ⑩
Pre-Driver
RALM
W
GNDW ⑨
Vcc ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
B
VinZ ⑱
Pre-Driver
⑮
ALM ⑲
N
RALM
図 3-5 IPM ブロック図(P630 ブレーキなし)
3-13
第3章
VccU ④
P
VinU ③
ALMU ②
機能の説明
Pre-Driver
RALM
GNDU ①
U
VccV ⑧
VinV ⑦
ALM V ⑥
Pre-Driver
RALM
GNDV ⑤
V
VccW ⑫
VinW ⑪
ALM W ⑩
Pre-Driver
RALM
GNDW ⑨
W
Vcc ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
VinZ ⑱
Pre-Driver
B
VinDB ⑮
ALM ⑲
Pre-Driver
N
RALM
図 3-6 IPM ブロック図(P630 ブレーキ内蔵)
3-14
第3章
VCCU ③
P1
VinU ②
ALMU ④
機能の説明
Pre-Driver
P2
RALM
U
GNDU ①
VCCV ⑦
VinV ⑥
ALM V ⑧
Pre-Driver
RALM
V
GNDV ⑤
VCCW ⑪
VinW ⑩
ALM W ⑫
Pre-Driver
RALM
W
GNDW ⑨
VCC ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
VinZ ⑱
Pre-Driver
B
⑮
N1
ALM ⑲
N2
RALM
図 3-7 IPM ブロック図(P631 ブレーキなし)
3-15
第3章
VCCU ③
P1
VinU ②
ALMU ④
機能の説明
Pre-Driver
P2
RALM
GNDU ①
U
VCCV ⑦
VinV ⑥
ALM V ⑧
Pre-Driver
RALM
GNDV ⑤
V
VCCW ⑪
VinW ⑩
ALM W ⑫
Pre-Driver
RALM
W
GNDW ⑨
VCC ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
VinZ ⑱
Pre-Driver
B
VinDB ⑮
Pre-Driver
N1
ALM ⑲
N2
RALM
図 3-8 IPM ブロック図(P631 ブレーキ内蔵)
3-16
第3章
P
VccU ④
VinU ③
ALMU ②
機能の説明
Pre-Driver
RALM
GNDU ①
U
VccV ⑧
VinV ⑦
ALM V ⑥
Pre-Driver
RALM
GNDV ⑤
V
VccW ⑫
VinW ⑪
ALM W ⑩
Pre-Driver
RALM
W
GNDW ⑨
Vcc ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
B
VinZ ⑱
Pre-Driver
⑮
ALM ⑲
N
RALM
図 3-9 IPM ブロック図(P636 ブレーキなし)
3-17
第3章
VccU ④
P
VinU ③
ALMU ②
機能の説明
Pre-Driver
RALM
U
GNDU ①
VccV ⑧
VinV ⑦
ALM V ⑥
Pre-Driver
RALM
GNDV ⑤
V
VccW ⑫
VinW ⑪
ALM W ⑩
Pre-Driver
RALM
W
GNDW ⑨
Vcc ⑭
VinX ⑯
Pre-Driver
GND ⑬
VinY ⑰
Pre-Driver
VinZ ⑱
Pre-Driver
B
VinDB ⑮
ALM ⑲
Pre-Driver
N
RALM
図 3-10
IPM ブロック図(P636 ブレーキ内蔵)
3-18
第3章
5
機能の説明
タイミングチャート
5.1 制御電源電圧低下保護(UV)ケース 1
VUV+VH
VUV
VCC
5V
20μs>
20μs>
High(OFF)
Vin
Low(ON)
IC
動作中
保護
動作
解除
High
20μs
VALM
※2
20μs
20μs
20μs
Low
tALM(UV)
tALM(UV)
<tALM(UV)
tALM(UV)
※1
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
※1:tALM(UV)はTyp4msです。
※2:不感時間20μsはTypです。
① VCC 投入時は、VCC が 5V 以上、VUV 以下でアラーム出力を開始します。
(詳細は 5.3 を参照下さい)
② VCC が VUV 以下に低下した期間が 20μs より短い期間では、保護動作しません。(Vin オフ時)
③ Vin オフ時は、VCC が VUV 以下になって約 20μs 後にアラームを出力し、IGBT はオフを維持します。
④ VCC が tALM(UV)経過前に VUV+VH まで復帰し、且つ Vin オフ時でも tALM(UV)期間は UV 保護動作を
保持します。tALM(UV)期間が終了すると、保護動作から復帰します。
⑤ VCC が VUV 以下に低下した期間が 20μs より短い期間では、保護動作しません。(Vin オン時)
⑥ Vin がオン時は、VCC が VUV 以下になって約 20μs 後にアラームを出力し、IGBT はソフト遮断します。
⑦ VCC が tALM(UV)経過前に VUV+VH まで復帰し、Vin オンが継続している場合、アラームは tALM(UV)期間
出力しますが、その後も保護動作は保持されます。Vin オフになることで保護動作から復帰します。
⑧ VCC 遮断時は、VUV 以下でアラームを出力します。(詳細は 5.3 を参照下さい)
3-19
第3章
機能の説明
5.2 制御電源電圧低下保護(UV)ケース 2
VUV+VH
VUV
VCC
5V
High(OFF)
Vin
Low(ON)
IC
動作中
保護
動作
解除
High
20μs
VALM
20μs
※2
20μs
20μs
Low
tALM(UV)
tALM(UV)
<tALM(UV)
tALM(UV)
※1
①
②
③
※1:tALM(UV)はTyp4msです。
※2:不感時間20μsはTypです。
① VCC 投入時は、アラームが出力し、Vin がオン状態を継続している為、VCC 電圧低下に関係なく UV 保
護動作は保持されます。
② VCC が VUV+VH 以上で、且つ Vin がオフになったタイミングで保護動作から復帰します。
③ VCC が VUV 以下の為、保護動作が継続しており Vin 信号によらず、IGBT はオンしません。尚、保護動
作継続期間が tALM(UV)より十分に長くても、アラーム出力回数は 1 回のみです。
3-20
第3章
機能の説明
5.3 制御電源電圧低下保護(UV)電源立ち上げ時と立ち下げ時について
V-IPM は制御電源電圧低下保護(UV)機能を搭載しておりますが、それゆえ電源の立ち上げ時、立ち下
げ時にもアラームを出力してしまいます。下記にその内容について記載します。
5.3.1 電源立ち上げ時
ケース 1、ケース 2 共に VCC が 5V を
上回ると 20μs 経過後にアラームを出力
VUV+VH
VUV
VCC
VUV+VH
VUV
VCC
5V
5V
します。ケース1の場合は、tALM(UV)経過
後、VCC が VUV+VH を上回り、且つ Vin
がオフ状態である為、保護動作から復帰
High(OFF)
Vin
ム出力後も保護動作を継続します。VCC
Vin
Low(ON)
します。ケース 2 では、tALM(UV)経過後で
も VUV+VH 以下となっている為、アラー
High(OFF)
Low(ON)
動作中
動作中
保護
動作
保護
動作
が VUV+VH を上回り、且つ Vin がオフと
解除
解除
なれば、保護動作から復帰します。
High
High
VALM
20μs
VALM
Low
20μs
Low
tALM(UV)
tALM(UV)
ケース1
ケース2
5.3.2 電源立ち下げ時
ケース 3、ケース 4 共に VCC が VUV を
下回ると、20μs 経過後にアラームを出力
VUV+VH
VUV
VCC
5V
VUV+VH
VUV
VCC
5V
します。ケース 3 の場合は、tALM(UV)経過
前に VCC が 5V を下回る為、IPM の動作
が不定となり、アラームが解除されます。
High(OFF)
Vin
Vin
Low(ON)
ケース 4 では、tALM(UV)経過後でも VCC が
5V を上回っている為、保護動作は継続し
ます。VCC が 5V を下回った時点で制御 IC
High(OFF)
Low(ON)
動作中
動作中
保護
動作
保護
動作
解除
の保護動作は不能となり、VALM は、VCC
解除
High
相当となります。
VALM
High
VALM
20μs
20μs
Low
<tALM(UV)
ケース3
3-21
Low
tALM(UV)
ケース4
第3章
機能の説明
5.4 過電流保護(OC)
High(OFF)
Vin
Low(ON)
IOC
IC
動作中
保護
動作
解除
High
VALM
tdOC
Low
tdOC>
tdOC
tdOC>
※2
tALM(OC)
tALM(OC)
※1
①
②
③
④
⑤
※1:tALM(OC)はTyp2msです。
※2:tdOCはTyp5μsです。
① IC が IOC を上回った時から tdOC 経過後にアラーム出力し、IGBT をソフト遮断します。
② tALM(OC)経過前に Vin がオフになっても、tALM(OC)期間は保護動作を継続し、tALM(OC)経過後に Vin がオ
フのときは保護動作から復帰します。
③ tALM(OC)経過時に Vin がオンの時は、OC 保護動作は継続され、Vin オフ時に復帰する。尚、保護動作継
続期間が tALM(OC)より十分に長くても、アラーム出力回数は 1 回のみです。
④ IC が IOC を上回った後、tdOC 経過前に Vin がオフになると保護動作せず、IGBT は通常の遮断をします。
⑤ Vin がオンのタイミングで、IC が IOC を上回っていても、tdOC 経過前に Vin がオフになると保護動作せ
ず、IGBT は通常の遮断をします。
3-22
第3章
機能の説明
5.5 短絡保護(SC)
High(OFF)
Vin
Low(ON)
ISC
IOC
IC
動作中
保護
動作
解除
High
VALM
tSC
※2
tSC
tSC>
tSC>
Low
tALM(OC)
tALM(OC)
※1
①
②
③
④
⑤
⑥
※1:tALM(OC)はTyp2msです。
※2:tSCはTyp2μsです。
① IC が流れ始めた後に負荷短絡が発生し、ISC を越えると瞬時に IC ピークを抑制する。tSC 経過後にアラ
ーム出力し、IGBT をソフト遮断します。
② tALM(OC)経過後に Vin がオフの時は、SC 保護動作とアラームは同時に復帰します。
③ IC が流れ始めると同時に負荷短絡が発生し、ISC を越えると同時に IC ピークを抑制する。tSC 経過後に
アラームを出力し、IGBT をソフト遮断します。
④ tALM(OC)経過後も Vin がオンの時、SC 保護動作は継続します。Vin オフ信号入力時に SC 保護動作は解
除されます。尚、Vin がオフになるまでの保護動作継続期間が、tALM(OC)より十分に長くても、アラー
ム出力回数は 1 回のみです。
⑤ IC が流れ始めた後に負荷短絡が発生し、ISC を越えると同時に IC ピークを抑制します。その後、tSC 経
過前に Vin がオフになると SC 保護動作せず、IGBT は通常の遮断をします。
⑥ IC が流れ始めると同時に負荷短絡が発生し、ISC を越えると瞬時に IC ピークを抑制します。その後、tSC
経過前に Vin がオフになると SC 保護動作せず、IGBT は通常の遮断をします。
3-23
第3章
機能の説明
5.6 チップ温度加熱保護(TjOH)ケース 1
High(OFF)
Vin
Low(ON)
TjOH
TjOH-TjH
Tj
IC
動作中
保護
動作
解除
High
VALM
1ms
Low
1ms
1ms
※2
tALM(TjOH)
tALM(TjOH)
tALM(TjOH)
※1
①
②
③
④
※1:tALM(TjOH)はTyp8msです。
※2:不感時間1msはTypです。
① IGBT チップ温度 Tj が約 1ms の期間継続して TjOH を越えるとアラーム出力し、
IGBT をソフト遮断します。
② tALM(TjOH)経過前に TjOH−TjH 以下に下がっても、tALM(TjOH)期間中は保護動作が継続されます。tALM(TjOH)
経過後、Vin がオフの場合は保護動作から復帰します。
③ tALM(TjOH)経過後、チップ温度 Tj が TjOH−TjH 以下に下がっても、Vin がオンを継続している場合は
保護動作から復帰しません。
④ tALM(TjOH)経過後、Vin がオフでもチップ温度 Tj が TjOH−TjH 以上の場合、保護動作を継続します。尚、
保護動作継続期間が tALM(TjOH)より十分に長くても、アラーム出力回数は 1 回のみです。
3-24
第3章
機能の説明
5.7 チップ温度加熱保護(TjOH)ケース 2
High(OFF)
Vin
Low(ON)
TjOH
TjOH-TjH
Tj
1ms>
1ms>
2.5μs<
IC
動作中
保護
動作
解除
High
VALM
1ms
1ms
※2
Low
tALM(TjOH)
tALM(TjOH)
※1
①
②
③
※1:tALM(TjOH)はTyp8msです。
※2:不感時間1msはTypです。
① Tj が TjOH を越えて、約 1ms より早く TjOH 以下に下がると、Vin がオン・オフいずれでも
保護動作しません。
② Tj が TjOH を越えて、約 1ms より早く TjOH 以下に下がると、Vin がオン・オフいずれでも
保護動作しません。
③ Tj が TjOH を越えた後、約 2.5μs 以上の期間 TjOH−TjH 以下に下がると、約 1ms の
TjOH 検出タイマーはリセットされます。
3-25
第3章
機能の説明
5.8 保護機能が複合的に動作した場合
TjOH
TjOH-TjH
Tj
VUV+VH
VUV
VCC
IC
High(OFF)
Vin
Low(ON)
動作中
保護
動作
解除
High
VALM
1ms
Low
1ms
20μs
※4
※3
tALM(TjOH)
tALM(TjOH)
tALM(UV)
※1
①
②
※2
③
④ ⑤
⑥
※1:tALM(TjOH)はTyp8msです。
※2:tALM(UV)はTyp4msです。
⑦
※3:不感時間1msはTypです。
※4:不感時間20usTypです。
① IGBT チップ温度 Tj が約 1ms の期間継続して TjOH を越えるとアラーム出力し、IGBT を
ソフト遮断します。
② tALM(TjOH)経過前に VCC が VUV 以下に下がっても、tALM(TjOH)の保護動作が継続されている為、
VUV によるアラーム出力はキャンセルされます。
③ tALM(TjOH)経過後、Vin がオフで且つチップ温度 Tj が TjOH−TjH 以下に下がると、保護動作から
復帰します。
④ IGBT チップ温度 Tj が、約 1ms の期間継続して TjOH を越えると、アラーム出力し、IGBT を
ソフト遮断します。
⑤ ②と同様に tALM(TjOH)の保護動作中は、VUV によるアラーム出力はキャンセルされます。
⑥ tALM(TjOH)経過後、Vin がオフで且つチップ温度 Tj が TjOH−TjH 以下に下がると、保護動作から
復帰します。この時、VCC は VUV 以下を保っている為、TjOH による保護機能から復帰後、
約 20μs の期間以上継続して VUV 以下の場合は、改めて VUV によるアラームを出力し、
保護動作を行います。
⑦ tALM(UV)経過後、Vin がオフで且つ VCC が VUV+VH を上回ると、保護動作から復帰します。
3-26
第3章
機能の説明
5.9 制御電源電圧低下保護(UV)における下アームからの複数回アラーム出力について
(P629 を除く)
V-IPM の下アームは 3 つ(ブレーキ内蔵
タイプでは 4 つ)の独立した制御 IC を搭載
VUV+VH
VUV(IC_A)
VUV(IC_B)
VCC VUV(IC_C)
しており、アラーム出力は下アームの制御
IC の共通出力となっております。その為、
制御 IC の保護動作レベルのばらつきから、
アラームの出力が複数回出力される場合が
あります。特に、VCC の VUV 付近における
dv/dt 変化量が 0.5V/ms 以下の場合は、右図
High
VALM
Low
下アームIC_A
下アームIC_B
下アームIC_C
に示すようなアラーム出力が現れる場合が
あります。(本現象は異常ではありません)
tALM(UV) ※1
※1:tALM(UV)はTyp4msです。
3-27
−
第 4 章
−
応用回路例
目次
ページ
1
応用回路例
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4-2
2
注意事項
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4-6
3
フォトカプラ周辺回路
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4-9
4
コネクタ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4-11
4-1
第4章
1
応用回路例
図 4-1 に P629 の応用回路例を示します。
VccU
5V
0.1uF
15V 10 μF
20kΩ
Input signal
P
VinU
GNDU
U
V
W
VccV
N
VinV
GNDV
VccW
VinW
GNDW
IPM
Vcc
47μF
VinX
GND
VinY
VinZ
Alarm output
10nF
ALM
図 4-1 P629 の応用回路例
4-2
応用回路例
第4章
図 4-2 に P626 の応用回路例を示します。
VccU
5V
0.1uF
P
VccU
5V
15V 10μF
20kΩ
VinU
Input signal
GNDU
P
15V 10μF
20kΩ
VinU
Input signal
0.1uF
U
GNDU
U
V
10nF
Alarm output
V
W
ALMU
VccV
5V
VccV
N
VinV
5V
GNDV
ALMV
ALMV
VccW
VccW
VinW
VinW
GNDW
GNDW
IPM
Alarm output
10nF
N
VinV
GNDV
IPM
ALMW
5V
W
ALMU
ALMW
Vcc
Vcc
47μF
47μF
VinX
VinX
GND
GND
VinY
VinY
VinZ
VinZ
VinDB
VinDB
(No Contact)
(No Contact)
Alarm output
ALM
10nF
ALM
(b)上相アラームを使用しない場合
(a)上相アラームを使用する場合
図 4-2 P626 の応用回路例
4-3
応用回路例
第4章
図 4-3 に P630、P631、P636 のブレーキ内蔵タイプの応用回路例を示します。
VccU
5V
P
VccU
5V
15V 10μF
0.1uF
20kΩ
VinU
Input signal
GNDU
P
15V 10μF
20kΩ
VinU
Input signal
0.1uF
U
GNDU
U
V
10nF
Alarm output
VccV
5V
V
W
ALMU
B
VccV
B
Brake resistor
VinV
5V
Brake resistor
VinV
N
GNDV
GNDV
ALMV
ALMV
VccW
VccW
VinW
VinW
GNDW
GNDW
IPM
ALMW
Vcc
5V
Vcc
47μF
10nF
47μF
VinX
VinX
GND
GND
VinY
VinY
VinZ
VinZ
VinDB
VinDB
ALM
Alarm output
10nF
ALM
(b)上相アラームを使用しない場合
(a)上相アラームを使用する場合
図 4-3
N
IPM
ALMW
Alarm output
W
ALMU
P630、P631、P636 のブレーキ内蔵タイプの応用
4-4
応用回路例
第4章
図 4-4 に P630、P631、P636 のブレーキなしタイプの応用回路例を示します。
VccU
5V
0.1uF
P
VccU
5V
15V 10μF
20kΩ
VinU
Input signal
GNDU
P
15V 10μF
20kΩ
VinU
Input signal
0.1uF
U
GNDU
U
V
10nF
Alarm output
5V
5V
V
W
ALMU
VccV
B
(No Contact)
VinV
N
VccV
B
(No Contact)
VinV
N
GNDV
GNDV
ALMV
ALMV
VccW
VccW
VinW
VinW
GNDW
GNDW
IPM
IPM
ALMW
Alarm output
ALMW
Vcc
5V
Vcc
47μF
10nF
47μF
VinX
VinX
GND
GND
VinY
VinY
VinZ
VinZ
VinDB
VinDB
(No Contact)
(No Contact)
ALM
Alarm output
10nF
ALM
(b)上相アラームを使用しない場合
(a)上相アラームを使用する場合
図 4-4
W
ALMU
P630、P631、P631 のブレーキなしタイプの応用
4-5
応用回路例
第4章
2
応用回路例
注意事項
2.1 制御電源
応用回路例に示すように制御電源は上アーム側=3、下アーム側=1、合計 4 系統の絶縁電源が必要です。
市販の電源ユニットを使用する場合は、電源出力側の GND 端子は接続しないでください。
出力側 GND を出力の+または−に接続すると、電源入力側アースで各電源が接続されるため、誤動作の
原因となります。また、各電源間とアースとの間のストレーC(浮遊容量)はできるだけ低減してください。
また、瞬時変動が小さく、Icc を供給・吸収できる能力のものを適用してください。
2.2
4 電源間の構造的な絶縁(入力部コネクタ及びプリント板)
絶縁は各々4 電源間と主電源間に必要です。
また、この絶縁部には IGBT スイッチング時の大きな dv/dt が加わりますので、充分な絶縁距離を確保して
ください。(推奨 2mm 以上)
2.3 GND 接続
制御端子 GND U と主端子 U、制御端子 GND V と主端子 V、制御端子 GND W と主端子 W、制御端子 GND
と主端子 N(P631 の場合は N1、N2)を外部回路で接続しないでください。誤動作の原因になります。
2.4 制御電源コンデンサ
応用回路例に示す各制御電源に接続される 10μF(47μF)及び 0.1μF は、制御電源を平滑化するためのコン
デンサではなく、IPM までの配線インピーダンス補正用です。平滑用のコンデンサは他に必要です。
また、10μF(47μF)及び 0.1μF から制御回路までの配線インピーダンスで過渡変動が発生するので、IPM
制御端子及びフォトカプラ端子にできるだけ近接して接続してください。
電解コンデンサについても、インピーダンスが低く周波数特性の良い物を選定し、さらにフィルムコンデ
ンサなど周波数特性の良い物を並列に接続してください。
2.5 アラーム回路
IPM には 1.3kΩ のアラーム抵抗が内蔵されているため、外部に抵抗を接続せずにフォトカプラを直接接
続することができます。尚、フォトカプラを接続する際、フォトカプラと IPM 間の配線をできるだけ短く
すると共に、フォトカプラ一次側と二次側の浮遊容量を小さくしたパターンレイアウトとしてください。
dv/dt によりアラーム用フォトカプラの二次側電位が振られることがあるため、アラーム用フォトカプラの
二次側の出力端子に 10nF 程度のコンデンサを接続し、電位を安定させることを推奨します。
また、上アームにアラーム出力をもつ IPM において、上アームアラームを使用しない場合は、アラーム
端子を Vcc にプルアップして電位を安定させてください。
4-6
第4章
応用回路例
2.6 信号入力端子のプルアップ
制御信号入力端子は 20kΩ の抵抗で Vcc にプルアップしてください。また、7in1(ブレーキ内蔵タイプ)
の IPM で B 相を使用しない場合など、使用しない相の入力端子も 20kΩ の抵抗で Vcc にプルアップしてく
ださい。プルアップしない場合、電源投入時に制御電源電圧低下保護が継続するため、ON 動作ができま
せん。
2.7 使用しない相がある場合の接続
6in1(ブレーキなしタイプ)にて単相で使用する場合や 7in1(ブレーキ内蔵タイプ)にて B 相を使用しない場
合など、使用しない相がある場合、使用しない相にも制御電源を供給し、入力端子、アラーム端子を Vcc
に接続して電位を安定させてください。
2.8 未接続端子(No Contact 端子)の取り扱い
未接続端子(No Contact 端子)は IPM 内部では接続されていません。絶縁されていますので、電位を安定
化させる等、特別な処理は必要ありません。
また、ガイドピンについても、IPM 内部では接続されていません。
2.9 スナバ
スナバは PN 端子に直接接続し、できるだけ短い配線で接続してください。
スナバを 2 箇所接続できる P631 パッケージの場合は、P1‐N1 間、P2‐N2 間の両側にスナバをつけると
サージ電圧低減に効果的です。P1‐N2 間、P2‐N1 間のようにたすき掛けでの接続は誤動作の原因になる
可能性があるので行わないでください。
2.10 接地コンデンサ
AC 入力ラインからのノイズ侵入を防ぐため、AC 入力の三相各線−アース間に 4700pF 程度の接地コン
デンサを接続してください。
4-7
第4章
応用回路例
2.11 IPM の入力回路
IPM の入力回路部には、図 4-5 に示す定電流回路が設けられており、図に示したタイミングにて IPM の
入力端子から Iin=0.15mA または、Iin=0.65mA の定電流が出力されます。このため、フォトカプラ二次側
には、プルアップ抵抗を流れる電流 IR と定電流 Iin を合わせた電流を流せるようにフォトカプラ一次側の
IF を決める必要があります。IF が不十分な場合、二次側が誤動作を起こす可能性があります。
IPM
Vcc
プルアップ
抵抗R
フォトカプラ
Vcc=15V
IR
Iin
定電流回路
(0.65mA)
定電流回路
(0.15mA)
SW 1-2
SW 1-1
定電流回路
(0.05mA)
Vin
I
200KΩ
SW 2
GND
Vinから0.65mA流れ出る
Vinから0.15mA流れ出る
IPM Vin
約 5us
SW1-1 OFF
SW1-2 ON
SW2 OFF
SW1-1 OFF
SW1-2 OFF
SW2 ON
SW1-1 ON
SW1-2 OFF
SW2 OFF
SW1-1 OFF
SW1-2 ON
SW2 OFF
※定電流回路(0.65mA)の動作期間は、Vin が Vcc まで立ち上がるまでの期間と
なりますが最大で約 5us です。
図 4-5 IPM 入力回路と定電流動作タイミング
4-8
第4章
3
応用回路例
フォトカプラ周辺回路
3.1 制御入力用フォトカプラ
3.1.1 フォトカプラ定格
フォトカプラは下記の特性を満足するものを使用してください。
・CMH=CML>15kV/μs または 10kV/μs
・tpHL=tpLH<0.8μs
・tpLH-tpHL=−0.4∼0.9μs
・CTR>15%
例)アバゴ製:HCPL-4504
東芝製:TLP759(IGM)
また、UL、VDE 等の安全規格にも注意してください。
尚、上記のフォトカプラは推奨であり、当社にて信頼性等の確認を行い保証しているものではありません。
3.1.2 一次側制限抵抗
フォトカプラ一次側の電流制限抵抗は、二次側電流を充分流せるように考慮してください。
フォトカプラの CTR は経年劣化するので、これを考慮した一次側制限抵抗の設計が必要です。
3.1.3 フォトカプラ・IPM 間配線
フォトカプラと IPM 制御端子間は配線インピーダンスを小さくするために最短で配線し、一次・二次間
の浮遊容量が大きくならないよう、各々の配線は近づけないように注意してください。一次・二次間には
大きな dv/dt が加わります。
4-9
第4章
応用回路例
3.1.4 フォトカプラ駆動回路
フォトカプラには一次側・二次側間に僅かに浮遊容量があるため、IPM 内外で発生する dv/dt によりノイ
ズ電流が流れます。このため、フォトカプラ駆動回路によっても dv/dt 耐量が異なります。図 4-6 に示すよ
うに良い例での駆動を推奨します。この良い例では、フォトカプラの入力が低インピーダンスに接続され
ているため、ノイズ電流による誤動作が起こりにくくなります。また、フォトカプラに関する詳細事項に
ついては、フォトカプラメーカーへ御確認ください。
良い例:トーテムポール出力IC
フォトダイオードのカソード側に電流制限抵抗
悪い例:オープンコレクタ
良い例:トランジスタC-E間でフォトダイオードA-K間をショート
(特にフォトカプラオフに強い例)
悪い例:フォトダイオードのアノード側に電流制限抵抗
図 4-6 フォトカプラ入力回路
4-10
第4章
応用回路例
3.2 アラーム出力用フォトカプラ
3.2.1 フォトカプラ定格
汎用フォトカプラを使用できますが、下記特性のものを推奨します。
・100%<CTR<300%
・1 素子入りタイプ
例)東芝製:TLP781-1-GR ランク、TLP785-1-GR ランク
また、UL、VDE 等の安全規格にも注意してください。
尚、上記のフォトカプラは推奨であり、当社にて信頼性等の確認を行い保証しているものではありません。
3.2.2 入力電流制限抵抗
フォトカプラ入力側発光ダイオードの電流制限抵抗は、IPM に内蔵されています。
RALM=1.3kΩ であり、
Vcc に直接接続した場合、Vcc=15V で IF=約 10mA 流れます。従って、外部への電流制限抵抗の接続は必
要ありません。
但し、フォトカプラ出力側で大きな電流 Iout>10mA が必要な場合は、フォトカプラの CTR 値を必要な
値まで大きくしてください。
3.2.3 フォトカプラ・IPM 間配線
アラーム用フォトカプラにも大きな dv/dt が加わりますので 3.1.3 項と同様の注意をお願いします。
4
コネクタ
V-IPM の制御端子形状にあったコネクタが市販されております。
P630 用:ヒロセ電機製
MA49-19S-2.54DSA、MA49-19S-2.54DSA(01)
P631 用:ヒロセ電機製
MDF7-25S-2.54DSA
また、上記のコネクタの信頼性及び使用に関しては、コネクタメーカへ御確認ください。
尚、上記のコネクタは推奨であり、当社にて信頼性等の確認を行い保証しているものではありません。
4-11
−
第 5 章
−
放熱設計
目次
ページ
1
冷却体(ヒートシンク)の選定方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-2
2
ヒートシンク選定の注意事項
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-2
3
IPM の取り付け方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5-3
5-1
第5章
1
放熱設計
冷却体(ヒートシンク)の選定方法
・IGBT を安全に動作させる為には接合温度 Tj が Tjmax を越えないようにする必要があります。定格
負荷時はもちろんですが、過負荷時等の異常時にも必ず Tjmax 以下になるよう十分に余裕を持った
熱設計を実施して下さい。
・Tjmax 以上の温度で動作させるとチップが熱破壊する危険性があります。
IPM では IGBT のチップ温度が Tjmax を越えると、TjOH 機能が動作しますが、温度上昇が急激な場合、
保護できない可能性もあります。
FWD についても IGBT と同様に Tjmax を越えないように注意してください。
・冷却体(ヒートシンク)の選定時には必ずチップ中央直下の温度を測定して下さい。
チップ配置につきましては、IPM の納入仕様書をご参照下さい。
また、具体的設計については、下記資料を参照してください。
「IGBT モジュールアプリケーションマニュアル RH984」
・発生損失の求め方
・ヒートシンク(冷却体)の選定方法
・ヒートシンク(冷却体)への取り付け方法
・トラブルシューティング
2
ヒートシンク選定の注意事項
IGBT モジュールアプリケーションマニュアル RH984 に選定方法は記載されていますが、下記の点に注
意してください。
2.1 ヒートシンク面の平坦度
ヒートシンクはネジ取り付け位置間で平坦度を 100mm で 50μm 以下、表面の粗さは 10μm 以下を推
奨します。
ヒートシンクの面が窪んでいる場合には、接触熱抵抗(Rth(c-f))の増加を招きます。
[理由]
・マイナスの場合:ヒートシンク−IPM 間に隙
間ができ、放熱性が悪化(接触熱抵抗
Rth(c-f))が増加)します。
・+50μm 以上の場合:IPM の銅ベースが変形
し、内部絶縁基板に割れが発生する場合があ
ります。
図 5-1 ヒートシンクの平坦度
5-2
第5章
3
放熱設計
IPM の取り付け方法
3.1 ヒートシンクへの取り付け方法
熱抵抗は IPM が取り付けられる位置により変化しますので、下記の点に注意して下さい。
・ IPM1 個をヒートシンクに取り付ける場合、ヒートシンクの中心に取り付けると熱抵抗が最小となりま
す。
・ 1 つのヒートシンクに複数個の IPM を取り付ける場合は、各 IPM が発生する損失を考慮して、取り付
け位置を決定して下さい。大きな損失を発生する IPM には、大きな占有面積を与えるようにして下さ
い。
3.2 サーマルグリースの塗布
接触熱抵抗を小さくするために、ヒートシンクと IPM の取り付け面の間にサーマルグリースを塗布して
IPM を使用してください。
サーマルグリースの塗布方法については、一般的にステンシルマスクを用いた塗布や、ローラーなどで
の塗布方法があります。
サーマルグリースはヒートシンクへの熱伝導を促進するものですが、それ自体熱容量をもっています。
したがって、適切な塗布厚に対して厚く塗布しすぎるとヒートシンクへの放熱を妨げることになりチップ
温度の上昇を招きます。一方、サーマルグリースの厚さを適切な厚さに対して薄くした場合では、ヒート
シンクと IPM 間でサーマルグリースの未接合部分が生じて接触熱抵抗が上昇する可能性があります。した
がって、サーマルグリースは適切な厚さで塗布しなければなりません。
サーマルグリースの塗布厚が不適切な場合にはヒートシンクへの放熱が悪くなるため、最悪の場合には
チップ温度が Tjmax を上回ることで破壊に至る可能性があります。
このような理由からサーマルグリースの塗布方法としては IPM 裏面に均一な厚さでの塗布が可能なステ
ンシルマスクによる塗布方法を推奨します。
ステンシルマスクによるサーマルグリース塗布方法例の概略を図 5-2 に示します。基本的な方法は、所
定の重さのサーマルグリースをステンシルマスクによって IPM の金属ベース面に塗布する方法です。その
後、サーマルグリースが塗布された IPM をヒートシンクに各製品の推奨トルクでネジを締め付けることに
よって、サーマルグリース厚を概ね均一にすることが可能となります。なお、富士電機が推奨するステン
シルマスクのデザインは、お客様のご要望に応じて提供が可能です。
5-3
第5章
図 5-2 サーマルグリース塗布方法例の概略
5-4
放熱設計
第5章
放熱設計
ここで、サーマルグリース厚が均一であると仮定した場合の必要な重さは、次の式で表すことができま
す。
サーマルグリー
ス厚 (μm)
サーマルグリースの重さ (g) x 10-4
=
IPM のベース面積 (cm2) x サーマルグリースの密度 (g/cm3)
この式から必要なサーマルグリース厚に対する重さを求めて、その重さのサーマルグリースをモジュー
ルに塗布してください。ここでサーマルグリースが広がった後の厚さ(サーマルグリース厚)は約 100μm
を推奨いたします。なお、サーマルグリースの最適な塗布厚は使用するサーマルグリースの特性や塗布方
法などによって変わりますので確認して使用してください。
表 5-1 に IPM の裏面ベース面積を示します。
表 5-1 IPM の裏面ベース面積
裏面ベース
パッケージ
面積(cm2)
P629
21.71
P626
22.77
P630
55.67
P631
141.24
P636
41.17
表 5-2 に推奨サーマルグリースの一例を示します。
表 5-2 サーマルグリースの例
型名
製造メーカ
G746
信越化学工業㈱製
TG221
日本データマテリアル㈱製
SC102
東レダウコーニング㈱製
YG6260
東芝シリコーン㈱製
P12
Wacker Chemie
HTC
ELECTROLUBE
尚、ここに示しますサーマルグリースの一覧は、当アプリケーションマニュアル発行当時のものです。
各サーマルグリースの詳細に関しては、各メーカへ問い合わせ願います。
5-5
第5章
放熱設計
3.4 締め付け方法
IPM 取り付け時のネジの締め付け方を図 5-3 に示します。なお、ネジは規程の締付けトルクで締め付け
るようにして下さい。
規程トルクは仕様書中に記載されておりますので別途参照してください。このトルクが不足すると、接
触熱抵抗が大きくなることや、動作中に緩みが生じる恐れがあります。逆にトルクが過大の場合にはケー
スの破損等の恐れがあります。
押し出し方向
ヒートシンク
①
ネジ位置
②
モジュール
トルク
順序
1 回目(仮締め)
規程の 1/3 のトルク
①→②
2 回目(本締め)
規程のトルク
②→①
(1)
2 点取り付けタイプ IPM の場合
押し出し方向
ヒートシンク
①
③
ネジ位置
④
モジュール
②
トルク
順序
1 回目(仮締め)
規程の 1/3 のトルク
①→②→③→④
2 回目(本締め)
規程のトルク
④→③→②→①
(2)
4 点取り付けタイプ IPM の場合
図 5-3 IPM の取り付け方法
5-6
第5章
放熱設計
3.5 IPM の取り付け方向
押し出し型によって作られたヒートシンクに IPM を取り付ける場合、図 5-3 に示すように、ヒートシン
クの押し出し方向と平行に、IPM を取り付けるよう推奨します。これはヒートシンクが変形する影響を少
なくするためです。
3.6 チップ温度の検証
ヒートシンクを選定し、IPM の取り付け位置を決めた後、各部の温度を測定し、チップの接合温度(Tj)
を確認してください。
ケース温度(Tc)の正確な測定方法例を図 5-4 に示します。仕様書記載のチップ座標を参照頂き、チッ
プ直下の温度を測定してください。
チッフ゜が Tjmax 以下であり、装置想定寿命を考慮した放熱設計であるか検証実施してください。
図 5-4 ケース温度の測定
5-7
−
第 6 章
−
使用上の注意
目次
ページ
1
主電源
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6-2
2
制御電源
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6-3
3
保護機能
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6-4
4
パワーサイクル寿命
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6-5
5
その他
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6-6
6-1
第6章
1
使用上の注意
主電源
1.1 電圧範囲
・主電源は、全てのコレクタ・エミッタ主端子間(=VCES)において、絶対最大定格電圧(600V 系 = 600V、
1200V 系 = 1200V)を超えないようにしてください。
・スイッチング時の最大サージ電圧が全ての端子間にて、定格電圧を超えないように、IPM と組込製品の
結線を短くし、P、N 端子直近にスナバコンデンサを接続してください。全ての端子間とは
P629、P626、P630(6in1)、P636(6in1):[P-(U,V,W)、(U,V,W,)-N]
P630(7in1)、P636(7in1):[P-(U,V,W,B)、(U,V,W,B)-N]
P631(6in1):[P1-(U,V,W)、P2-(U,V,W)、(U,V,W)-N1、(U,V,W)-N2]
P631(7in1):[P1-(U,V,W,B)、P2-(U,V,W,B)、(U,V,W,B)-N1、(U,V,W,B)-N2]
・P631 の場合、主電源は P1−N1 間もしくは P2−N2 間に接続してください。P1−N2 間、P2−N1間の
ような襷掛けでの接続は誤動作の原因になる可能性があるので、行わないでください。
スナバコンデンサは P1−N1 間、P2−N2 間の両側につけるとサージ電圧低減に効果的です。
1.2 外来ノイズ
・IPM 内部で外来ノイズに対する対策を行っておりますが、ノイズの種類や強度により誤動作、破壊の可
能性があります。IPM に加わるノイズに対して、十分な対策を行ってください。
1.2.1 装置外部からのノイズ
・AC ラインのノイズフィルター、および絶縁アースの強化等の対策を行ってください。
・必要があれば、全相の信号入力−信号 GND 間に 100pF 以下のコンデンサを付加して対策を行ってくだ
さい。
・アラーム端子に過大なノイズ電圧が加わった場合、アラーム誤出力となる可能性があります。必要に応
じて、0.2∼1KΩ程度の抵抗をアラーム端子へ直列接続してください。その際は、フォトカプラの
CTRを考慮した最適な抵抗値として下さい。
・AC ラインからのノイズ侵入を防ぐため、AC 入力の三相各線−アース間に 4700pF 程度の接地コンデン
サを接続してください。
・雷サージに対しては、アレスタ等の対策を行ってください。
1.2.2 装置内部からのノイズ
・整流器外:1.2.1 項と同様の対策を行ってください。
・整流器内:PN ラインにスナバコンデンサ等を付加して対策を行ってください。
(特に、1 個の整流コンバータに複数のインバータを接続する場合など)
1.2.3 出力端子からのノイズ
・コンタクタの開閉サージ等が侵入しない様に外部にて対策を行ってください。
6-2
第6章
2
使用上の注意
制御電源
2.1 電圧範囲
・制御電源電圧範囲は、リップルを含め規格内に入るようにしてください。
制御電源電圧
(Vcc) [V]
IPMの動作
0≦Vcc≦5.0
制御ICが正常動作せずIGBTへのゲート出力が不定となります。
ただし、5V以下のVccがそのままIGBTに加わってもIGBTの
ゲート閾値Vth以下のためONは出来ません。
制御電源電圧低下保護は動作せず、アラームは出力されません。
制御電源
IPM入力 IGBTの
電圧低下
信号電圧 動作
保護(UV)
制御ICが動作します。
5.0<Vcc≦11.0 制御電源電圧低下保護により、IGBTがOFFに固定されます。
制御電源電圧低下保護が動作するため、アラームを出力します。
制御電源電圧低下保護が動作している場合と
動作していない場合の2条件が存在します。
①制御電源電圧低下保護が動作している場合:
11.0<Vcc≦12.5 IGBTは動作せず、アラームを出力します。
②制御電源電圧低下保護が動作していない場合:
IGBTの動作は、IPMへの入力信号に従います。
アラームは出力されません。
制御電源電圧低下保護は動作しません。
IGBTの動作は、IPMへの入力信号に従いますが、損失が増加し
12.5<Vcc<13.5
ノイズが低下する傾向にあります。保護特性がシフトするため
保護機能が不十分でチップ破壊に至る場合もあります。
13.5≦Vcc≦16.5
推奨電圧範囲です.ドライブ回路が安定動作します。
IGBTの動作は、IPMへの入力信号に従います。
IGBTの動作は、IPMへの入力信号に従いますが、損失が低下し
16.5<Vcc≦20 ノイズが増加する傾向にあります。保護特性がシフトするため
保護機能が不十分でチップ破壊に至る場合もあります。
制御電源電圧が0V未満(バイアス)、および20Vを超える場合
Vcc<0, 20<Vcc ドライブ回路、メインチップが破壊する可能性があります。
絶対に印加しないでください。
Hi
-
Lo
-
Hi
OFF
Lo
OFF
Hi
OFF
Lo
OFF
Hi
OFF
Lo
ON
Hi
OFF
Lo
ON
Hi
OFF
Lo
ON
Hi
OFF
Lo
ON
-
-
-
-
-
動作
① 動作
②
解除
or
動作前
解除
解除
解除
-
2.2 電圧リップル
・推奨電源範囲の 13.5V∼16.5V は、Vcc の電圧リップルを含んだ範囲です。
制御電源の設計においては、電圧リップルを十分低くするように注意してください。
また、電源に重畳されるノイズについても、十分低くするように注意してください。
推奨電圧範囲以上の制御電源を印加した場合は、IPM が誤動作または破壊する可能性があります。
・制御電源は、dv/dt が 5V/μs 以下となるよう設計してください。
また、電源電圧の変動は±10%以内を推奨します。
6-3
第6章
使用上の注意
2.3 電源立上げ/立下げシーケンス
・Vcc が推奨電圧範囲になったことを確認した後、主電源(P−N 間電圧)を印加してください。
Vcc の立下げは、主電源よりも遅く立下げてください。
推奨電圧に到達する前に主電源が印加される場合や、主電源が残っている状態では、外来ノイズで誤動
作することがあり、最悪、チップが破壊することがあります。
2.4 電源立上げ時、立下げ時のアラーム
・電源立上げ時、UV 保護動作レベルの電圧ではアラーム(typ = 4ms)が出力されます。
typ = 4ms 後にアラーム信号は復帰しますが、保護動作解除条件を満たさない限り、入力信号は受け付け
ません。保護動作の解除条件(保護要因解消、tALM 経過、入力信号 OFF)が揃ったときに、入力信号を受
け付けます。アラーム解除後に入力信号を入れるよう、ドライブ回路側での対応をしてください。
・電源立下げ時もアラームを出力しますので、同様に対応してください。
・タイミングチャートに関しては、第 3 章 5 項「タイミングチャート」をご参照ください。
2.5 制御回路設計上の注意
・ドライブ回路の消費電流仕様(Icc)を考慮して、十分余裕をもった設計としてください。
・フォトカプラと IPM の入力端子間の配線は極力短くし、フォトカプラの一次側と二次側の浮遊容量を小
さくしたパターンレイアウトにしてください。
・高速フォトカプラの Vcc-GND 間に、コンデンサを近接して取り付けてください。
・高速フォトカプラは、tpHL、tpLH≦0.8μs、高 CMR タイプをご使用ください。
・アラーム出力回路は、低速フォトカプラ CTR≧100%のタイプをご使用ください。
・制御電源 Vcc は、絶縁された 4 電源を使用してください。
また、各制御電源端子には、周波数特性の良いコンデンサを近接して取り付けるなどして、過渡的な電
圧変動を抑えた設計をしてください。
・入力端子−GND 間にコンデンサを接続すると、フォトカプラ一次側入力信号に対する応答時間が長くな
りますので、ご注意ください。
・フォトカプラの一次側電流 IF は、お使いのフォトカプラの CTR を考慮し、十分に余裕をもった設計に
してください。ノイズの影響を抑えるためには、フォトカプラ二次側のプルアップ抵抗はなるべく低く
設定し、インピーダンスを下げてください。
第 4 章の「応用回路例」にありますように、フォトカプラ二次側には、プルアップ抵抗を流れる電流 IR
と定電流 Iin を合わせた電流を流せるようにフォトカプラ一次側の IF を決める必要があります。IF が不
十分な場合、二次側が誤動作を起こす可能性があります。
ただし、フォトカプラには寿命があるため、一次側制限抵抗の選定に関しては、寿命についても考慮す
る必要があります。
6-4
第6章
3
使用上の注意
保護機能
・パッケージによって、アラーム出力の有無が異なりますので、第 3 章 1 項「機能一覧表」にて、お手持
ちの IPM の保護機能をご確認ください。
3.1 保護動作全般
3.1.1 保護の範囲
・IPM の保護機能は非繰返しの異常現象に対応するものです。IPM の保護動作が繰り返し動作するよう
な使用は避けてください。
・過電流、短絡保護は、制御電源電圧 13.5∼16.5V、主電源電圧=200∼400V(600V 系)、
400∼800V(1200V 系)において保証されます。
3.1.2 アラーム出力に対する処置
・アラームが出力された場合、直ちに IPM への入力信号を停止して、装置を停止してください。
・IPM の保護機能は、異常現象に対して保護しますが、異常原因を取り除くことはできません。装置停止
後にお客様にて異常原因を除去した後に、再起動してください。
・上アームで異常を検出した場合は、検出した相の IGBT のみ出力をオフさせ、検出したアームはアラー
ムを出力します(P629 は除く)。この時、他の各相はスイッチング可能です。一方、下アームで異常を検
出した場合は、アラームを出力した相にかかわらず、下アーム(+ブレーキ部)全ての IGBT をオフさせ、
下アームからアラームを出力します。この時、上アームの各相はスイッチング可能です。
3.2 保護動作の注意事項
3.2.1 過電流(OC)
・過電流保護(OC)は、過電流が不感時間約 5μs(tdOC)を超えて継続した場合、OC 状態と判定して IGBT を
ソフト遮断し、アラームが出力されます。
従って、tdOC の期間内に過電流が除去された場合は、OC が動作せず、通常(ハード)遮断されます。
・P629 は、上アームのアラーム制御ピンがないため、アラーム出力は行いませんが、OC は動作し、IGBT
をソフト遮断します。
3.2.2 短絡(SC)
・短絡保護(SC)は、短絡電流が不感時間約 2μs(tdsc)を超えて継続した場合、SC 状態と判定して IGBT を
ソフト遮断し、アラームが出力されます。
従って、tdsc の期間内に短絡電流が除去された場合は、SC が動作せず、通常(ハード)遮断されます。
・P629 は、上アームのアラーム制御ピンがないため、アラーム出力は行いませんが、SC は動作し、IGBT
をソフト遮断します。
6-5
第6章
使用上の注意
3.2.3 地絡
・地絡により、下アームの IGBT に過電流が不感時間(tdOC、tdsc)を超えて流れた場合は、OC(SC)により
保護動作し、全ての IPM でアラーム出力します。
・地絡により、上アームの IGBT に過電流が不感時間(tdOC、tdsc)を越えて流れた場合は、OC(SC)により
保護動作しますが、パッケージによってアラーム出力が異なります。
P629:上アームの OC(SC)により保護しますが、アラーム出力は行いません。
P626、P630、P631、P636:上アームの OC(SC)により保護します。アラーム出力も行います。
3.2.4 負荷短絡・地絡状態での起動
・OC、SC には不感時間(tdOC、tdsc)があるため、不感時間以下の入力信号パルス幅では、保護動作しませ
ん。特に、負荷短絡した状態で起動した場合に、入力信号パルス幅が長時間(数 10ms)にわたり不感時間
以下であると、短絡が連続して発生するため、チップ温度が急激に上昇します。この場合、チップ温度
上昇に対して、通常はチップ過熱保護(TjOH)が動作しますが、TjOH も 1ms 程度の遅れがあるため、チ
ップ温度上昇の状況によっては保護動作が間に合わず、チップ破壊に至る可能性があります。
3.3 チップ過熱保護について
・チップ過熱保護(TjOH)はブレーキ部を含む、全 IGBT に内蔵しています。チップが異常発熱した場合は、
TjOH が動作します。V-IPM では、ケース過熱保護が無いため、チップ温度が TjOH 以下において、ケー
ス温度が異常発熱した場合は保護しません。必要に応じて、お客様にて保護機能の搭載をしてください。
3.4 FWD の保護について
・FWD には保護機能(過電流・過熱保護)がありません。
4
パワーサイクル寿命
・半導体製品の寿命は永久ではありません。特に自己発熱での温度上昇・下降による熱疲労寿命には注意
が必要です。温度の上昇下降が連続的に発生する場合は、温度変動幅を小さくしてください。
・温度変化による熱疲労寿命は、パワーサイクル寿命(耐量)と呼ばれ、下記の 2 パターンがあります。
① ∆Tj パワーサイクル耐量:比較的短時間の周期で発生するチップ温度変化による寿命
(主にチップ表面のワイヤ接合部の劣化による寿命)
∆Tj パワーサイクル寿命カーブに関しては、MT5Z02525(P629、P626、P630、P631、P636)を
ご参照ください。
② ∆Tc パワーサイクル耐量:比較的長時間の周期で発生するベース温度変化による寿命
(主に絶縁基板 DCB と銅ベース間の接合に使用される半田接合部の劣化による寿命)
∆Tc パワーサイクル寿命カーブに関しては、MT5Z02509(P629、P626、P630)、
MT5Z02569(P630 高放熱タイプ、P631、P636)をご参照ください。
・また、富士 IGBT モジュール アプリケーションマニュアル(RH984(*)) 11 章「パワーモジュールの信頼性」
も併せてお読みください。
6-6
第6章
5
使用上の注意
その他
5.1 装置への組込み、使用時の注意事項
① IPM の使用、装置への組込みにあたっては、IPM の納入仕様書も併せてお読みください。
② 万一の不慮の事故でチップが破壊した場合を考慮して、商用電源と本製品の間に適切な容量のヒューズ
またはブレーカーを必ず付けて二次破壊を防いでください。
③ 通常のターンオフ動作におけるチップ責務の検討の際には、ターンオフ電圧・電流の動作軌跡が RBSOA
仕様内にあることを確認してください。
④ 製品の使用環境を十分に把握し、製品の信頼性寿命が満足できるか検討の上、本製品を適用してくださ
い。製品の信頼性寿命を超えて使用した場合、装置の目標寿命より前にチップが破壊する場合がありま
す。
⑤ IPM とヒートシンクの間にサーマルコンパウンドの塗布などを実施して、接触熱抵抗を小さくしてくだ
さい(第 5 章 3 項参照)。
⑥ ネジの長さに注意してください。ネジ穴深さ以上のネジを使用するとパッケージが破損する場合があり
ます (第 1 章 6 項参照) 。
⑦ IPM の締付けトルクやヒートシンクの平坦度は、仕様書で定めた範囲でご使用ください。
誤った取り扱いをすると、絶縁破壊を起こす場合があります(第 5 章 2 項参照)。
⑧ IPM に荷重がかからないように注意してください。
フタ変形を伴うような応力を加えないでください。押し込み方向では IPM 内部回路が破損する恐れが
あります。 引っ張り方向ではフタが外れる恐れがあります。又、制御端子が曲がらないように
注意してください。
⑨ 主端子、制御端子にリフローによるはんだ付けは行わないでください。他の製品のはんだ付け等による
熱、フラックス、洗浄液が IPM に影響を与えないよう注意してください。
⑩ 腐食性ガスの発生場所・塵埃の多い場所を避けてください。
⑪ 主端子、制御端子に静電気が加わらないように注意してください。
⑫ 制御回路と IPM との着脱に際して、Vcc が 0V であることを確認して行ってください。
⑬ 制御端子 GNDU と主端子 U、制御端子 GNDV と主端子 V、制御端子 GNDW と主端子 W、制御端子 GND
と主端子 N(P631 の場合:N1、 N2)を IPM 外部で接続しないでください。誤動作の原因になる可能性が
あります。
⑭ IPM を単相にて使用する場合やブレーキ内蔵タイプにてブレーキを使用しない場合は、使用しない相も
制御電源を供給し、入力端子(VIN)、アラーム出力端子(ALM)共に Vcc へプルアップしてください。入力
端子(VIN)がオープン状態で制御電源を立上げた場合、アラーム出力状態となります。
⑮ アラームを使用しない場合は、それぞれの制御電源 Vcc にプルアップしてください。
6-7
第6章
使用上の注意
⑯ アラーム要因識別機能に関しては、IPM から出力されるアラーム信号幅を示しております。アラーム用
フォトカプラの 2 次側におけるアラーム出力時間は、フォトカプラの遅れ時間や周辺回路等を考慮して
設計する必要があります。
⑰ IPM を並列接続で使用できません。IPM は駆動・保護回路をそれぞれの IPM に内蔵しており、並列動
作させると、スイッチング時間のずれや、保護のタイミングがずれることにより、特定の IPM に電流が
集中し破壊する恐れがあります。
⑱ エポキシ充鎮樹脂及びケース材料には UL 規格の 94-V0 認定品を使用していますが、不燃性では
ありません。又、主端子や制御端子のはんだ付け時にフタ表面温度がガラス転移温度を超えないように
注意してください。はんだが触れた場合、突起部が溶けて変形する、はんだが付着して残る可能性が
あります。
6-8
−
第 7 章
−
トラブル発生時の対処方法
目次
ページ
1
トラブル発生時の対処方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7-2
2
故障要因解析図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7-2
3
アラーム要因解析図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7-8
7-1
第7章
1
トラブル発生時の対処方法
トラブル発生時の対処方法
IPM は標準モジュールに比べ各種保護機能(過電流、過熱等)を内蔵しているため、異常状態に対し
て破壊し難いデバイスとなっています。しかしながら、異常モードによっては破壊する場合があり
ますので、破壊が発生した場合は、発生状況や原因を明確にした上で対策する必要があります。
破壊に関する要因解析図を2項に用意しましたので、こちらを活用して破壊要因の調査をお願い
します。(素子の故障判定についてモジュールアプリケーションマニュアル RH984b の第4章2項故
障判定方法を御参照ください。)
また、IPM よりアラーム出力される場合は図7−2のアラーム要因解析図を活用して要因の調査
をお願いします。
2
故障要因解析図
IPMの破壊
IGBT部の破壊
RBSOA逸脱
A
ゲート過電圧
B
ジャンクション温度上昇過大
C
FWD部の破壊
D
制御回路の破壊
E
信頼性破壊
F
図 7-1(a) IPM 故障解析図(A∼F 記号は別ページの詳細な FTA と連動しています)
7-2
第7章
A
トラブル発生時の対処方法
RBSOA逸脱
遮断電流過大
過 電 圧
[ 不具合推定箇所 ]
ターンオフ電流過大
上下アーム短絡
入力信号
回路誤動作
制御PCB異常
デッドタイム不足
制御PCB異常
出力短絡
負荷異常
地 絡
負荷異常
電源電圧過大
入力電圧異常
モータ回生運転
回生回路異常
過電圧保護不動作
制御PCB異常
スナバの放電不足
スナバ回路異常
スナバ抵抗断線
短絡時のオフ動作
ゲート駆動回路異常
制御PCB異常
逆回復時のサージ
電圧過大(FWD)
D
図 7-1 (b) モード A:RBSOA 逸脱
B
ゲート過電圧
制御電源過電圧
[ 不具合推定箇所 ]
電源電圧過大
制御電源回路異常
スパイク電圧
電源配線異常
コンデンサ異常
図 7-1 (c) モードB:ゲート過電圧
7-3
第7章
C
トラブル発生時の対処方法
ジャンクション温度上昇過大(急激な温度上昇)
定常損失増加
[ 不具合推定箇所 ]
飽和電圧
VCE(sat)の増加
制御電源電圧不足
コレクタ電流増加
上下アーム短絡
(繰返し短絡)
ゲート駆動回路異常
制御電源回路異常
過電流
入力信号回路誤動作
デッドタイム不足
制御PCB異常
制御PCB異常
出力短絡
(繰返し短絡)
負荷異常
地 絡
(繰返し短絡)
負荷異常
過負荷
制御PCB異常
負荷異常
スイッチング損失増加
スイッチング
回数増加
キャリア周波数の増加
制御PCB異常
入力信号誤動作
(発振)
制御PCB異常
入力回路異常
ターンオン
時間増大
ターンオン損失増加
制御電源電圧不足
ターンオン
電流過大
上下アーム
短絡
入力回路異常
デッドタイム
不足
サージ電圧大
ターンオフ損失増加
スナバ回路異常
ターンオフ
電流過大
接触熱抵抗
の増大
上下アーム
短絡
入力信号
回路誤動作
制御PCB異常
デッドタイム
不足
制御PCB異常
素子の締め
付け力不足
締め付けトルク不足
フィンの反り
大きい
フィン反り不良
サーマルコンパウンド量不足
冷却能力の
低下
ケース温度上昇
ヒートシンク目詰まり
冷却ファン回転数低下、
又は停止
周囲温度異常
上昇
図 7-1 (d)
制御PCB異常
スタックの局部過熱
モード C:ジャンクション温度上昇過大
7-4
コンパウンド量調整不足
防塵対策不良
冷却ファン異常
冷却系異常
第7章
D
トラブル発生時の対処方法
FWDの破壊
ジャンクション
温度上昇過大
[ 不具合推定箇所 ]
定常損失増加
過負荷
力率低下
負荷異常
制御PCB異常
スイッチング損失増加
スイッチング
回数増加
入力信号誤動作
制御PCB異常
入力信号回路異常
キャリア周波数の増加
接触熱抵抗の増大
ケース温度上昇
素子の締め付け力不足
締め付けトルク不足
フィンの反りが大きい
フィン反り不良
サーマルコンパウンド量不足
コンパウンド量調整不足
冷却能力の
低下
周囲温度異常
上昇
過 電 圧
過 電 流
ヒートシンク目詰まり
防塵対策不良
冷却ファン回転数低下、
又は停止
冷却ファン異常
スタックの局部過熱
冷却系異常
逆回復時の
サージ電圧過大
IGBTターンオフ時
のサージ電圧過大
スナバ回路異常
ターンオン時の
di/dt増加
制御電源電圧増加
制御電源回路異常
微小パルス
逆回復現象
ノイズ等による
ゲート信号割れ
制御電源回路異常
制御PCB異常
A
コンバータ部に適用時の
充電電流大
図 7-1 (e)
制御PCB異常
充電回路の異常
モード D:FWD部の破壊
7-5
第7章
E
制御回路破壊
過 電 圧
トラブル発生時の対処方法
[ 不具合推定箇所 ]
制御電源電圧過大
制御電源回路異常
スパイク電圧
電源不安定
コンデンサ異常
電源配線長い
制御電圧印加状態の脱着
外来ノイズ
電源不安定
コンデンサ異常
負電圧過大
外来ノイズ
制御回路異常
入力部電圧過大
静電気過大
図 7-1 (f)
静電気対策不足
モードE:制御回路の破壊
7-6
第7章
F
トラブル発生時の対処方法
信頼性及び、製品取り扱いに関する破壊
取り扱いによる破壊
[ 不具合推定箇所 ]
外力,荷重
製品の保管における
過剰な積載
積載状態
IPMを実装した時に端子や
ケースに加わる応力が過大
実装作業
IPMを外した時に端子や
ケースに加わる応力が過大
無理な取外し
主端子に使用するネジが長すぎ
ネジの長さ
締付けトルク過大
取付け部トルク
端子部トルク
主端子部ネジの締付
けトルク不足
接触抵抗過大
主端子部ネジ締め
振動
運搬(製品、装置)時の
振動過大
運搬状態
製品実装時の各部品
の固定が甘い
製品実装状態
衝撃
運搬時の落下や
衝突等
運搬状態
はんだ付け端子の
耐熱性
端子をはんだ付けす
る際の過熱過大
製品実装時の組立条件
悪い環境下での保管
腐食性ガス雰囲気中
での保管
保管状態
結露しやすい環境で
の保管
粉塵の多い環境での
保管
信頼性(寿命)破壊
※
富士電機が実施して
いる信頼性試験の結
果については、仕様
書或いは、信頼性試
験結果報告書をご参
照ください。
高温状態での保管
(高温放置)
高温状態での長期間
保管
低温状態での保管
(低温放置)
低温状態での長期間
保管
高温多湿
(湿中放置)
高温多湿状態での長
期間保管
製品温度の緩やかな上昇⇔下降繰り返しによって発生する熱応力疲
労(温度サイクル、ΔTcパワーサイクル)
製品温度の急激な上昇或いは、下降によって発生する熱応力破壊
(熱衝撃)
負荷の急激な変化等による半導体チップ温度変化がもたらす、製品
内部配線等の熱応力疲労破壊(ΔTj パワーサイクル)
高温状態での長時間電圧印加(高
温印加(C-E間及び、G-E間))
高温状態での長期間
使用
高温多湿状態での長時間電圧印
加(湿中印加(THB))
高温多湿状態での長
期間使用
腐食性ガス雰囲気中の使用
硫化水素等雰囲気中の
の長期使用
図 7-1 (g) モードF:信頼性及び、製品取扱いに関する破壊
7-7
保管状態
適用条件と製品寿命の
マッチング
第7章
3
トラブル発生時の対処方法
アラーム要因解析図
IPM を搭載した装置がアラーム停止した場合、まず、そのアラームが IPM から出力されたものか、
装置制御回路(IPM 以外)で発生したものかを切り分ける調査をお願いします。
もし、IPM からのアラームである場合は、下記の要因分析図に従って、要因の特定をお願いします。
特に、V-IPM では、アラームの幅を確認する事により、どの保護機能が動作したか識別可能な製品と
なっているので、アラームの幅を確認の上、要因解析を進めて頂ければ要因解析時間の短縮が図れます。
尚、アラーム電圧の測定にあたっては、IPM アラーム端子とアラーム用フォトダイオードのカソー
ド間に 1.3KΩの抵抗を挿入した状態で IPM アラーム端子電圧を測定して頂ければ、容易にアラーム出
力電圧の測定が可能となります。
現象
アラーム発生要因と特定方法
IPMアラーム発生
正常アラーム
誤アラーム
tALM 不定
過電流
tALM Typ=2ms
全IGBTチップに内蔵する電流センス用IGBTに流れる電流により、
コレクタ電流を検出します。
過電流トリップレベルを約5μs以上連続して超えた場合IGBTをOFFさせ保護。
〔アラーム発生要因特定方法〕
・アラームと出力電流(U,V,W)をオシロスコープで観測
・アラームと直流入力電流(P,N)をオシロスコープで観測
・アラームが出力する5μs前の電流変化を観る
・CTなどで電流検出している場合、トリップレベルと検出箇所の確認
制御電源電圧低下
tALM Typ=4ms
制御電源電圧Vccが20μs以上連続して不足電圧トリップ以下となった場合、
IGBTをOFFさせ保護します。
〔アラーム発生要因特定方法〕
・アラームとVccをオシロスコープで観測
・アラームが出力する20μs前の電源変動を観る
チップ過熱
tALM Typ=8ms
全IGBTチップに内蔵する温度検出素子(ダイオード)により、チップ温度
を検出します。
TjOHトリップレベルを1ms以上連続して超えた場合、IGBTをOFFさせ保護。
〔アラーム発生要因特定方法〕
・制御電源電圧Vcc、直流入力電圧Vdc、出力電流Ioを測定
・チップ直下のケース温度Tcを測定、∆Tj-cを計算しTjを推定
・IPM取付け方法を確認
(フィン平坦度、サーマルコンパウンドetc)
制御電源電圧Vccが絶対最大定格20Vを超えたり、過大なdv/dtや
リプルが印加された場合、ドライブICが破壊及び誤アラームを出力す
る可能性があります。
また、IPMの制御回路にノイズ電流が流れた場合においてもICの
電圧が不安定となり誤アラーム出力する可能性があります。
〔アラーム発生要因特定方法〕
・μsオーダの短パルスアラームが出る ⇒ 6章 1.2.1項参照
・モータ運転中、Vccの波形をオシロスコープで観測。
IPM制御端子直近が望ましい。
・Vcc<20V,dv/dt≦5V/μs,リップル電圧≦±10%である事(4電源とも)
・IPM制御GNDとメイン端子GND間を外部で配線していないか確認。
配線されているとIPM制御回路にノイズ電流が流れます。
・ドライブICが破壊した場合、Iccが異常に増える可能性が高い。
ex. Iccp≧10mA, Iccn≧20mA, @Vin=OFFならば異常
7-8
ご 注意
1. このカタログの内容(製品の仕様、特性、データ、材料、構造など)は 2015 年 7 月現在のものです。
この内容は製品の仕様変更のため、または他の理由により事前の予告なく変更されることがあります。このカタログに記載されて
いる製品を使用される場合には、その製品の最新版の仕様書を入手して、データを確認してください。
2. 本カタログに記載してある応用例は、富士電機の半導体製品を使用した代表的な応用例を説明するものであり、本カタログによっ
て工業所有権、その他権利の実施に対する保証または実施権の許諾を行うものではありません。
3. 富士電機(株)は絶えず製品の品質と信頼性の向上に努めています。しかし、半導体製品はある確率で故障する可能性があります。
富士電機の半導体製品の故障が、結果として人身事故,火災等による財産に対する損害や、社会的な損害を起こさぬように冗長設
計、延焼防止設計、誤動作防止設計など安全確保のための手段を講じてください。
4. 本カタログに記載している製品は、普通の信頼度が要求される下記のような電子機器や電気機器に使用されることを意図して造ら
れています。
・コンピュータ ・OA 機器 ・通信機器(端末) ・計測機器 ・工作機械
・オーディオビジュアル機器 ・家庭用電気製品 ・パーソナル機器 ・産業用ロボット など 5. 本カタログに記載の製品を、下記のような特に高い信頼度を持つ必要がある機器に使用をご予定のお客様は、事前に富士電機(株)
へ必ず連絡の上、了解を得てください。このカタログの製品をこれらの機器に使用するには、そこに組み込まれた富士電機の半導
体製品が故障しても、機器が誤動作しないように、バックアップ・システムなど、安全維持のための適切な手段を講じることが必
要です。
・輸送機器(車載、舶用など)
・幹線用通信機器
・交通信号機器
・ガス漏れ検知及び遮断機
・防災/防犯装置
・安全確保のための各種装置 ・医療機器
6. 極めて高い信頼性を要求される下記のような機器及び戦略物資に該当する機器には、本カタログに記載の製品を使用しないでくだ
さい。
・宇宙機器 ・航空機搭載用機器 ・原子力制御機器 ・海底中継機器
7. 本カタログの一部または全部の転載複製については、文書による当社の承諾が必要です。
8. このカタログの内容にご不明の点がありましたら、製品を使用する前に富士電機(株)または、その販売店へ質問してください。
本注意書きの指示に従わないために生じたいかなる損害も富士電機(株)とその販売店は責任を負うものではありません。