SPI-8010A アプリケーション ノート 面実装チョッパ型スイッチングレギュレータIC SPI-8010A 第 7 版 2013 年 11 月 サンケン電気株式会社 SPI-8010A --- 目次 --- 1.概要 1-1 特長 ---------- 3 1-2 主な用途 ---------- 3 1-3 種別 ---------- 3 2-1 外形図 ---------- 4 2-2 定格 ---------- 5 2-3 回路図 ---------- 6 2.製品仕様 3.SPI-8010Aの動作説明 3-1 PWM出力電圧制御 ---------- 7 3-2 過電流・過熱保護 ---------- 8 4.使用に際しての注意事項 4-1 外付部品選定上の注意 ---------- 9 4-2 パターン設計上の注意 ---------- 12 4-3 動作波形の確認 ---------- 14 4-5 熱設計 ---------- 15 5-1 ソフトスタート ---------- 16 5-2 出力のON/OFF制御 ---------- 17 5-3 出力電圧可変 ---------- 18 5-4 逆バイアス保護 ---------- 18 6.代表特性例 ---------- 19 7.用語解説 ---------- 20 8.使用上の注意 ---------- 21 5.応用 2 SPI-8010A 1.概要 SPI-8010Aは、降圧スイッチングレギュレータに必要な各種の機能と保護機能を備 えたチョッパ型スイッチングレギュレータICです。動作周波数250KHzの高速高精度高 能率のスイッチングレギュレータを構成することが出来ます。ICの裏面にヒートシンクが付 いているパッケージを使用しておりますので、熱抵抗を非常に小さくできます。 ●1-1 特長 ・小型大出力電流3A HSOP16の外形で、出力電流が最大3Aです。 ・高効率86%(VIN=20V, Vo/Io=5V/1A) 出力段にDMOSを使用することで、発熱が小さく、放熱パターンも小さくする事が 出来ます。 ・タイミングコンデンサ内蔵型基準発振 発振周波数設定用の外付コンデンサは不要です。 ・過電流、過熱保護内蔵 フの字型過電流保護及び過熱保護回路を内蔵しています。(自動復帰型) ・ソフトスタート機能(出力ON/OFF可能) 外付コンデンサの追加で、起動時に出力電圧が立ち上がるタイミングを遅らせること 事が出来ます。又出力のON/OFF制御も可能です。 ・出力電圧は外部抵抗で調整できます。 外部抵抗を2個使い、出力電圧を+1V~+14Vの範囲で可変できます。 ●1-2 主な用途 ・オンボードローカル電源 ・OA機器用電源 ・レギュレータ2次側出力電圧安定化 ・テレコム用電源 ●1-3 種別 ・種別:半導体集積回路(モノリシックIC) ・構造:樹脂封止型(トランスファーモールド) 3 SPI-8010A 2.製品仕様 ●2-1 外形図 1.35±0.2 1+0.1/-0.05 (裏面からリード根元) (フィン厚) 10.5±0.2 9 16 0~0.1 b b c 0~8° 8 2.5±0.2 2.75MAX 1 0.9±0.3 SK 2.0+0.2/-0.08 8010A 10.5±0.3 a A 部拡大図 A部 0.25+0.15/-0.0 5 0.1 S 12.2±0.2 S 0 (ゲート残り寸法を含まず) (11) 1 (4.5) 7.5±0.2 (2) 8 16 9 1.27±0.25 0.4+0.15/-0.05 端子配列 1.AGND 9.N.C 2.N.C 10.N.C 3.DGND 11.VIN 4.CE/SS 12.BS 5.Reg 13.N.C 6.N.C 14.Comp 7.SWout 15.VREF 8.N.C 16.N.C a.品名標示 b.ロット番号(3 桁) 第 1 文字 西暦年号下一桁 第 2 文字 月 1~9 月:アラビア数字 10 月:O 11 月:N 12 月:D 第 3 文字 製造週 1~5:アラビア数字 c.管理番号(5 桁) 4 SPI-8010A ● 2-2 定格 絶対最大定格 項目 入力電圧 記号 VIN 規格 53 単位 V 許容損失 Pd 2.4 W 接合温度 保存温度 Tj Tstg 125 -40~125 ℃ ℃ 熱抵抗(接合-ケース間) θj-c 18 ℃/W 熱抵抗(接合-周囲間) θj-a 41.7 ℃/W 条件 ガラスエポキシ基板 7000mm2 (銅箔エリア 3080mm2)実装時 ガラスエポキシ基板 7000mm2 (銅箔エリア 3080mm2)実装時 ガラスエポキシ基板 7000mm2 (銅箔エリア 3080mm2)実装時 推奨動作条件 項目 記号 規格 MIN MAX 単位 入力電圧範囲 VCC 8 orVO+3 50 V 出力電圧範囲 出力電流範囲 *1 動作時接合温度範囲 Vo IOUT Tjop 1 0.02 -30 14 3 125 V A ℃ 動作温度範囲 Top -30 125 ℃ 条件 出力電流は、必ず20mA以上流して下さい。20mA以下で使用した場合、出力電圧が不安定になる 可能性があります。 電気的特性 (Ta=25 ゚ C) VREF ⊿VREF/⊿T Eff fosc 規格値 MIN TYP MAX 0.97 1.00 1.03 ±0.5 86 250 ラインレギュレーション VLine 20 40 mV VIN=10~30V,IO=1A ロードレギュレーション 過電流保護開始電流 VLoad IS 10 30 mV A VIN=12V,IO=0.1~1.5A VIN=12V mA VIN=12V,IO=0A VIN=12V VON/OFF=0.3V 項目 設定基準電圧 基準電圧温度係数 効率 動作周波数 記号 3.1 Iq 静止時回路電流2 Iq(off) 400 μA VSSL ISSL 0.5 50 V μA Low レベル電圧 Low 時流出電流 測定条件 VIN=12V,IO=1A V mV/℃ VIN=20V,IO=1A, VO=5V % kHz VIN=12V,IO=1A 静止時回路電流1 CE/SS 端子 7 単位 VSSL=0V 5 SPI-8010A ●2-3 回路図 2-3-① 内部等価回路図 VIN SPI-8010A 11 C1 5 VIN UVLO 4 2 P.REG OCP CE/SS CE/ SS C4 Boot REG TSD BS 6 12 R1 DRIVE 5 3 Reg C3 4 PWM LOGIC OSC 7 VREF Comp 8 Amp 1V C6 AGND DGND 1 1 1 2-3-② C2 B.S 4 C1 C7 R1 C3 VIN SPI-8010A C4 14 C5 1 L1 SWOUT VO 7 CE/SS Reg Comp AGND DGNDVREF 5 3 D1 R2 C9 C2 15 R3 C8 IREF C6 GND 2-3-③ GND 220μF/63V 470μF/25V 0.1μF/10V 0.1μF/50V 0.1μF/50V 0.1μF/50V 0.1μF/50V 47μH 5A/60V 47Ω 2kΩ(VO=5V 設定) 500Ω C1:220μF/63V C2:470μF/25V C3:0.1μF C4:1000pF C5:0.1μF C6:0.047μF C7:0.1μF C8:0.1μF C9:6800pF R1:47Ω L1:47μH D1:SPB-G56S (サンケン製) 主要部品一覧表 部品番号 C1 C2 C3, C5 C4 C6 C7, C8 C9 L1 D1, D2 R1 R2 R3 C9 15 3 12 11 C8 R3 標準接続図 VIN VOUT D1 R2 7 L1 SWOUT C5 14 C7 定格 電解コンデンサー 電解コンデンサー セラミックコンデンサー セラミックコンデンサー セラミックコンデンサー セラミックコンデンサー セラミックコンデンサー インダクター ショットキバリアダイオード 推奨部品 EMVY630GTR221MLHoS (日本ケミコン) UUD1E471MNR1GS (nichicon) GRM31BR11A105MA01B (村田製作所) GRM21BR11H104MA01B (村田製作所) GRM21BR11H104MA01B (村田製作所) GRM21BR11H104MA01B (村田製作所) GRM21BR11H104MA01B (村田製作所) SLF12575T-470M2R7 (TDK) SPB-G56S (サンケン電気) - - - 6 SPI-8010A 3.SPI-8010A の動作説明 ●3-1 PWM出力電圧制御 SPI-8010Aは、PWM方式にて出力電圧を制御しており、PWMコンパレータ、発 振器、誤差増幅器、基準電圧、出力トランジスタドライブ回路、等を内蔵しております。 P WMコンパレータの入力には発振器からの三角波出力(≒250kHz)と誤差増幅器の出力 が与えられます。PWMコンパレータは発振器出力と誤差増幅器出力を比較し、発振器出力に 対し誤差増幅器出力が上回った時間にスイッチングトランジスタがONになるよう制御して います。 PWM制御チョッパ型レギュレータ基本構成 VOUT スイッチングトランジスタ VIN PWMコンパレータ D1 誤差増幅器出力と発振器出力を C2 PWMコンパレータで比較し、 ドライブ回路 方形波のドライブ信号をさせて 誤差増幅器 スイッチングトランジスタを 発振器 ドライブする。 基準電圧 仮に出力電圧が上昇しようとした場合、誤差増幅器は反転型のため誤差増幅器の出力は低下 します。誤差増幅器出力が低下しますと発振器の三角波レベルを上回る時間が増加しスイッチ ングトランジスタのON時間を短縮させる事により出力電圧を一定に保ちます。このようにス イッチングの周波数は固定したままで、スイッチングトランジスタのON時間を変化させる事 により出力電圧を制御しています。 (VINが高い程スイッチングトランジスタのON時間は短くなります。) PWMコンパレータ動作図 発振器出力 誤差増幅器出力 OFF ON スイッチングトランジスタ出力 スイッチングトランジスタの方形波出力は、チョークコイルとコンデンサによるLCローパス フィルターにより平滑され、安定化された直流電圧として負荷へ供給される事になります。 7 SPI-8010A ●3-2 過電流・過熱保護 過電流時出力電圧特性 出力電圧 出力電流 SPI-8010Aは、フの字型過電流保護回路を内蔵しています。過電流保護回路はスイ ッチングトランジスタのピーク電流を検出し、ピーク電流が設定値を超えると強制的にトラン ジスタのON時間を短縮させて出力電圧を低下させ電流を制限しています。過電流状態を解除 すると出力電圧は自動的に復帰します。 過熱保護時出力電圧特性 出力電圧 復帰設定温度 保護設定温度 接合温度 過熱保護回路は、ICの半導体接合温度を検出し、接合温度が設定値を超えると出力トラン ジスタを停止させ、出力をOFFとします。接合温度が過熱保護設定値より約15℃程度低下 しますと自動的に復帰します。 ※(過熱保護特性)注意事項 瞬時短絡等の発熱に対しICを保護する回路であり、長時間短絡等、発熱が継続する状態で の信頼性を含めた動作を保証するものではありません。 8 SPI-8010A 4.使用に際しての注意事項 ●4-1 外付部品選定上の注意 4-1-① チョークコイルL1 チョークコイルL1は、チョッパ型スイッチングレギュレータの中心的役割を果たしていま す。レギュレータの安定動作維持のため、飽和状態での動作や、自己発熱による高温動作等の 危険な状態は回避しなくてはなりません。チョークコイル選定のポイントとしては以下の事項 が挙げられます a)スイッチングレギュレータ用である事 ノイズフィルタ用のコイルは、損失が大きく発熱が大となりますのでご使用を避けて下さい。 b)インダクタンス値が適正である事 チョークコイルのインダクタンスは、大きい程コイルを流れるリップル電流が減尐し出力リ ップル電圧が小さくなりますが、コイルの外形は大形になります。逆に小さなインダクタンス とすると、スイッチングトランジスタやダイオードを流れるピーク電流が増大して損失が増加 し、リップル電圧も大きくなり安定動作確保の上で好ましくありません。 インダクタンス大 リップル電圧・電流小 インダクタンス小 C2 リップル電圧・電流大 C2 インダクタンスが大きい程、リップル電流・電圧は小さく インダクタンスが小さい程、リップル電流・電圧は大きく なる。但し、コイルの外形は大きくなる。 なる。但し、コイルの外形は小さくなるが、不安定 動作になりやすい。 仕様書に示すインダクタンス値は、安定動作に適した目安の値でありますが、(1)式によって 適当なインダクタンス値を求めることもできます。 ここで、ΔIL はチョークコイルのリップル電流値を示し、大略下記の目安に従って設定します。 ・使用出力電流がSPI-8010Aの最大定格(3A)に近い場合:出力電流×0.2~0.3倍 ・使用出力電流が大略1A以下の場合:出力電流×0.5~0.6倍 L1 例えば (VIN VOUT ) VOUT IL VIN f VIN=25V. L1 VOUT=5V. ΔIL=0.35A. ---(1) 周波数=250kHz とすると、 (25 5) 5 ≒ 45.7uH 0.35 25 250 103 となりますので、インダクタンスが 47uH のコイルを選択すればよい事になります。 9 SPI-8010A c)定格電流を満足する事 チョークコイルの定格電流は、使用する最大負荷電流より大きくなくてはなりません。負荷 電流がコイルの定格電流を越えると、インダクタンスが激減し、ついには飽和状態となります。 この状態では、高周波インピーダンスが低下し、過大な電流が流れますのでご注意下さい。 d)ノイズが尐ない事 ドラム型のような開磁路型コアは、磁束がコイルの外側を通過するため周辺回路へノイズに よる障害を与える事があります。なるべくトロイダル型や EI 型、EE 型のような閉磁路型コア のコイルをご使用下さい。 4-1-② 入力コンデンサC1 入力コンデンサは、入力回路のバイパスコンデンサとして動作し、スイッチング時の急峻な 電流をレギュレータに供給しており、入力側の電圧降下を補償しています。従って極力レギュ レータICの近くに取り付ける必要があります。また、AC 整流回路の平滑コンデンサが入力回 路にある場合には、入力コンデンサは平滑コンデンサと兼用とする事が出来ますが、同様の配 慮が必要です。 C1選定のポイントとして次の事が挙げられます。 a)耐圧を満足する事 b)許容リップル電流値を満足する事 C1の電流の流れ IIN C1電流波形 VIN 1.VIN リップル電流 0 Iv Ip C1 Ton D T Ton T 入力コンデンサのリップル電流は負荷電流の 増加に伴って増大する。 これら耐圧や許容リップル電流値を、オーバーさせた場合やディレーティング無しで使用し た場合、コンデンサ自身の寿命が低下(パンク、容量の減尐、等価インピーダンス増大、等) するばかりでなく、レギュレータの異常発振を誘発する危険があります。従って、十分なマー ジンをとった選択が必要です。尚入力コンデンサに流れるリップル電流実効値 Irms は下記の (2)式で求められます。 Irms 1.2 Vo Io Vin --(2) 10 SPI-8010A 例えば VIN=20V,Io=3A,Vo=5V とすると、 I r m 1s.2 5 3 0.9 A 20 となりますので、許容リップル電流が、0.9A より大きいコンデンサを選ぶ必要があります。 4-1-③ 出力コンデンサC2 出力コンデンサC2は、チョークコイルL1と共にLCローパスフィルターを構成し、スイ ッチング出力の平滑コンデンサとして機能しています。出力コンデンサにはチョークコイル電 流の脈流部ΔIL と等しい電流が充放電されています。従って入力コンデンサと同様に、耐圧及 び許容リップル電流値を十分なマージンを取った上で満足する必要があります。 IL C2の電流の流れ Vout L1 ESR C2電流波形 Io リップル電流 RL 0 ⊿IL 出力コンデンサのリップル電流はチョークコイルのリップル C2 電流と等しく、負荷電流が増減しても変化 しない。 a)許容リップル電流 出力コンデンサのリップル電流実効値は、下記の(3)式で求められます。 Irms IL 2 3 ---(3) 例えばΔIL を 0.5A としますと、 Irms 0.5 ≒ 014 . A 2 3 となり、許容リップル電流が 0.14A 以上のコンデンサが必要になります。 又レギュレータの出力リップル電圧 Vrip は、チョークコイル電流の脈流部ΔIL(=C2充 放電電流)と出力コンデンサC2の等価直列抵抗 ESR の積によって定まります。 Vrip IL C2ESR ---(4) b)直流等価抵抗(ESR) 安定動作のため ESR は適切な値を選ぶことが必要です。ESR が過大な場合には、出力リップ ル電圧増大による異常発振、一方、過尐な場合は位相余裕の不足となります。出力リップル 電圧は、チョークコイル電流の脈流部ΔIL(=C2充放電電流)と ESR の積で決まり、出力 リップル電圧としては、出力電圧の 0.5~1%程度(例:Vout=5V で 0.5%の場合:25mV)にて良 好な動作となり、出力電圧リップルの求め方は(5)(6)を参照願います。ESR は温度で 変化し、特に高温時には ESR が低下することから注意が必要です。 11 SPI-8010A Vrip Vin Vout Vout ESR L Vin f Vrip IL ESR ---(5) ---(6) しかし出力コンデンサの ESR が極端に小さくなりますと(約 10~20mΩ以下)、レギュレータ の帰還ループ内の位相余裕が不足し、動作が不安定になる恐れがあります。この為、出力コン デンサにタンタルコンデンサや積層セラミックコンデンサを単体で用いる事は適当ではあり ません。但し低温(<0 ゚ C)で使用される場合には、電解コンデンサと並列にタンタルコンデン サや積層セラミックコンデンサを接続すると出力リップル電圧の低減に有効です。更に、一層 出力リップル電圧を小さくするには、下図に示すように、LCフィルタを一段追加しπ型フィ ルターを構成するのが効果的です。 L1 L2 7.SWOUT 11.VIN SPI-8010A 1,3.GND L2:20μH 15.VREF D1 C2 C4:200μF C4 但し 2 段目のフィルタを追加した場合には出力電圧検出点(Vos 端子への配線)を 2 段目フ ィルタの前段にしないと異常発振を起こす事がありますので、注意が必要です。 このように、出力コンデンサC2においては、耐圧及び許容リップル電流が満足されれば、 容量より ESR の方が動作安定度に与える影響が大きい事にご注意ください。 4-1-④ フライホイールダイオード・D1 フライホイールダイオードD1は、スイッチングオフ時にチョークコイルに貯えられたエネ ルギーを放出させる為の物です。フライホイールダイオードには必ずショットキーバリアダイ オードを使用して下さい。一般の整流用ダイオードやファーストリカバリダイオード等を使用 した場合、リカバリ及びオン電圧による逆電圧印可によりICを破壊する恐れがあります。 又 SPI-8010A の SWOUT(7 番端子)から出力された電圧は入力電圧とほぼ同等である為、フライ ホイールダイオードの逆方向耐圧が入力電圧×1.2 以上あるものをご使用下さい。 ●4-2 パターン設計上の注意 4-2-① 大電流ライン 接続図中の太線部分には大電流が流れますので、出来る限り太く短いパターンとして下さい。 L1 11,VIN VIN 7.SWOUT VOUT SPI-8010A C1 GND 4.SS 1,3.GND 15.VOS D1 C2 GND 12 SPI-8010A 4-2-② 入出力コンデンサ 入力コンデンサC1と、出力コンデンサC2は、出来る限りICに近づけて下さい。入力側に AC 整 流回路の平滑コンデンサがある場合には、入力コンデンサと兼用にする事が可能ですが、距離が離れて いる場合には、平滑用とは別に入力コンデンサを接続する事が必要です。また入出力コンデンサのリー ド線には、大電流が高速で充放電されるので、リード線の長さは最短として下さい。コンデンサ部分の パターン引き回しにも同様の配慮が必要です。 C1,C2 悪いパターン例 4-2-③ C1,C2 良いパターン例 センシング端子 出力電圧センシング端子Vosは出来る限り出力コンデンサC2に近い所に接続して下さ い。(遠い場合、レギュレーションの低下、スイッチングリップルの増大により異常発振の原 因となる事がありますのでご注意下さい。 13 SPI-8010A ●4-3 動作波形の確認 スイッチング動作が正常であるかどうかはSPI-8010Aの7-1、3端子間波形(S WOUT-GND間波形)にて確認できます。以下に正常動作時及び異常発振時における波形例を 示します。 連続領域は、チョークコイルを流れる電流に、三角波に直流成分が重畳している領域であり、 不連続領域はチョークコイル電流が尐ない為チョークコイルを流れる電流が断続的になる(ゼ ロになる期間が発生する)領域です。従って負荷電流が多い場合は連続領域に、尐ない場合は 不連続領域になります。連続領域ではスイッチング波形は通常の方形波の形状となり(波形1)、 不連続領域ではスイッチング波形に減衰振動が発生しますが(波形2)、これは正常な動作で あり問題はありません。 ところがICとC1,C2が離れていると、上の波形(3,4)にみられるように、スイッ チングのON・OFF時間が乱れるジッタが発生します。前述の通り、C1,C2はICの近く に接続する事が必要です。 14 SPI-8010A ●4-4 熱設計 4-4-① 放熱の計算 レギュレータの損失Pdと、接合部温度Tj、ケース温度Tc、基板パターン温度 Tfin、周囲温度Taは、以下の関係にあります。 Pd(損失) Tj ジャンクション温度(125℃MAX) チップ θ jc(接合-ケース間熱抵抗) 5.5℃/W ケース Pd Tj Tc ---(6) jc Pd Tj Tfin ---(7) jc i Pd Tj Ta ---(8) jc i fin Tc ケース温度(内部フレーム温度) 基板 θ i(ケース-放熱器間熱抵抗) 0.4~0.6℃/W Tfin 放熱器温度 θ fin(基板熱抵抗) Ta 周囲温度 TjMAXは製品固有の値であり、厳守する必要があります。この為には、PdMAX,T aMAXに応じた基板パターン設計(θfinの決定)が必要になります。これらを分かりや すくグラフ化した物が熱減定格であります。基板パターン設計は以下の手順で行います。 1)セット内最大周囲温度TaMAXを求める。 2)入出力条件を変化させ最大損失PdMAXを求める 100 VOUT Pd VOUT Io 1 Vf Io1 VIN x ---(9) ※ ηx=効率(%),Vf=ダイオード順方向電圧 3)熱減定格上の交点より基板パターンの大きさを決定する。 又計算にて必要な基板の熱抵抗を求める事も出来ます。必要な基板の熱抵抗は、 i fin Tj Ta jc Pd ---(10) で求められます。例として、以下に SI-8010A を VIN=10V,Vo/Io=5V/3A,Ta=85℃で使用する場合 の熱計算例を示します。代表特性例より効率η=87%、Vf=0.5V として、 5 100 Pd 5 3 1 0.5 3 1 ≒1.49W 87 10 125 85 i fin 18 ≒ 8.85゚C / W 1.49 よって熱抵抗が 9 ゚ C/W 以下の放熱器が必要になります。 以上により基板の熱抵抗が決定された事になりますが、一般的には 10~20%以上のディレーテ ィングで使用します。又実際には、実装上の違いにより放熱効果が大きく変化します。従って、 実装状態での基板温度あるいはケース温度の確認が必要となります。 15 SPI-8010A 4-4-② 基板への取り付け 裏面ヒートシンクへの GND パターンの接続 SPI-8010Aは、裏面にヒートシンクが付いたパッケージを採用しております。放熱効果を高 めるために、裏面のヒートシンクとGNDパターンを接続することを推奨します。 16 SPI-8010A 5.応用 ●5-1 ソフトスタート SPI-8010Aの 4 番端子にコンデンサを接続すると、入力電圧投入時から、出力電圧が立ち上が るまでの遅延目的としたソフトスタート動作を行うことができます。この遅延を行うことで、レギュレ ータが動作する前に、入力電圧が高い状態となります。降圧型スイッチングレギュレータの場合、入力 電圧が高いほど、入力電流が減尐するため、尐ない電流でスタートさせることができます。実機におい ては、入力電源の立ち上がり時間等の影響をうけるため多尐の変動があります。またC4については、 4700pF以下で使用願います。 SPI-8010A Vin 4 C4 Vo Td Td ●5-2 3.2 C 4 ( Sec) 15 106 出力のON/OFF制御 4番・CE/SS端子を用いて、出力ON/OFF制御が可能です。オープンコレクタ等の スイッチにより、4番端子を Lo レベルとすると出力は停止します。又ソフトスタートとの併 用も可能です。CE/SS端子はIC内部でプルアップ済みですので外部からは電圧を印加し ないで下さい。 SPI-8010A 4.CE/SS C3 SS+ON/OFF 17 SPI-8010A ●5-3 出力電圧可変 抵抗 R2,R3 ・R2,R3 は出力電圧を設定する為の抵抗です。IREF が 2mA 程度となるよう設定して下 さい。又、R2,R3 の値を求める式は以下のようになります。 R2 ●5-4 VOUT V REF VOUT 1 V ,R3 REF 1 3 ≒ 500 3 I REF I REF 2 10 2 10 逆バイアス保護 バッテリーチャージ等、入力端子より出力の電圧が高くなるような場合には、入出力間に逆 バイアス保護用のダイオードが必要となります。 SPI-8000A 18 SPI-8010A 6.代表特性例 (1) 効率 100 (4) 過電流保護特性 1.2 Vo=14V Io=3A 1A 0.5A Vo=5V 80 Io=3A 1A 70 Vo=1.8V 0.5A Io=3A 1A 60 50 1.0 出力電圧 VO [V] Output Voltage 効率 η [%] Efficiency 90 0.6 0.4 0 10 20 30 入力電圧 VIN [V] Input Voltage 40 VIN= 8V 0 50 ※Load=C.R 0 1 (5) 過熱保護 1.2 12V 20V 30V 0.2 0.5A (2) 出力電圧立上り 2 3 4 出力電流 IO [A] Output Current 5 VIN=12V, IO=0.02A 1.2 IO=0.02A 1A 3A 1.0 出力電圧 VO [V] Output Voltage 0.8 1.0 0.8 0.8 0.6 0.6 0.4 0.4 0.2 0.2 0 0 0 2 6 8 入力電圧 VIN [V] Input Voltage 4 10 効率 η [%] Efficiency (3)Load Regulation 1.03 1.02 TSD OFF 50 TSD ON 100 150 周囲温度 Ta [℃] Ambient Temperature (6) 温度特性 200 VIN=12V, IO=1A 300 1.015 Freq 250 1.01 VIN=8V 12V 0.99 20V 30V 0.98 0.97 0 1.0 2.0 出力電流 IO [A] Output Current 3.0 200 1.005 150 VO 100 1 0.995 η 50 -50 0 50 100 周囲温度 Ta [℃] Ambient Temperature 出力電圧 VO [V] Output Voltage 1.00 周波数 Freq [kHz] Operating Frequency 出力電圧 VO [V] Output Voltage 1.01 0.99 150 19 SPI-8010A 7.用語解説 ・ジッタ 異常スイッチング動作の一種で、入出力条件が一定にも関わらずスイッチングパルス幅が変 動する現象であります。ジッタが発生すると、出力のリップル電圧ピーク幅が増加します。 ・推奨動作条件 正常な回路機能を維持するために必要とされる動作条件を示すもので、実使用においては当 条件内とする必要があります。 ・絶対最大定格 破壊限界を示す定格であり、瞬時動作及び定常動作において、一項目かつ一瞬たりとも規格 値を超えないように配慮する必要があります。 ・電気的特性 各項目に示している条件で動作させた場合の特性値規格であります。動作条件が異なる場合 には、規格値から外れる可能性があります。 ・PWM (Pulse width modulation) パルス変調方式の一種で、変調信号波(チョッパ型スイッチングレギュレータの場合、出力 電圧)の変化に応じて、パルスの幅を変えて変調する方式であります。 ・ESR (Equivalent series resistance) コンデンサの等価直列抵抗値を示します。コンデンサに直列に接続された抵抗と同等の作用 を示します。 ご注文に際して ご注文数量は、1400個(1 リール)の整数倍でご指定下さいますようお願い致します。 20 SPI-8010A 8.使用上の注意 !注意 ●本書に記載されている内容は、改良などにより予告なく変更する事があります。ご使用の 際には、最新の情報である事をご確認下さい。 ●本書に記載されている動作例及び回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに 起因する当社もしくは第三者の工業所有権、知的所有権、その他の権利の侵害問題につい て当社はいっさい責任を負いません。 ●本書に記載されている製品をご使用の場合は、これらの製品と目的物との組み合わせにつ いて使用者の責任において検討・判断を行って下さい。 ●当社は品質、信頼性の向上に努めていますが、半導体製品では、ある確率での欠陥、故障 の発生は避けられません。部品の故障により結果として、人身事故、火災事故、社会的な 損害等を発生させないよう、使用者の責任において、装置やシステム上で十分な安全設計 及び確認を行って下さい。 ●本書に記載されている製品は、一般電子機器(家電製品、事務機器、通信端末機器、計測 機器等)に使用される事を意図しております。ご使用の場合は、納入仕様書の締結をお願 いします。高い信頼性が要求される装置(輸送機器とその制御装置、交通信号制御装置、 火災・防犯装置、各種安全装置など)への使用をご検討の際には、必ず当社販売窓口へご 相談及び納入仕様書の締結をお願いします。極めて高い信頼性が要求される装置(航空宇 宙機器、原子力制御、生命維持の為の医療機器など)には、当社の文書による合意がない 限り使用しないで下さい。 ●本書に記載された製品は耐放射線設計をしておりません。 ●本書に記載された内容を文書による当社の承諾無しに転記複製を禁じます。 21