FEJ 76 10 595 2003

富士時報
Vol.76 No.10 2003
自動車用ダイオード
渡島 豪人(わたしま たけと)
北村 祥司(きたむら しょうじ)
特
集
1
降旗 博明(ふりはた ひろあき)
まえがき
跳ね上がり電圧,スイッチングノイズの低減が要求されて
いる。200 V LLD を使用した場合の電源(250 W)の 12 V
環境問題や省エネルギー問題から,自動車分野では電気
出力部ダイオードの損失分析によると,損失の 90 %以上
自動車やハイブリッド車の開発が強力に進められている。
は VF による損失である。また,スイッチング時のダイ
特にハイブリッド車は,燃料を供給するだけで充電設備を
オードに印加されるサージ電圧および急峻
(きゅうしゅん)
必要とせずに走行できるため,年々車種,生産台数ともに
な dv/dt によるノイズを抑制するために,スナバ回路や
増加の傾向にある。ハイブリッド車はエンジンに加えモー
ビーズなどが適用されており,部品点数の増加,コスト
タを搭載するため,それを駆動するための高電圧・高容量
アップなどを招いている。
バッテリーを搭載しており,通常の電装品のための低電圧
従来使用されている LLD は,pn 接合ダイオードであり,
DC-
低 VF 化には限界がある。また,一般にソフトリカバリー
DC コンバータが用いられる。ハイブリッド車用の DC-
性と VF にはトレードオフ関係があり,低 VF 化とソフト
DC コンバータは,高効率化,小型・軽量化,高信頼性化
リカバリー化の両立が非常に困難であった。そこで SBD
が重要な要素であるが,加えて,大電流を扱う DC-DC コ
の低 VF,ソフトリカバリー特性に着目し,従来,pn 型高
ンバータはノイズ発生源になりやすく,ノイズに対する配
速ダイオードを使用している高出力回路に高耐圧 SBD を
慮も重要である。
適用することで低損失化,ソフトリカバリー特性による低
電源をメインバッテリーから変換し供給するために
本稿では,自動車機構部品の電子化に伴う電子制御ユ
ノイズ化が同時に達成可能となる。以上から,今回の高耐
コンバー
圧 SBD の 目 標 特 性 は , 12 V 出 力 部 か ら 48 V 出 力 部 を
ニット(ECU)の増加傾向を踏まえて,DC-DC
タ用途をはじめとして開発した高耐圧,低損失,低ノイズ
ターゲットにし,現状の pn 型高速ダイオードと比較して,
のダイオード系列と,さらに点火システムの電子化として
(1) 低 VF 性の確保
急増著しい,
「ディストリビュータレスイグニションシス
(2 ) ソフトリカバリー性の確保
テム」
(DLIS)に適用される高耐圧,高信頼性のダイオー
(3) 120 ∼ 250 V 耐圧
を加味し,開発を推進した。
ドについて紹介する。
高耐圧 SBD 系列
2.2 素子設計
(1) 耐圧設計
図 1 に高耐圧 SBD のチップ構造を示す。耐圧構造は
2.1 概 要
今回開発した高耐圧ショットキーバリヤダイオード
(SBD)は,電源の二次側整流,特に高電圧出力整流用に
最適なダイオードと考えている。3.3 V,5 V といった低電
ガードリング方式を採用した。素子の耐圧は,エピタキ
シャル層(n−層)の比抵抗ρと厚さ t で決まる。 図2 に,
耐圧(VBR)の比抵抗ρ,厚さ t 依存性を示す。高耐圧ほ
圧出力回路では,低耐圧 SBD(30 V,45 V)が使用され
ど,比抵抗ρを上げ,エピタキシャル厚さ t が厚い設計と
ているが,12 V 以上の高電圧出力回路では,耐圧の高い
し,さらにガードリングの濃度,拡散深さを最適化し目的
LLD( Low Loss fast recovery Diode)( 200 V, 300 V,
の耐圧を確保した。
400 V)が使用されていた。12 V 以上の高電圧出力では,
(2 ) バリヤメタル選定
大容量化,小型化,低ノイズ化などのニーズに対応する目
項の検討結果から,120 ∼ 250 V の耐圧を確保するに
(1)
的で,二次側整流回路に使用されるダイオードに対し順方
はエピタキシャル層の比抵抗を高くし,厚さは 10 µm 以
向電圧(VF)による発生損失の低減,逆回復特性による
上が必要となる。低耐圧 SBD と同様なユニポーラ動作を
渡島 豪人
北村 祥司
降旗 博明
パワーダイオードの開発・設計に
パワーダイオードの開発設計に従
パワーダイオードの製造・開発設
従事。現在,富士日立パワーセミ
事。現在,富士日立パワーセミコ
計に従事。現在,富士電機デバイ
コンダクタ
(株)
松本事業所開発設
ンダクタ
(株)
松本事業所開発設計
ステクノロジー
(株)
半導体事業本
計部マネージャー。
部。
部開発統括部自動車電装品開発部。
595( 9 )
富士時報
仮定すると,VF は pn ダイオードに比べかなり高くなる
などから VF と IR の関係を求めたものを示す(各耐圧クラ
はずだが,ショットキー接合およびガードリングからの少
。40 V 耐圧で
スでバリヤ高さを変えたときの VF-IR 特性)
数キャリヤ(ホール)の注入が起き,VF が抑えられる。
は従来の VF-IR トレードオフを示すが,150 V,250 V で
以下にバリヤメタル選定により順方向特性が変わることを
はバリヤ高さが高いほど VF は低減する。120 V は 150 V
検証する。図3に,40 V,150 V,250 V 耐圧仕様のエピタ
と同様と考えられる。また,250 V SBD において pn ダイ
キシャル層に,3 種のバリヤメタル a,b,c(バリヤ高さ
オードに対し,低 VF 特性を達成するには,バリヤ高さは
a < b < c)を形成したときの順方向特性のシミュレー
メタル b 以上必要であることが分かる。
ション結果を示す。150 V,250 V 耐圧の仕様のものでは
バリヤ高さが高いほど,大電流域では VF が低くなる(0.7
2.3 素子特性
∼ 0.8 V でクロスポイントあり)
。ショットキー部からの
以上の検討結果をもとに,120 V,150 V,250 V の SBD
ホール注入は,エピタキシャル層の比抵抗が大きいほど,
(電流定格 10 A)を作製した。図5に 120 V SBD の順方向
またバリヤ高さが高いほど多くなる。図4に,図3の結果
特性,逆方向特性を, 図6 に 150 V SBD の順方向特性,
。比較のために富士電機
逆方向特性を示す(Tj = 125 ℃)
製 200 V LLD も示す。120 V,150 V SBD ともに LLD よ
図1 SBD チップ断面構造
り低 VF となっている。特に低電流域で低 VF が顕著であ
ガードリング
ショットキー電極
る 。 図 7 に 逆 回 復 特 性 の LLD と の 比 較 を 示 す 。 150 V
酸化膜
SBD と 200 V LLD を比較した。逆電流ピーク(IRP)はや
や低減され,ソフトリカバリーになっていることが分かる。
エピタキシャル層
ρ
t)
(比抵抗 /厚さ
2.4 実装試験結果
250 W,12 V 出力用電源に実装したときの波形比較を図
Si基板
8 に示す。200 V の LLD の代わりに 150 V SBD を実装し
図4 VF - I R 相関
J R(A/cm2)
逆方向電流密度 (40 V,150 V,250 V のとき)
図2 エピタキシャル層の仕様と耐圧
300
耐圧 V BR(V)
260
220
180
エピタキシャル層の比抵抗
140
100
10
1
10
−1
10
−2
40 V
耐圧
150 V
耐圧
250 V
耐圧
a
b
10−3
10−4
10−5
c
バリヤ高さ
a<b<c
pnダイオード
10−6
12
14
16
18
エピタキシャル層厚 t( m)
0
20
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
順方向電圧 V F(V)
( J F =2 A/mm2 のとき)
図3 順方向特性のシミュレーション結果
abc
3.0
2.0
0
0
バリヤ高さ
a<b<c
0.4
0.8
1.2
順方向電圧 V F(V)
(a)40 V耐圧
596(10)
1.6
ba
4.0
3.0
2.0
1.0
0
0
0.4
0.8
1.2
順方向電圧 V F(V)
(b)150 V耐圧
c
5.0
順方向電流密度 J F(A/mm2)
4.0
1.0
c
5.0
順方向電流密度 J F(A/mm2)
5.0
順方向電流密度 J F(A/mm2)
特
集
1
自動車用ダイオード
Vol.76 No.10 2003
1.6
b a
4.0
3.0
2.0
1.0
0
0
0.4
0.8
1.2
順方向電圧 V F(V)
(c)250 V耐圧
1.6
富士時報
自動車用ダイオード
Vol.76 No.10 2003
図5 120 V SBD 試作結果(順方向特性と逆方向特性)
120 V SBD順方向特性(代表値)
Tj =125 ℃
120 V SBD逆方向特性(代表値)
10,000
条件: I
Tj =125 ℃
120 V/20 A SBD
10
図7 逆回復特性(試作結果)
F
= 5 A,di / =100
dt
A/ s
T j=100 ℃
T j=100 ℃
120 V/20 A SBD
1
200 V/20 A LLD
0.1
逆方向電流 I R( A)
順方向電流 I F(A)
1,000
200 V/20 A LLD
100
0.4
0.6
0.8
2A
20 ns
20 ns
(b)高耐圧SBD(150 V SBD)
(YG865C15R)
10
1
0.2
2A
(a)ESAD92-02
(FUJI200 V LLD)
0.01
0
I RP
I RP
1.0
0
順方向電圧 V F(V)
20
40
60
80
100 120
図8 12 V 出力電源実装時の印加波形
逆方向電圧 V R(V)
12 V
図6 150 V SBD 試作結果(順方向特性と逆方向特性)
150 V SBD順方向特性(代表値)
Tj =125 ℃
150 V SBD逆方向特性(代表値)
(a)12 V 出力回路
10,000
Tj =125 ℃
150 V/20 A SBD
10
150 V/20 A SBD
1 A,50 V
1
200 V/20 A LLD
0.1
逆方向電流 I R( A)
順方向電流 I F(A)
1,000
1 A,50 V
I
200 V/20 A LLD
100
0.01
I
V RP =129 V
V RP =75 V
V
10
V
10 ns
(b)200 V LLD
10 ns
(c)150 V SBD タイプA
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0
順方向電圧 V F(V)
50
100
150
逆方向電圧 V R(V)
図9 12 V 出力電源二次側整流ダイオードの損失比較
(シミュレーション結果)
35
(b)
(a)
た。図8
は評価回路,同図
,
はフォワード側のダイ
(c)
オードの波形である。跳ね上がりサージ電圧が大幅に緩和
ある。18.3 %の損失低減が図られている。24 V,48 V 系
電源でも同様の検討結果が得られ,約 20 ∼ 30 %の損失低
減が期待できる。
18.3 %低
25
損失( J)
されている。また,二次側の損失を計算したものが図9で
スイッチング損失
30
逆損失
20
15
順損失
10
5
2.5 製品系列
表1に高耐圧 SBD 製品系列一覧を示す。電流定格は 10
0
200 V LLD
YG906C2R
150 V SBD
YG865C15R
A,20 A,30 A,製品外形は TO-220,TO-220F,TO247,T-Pack(SMD)である。
を克服するために電子制御ユニット(ECU)の制御信号
DLIS 用高耐圧ダイオード
をもとに電気回路的に各プラグに高電圧分配する高効率な
点火方式であり,年々大幅に採用車種を増やしている。図
3.1 概 要
DLIS は従来のディストリビュータ(回転式機械接点で
各点火プラグに高電圧を供給)配電方式の弱点といわれる,
10に DLIS の主流であるコイル分配独立点火 DLIS の回路
図と点火系統図を示す。以下,このコイル分配独立点火
DLIS に適用される高耐圧ダイオードについて述べる。
(1) 接点部のスパークによる焼損とエネルギーの損失
(2 ) 高回転域でのきめ細かな制御が困難
(3) 接点部のスパークならびにハイテンションコードを使
用することによる電波雑音の発生とエネルギーの損失
3.2 役割と課題
点火コイルは二次側出力電圧を高電圧にするため,一次
側点火トランジスタの電流遮断によるコイルの急激な磁束
597(11)
特
集
1
富士時報
自動車用ダイオード
Vol.76 No.10 2003
表1 高耐圧SBD系列一覧
最大定格
特
集
1
電気的特性
V RRM
(V)
Io
(A)
I FSM
(A)
V FM(V)
I F =0.5× I o
( =25
Ti
℃)
TO-220
120
10
75
0.88
150
TO-220F
120
10
75
0.88
150
TS862C12R
T-Pack
120
10
75
0.88
150
YA865C12R
TO-220
120
20
150
0.88
150
YG865C12R
TO-220F
120
20
150
0.88
150
TS865C12R
T-Pack
120
20
150
0.88
150
YA868C12R
TO-220
120
30
225
0.88
200
YG868C12R
TO-220F
120
30
225
0.88
200
TS868C12R
T-Pack
120
30
225
0.88
200
YA862C15R
TO-220
150
10
75
0.90
150
YG862C15R
TO-220F
150
10
75
0.90
150
TS862C15R
T-Pack
150
10
75
0.90
150
YA865C15R
TO-220
150
20
150
0.90
150
YG865C15R
TO-220F
150
20
150
0.90
150
PH865C15
TO-247
150
20
150
0.90
150
TS865C15R
T-Pack
150
20
150
0.90
150
YA868C15R
TO-220
150
30
225
0.90
200
YG868C15R
TO-220F
150
30
225
0.90
200
PH868C15
TO-247
150
30
225
0.90
200
TS868C15R
T-Pack
150
30
225
0.90
200
YA862C25R
TO-220
250
10
75
1.08
150
YG862C25R
TO-220F
250
10
75
1.08
150
TS862C25R
T-Pack
250
10
75
1.08
150
YA865C25R
TO-220
250
20
150
1.08
150
YG865C25R
TO-220F
250
20
150
1.08
150
PH865C25
TO-247
250
20
150
1.08
150
TS865C25R
T-Pack
250
20
150
1.08
150
YA868C25R
TO-220
250
30
225
1.08
200
YG868C25R
TO-220F
250
30
225
1.08
200
PH868C25
TO-247
250
30
225
1.08
200
TS868C25R
T-Pack
250
30
225
1.08
200
型 式
外 形
YA862C12R
YG862C12R
I RRM
( A)
V R =V RRM
変化を利用している。しかし,トランジスタオン時にもコ
イル二次側には当然電圧が発生し,この電圧が点火プラグ
図10 DLIS コイル分配点火方式
に加わり最適点火時期以外でプラグが誤点火する可能性が
ある。高圧ダイオードは,このオン時の電圧を阻止し,誤
点火コイル
(気筒ごと)
点火を防止する。
高圧ダイオードはエンジンブロック内点火プラグの真上
に位置する点火コイル内に樹脂注形にて組み込まれる。そ
ECU
こで接合設計を含め信頼性確保のための熱設計・熱対策が
重要である。さらにミスファイヤ時のサージ電圧を考慮す
る必要があり,サージ吸収要素を素子に持たせることも重
+B
(a)独立点火方式
クランク角
センサ
(b)点火系統図
要課題である。
3.3 素子設計
(1) 耐圧設計
598(12)
富士時報
自動車用ダイオード
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トランジスタオン時の点火コイル二次側発生電圧を検証
バランシェ電圧と逆電流からなる損失が発生する。
した結果を一例として,Ic = 9 A 時のダイオード接合温度
図11
(b)
にプラグオープン動作における,逆電流ピーク
(a)
に示す。調査
(Tj)と二次側発生電圧の関係として図11
値と Tj の関係を示す。なお,逆電流のパルス幅は 100 µs
結果から,実際想定される電圧は 2.5 kV 以下である。
以下である。耐圧設計としてはまず素子耐圧をプラグオー
次に異常動作であるプラグオープンを想定したシミュ
プン時の二次側出力電圧以上とすることが考えられるが,
レーションにより責務を検討した。プラグオープン時には,
これは異常時に数十 kV の高電圧がシステム全体に印加さ
数十 kV の電圧が高圧ダイオードの逆方向に印加され,ア
れることとなり現実的でない。また,耐圧を高くする設計
方向は順損失の増加,発熱につながり得策とはいえない。
一方,耐圧を下げていくと損失は低減するため,システ
図11 Tj とコイル二次側オン電圧,オープン動作時逆電流
ムの安全性を含め,可能な限り設定耐圧を下げ,そのうえ
で逆サージ耐量を確保することが最適な耐圧設計となる。
2.5
これは,高圧ダイオードの発熱を非常に少なくすることが
2.0
コイルA
可能となり,高耐熱設計をするうえでも有利となる。
1.5
コイルB
1.0
図12 パルス幅とアバランシェ電流耐量の関係
0.5
0
−50
350
0
50
100
Tj(℃)
150
アバランシェ電流耐量 I zp(mA)
コイルオン電圧 V on(kV)
ピークの関係
逆電流ピーク I RP(mA)
T j とコイルオン電圧
(a)定常動作時の 40
コイルA
30
コイルB
20
10
0
0
100
Tj(℃)
50
150
200
300
250
200
Tj =25 ℃
150
100
Tj =150 ℃
50
0
40
50
60
70
80
90
100 110 120
Wp( s)
パルス幅 (b)オープン動作時の T j と逆電流ピーク
表2 ESJA28-02S,ESJA28-03,ESJA27-02Sの絶対最大定格と電気的特性
(a)絶対最大定格
定 格
項 目
記 号
ESJA28-02S
ESJA28-03
ESJA27-02S
単 位
条 件
定格せん頭逆耐電圧
V RM
2.2
2.7
2.2
kVpeak
イグニションパルス
非繰返しせん頭逆耐電圧
V RSM
2.5
3
2.5
kVpeak
イグニションパルス
順 方 向 出 力 電 圧
(正弦半波平均値)
Io
10
10
10
mA
f =60 Hz,
正弦半波整流
過 渡 せ ん 頭 電 流
(10 ms)
I surge
1
1
1
Apeak
f =60 Hz,正弦半波
1サイクル
Tj
150
150
150
℃
Tstg
−40∼150
−40∼150
−40∼150
℃
φ2.5×6.5
φ2.5×6.5
φ2.5×5
mm
接
合
部
温
度
保 存 温 度
パ
ッ
ケ
ー
ジ
(b)電気的特性
定 格
項 目
順方向電圧降下
記 号
VF
単 位
ESJA28-02S
ESJA28-03
ESJA27-02S
≦7
≦8.4
≦7
V
条 件
(25 ℃のとき)
I F=10 mA
逆方向漏れ電流
I R1
≦5
≦5
≦5
A
−02S:V R=2.2 kV
−03:V R=2.7 kV
逆方向漏れ電流
I R2
≦10
≦10
≦10
A
−02S:V R=2.5 kV
−03:V R=3.0 kV
アバランシェ電圧
V av
2.7≦
3.3≦
2.7≦
kV
I av=100 A
599(13)
特
集
1
富士時報
(2 ) 逆サージ耐量設計
プラグオープン時のアバランシェ電圧を超える急峻な逆
電圧印加に対し,逆サージ耐量が必要である。本製品では,
特
集
1
自動車用ダイオード
Vol.76 No.10 2003
① チップ比抵抗,面積,高抵抗層幅の最適化
① 樹脂材の樹脂特性の高温放置による経時変化の把握
② 熱衝撃,高温耐久評価などによる最適外装樹脂採用
③ パッシベーション膜厚の適正化と均一化技術の導入
などの施策を実施し,高耐熱設計を実現している。
② シリコン(Si)比抵抗の均一化
③ p+,n+不純物拡散深さの均一化技術の導入
④ チップ表面形状の均一化技術の導入
などの施策を行い,過電圧印加時の電界強度の低減および
3.4 製品紹介
表2に富士電機の DLIS プリ点火防止用高圧ダイオード
系列の最大定格と主な電気的特性を示す。
均一化を図り,オープン動作時のサージ電流に対して余裕
ある高サージ耐量を達成している。図12にパルス幅とアバ
あとがき
ランシェ電流耐量の関係を示す。
(3) 高耐熱設計
自動車電装用ダイオードの概略を紹介した。富士電機は
本用途のような特に高温雰囲気で使用され,温度差も大
今回紹介した製品・技術を基盤とし,製品系列の拡充とさ
きな使用環境では熱ストレスが大きく,樹脂・パッシベー
らに高品質な製品の開発に向け,レベルアップを推進して
ションの材質・構造などが重要となる。そこで,
いく所存である。
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*本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する
商標または登録商標である場合があります。