AN-1107 アプリケーション・ノート 2 チャンネル乗算型 DAC と単一の I/V 変換アンプを使用した AC 信号のオフセットと振幅の制御 著者: Estibaliz Sanz はじめに ADR01 は高精度で高安定性の低ドリフト電圧リファレンスです。 AC 信号のゲインを調整するために単一の AD8065 のみが使用 されています。 このアプリケーション・ノートでは、ここでご紹介する回路が AC と DC 両方の入力を可能にするために追加する加算アンプと IOUT の構成回路の必要性をどのように取り除き、データ・ア クイジション、計測に理想的な回路にするかをご説明します。 図 1 に示す回路は大信号乗算型 DACAD5449 で構成されていま すが、チャンネル 1 に処理する AC リファレンス信号を印加し、 チャンネル 2 には ADR01 からこの信号のオフセットをシフト する +10 V 入力を印加して動作しています。 AD8065 は AC 性能が優れており低ノイズ(この回路の目的に は理想的です)なので、このアプリケーションに最適です。 DAC 出力電流は加算され、AD8065 により電圧に変換されます。 従って AC 信号の振幅とオフセットは単一の DAC と単一のオペ アンプで制御する事ができます。 機能ブロック図 +10V AC REFERENCE DAC B IOUTB VOUT ADR01 ±10V DAC A AD8065AR IOUTA –10V ATTENUATED REFERENCE 09563-001 AD5429/AD5439/AD5449 NOTES 1. ADDITIONAL PINS OMITTED FOR CLARITY. 図 1. アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利 の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標 は、各社の所有に属します。※日本語資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。 Rev. 0 ©2010 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本 社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話 03(5402)8200 大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー 電話 06(6350)6868 Rev. 0 | Page 1 of 8 AN-1107 Application Note 目次 はじめに ............................................................................................. 1 安定性の問題 ................................................................................. 4 機能ブロック図 ................................................................................. 1 出力電圧 ............................................................................................. 5 乗算型 DAC ........................................................................................ 3 コードをロードした例 ................................................................. 5 ゲインの追加 ................................................................................. 4 正しいオペアンプを選ぶ .................................................................. 6 改訂履歴 2/11—Revision 0:初版 Rev. 0 | Page 2 of 8 Application Note AN-1107 乗算型 DAC 乗算型 DAC は従来の固定リファレンスの DAC とは違い、任 意又は AC リファレンス信号を印加して動作させる事ができ ます。 この回路構成で IOUT DAC を使用する主な利点の1つは、内 蔵の RFB 抵抗が RDAC の等価抵抗にマッチングしているので、 ゲイン温度係数の誤差が非常に小さくなる事です。 AC 信号のゲインを調整する簡単な方法は従来の反転オペア ンプ段を使う事です。十分な帯域幅をもつオペアンプを選び、 次式に従ってゲインを調整します。 出力アンプをユニポーラ・モードに接続した場合、出力電圧 は次式で与えられます。 VOUT = −[RDAC/RFB (VIN)] 乗算型 DAC は任意の電圧又は AC 電圧信号の乗算に理想的な ビルディング・ブロックを提供します。バッファ付き電流出 力 DAC 構成では、非反転ゲイン・アンプ構造を基本としてい ます。乗算型 DAC は R-2R 構造を採用して、図 2 に示すよう に可変 RDAC 抵抗の機能を実現しています。VREF ピンから見 た DAC の入力インピーダンスは一定ですが、出力インピーダ ンスはコードによって変わり、等価な可変 RDAC 値を与えま す。 ここで、 D は、DAC にロードされるデジタル・ワードの値です。 D = 0 to 255 (8-bit DACs). = 0 to 1023 (10-bit DACs). = 0 to 4095 (12-bit DACs). = 0 to 16,383 (14-bit DACs) = 0 to 65,536 (16-bit DACs) 図 3 に示すように乗算型 DAC では、電流は IOUT1 ノードに接 続された仮想グラウンド、又はグラウンド・ノード(デバイ スによっては IOUT2 )に流れるので、出力電圧のグリッジは 非常に小さくなります。 n はビット数です。 つまり、乗算型 DAC の出力信号はリファランス入力とデジタ ル入力値の積に比例します。 図 2.反転ゲイン回路 図 3.乗算型 DAC, VOUT = 0 ~ −VREF Rev. 0 | Page 3 of 8 AN-1107 Application Note ゲインの追加 VIN より大きい出力電圧が必要なアプリケーションでは、ゲイ ンを上げるために外付けアンプを追加するか又は一段で実現 することも可能です。 図 4 に示した推奨回路を使用して、回路のゲインを増やしま す。R1、R2、R3 はすべて同じような温度係数を持つ必要が ありますが、DAC の温度係数に一致する必要はありません。 もし C1 の値が小さ過ぎると、出力で波形歪を生じ、もし C1 の値が大き過ぎると、システムの帯域幅に悪影響を与える可 能性があります。 DAC の内部出力キャパシタンスがデジタル・コードの値よっ て変化するので、C1 の正しい値を決めるのは困難です。そこ で値は次式に従い最適に近似されます。 安定性の問題 目的の波形の信号処理を実現するために考慮しなければなら ない重要な部品は補正用コンデンサです。DAC の内部出力容 量によりオープン・ループ応答に極が導入されるため、閉ル ープ・ランプ発生回路でリンギングや不安定を生ずることが あります。これを補償するために、通常 ここで、 GBW は使用するオペアンプの小信号ユニティゲイン帯域幅 積です。 CO は DAC の出力キャパシタンスです。 図 3 に示すように外付け帰還コンデンサ C1 を DAC の内部 RF にと並列に接続します。 図 4.乗算型 DAC を使用した信号ゲイン Rev. 0 | Page 4 of 8 Application Note AN-1107 出力電圧 DAC A に固定の 10 V リファレンスを入力し、DAC B の入力 として 2 V オフセットのある 4 V サイン波を入力した場合、 AD5449 の出力電圧はデジタル・コードと DAC にロードされ る下記の値によって変化します。 1 C2 MEAN –8mV C2 p-p 3.84V 2 DAC A: オフセットの変化(0V~10V) 4 DAC B: 振幅の変化(0V~4V) C4 MEAN –6.024V 出力アンプをユニポーラ・モードに接続したので、出力電圧 は次式で与えられます。 C4 p-p 2.24V ここで、 D は、DAC にロードされるデジタル・ワードの値です; 0 か ら 4095 までの値になります。 n はビット数です。 CH1 500mV Ω CH2 2V CH4 2V M200ns CH1 09563-006 VOUT = −VREF × D ⁄ 2n 240mV 図 6.ハーフ・スケール コードをロードした例 図 5、図 6、 図 7 は DAC A と DAC B の両方にデジタル・コ ードをロードした場合の出力電圧を示します。 4 1 予想される出力オフセットは DAC A の電圧と DAC B のオフ セット電圧の合計になりますが、出力信号はオペアンプによ り反転されます。 C2 MEAN –4mV C2 p-p 4V 2 C4 MEAN –12V 1 C2 MEAN –4mV 2 C4 MEAN –32mV CH1 500mV Ω CH2 2V CH4 2V 4 C4 p-p 320mV M200ns CH1 240mV CH1 図 7.フル・スケール 09563-005 CH1 500mV Ω CH2 2V CH4 2V M200ns 図 5.ゼロ・スケール Rev. 0 | Page 5 of 8 240mV 09563-007 C4 p-p 4.56V C2 p-p 3.92V AN-1107 Application Note 正しいオペアンプの選択 乗算型 DAC 回路の性能は、選択された電流を電圧に変換する オペアンプに大きく依存します。信号の DC 精度を保つため には、DAC 出力の最小分解能を損なわないように、低バイア ス電流、低オフセット電圧のオペアンプを選ぶ事が重要です。 この事についてのさらに詳しい事は適切な乗算型 DAC のデー タシートに記載されています。 相対的に高速な AC 信号や任意の信号を乗算する必要のある アプリケーションでは、オペアンプの出力信号の特性が悪化 しないように広帯域幅で高スルーレートのオペアンプを使用 する必要があります。 オペアンプのゲイン帯域幅積は帰還抵抗で実現する帰還負荷 によって制限されます。それは又デバイスを設定するゲイン 構成によっても制限されます。必要とされるゲイン帯域幅を 決定するための一般的な経験による方法は、処理する信号の 周波数の 10 倍の−3 dB 帯域をもつオペアンプを選ぶ事です。 オペアンプのスルーレートはもし注意深く考慮されてない場 合には乗算型 DAC を制限するもう一つの仕様となりえます。 AD54xx と AD55xx ファミリの製品に対しては経験から、一般 的にスルーレートが 100 V/µs のオペアンプで十分です。 表 1.適切な ADI の高速オペアンプの選択 製品番号 AD8065 電源電圧(V) 5 to 24 BW @ ACL (MHz) 145 スルーレート (V/_μs) 180 VOS (Max) (µV) 1500 IB (Max) (nA) 0.006 AD8066 AD8021 AD8039 5 to 24 5 to 24 3 to 12 145 490 350 180 120 425 1500 1000 3000 0.006 10,500 750 ADA4899 AD8057 5 to 12 3 to 12 600 325 310 850 35 5000 100 500 AD8058 AD8061 3 to 12 2.7 to 8 325 320 850 650 5000 6000 500 350 AD8062 AD9631 2.7 to 8 ±3 to ±6 320 320 650 1300 6000 10,000 350 7000 Rev. 0 | Page 6 of 8 パッケージ SOIC-8, SOT-235 SOIC-8, MSOP-8 SOIC-8, MSOP-8 SOIC-8, SC70-5, SOT-23-5 LFCSP-8, SOIC-8 SOT-23-5, SOIC8 SOIC-8, MSOP-8 SOT-23-5, SOIC8 SOIC-8, MSOP-8 SOIC-8, PDIP-8 Application Note AN-1107 ノート Rev. 0 | Page 7 of 8 AN-1107 Application Note ノート ©2008 Analog Devices, Inc. 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