LTC1430A 高電力降圧スイッチング レギュレータ・コントローラ 特長 概要 ■ LTC®1430Aは 、 5Vか ら 1.xV∼ 3.xVに 変 換 す る ア プ リ ケーション用に最適化された高電力、高効率のスイッチ ング・レギュレータ・コントローラです。LTC1430Aは、 全温度、負荷電流、および電源電圧変動に対して±1% の出力安定化を提供可能な高精度内部リファレンスと内 部帰還システムを内蔵しています。LTC1430Aは、2つ のNチャネル出力デバイスによる同期スイッチング・ アーキテクチャを採用しており、高価な高電力Pチャネ ル・デバイスは必要ありません。加えて、上側Nチャネ ルFETのドレイン・ソース間抵抗を流れる出力電流をセ ンスし、低い値の外付けセンス抵抗なしで可変電流制限 を提供します。 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 5Vか ら 1.xV∼ 3.xVの 高 電 力 ス イ ッ チ ン グ ・ コ ン ト ローラ:出力10A以上が可能 90%以上の最大デューティ・サイクルにより低消費 電力5V電源を使用した3.3Vから2.xVへの変換が可能 外部MOSFETはすべてNチャネル 固定周波数動作 − 小さなL 優れた出力安定化:入力、負荷、温度変動範囲におい て±1% 高効率:95%以上が可能 低い値のセンス抵抗が不要 出力は最大10,000pFのゲート容量をもつ外部FETを ドライブ可能 消費電流:350µA標準(シャットダウン時1µA) 高速過渡応答 可変または固定3.3V出力 8ピンSO、16ピンGNおよびSOパッケージで供給 LTC1430Aは、実質上あらゆる動作条件で出力リップル を低減する固定周波数PWM発振器を内蔵しています。 200kHzの自走クロック周波数は、外部で100kHzから 500kHzを超える周波数まで調整可能です。LTC1430Aの 最大デューティ・サイクルは、標準でLTC1430の88%に 対して93.5%です。これにより、低消費電力5V電源を使 用して3.3Vから2.xVへの変換が可能です。LTC1430Aは 消費電流が350µAと低く、出力電流が1Aから50Aを超え るコンバータ設計において90%以上の効率を実現しま す。LTC1430Aの電源電流はシャットダウン・モードで は1µAに減少します。 アプリケーション ■ ■ ■ ■ Pentium®II、AMD-K6®マイクロプロセッサ用電源 5Vから3.xVのハイパワー・レギュレータ 2電圧ロジックボード用ローカル電源 低電圧、高電流バッテリ安定化 、LTC、LTはリニアテクノロジー社の登録商標です。 PentiumはIntel Corporationの登録商標です。 AMD-K6はAdvanced Micro Devices, Inc.の登録商標です。 標準的応用例 標準的な5Vから3.3V/10Aアプリケーション 効率 100 5V MBR0530T1 1µF 100Ω PVCC2 + 4.7µF 0.1µF NC SHUTDOWN C1 220pF RC 7.5k CC 4700pF 0.1µF IMAX 2.7µH/15A 1k LTC1430A IFB G2 FREQSET SHDN PGND COMP GND Q2 + SENSE FB COUT 330µF ×6 3.3V 10A 1430 TA01 NC Q1A, Q1B, Q2: MOTOROLA MTD20N03HL CIN: AVX-TPSE227M010R0100 COUT: AVX-TPSE337M006R0100 TA = 25°C PVCC = 5V VOUT = 3.3V 80 70 60 50 40 0.1 SENSE+ – 90 Q1A, Q1B 2 IN PARALLEL G1 SS 0.01µF 0.1µF 16k PVCC1 VCC CIN 220µF ×4 EFFICIENCY (%) + + 1 LOAD CURRENT (A) 10 1430 TA02 4-327 4 LTC1430A 絶対最大定格 (Note 1) 電源電圧 VCC ..........................................................................9V PVCC1、2 ................................................................ 13V 入力電圧 IFB ........................................................... −0.3V∼18V 他のすべての入力 .................... −0.3V∼(VCC+0.3V) 接合部温度 ............................................................ 150℃ 動作温度範囲 LTC1430AC .............................................. 0℃ ∼ 70℃ LTC1430AI ........................................... −40℃∼85℃ 保存温度範囲 ......................................... −65℃∼150℃ リード温度(半田付け、10秒).............................. 300℃ パッケージ/発注情報 ORDER PART NUMBER TOP VIEW ORDER PART NUMBER TOP VIEW LTC1430ACS8 G2 G1 1 16 G2 PVCC1 2 15 PVCC2 PGND 3 14 VCC G1 1 8 PVCC1 2 7 VCC /PVCC2 GND 4 13 IFB GND 3 6 COMP SENSE – 5 12 IMAX FB 4 5 SHDN FB 6 11 FREQSET SENSE+ 7 10 COMP SHDN 8 9 S8 PACKAGE 8-LEAD PLASTIC SO S8 PART MARKING 1430A TJMAX = 150°C, θJA = 150°C/W GN PACKAGE 16-LEAD PLASTIC SSOP LTC1430ACGN LTC1430AIGN LTC1430ACS SS S PACKAGE 16-LEAD PLASTIC SO TJMAX = 150°C, θJA = 130°C/W (GN) TJMAX = 150°C, θJA = 110°C/W (S) ミリタリ・グレードに関してはお問い合わせください。 電気的特性 注記がない限り、VCC=5V、TA=25℃(Note 2) LTC1430AC MIN TYP MAX PARAMETER VCC Supply Voltage ● 4 8 4 8 V PVCC PVCC1, PVCC2 Voltage ● 3 13 3 13 V VOUT Output Voltage Figure 1 VFB Feedback Voltage SENSE + and SENSE – Floating , VCOMP = 2.5V ∆VOUT Output Load Regulation Output Line Regulation Figure 1, IOUT = 0A to 10A Figure 1, VCC = 4.75V to 5.25V IVCC Supply Current (VCC Only) Figure 2, VSHDN = VCC VSHDN = 0V IPVCC Supply Current (PVCC) Figure 2, PVCC = 5V, VSHDN = VCC (Note 3) VSHDN = 0V fOSC Internal Oscillator Frequency FREQSET Floating 4-328 CONDITIONS LTC1430AI MIN TYP MAX SYMBOL ● 3.30 3.30 V 1.25 1.265 1.28 1.23 1.265 1.29 V 5 1 5 1 350 1 ● 700 10 350 1 1.5 0.1 ● UNITS 140 200 mV mV 700 10 1.5 0.1 260 130 200 µA µA mA µA 300 kHz LTC1430A 電気的特性 注記がない限り、VCC=5V、TA=25℃(Note 2) CONDITIONS LTC1430AC MIN TYP MAX LTC1430AI MIN TYP MAX 2.4 2.4 SYMBOL PARAMETER VIH SHDN Input High Voltage ● VIL SHDN Input Low Voltage ● IIN SHDN Input Current ● gmV Error Amplifier Transconductance ● 350 gmI ILIM Amplifier Transconductance (Note 4) AV Error Amplifier Open-Loop Gain (Note 5) ● 40 48 IMAX IMAX Sink Current VI(MAX) = VCC ● 8 12 ISS Soft Start Source Current VSS = 0V ● –8 tr, ts Driver Rise/Fall Time Figure 3, PVCC1 = PVCC2 = 5V tNOV Driver Non-Overlap Time Figure 3, PVCC1 = PVCC2 = 5V DCMAX Maximum Duty Cycle Figure 3, VCOMP = VCC, VFB = 1.265V ● は全動作温度範囲の規格値を意味する。 Note 1:絶対最大定格はそれを超えるとデバイスの寿命に影響を及ぼす値。 Note 2:デバイスのピンに流入する電流はすべて正。デバイスのピンから流出 する電流はすべて負。注記がない限り、すべての電圧はグランドが基準であ る。 Note 3:通常動作時の電源電流は、外部FETゲートの充電および放電に必要な ±1 650 1100 300 2400 ● V 0.8 ±0.1 UNITS 0.8 V ±0.1 ±1 µA 650 1200 µmho µmho 2400 40 48 dB 16 8 12 17 µA – 12 – 16 –8 – 12 – 17 µA 80 250 80 250 ns 25 130 250 25 130 250 ns 90 93.5 89 93.5 % 電流によって支配される。電源電流はLTC1430Aの動作周波数、電源電圧、お よび使用する外部FETによって異なる。 Note 4:ILIMアンプは電流をシンクできるがソースすることはできない。通常動 作(電流制限の状態でない)では、ILIM出力電流はゼロである。 Note 5:FBピン(SENSE+およびSENSE−フローティング)からCOMPピンへの 開ループDC利得および相互コンダクタンスは、それぞれAVおよびgmVである。 4-329 4 LTC1430A 標準的性能特性 IMAXピンのシンク電流と温度 240 VCC = 5V 230 OSCILLATOR FREQUENCY (kHz) IMAX CURRENT (µA) 13.5 13.0 12.5 12.0 11.5 11.0 10.5 – 40 –20 40 20 60 0 TEMPERATURE (°C) 80 100 VCC = 5V FREQSET FLOATING 220 210 200 190 170 – 40 –20 40 20 60 0 TEMPERATURE (°C) 80 ∆ICOMP ∆VFB 4 650 2 550 –4 –6 400 –8 20 0 60 40 TEMPERATURE (°C) 80 100 0 –2 450 –10 – 40 – 20 60 40 20 TEMPERATURE (°C) 80 0 –1.0 0 SUPPLY CURRENT (mA) 3.0 2.5 2.0 RI(MAX) = 16k 1.5 1.0 2 3 4 5 6 7 LOAD CURRENT (A) 8 6 LOAD CURRENT (A) 10 12 TA = 25°C VCC = 5V FIGURE 4 IPVCC (LOADED WITH 10,000pF, PVCC = 12V) 100 IPVCC (NO LOAD, PVCC = 12V) 10 1 1430 G07 IPVCC (NO LOAD, PVCC = 5V) 0.1 0 8 9 10 1460 G06 IVCC 4 1 電源電流と発振器周波数 1000 3.5 OUTPUT VOLTAGE (V) 100 1430 G05 4.0 4-330 – 0.4 – 0.8 電流制限時の出力電圧と 負荷電流 TA = 25°C 0.5 V = 5V CC FIGURE 4 0 2 0 – 0.2 – 0.6 1430 G04 RI(MAX) = 10k 100 80 TA = 25°C VOUT = 3.3V VCC = 5V FIGURE 4 0.2 0 500 – 20 20 0 60 40 TEMPERATURE (°C) ロード・レギュレーション 0.4 ∆VOUT (mV) 6 700 600 – 20 1430 G03 VCC = 5V 8 750 350 – 40 70 – 40 100 ∆VFBと温度 10 ∆VFB (mV) TRANSCONDUCTANCE (µmho) gm = 80 1430 G02 誤差アンプの 相互コンダクタンスと温度 800 85 75 1430 G01 850 90 180 100 VCOMP = VCC VFB = 1.265V 95 DUTY CYCLE (%) 14.0 最大デューティ・サイクルと 温度 発振器周波数と温度 100 200 300 400 OSCILLATOR FREQUENCY (kHz) 500 1430 G08 LTC1430A ピン機能 (16ピン・パッケージ/8ピン・パッケージ) G1 (ピン1/ピン1) :ドライバ1の出力。 このピンは上側Nチャネ ルMOSFET、 Q1のゲートに接続します。 この出力はPVCC1から PGNDまで振幅します。 G2が “H” のときには、 常に “L” です。 PVCC1 (ピン2/ピン2) :ドライバ1の電源VCC。 これはG1の電源 入力です。G1はPGNDからPVCC1まで振幅します。PVCC1は PVCC+VGS(ON) (Q1)以上の電位に接続しなければなりませ ん。この電位は外部電源、あるいは上側MOSFETと下側 MOSFET間のスイッチング・ノードに接続された単純な チャージポンプを使用して発生させることができます。 詳 細については、 アプリケーション情報を参照してください。 PGND (ピン3/ピン3) :パワー・グランド。 両方のドライバは、 こ のピンにリターンします。 このピンはQ2のソース近くの低イ ンピーダンスのグランドに接続してください。8ピン・デバイ スには、 PGNDとGNDが一緒に接続されたピン3があります。 GND(ピン4/ピン3) :信号グランド。すべての低消費電力 内部回路は、このピンにリターンします。グランド電流に 起因する安定化誤差を抑えるために、GNDはLTC1430A の近くでPGNDに接続してください。8ピン・デバイスで は、PGNDとGNDが内部でピン3に連結されています。 SENSE−、 FB、 SENSE+ (ピン5、 6、 7/ピン4) :これら3本のピン は、 内部抵抗分割器および内部帰還ノードに接続されていま す。内部分割器を使用して出力電圧を3.3Vに設定するには、 SENSE+を出力コンデンサの+端子に、 SENSE−をGNDに接続 します。FBは内部分割器を使用するアプリケーションでは、 フロートさせておかなければなりません。 外部抵抗分割器を 使用して出力電圧を設定するには、SENSE+とSENSE−をフ ロートさせて、 外部抵抗分割器をFBに接続してください。 SHDN (ピン8/ピン5) :シャットダウン。SHDNに50µs以上 TTLコンパチブルの“L”レベルを加えると、LTC1430Aは シャットダウン・モードに入ります。シャットダウン時に は、G1とG2が“L”になり、すべての内部回路がディスエー ブルされ、静止電流は10µA (最大)に減少します。SHDNを TTL “H” レベルにすると通常動作が可能です。 SS (ピン9/なし) :ソフト・スタート。 SSピンにより、コンデ ンサを外付けしてソフトスタート機能を実現できます。 SSからグランドに外付けしたコンデンサが起動時間の制 御と電流制限ループの補償を行って、LTC1430Aは電流制 限モードを正確に起動、停止することができます。詳細に ついてはアプリケーション情報を参照してください。 COMP (ピン10/ピン6) :外部補償。COMPピンは誤差アン プの出力とPWMの入力に直接接続されています。この ノードでは、帰還ループを補償して最適な過渡応答を提供 するためにRCネットワークを使用します。補償の詳細に ついては、アプリケーション情報を参照してください。 FREQSET (ピン11/なし) :周波数設定。 このピンは、 内部発振 器の自走周波数を設定するのに使用します。ピンがフロー トしているとき、 発振器は約200kHzで動作します。 FREQSET からグランドに抵抗を接続すると発振器の周波数が上が り、VCCに抵抗を接続すると下がります。抵抗選択の詳細に ついては、 アプリケーション情報を参照してください。 IMAX(ピン12/なし):電流制限設定。IMAXは内部電流制 限コンパレータのスレッショルドを設定します。G1が オンのときにIFBがIMAX以下に低下すると、LTC1430Aは 電流制限動作に入ります。IMAXはGNDへの12µAプルダ ウンを備えています。これはPVCCへの外部抵抗または 外部電圧源で調整できます。 IFB (ピン13/なし):電流制限センス。1kΩの抵抗を通し てQ1のソースとQ2のドレインのスイッチ・ノードに接 続します。この1kΩの抵抗は、過渡電圧によってIFBが 損傷を受けないようにするために必要です。このピンは 損傷せずにGNDより18V高くすることができます。 VCC(ピン14/ピン7):電源。このピンから低消費電力内 部回路すべてに電力が供給されます。Q1のドレインの メインPVCC電源とは別のクリーンな電源に接続してく ださい。このピンには4.7µF以上のバイパス・コンデン サ が 必 要 で す 。 8ピ ン の デ バ イ ス は 、 ピ ン 7で VCCと PVCC2が一緒に接続されており、GND間に10µF以上のバ イパス・コンデンサが必要です。 PVCC2(ピン15/ピン7):ドライバ2用の電源VCC。これは G2の電源入力です。G2はGNDからPVCC2まで振幅しま す。PVCC2は通常、メインの高電力電源に接続されま す。8ピンのデバイスは、ピン7でVCCとPVCC2が一緒に 接続されており、GND間に10µF以上のバイパス・コン デンサが必要です。 G2( ピン16/ピン8):ドライバ2出力。このピンは下側N チャネルMOSFET、Q2のゲートに接続します。この出 力はPVCC2からPGNDまで振幅します。G1が“H”のとき には、常に“L”です。 4-331 4 LTC1430A ブロック図 DELAY SHDN INTERNAL SHUTDOWN 50µs FREQSET PVCC1 G1 PWM COMP PVCC2 G2 VCC PGND 12µA SS ILIM – FB + + MIN MAX – IMAX IFB 12µA FB + 40mV 20k 40mV SENSE + 12.4k SENSE – + + 1430 BD 1.265V テスト回路 PVCC1 = 12V + 1µF PVCC2 = 5V + + 1µF 100Ω PVCC2 + 4.7µF PVCC1 0.1µF SS 0.01µF NC SHUTDOWN C1 220pF RC 7.5k CC 4700pF LTC1430A IFB G2 SHDN PGND COMP GND Q2 SENSE+ 3.3V COUT 330µF ×6 SENSE – NC 1.61k FB 1k NC SENSE+ SENSE – FB NC Q1A, Q1B, Q2: MOTOROLA MTD20N03HL CIN: AVX-TPSE227M010R0100 COUT: AVX-TPSE337M006R0100 図1 4-332 + VOUT LTC1430A 2.7µH/15A IMAX FREQSET FB MEASUREMENT Q1A, Q1B 2 IN PARALLEL G1 VCC CIN 220µF ×4 1430 F01 LTC1430A テスト回路 5V PVCC VSHDN VCC + 10µF SHDN VCC PVCC2 PVCC1 NC IMAX G1 NC FREQSET NC COMP NC SS LTC1430A VCOMP NC G2 NC FB NC COMP G1 G1 RISE/FALL 10,000pF LTC1430A VFB PGND SENSE – SENSE+ GND 0.1µF VCC PVCC1 PVCC2 IFB FB GND G2 PGND G2 RISE/FALL 10,000pF 1430 F02 1430 F03 図3 図2 4 VCC VIN = 5V + 1µF 100Ω PVCC2 + 4.7µF PVCC1 0.1µF SS 0.01µF NC SHUTDOWN IMAX CC 4700pF 0.1µF 1k G2 SHDN CIN 220µF ×4 Q1A, Q1B 2 IN PARALLEL 0.1µF 2.7µH/15A LTC1430A IFB FREQSET Q2 + PGND COMP RC 7.5k 16k G1 VCC C1 220pF + 1N4148 3.3V COUT 330µF ×6 GND SENSE+ SENSE – FB 1430 F04 NC Q1A, Q1B, Q2: MOTOROLA MTD20N03HL CIN: AVX-TPSE227M010R0100 COUT: AVX-TPSE337M006R0100 図4 4-333 LTC1430A アプリケーション情報 概要 LTC1430Aは、高電力、低電圧降圧(バック)コンバータ 用に設計された電圧帰還PWMスイッチング・レギュ レータ・コントローラです(ブロック図参照)。PWM発 生器、±0.5%に調整された高精度リファレンス、2つの 高電力MOSFETゲート・ドライバ、および完全なスイッ チング・レギュレータ回路を形成するために必要なすべ ての帰還および制御回路を内蔵しています。このPWM ループは通常200kHzで動作します。 LTC1430Aの16ピン・バージョンは、外付けの上側パ ワーMOSFETを電流センス素子として使用する電流制限 センス回路を内蔵しているため、外部センス抵抗が不要 です。 また、16ピン・バージョンには外付けコンデンサ1個だ けで動作する内部ソフトスタート機能も含まれていま す。さらに、16ピン・バージョンには50kHzから500kHz を超える周波数で動作可能な可変発振器も備えており、 外付け部品を幅広く選択できます。8ピン・バージョン は、電流制限、内部ソフトスタート、または周波数調整 機能を持っていません。 動作原理 主帰還ループ LTC1430Aは 、 回 路 の 出 力 電 圧 を 出 力 コ ン デ ン サ で SENSE+とSENSE−ピンによってセンスし、その電圧を内 部相互コンダクタンス・アンプFBにフィードバックしま す。FBは抵抗分割された出力電圧と内部1.265Vリファレ ンスを比較し、PWMコンパレータに誤差信号を出力しま す。次に、この信号は内部発振器で作られた固定周波数 のノコギリ波と比較され、パルス幅変調信号が生成され ます。このPWM信号は、G1とG2を通して外部MOSFET にフィードバックされ、閉ループが構成されます。ルー プ補償は、FB相互コンダクタンス・アンプの出力ノード であるCOMPの外部補償回路網で行われます。 MIN、MAX帰還ループ FBアンプが十分に速く応答できない状況では、帰還 ループにある2つの追加コンパレータが高速フォールト 補正を提供します。MINは、帰還信号を内部リファレン スより40mV(3%)低い電圧と比較します。この点で、 4-334 MINコンパレータはFBアンプをオーバライドし、ルー プを内部発振器によって約93.5%に設定されたフル・ デューティ・サイクルに強制します。同様に、MAXコ ンパレータは内部リファレンスより3%高い電圧で出力 電圧をモニタし、トリップ時は出力をデューティ・サイ クル・ゼロ%に強制します。これら2つのコンパレータ は、高速出力過渡状態での極端な出力の変動を防止し、 メイン帰還ループが安定動作するように最適補償されま す。 電流制限ループ 16ピンのLTC1430Aには、電流制限回路の動作を制御す るための別の帰還ループも内蔵されています。8ピン・ デバイスでは電流制限ループはディスエーブルされてい ます。ILIMアンプは、G1が“H”のサイクル中、IFBピンに よって外部MOSFET Q1の電圧降下をモニタします。こ の電圧をIMAXピンの電圧と比較します。ピーク電流が増 加すると、RDS(ON)によるQ1の電圧降下が大きくなりま す。IFBがIMAX以下に低下し、Q1のドレイン電流が最大 レベルを超えたことを示すと、外付けのソフトスター ト ・ コ ン デ ン サ か ら ILIMに 電 流 が 流 れ 始 め 、 デ ュ ー ティ・サイクルを短縮して出力電流レベルを制御しま す。同時に、ILIMコンパレータはMINコンパレータを ディスエーブルする信号を生成し、電流制限回路と競合 するのを防止します。内部帰還ノードが約0.8V以下に低 下し、出力過負荷が重いことを示すと、電流制限回路は 内部発振器を強制的に最大1/100スローダウンさせま す。必要であれば、電流制限ループのターンオン時間 は、ソフトスタート・コンデンサの容量を調整して制御 できるため、LTC1430Aは電流制限を行わなくても短時 間の過電流に耐えることができます。 Q1のRDS(ON)を使用して出力電流を測定することによ り、この電流制限回路は、Q1のRDS(ON)を使用しない場 合に必要なセンス抵抗を不要にし、外部の高電流経路に 必要な部品数を削減することができます。パワー MOSFETのRDS(ON)は厳密に管理されておらず、かつ温度 によって変動するため、LTC1430Aの電流制限は正確で はありません。すなわち、電流制限回路はフォールト状 態において電源回路の損傷を防止するためのものです。 電流制限回路が機能し始める実際の電流レベルは、使用 するパワーMOSFETによって、ユニットごとに異なる可 能性があります。電流制限動作の詳細については、「ソ フトスタートと電流制限」を参照してください。 LTC1430A アプリケーション情報 VIN MOSFETゲート・ドライブ トップNチャネルMOSFET Q1のゲート・ドライブはPVCC1 から供給されます。 この電源は効率的な動作を実行するに は、 少くとも1個のパワーMOSFET VGS(ON)の電圧降下分だ けPVCC (メイン電源入力)よりも高くなければなりませ ん。内部レベル・シフタにより、PVCC1はVCCおよびPVCCよ り高い電圧(最大13V)で動作できます。この高い電圧は独 立 した 電 源で 供給 す るか 、ある いは 図 5に 示 す 単 純 な チャージポンプを使用して発生させることができます。 独 立したPVCC1電源を使用するときには、パワーアップ時に PVCC1が存在する場合に、大きな突入電流が生じる可能性 があります。93.5%の最大デューティ・サイクルによって、 チャージポンプがQ1に常に十分なゲート・ドライブを供 給することが保証されます。 ボトムMOSFET Q2のゲート・ ドライブは、16ピン・デバイスではPVCC2、8ピン・デバイス ではVCC/PVCC2を通して供給されます。 PVCC2はチャージポ ンプで電力を供給したり、 必要に応じて別の電源に接続で きますが、16ピン・デバイスでは通常PVCCから直接ドライ ブできます。3.3V入力のアプリケーションでは、PVCCで 3.3V、VCCとPVCC1で5Vを使用します。詳細は3.3V入力電源 の動作を参照してください。 8ピンのデバイスには、 適正な 動作を保証するためPVCCとVCC間にRCフィルタが必要で す。 「入力電源の検討」 を参照してください。 PVCC OPTIONAL USE FOR PVCC ≥ 7V DZ 12V 1N5242 MBR0530T1 PVCC2 PVCC1 G1 0.1µF Q1 L1 VOUT G2 + Q2 LTC1430A COUT 1430 F05 図5. 倍電圧チャージ・ポンプ 同期動作 LTC1430Aは、従来方式の降圧回路のダイオードに代 わってMOSFET Q2による同期スイッチング・アーキテ クチャを使用しています(図6)。これは通常、従来のダ イ オ ー ド の VFよ り 大 幅 に 低 い Q2の 電 圧 降 下 VON= (I)(RDSON(Q2))、またこれによって生じる電力消費を低減 CONTROLLER Q1 VOUT D1 1430 F06a 図6a. 従来方式のバック・アーキテクチャ VIN Q1 CONTROLLER VOUT Q2 1430 F06b 図6b. 同期式降圧アーキテクチャ することにより効率を改善します。LTC1430Aは、第2 のMOSFETに必要な追加ゲート・ドライブのオフセット を増やすことで広範囲の負荷電流に対して90%台半ばの 効率を達成することができます。 同期式のアーキテクチャのもう1つの特徴は、ダイオー ドとは異なりQ2は両方向に電流を流せることです。こ れにより標準的なLTC1430A回路の出力は、安定化動作 中に電流のシンクおよびソースが可能です。LTC1430A は出力で電流のシンクが可能なため、レギュレータから 負荷に電流供給するだけでなく、レギュレータに電流を 供給する可能性のある誘導性負荷や他の一般的ではない 負荷にも使用できます。一例として、標準的応用例に記 載されているGTLターミネータなどの大電流ロジック終 端電源があります。 外付け部品の選択 パワーMOSFET ほとんどのLTC1430Aを使用した回路には、Nチャネ ル・パワーMOSFETが2個必要です。これらは基本的 に、スレッショルドとオン抵抗を検討して選択しなけれ ばなりません。また高効率設計では、熱の放散もしばし ば問題になります。必要なMOSFETスレッショルドは、 利用可能な電源電圧やゲート・ドライブのチャージポン プ方式の複雑さを考慮して決定しなければなりません。 4-335 4 LTC1430A アプリケーション情報 PVCC1およびPVCC2に電源を供給するのに補助12V電源が 利用できる5V入力設計では、RDS(ON)がVGS=5Vまたは 6Vで規定される標準MOSFETを使用すればよい結果が 得られます。この電源から引き出される電流は、使用す るMOSFETとLTC1430Aの動作周波数によって異なりま すが、一般的には50mA未満です。 倍電圧チャージポンプを使用してQ1のゲート・ドライブ を生成し、 7V以下のPVCC電圧で動作するLTC1430Aの回路 は、標準パワーMOSFETを完全に導通させるだけのゲー ト・ドライブ電圧を供給できません。 5Vで動作させるとき には倍電圧回路は標準MOSFETでも動作できますが、 MOSFET RONが非常に高いため、 FETの消費電力が増大し、 効率が低下する可能性があります。5VのPVCCシステムに はロジック・レベルFETが適しています。これらは倍電圧 チャージポンプで完全に導通させることができ、 最大効率 で動作します。4V付近のPVCC電圧で動作する倍電圧回路 は、ロジック・レベルFETでも効率の問題に直面するよう になります。このような設計は、3倍電圧チャージポンプ (図 7参照)で構 成するか 、新し い超低ス レッショ ルド MOSFETで構成しなければなりません。7V以上の電圧で 動作する倍電圧チャージポンプ設計とすべての3倍電圧 チャージポンプ設計では、 過渡電圧がピンの絶対最大定格 を超えるのを防止するために、PVCC1にツェナー・クラン プ・ダイオードDZを含んでいなければなりません。 スレッショルド電圧を選択したら、入力および出力電 圧、許容消費電力、および最大所要出力電流に基づいて RONを選択しなければなりません。連続モードで動作す る標準的なLTC1430Aの降圧コンバータ回路では、平均 DZ 12V 1N5242 10µF 1N5817 PVCC2 PVCC1 G1 1N5817 0.1µF V DC (Q2) = 1 – OUT VIN (VIN – VOUT) = VIN 一定の導通損失に対して必要なRONは、関係式P=I2Rを 整理して、次のとおり計算することができます: RON (Q1) = PMAX(Q1) DC(Q1)(IMAX2) V (P )(Q1) = IN MAX 2 VOUT(IMAX ) RON (Q2) = = PMAX(Q2) DC(Q2)(IMAX2) VIN(PMAX)(Q2) (VIN – VOUT)(IMAX2) PMAXは基本的に必要な効率に基づいて計算します。5V 入力、3.3V/10A出力として設計された標準的な高効率回 路は、各MOSFETの最大負荷時の効率損失は3%以下で す。この電流レベルで約90%の効率を仮定すると、FET 1個あたり(3.3V) (10A/0.9) (0.03)=1.1WのPMAX値が得ら れ、所要RONは次のようになります: 0.1µF Q1 VOUT + Q2 LTC1430A COUT 1430 • F07 図7. 3倍圧チャージポンプ 4-336 VOUT VIN (5V)(1.1W) = 0.017Ω (3.3V)(10A2) (5V)(1.1W) RON (Q2) = = 0.032Ω (5V – 3.3V)(10A2) L1 G2 DC (Q1) = RON (Q1) = PVCC 1N5817 インダクタ電流は出力負荷電流と同じに値になります。 この電流は常にQ1またはQ2を流れ、消費電力は次のよ うにデューティ・サイクルに応じて分割されます。 Q2に要求されるRONは、この例ではQ1のほぼ2倍です。 このアプリケーションでは、Q2用に0.03Ωのデバイス1 個、およびQ1を形成するのに同じデバイスを2個以上の 並列で指定している場合があります。また、所要RON値 では大型MOSFETを示唆していますが、消費電力値は1 デバイスあたり1.1W以下であるため、高効率アプリ ケーションでは、大型TO-220パッケージやヒートシン クは必ずしも必要ありません。Siliconix Si4410DY(SO- LTC1430A アプリケーション情報 8)やモトローラMTD20N03HL(DPAK)などが、ゲート・ ドライブが5VのときにRON値が0.03Ω以下の小型表面実 装 デ バ イ ス で す 。 ど ち ら も 出 力 電 流 が 10Aま で の LTC1430A回路で十分に機能します。PMAX値が高いと、 一般にMOSFETコストと回路効率は下がり、MOSFETの ヒートシンク要求条件が高くなります。 インダクタ インダクタは、LTC1430Aの設計で最も大きな部品であ る場合が多いので、注意して選択することが必要です。 インダクタの値とタイプは、出力スルーレート要求条件 と予測されるピーク電流に基づいて選択しなければなり ません。インダクタ値は基本的に必要な電流スルーレー トによって制御されます。インダクタ電流の最大上昇率 は、インダクタ値、入出力電圧差、およびLTC1430Aの 最大デューティ・サイクルによって設定されます。標準 的な5Vから3.3Vのアプリケーションでは、最大立上り 時間は次のようになります。 90% (VIN – VOUT) AMPS 1.53A I = µs L L SECOND ただし、Lはインダクタ値(µH)です。このアプリケー ションの2µHのインダクタでは、立上り時間が0.76A/µs であり、5Aの負荷電流ステップへの応答時には6.5µsの 遅延が生じます。この6.5µsの間、インダクタ電流と出 力電流の差は、出力コンデンサで補充しなければなら ず、一時的に出力に垂下が生じます。この影響を最小限 に抑えるため、5Vを2.xVから3.xVに変換する大部分の LTC1430Aの回路では、インダクタ値は通常、1µH∼ 5µHの範囲でなければなりません。入力電圧と出力電圧 の異なる組合せおよび予想される負荷によっては、別の 値が必要になる場合もあります。 必要な値が分かったら、ピーク電流と効率条件に基づい てインダクタ・コア・タイプを選択することができま す。インダクタのピーク電流は、ピーク・ツー・ピー ク・インダクタ・リップル電流の半分に最大出力負荷電 流を加えた値と等しくなります。リップル電流は、イン ダクタ値、入力および出力電圧、そして動作周波数に よって設定されます。効率が高くほぼ1になる場合、 リップル電流の概算値は次のとおりです。 (VIN – VOUT) DC (fOSC)(L) V DC = OUT VIN ∆I = fOSC=LTC1430Aの発振器周波数 L=インダクタ値 本データシートで取り上げた標準的な5Vから3.3Vのアプリ ケーションについてこの式を解くと、 次の値が得られます。 (1.7)(0.66) = 2.8AP–P (200kHz)(2µH) 10A負荷でのピーク・インダクタ電流 10A + 2.8A = 11.4A 2 インダクタ・コアは、飽和せずに十分にこのピーク電流 に耐え、また巻線の銅抵抗は抵抗性電力損失を最小限に 抑えるために、できるだけ低くなければなりません。電 流無制限回路での電流制限状態またはフォールト状態で は、電流が回路の最大レベルを超える可能性があること に注意してください。インダクタには、この追加電流に 耐えるだけのサイズが必要です。 入力および出力コンデンサ 標準的なLTC1430Aの設計では、入力コンデンサと出力コ ンデンサの両方に厳しい条件が課されます。通常の定常負 荷動作では、LTC1430Aのような降圧コンバータが、ス イッチング周期において入力電源から方形波の電流を引き 出し、そのピーク値は出力電流と等しく、最小値はほぼゼ ロ付近になります。このような負荷を直接まかなえるだけ の電流スルーレートを供給できる元電源はほとんどないた め、この電流の大部分は入力バイパス・コンデンサから供 給しなければなりません。その結果、入力コンデンサの RMS電流によりコンデンサが加熱し、極端な場合は早期コ ンデンサ故障を引き起こすおそれがあります。RMS電流は PWMデューティ・サイクルが50%のときに最大になりIOUT/2 に等しくなります。十分なリップル電流定格をもつ低ESR の入力コンデンサを使用して、高信頼動作を実現しなけれ ばなりません。コンデンサ製造業者のリップル電流定格 は、多くの場合、わずか2000時間(3ヶ月)の動作時間に よって規定されています。回路の有効寿命を延長するため に、入力コンデンサのリップル電流を製造業者の仕様に対 してディレーティングすることが必要です。 4-337 4 LTC1430A アプリケーション情報 降圧コンバータの出力コンデンサは、定常状態では入力 コンデンサよりもはるかにリップル電流が少なくなりま す。ピーク・ツー・ピーク電流は、インダクタのピー ク・ツー・ピーク電流と等しく、通常は全負荷電流の数 分の1です。出力コンデンサの役割は、電力消費ではな く低ESRに重点が置かれています。出力負荷過渡状態の 間、出力コンデンサは、LTC1430Aがインダクタ電流を 新しい値に合わせて調整できるようになるまで、負荷が 要求する追加の負荷電流をすべて供給しなければなりま せん。出力コンデンサのESRによって、出力電圧にESR 値×負荷電流変動に等しいステップが発生します。ESR が0.05Ωの出力コンデンサでの5Aの負荷ステップは、 250mVの出力電圧変動を生じます。これは3.3V電源では 7.6%の出力電圧変動に相当します。出力コンデンサの ESRと出力負荷過渡応答には密接な関係があるため、通 常、出力コンデンサは、容量値ではなくESRを重視して 選択されます。ESRが適切なコンデンサは、通常、定常 状態の出力リップルを制御するのに必要な値以上の容量 値をもっています。 LTC1430Aアプリケーションでは、規定リップル電流定 格とESRをもつスイッチング電源用の電解コンデンサを 効果的に使用することができます。三洋電機のOS-CON 電解コンデンサは優れた性能を発揮し、電解コンデンサ として非常に高い性能/サイズ比を誇ります。表面実装 アプリケーションでは、電解コンデンサまたは乾式タン タル・コンデンサを使用できます。タンタル・コンデン サは、スイッチング電源用のサージ試験が実施されてい なければなりません。低コストの汎用タンタルは非常に 寿命が短く、スイッチング電源アプリケーションでは突 然故障してしまうことが知られています。AVX TPSシ リーズの表面実装部品はポピュラーなタンタル・コンデ ンサで、LTC1430Aアプリケーションで良好に動作しま す。ESRを低減し、リップル電流能力を向上させる一般 的な方法は、複数のコンデンサを並列に接続することで す。標準的なLTC1430Aのアプリケーションでは、10A の出力負荷ステップで5Aのリップル電流容量の入力コ ンデンサと2%の出力シフトが要求される場合があり、 これには0.007Ωの出力コンデンサESRが必要です。三 洋電機のOS-CON、製品番号10SA220M(220µF/10V)コン デンサは、85℃での許容リップル電流が2.3Aで、ESRが 0.035Ωです。入力で3個を並列に接続し、出力で6個を 並列接続すれば上記の要求条件を満足します。 入力電源の検討/チャージポンプ 16ピンのLTC1430Aは、 メイン・パワー入力用PVCC、 MOSFET ゲート・ドライブ用PVCC1およびPVCC2、 そしてLTC1430の内 部回路用にクリーンで低リップルのVCCの4つの電源電圧を 必要とします (図8) 。 多くのアプリケーションでは、 電源電 圧が外部MOSFET Q2のゲートを完全に導通させるだけ高け れば、 PVCCとPVCC2を連結して、 共通の高電力電源から電力 を供給することができます。 Q2にロジック・レベルMOSFET を使用する場合は、 これは5Vシステム電源でもかまいませ ん。 VCCは通常、 この同じ高電力電源からRCでフィルタして 取ることができます。 低消費電流 (標準350µA) により、 比較 的大きなフィルタ抵抗とそれに相応して小さなフィルタ・ コンデンサを使用できます。通常、 100Ωと4.7µFでVCCに十 分なフィルタリングを提供します。 LTC1430Aの8ピン・バージョンでは、パッケージ内部で PVCC2ピンとVCCピンが連結されています (図9) 。このピン は、VCC/PVCC2として引き出されており、16ピン・デバイ スと同じ低リップル要求をもっていますが、Q2にもゲー ト・ドライブ電流を供給できなければなりません。これ は、PVCCピンにさらに大きなRCフィルタを使用すれば得 VCC PVCC2 PVCC1 PVCC G1 Q1 L1 INTERNAL CIRCUITRY VOUT + G2 Q2 LTC1430A (16-LEAD) 1430 F08 図8. 16ピンの電源 VCC /PVCC2 PVCC1 PVCC G1 Q1 L1 INTERNAL CIRCUITRY VOUT G2 + Q2 COUT LTC1430A (8-LEAD) 1430 F09 図9. 8ピンの電源 4-338 COUT LTC1430A アプリケーション情報 ることができます。この場合、22Ωと10µFで十分です。 10µFのコンデンサを部品の間近 (できればユニットの真下) に配置しないと、出力レギュレーションに影響がでます。 LTC1430Aの両バージョンに対して、Q1のゲートを完全に 導通させるには、PVCC1がPVCCより少なくとも1個の外部 MOSFET VGS(ON)分、高くなければなりません。この高い電 圧はPVCCの後に立ち上がる別電源 (標準12V) 、あるいは単 純なチャージポンプ (図5) で発生させることができます。 このチャージポンプは、PVCCからPVCC1に接続された ショットキ・ダイオードと、PVCC1からQ2のドレインのス イッチング・ノードに接続された0.1µFコンデンサで構成 されています。この回路はQ1がオンのときにPVCC1に 2PVCC−VFを供給し、Q1がオフのときにPVCC−VFを供給し ます。VFはショットキ・ダイオードのオン電圧です。Q2 のドレインにリンギングがあると、PVCC1で2PVCC以上の過 渡電圧が生じる可能性があります。PVCCが7V以上の場合 は、PVCC1からPGNDに12Vのツェナー・ダイオードを挿入 して、過渡電圧によってPVCC2の回路やQ1のゲートが損傷 を受けるのを防止しなければなりません。 ショルドMOSFETをPVCCに3.3Vを印加して使用することが できます。 VCCはPVCC2と同じ電位からドライブでき、 システ ム全体が単一3.3V電源で動作可能です。 3倍電圧チャージポ ンプには、 起動時にダイオードでの順方向電圧降下を抑え るために、 ショットキ・ダイオードを使用する必要がありま す。 3倍電圧チャージポンプ回路は、 Q2のドレインでのリン ギングを整流する傾向があり、 PVCC1で十分に3PVCC以上を 供給できます。 すべての3倍電圧 (または、 より高電圧) 回路 12Vのツェナー・ には、 PVCC1での過電圧を防止するために、 クランプ・ダイオードDZを挿入しなければなりません。 3.3Vの入力電源動作 LTC1430Aは自身に電源を供給する低電力の5V電源が利 用でき、外部MOSFETにゲート・ドライブを供給できれ ば、5V以下の入力電源電圧で使用できます。図10に標 準的な3.3Vを2.5Vに変換する応用回路を示します。この 回路は2.5V出力で最大10Aを供給可能で、この電力を 3.3Vの電源から取り出します。この5V電源は、外部 MOSFETのゲートをドライブし、LTC1430Aの制御回路 に電力を供給し続けるのに標準約20mAが必要です。5V 電源がないアプリケーションについては、LTC1649の データシートを参照してください。 LTC1430Aの16ピン・バージョンでは、 標準スレッショルド のMOSFETや非常に低いPVCC電圧で使用する他の電圧を供 給するために、 より複雑なチャージポンプを構築すること ができます。 3倍電圧のチャージポンプ (図7) は、 2PVCCおよ び3PVCC電圧を供給可能です。これらの電圧は、それぞれ PVCC2とPVCC1に接続でき、 標準スレッショルドMOSFETを あるいは5Vロジック・レベル・スレッ PVCCに5Vを印加して、 補償と過渡応答 LTC1430Aの電圧帰還ループはCOMPピンで補償されま す。これは内部 gm誤差アンプの出力ノードです。ルー プ は 一 般 に 、COMPか らGNDへ のRCネ ッ ト ワ ー ク と 3.3V 5V + 1µF 100Ω PVCC1 PVCC2 + 4.7µF 0.1µF SS 0.01µF NC Q1A, Q1B 図8. 16ピンの電源 1k 1µF 2.7µH/15A LTC1430A IFB G2 SHDN Q2 + PGND COMP COUT 330µF ×6 2.5V 10A GND SENSE+ RC 7.5k 0.1µF CIN 220µF ×4 2 IN PARALLEL IMAX FREQSET SHUTDOWN 16k G1 VCC C1 220pF + MBR0530T1 SENSE – CC 4700pF NC NC 976Ω 1% FB Q1A, Q1B, Q2: INTERNATIONAL RECTIFIER IRF7801 CIN: AVX-TPSE227M010R0100 COUT: AVX-TPSE337M006R0100 1k 1% 1430 F10 図10. 3.3Vから2.5V/10Aのアプリケーション 4-339 4 LTC1430A アプリケーション情報 COMPからGNDへの別の小容量のCによって補償できま す(図11)。ループの安定度は、インダクタおよび出力コ ンデンサの値、またその他の要因によって影響を受けま す。最適なループ応答は、ネットワーク・アナライザを 使ってループのポールとゼロを見つければ得られます。 出力負荷ステップ状態で過渡回復が適切になるまで、実 験によりRC値を変えてみるほうが有効ではるかに簡単 です。表1にインダクタ値と出力コンデンサ値に基づ く、5Vから3.3Vのアプリケーション用の推奨補償部品 を示します。これらの値は、並列に接続した複数の 330µF AVX TPSシリーズの表面実装タンタル・コンデン サを出力コンデンサとして使用して計算したものです。 図11. 補償ピンの接続 表1. 複数の330µF AVX出力コンデンサを使用した5Vから3.3V のアプリケーション用推奨補償ネットワーク 応答の最適化に役立ちます。詳細については 「入力コンデ ンサと出力コンデンサ」 を参照してください。 L1 (µH) COUT (µF) RC (kΩ) CC (µF) C1 (pF) 1 990 1.8 0.022 820 1 1980 3.6 0.01 470 1 4950 9.1 0.0047 150 1 9900 18 0.0022 82 2.7 990 3.6 0.01 470 2.7 1980 7.5 0.0047 220 2.7 4950 18 0.0022 82 2.7 9900 39 0.001 39 5.6 990 9.1 0.0047 150 5.6 1980 18 0.0022 82 5.6 4950 47 820pF 33 5.6 9900 91 470pF 15 10 990 18 0.0022 82 10 1980 39 0.001 39 10 4950 91 470pF 15 10 9900 180 220pF 10 出力過渡応答は、インダクタと出力コンデンサの時定 数、出力コンデンサのESR、およびループ補償部品の3つ の主な要因によって設定されます。最初の2つ要因は通 常、3番目のものより全体の過渡回復時間により大きな影 響を与えます。ループ補償が効果的でなければ、ループ 補償部品をいじるよりも、インダクタと出力コンデンサ を最適化するほうが改善につながります。一般に、小さ い値のインダクタでも過渡応答が改善されますが、リッ プルとインダクタ・コアの飽和定格が犠牲になります。 また、出力コンデンサのESRを小さくしても、出力過渡 4-340 LTC1430A COMP RC CC GND C1 SGND 1430 F11 ソフトスタートと電流制限 LTC1430Aの16ピン・バージョンは、SSピンにソフトス タート回路を内蔵しています。この回路は初期起動と電 流制限動作時に使用されます。ソフト・スタートおよび 電流制限回路は、8ピン・バージョンにはありません。 SSピンには、GNDとの間に所要ソフトスタート時間に 相当する容量の外付けコンデンサが必要です。外付けコ ンデンサを充電するための内部12µA電流源が内蔵され ています。ソフト・スタートは、COMPピンが振幅可能 な最大電圧をクランプすることで機能し、それによって デューティ・サイクルを制御します(図12)。LTC1430A は、SSピンがVCCより約2V低い電圧まで上昇すると、低 いデューティ・サイクルで動作し始めます。SSが上昇 し続けると、デューティ・サイクルも誤差アンプが作動 して出力を安定化し始めるまで増加します。SSがVCCよ り1V低い電圧に達すると、LTC1430Aは完全な動作状態 になります。内部スイッチはシャットダウン中、SSピ LTC1430A COMP FB VCC 12µA SS CSS 1430 F12 図12. ソフト・スタートによるCOMPピンのクランプ LTC1430A アプリケーション情報 ンをGNDに短絡します。 LTC1430AはQ1がオンの間IFBの電圧を監視して出力電流 を検出します。ILIMアンプは、この電圧をIMAXの電圧と 比較します(図13)。Q1はオン状態で既知の抵抗値を もっています。逆に計算することで、Q1の最大出力電 流によって IFBに発生する電圧を求めることができま す。IFBがIMAX以下に低下すると、ILIMはソフトスター ト・ピンから電流をシンクし始めるため、SSの電圧が 低下します。 SSの電圧が低下すると、出力のデュー ティ・サイクルが制限され、出力電流が制限されます。 最終的にシステムが平衡し、SSピンのプルアップ電流 が ILIMア ン プ の プ ル ダ ウ ン 電 流 と 等 し く な り ま す 。 LTC1430Aは過電流状態がなくなるまでこの状態になっ たままです。このときにIFBが上昇し、ILIMは電流のシン クを停止し、内部プルアップがソフトスタート・コンデ ンサを再充電して、通常動作に復帰します。IFBピンに は、Q2のドレインの過渡電圧が内部構造に損傷を与え るのを防止するために、1kの直列外付け抵抗が必要で す。 0.1µF PVCC RIMAX Q1 IMAX IFB + 10µA – 1k Q2 ILIM VCC 12µA SS CSS LTC1430A でき、過負荷が取り除かれるまで、出力は低い電圧に なったままです。重い過負荷では、ILIMでより大きな オーバードライブを生成するため、より速くSSをプル ダウンし出力部品の損傷を防止します。 Q1がオフのときには、この状態で低いIFB電圧によって 電流制限が起動するのを防止するためILIMアンプ出力は ディスエーブルされます。ILIMアンプ出力は、Q1がター ンオンした170ns(固定)後に再イネーブルされます。こ れによって、IFBノードは“H”にスルーバックしILIMアン プが正しい値にセトリングします。LTC1430Aが深い電 流制限に入ると、出力電流を制御するために、Q1のオ ン時間を170ns以下にカットする必要のあるポイントに 達します。これはILIMアンプを適切に動作させるのに必 要な最小セトリング時間と矛盾します。この時点で、2 次電流制限回路が内部発振器周波数を低下させ始め、 Q1のオフ時間を延長します。オン時間は170nsで一定の ままです。これによって、さらにデューティ・サイクル が低下し、LTC1430Aは出力電流に対する制御を維持す ることができます。 極端な出力過負荷または短絡状態で、ILIMアンプはSSピ ンを1スイッチング・サイクルで、VCCより2V低い電圧 に引き込み、デューティ・サイクルをゼロにします。こ の時点ですべてのスイッチングが停止し、Q2を流れる 出力電流が減衰し、LTC1430Aはソフトスタート・サイ クルを一部実行して再スタートします。短絡が継続する 場合は、このサイクルが繰り返されます。この状態では ピーク電流がかなり高くなる可能性がありますが、平均 電流が制御され、適切に設計された回路は、出力FETで 大きな熱上昇を招くことなく、無限に短絡に耐えること ができます。さらに、ソフトスタート・サイクル繰返し 周波数は低いkHzレンジにまで低下し、インダクタが振 動して、何か問題が起きたことを知らせる可聴警報を発 することがあります。 1430 F13 図13. 電流制限動作 ILIMアンプは、IFBとIMAXの差に比例する電流をSSから引 き込みます。穏やかな過負荷状態では、SSピンの電圧 が徐々に低下し、電流制限が起動するまでの遅延時間を 作ります。非常に短い穏やかな過負荷状態では、電流制 限回路がまったく作動しないことがあります。長い過負 荷状態によって、SSピンは安定レベルに達することが 発振器周波数 LTC1430Aは、標準自走周波数が200kHzの電流制御発振 器を内蔵しています。内部20µAの電流は、FREQSETピ ン(ピン11)に流入またはそれから流出する電流に加えら れ 、 発 振 器 周 波 数 を 約 10kHz/µAに 設 定 し ま す 。 FREQSETは 内 部 で LTC1430Aの リ フ ァ レ ン ス 電 圧 (1.265V)に追従します。FREQSETがフロートしている とき、発振器は内部20µAソースによってバイアスさ 4-341 4 LTC1430A アプリケーション情報 れ、200kHzで動作します。50kの抵抗をFREQSETからグ ランドに接続すると、FREQSETからさらに25µAを余分 にシンクするため、内部発振器は約450kHzで動作する ようになります。外部から10µAの電流をFREQSETに供 給すると、内部周波数が100kHzに下がります。内部ク ランプにより、発振器が約50kHz以下に下がらないよう にしています。FREQSETをVCCに接続すると、発振器は この最小周波数で動作します。 シャットダウン LTC1430AにはSHDNピンでのロジック・レベルによっ て制御される低消費電力シャットダウン・モードがあり ます。SHDNを“H”レベルにすると、デバイスは通常ど おり動作します。SHDNを“L”レベルにするとすべての 内部スイッチングが停止し、COMPとSSを内部でグラン ド電位にして、Q1とQ2をターンオフします。シャット ダウン時、LTC1430A自身の消費電流は標準1µA以下に 減少しますが、外部MOSFETのオフ状態リーク電流に よって、特に高温時にPVCCのトータル電流が多少高く なる可能性があります。SHDNが再び“H”になると、 LTC1430Aはソフトスタート・サイクルを再実行して、 通常動作を再開します。 PVCCのパワーアップ中に、 LTC1430Aをシャットダウン状態のまま保持すると、 PVCC1シーケンスの制約がなくなります。 外部クロック同期 LTC1430AのSHDNピンは、同期クロックまたはより高 速なスイッチング速度を必要とするアプリケーションの ために、外部クロック入力としても使用できます。 SHDNピンは“L”になるとすぐに内部のこぎり波を停止 し、発振器をリセットします。ただし、50µsだけ待って から残りの内部回路をシャットダウンします。クロック 信号をSHDNピンに直接加えると、外部クロックの周波 数が内部発振器の周波数より高ければ、LTC1430Aの内 部発振器は強制的にその周波数にロックされます。 LTC1430Aは、部品を追加しなくても250kHz∼350kHzの 周波数に同期させることができます。 LTC1430Aは200kHz∼500kHzの周波数に同期可能です。 300kHz以上の周波数では、立上り/立下り時間と伝播遅 延がスイッチ・サイクルの大きな部分を占めるため、得 られる最大デューティ・サイクルが低下することがあり ます。3.3Vを2.5Vに変換するコンバータのように損失の 4-342 少ない動作が重要なアプリケーションでは、これらの周 波数を使用している回路は慎重にチェックしなければな りません。500kHz以上の周波数では、電流制限動作が 不安定になる場合があり推奨できません。 レイアウトの検討事項 接地 規定される出力安定化を得るために、LTC1430Aには適 切な接地が重要です。バイパス・コンデンサとPVCC1、 PVCC2、およびPGNDピンの間に、きわめて高い(数アン ペアの)ピーク電流が流れる可能性があります。これら の電流によって、名目上両方とも「グランド」である2点 間に大きな電位差を生じる可能性があります。一般に、 GNDとPGNDはレイアウト上で完全に分離されていなけ ればならず、またLTC1430AのGNDピンとPGNDピンの 間近で一点接続しなければなりません。これにより、 PGNDと GNDを 同 じ 電 位 に 保 持 す る こ と に よ っ て 、 LTC1430Aでの内部グランド干渉を抑えると同時に、過 剰な電流によってGNDに接続されている回路の動作が 妨害されないようにします。PGNDノードは可能な限り コンパクトかつ低インピーダンスとし、入力コンデンサ と出力コンデンサの負端子、Q2のソース、LTC1430Aの PGNDノード、出力リターン、および入力電源のリター ンは、すべて一点接続しなければなりません。図14は変 更した回路図で、適切なレイアウトの共通接続を示しま す。10A以上の電流レベルでは、PCボード自体の電流密 度が問題になる可能性があります。高電流を流すトレー スは、できる限り幅を広くとってください。 出力電圧のセンシング LTC1430Aの16ピン・バージョンには、出力電圧のセン シング用にSENSE+ 、SENSE− 、FBの3本のピンがあり ます。SENSE+とSENSE−は、FBに接続された内部抵抗 分割器に接続されています。LTC1430の出力を3.3Vに設 定するには、SENSE+を実用上可能な限り負荷の近くで 出力に接続し、SENSE−をGND/PGNDの共通点に接続し ます。SENSE−は差動入力の真のセンス入力ではなく、 内部分割器のただのボトム・エンドであることに注意し てください。SENSE−を負荷の近くでグランドに接続し ても、ロード・レギュレーションは改善されません。他 の出力電圧の場合は、SENSE+とSENSE−ピンをフロー トさせ、外部抵抗ストリングをFBに接続してください LTC1430A アプリケーション情報 5V 100Ω 4.7µF 35V 1µF + 0.1µF VCC PVCC2 PVCC1 GND + MBR0530T1 PGND G1 NC IMAX NC FREQSET Q1B* Q1A* LTC1430A TOTAL 880µF (220µF 10V × 4) 0.1µF 2.7µH/15A IFB 3.3V SENSE+ C1 220pF CC 4700pF SHDN G2 COMP FB + SENSE – SS RC 7.5k Q2* NC GND PGND CSS 0.01µF TOTAL 1980µF (330µF 6.3V × 6) PGND * MOTOROLA MTD20N03HL GND 1430 F14 図14. レイアウトの検討事項を示す標準的な回路図 SENSE + NC LTC1430A 4 VOUT R1 FB プの場合は、リードの半田に加えて機械的な保持が必要 な場合があります。 R2 SENSE – NC 1430 F15 図15. 外部抵抗を使用した出力電圧の設定 (図15)。前に述べたとおり、上側の抵抗(R1)を実用上 可能な限り負荷に近づけて出力に接続し、下側の抵抗 (R2)をGND/PGNDの共通点に接続してください。いず れの場合も、抵抗分割器の上端(SENSE+またはR1)を負 荷の近くに接続すると、LTC1430Aと負荷の間のPCト レースまたは接続配線での電圧降下が補償され、ロー ド・レギュレーションを大幅に改善できます。 パワー部品の接続/放熱 電流レベルが1Aを大きく超える場合、LTC1430Aをサ ポートするパワー部品の形状が物理的に(少なくとも LTC1430Aを基準にして)大きくなり始め、実装時に特 別な注意が必要になります。入力コンデンサと出力コン デンサは、高いピーク電流を流す必要があり、またESR が低くなければなりません。そのため、可能な限りリー ドを短く、またPCトレースの幅を広く短くする必要が あります。一般に、単一部品としてはパワー・インダク タがボード上で最も大きな部品です。特に表面実装タイ 使用するパワーMOSFETには、適正な動作と信頼性を確 保するために配慮が必要です。電流レベルと要求される 効率に応じて、TO-220のような大型のものからSO-8の ような小型のものまで、さまざまなMOSFETを選択でき ます。高効率回路では、特にTO-220タイプのMOSFET の場合には、パワー・デバイスの放熱を行わなくても良 いよいことがあります。一例として、3.3V/10Aの定常出 力 で 動 作 し て い る 90%の 効 率 の コ ン バ ー タ は 、 ( 33W/90%)10%= 3.7Wし か 消 費 し ま せ ん 。 一 般 に パ ワーMOSFETがコンバータでの電力損失の大部分を占め ます。これらがコンバータで使用される電力の100%を 消費すると仮定しても、わずか3.7Wが2∼3個のデバイ スに分散されます。設計上90%の効率を提供するのに適 したRONをもつ標準的なSO-8 MOSFETを、PCボード上 で適切なサイズの銅トレースに半田付けすると、通常 2Wを消費できます。それよりわずかに効率が低いか、 より出力電流が高い設計の場合は、TO-220 MOSFETを 多少の空気対流があるエリアで直立させて使用すること がよくあります。このような構成では、ヒートシンクな しで最大3Wを消費できます。高い周囲温度で動作しな ければならない場合や定期的に過負荷状態になる設計で は、通常、ヒートシンクを取り付ければ最適な動作が得 られます。 4-343 LTC1430A アプリケーション情報 図17は、5Vまたはそれより低い入力電圧から低電圧で 非常に大きな出力電流を供給するように設計された同期 式 降 圧 レ ギ ュ レ ー タ で す 。 こ の 回 路 は 2個 の 8ピ ン LTC1430ACS8を互いに逆位相動作にして使用していま す。回路の各半分は15Aの出力電流に対して良好に動作 し、合計30Aを供給します。LT®1006アンプは、負荷電 流を2つの回路に等しく分担させます。この方式では、 必要なコンデンサおよびインダクタの体積を大幅に低減 (コストダウン)する代わりに、制御回路が多少複雑にな ります。この方式の利点は、入力および出力リップル電 圧が非常に低く、リップル周波数が高くまた過渡応答が きわめて高速であることです。 2つのレギュレータを互いに逆位相で動作させることに より、入力リップル電流と出力リップル電流の両方が キャンセルされる傾向があります。これにより、出力イ ンダクタにシングル・チャネルで許容される値よりもは るかに大きなリップル電流を流すことが可能です。2 フェーズ設計での全出力リップル電流は、シングル・ チャネルのリップル電流の約1/2であり、これにより各 チャネルのインダクタ値を、シングル・チャネルのシス テムで同等の出力リップルを得るために必要な値の1/2 にすることができます。インダクタに蓄えられるエネル ギーはインダクタ電流の2乗で変化し、かつインダクタ ンスに正比例するため、各インダクタが蓄えるエネル ギーは、シングル・インダクタ設計の1/8になります。 インダクタが2個あるので、蓄えられる全エネルギー、 すなわちインダクタの体積は、シングル・フェーズ・シ ステム設計の1/4です。 入力コンデンサの条件に対しても同様の解析を行うこと ができます。事実、2フェーズ・レギュレータは、負荷 電流が1/2のシングル・チャネル設計の場合より、実際 に必要な入力容量は少なくなります。図16にリップル電 流が互いにキャンセルする様子を示します。 2フェーズ・トポロジーの別の重要な利点は、過渡応答 が大幅に向上することです。負荷過渡時には、2つの各 チャネルは最大(または最小)デューティ・サイクルで動 作します。2つのリップル電流の項は、キャンセルされ るのではなく、互いに補強し合うことになります。この 結果di/dtが非常に高くなり、過渡回復は非常に高速にな ります。定常状態に復帰すると、リップル電流は再び キャンセルを開始し、非常に低い出力リップル電圧を提 供します。 4-344 A+B CHANNEL A CHANNEL B 2µs/DIV 1430A F16 図16. 出力インダクタ電流、5A/DIV、30A出力時 2つのチャネルのクロック供給は、2分周フリップフロッ プ内蔵の低コストCMOSマルチバイブレータCD4047に よって行われます。CD4047発振器は600kHz動作に設定 され、QおよびQ出力は、LTC1430Aのシャットダウン・ ピンをドライブします。同期信号はクロックの2分周出 力なので、これらの信号は本質的に180°逆位相であり、 クロック周波数は所要の300kHzです。Q1、D1、および Q1のベースに接続された2個の抵抗は、起動時の問題を 防止するために、ターンオン時の同期化をディスエーブ ルするのに使用されます。入出力電圧差がQ1をターン オンするのに十分に高ければ、同期回路はディスエーブ ルされ、LTC1430Aは両方とも200kHzの自走周波数で動 作します。出力が約1.5Vを超えると、レギュレータはク ロックにロックできます。 電圧モード2フェーズ設計での難問の1つは電流の分担で す。電圧モード制御は、本質的に電流を分担する電流 モード制御とは異なり、実質的に負荷電流の大きな割合 を1つのチャネルが独占しようとします。この回路は電 流シェア・アンプによってこの問題を解決します。 LT1006オペアンプは両方のセンス抵抗両端の電圧を比 較し、下側のLTC1430Aの帰還分割器に流れる小電流を 加算あるいは減算し、上側のLTC1430Aの電流を強制的 に合わせます。2つのPCBトレース抵抗は、電力損失を 最小限に抑えるために、意図的に非常に低い値が選択さ れています。LT1006の標準VOSは80µVで、ある程度正 確な電流分担が行われることを保証しています。 この電流分担手法に関して対処しなければならない問題 が3つあります。まず、2つのセンス抵抗が十分一致して いなければなりません。これは左右対称に配置されたト レース抵抗を使用すれば達成されます。これらの抵抗は 12V 2.0V 20k 16.9k 16.9k 62k 43k 16.9k 16.9k 62k 5V D4 BAT54 R10 10Ω + C21 47µF 10V R20 1Ω R1 51Ω 7 4 6 8 12 3 1 C6 100pF NPO 5% R6 3.09k 1% AST Q AST Q –T OSC R3 1k 10 C3 22µF 25V 11 13 + C1 1µF 8 5 6 R4 1k PVCC2 PVCC1 G2 G1 LTC1430ACS8 SHDN FB COMP GND C13 180pF RET RCC CX 2 1 R22 1Ω 4 3 + C11 470µF 6.3V C7 470µF 6.3V R12 10k + Q5 Si4410DY Q4 Si4410DY (OPTIONAL) C10 470µF 6.3V + C32 470µF 6.3V R5 9.76k 1% R24 39k C18 1000pF R28 1Ω C14 1500pF R14 10k 9 R23 1Ω C19 6800pF D3 BAT54 R16 10Ω CD4047 (POWER FROM 5V CLOCK) 8 6 C30 0.022µF C29 1µF R30 1k R8 4.3k C37 3300pF C31 0.022µF – 3 + 7 6 LT1006 4 8 G2 G1 LTC1430ACS8 SHDN FB COMP GND C15 1500pF R15 10k CHARGE PUMP (OPTIONAL) R11 0.002Ω TRACE Q6 Si4410DY C4 1µF Q7 Si4410DY + C12 470µF 6.3V + C9 470µF 6.3V + VIN C8 470µF 6.3V C36 1µF L1 0.8µH 2 R26 1Ω 3 Q8 Si4410DY (OPTIONAL) Q9 Si4410DY + C33 470µF 6.3V R2 9.76k 1% C17 1000pF R29 1Ω R27 1Ω + R7 51k R18 10k 1% NOTES: 1. L1 AND L2 ARE PANASONIC ETQP1F0R8LB 2. ALL RESISTORS ± 5% UNLESS OTHERWISE MARKED 3. INPUT AND OUTPUT CAPS ARE KEMET T510 SERIES 4. TRACE RESISTORS R11 AND R13 ARE 0.1" WIDE BY 0.675" LONG 1430 F17 4-345 図17. 低電圧30A電源 OPTIONAL VIN C20 6800pF 1 CURRENT SHARE AMPLIFIER C35 1µF ISENSE2 1 4 C34 1µF C39 1500µF 6.3V SANYO + C40 1500µF 6.3V SANYO LTC1430A R9 4.3k 2 C16 180pF PVCC2 PVCC1 C27 0.47µF R25 1Ω C24 1µF C2 1µF R17 10k 1% 5V RST 5 C38 3300pF + Q1 MMBT3906LT1 L2 0.8µH 12V R32 10Ω ISENSE1 C5 1µF Q3 Si4410DY RX SYNC2 R31 1k D1 BAW56CT1 SYNC1 VOUT 12V ISENSE2 Q2 Si4410DY +T 7 + ISENSE1 R13 0.002Ω TRACE 2 R19 1Ω C26 22µF 25V CHARGE PUMP (OPTIONAL) R21 1Ω 5V 5 C23 0.47µF SYNC2 C25 1µF SYNC1 C28 0.1µF D2 BAT54 5V C22 1µF アプリケーション情報 SUBSTITUTION TABLE VOUT VIN REF 3.3V 2.5V R24 10k NA 10k NA 3.3V R17 R18 10k NA R7 51k NA R24 39k 36k R17 10k 6.04k 5V R18 6.04k 10k R7 51k 36k 4 LTC1430A アプリケーション情報 同じ材質で作られて加工されるため本質的に十分一致し ます。これらの抵抗の絶対値は重要ではありません。値 が一致しているかどうかだけが重要です。 す。これは悪影響なしで比較的長い周期にわたって生じ る場合があります。このように、分担アンプの帯域幅は 200∼300Hz台で、高い雑音余裕を保証しています。 次の問題は2つのセンス電圧の基準点に関係します。入 力電流の測定に真の差動アンプを使用しなくてもよいよ うに、これらの抵抗の入力側が正確に同電位になるよう に回路を構成しなければなりません。このようにレイア ウトが構成されない場合は、電流分担精度は期待できま せん。センス抵抗での0.2Ωというわずかな誤差が、 チャネル間では相当大きな電流の不一致を生じます。 図18は2フェーズ・コンバータで達成される高い効率を 示しています。2∼3Aから最大30Aまで、90%以上の効 率が実現できます。理論上また実用上、このマルチ フェーズ手法は、さらに高い電流および出力電力レベル にも拡張できます。詳細については当社にお問い合せく ださい。 100 95 90 EFFICIENCY (%) 最後の問題はセンス電圧に非常にノイズが多い場合に関 係します。降圧レギュレータ入力の電流波形は台形で す。したがってセンス・アンプは、平均入力電流を比較 するために、2つの電流測定値を積分しなければなりま せん。センス・アンプの2段のRCフィルタは、分担回路 を正しく動作させるために、十分にクリーンな信号を提 供します。電流センス・ループは高速である必要はあり ません。バランスのとれた動作では、スレーブ・レギュ レータのオフセットはセンス・アンプでは無視されま す。負荷が急変した場合は、両方のレギュレータが直ち に正しい方向で反応します。2つループに利得差がある 場合は、電流分担誤差電圧を多少修正する必要がありま 85 80 75 70 65 60 55 50 0 5 15 20 10 LOAD CURRENT (A) 25 30 1430 F18 図18. 低電圧30A電源の効率 4-346 LTC1430A 標準的応用例 GTLターミネータ D1 MBR0530T1 5V + C1 0.1µF R4 51 R7 15k C10 1µF 15 14 11 12 C7 0.1µF 8 10 9 R10 3.3k 4 R8 130k C3 220pF PVCC2 VCC PVCC1 G1 2 1 R2 3Ω Q1 Si4410 R1 1k C8 22µF 35V D1 MBRS340T3 L1 2.7µH 1.5V OUT R3 3Ω C2 680pF Q2 Si4410 C6 0.01µF C11 0.068µF C5 330 6.3V OSCON C16 0.1µF 13 FSET IFB LTC1430A 16 IMAX G2 3 SHDN PGND 5 COMP – SENSE 7 SS +SENSE 6 SGND FB C4 + 330 6.3V OSCON D2 MBRS340T3 + + R5 16.5k 1% C12 330 6.3V OSCON C13 330 R9 6.3V 88.7k OSCON 1% + + 330 6.3V TANT + 330 6.3V TANT ADDITIONAL DECOUPLING AT THE LOAD 1430 TA03 R6 10k SHDN 関連部品 製品番号 説明 注釈 LTC1142 電流モード、 デュアル降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラ LTC1148のデュアル・バージョン LTC1148 電流モード降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラ 同期式、 VIN ≤ 20V LTC1149 電流モード降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラ 同期式、 VIN ≤ 48V、 標準スレッショルドFET用 LTC1159 電流モード降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラ 同期式、VIN ≤ 40V、 ロジック・スレッショルドFET用 LTC1266 電流モード昇圧/降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラ 同期式、 NまたはPチャネルFET、 コンパレータ/ バッテリ電圧低下検知器 LTC1267 電流モード、 デュアル降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラ LTC1159のデュアル・バージョン LTC1649 3.3V入力同期式スイッチング・レギュレータ・コントローラ 3.3V入力 4-347 4