Monolithic Power Systems, Inc AN-01 MP1010 を使用した CCFL インバータの設計 AN01 MPS 社アプリケーションノート AN01 より V.11 5/99 マイクロテック(株)マーケテイング1部 1999 年9月 はじめに 図1 基本的な MP1010 の使用法 モノリシックパワーIC の MP1010 を使用 すると小型、高効率の CCFL(冷陰極管) 用インバータが実現できます。この IC に Gnd OutR MP1010 .. OutL ートランジスタと、6.5V∼22V の供給電源 範囲でランプ電流を安定に保つ、電流ゼロ の共振スイッチング制御回路が内蔵されて います。MP1010 は負荷の共振周波数にお 機能について ける効率を最大限にし、出力段における無 全範囲、シングルステージ、1チップ構成 駄な高調波エネルギを最小限にできます。 ランプ電流はほぼ完全な対称型サイン波と MP1010 は CCFL インパータモジュール なるため、尖頭電流ファクタを充分に小さ の中核となるデバイスです。この IC には くでき長期間のランプ寿命を保証できます。 CCFL インバータシステムに必要なパワー 通常、トランスとランプに直列に挿入する トランジスタによる H-ブリッジ、制御回 バラストコンデンサを使わずに、トランス 路、そして保護回路が内蔵されています。 の二次側をランプに直接接続できるため、 従来の Royer 方式が2段の電力回路で構成 高電圧ストレスによるトランスの寿命劣化 されているのに対して、MP1010 は完全対 の心配が無くなりました。ソフトスタート 称な共振構成の電力回路が1段で構成され の機能と共振回路構成によって、放電開始 ています。図2は MP1010 の機能ブロッ 最小電圧で放電を確実に始めることが可能 ク図です。インバータに必要な全ての機能 になった為、更にトランスに対するストレ は MP1010 に 含 ま れ て い ま す の で 、 スを減らすことができます。 MP1010 を使用したインバータシステムで オープンランプ電圧は、キャパシタを使用 の主要な部品は MP1010 と昇圧トランス した分圧器と数点の安価な外付け部品を付 の2つだけとなります。 加するだけで安定化できます。オープンラ ンプ遮断タイマも同様に実現できます。 Monolithic Power Systems 1of7 Version 1 Sep.1999 CCFL は、昇圧用トランスをドライブできるパワ Vin = 7V - 22V Monolithic Power Systems, Inc AN-01 図2 MP1010 の機能ブロック図 Vs OutL OutR BstL BstR Comp f1 S 2.5V - C1 Q Driver Driver R + f2 + 50mv C2 R S Q Q + MUX C4 VIlim + C3 T /Q - Open L + C5 Bright 1.1V + + A2 Start-up, States Control, Internal Regulators, and Thermal Shutdown Enable - A1 - Isense - Test/ Burst Vref 共振回路の構成 パワーH - ブリッジ MP1010 ではランプをドライブする為の高 電圧を発生する為に共振回路を使用してい MP1010 の出力段は 22V の動作電圧特性 ます。この方式はトランスの二次側巻線に と 0.12 Ω の オ ン 抵 抗 を 持 っ た 4 つ の 対する高電圧ストレスを低減できます。こ DMOS パワーFET で構成される H-ブリッ れは、トランスからバラストコンデンサを ジです。MP1010 を使用したインバータで 介して CCFL をドライブする Royer 方式 は外部にパワートランジスタは不要で、ト と異なり、トランスから CCFL を直接ド ランスを直接ドライブできます。この方式 ライブするからです。MP1010 で使用され の利点は、パワートランジスタのコストが るトランスのサイズは原理的に Royer 方式 削減できるだけでなく、インバータモジュ で使用されるフライバック型のトランスよ ールの基板面積を大幅に小型化できること りも小型にできます。更に、共振回路構成 です。パワーH-ブリッジ及びその制御回路 は対称のサイン波を出力できる為、入力さ を内蔵したことによるもうひとつの利点は、 れた電力の光エネルギへの変換効率も 高温保護と過電流保護を実現できたことで Royer 方式より優れています。 す。 Monolithic Power Systems 2of7 Version 1 Sep.1999 Vdr Monolithic Power Systems, Inc 動作異常保護 AN-01 電力が CCFL に対して供給されることに なります。結果的に CCFL の増加電流が オープンランプ保護 D2 と R2 で構成される半波整流回路から 引き出されます。R2 の電圧は Isense ピン MP1010 はオープンランプ電圧安定化回路 をドライブし、Comp ピンに流れ込む電流 と遮断回路を簡単に実現できるように設計 を減少させますので帰還ループが構成され されています。オープンランプという異常 ます。 が発生すると、オープンランプ電圧はオー プンランプの遮断タイマが規定時間に達す 設計手順 るまでの間安定化されます。オープンラン プ電圧とオープンランプタイマは両方共ユ CCFL インバータを設計する際、入力のパ ーザプログラマブルです。 ラメータは、供給電圧、ランプの放電開始 電圧、全負荷電圧、最大ランプ電流、そし 出力短絡保護 てパネル容量などです。図3は、僅かな微 調整をするだけで殆どの用途に利用できる 輝度はランプ電流を調整することで可変で 平均的な回路構成です。 きます。MP1010 の Bright ピンに与えら れる電圧を 0V∼2V の範囲で変化させるこ (異なる特性を持つパネルをドライブする とによりランプ電流を可変できます。 場合はマイクロテック㈱マーケテイング 1 この Bright ピンは動作範囲 0-2V の高イン 部までお問い合わせください。 ) ピーダンスのアナログ入力で、2V で最大 輝度となり 0V で最低輝度となります。こ ランプ電流の設定 のピンに 2V よりも高い電圧を加えてもラ ンプの輝度には影響しませんが、内蔵の R2 ESD 保護ダイオードが導通してしまわな 図3において、最大ランプ電流を設定する いように 7V 以下の電圧とします。輝度調 為には、Isense ピンにおいて 125mV の平 整範囲はランプ電流センス時で約 4.5:1 均電圧時に最大ランプ電流となるようにセ です。 ンス抵抗 R2 の値を決めなくてはなりませ ん。以下の式から最大ランプ電流を得るた 図2と図3(P.6)を使ってランプ電流制御ル めの最適なセンス抵抗値を算出します。 ープを説明します。Bright ピンに 0-2V を 式1 加えることにより Comp ピンに流れ込む電 R Isense = 2 * 0.125V / I Lamp max . 流は PMOS を非バイアスし C1,C1,f1&f2 で構成される On-Time オシレータを動作 最大ランプ電流が 6mArms のときは、 させます。Comp ピンにより高い電圧が与 2 * 0.125V / 6mArms = 4.16Ω えられると H-ブリッジからより長い時間、 となります。 Monolithic Power Systems 3of7 Version 1 Sep.1999 Monolithic Power Systems, Inc AN-01 実際の R Isense は上式で得られた値より約 て決められます。このキャパシタは Isense 10%大きい値とします。これは定格 RMS ピンに与えられる半波電圧からのインパル ランプ電流値と制御される平均電流が異な スをフイルタリングするのに充分な大きさ る為です。 でなくてはなりません。しかし、同時に制 御ループが電源電圧変化に迅速に応答でき Vcc、Vdr 、及び Vref ピンの る程度には小さい必要があります。妥当な デ・カプリングキャパシタ 値としては 2.2-10nF です。 C1,C6,C13 更に、ソフトスタートは補償キャパシタ対 10μF かそれ以上のキャパシタを Vcc ピン GND に最初の出力パワーサイクルの直前 のデ・カプリングキャパシタ(C1)に使用し にプリチャージすることによって実現でき ます。更に、通常動作時に発生するスイッ ます。Comp ピンの直流インピーダンスは チングスパイクを減衰させるために 1μF 非常に大きくループ利得の殆どがこのノー を各 Vcc ピン(C6 と C13)の近くに追加し ドに置いて生成されます。 ます。 ソフトスタート時間は下式によって得られ ます。 C7,C14 C7 と C14 のブートストラップキャパシタ 式2 は、立ち上がりエッジ後に上段のスイッチ Tsoft = 850uS + [Ccomp * 2V ] / VBright / 125KΩ + 5uA が確実にドライブされるに充分な大きな値 が必要ですが、しかし、電源立ち上がりシ ーケンスの期間にレギュレータをドライブ [( ) = 850uS + [4.7nF * 2V ] / [(1V / 125KΩ) + 5uA] = 850us + 723us = 1.57 ms できない程大き過ぎてはいけません。10V 以上の耐圧を持った 10nF のセラミックキ ここで 850μs は MP1010 内のステートマ ャパシタを推奨します。 シンがスタートアップを初期化するのに必 要な時間です。 Ccomp は 図 3 の C3 で C4 Vbright は Bright ピンに与えられる電圧で この 5V リファレンス電源用バイパスキャ す 。 BOM に お い て 、 C3=4.7 μ F と パシタ(C4)は電源投入時にリファレンスレ Vbright=1V を前式に代入して Tsoft=1.57ms ギュレータが充電できない程大き過ぎては が得られます。 いけません。1μF を推奨します。 システム補償とソフトスタート C3 補償用キャパシタの値は制御ループの応答 速度とソフトスタートランプの定格によっ Monolithic Power Systems 4of7 Version 1 Sep.1999 ] Monolithic Power Systems, Inc AN-01 オープンランプ保護 オープンランプ遮断 オープンランプ検出とレギュレーション 図3と BOM において、オープンランプ電 圧のピーク値は以下の式で得られます。 オープンランプタイマはランプ電圧をキャ 式3 パシタ分圧器と簡単な検出器を介してフイ Vopen lamp peak to peak = (C10 / C11) * (Vref + 3Vd ) ードバックさせることで実現できます。 ここでは Vd = 0.65V 、 Vref = 5.1V です。 OpenLamp ピンは内蔵のアナログコンパ C10=10nF 及び C11=15pF のとき、上式 レータの入力端子です。このコンパレータ の結果は以下のようになります。 の 閾 値 は 1.15V に 設 定 さ れ て い ま す 。 OpenLamp ピンの電圧が閾値以上である Vopen lamp peak to peak = 4.7 KV . 限り、MP!010 は通常の動作を継続します。 OpenLamp ピンの電圧がこの閾値より下 R1 回ると、MP1010 は負荷に対するドライブ 以下の式はオープンランプ遮断カウントダ を停止し、4 個の出力スイッチをオフにし ウンタイマの値を設定する為に使います。 て、Drive レギュレータをデイスエーブル にします。(Ref レギュレータは引き続き 式4 on のままです。 )動作を復帰させる為には、 Tocd = R1* C 2. Enable ピンを約 100μs の間 Low にして から再び High にしなくてはなりません。 R1 = 1MΩ 、 C 2 = 1µF ,のとき、 Tocd = 1 秒 この機能をデイスエーブルとする場合は となります。 OpenLamp ピンを Vref ピンに接続します。 トランスの設計 MP1010 は巻数比 Np:Ns=1:100、LLK=350 μH(二次巻線と一次巻線短絡で計測)、 SRF(二次側共振周波数)が 5MHz 以上 のノンギャップ型のトランスを使うと良好 に動作します。 これは従来型の Royer 方式のトランスでは 無いため、下記のトランスのご使用を推奨 します。 TOKO BLC103B(添付仕様書参照) Monolithic Power Systems 5of7 Version 1 Sep.1999 Monolithic Power Systems, Inc レイアウト上の注意事項 AN-01 できます。特にパワーグラウンドピンの 8,9,12 そして 13 ピンです。 グラウンドのトレースは使用される部品が 公差の範囲でばらついてもモジュール全体 不要な電力ロスが起こらないようにトラン として再現性良く正しく動作するように注 スの下には幅の広い配線は行わないように 意深く行わなくてはなりません。 します。この影響の計測は、たとえフェラ いくつかの配線部及び部品では比較的大き イトが磁力線の全てを包含しているように な過渡電流が流れる為、グラウンド線はこ 見えていたとしても導電パネルにモジュー の電流を充分に流せなくてはなりません。 ルを実装した後で行います。 デモボードのレイアウトを参考にしてくだ さい。 バイパスキャパシタはグラウンドの配置に 応じて注意深く配置するようにします。デ MP1010 の熱抵抗はパッケージの端子のラ モ基板を参考にしてください。 ンドを充分に広くすることで極端に小さく *注;本アプリケーションノートの内容は変更される可能性が有ります。 最新の資料、データの入手は下記へお問い合わせください。 問い合わせ先: マイクロテック(株)マーケテイング1部 電話;03-5300-5535 FAX;03-5300-5530 住所;〒168-0063 東京都杉並区和泉 2-7-5 Monolithic Power Systems 6of7 Version 1 Sep.1999 Monolithic Power Systems, Inc AN-01 図 3 アプリケーション回路例 R1 R3 Q1 C4 C2 C10 C3 C9 C5 J1 C6 4 3 2 1 C7 D1 C1 C11 PGnd BstR PGnd BstL OutR PGnd PGnd OutL Vdr VCC Vref comp J2 C8 T1 1 2 MP1010 VCC Vdr Enable U1 Test AGnd Bright ISense open lamp C8a C14 D2 C13 R2 C12 部品表一覧 Item Quantity Reference Part 1 1 C1 10uF 25V 2 1 C2 1uF 10V Y5V 3 1 C3 4.7nF 10V X7R 4 1 C4 1uF 10V Y5V 5 2 C5,C12 100nF 6 2 C13,C6 1uF 7 3 C7,C9, C14 8 1 C8,C8a 470nF 9 1 C10 5.6nF 10V X7R 10 1 C11 15pF 3KV 11 2 D2, D1 BAV99L 12 1 JP1 4 HEADER 13 1 J1 CON2 14 1 Q1 2N3904 15 2 R1, R3 1M 16 1 R2 43 17 1 T1 TOKO 866 TN 1040 or FDK 9mm27/2500 18 1 U1 MP1010 19 1 F1 FUSE 2A 32V Monolithic Power Systems 10V Y5V 25V Y5V 10nF 16V 16V X7R 7of7 Version 1 Sep.1999