新製品紹介 小径穴あけ高硬度用ドリル Miniature Drill for High Hard Steel Miniature drill:Epoch Micro Step Borer H(EMSBH) 切削加工による高硬度焼き入れ鋼 テップ加工を前提とした EMSBS の して,トータル加工費を 70 % 以上削 への小径穴あけの要望が増加してい 特殊な工具形 状を基本とし,高硬度 減した。さらに,切削加工のみで仕上 る。例えば金型ではエジェクターピン 焼き入れ鋼用として専用の刃形に改良 げ加工までを完了するため,加工工程 やガス抜き穴などがあり,これらは放 したものである。 を短縮し, リードタイムの短縮にも寄与 電加工で行われていることが多い。 開発品の特長を図 2 に示す。切れ している。 日立ツールは,放電加工からの置き 刃のすくい面に特殊なフェイスおよび また,開発品では最小径としてφ 0.1 * 換えを図り,加工費を低減する高硬度 シンニング を形成することで,高硬度 mm の穴あけにも対応する。図 3 に 焼き入れ鋼用の小径穴あけドリル「エ 焼き入れ鋼を加工する際に切れ刃に SKD11 の焼き入れ材への穴あけ事例 ポックマイクロステップボーラー H 生じる欠けを抑制し,大幅に寿命を を示す。最小径においても市販品と (EMSBH)」を開発した。本工具の 向上した。また,工具素材,およびコー 比較して,大幅に寿命を向上している。 対象とする加工領域を図 1 に示す。 ティングはそれぞれ,最新の日立ツー EMSBH は 2012 年 4 月より受注生 日立ツールでは,既に深穴加工用 ルオリジナル高硬度用のものを採用 産にて発売している。 ドリルとしてエポックマイクロス した。 (日立ツール株式会社) テップボーラー S(EMSBS)を販 表 1 に金型メーカーにおける加工 売している。開発品の EMSBH はス 費削減事例を示す。放電加工と比較 * シンニング:加工中の真直性を高めるための 先端形状のこと 対象加工領域 硬度(HRC) 60 EMSBH 50 特殊フェイス 40 エポックマイクロステップボーラーS(Sharp) EMSBS 30 0 5 30 50 80 100 L/D(L:穴深さ/D:穴径) シンニング(φ0.1∼) 図 2 高硬度用に開発した専用刃形 Fig. 2 Special geometry drill for high hardness steel 図 1 開発品 EMSBH の対象加工領域 Fig. 1 Target area of EMSBH 表 1 放電加工との加工費比較事例(ユーザー実例) Table 1 Comparison with electrical discharge machining 18 金型エジェクターピン穴加工 被削材: SUS420J2(HRC52) 穴径: Φ0.5 穴深さ: 11 mm(L/D=22倍 (L: 穴深さ/D:穴径)) 穴数:(300穴) EMSBHによる 加工の場合 工程 14 12 8 6 (¥/本) 9,500 250 工具寿命 (穴/本) 300 6 2 1ロットの加工時間 (分/ロット) 750 3,000 0 1ロットの加工費 (¥/ロット) 47,000 165,000 (%) 28.5 加工費 71.5 %削減 日立金属技報 Vol. 29(2013) 工具サイズ: φ0.1×1 mm(有効深さ) 被削材: SKD11(HRC60) 10 工具単価 加工費の比率 54 放電加工の場合 16 加工穴数 従来の加工方法 1.細穴放電 2.焼き入れ 3.ワイヤー放電にて仕上げ 100 4 EMSBH 市販品 高硬度用ドリル 回転数: 12,500 min−1 切削速度: 3.9 m/min 送り速度: 87 mm/min 1回転送り量: 0.007 mm/rev ステップ量: 0.01 mm 加工深さ: 1 mm 加工機: 縦型マシニングセンター 図 3 市販品と EMSBH による SKD11 の小径深穴加工事例 Fig. 3 Application data of SKD11 by EMSBH and conventional tool