高切込み加工用エンドミル

新製品紹介
高切込み加工用エンドミル
End Mill for High Depth Cutting
Epoch panacea ball :HGOB2-PN
剥離による損傷を回避する新技術が
金型の加工時間短縮を目的とし
強度を確保し耐欠損性を向上させた。
次に加工事例を示す。被削材は
確立できた。
て,高能率加工に必要な被膜技術と
形状開発に取り組んだ。以下にその
また,ボールエンドミルの刃形に
HPM38(H),52HRC で使用工具は
ボールエンドミルの技術と特長およ
ついても最適化を図った。図 2 に
R3,2 枚刃のボールエンドミルであ
び加工事例を示す。
ボールエンドミル先端部の技術要点
る。切削条件と結果および効果を,
ここに紹介する新技術パナシア
を示す。ボールエンドミルは等高線
典型的な試作材(市販品相当品)と
コーティングは AlCrN を主成分と
加工を行う際にチゼル部分(位置決
比較して表 1 に示す。エポックパ
した薄膜である。図 1 にパナシア
め用の刃先部分)の切屑排出方法が
ナシアボールは高切り込み加工に対
コーティングの特長である耐剥離の
問題となる。特に高切り込み加工の
応できるため加工時間が 6 分の 1 内
状態を日立ツールの TiAlN 系皮膜
場合には,チゼル部分の摩耗状態に
外に短縮されており,かつ摩耗状態
と比較して示す。材料成分の最適化
顕著な差が観察される。エポックパ
が少なく安定している。このように
を図ることにより超硬母材との密着
ナシアボールはチゼル近傍から広く
エポックパナシアボールは加工時間
強度が向上できた。Si を含有させ
チップポケットを設けることで高切
短縮と加工費半減効果が期待でき
ることで皮膜のビッカース硬度
り込み時の等高線加工の際の切屑を
る。本工具が顧客の様々な用途や用
(Hv)3,000 を 得 た。 こ れ に よ り,
外周側へスムーズに流すことを可能
法で大きな効果をもたらせると期待
皮膜硬度を高めたことによる耐摩耗
にした。また,R 刃のすくい角を負
している。
性,耐熱性の向上とコーティングの
角(ネガ)側に設計することで刃先
圧痕試験結果
荷重150 kg
先端120°ダイヤモンド圧子を使用し,
荷重150 kgで圧痕実施
ダイヤモンド圧子
被膜
基材
膜種
圧痕正面図
(日立ツール株式会社)
表 1 HPM38(H)切削試験の切削条件と結果および効果
Table 1 Testing condition,result and efficacy on cutting
HPM38 (H) steel
エポックパナシアボール
使用工具
回転数 N:10,000 rpm
圧痕断面図
試作材(市販品相当品)
回転数 N:10,000 rpm
送り速度 Vf:3,000 mm/min 送り速度 Vf:2,000 mm/min
切削条件
PN(Panacea)
切屑排出量
軸方向切込み ap:0.8 mm
軸方向切込み ap:0.3 mm
径方向切込み ae:3.0 mm
径方向切込み ae:1.5 mm
8.27 mg/s
1.03 mg/s
0.03 mm
0.06 mm
7.5
44.5
8,750
53,400
TiAlN系被膜
剥離
クラック
4 mm
4 mm
図1 コーティング膜種と剥離状態の比較
Fig. 1 Difference of peeling off condition of ‘Panacea’ coated and
competing tool
摩耗状態
R部最大摩耗幅
Tm ワーク1個の 分/ワーク
加工時間
ワーク1個の
X 加工費※ ¥/ワーク
R部すくい角は負角側
※加工費計算式
広いチップポケット
X=Mc×Tm+(C+Mc×Tt)/L
C:工具費(¥/本)
L:工具寿命(個/本)
Mc:機械費(¥/分)
Tt:工具交換(分/本)
Tm:加工時間(分/個)
X:加工費(¥/個)
図 2 エポックパナシアボールの 3D 形状
Fig. 2 Epoch Panacea ball 3D geometry
日立金属技報 Vol. 27(2011) 57