Infrastructure Finance Media We are GE 2008 Annual Report 皆さまへのご報告 連結売上高 2004 2005 2006 2007 (単位 : 10 億ドル) 2008 183 172 152 136 124 5 年間の 平均成長率 12% 継続事業による利益 2004 2005 2006 (単位: 10 億ドル) 2007 2008 22.5 19.3 18.1 17.3 15.6 5 年間の 平均成長率 7% 利益成長率 2004 2005 2006 2007 2008 GE 18% 11% 12% 16% (19%) S&P500 企業 25% 10% 14% (7%) (30%) 2008 年の業績ハイライト •利益は過去3番目に高い181億ドルを達成 •売上高は6%増加して過去最高の1,830億ドルを記録 •グローバルの売上高は13%増 •インフラストラクチャー部門とメディア部門は10%の増益を達成 •設備・機器およびサービスの総受注残高は9%増の1,720億ドルに上昇 •サービスの受注残高は10%増の1,210億ドル •産業分野事業の内部成長(売上高)は8%増 •製品、研修、マーケティング、プログラミングなど会社の知的基盤に150億ドルを投資 •2008年に申請した特許は8%増の2,537件 •『ビジネスウィーク』誌が選んだ「世界で最も価値のあるブランド」で第4位を獲得 注:本冊子内の各実績値は特に断りのない限り、継続事業による業績を表します 写真左から ジェフリー・R・イメルト:GE取締役会会長兼CEO マイケル・A・ニール:GE 副会長、GEキャピタル会 長兼CEO キース・S・シェリン:GE 副会長、チーフ・ファイナ ンシャル・オフィサー ジョン・G・ライス:GE 副会長、GEテクノロジー・ インフラストラクチャー プレジデント兼 CEO ジョン・クレニキJr.:GE副会長、GEエナジー・イン フラストラクチャー プレジデント兼CEO 投資家の皆さまへ 2008 年は厳しい年でした。そして 2009 年は、それよりさらに厳 しい年になるでしょう。 昨年のアニュアルレポートでご報告した流動性の問題は、世界的な 金融危機に発展してしまいました。GE は 2008 年を通じて、企業 経営の健全性を維持すると同時に、金融危機が私たちのビジネス に及ぼす影響を予測すべく、懸命な努力を続けてきました。私はこ れまで、GE の多様な事業ポートフォリオは、いかなる景気サイクルの 影響も受けないだろうと信じていました。しかし、従来の世界の金 融システムが破綻し、それによる経済危機がこれほどまでに長く続 くことは予測していませんでした。 マクロ経済は非常に厳しい環境下にあります。金融サービス業界全体での損失は少なくとも 2 兆ド ルに上ると予測されています。金融システムが失った融資能力は、5 ~10 兆ドル相当に上ります。今、 世界中の大部分が景気後退(リセッション)に入りました。 、 米政府が取った措置は、経済環境の安定化に役立ちました。主に米連邦準備制度理事会(FRB) 米連邦預金保険公社(FDIC) 、米財務省、そして各国政府が積極的な対策を講じたことにより、資 本市場の状況は緩和しました。さらに世界各国で景気刺激策が実施されれば、新たに数兆ドルの 投資が生み出されるでしょう。 これほどまでに厳しい環境のなかでも、GE は 2008 年、過去三番目に高い 180 億ドルの利益 を計上しました。過去 8 年間にわたる継続的な事業再編が功を奏し、資本を成長促進のために再 投資することができたからです。通年の営業活動によるキャッシュフローも、190 億ドル超と引き 続き堅調でした。インフラストラクチャー事業の製品とサービスの受注残高は 1720 億ドルに上って います。世界のさまざまな地域で事業を展開しているため、売上高の 53% は米国以外で得ていま す。さらに、市場への投入を予定している新製品も数多くあります。 かつて目にしたことがないほど困難な状況の中でこれだけの好業績が達成できたのは、ひとえ に GE 社員の力によるものです。熟練した労働者、専門要員、信用アナリスト、技術者、エンジニ ア、サービス要員、そして経験豊富なマネジメント・チームなど、 30 万人を超える全社員の努力があっ たからこそ、2008 年においても堅調な収益性を実現し、GE の今後の成長に向けて準備を整えるこ とができたのでした。 しかし、私たちのこうした努力にもかかわらず、GE の株価は大きな打撃を受けました。GE のよ うに金融サービス業を運営している企業の株は、市場の支持を失っています。現在の厳しい環境下 における GE の株価実績に誰よりも失望しているのは、この私です。必ずや皆さまからの信頼を回 復し、GE が長期的に発展できるよう、社員一同で全力を尽くしてまいります。 現在は景気後退期にあり、経済がどこまで悪化するのか、そしてそれがいつまで続くのか、予測 を立てることは困難です。私たちは「この景気サイクルを乗り切る」べく GE を経営しています。と はいえ、今私たちが経験しているのは単なる景気サイクル以上のものであるようにも感じています。 世界経済はもとより資本主義そのものが、いくつかの重要な局面において「リセット」されていく と考えられます。 政府と企業の相互関係は、これまでとはまったく違った形になるものと思われます。リセット後 の経済においては、政府は企業にとって、規制監督者であるだけでなく、産業政策を推進し、資 金を調達する、重要なパートナーになるでしょう。 金融業界では根本的な構造改革が行われるでしょう。レバレッジが低くなり、競合が減り、リス クが根本から再評価されるでしょう。金融業は重要な産業であり続けますが、これまでとは異なる 産業になります。 他にも、 「自動車産業の役割衰退」、 「住宅産業の低迷長期化」、 「突出していたオルタナティブ投 資の衰退」、 「経営幹部の責任と報酬の性質変化」など、様々なリセットが生じています。ここに見 逃してはならない点があります。危機が通り過ぎるのをじっと待っているだけでは企業は成功でき ません。リセット後の環境における新たなチャンスを探していかなければならないのです。 GE はこの点を十分に考慮しながら、現在の不況下で GE を守り抜けるよう強力な対策を講じま した。同時に、GE の長期戦略を引き続き実践します。そして今後も、長期にわたって好業績を上 げられる強固な事業を構築するとともに、全社共通のイニシアチブを推進しながら競争優位性を確 立します。 これほどまで厳しい環境にあっても、GE の利益は過去三番目に高い 180 億ドルとなりました…… インフラストラクチャー事業の製品と サービスの受注残高は 1720 億ドルに上ります…… さらに、市場へ の投入を待つ新製品も数多くあります。 2 ge 2008 annual report 厳しい時代に備えて GE では 2009 年の経済状況はさらに困難になると見込んでおり、すでにコストの削減や損失引当 金の積み増し、資金繰りの改善、マネジメント・プロセスの強化などの対策を取っています。 現在の経済環境を切り抜けるために、いくつか苦悩の末の選択も行いました。流動性が事実上 枯渇した際には、150 億ドルの増資を行いました。また米政府による資金調達支援プログラムも活 用しました。GE は銀行と対等とみなされ、これを利用できる立場にあります。 資金調達も順調です。2009 年の事業成長に必要な借入金の約 3 分の 2 はすでに調達済みです。 また主に傘下の金融機関を通じて、代替手段による資金調達額を 540 億ドルに増やしました。 流動性も改善しています。前年は 1000 億ドルだったコマーシャル・ペーパーの発行残高を現在 は 600 億ドルにまで圧縮しています。2008 年末時点でのバランスシート上の現金預金は 480 億ド ルでした。GE キャピタルのレバレッジ比率を 2009 年には 6:1 にすることを目標としています。 GE では厳しい経済情勢を見据えて、現実に即した損失予測を行っています。消費者向け融資が 銀行に比べて少ないという有利な立場にあり、また法人向け融資は有担保の上位債権です。この 現在保有している資産を運用することによって、GE は最大限の価値を実現します。 コストに関しては 50 億ドル削減すべく、思いきった対策を講じました。人員削減と支出削減を 続けることにより、来期のベースコストが 7% 減少すると予測しています。すでに組織を簡素化し、 仕事の流れをシンプルにしています。直接材料費 20 億ドルも含めて、変動コストを削減していく予 定です。間接コストは 10% 近い削減を見込んでいます。 産業分野の事業は、景気下降局面でも年間 160 億ドルの現金預金を生み出しています。目標は、 運転資金を今後 2 年間で 50 億ドル程度削減することです。これが実現できれば、多くの現金預 金を成長に再投資できるうえ、高配当の維持やバランスシートの強化につながります。 とはいえ、資本を配分するうえで現在最も優先しなければならないのは安全性です。これを守る ために、引き続き十分な資本、低いレバレッジ比率、堅固な収益、慎重な資金調達など、 「トリプル A」 という最上級の信用格付け維持に必要な規律をもって経営にのぞみます。 不景気の嵐を乗り超える準備は万端です。しかし、この嵐が通りすぎた後に GE が今よりさらに 価値ある企業となるためには、 「強固な事業の構築」と「競争優位性の維持」という長期戦略を実 現していく不屈の努力が必要です。 強固な事業の構築 GE はこれまで、新たな可能性に対応するために事業ポートフォリオを幾度となく再編してきました。 これは今日でも同じです。下のグラフは過去 40 年にわたる累計純利益を示しています。1970 年代 が 80 億ドル、1980 年代が 240 億ドル、1990 年代が 650 億ドル、そして 2000 年代には 1700 億 ドルに近づきつつあります。これだけの実績を、何度かの景気サイクルをくぐり抜けながら打ち立 ててきたのです。 GE は昨年、事業のフレームワークを簡素化してテクノロジー・インフラストラクチャー、エナジー・ インフラストラクチャー、金融、メディアという 4 つの主要事業に焦点を絞りました。2008 年には S&P500 企業の利益が 30% も減少したのに対して、GE の利益は 19% の減少にとどまりました。 これは私たちが目標とする「優れた業績」とはいえませんが、市場全般と比較すれば健闘したと言 えるでしょう。やがて景気が回復した後にも、GE の事業は引き続き S&P500 企業を上回るペース で成長を遂げるものと思われます。2009 年の優先課題は 3 つあります。1 つめはインフラストラク チャー事業とメディア事業におけるリーダーシップの拡大、2 つめは景気サイクルのなかで GE が持 つ利点の活用、3 つめは GE キャピタルの金融事業の絞り込みです。 GE の実績 1970 年代 1980 年代 1990 年代 2000 年代 (単位:10 億ドル) ~170 90+ 65 A. 配当 B. GE の利益 24 4 8 29 10 ge 2008 annual report 3 インフラストラクチャー事業とメディア事業におけるリーダーシップの拡大 インフラストラクチャー事業とメディア事業ではすでにリーダーシップを確立しており、売上高は約 1000 億ドル、利益率はおよそ 17% になります。これらの事業では、年にわずか 20 億ドルの投 資を行うだけで長期的な成長が可能です。両事業の 2008 年の成長率は 10% となっており、2009 年の厳しい状況でも成長が予測されます。 テクノロジー・インフラストラクチャー事業では 2008 年に約 80 億ドルの利益を上げており、事業 見通しでは 2009 年も増益を予測しています。利益率も引き続き堅調であり、2009 年も拡大する と思われます。一方で逆風に直面することも覚悟しています。航空機エンジンの受注がいくつかキャ ンセルされることが予想されており、ヘルスケア部門でも米国内の画像診断装置事業が厳しそうで す。このような事態も予測されているとはいえ、いずれもサービス関連収益の堅調な伸びやコスト 削減によって相殺されると考えています。ジョン・ライスが率いるチームは、一連の強固なリーダー シップ・ビジネスを築き上げるというすばらしい成果を達成しました。いずれも厳しい局面でも成 長できるビジネスです。 エナジー・インフラストラクチャー事業の 2008 年の利益は約 60 億ドルであり、2009 年には利益 も利益率もともに拡大する見通しです。原油価格の低下はマイナス要因ですが、スチールをはじめ とする原材料コストも低下するため、プロジェクトによっては進展が加速する可能性もあります。長 期的には、電気需要が今後 25 年間で 2 倍になると言われており、堅固な成長が持続すると予測 されます。またエコマジネーション(ecomaginationSM)のイニシアチブが功を奏し、 「クリーン・ エネルギー分野」では圧倒的優位にあります。2008 年のエコマジネーション関連製品の売上高は 170 億ドルに上り、持続的な成長の実現に向けて順調に歩を進めています。ジョン・クレニキが率 いるチームの働きにより、GE はグローバルなエネルギー市場で勝ち抜くことができました。 NBC ユニバーサル事業では 2008 年に約 30 億ドルの利益を上げました。しかしネットワーク事業 の環境が相当に厳しくなることが予想されるため、2009 年には利益が減少する見込みです。とは いえ、利益の 60% 以上を占めるケーブルテレビ事業では 2008 年と同様の視聴率を獲得し、引き 続き頼もしい収入源となりそうです。映画事業では、すでに次年度公開予定映画への投資が行わ れており、これらの映画の DVD 販売も予定されています。優れたコンテンツ、ケーブル事業への注力、 海外配信などがこの事業の強みです。メディア環境が急速に変化するなかで、ジェフ・ズッカーが 率いるチームは NBC ユニバーサルを回復させて成功を収めるというすばらしい成果を達成しまし た。 景気サイクルのなかでGEが持つ利点の活用 GE のインフラストラクチャー事業には、景気サイクルとのからみで 2009 年に需要が高まる部門が いくつかあります。そのひとつがサービス部門です。インフラストラクチャー事業では利益の約 3 分の 2 をサービス部門で獲得しています。独自の技術が広範囲に導入されていることから、サービ ス部門の受注残高は 1210 億ドルに上ります。 サービス部門の 2009 年の売上高は 10% 程度伸びて約 400 億ドルとなり、利益率も良好な数 値になるものと見込んでいます。サービスはお客さまに価値を提供するため、景気後退期のほうが 堅調です。サービスの価値は 2 つの流れから生み出されます。1 つはシステム性能の改善や省エネ による効率性の向上、もう 1 つはプロセスの改善やデータ管理による生産性の向上です。 アビエーションは、新製品市場が低迷しても利益が伸ばせる事業のひとつです。過去 3 年間に出 荷したエンジンに関連するサービスの売上高だけでも、長期的には 900 億ドルに上る可能性があ ります。また、納入済みエンジンの 40% はまだ 1 度も整備を受けていないため、メンテナンス依 頼も 2009 年には 20% 増加するものと想定されます。GE の提供するサービスではメンテナンス・ コストが予測可能で、エンジンの信頼性を向上し、残余価値を高めるため、サウスウエスト航空な どの主要なお客さまよりご支持をいただいています。 政府の景気刺激策によって活発になると見られるインフラ投資も牽引力のひとつです。GE は幅広い 技術ポートフォリオを持っています。そのため、今般の経済危機により政府の役割が大きくなって いるなかでは、自然な流れによって政府のパートナーとなる立場に置かれています。過去 10 年間 を振り返っても、新興市場の成長やクリーン・エネルギー、サステナブル・ヘルスケア(持続可能な 医療)などの「ビッグ・テーマ」において、GE は常に他をリードする立場にありました。 経済危機の発生前は、世界全体でのインフラ投資は 7 兆ドルになると予測されていました。イン フラ投資は人々の生産力を高め、基礎ニーズを生み出し、そしてこれは何よりも重要なことですが、 雇用を創出します。政府の刺激策では新たに 3 兆ドルがインフラ投資に振り向けられるでしょう。 4 ge 2008 annual report 米国では景気刺激策の対象として、クリーン・エネルギーとスマートグリッド技術が取り上げられ ています。いずれも GE がこれまで投資し続けてきた分野であり、GE はその成果を活用できる立場 にいます。風力エネルギーやソーラーエネルギーなどの再生可能エネルギー事業は 70 億ドル規模に 成長しており、強固な地位を確立しています。また GE のお客さまにはパシフィック・ガス・アンド・ エレクトリック社やアメリカン・エレクトリック・パワー社、フロリダ・パワー・アンド・ライト社な どの主要な電力会社が含まれており、各社にスマートグリッド技術を導入しています。こちらは現 在約 6 億 3500 万ドル規模の事業ですが、今後数年で飛躍的に成長するものと思われます。 GE は医療 IT(情報技術)の分野でも 20 億ドル規模の事業を構築しました。ここでは主要なお 客さまと協力し、より質の高いケアを低コストで患者に提供できる方法を探っています。業界のオ ピニオンリーダーである医療団体、インターマウンテン・ヘルスケアと提携して進めている医療記録 の電子化がその一例です。同団体と GE は共同で出資し、それぞれのチームの共同作業を推進して 共通のプロセスと基準を設定しました。またメイヨー・クリニックやカリフォルニア大学サンフラン シスコ・メディカル・センターとも共同して医療 IT の調査研究を進めています。私たちは自社のテ クノロジー基盤を利用して、ヘルスケア産業における情報管理の変革推進を支援していきます。 米国以外では、より基礎的なインフラが政府の投資対象に選ばれるでしょう。イラクでは同国 の電力供給再開のかなめとなるタービンを 30 億ドルで受注しました。順応性の高いテクノロジー を誠意ある価格で提供する予定です。インドと南アフリカ共和国では 50 億ドル相当の機関車の受 注を進めています。これらはエネルギー効率、運輸、環境対策といった国家目標を満たすのに不 可欠なプロジェクトです。中国では国産の商用航空機を開発している中国商用飛機(Commercial Aircraft Corporation of China)と提携することになりました。新たなビジネス機会が数多く得 られるものと予想しています。ロシアとカタールでは政府と提携して医療の向上に努めています。 これらの事業では 10 億ドル規模の成長が期待できます。 各国政府の投資は、このほかにも国内経済刺激策や社会問題解決方法、雇用の創出などが対象 になると思われます。幅広い事業ポートフォリオと高い専門技術を備える GE は、こうした問題を 抱える国々から自然な流れによってパートナーに選ばれる立場にあります。国家と共同で重要な問 題に取り組むには、その国の企業や政府、その社会とチームワークを組み、互いに尊重し合うこと が必要です。私たちはそのようなノウハウを持つからこそ、重要な課題を解決するうえで大きな役 割を果たしていきたいと考えています。 より事業を絞り込んだGEキャピタルへ マイク・ニールが率いる GE キャピタルの金融事業は、2008 年におよそ 90 億ドル利益を上げました。 世界が信用危機に見舞われるなかで、彼のチームは流動性の改善や資本基盤の強化、コスト削減、 損失管理などの対応を迅速に行いました。 投資家の方々から「金融サービス部門からの利益貢献度は何 % を目標にしていますか」とたずね られると、以前は「50% に満たないぐらいです」とお答えしていました。しかし今後は 30% 程度 となります。このような形で設定目標を変更するとは思ってもみませんでしたが、いずれにしても 現在は産業分野により比重をかけた事業ポートフォリオになっています。 信用バブルが生じていた時期には、私たちもやはり何らかの部分でエクスポージャーが過大になっ ていたのでしょうか。いくつかの分野では、そうであったかもしれません。今となっては、商業用 不動産や英国の住宅ローンへのエクスポージャーが少なかったならと悔やまれます。 多くの金融機関ではストラクチャード・インベストメント・ビークル(SIV )や債務担保証券(CDO)、 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などへの投資で何兆ドルもの価値が失われました。しか し GE は厳格なリスク管理方針を遵守していたことが幸いし、これらの金融商品の市場には関与し ませんでした。さらに、2000 年代初頭に保険事業から撤退して 1500 億ドル相当の資産を処分す る決定を下していなかったなら、今よりもはるかに不安定な状態に陥っていたことでしょう。 サービスはお客さまに価値を提供するため、景気後退期のほうが堅調 です。サービスの価値は 2 つの流れから生み出されます。1 つはシステ ム性能の改善や省エネによる効率性の向上、もう 1 つはプロセスの改 善やデータ管理による生産性の向上です。 ge 2008 annual report 5 GE は従来から企業や消費者、各種プロジェクトに十分な流動性を供給しています。2008 年第 4 四半期には総額 480 億ドルの新規融資を提供しました。2009 年にも 1800 億ドル程度を融資する 予定です。また GE は世界中で、中規模企業向けファイナンス市場において主導的役割を果たして います。航空機や医療、運輸、エネルギーなどのインフラ産業において、引き続き多くのお客さま を支援していきます。 GE は、すでにノウハウがある分野や、所有、管理している資産を引き続き主体としていきたい と考えています。融資やリースの引き受けはすべて自社基準に従い、特別な事情がない限りは順位 が優先される貸し手として担保を確保します。また、こうした資産は現在の景気サイクルが終了す るまで保有する用意ができています。 同時に、金融サービス事業をより絞り込み、特化されたセグメントに転換しようと図っていると ころです。エネルギー、航空、ヘルスケアなどに関する GE の専門的ノウハウが活かせる中規模企 業向け融資は、事業の中核として今後も継続していきます。そのほかにも、GE 傘下の金融機関や 合弁事業を通じたグローバルでの消費者金融、不動産など、一連の堅調な事業は継続させます。 一方、今後数年で縮小が予想される設備・機器サービス事業、大半の個人向け住宅ローン事業、10 余りの規模不十分な個人・法人向け事業などの非戦略的資産については、慎重に検討することに なるでしょう。こうした判断を進めていけば、中核事業の運営に焦点を絞ることができるとともに、 預金基盤の拡大による自己調達で資金が賄えるようになります。 金融サービスで目標とする収益率はおよそ 15% です。GE の金融サービス事業モデルが有効であ ることを、私たちは今も確信しています。GE には世界中に 1 万を超えるオリジネーターがいますが、 いずれもお客さまのことを銀行よりも深く理解しています。それは、GE がさまざまな産業にプレゼ ンスを持っているからです。長期的に見れば、金融サービス事業は利益の伸びを推進できると信じ ています。 競争優位性の維持 GE は 130 年にわたって成長を続けてきました。数えてみると、その間に 9 回の景気後退期と 1 回 の大恐慌をくぐり抜けています。現在のような景気後退期にも業績を伸ばすことができるのは、私 たちが実行する力と変革する力を備えているからです。私たちは今後も、長期にわたって強固な競 争優位性をもたらすイニシアチブに投資していきます。 私たちの戦略 これまでの伝統の中で培った強みを、GE はグローバルビジネスの新時代に適応できる形に変えていきます。 グローバル化 イノベーションの促進 関係構築の強化 強みを活かす Be Global Drive Innovation Build Relationships Leverage Strengths 地域に根ざすと共に、 テクノロジーとコンテンツを 世界各地でお客さまや GE の規模、専門的ノウハウ、 グローバルの強みを活かす 革新して世界をリードする パートナーとの関係を育てる 財務力、ブランド力を活かす グローバル化:米国以外での売上高は、過去 10 年間に年平均 13% の率で伸びてきました。2009 年にはこの伸び率が、米国内の売上高の伸び率を上回るものと予想されます。こうした世界規模 での成長は、GE に競争優位性をもたらします。私たちは「地域に密着し、適応する」アプローチを 追及し、当該地域での製品ラインの拡大、新しいお客さまへの奉仕、地域の有力企業との強固な 提携関係の構築などを通じて成長を促進しています。GE が事業を展開している 25 の国々ではいず れも 10 億ドル以上の売上高を達成しており、成長を推進するためには各地域のチームへの権限委 譲が不可欠です。 さまざまな地域に進出すると売上高やリスクも多様化するため、現在のような景気後退局面に おいては重要な意味を持ちます。たとえばヘルスケア部門の画像診断装置事業は、お客さまが予 算削減に懸命に取り組んでいる米国内では業績悪化が予想されます。しかし人口急増が見込まれ る米国以外のヘルスケア部門では売上高が 90 億ドルに上っており、これが米国での不振を補うと 考えられます。 6 ge 2008 annual report イノベーションの促進:2009 年には前年と同規模の 100 億ドルをテクノロジーとコンテンツに投 資する予定です。2000 年以降の製品テクノロジーへの投資額はほぼ 500 億ドルに上ります。また 2009 年には割安な「バリュー製品」を市場に投入します。そのひとつが 2.6 メガワット風力タービ ンです。従来の製品に比べて効率性に優れて電力供給能力が高く、しかもコストが低減できる製品 です。 革新的な製品の開発には引き続き力を入れていきます。その一環として、GE ではデジタル病理 学関連のベンチャー企業を設立しました。この分野は今後 20 億ドル規模の市場に成長すると予測 されます。また、NBC ユニバーサルとニューズ・コーポレーションの合弁で hulu ™ を立ち上げま した。これはデジタルコンテンツを配信する革新的なインターネットサイトであり、YouTube ™ に対 抗するものです。さらに、GE のハイブリッド機関車の動力源となるバッテリー技術には 1 億 5000 万ドルを投資しました。このように、イノベーションへの投資は景気後退期においても継続してい きます。 関係構築の強化:GE は数多くの合弁関係や提携関係を結んでおり、これにより世界規模での成長 とリスク分散が促進されます。幅広く事業を展開しているため、各国の政府や大規模投資家から は好ましいパートナーとみなされているようです。その主な例が、2008 年北京オリンピックの際の 目覚ましい成果です。北京大会には多くの GE 事業が関わっており、全体で 20 億ドルの売上を達 成するとともに、中国での関係構築も進展しました。 2008 年にはアラブ首長国連邦アブダビにある法人向け投資機関ムバダラとの、法人向け融資 での合弁や再生可能エネルギー関連プロジェクト、アブダビにおける研修センターの設立など、広 範な分野での提携を発表しました。ムバダラは GE の大株主の上位 10 社に入ることが見込まれて います。 強みを活かす:GE には内部成長や卓越した経営、リーダーシップの育成に的を絞ったコア・プロセ スがあります。このコア・プロセスの目的は、GE 全体にベストプラクティスを広めることにあります。 私たちは産業分野の内部収益成長率や利益率、総資本利益率、従業員 1 人あたりの売上高で 見た収益性といった共通の指標をもとに、業績の伸びを他社と比較しています。下のグラフは競 合する世界有数の企業数社と GE との比較を示しています。これを見ると、GE が優れた業績を上げ ていることはおのずと明らかです。 さらに、社員やリーダーシップの育成には引き続き年間 10 億ドルを投資します。GE はチームを 大切にします。今後も視野の広い、競争に耐え抜くグローバル・リーダーの育成に努めていきます。 2008 年の産業分野の 2008 年の 2008 年の利益率 内部収益成長率 (%) 2008 年の従業員 1 人あたりの売上高 総資本利益率 8 (%) 14.6 15.6 (%) 14.8 (単位:1000ドル) 566 12.1 294 4 GE GE GE GE 競合企業 競合企業 競合企業 競合企業 競合企業には以下の企業が含まれます:ワールプール、ディズニー、ニューズ・コーポレーション、ユナイテッド・テクノロジー、 ハネウェル、シーメンス、フィリップス、ABB、ロールスロイス、アルストム リセットの好機 現実を直視しましょう。GE は私たちの目標である「健全で信頼性の高い」成長企業ではなくなった ために、そのレピュテーションに傷がついてしまいました。私はその責任を受け入れます。しかし、 現在の状況は千載一遇の好機であるとも思っています。GE の中核部分をリセットし、私たちが得意 とする分野に焦点を絞る良い機会です。業績に対する予測を見直し、よりムダを省くために必要な 変革に着手できます。 GE は、現在は過小評価されているものの、不変の強みを数多く持っています。GE はリーダーシッ プ・ビジネスと献身的なチームを備えています。また、長年にわたり S&P500 企業を上回る利益を 達成してきました。それは 2008 年においても同様です。 ge 2008 annual report 7 リセットが必要な分野の 1 つは、金融サービス事業です。2000 年代初期には、金融サービス事 業の利益は産業分野事業での利益と同じバリューションでした。現在、金融サービス事業のバリュ エーションは低下しています。結局のところ、金融サービス事業が全体の利益の 50% を占めると いうのは、割合が高すぎたのです。私たちはこの事業をより小規模で変動の少ない、 「GE のコア」 と結びついた事業にリセットしたいと考えています。 また、GE に関する情報の伝え方を考え直す機会でもあると判断しました。それを受けて今後は、 年間の事業見通しだけをお知らせし、四半期ごとの詳細な予測は発表しないことにしました。私 たちは常に透明性を維持しようと努めてきましたし、詳細な情報やデータを豊富に提供して、社内 の経営の様子を社外に伝えようとしてきました。この姿勢は今後も変わりません。ただ、長いサイ クルを持つ事業であることから、投資家の皆さまには長期の業績に注目していただきたいと思って います。 2009 年に向けて、私たちはより綿密な戦略策定プロセスやシナリオプラニングを実施する体制 を整えました。そのために、オペレーティング・ミーティングの回数を増やし、アジェンダを変更し ました。また各事業において、それぞれの業界の「いつも反対する、悲観的な見方をする人々」を 見つけ出すプロセスを確立させ、その声が確実に GE 内部に届くよう図りました。GE 全体では、経 営幹部から一般社員までが、互いの意見をより批判的に、しかし敬意をもって傾聴しなければなり ません。 私は自分の国に関しても、何がしか思うところがありました。私はグローバル企業を経営してい ますが、米国民です。30 年ほど前から、 「米国はテクノロジーと製造のリーダーからサービスのリー ダーに進化する」という説がもてはやされてきました。私は、この説はまったくの誤りであると信 じています。結局はこうした考え方が、商業を支える部門であった金融サービス産業を、実体経済 とは無関係に繰り広げられる複雑な取引市場に変えたのです。本来の工学は、金融工学に取って 代わられました。その果てに、米国の企業も政府も、多くの地域のリーダーも、国家が何によって 発展するのかを見失ってしまったのです。国家が、イノベーションへの情熱によって発展することを。 イノベーションへの情熱を育てるには、勤勉と規律と創造的思考を身につけさせる教育システム が必要です。また、イノベーションを実現する能力はふたたび重視されなくてはなりません。新た なテクノロジーを発見し、生産性の高い製造業の基盤を築く必要もあります。米国の貿易赤字は、 この国がいかに弱体化しているかを物語っています。米国は世界各国からの債務を減らさなければ なりません。GE は今後も世界のトップに立つための投資を続けていきますが、強い米国でトップを 占めることがすなわち、世界のトップを意味するのであってほしいものです。 GE は、この中で重要な役割を担っていきます。GE は何よりもまず、テクノロジー企業です。お 客さまのために革新的なソリューションを開発できるよう、今後も研究開発への投資を増やしてい きます。また、競争に打ち勝てる学生を一人でも多く送り出せるよう、引き続き世界各地で教育シ ステムの改善に投資していきます。 GE の社員は、人生にはお金もうけ以上のことがあると、熟知しています。世界を変えたいと考 えたからこそ、GE に入社したのです。そして今、そのことがかつてないほど重要な意味を持ってき ています。 「こうした考えに驚くような 現在の経済危機はまたとない挑戦の機会です。GE のリーダーには、 者は初めから GE に入社していないはずだ」と言っています。危機に直面してますますエナジャイズ され、将来に向けて GE を変革する作業に加わりたいと願うリーダーであるならば、GE の一員であ ることに今ほど胸の躍るよう時期はないでしょう。 GE はこの危機を乗り越え、より優れた企業に生まれ変わります。皆さまの GE チームは、すで に腰をすえて、目の前のやるべき仕事に専念しています。私たちの取り組みを支援し続けてくださっ ている投資家の皆さまには、心から感謝を申し上げます。そして GE への投資を検討している方々 には、次のように申し上げたいと思います。今こそ、GE に投資する時です! Jeffrey R. Immelt ジェフリー・イメルト 会長兼 CEO 2009 年 2 月 6 日 8 ge 2008 annual report www.ge.com/ar2008 こちらのウェブサイト(英語版)では、さらに詳しい財務データをご報告しております。 詳細データを掲載した英語版アニュアル・レポートの PDF もダウンロードいただけます。 日本 GE 株式会社 〒107-6117 東京都港区赤坂 5-2-20 赤坂パークビル 03-3588-5280 (大代表) www.ge.com