2010年度日本語版

GE R
E VE
NUE
GROWTH STARTS HERE.
LD
WOR
1892
2010
TION
UL A
POP
GE 2010 Annual Report
目次
1
9
28
29
136
株主の皆さまへ
事業概要
取締役会
財務報告
企業情報
2010 SUMMARY
財務および戦略のハイライト
連結売上高
(単位10億ドル)
2006
2007
172
2008
2009
2010
155
150
182
151
15%
成長軌道への復帰
規律ある事業執行により継続事
業の利益は 15% 増加
20%
イノベーションへの投資
2010 年には研究開発(R&D)
費を 20% 増額
継続事業による利益
(単位10億ドル)
2006
2007
2008
2009
2010
22.4
19.3
18.0
10.9
12.6
790億ドル 1,750億ドル
財務の柔軟性
2010 年期末時点の連結ベースの
現 金・現 金 同 等 物は 790 億ドル、
現金は 190 億ドル
過去最高の産業部門受注
残高
設備とサービスの大幅な受注
増により、受注残高は過去最
高の 1,750 億ドル
営業活動によるキャッシュフロー
(単位10億ドル)
2006
2007
23.8
23.3
GE金融サービス
部門(GECS)
の配当*
産業部門の
2008
2009
2010
19.1
16.4
13.9
16.0
16.8
14.7
CFOA
利益成長率
GE
S&P500企業
米国製造業の雇用数
GE は過去 2 年の間に、景気後退
の打撃が特に大きかった地方を中
心に、米国製造業の雇用を新たに
6,300 人以上創出すると発表
*2009年と2010年にGECSは無配
(単位10億ドル)
6,300人 24%
2006
2007
2008
2009
2010
11%
15%
16%
(6)%
(20)%
(21)%
(39)%
(7)%
15%
38%
40%
株主への貢献
2010 年には 2 回 の 増 配により、
併せて年初来 40% の配当引き上
げ
表紙について
GE の製品・サービスの提供は世界全体の
ヒューマン・ニーズと成長機会と連動してい
ます。 GE の売上高は、過去 118 年にわた
る世界人口の増加を上回るペースで伸びて
きました。
株主総利回り
2010 年 における 株 主 総 利 回り
(TSR)は 24% 増加し、S&P500 企業
の平均を 9 ポイント上回る
170億ドル
米国からの輸出額
2010 年には米国製製品の海外売
上 高 が 合 計 170 億 ド ル と なり、
2001 年における米国からの輸出水
準の 2 倍以上に
注:本冊子内の各実績値は、
特に断りのない限り継続事業による実績を表します。
投資家の皆さまへ
成長のスタート地点
大恐慌以後最悪の経済状況に立ち向かっていた 2008
年のアニュアルレポートでは、世界経済のリセットについ
て触れました。 2009 年には GE のリニューアルについて
語り、回復途上にある世界経済において GE の優先課題
を明らかにしました。
2010 年には成長が再開され、収益は 15% 伸びました。
GE キャピタルの収益は急回復しました。 2 度にわたり増
配を実施し、併せて 40% の引き上げとなりました。 株
価もこうした状況を十分に反映して年間で 21% 上昇し
ました。 2011 年以降はさらなる前進が GE の目標となり
写真左から
(*seated)
ジェフリー・R・イメルト
取締役会長兼CEO
マイケル・A・ニール
GE副会長
GEキャピタル・サービス会長兼
CEO
キース・S・シェリン
GE副会長兼CFO
ジョン・G・ライス*
GE副会長
グローバル・オペレーションズ
社長兼CEO
ジョン・クレニキJr.
GE副会長
エナジー社長兼CEO
ます。
GE 2010 ANNUAL REPORT 1
投資家の皆さまへ
2 年前に世界経済が破綻の淵に沈んでいるとき、私は GE が従
厳しい景気状況にもかかわらず、GE は R&D への投資を毎年
前以上の会社として景気後退から立ち直ることをお約束しまし
拡大してきました。 R&D 費は 2008 年から 2011 年までの間に
た。そしてそれが果たせたと考えています。 財務業績は急速に
伸び、これまで競争上の強みを拡大しながら成長に向けて投資
54% の伸びを見込んでいます。長期的視野に立って投資する一
方、非中核的分野の経費削減を進めています。 今後、GE の歴
してきました。また、リーダーシップと企業文化を強化しました。
史上かつてないほど有力な新製品群を市場に送り出す準備が
2011 年の時点で目の前にある世界は改善に向かっています。
整っています。
日々、景気回復の兆しが現れています。 経済の新時代に入って
GE はポートフォリオを簡素化しました。セキュリティ事業を売
いるため、必ずしも「すべてに満足」できるわけではありません。
却し、NBC ユニバーサル(NBCU)をコムキャストとの合弁会
世界全体が同じペースで成長してはいないのです。ブラジルや
社とし、さらに GE キャピタルの非中核的資産の一部を手放しま
インドなどの発展途上市場が急成長する一方、多くの先進諸国
した。これらの活動により、
多額の手元資金が生み出されました。
はペースの遅い成長や財政上の制約に対処しようとしています。
その結果、世界経済が回復する中で著しい財務の柔軟性を備え
各国政府は積極姿勢を強め、高い失業率から医療費高騰、イン
るに至っています。
フラの崩壊に至る諸問題に立ち向かっています。
GE の価値は各部門の合計を超えてい
ます。 GE は革新的な、先端技術のイ
ンフラストラクチャーと金融サービスの
企業であり、お客さまと社会のために
困難な世界的問題を解決するだけの規
模と資源と専門能力を備えています。
GE は競争力に優れた変革の担い手です。
変動の激しさが常態化しています。景気回復につれ、コモディ
ティ費用が増大傾向にあります。 地政学的リスクも高まっていま
す。エジプトやギリシャなどの国々の混乱は、
今すぐにでもグロー
バル市場を揺るがすおそれがあります。
伝統的な景気サイクルは短期化し、細分化されるでしょう。
短期的変動が長期的成長の妨げになるとみられます。こうした
環境にあって、企業は機敏性と生産性を維持しつつ、成長のた
めに投資する必要があります。
危機的状況に GE が下した判断は適切であり、それが今、投
資家の皆さまに貢献しています。 GE は、危機を乗り切り、強固
な事業モデルを維持するために GE キャピタルへの投資を実施し
ました。 そのためには、2008 年の増資や 2009 年の減配など
苦渋の措置が必要でした。しかし今日では、金融サービス部門
は競争優位性を備えるに至り、好調な利益成長によって投資家
の皆さまに報いています。
以上のような措置に伴い、GE は成功を目指す体制を作り上げ
ています。
競争力のある企業
21 世紀の企業は二つの役割を担う必要があります。 投資家の
皆さまに堅調な利益をもたらすと同時に、積極的な変革の担い
手とならなければなりません。 GE はどちらの役割も果たしてい
ます。
GE の価値は各部門の合計を超えています。GE は、
革新的な、
先端技術のインフラストラクチャーと金融サービスの企業であ
り、お客さまと社会のために困難な世界的問題を解決するだけ
の規模と資源と専門能力を備えています。 GE は競争力に優れ
た変革の担い手です。
財務は健全かつ強固です。 2010 年末時点で現金は 790 億ドル
に達しています。これまでも変動の激しい時期を通じて安全性を
確保してきました。 GE の事業モデルは成長への投資とフリー ・
キャッシュフローの創出を同時に可能とするものです。
GE は大規模なイノベーションを実現しています。世界の航空機
の半分以上が GE 製エンジンを搭載しています。ジェット・エン
ジンは技術と製造の粋を集めた機械です。 過去 10 年の間に軍
事航空と民間航空のお客さまのために 100 億ドル以上を R&D
に投資してきました。 GE の新型エンジンは、競争相手の類似エ
ンジンに比べ燃費効率が大幅に向上しています。 GE は、使用さ
れている何千ものエンジンの性能パラメータを追跡調査し、お客
さまの成果向上のためにその情報を活用しています。 大規模な
イノベーションを実現する能力は GE の技術の厚みと規模によっ
て支えられています。抜きん出たこの能力が、お客さまの満足と
社員の誇り、そして財務業績の源泉となっています。この点で肩
を並べる企業は世界にほとんどないと思われます。
GE は社員、顧客、政府および投資家のためにグローバル化を「現
実のもの」としています。 2011 年には売上高の約 60% が米国
以外の地域で占められ、その比率は今後も増加する見通しです。
2 GE 2010 ANNUAL REPORT
投資家の皆さまへ
企業価値
主導的地位にある事業ポートフォリオ
財務の健全性
大規模なイノベーション
安全重視のグローバル投資企業
インフラ
ストラクチャー
競争力に優れた企業文化
専門金融
GEは革新的な、先端技術の
インフラストラクチャーと金融サービスの
企業であり、
お客さまと社会のために
困難な世界的問題を解決すると同時に、
世界有数の業績を達成します。
変革の担い手
GE は法令遵守の企業文化を構築し、グローバルな投資企業と
ンのためのアイデアを募りました。 4,000 件を超えるアイデアが
して信頼されるパートナーとなっています。輸出は米国有数の規
寄せられ、エネルギー効率における GE のリーダーシップ拡大に
模に達し、2010 年には中国とロシアで大規模なベンチャーを設
資する 20 社の新興企業と起業家に資金提供することになりました。
立しました。それに伴い、エネルギー、アビエーション(航空)、
ヘルスケア、輸送の諸部門の成長加速と、両国における重要な
インフラの提供が見込まれています。 GE 独自の多様性と法令遵
守重視の企業文化はグローバル化の大きな強みとなっています。
GE は競争、製造、業務執行の方法を心得ています。生産性と
リスク管理の強力な企業文化を作り上げています。 業績改善の
プロセスに関するアイデアを常に全社的に共有しています。これ
まで製造のサイクルタイムを短縮し、生産性を高めてきました。
グローバル化を進めながらも米国への投資を実現してきました。
2009 年以降、米国の製造業で 6,300 人の雇用を創出すること
を発表しました。同時に、
世界各地に生産能力を構築しています。
GE は、低賃金の労働ではなく人間のイノベーションを原動力と
する将来に向けた体制を整えています。
GE は、お客さまと社会に貢献する変革を担っています。これま
でも、エコマジネーション(ecomaginationSM) のイニシアチ
ブを通じてクリーン・エネルギーへの長期的注力を持続してきま
した。 2010 年に米国のエネルギー政策の不透明性が続くこと
が明らかであったときも投資を継続しました。主眼の一つは、ス
マートグリッド技術の開発をリードすることにありました。この目
的に向けて、2 万 5,000 台の電気自動車の注文計画を発表しま
したが、この種の購買としては過去最高の規模でした。これによ
り、GE 技術に基づく電気自動車のインフラ構築に向かって大き
な一歩を踏み出しました。また、
「スマートグリッドの課題(Smart
Grid Challenge)」を主催し、クリーン・エネルギーのソリューショ
一部には企業への懐疑的な見方が残っています。また、将来
への希望よりも憤りが優ることの多い時代となっています。にも
かかわらず、GE は競争力のある成長企業として変革の積極的
な担い手となってきました。
財務業績の加速
GE の利益成長は S&P500 企業を上回るとみられます。 GE は、
業界他社や他の投資対象に比べ魅力的な配当利回りの実施を心
がけています。 現在、過去の平均に比べ多額の現金を保有し、
レバレッジは低水準となっています。 GE は、市場を上回るバリュ
エーションをもたらす収益の質の改善に努めます。
2010 年度に再開した利益成長は 2011 年度も続く見通しです。
2010 年度には予測通り、GE キャピタルの利益が急回復しました。
その額は 33 億ドルに達し、2009 年度比で 2 倍以上増加しまし
た。好調な勢いは 2011 年度も続く見通しです。引き続き GE キャ
ピタルの事業縮小と焦点の絞り込みに全力を尽くす所存です。
この先数年、大幅な利益成長を見込んでいます。
金融サービスを巡る状況は大きく変化しています。 GE キャピ
タルは、他の金融サービス企業と同様、より厳格な規制を受け
ることになります。こうした動向に対する準備は 2 年前から進め
ており、新たな規制環境に対応する用意は整っています。たとえ
ば、財務の健全性に関する重要指標である Tier1 自己資本比率
はほぼ 9% で、現時点で規制当局が定めた「十分な自己資本
水準」である 6% をすでに上回っています。
GE 2010 ANNUAL REPORT 3
投資家の皆さまへ
2010 年度のインフラストラクチャー部門の利益は約 140 億ド
GE は今回の危機を乗り越える中で事業リスクを低減してきまし
ルでした。 2009 年度比横ばいの結果でしたが、2011 年度以
た。現在、バランスシート上に多額の現金を有し、コマーシャル・
降は世界経済の回復に伴い増加を見込んでいます。 2008 年度
ペーパーの残高を 60% 縮小し、レバレッジ率を 8 倍から 5 倍に
から 2010 年度までの期間に業界他社が 15% の減益となったの
引き下げました。 金融サービス業における最も対処困難な損失
に対して GE はほぼ横ばいを維持し、金融危機のさなかに他社
は過去のものになったと思われます。 GE は、ハドソン川の環境
を上回る業績を上げました。こうした安定性は、お客さまと投資
浄化のほか日本の金融サービス業における「グレー・ゾーン金利」
家の皆さまに向けた強力なサービスモデルの成果といえます。
の過払金返還請求に関連するリスクに備えるため、30 億ドル以
インフラストラクチャー事業は、業界トップクラスの事業基盤と
上の費用を計上しました。 従業員医療・年金プランに手を加え
魅力的な市場における競争力により、長期的成長に向けた体制
て長期的な競争力を高めました。さらに、将来に向けて、「テー
を十分に構築しています。グローバルなインフラ投資は 2015 年
ル・リスク(低頻度高リスク)」 事象に対する脆弱性を大幅に改
までに 4 兆ドルに達すると予想されます。GE はエネルギー、
石油・
善しました。
ガス、ウォーター(水処理)、ヘルスケア、航空、輸送および一
般消費者向け製品の分野で業界をリードする事業基盤を築いて
います。
GE は今後、高水準の利益率と利益額により、世界経済を上
回る内部成長を維持する見通しです。インフラストラクチャー部
門は資本効率が高く、投資必要額を上回る多額の現金を生み出
しています。 GE は主要な経営指標の点で業界全体の上位 25%
に入っています。また、GE は売上高がほぼ 1,000 億ドルに達し、
世界屈指のインフラストラクチャー企業であり、最も高い収益性
を備えていると確信しています。
2010 年末時点で GE は 190 億ドルの
現金を保有していました。 魅力的な配
当の維持が最優先事項となります。 高
い配当利回りは大半の投資家の皆さま
の意向に沿うものであり、とりわけ低
金利環境においては高い魅力があると
思われます。
均衡のとれた規律ある資本配分は取締役会と経営陣の主要責務
です。 2010 年末時点で GE は 190 億ドルの現金を保有してい
ました。 魅力的な配当の維持が最優先事項となります。 高い配
収益の質は引き続き改善が見込まれます。 GE はインフラストラ
当利回りは大半の投資家の皆さまの意向に沿うものであり、とり
クチャー部門の収益が全体の 60 ∼ 70% の水準で推移すること
わけ低金利環境においては高い魅力があると思われます。
を目指しています。 適用税率は 2010 年に上昇し、2011 年に
過去 6 カ月間に総額約 80 億ドルとなる 5 件の買収を発表しま
も大幅に上がると予想されます。これらの要因は GE の企業価
したが、それによりインフラストラクチャー部門の成長加速が見込
値のさらなる増大につながるとみられます。
まれます。買収に対しては規律ある姿勢で望むつもりです。買収
2011 年には、将来の成長加速の支援要因となるいくつかの取
は、GE が精通した業界での競争力強化につながります。目標と
り組みに着手しています。 GE キャピタルの財務は健全な状態に
しては、資本コストを上回る利益をもたらす 5 億∼ 30 億ドル規
あり、2012 年には親会社への配当支払いが可能になると思われ
模の案件への投資を目指します。このような投資の拡大を通じ
ます。インフレが懸念要因となっていますが、その脅威を打ち消
て投資家の皆さまの利益に貢献します。
すために原材料生産性と価格設定に関わる資源を拡充しました。
今後も、2008 年の金融危機のさなかに発行した優先株式を
現在、航空部門は R&D 投資が特にかさむ時期にあり、2011 年
含め、株式の買い戻しを継続します。 買い戻しは利益に基づき
の利益は横ばいにとどまる見込みです。しかし、同部門の受注
状況に応じて実行しますが、徐々に浮動株を縮小していく予定で
残高は過去最高水準にあるため、2012 年には再び利益成長軌
す。
道に戻るとみています。
GE の事業ポートフォリオは景気サイクルを通して投資家の皆さ
まに貢献できます。すなわち、サイクル初期には金融事業の収
益が急回復します。サービス事業はサイクル全体を通して着実
な成長を遂げます。さらに、インフラ設備はサイクル後期になっ
て成長します。皆さまの投資テーマがどのようなものであれ、GE
のこの先数年の見通しは良好といえます。
4 GE 2010 ANNUAL REPORT
投資家の皆さまへ
GE成長の必須課題
1
2
3
4
5
6
卓越した
新製品の
サービスと
ソフトウェア事業の
成長市場に
おける
中核事業を
基礎とした
専門金融に
おける
お客さまと
社会のための
発売
成長
主導的地位
業容拡大
価値創出
問題解決
重要な成長テーマで主導的地位
サービス事業を拡大する機会が訪れています。この事業では、
私たちは、新興市場の成長、より身近な医療、クリーン・エネ
売上の約 90% がインストールベースのお客さまに集中していま
ルギーなど、今日の社会で特に重要なテーマに投資する体制を
す。一方、お客さまはより広範なソリューションを求めています。
整えました。GE 内部では、
イノベーション、
お客さまのニーズ、
サー
GE は、ソフトウェアの事業基盤を、ワークフロー、分析、シス
ビス、ベストプラクティスの統合に焦点を絞ることにより、「プロ
テム統合における新分野へと拡大することを計画中です。 従来
セスとしての成長」という位置づけを行っています。 GE は次の
から精通しているインフラストラクチャー市場には、ソフトウェア
ような 6 つの成長の必須課題に取り組んでいます。
とサービスの分野でおよそ 1,000 億ドルの機会があると判断して
卓越した新製品の発売。 GE の技術的リーダーシップは投
資の拡大、優れた人材、イノベーションのモデルによって支えら
1
れています。 GE はイノベーションに際して、お客さまにとって重
要な問題の解決、連携を通じた事業能力の拡大、あらゆる価格
帯の製品の設計に重点を置きます。そして、常に競争相手より
も先に技術投資を実施すべく努力しています。
ヘルスケア事業は、GE 全体でなされている取り組みの好例で
す。 2011 年には同部門で 100 ものイノベーションを市場に送り
います。
現在、インフラストラクチャー部門のソフトウェア事業では、ヘ
ルスケア情報技術、スマートグリッド、列車運行立案、エンジン・
モニタリング、工場生産性などの諸分野において 40 億ドルの売
上高があります。それらのプラットフォームへの投資によって、急
成長を実現し、お客さまにとってさらに身近になることが可能とな
ります。
出す予定です。その中には、分子イメージングや低線量 CT に
成長市場における主導的地位。 GE の産業部門は世界の主
要な成長市場で 300 億ドルの売上があり、過去 10 年間に毎年
おける重要な最先端製品が含まれています。また、コンパクトな
10% 以上伸びてきました。
超音波・四肢専用 MR 製品により新分野を開拓します。 GE は、
コモディティ価格の上昇に伴い、GE が「資源潤沢」地域と区
3
より身近なイノベーションに力を入れており、有望な成長潜在力
分する国々のお客さまのニーズも拡大しています。 GE は、中東、
を持つ高利益率の製品を低価格で新興市場に投入してきました。
アフリカ、カナダ、オーストラリア、ロシアおよびラテンアメリカに
ホームヘルスの分野では、インテルと共同で新たな独自製品を
おける成長を加速させるため、引き続き長期的投資を行っていま
取り扱うベンチャーを立ち上げました。新市場への参入も試みて
す。 中国やインドなどの「新興アジア」 市場と区分される国々
おり、病理学の分野で自動化ツールや診断ツールを提供してい
では、10 億人以上の人々が中間層を形成しています。今後数年
ます。 他のインフラストラクチャー市場と同様、ヘルスケア分野
にわたり、インドや中国に的を絞った製品を増やしていく予定で
における長期的成長も、利益率の高い多彩な新製品群の開発に
す。そのことにより、お客さまのニーズを満たす上で適切な技術
よって牽引されています。
が生み出されると期待されます。
サービスとソフトウェア事業の成長。 サービス事業はインフ
ラストラクチャー部門の収益の 70% を占めています。 現在、こ
な関係を構築しています。これを「企業・国家間(Company-
2
の事業では利益率の高い受注が 1,300 億ドルあり、2011 年に
は同事業の売上が 5 ∼ 10% 伸びる見通しです。サービス契約
を通じてインストールベースのお客さまに新技術を提供し、その
生産性を高めることによって、お客さまの所有コストの低減を図っ
ています。
GE は広範な事業ポートフォリオを活用して、成長市場で強固
Country)」アプローチと呼んでいます。このアプローチの好例
はブラジルです。 2010 年 11 月、GE はリオデジャネイロに世界
で 5 番目のグローバル・リサーチ・センターを開設することを発
表しました。また同じ日に、エネルギー、石油・ガス、ヘルスケア、
輸送、航空の諸分野にわたりブラジルの製造業に投資すること
GE 2010 ANNUAL REPORT 5
投資家の皆さまへ
を明らかにしました。 GE はこうした広範囲の事業能力に基づき、
り、個人向けファイナンスなどの事業で競争優位性がもたらされま
より良いサービスをブラジルのお客さまに提供できると同時に、
す。つまり、GE は資金の利用以上のものを提供できるわけです。
米国からの輸出拡大も可能となります。 加えて、社員や仕入先
GE キャピタルは中小中堅企業にサービスを提供する主要窓口
のトレーニング、お客さまへの情報提供にも力を入れています。
となっています。 GE はそれらの企業と連携し、その成長と成功
こうした取り組みにより、GE はブラジルの経済発展で主導的役
に投資しています。GE は GE キャピタルと堅く結び付いています。
割を果たしています。
危機のさなかには、金融サービスへのエクスポージャーが投資
中核事業を基礎とした業容拡大。 2010 年には、2000 年
時点で参入していなかった事業から 200 億ドルの売上を生み出
4
しました。インフラ周辺事業への投資とその成果は、GE にとっ
てコア・コンピテンシーをなします。この先 10 年の間に新市場
でさらに 200 億ドルの売上を実現するつもりです。
その目標のために、20 を超えるインフラ周辺事業をすでに立
ち上げており、その育成の途上にあります。各事業は少なくとも
10 億ドルの売上が可能であり、中には 100 億ドル以上に達する
事業も現れると見込んでいます。 中核事業の拡大を通じて、成
長が加速されると同時に、より強力かつ多様化された事業モデ
ルが構築されます。
たとえば、2011 年には薄膜太陽エネルギー技術への設備投
資を拡充します。グローバル・リサーチ・センターの努力の結果
として、GE 製パネルはこの技術で過去最高となる 12% 超の効
率性を実現しています。 今後数年内には、エネルギー事業の大
きな実績をはしごにして、相当の市場シェアを獲得できると予想
しています。この事業の売上高は数十億ドル規模に達する可能
家の皆さまの懸念要因となりました。 将来的には、専門金融に
おける主導的地位が成長への新たな道筋と競争力の向上につな
がるでしょう。 GE キャピタルは、より小規模で事業内容を絞り込
んだ、競争力のある会社として、投入した以上の資本をこの先
GE にもたらすことでしょう。
GE は、20 を超えるインフラ周辺事業
をすでに立ち上げており、その育成の
途上にあります。 各事業は少なくとも
10 億ドルの売上が可能であり、中には
100 億ドル以上に達する事業も現れる
と見込んでいます。 中核事業の拡大を
通じて、成長が加速されると同時に、
より強力かつ多様化された事業モデル
が構築されます。
性があります。
GE は、石油・ガス事業のように、時間をかけて大規模な世界トッ
プクラスの事業を作り上げます。石油・ガスは、設備投資と的を
6 お客さまと社会のための問題解決。 GE は、クリーン・エネ
ルギーや身近なヘルスケアなどの困難な問題を解決しつつ、お
絞った買収を通じて、約 10 年のうちに 100 億ドル規模の事業
客さまとの緊密な関係を構築することに基づいてそのブランドを
に成長しました。この事業では、エネルギー、航空、ヘルスケア
築き上げてきました。 GE は、重大な社会的問題を解決すると同
の諸事業の技術能力と世界的な流通体制が活用されています。
時に利益を上げることが可能であると理解しています。また、お
石油・ガス事業の大手のお客さまには、GE なら複雑なプロジェク
客さまは、より大きな実益に結び付くからこそ GE 製品を買って
トの執行であっても依拠できるとの信頼をお寄せいただいていま
くださるものと考えております。
す。
5 専門金融における価値創出。 2011 年の主要な優先課題は
GE と GE キャピタルの関係の明確化です。 GE キャピタルが、堅
調な利益成長、強力なリスク管理、GE への現金配当という点で
戦略的価値を有することは明らかです。
また、GE が産業と金融の両事業能力を併せ持つことに基づく
重要な強みも存在しています。たとえば、資産について卓越し
た知識を持つことが、航空機リース事業の成功につながっていま
す。 GE は中堅企業のお客さまと密接かつ強固な関係を構築して
いますが、そうしたお客さまは、GE の産業部門との間で経営改
善やベストプラクティスに関する情報を共有することを希望してい
ます。さらに GE は銀行に比べ、直接のオリジネーションや資産
管理という点で強力な業務上の強みを有しています。このことによ
6 GE 2010 ANNUAL REPORT
GE は、ヘルシーマジネーション(healthymaginationSM)
のイニシアチブを通じて、ヘルスケアのコストやクォリティ、アク
セスの問題に取り組んでいます。 現在、サウジアラビアの制度
改革に向けて同国保健省に協力しています。たとえば、GE と保
健省の共同チームは、手術室の対応能力を改善し、患者の待ち
時間を短縮するための「効率化」プロジェクトを実施しています。
遠隔地でもヘルスケアを利用できるようにする「移動診療所」
の開拓も推進中です。さらに、サウジアラビアや世界各国のヘ
ルスケア改善に向けて、技術革新やプロセスに関するスキルを
活用しています。
GE は以上のような 6 つの戦略的な成長の必須課題に取り組
むことにより、長期的な株主価値を創出する能力の点で主導的
地位に立っています。
投資家の皆さまへ
競争力あるリーダーの育成
GE のリーダーシップには決して変わることのない基本的条件が
せん。 今日の市場は以前より予測が困難ですが、GE のチーム
あります。それは、誠実性への注力、業績への注力、イノベーショ
はそれでも有言実行を求められます。リーダーには依然として競
ンへの注力です。それ以外は、世界の変化に応じてリーダーシッ
争相手をしのぐことが期待されます。シナリオに基づく計画が増
リーダーは変化に臆することなく任務を遂行しなければなりま
プも進化しなければなりません。
えており、リーダーは賢明かつ規律あるリスクテイキングを要求
GE のリーダーシップのモデルには、担当領域における高い専
されます。
門性と競争力、リーダーシップの開発、チームとしての遂行、グ
リーダーは謙虚な聞き手でなければなりません。 私たちは大
ローバルな再配置という主要な柱があります。私たちはリーダー
胆な投資を行い、
失敗から学びます。あらゆる源泉からのインプッ
シップに関する新しい考え方を求めて、絶えず外部に目を向けて
トを常に受け入れます。まさにチームとしての作業を通じてお客
います。そして、チームの教育に向けてかつてない規模の投資
さまにサービスを提供します。
を行っています。
リーダーはシステム的思考法をとる必要があります。そのため
GE のキャリア開発は深さを第一とし、広さは第二となります。
GE はこれまで常にゼネラル・マネージャー(総括責任者)を育
てる場となってきました。しかし今日の世界では「総括的」なも
のはほとんどありません。 結果を出すには業務領域に関する深
い知識が必要となるため、人々は一つの業務や職務により多く
の時間を注ぎ込みます。 加えて、上級エンジニア、上級会計責
任者、最高コンプライアンス責任者、グローバル・リスク責任者
などの職務には、大きな尊敬と報酬が付随します。
GE はリーダーシップの特性を現代化しました。 これまで数年、
外部を重視し、明確な思考、想像力と勇気、包容力、そして専
門能力という基本的特質を用いてきましたが、それを改めました。
この基本的特質に基づき、リセットされた世界で通用する性質に
ついて教育を実施しています。
には、社内外のサイロ(閉鎖的組織)を超えてアイデアを共有
する能力が求められます。 GE はこれまで常に、社内でベストプ
ラクティスを共有することに卓越していました。 社外においてシ
ステム的思考法を実践するためには、技術、公共政策、社会動
向、
そして GE の複数事業の人材を結びつける「水平的」イノベー
ションが必要となります。
また、GE のリーダーは大規模組織の起業家となる必要があり
ます。大規模組織を官僚主義の源ではなく、成長の促進要因と
する才能が求められます。 GE は機敏な大会社であることに独自
の強みを持っています。
私たちは下された決定に従って再配置を実行してきました。
2010 年に私は最上級の副会長の地位にあるジョン・ライスに
対して、香港に赴任してグローバル業務を指揮することを求め
ました。ジョンに続き、さらに多くの人材を新興市場に派遣す
る予定です。
リーダーシップのモデル
偉大なグローバル企業は決定を改めて企業文化の強化を図り
ます。 成長地域に住む最も偉大なリーダーは、経験と市場の知
識を生かしてより迅速な決定を下します。
GE は「連携的な実力主義」を指針とします。 言い換えれば、
担当領域における
高い専門性と
競争力
リーダーシップの
開発
最高の成績が最も尊ばれます。そして、実力主義のこの定義を
拡張して、すべての職務が重要であるという見方を組み入れま
す。 上級リーダーは、最前線の社員との連携を一層強化しなけ
ればなりません。
GE
世界のあらゆる国々で失業率が高い状況にあります。その結
果、雇用が社会的信用の決め手となっています。 雇用がなけ
れば、信用は − そして成長も − 阻害されます。 GE には費用
競争力が必要です。しかし同時に、最前線の雇用を創出し確
チームとしての
遂行
グローバルな
再配置
保する方法を考案しなければなりません。
GE は強力かつ統一的な企業文化を持っています。GE というチー
ムの全員が最も厳しい時期を耐え抜いたという事実に目を向け
る必要があります。そのことで私たちは進歩しました。 常に言っ
2010年のヘイグループ/ビジネスウィーク誌の投
票で1位となったリーダー育成
ていることですが、もし 1980 年代後半に GE アプライアンスで
3 年間を過ごしていなかったとすれば、私は GE の CEO にはなっ
GE 2010 ANNUAL REPORT 7
投資家の皆さまへ
ていなかったでしょう。それは楽しいというより、極めて苦しい時
技術、グローバル化、顧客サービスに大規模な投資を実施し
期でした。耐え抜くことが自信につながるのです。
ました。 R&D 費は過去 10 年で 2 倍に増え、今では産業部門の
GE のリーダー育成能力は引き続き外部から高く評価されてい
売上高の 6% に達しています。また、世界の成長市場で勝ち抜
ます。 2010 年には、ヘイグループとビジネスウィーク誌 の権威
くために人材と生産能力の再配置を推し進めました。 米国外の
ある投票でリーダー育成の「ナンバーワン」に選ばれました。
売上は過去 10 年で全体の 36% から 55% に増大し、さらに営
リーダーシップの究極の要素は、全体の利益のために尽くす
業チームの強化、マーケティング、お客さまの支援にも投資しま
という責務です。 私はその目的のため、オバマ大統領の要請に
した。 過去 10 年の間に、産業部門の利益全体に占めるサービ
より「雇用および競争力に関する大統領諮問委員会」の委員長
ス事業の比率は 30% から 70% に上昇しました。そして、
GE は「世
となることを承諾しました。安心していただきたいのですが、GE
界で最も価値のあるブランド」の第 5 位に位置しています。
の繁栄のため、これまで通り尽力することに変わりはありません。
GE は、財務の説明責任と長期的な思考法を必須とする企業
それと並行して、他の CEO や社会のリーダーと共に米国の競争
文化を増進しました。リーダーは、担当する事業の将来に投資
力とイノベーションの向上のために働くことになります。 私は競
する責任を自覚しています。それでも GE は厳しい競争を続けて
争力のある企業を経営しており、またこれまで通り、断固たるグ
います。 従業員一人当たり売上高で測った生産性は、2000 年
ローバリストでもあります。 GE は「民間企業」で、米国政府へ
比 50% 伸びました。 産業部門の利益率と利益額はハネウェル、
の売上は 4% にすぎません。しかし、
世界は依然として米国のリー
シーメンス、ユナイテッドテクノロジーなど他の大手企業を上回っ
ダーシップを求めており、私はそのお役に立つため、最善を尽く
ています。
す決意を固めています。
回顧と展望
GE の CEO として 10 年目に入りました。 振り返ってみれば、こ
の 10 年の大事件を誰もが予想していませんでした。挙げてみれ
ば、2 回の景気後退、9 月 11 日の悲劇、ハリケーン・カトリーナ、
世界各地の紛争、BRICS 諸国の興隆、金融危機、メキシコ湾の
原油流出事故などがありました。
私は素晴らしい企業を引き継ぎましたが、それでも、21 世紀
に勝利する体制を整えるためには、なすべきことが数多くありま
した。 高い評価にもかかわらず、プラスチック、メディア、保険
など、競争優位性を維持できない事業を抱えていました。 GE は、
メディアへのエクスポージャーを削減してインフラストラクチャー
に投資するという資本配分の決定を下しました。エネルギー事業
は、1990 年代後半に収益の大部分を「米国の電力バブル」か
ら得ていた後遺症で大幅な過剰生産能力を抱えており、その再
構築が必要でした。
GE は一丸となって取り組みました。最終的に、事業ポートフォ
リオの半分が有望ととらえられ、石油・ガス、生命科学、再生可
能エネルギー、航空電子工学、分子医学、水処理などのインフ
ラストラクチャー事業に投資しました。 GE は製造業としての筋肉
こうした変革にもかかわらず、過去 10 年の累積利益とキャッシュ
フローは、世界の企業の上位 10 位内に入るでしょう。
CEO という職は大きな反省を伴うことがあります。 私は過去
10 年のうちにいくつかの誤りを犯し、多くのことを学びました。
以前よりも逆境に強くなっています。この職をこなすためには、
日々改善することを要求する競争心に「燃える」ことが必要です。
今、かつてない強い意欲に燃えています。
ご説明したような変革を変動の激しい時期に実行するために
は、長期的投資家の皆さまにご辛抱いただくことを余儀なくされ
ました。しかし今日では、株価が過去最高水準にあった時点を超
える利益を上げています。 私の人生で最も厳しい時期は 2008
年から 2009 年にかけてでした。それは、GE や投資家の皆さま、
そして経済全体にとっても困難な時期でした。それでも私たちの
チームは投資家の皆さまと会社のために全力を尽くしましたし、
私たちは、危機を乗り越えて、より強力な企業となることをお約
束しました。そしてそれが果たせたと考えています。
GE に投資する多くの理由があります。常々、私自身について
現実的な楽観主義者であると述べてまいりましたが、現在、かつ
てないほど楽観的な見方に立っています。 行く手には GE にとっ
て最良の時期が待っています。
を取り戻しました。そして、GE キャピタルの事業を絞り込み、そ
の強化を図りました。こうした取り組みの結果、ポートフォリオの
競争力はここ数十年で最高の水準にあります。
ジェフリー・R・イメルト
取締役会会長兼 CEO
2011 年 2 月 25 日
8 GE 2010 ANNUAL REPORT
日本 GE 株式会社
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東京都港区赤坂 5-2-20 赤坂パークビル
03-3588-5280 (大代表)
www.ge.com
www.ge.com/ar2010
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