LT3092 - プログラム可能な200mA 2端子電流源

LT3092
プログラム可能な
200mA 2端子電流源
特長
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
概要
プログラム可能な2端子電流源
最大出力電流:200mA
広い入力電圧範囲:1.2V∼40V
入力/出力コンデンサが不要
抵抗比により出力電流を設定
SETピン電流の初期精度:1%
逆電圧保護
逆電流保護
ライン・レギュレーション:<0.001%/V
(標準)
電流制限およびサーマル・シャットダウン
8ピンSOT-23、3ピンSOT-223、
8ピン3mm × 3mm DFN パッケージ
アプリケーション
2端子フローティング電流源
GND 基準の電流源
■ 可変電流源
■ インライン・リミッタ
■ 本質安全回路
LT®3092はプログラム可能な2端子電流源です。
このデバイス
は2本の抵抗のみで0.5mA∼200mA範囲の出力電流を設定
できます。数々のアナログ技術により、
出力電流をアクティブに
設定できます。LT3092は入出力コンデンサなしで安定し、高い
DCおよびACインピーダンスを実現するので、本質安全アプリ
ケーションで動作可能です。
SETピンは1%の初期精度と低い温度係数を特長としていま
す。1.5V∼40Vでの電流レギュレーションは10ppm/Vよりも良
好です。
LT3092 は信号線と直列に接続して2端子電流源構成で動作
可能です。
センサのドライブ、
リモート電源に加え、
ローカル電
源用の高精度電流リミッタに最適です。
■
内部保護回路には、逆バッテリおよび逆電流保護、電流制
限、熱制限などがあります。LT3092は8ピンTSOT-23、3ピン
SOT-223および8ピン3mm 3mm DFNパッケージで供給され
ます。
■
、LT、LTC、LTM、Linear TechnologyおよびLinearのロゴはリニアテクノロジー社の登録商標
です。
その他すべての商標の所有権は、
それぞれの所有者に帰属します。
標準的応用例
調整可能な2端子電流源
SETピン電流と温度
VIN – VOUT = 1.2V TO 40V
10.100
IN
10.075
SET PIN CURRENT (µA)
LT3092
10µA
+
–
SET
OUT
RSET
ROUT
R SET
ROUT
10.025
10.000
9.975
9.950
9.925
3092 TA01a
ISOURCE = 10µA •
10.050
9.900
–50 –25
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 TA01b
3092fb
1
LT3092
絶対最大定格 (Note 1)全ての電圧はVOUTを基準
SET、OUTを基準としたINピンの電圧. .............................. ±40V
SETピンの電流(Note 6) ................................................. ±15mA
SETピンの電圧(OUTを基準、Note 6)
............................... ±10V
出力短絡時間 ................................................................無制限
動作接合部温度範囲(Note 2、Note 8)
Eグレード、Iグレード .................................... −40℃~125℃
MPグレード................................................... −55℃~125℃
保存温度範囲................................................... −65℃~150℃
リード温度(STパッケージ、TS8パッケージのみ)
半田付け、10秒 ............................................................ 300℃
ピン配置
TOP VIEW
OUT
1
OUT
2
NC
3
SET
4
TOP VIEW
8 IN
9
7 IN
TAB IS OUT
6 NC
5 NC
DD PACKAGE
8-LEAD (3mm × 3mm) PLASTIC DFN
TJMAX = 125°C, θJA = 28°C/W, θJC = 10°C/W
EXPOSED PAD (PIN 9) IS OUT, MUST BE SOLDERED TO OUT
ON THE PCB. SEE THE APPLICATIONS INFORMATION SECTION.
3
IN
2
OUT
1
SET
TOP VIEW
ST PACKAGE
3-LEAD PLASTIC SOT-223
TJMAX = 125°C, θJA = 24°C/W, θJC = 15°C/W
TAB IS OUT, MUST BE SOLDERED TO OUT ON THE PCB.
SEE THE APPLICATIONS INFORMATION SECTION.
8 IN
7 IN
6 NC
5 SET
NC 1
OUT 2
OUT 3
OUT 4
TS8 PACKAGE
8-LEAD PLASTIC TSOT-23
TJMAX = 125°C, θJA = 57°C/W, θJC = 15°C/W
発注情報
鉛フリー仕様
テープアンドリール
製品マーキング*
パッケージ
温度範囲
LT3092EDD#PBF
LT3092EDD#TRPBF
LFJD
8-Lead (3mm × 3mm) Plastic DFN
–40°C to 125°C
LT3092IDD#PBF
LT3092IDD#TRPBF
LFJD
8-Lead (3mm × 3mm) Plastic DFN
–40°C to 125°C
LT3092EST#PBF
LT3092EST#TRPBF
3092
3-Lead Plastic SOT-223
–40°C to 125°C
LT3092IST#PBF
LT3092IST#TRPBF
3092
3-Lead Plastic SOT-223
–40°C to 125°C
LT3092MPST#PBF
LT3092MPST#TRPBF
3092MP
3-Lead Plastic SOT-223
–55°C to 125°C
LT3092ETS8#PBF
LT3092ETS8#TRPBF
LTFJW
8-Lead Plastic SOT-23
–40°C to 125°C
LT3092ITS8#PBF
LT3092ITS8#TRPBF
LTFJW
8-Lead Plastic SOT-23
–40°C to 125°C
鉛ベース仕様
テープアンドリール
製品マーキング*
パッケージ
温度範囲
LT3092EDD
LT3092EDD#TR
LFJD
8-Lead (3mm × 3mm) Plastic DFN
–40°C to 125°C
LT3092IDD
LT3092IDD#TR
LFJD
8-Lead (3mm × 3mm) Plastic DFN
–40°C to 125°C
LT3092EST
LT3092EST#TR
3092
3-Lead Plastic SOT-223
–40°C to 125°C
LT3092IST
LT3092IST#TR
3092
3-Lead Plastic SOT-223
–40°C to 125°C
LT3092MPST
LT3092MPST#TR
3092MP
3-Lead Plastic SOT-223
–55°C to 125°C
LT3092ETS8
LT3092ETS8#TR
LTFJW
8-Lead Plastic SOT-23
–40°C to 125°C
LT3092ITS8
LT3092ITS8#TR
LTFJW
8-Lead Plastic SOT-23
–40°C to 125°C
さらに広い動作温度範囲で規定されるデバイスについては、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。 *温度グレードは出荷時のコンテナのラベルで識別されます。
鉛フリー仕様の製品マーキングの詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/leadfree/ をご覧ください。
テープアンドリールの仕様の詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/tapeandreel/ をご覧ください。
3092fb
2
LT3092
電気的特性
●は全動作温度範囲での規格値を意味する。
それ以外はTJ = 25℃での値。(Note 2)
PARAMETER
CONDITIONS
MIN
TYP
MAX
UNITS
10
10
10.1
10.2
µA
µA
2
4
mV
mV
–0.1
–0.5
–2
nA
mV
0.03
0.003
0.2
0.010
SET Pin Current ISET
VIN = 2V, ILOAD = 1mA
2V ≤ VIN ≤ 40V, 1mA ≤ ILOAD ≤ 200mA
l
9.9
9.8
Offset Voltage (VOUT – VSET)
VOS
VIN = 2V, ILOAD = 1mA
VIN = 2V, ILOAD = 1mA
l
–2
–4
Current Regulation (Note 7)
∆ISET
∆VOS
∆ILOAD = 1mA to 200mA
∆ILOAD = 1mA to 200mA
l
Line Regulation
∆ISET
∆VOS
∆VIN = 2V to 40V, ILOAD = 1mA
∆VIN = 2V to 40V, ILOAD = 1mA
nA/V
mV/V
Minimum Load Current (Note 3)
2V ≤ VIN ≤ 40V
l
300
500
µA
Dropout Voltage (Note 4)
ILOAD = 10mA
ILOAD = 200mA
l
l
1.22
1.3
1.45
1.65
V
V
Current Limit
VIN = 5V, VSET = 0V, VOUT = –0.1V
l
Reference Current RMS Output Noise (Note 5)
Ripple Rejection
Thermal Regulation
ISET
300
mA
10Hz ≤ f ≤ 100kHz
0.7
nARMS
f = 120Hz, VRIPPLE = 0.5VP-P, ILOAD = 0.1A,
CSET = 0.1µF, COUT = 2.2µF
f = 10kHz
f = 1MHz
90
dB
75
20
dB
dB
10ms Pulse
Note 1:絶対最大定格に記載された値を超えるストレスはデバイスに永続的損傷を与える可
能性がある。長期にわたって絶対最大定格条件に曝すと、
デバイスの信頼性と寿命に悪影響
を与える可能性がある。
Note 2:注記がない限り、
全ての電圧はVOUTを基準にしている。LT3092EはTJがほぼTAに等しい
などのパルス負荷条件のもとでテストされ、仕様が規定されている。LT3092EはTA = 25℃で全
数テストされている。−40℃と125℃の温度での性能は設計、特性評価および統計学的なプロ
セス・コントロールとの相関で確認されている。LT3092Iは−40℃~125℃の全動作接合部温
度範囲で規定された全データシートの仕様に適合することが保証されている。LT3092MPは
−55℃~125℃の動作接合部温度範囲で全数テストされ、保証されている。
Note 3:最小負荷電流はデバイスの消費電流に相当する。
全ての消費電流とドライブ電流はデ
バイスの出力に供給されるので、最小負荷電流は安定化を維持するのに必要な最小電流であ
る。
200
0.003
%/W
Note 4:LT3092の場合、
Dropoutは所定の出力電流を供給するのに必要な最小入力-出力間電
圧差として規定されている。
Note 5:出力ノイズは、
リファレンス電流抵抗の両端に小容量のコンデンサを追加することに
よって減少する。
このコンデンサの追加により、抵抗のショット・ノイズとリファレンス電流ノイ
ズがバイパスされる(「アプリケーション情報」
を参照)。
Note 6:SETピンは、
1k抵抗と直列接続されたダイオードOUTピンによってクランプされる。
これ
らのダイオードと抵抗には、過渡的な過負荷状態のときだけ電流が流れる。
Note 7:電流レギュレーションはパッケージでケルビン検出される。
Note 8:このデバイスには、
短時間の過負荷状態の間デバイスを保護する過温度保護機能が
備わっている。過温度保護機能がアクティブなとき、接合部温度は最大動作接合部温度を超
える。規定された最大動作接合部温度を超えた動作が継続すると、
デバイスの信頼性を損な
う恐れがある。
3092fb
3
LT3092
標準的性能特性
SETピンの電流
SETピンの電流の分布
オフセット電圧(VOUT­VSET)
2.0
N = 1326
10.075
1.5
10.050
1.0
OFFSET VOLTAGE (mV)
SET PIN CURRENT (µA)
10.100
10.025
10.000
9.975
9.950
0.5
0.0
–0.5
–1.0
–1.5
9.925
9.900
–50 –25
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 G01
10
10.20
9.90
10.10
SET PIN CURRENT DISTRIBUTION (µA)
9.80
–2.0
–50 –25
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 G03
3092 G02
オフセットの分布
オフセット電圧
1.00
N = 1326
IOUT = 1mA
OFFSET VOLTAGE (mV)
0.75
0.50
0.25
0
–0.25
–0.50
–0.75
–2
0
–1
1
VOS DISTRIBUTION (mV)
2
–1.00
0
5
10 15 20 25 30 35
INPUT-TO-OUTPUT VOLTAGE (V)
3092 G05
3092 G04
オフセット電圧
電流レギュレーション
20
50
10
CHANGE IN REFERENCE CURRENT
WITH LOAD (nA)
100
OFFSET VOLTAGE (µV)
0
–50
–100
–150
–200
–250
–300
–350
–400
0
50
150
100
LOAD CURRENT (mA)
40
200
3092 G06
∆IOUT = 1mA TO 200mA
VIN – VOUT = 3V
0
–10
–20
–30
–40
–50
–60
–70
–80
–50 –25
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 G07
3092fb
4
LT3092
標準的性能特性
損失電圧
最小出力電流
400
300
200
100
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 G08
1.4
DROPOUT VOLTAGE (VIN – VOUT) (V)
DROPOUT VOLTAGE (VIN – VOUT) (V)
500
TJ = –55°C
1.2
TJ = 25°C
1.0
TJ = 125°C
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
25
損失電圧
1.2
ILOAD = 200mA
1.0
ILOAD = 100mA
0.8
0.6
0.4
0.2
0
–50 –25
50 75 100 125 150 175 200
LOAD CURRENT (mA)
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 G10
3092 G09
電流制限
電流制限
500
400
450
350
400
300
CURRENT LIMIT (mA)
CURRENT LIMIT (mA)
250
200
150
100
350
300
250
200
150
100
50
0
VIN = 7V
VOUT = 0V
50
TJ = 25°C
0
–50 –25
2
6
8
10
0
4
INPUT-TO-OUTPUT DIFFERENTIAL VOLTAGE (V)
0
25 50 75 100 125 150
TEMPERATURE (°C)
3092 G12
3092 G11
ラインの過渡応答
ラインの過渡応答
8
6
1mA CURRENT SOURCE 1.0
CONFIGURATION
0.5
0
0
–0.5
–1.0
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
TIME (µs)
3092 G13
10
8
10mA CURRENT SOURCE
CONFIGURATION
6
4
10
5
2
0
–5
–10
0
OUTPUT CURRENT
DEVIATION (mA)
2
OUTPUT CURRENT
DEVIATION (mA)
4
1.5
INPUT VOLTAGE (V)
0
–50 –25
1.4
1.6
INPUT VOLTAGE (V)
MINIMUM OUTPUT CURRENT (µA)
600
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
TIME (µs)
3092 G14
3092fb
5
LT3092
標準的性能特性
ターンオン応答
8
6
INPUT VOLTAGE (V)
INPUT VOLTAGE (V)
ターンオン応答
1mA CURRENT SOURCE
CONFIGURATION
4
2
0
0
0
5
15
0
10
5
0
10 15 20 25 30 35 40 45 50
TIME (µs)
2
0
TIME (µs)
3092 G16
出力インピーダンス
最小出力電流以下での残留出力
1G
SET PIN = 0V
VIN
600
100M
VOUT
VIN = 36V
RTEST
500
OUTPUT IMPEDANCE (Ω)
700
OUTPUT VOLTAGE (mV)
10 15 20 25 30 35 40 45 50
3092 G15
800
VIN = 5V
400
300
200
ISOURCE = 1mA
10M ISOURCE =
10mA
1M
100k
100
0
5
OUTPUT
CURRENT (mA)
0.5
10mA CURRENT SOURCE
CONFIGURATION
4
OUTPUT
CURRENT (mA)
1.0
8
6
10k
ISOURCE = 100mA
1k
100
VRSET = 100mV
10
0
1000
RTEST (Ω)
1
2000
10
100
3092 G17
1k
10k 100k
FREQUENCY (Hz)
1M
10M
3092 G18
ノイズ・スペクトル密度
REFERENCE CURRENT
NOISE SPECTRAL DENSITY (pA/√Hz)
100
10
1
0.1
0.01
10
100
1k
10k
FREQUENCY (Hz)
100k
3092 G19
3092fb
6
LT3092
ピン機能 (DD/ST/TS8)
IN
(ピン7、8/ピン3/ピン7、8)
:入力ピン。
このピンは、
内部回路
をバイアスし出力負荷電流を供給するための電力を供給しま
す。
デバイスが適正に動作して安定化を行うには、
このピンの
電圧はOUTピンの電圧より1.2V∼1.4V高くなければなりませ
ん
(出力負荷電流による̶「電気的特性」
の表の損失電圧の
規格を参照)。
NC
(ピン3、5、6/NA/ピン1、6)
:NC。
これらのピンは内部回路に
接続されておらず、
IN、
OUT、
GNDに接続するか、
またはフロー
ト状態にすることができます。
OUT(ピン1 、2/ピン2/ピン2 、3 、4 )
:出力ピン。
これはデバイス
の電力出力です。LT3092の設定可能な最小電流源の値は
0.5mAです。
この電流が流れないと、
デバイスは安定化されま
せん。
SET
(ピン4/ピン1/ピン5)
:設定ピン。
このピンはエラーアンプの
非反転入力であり、回路の動作バイアス・ポイントの設定も行
います。10μAの固定電流源がこのピンから供給されます。2本
の抵抗で10μAと比較した抵抗比に応じたIOUTを設定します。
出力電流の範囲は0.5mAから最大定格の200mAのレベルま
でです。
露出パッド/タブ(ピン9/タブ/NA)
:出力ピン。DFNパッケージ
の露出パッドとSOT-223パッケージのタブは、内部でOUTピ
ンに接続されています。PCBでは、
これらをOUTピン
(ピン1、2/
ピン2)
に直接接続します。OUTピンに接続される銅領域とプ
レーンの大きさにより、
パッケージの実効熱抵抗が決まります
(「アプリケーション情報」
を参照)。
ブロック図
IN
10µA
+
–
SET
OUT
3092 BD
3092fb
7
LT3092
アプリケーション情報
はじめに
LT3092は、2本の外付け抵抗のみを追加してプログラム可能
な2端子電流源として動作する汎用デバイスで、安定化のため
にバイパス・コンデンサを外付けする必要はありません。
LT3092は使いやすく、高性能製品に求められる全ての保護機
能を備えています。逆電圧保護、逆電流保護、短絡保護、
ヒス
テリシス付きのサーマル・シャットダウンなどの機能を搭載し
ています。
LT3092は、入力コンデンサと出力コンデンサの有無にかかわ
らず動作します。最もシンプルな電流源アプリケーションで
は、最大200mAの出力定電流を設定するのに必要なのは2本
のディスクリート抵抗だけです。様々なアナログ手法により、電
流源の値を制御して変化させることができます。
このデバイスは、温度係数がゼロの高精度10μAリファレンス
電流源を使用して出力電流を設定します。
この10μAの電流
パ
源はパワー・オペアンプの非反転入力に接続されています。
ワー・オペアンプは、非反転入力の電圧のバッファされた低イ
ンピーダンス出力を供給します。
入力コンデンサと出力コンデンサがない動作が好都合のア
プリケーション分野が数多く存在します。
これらのアプリケー
ションの中には、
フォールト状態や過負荷状態でサージ電流
に耐えることができない敏感な回路や、
スパークやアーク放電
を生じる恐れのあるエネルギー蓄積デバイスが安全規則によ
り制限を受ける
「本質安全アプリケーション」
が含まれます。
2端子電流源モードの出力電流の設定
LT3092を2端子電流源として動作させる設定は容易です。
SETピンからの10μAのリファレンス電流を使用し、1本の抵抗
に低い電圧を発生させます。
この電圧は通常、100mV∼1Vの
範囲です
(オフセット電圧、
ライン・レギュレーション、
などの誤
差を過大にすることなく解消するのに適したレベルは200mV
です)。
この電圧は次いで、OUTピンから最初の抵抗に接続さ
れた2本目の抵抗の両端に印加されます。基本的な電流源の
回路構成の接続と計算式を図1に示します。
10μAの電流源が発生するリファレンス電流を増幅して出力電
流を設定するので、SETピンへのまたはSETピンからのリーク
経路は、
リファレンス電流と出力電流に誤差を生じさせること
があります。
このため、
テフロン、Kel-F等の高品質な絶縁材を
使用します。
また、全ての絶縁表面を洗浄してフラックスなどの
残留物を除去することが必要になる場合があります。湿度の
高い環境では、防湿を行うための表面のコーティングが必要
になることがあります。
SETピンの電位に近い電圧で動作する保護リングでSETピン
と回路を取り囲むことにより、基板のリーク電流を最小限に抑
えることができます。
この保護リングはOUTピンに接続します。
回路基板の両側を保護する必要があります。
バルク・リーク電
流は保護リングの幅に応じて減少します。SETピンに流れ込
む、
またはSETピンから流れ出す10ナノアンペアのリーク電流
と、関連した回路によってリファレンス電流に0.1%の誤差が生
じます。
この大きさのリーク電流は、他のリーク電流源と結合
して、特に可能な動作温度範囲では大きなオフセット電圧とリ
ファレンス電流のドリフトを生じることがあります。
IN
LT3092
10µA
IOUT ≥ 0 . 5mA
+
–
VSET = 10µA • R SET
SET
OUT
IOUT =
VSET 10µA • R SET
=
ROUT
ROUT
+
VSET
RSET
ROUT
–
IOUT
3092 F01
図1. 電流源として使用するLT3092
RSETとROUTの選択
図1では、RSETとROUTの両方の抵抗によって出力電流の値が
設定されます。
ここで、
これらの抵抗の比は分りますが、各抵
抗の値はいくらにすればよいのでしょうか。
最初に選択する抵抗はRSETです。選択する値は、SETピンと
OUTピンの間のオフセットに起因する誤差を最小限に抑える
のに十分な電圧を生じる値にします。RSET両端の電圧の妥当
な初期レベルは200mVです
(RSETは20kに等しい)。
オフセッ
ト電圧によって生じる誤差は数パーセントです。R SET両端の
電圧が低くなるに従って、
オフセットによる誤差の割合が大き
くなります。
3092fb
8
LT3092
アプリケーション情報
この点から、ROUTはRSETから直接計算するので、ROUTの選
択は容易です。
ただし、抵抗の誤差も見込む必要があることに
注意してください。RSET両端の大きな電圧降下はオフセットに
よる誤差を最小限に抑えるとともに、必要な動作ヘッドルーム
を増大させます。
最高の温度係数を得るのに、
低ppmの温度係数を有する高価
な抵抗を使用する必要はありません。
その代わり、
LT3092の出
力電流はRSETとROUTの比率によって決まるので、
これらの抵
抗は温度特性が一致している必要があります。
同じ素材で作
られた安価な抵抗で一致した温度係数が得られます。詳細に
ついては、
抵抗の製造元のデータシートを参照してください。
安定性と周波数補償
LT3092は、多くの電流源アプリケーションの安定化に入力コ
ンデンサや出力コンデンサを必要としません。
クリーンで密な
PCBレイアウトにより、LT3092にとって低リアクタンスで十分に
管理された動作環境が確保され、回路を周波数補償するコ
ンデンサが不要になります。表紙の
「標準的応用例」
の回路は
LT3092の使用が容易であることを示しています。
GND基準、電源基準、
または信号ライン経路でフロート状態
の場合があります。
リニアテクノロジーでは、LT3092の全ての
アプリケーションでの状態で安定性をテストすることを強く推
奨しています。
長い配線やPCBトレースを使用したLT3092のアプリケーショ
ンでは、誘導性リアクタンスが不安定性の要因になる可能性
があります。場合によっては、
(図2に示すように)入力ラインと
出力ラインに直列抵抗を追加することにより、
これらの高いQ
になり得るラインを十分に減衰して安定性を確保することが
できます。
ユーザーは、設計のヘッドルームの制約に対する必
要な抵抗値を求める必要があります。一般に、低出力電流レ
ベル
(< 5mA)
での動作は自動的に大きな値の設定抵抗を必
要とし、直列インピーダンスを追加することなく必要な減衰を
行うことができます。
LT3092と直列接続されたライン・インピーダンスが、直列減
周波数補償ネットワー
衰抵抗が十分でないほど複雑な場合、
クが必要になる可能性があります。
いくつかのオプションが考
えられます。
電流源アプリケーションの中には、SETピンの抵抗と並列に
接続したコンデンサを使用して電流源のノイズを低減するも
のもあります。
このコンデンサは電流源のソフトスタート機能も
実現します。
このコンデンサの接続を図7に示します
(「ノイズ
の抑制」
を参照)。
SETピンの抵抗の両端にコンデンサを接続して動作させる場
合、安定性の維持と生じる極の補償を行うため、通常、外部
補償が必要になります。次のパラグラフでは、LT3092にこの容
量またはその他の複雑なインピーダンスが接続された場合に
LT3092を安定化させる手法について説明します。
リニアテクノ
ロジーでは、生産を開始する前に最終部品を使用した状態で
安定性をテストすることを強く推奨しています。
LT3092の設計は様々な動作条件においてコンデンサなしで
安定することを目指していますが、LT3092が直面する入力イ
ンピーダンスと出力インピーダンスのありうる全ての組み合わ
せに対してテストすることは不可能です。
これらのインピーダン
スには抵抗性、容量性、誘導性などの成分が含まれることが
あり、複雑に分布したネットワークである可能性があります。
さ
らに、電流源の値はアプリケーション間で異なり、
その接続は
LONG LINE
REACTANCE/INDUCTANCE
RSERIES
IN
LT3092
10µA
+
–
SET
OUT
RSET
ROUT
RSERIES
3092 F02
LONG LINE
REACTANCE/INDUCTANCE
図2. 直列抵抗の追加による長い
ライン・リアクタンスのデカップリングと減衰
3092fb
9
LT3092
アプリケーション情報
図3に、電流源の2つの端子の間に1個のコンデンサを接続し
た最もシンプルな周波数補償ネットワークを示します。
この
ケースでは、1000pF以下または1μF以上(ESR < 0.5Ω)
のいず
れかの値のコンデンサで回路を安定化することができます。
ア
プリケーションによってはDC電圧を遮蔽するために、小容量
のコンデンサを使用できますが、信号ラインへのデータ転送
は可能です。
また、
アプリケーションの中には、
この容量範囲を許容できな
いものや、設計に制約を与えるものがあります。
これを代表す
る1つの回路例は、過負荷状態やフォールト状態がコンデン
サに蓄積されたエネルギーによるスパークやアーク放電を生
じさせる可能性がある
「本質安全」回路です。1個のコンデン
サでは対応できないアプリケーションの場合、電流源の2つ
の端子の間に直列RCネットワークを接続した代案を図3に示
します。
このネットワークには2つの利点があります。1つ目は、
フォールト状態で生じ得るコンデンサの放電電流を制限し、
スパークやアーク放電を防止することです。2つ目は、
ほぼ全
ての値のコンデンサが使用できるように、小容量のコンデンサ
に対する1000pFの上限と大容量のコンデンサに対する1μFの
下限の隙間を埋めることです。
これにより、
ループの周波数補
償の柔軟性が向上し、複雑なインピーダンス・ネットワークに
対するRCネットワークの微調整が可能になります。多くの場
合、
アプリケーション回路を安定化する最良のソリューション
は直列RCネットワークです。特にコンデンサの値が1000pF∼
1μFの場合には、標準的な抵抗値の範囲は100Ωから約5kと
なります。
この場合も、
リニアテクノロジーでは、全ての動作条
件(特に電流源の入力と出力に複雑なインピーダンス・ネット
ワークがある場合)
におけるLT3092のあらゆるアプリケーショ
ンの状態で安定性をテストすることを強く推奨しています。
LT3092電流源の下側をGND基準にするアプリケーションの
場合、
コンデンサを使用して電流源の上側をGNDにバイパス
する必要が生じることがあります。場合によっては、
このコンデ
ンサが既に存在していて容量を追加する必要がないかもし
れません。
たとえば、LT3092が電源出力の可変電流源として
使用されている場合、
この出力バイパス容量がLT3092を十分
安定化します。バイパス・コンデンサを必要とするアプリケー
ションもあります。
この場合も、小さい容量値に対して1000pF
の上限が存在し、大きな値のコンデンサに対して1μF(ESR <
0.5Ω)
の下限が存在するという、上述と同じコンデンサ値の要
件が当てはまります。必要に応じて直列RCネットワークを使
用することも可能で、
アプリケーションの要件に応じて使用し
ます。
極端な場合には、回路を安定させるのにLT3092の入力と出
力の両方にコンデンサまたは直列RCネットワークが必要にな
ることがあります。図4に、入力-出力間のコンデンサではなく、
入力と出力にコンデンサ・ネットワークを使用した一般的なア
プリケーションを示します。電流源の入力は高インピーダンス
になる傾向があるので、入力にコンデンサを接続しても低イン
ピーダンスの出力にコンデンサを接続するのと同じ効果はな
く、
同様の制限は当てはまりません。通常、0.1μF∼1μFの範囲
のコンデンサで入力のバイパスを十分に行え、入力容量の値
は無制限に大きくすることができます。
VIN
IN
LT3092
RCOMP
10µA
SET
RSET
CIN
CCOMP OR
+
–
RIN
10µA
+
–
CCOMP
SET
OUT
ROUT
3092 F03
IN
LT3092
RSET
OUT
ROUT
3092 F04
IOUT
図3. 電流源の入力-出力間の補償による
安定性の確保
COUT OR
ROUT
COUT
図4. 補償用に入力コンデンサや
出力コンデンサを使用可能
3092fb
10
LT3092
アプリケーション情報
入力や出力
(特に入力)
にGND基準のコンデンサを使用した
アプリケーションの場合、電源ラインと回路からのリターン・グ
ランドのラインの長さに注意してください。長い電源ラインおよ
びリターン・ラインと低ESRの入力コンデンサが組み合わさる
場合、
アプリケーション固有の電圧スパイク、発振および信頼
性の問題が生じることがあります。
これはLT3092の安定性に
対しては問題になりませんが、入力配線のインダクタンスによ
り、低ESRのコンデンサが高いQの共振タンク回路を形成しま
す。LT3092の入力に直列抵抗を追加するか、
または入力コン
デンサを使用することにより、
この問題が解決される場合がよ
くあります。多くの場合、0.1Ω∼1Ωの抵抗値でこの共振は十
分減衰します。
セラミック・コンデンサを使用する際には、特に注意が必要で
す。セラミック・コンデンサは様々な誘電体を使用して製造さ
れており、
それぞれ温度や印加される電圧によって動作が異
なります。最も一般的に使用されている誘電体は、Z5U、Y5V、
X5R、X7RのEIA温度特性コードで規定されています。Z5Uと
Y5Vの誘電体は小型のパッケージで大きな容量を実現する
のには適していますが、図5と図6に示すように、電圧係数と温
度係数が大きくなる傾向があります。5Vのレギュレータに使用
20
40
20
X5R
CHANGE IN VALUE (%)
CHANGE IN VALUE (%)
電圧係数と温度係数だけが問題になるわけではありません。
セラミック・コンデンサの中には圧電効果を示すものがありま
す。圧電デバイスは機械的応力によって端子の両端に電圧を
生じます。
セラミック・コンデンサの場合、
システムの振動や熱
過渡によって応力が生じることがあります。
BOTH CAPACITORS ARE 16V,
1210 CASE SIZE, 10µF
0
–20
–40
–60
Y5V
–80
–100
する場合、16V 10μFのY5Vコンデンサは、印加されたDCバイ
アス電圧と動作温度範囲で1μF∼2μFの小さな実効値になる
可能性があります。X5RとX7Rの誘電体を使用すると、
さらに
安定した特性になり、
これらは出力コンデンサとしての使用に
より適しています。X7Rタイプは全温度範囲にわたって安定性
が優れており、X5Rタイプは安価で大きな値のものが入手可
能です。X5RやX7Rのコンデンサを使用する場合でも注意す
る必要があります。X5RとX7Rのコードは動作温度範囲と全
温度範囲での最大容量変化を規定するだけです。X5RとX7R
のコンデンサのDCバイアスによる容量変化はY5VやZ5Uのコ
ンデンサに比べると小さいですが、
それでもコンデンサの容量
が適切なレベルを下回るほど変化することがあります。
コンデ
ンサのDCバイアス特性は部品のケースのサイズが大きいほど
向上する傾向がありますが、
動作電圧での必要な容量を検証
する必要があります。
–20
–40
2
4
8
6
10 12
DC BIAS VOLTAGE (V)
14
16
3092 F05
図5. セラミック・コンデンサのDCバイアス特性
Y5V
–60
–80
0
X5R
0
BOTH CAPACITORS ARE 16V,
1210 CASE SIZE, 10µF
–100
–50 –25
50
25
75
0
TEMPERATURE (°C)
100
125
3092 F06
図6. セラミック・コンデンサの温度特性
3092fb
11
LT3092
アプリケーション情報
ノイズの抑制
電流源のノイズを低減する必要がある場合、RSETの両端に小
容量のコンデンサを接続することができます
(図7のCSET)。通
常、10μAのリファレンス電流源は2.7pA/√Hz(10Hz∼100kHz
の帯域幅で0.7nARMS)
のノイズ電流レベルを生じます。SETピ
ンの抵抗は√4kT/R(k = ボルツマン定数(1.38 • 10­23J/ K)、
Tは絶対温度)
に等しいスポット・ノイズを生じ、
この値は10μA
のリファレンス電流源によって生じるノイズに実効値として加
算されます。図7に示すように、RSETの両端にCSETコンデンサ
を接続することにより、
このノイズ電流がバイパスされます。
こ
のノイズ低減用コンデンサにより、R SET • CSETで得られる時
定数に比例して起動時間が長くなることに注意してください。
SETピンの抵抗の両端にコンデンサを接続する場合、通常、
外部からの極は安定を維持するために補償する必要がありま
す。LT3092回路の補償の詳細については
「安定性と周波数補
償」
を参照してください。
「標準的性能特性」
の曲線は、
10Hz∼100kHzの帯域幅におけ
るリファレンス電流のノイズ・スペクトル密度を示しています。
IN
LT3092
RCOMP
10µA
デバイスを並列接続するもう1つの方法では、部品数を少なく
してデバイス間で電力を共有させる必要があります。個々の
SETピンと個々のINピンをそれぞれ相互接続します。
出力は、
電流分担を均等にするバラスト抵抗としてPCトレースの小片
を使用して共通に接続します。
ミリオーム/インチを単位とする
PCトレースの抵抗を表1に示します。
バラスト抵抗が必要とす
るのはPCBのほんのわずかな領域です。
表1. PCボードのトレース抵抗
重さ
(オンス)
幅10ミル
幅20ミル
1
2
54.3
27.1
27.1
13.6
トレース抵抗の単位はmΩ/インチ
SETピンとOUTピンの間のワーストケースの室温のオフセット
はわずか 2mVなので、非常に小さなバラスト抵抗を使用する
ことができます。
CCOMP OR
+
–
CCOMP
SET
OUT
CSET
RSET
デバイスの並列接続
複数のLT3092を並列接続することによって高出力電流が得ら
れます。
図8に示すように、
最も簡単なアプリケーションは2つの
電流源を並列に動作させ、入力と出力をそれぞれ相互接続し
ます。
これにより、両電流源を合わせると1つのデバイスが供給
可能な値よりも大きな出力電流を供給することができます。
ROUT
3092 F07
図7. CSETの追加による電流ノイズの低減
図9に示すように、各LT3092は小さな40mΩのバラスト抵抗を
有し、
これは最大出力電流で80%より良好な均等な電流分担
を実現します。40mΩ(2個の並列デバイスでは20mΩ)
の外付
け抵抗により、出力のコンプライアンス電圧は0.4Aの出力で
約8mV増大するだけです。
もちろん、3個以上のLT3092を並列
接続して、
さらに大きな出力電流を得ることもできます。
デバイ
スをPCボード上に分散配置すると、熱を分散することもできま
す。入力-出力間の差が大きい場合、直列入力抵抗により熱を
さらに分散することができます。
熱に関する検討事項
LT3092の内部電源と熱制限回路は過負荷状態のときにデバイ
ス自身を保護します。通常負荷状態を継続する場合、125 Cの
最大接合部温度を超えてはなりません。
接合部-周囲間の全て
の熱抵抗源について注意深く検討してください。
これには
(限定
されてはいませんが)
、
アプリケーションに応じて接合部-ケース
間、
ケース-ヒートシンク接続部間の熱抵抗、
ヒートシンク自体
の熱抵抗、
回路基板-周囲間の熱抵抗などが含まれます。PCB
上でその他すべての近接する熱源について検討します。
3092fb
12
LT3092
アプリケーション情報
IOUT
IN
LT3092
IN
LT3092
10µA
300Ω
10µA
300Ω
+
–
+
–
SET
OUT
20k
OUT
1.33Ω
SET
1.33Ω
20k
3092 F08
IOUT, 300mA
Figure 8. Connect Two LT3092s for Higher Current
IOUT
LT3092
LT3092
IN
10µA
IN
+
–
SET
1V
Rx
10µA
+
–
40mΩ*
Rx =
VIN(MAX ) • R
90 %
40mΩ*
SET
R
2.5Ω
50k
3092 F09
*40mΩ PC BOARD TRACE
IOUT, 400mA
Figure 9. Parallel Devices
表面実装パッケージは、PCボード、銅トレースおよびプレーン
の熱分散能力を使用することにより、必要な放熱を行います。
表面実装のヒートシンク、
メッキ・スルーホールおよび半田で
埋められたビアも、
パワー・デバイスが生じる熱を分散すること
ができます。
接合部-ケース間の熱抵抗は、
デバイスの接合部から間近の
ケース底面、
もしくは熱経路内の最も間近のピンの底面まで
で規定されています。
これは熱流の最小熱抵抗経路です。
パッ
ケージのこの領域から放熱材への可能な限り最良の熱流を
確保するには、
デバイスを適切に実装するだけです。
DFNパッケージの露出パッドとSOT-223パッケージのタブは
出力(VOUT)に電気的に接続されていることに注意してくだ
さい。
一定のボード・サイズの銅面積に対する熱抵抗を以下の表に
示します。
全ての測定は、
静止空気中で、
1オンスのしっかりとし
た内部プレーンと2オンスの外部トレース・プレーンを有し、合
計の仕上げボード厚が1.6mmの4層FR-4ボードで行いました。
PCBの層数、銅重量、
ボード・レイアウトおよびサーマル・ビア
が熱抵抗の値に影響を与えます。高熱伝導のテスト・ボードの
詳細についてはJEDEC標準規格のJESD51-7を参照してくだ
3092fb
13
LT3092
アプリケーション情報
さい。低い熱抵抗を実現するには、細部にわたる注意深いレイ
アウトに配慮する必要があります。複数の内部V OUTプレーン
と複数のサーマル・ビアを使用したデモ用回路1531Aのボー
ド・レイアウトは、DFNパッケージに対して28 C/Wの性能を実
現します。
表2. DDパッケージ、8ピンDFN
上面*
銅面積
2
裏面
2
ボード面積
熱抵抗
(接合部-周囲間)
2
SETピンの電流はごくわずかなので無視できます。
VIN(MAX CONTINUOUS)= 16.5(15V+10%)
VOUT(MIN CONTINUOUS)= 11.4V(12V−5%)
IOUT = 200mA
これらの条件での電力損失は次のようになります。
(200mA)= 1.02W
PTOTAL =(16.5−11.4V)
2500mm
2500mm
25°C/W
1000mm2
2500mm2
2500mm2
25°C/W
225mm2
2500mm2
2500mm2
28°C/W
TJ = TA+PTOTAL • θJA
100mm2
2500mm2
2500mm2
32°C/W
TJ = 50℃+
(1.02W • 30°C/W)= 80.6℃
2500mm
*デバイスは上面に実装される
この例の場合、接合部温度は最大定格より低く、信頼性の高
い動作が保証されます。
表3. TS8パッケージ、8ピンSOT-23
上面*
銅面積
裏面
2500mm2
2500mm2
2
2
ボード面積
2500mm2
2
熱抵抗
(接合部-周囲間)
54°C/W
1000mm
2500mm
2500mm
54°C/W
225mm2
2500mm2
2500mm2
57°C/W
2
2
2
63°C/W
100mm
2500mm
2500mm
*デバイスは上面に実装される
表4. STパッケージ、3ピンSOT-223
上面*
銅面積
裏面
ボード面積
2500mm2
2
2
2500mm2
20°C/W
2
2
24°C/W
2
29°C/W
2
225mm
2500mm
2500mm
2500mm2
熱抵抗
(接合部-周囲間)
2500mm2
1000mm
接合部温度は以下のようになります。
2500mm
20°C/W
保護機能
LT3092はいくつかの保護機能を搭載しているので、
アプリ
ケーションの中でもバッテリ駆動の回路に最適です。電流制
限や熱制限など、通常の回路保護機能を備えているほか、
LT3092は逆入力電圧、逆出力電圧、OUTピンからSETピンへ
の逆電圧に対しても保護されています。
電流制限保護と熱過負荷保護の機能は、
出力電流の過負荷
状態に対してデバイスを保護します。通常動作では、125 Cの
接合部温度を超えてはなりません。
サーマル・シャットダウン
回路の標準温度スレッショルドは165 Cで、約5 Cのヒステリ
シスがあります。
熱抵抗と熱に関する詳細については、JEDEC標準規格のJESD51、
特にJESD51-12を参照してください。
LT3092のINピンはSETピンとOUTピンを基準にして 40Vの
電圧に耐えます。OUTピンがINピンより高いと、逆電流は1mA
以下(通常100μA以下)
となり、LT3092と敏感な負荷を保護し
ます。
接合部温度の計算
例:入力電圧が15V 10%、
出力電圧が12V 5%、
出力電流
が200mA、最大周囲温度が50 Cの産業用アプリケーション
の場合、DFNパッケージの最大接合部温度はいくらになるで
しょうか。
クランプ・ダイオードと1kの制限抵抗により、OUTピンの電圧
に対してLT3092のSETピンが保護されます。
これらの保護部
品には通常、過渡的な過負荷状態のときだけ電流が流れま
す。
これらのデバイスは 10Vの差動電圧と 15mAのクロスピ
ン電流に問題なく対応できるサイズになっています。
2
100mm
2
2500mm
2500mm
*デバイスは上面に実装される
回路全体の電力は次のようになります。
(IOUT)
PTOTAL =(VIN−VOUT)
3092fb
14
LT3092
標準的応用例
高電流用の電流源の並列接続
IN
LT3092
バラスト抵抗を使用したLT3092の並列接続
IN
LT3092
IN
LT3092
IN
LT3092
10µA
10µA
10µA
10µA
+
–
+
–
+
–
+
–
SET
OUT
SET
OUT
R2
R1
R4
R3
SET
OUT
SET
OUT
R1
40mΩ
R3
40mΩ
3092 TA02
IOUT
⎛ R2 R4 ⎞
⎟
= 10µA • ⎜ +
⎝ R1 R3 ⎠
IOUT
R4
2Ω
R2
40.2k
3092 TA03
400mA
高電圧電流源
LT3092の100mA電流源での電力損失の低減
10µA
10µA
D1
35V
+
–
SET
OUT
R4
20k
R3
2Ω
Rx
+
–
VMAX = ( VIN – VOUT )MAX
Rx =
OUT
SET
R2
20k
IOUT ≥ 0 . 5mA
IOUT =
IN
LT3092
IN
LT3092
IN
LT3092
VMAX
200mV
• 90 %
R1
R1
2Ω
200mV
R1
3092 TA05
IOUT
100mA
10µA
D2
35V
+
–
+
200mV
–
SET
OUT
R2
20k
R1
2Ω
コンデンサによって安定性が向上するものの
スルーレートは制限される
IN
LT3092
3092 TA04
10µA
IOUT
100mA
C1
+
–
LIMIT
I
dV
≤ 90 % • OUT
dt
C1
OUT
SET
R2
20k
R1
2Ω
3092 TA06
IOUT
100mA
3092fb
15
LT3092
標準的応用例
リモート温度センサ
DAC制御電流源
IOUT
IOUT= =0.5mA
0.5mATO
TO
100mA
100mA
VIN
IN
LT3092
V+
ININ
LT3092
LT3092
IN
LT3092
10µA
10µA
10µA
10µA
+
–
++
––
+
–
SET
OUT
49.9k
MURATA
NCP15WF104F03RC
1% 100k
アクティブ負荷
SET
SET
DAC
DACOUTPUT
OUTPUT
0V0VTO
TO1V1V
49.9Ω
SET
OUT
OUT
OUT
10k
10Ω
10Ω
100Ω
OUTPUT
3092
3092
TA08
TA08
1mA
INPUT
IOUT
3092 TA09
LOAD
3092 TA07
200mAから無負荷消費電流に切り替わる
完全にフロート状態の電流源
パルス電流源、
負荷をグランドに接続
VIN
VIN
IN
LT3092
ON OFF
IN
LT3092
10µA
10µA
+
–
+
–
SET
OUT
20k
1Ω
VN2222LL
OPTO-FET
OUT
3092 TA11
100k
IOUT
200mA
LOAD
SET
NEC PS 7801-1A
4.99Ω
200mA
3092 TA10
3092fb
16
LT3092
標準的応用例
2端子AC電流リミッタ
パルス電流源、
負荷をVINに接続
VIN
LOAD
IOUT
IN
LT3092
LT3092
10µA
10µA
+
–
IOUT
+
–
SET
OUT
20k
1Ω
20k
IOUT
R=
0 . 2V
IOUT
IOUT
ISET
3092 TA13
OFF ON
3092 TA12
電圧クランプ
VIN
高精度電流源
10µA
10µA
+
–
OUT 4.99Ω
10k
SET
10k
+
–
VOUT
SET
OUT
100k
LT1634-1.25
10V
2N3906
3092 TA14
2N3904
10k
IN
LT3092
IN LT3092
10mA
IOUT
124Ω
0.1%
3092 TA15
VIN – VOUT = 11V TRIP POINT
3092fb
17
LT3092
標準的応用例
2レベル電流源
VIN
IN
LT3092
10µA
+
–
SET
OUT
100k
4.99Ω
100k*
10V*
VN2222LL*
10k*
VOUT
IOUT = 200mA, IF VIN – VOUT < 12V
= 100mA, IF VIN – VOUT > 12V
*CURRENT FOLDBACK CIRCUIT LIMITS
THE LT3092 POWER DISSIPATION
3092 TA16
高効率電流源
0.22µF
VIN
+
–
VIN
BOOST
36V
33µH
SW
SHDN
BIAS
C3
47µF
LT3470A
100Ω
10µA
ZVP3306F
FB
GND
IN
LT3092
1nF
+
–
1k
SET
OUT
20k
1Ω
3092 TA17
IOUT
3092fb
18
LT3092
パッケージ
DDパッケージ
8ピン・プラスチックDFN
(3mm 3mm)
(Reference LTC DWG # 05-08-1698)
R = 0.115
TYP
5
0.38 ± 0.10
8
0.675 ±0.05
3.5 ±0.05
1.65 ±0.05
2.15 ±0.05 (2 SIDES)
3.00 ±0.10
(4 SIDES)
ピン1の
トップ・マーク
(NOTE 6)
パッケージ
の外形
0.25 ± 0.05
4
0.25 ± 0.05
0.75 ±0.05
0.200 REF
0.50 BSC
1.65 ± 0.10
(2 SIDES)
2.38 ±0.05
(2 SIDES)
NOTE:
1. 図はJEDECのパッケージ外形MO-229のバリエーション
(WEED-1)
になる予定
2. 図は実寸とは異なる
3. すべての寸法はミリメートル
4. パッケージ底面の露出パッドの寸法にはモールドのバリを含まない
モールドのバリは
(もしあれば)各サイドで0.15mmを超えないこと
(DD) DFN 1203
0.50 BSC
2.38 ±0.10
(2 SIDES)
0.00 – 0.05
推奨する半田パッドのピッチと寸法
1
底面図−露出パッド
5. 露出パッドは半田メッキとする
6. 網掛けの部分はパッケージの上面と底面のピン1の位置の参考に過ぎない
STパッケージ
3ピン・プラスチックSOT-223
(Reference LTC DWG # 05-08-1630)
.248 – .264
(6.30 – 6.71)
.129 MAX
.114 – .124
(2.90 – 3.15)
.059 MAX
.264 – .287
(6.70 – 7.30)
.248 BSC
.130 – .146
(3.30 – 3.71)
.039 MAX
.059 MAX
.181 MAX
.033 – .041
(0.84 – 1.04)
.0905
(2.30)
BSC
推奨半田パッド・レイアウト
10° – 16°
.010 – .014
(0.25 – 0.36)
10°
MAX
.071
(1.80)
MAX
.090
BSC
10° – 16°
.024 – .033
(0.60 – 0.84)
.181
(4.60)
BSC
.012
(0.31)
MIN
.0008 – .0040
(0.0203 – 0.1016)
ST3 (SOT-233) 0502
3092fb
19
LT3092
パッケージ
TS8パッケージ
8ピン・プラスチックTSOT-23
(Reference LTC DWG # 05-08-1637)
0.52
MAX
2.90 BSC
(NOTE 4)
0.65
REF
1.22 REF
1.4 MIN
3.85 MAX 2.62 REF
2.80 BSC
1.50 – 1.75
(NOTE 4)
PIN ONE ID
IPC CALCULATORを使った
推奨半田パッド・レイアウト
0.22 – 0.36
8 PLCS (NOTE 3)
0.65 BSC
0.80 – 0.90
0.20 BSC
0.01 – 0.10
1.00 MAX
DATUM ‘A’
0.30 – 0.50 REF
0.09 – 0.20
(NOTE 3)
NOTE:
1. 寸法はミリメートル
2. 図は実寸とは異なる
3. 寸法にはメッキを含む
4. 寸法にモールドのバリやメタルのバリを含まない
1.95 BSC
TS8 TSOT-23 0802
5. モールドのバリは0.254mmを超えてはならない
6. JEDECパッケージ参照番号はMO-193
3092fb
20
LT3092
改訂履歴 (Rev Bよりスタート)
REV 日付
B
12/09
修正内容
発注情報の更新
頁番号
2
3092fb
リニアテクノロジー・コーポレーションがここで提供する情報は正確かつ信頼できるものと考えておりますが、その使用に関する責務は一切負い
ません。また、ここに記載された回路結線と既存特許とのいかなる関連についても一切関知いたしません。なお、日本語の資料はあくまでも参考資
料です。訂正、変更、改版に追従していない場合があります。最終的な確認は必ず最新の英語版データシートでお願いいたします。
21
LT3092
標準的応用例
USB LEDドライバ
リモート電源用電流リミッタ
VIN
USB
IN
LT3092
IN
LT3092
10µA
10µA
+
–
+
–
SET
SET
OUT
20k
100k
ADJUST LIMIT
1Ω
OUT
4.99Ω
LDO
VOUT
200mA LED
3092 TA18
3092 TA19
関連製品
製品番号 説明
注釈
LDO
LT1761
100mA、低ノイズLDO
損失電圧:300mV、低ノイズ:20μVRMS、VIN = 1.8V∼20V、ThinSOT™パッケージ
LT1762
150mA、低ノイズLDO
損失電圧:300mV、低ノイズ:20μVRMS、VIN = 1.8V∼20V、MS8パッケージ
LTC1844 150mA、超低損失LDO
損失電圧:80mV、低ノイズ:<30μVRMS、VIN = 1.6V∼6.5V、1μF出力コンデンサで安定、
ThinSOTパッケージ
LT1962
300mA、低ノイズLDO
損失電圧:270mV、低ノイズ:20μVRMS、VIN = 1.8V∼20V、MS8パッケージ
LT1964
200mA、低ノイズ、負電圧LDO
損失電圧:340mV、低ノイズ:30μVRMS、VIN = ­1.8V∼­20V、ThinSOTパッケージ
LT3008
20mA、45V、消費電流3μA、
マイクロパワーLDO
損失電圧:280mV、低消費電流:3μA、VIN = 2V∼45V、VOUT = 0.6V∼39.5V、
ThinSOTおよび2mm 2mm DFN-6パッケージ
LT3009
20mA、20V、消費電流3μA、
マイクロパワーLDO
損失電圧:280mV、低消費電流:3μA、VIN = 1.6V∼20V、VOUT = 0.6V∼19.5V、
ThinSOTおよびSC70パッケージ
LT3020
100mA、低電圧VLDO
リニア・レギュレータ
VIN = 0.9V∼10V、VOUT = 0.2V∼5V(最小)、VDO = 0.15V、IQ = 120μA、
ノイズ:< 250μVRMS、2.2μFセラミック・コンデンサで安定、DFN-8およびMS8パッケージ
LTC3025 300mAマイクロパワーVLDO
リニア・レギュレータ
VIN = 0.9V∼5.5V、損失電圧:45mV、低ノイズ:80μVRMS、低消費電流:54μA、
6ピン2mm 2mm DFNパッケージ
LTC3035 チャージ・ポンプ・バイアス・レギュレータ
付き300mA、VLDOリニア・レギュレータ
LT3080/ 並列接続可能な1.1A、低ノイズ、
LT3080-1 低損失リニア・レギュレータ
LT3085
VIN = 1.7V∼5.5V、VOUT = 0.4V∼3.6V、損失電圧:45mV、IQ = 100μA、
3mm 2mm DFN-8パッケージ
損失電圧:300mV(2電源動作)、低ノイズ =:40μVRMS、VIN = 1.2V∼36V、
VOUT = 0V∼35.7V、電流べースのリファレンス、抵抗1本でVOUTを設定、直接並列接続可能
(オペアンプ不要)、セラミック・コンデンサで安定、TO-220、SOT-223、MSOP-8
および3mm 3mm DFN-8パッケージ、LT3080-1バージョンはバラスト抵抗を内蔵
並列接続可能な500mA、低ノイズ、
低損失リニア・レギュレータ
損失電圧:275mV(2電源動作)、低ノイズ:40μVRMS、VIN = 1.2V∼36V、VOUT = 0V∼35.7V、
電流べースのリファレンス、抵抗1本でVOUTを設定、直接並列接続可能(オペアンプ不要)、
セラミック・コンデンサで安定、MSOP-8および2mm 3mm DFN-8パッケージ
電流センス・アンプ
LT6106
低コスト36Vハイサイド電流センス・アンプ 36V(最大44V)
の電流センス、2000:1のダイナミック・レンジ、PSRR = 106dB
LT6107
SOT-23パッケージの
高温ハイサイド電流センス・アンプ
36V(最大44V)
の電流センス、2000:1のダイナミック・レンジ、PSRR = 106dB、
­55 C∼150 C(MPグレード)
ThinSOTはリニアテクノロジー社の商標です。
3092fb
22
リニアテクノロジー株式会社
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6紀尾井町パークビル8F
TEL 03-5226-7291 FAX 03-5226-0268 www.linear-tech.co.jp
●
●
LT 1209 REV B • PRINTED IN JAPAN
 LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2009