NJW4131 40V MOSFET 内蔵 昇圧用 スイッチングレギュレータ IC ■概 要 NJW4131 は、40V のパワーMOSFET を内蔵した昇圧用スイッ チングレギュレータ IC です。広動作電圧での高速発振に対応し、 最小限の外付け部品でアプリケーションの小型化を実現します。 またソフトスタート機能による安定した回路起動が可能であり、 過電流・過熱保護機能で異常時の回路保護を行います。 カーアクセサリ、OA 機器、産業機器などの昇圧用途や LED の 電源供給に最適です。 ■外 形 NJW4131GM1-A NJW4131R-B ■特 徴 ●出力スイッチ電圧 ●広動作電圧範囲 ●スイッチング電流 40V max. 4V∼35V 1.4A min. (A バージョン) 1.0A min. (B バージョン) ●PWM 制御方式 ●広発振周波数 300k∼1MHz ●ソフトスタート機能 4ms typ. ●低電圧誤動作防止回路内蔵 ●過電流・過熱保護機能 ●スタンバイ機能 ●外形 NJW4131GM1 : HSOP8 NJW4131R : VSP8 ■製品分類 製品名 NJW4131GM1-A NJW4131R-B Ver.2011-10-26 バージョン A B スイッチング 電流制限 1.4A min. 1.0A min. パッケージ 動作温度範囲 HSOP8 VSP8 一般:-40∼+85°C 一般:-40∼+85°C -1- NJW4131 ■端子配列 1 8 2 7 3 6 4 5 1 8 2 7 3 6 4 5 ピン配置 1. SW 2. ON/OFF 3. V+ 4. RT 5. IN6. FB 7. AGND 8. PGND Exposed PAD on backside connect to GND NJW4131GM1-A NJW4131R-B ■ブロック図 + V Regulator UVLO ON/OFF TSD High: ON Low : OFF (Standby) Standby ON/OFF 400kΩ Low Frequency Control SW PWM FB OSC ER⋅AMP Buffer IN- Vref OCP Soft Start Pulse by Pulse 1.0V RT -2- AGND PGND Ver.2011-10-26 NJW4131 ■絶対最大定格 (Ta=25°C) 項 目 入力電圧 SW 端子電圧 IN-端子電圧 ON/OFF 端子電圧 記 号 + V VSW VINVON/OFF 消費電力 PD 接合部温度範囲 動作温度範囲 保存温度範囲 Tj Topr Tstg 定 格 +40 +40 -0.3∼+6 +40 HSOP8 VSP8 単 位 V V V V 790 (*1) 2,500 (*2) 595 (*1) 805 (*2) mW °C °C °C -40∼+150 -40∼+85 -40∼+150 (*1): 基板実装時 76.2mm×114.3mm×1.6mm(2 層 FR-4)で EIA/JEDEC 準拠による (*2): 基板実装時 76.2mm×114.3mm×1.6mm(4 層 FR-4)で EIA/JEDEC 準拠による (4層基板内箔:74.2×74.2mm) ■推奨動作条件 項 電源電圧 タイミング抵抗 発振周波数 Ver.2011-10-26 目 記 号 + V RT fOSC 最 小 標 準 最 大 単 位 4.0 18 300 − 27 700 35 68 1,000 V kΩ kHz -3- NJW4131 ■電気的特性 (V+=VON/OFF=12V, RT=27kΩ, Ta=25°C) 項 目 低電圧誤動作防止回路部 ON スレッシホールド電圧 OFF スレッシホールド電圧 ヒステリシス幅 ソフトスタート部 ソフトスタート時間 発振器部 発振周波数 発振周波数 (低発振周波数コントロール時) 記 号 VT_ON VT_OFF VHYS TSS 件 最小 標準 最大 単位 3.8 3.7 60 3.9 3.8 100 4.0 3.9 – V V mV 2 4 8 ms 630 700 770 kHz – 270 – kHz V+=4∼35V Ta=-40°C∼+85°C 0.240 – – 0.275 1 3 0.310 – – V % % VFB=1V, VIN-=0.9V VFB=1V, VIN-=1.1V -1.0% -0.1 – – 8 1 1.00 – 80 0.6 16 2 +1.0% +0.1 – – 24 4 V µA dB MHz µA mA VIN-=0.9V 85 90 95 % A バージョン、ISW=1A B バージョン、ISW=1A A バージョン B バージョン VON/OFF=0V, VSW=40V – – 1.4 1 – 0.2 0.2 1.7 1.35 – 0.4 0.4 2.0 1.7 1 Ω Ω A A µA VON/OFF= L → H VON/OFF= H → L 1.6 0 – – – 400 V+ 0.5 – V V kΩ – – 2.3 – 2.8 1 mA µA V+= L → H V+= H → L VB=0.95V fOSC fOSC_LOW RT 端子電圧 周波数電源電圧変動 周波数温度変動 VRT fDV fDT 誤差増幅器部 基準電圧 入力バイアス電流 開ループ利得 利得帯域幅積 出力ソース電流 出力シンク電流 VB IB AV GB IOM+ IOM- PWM 比較器部 最大デューティーサイクル 条 MAXDUTY VIN-=0.4V, VFB=0.65V 出力部 出力 ON 抵抗 RON スイッチング電流制限 ILIM SW リーク電流 ILEAK ON/OFF 制御部 ON 制御電圧 OFF 制御電圧 プルダウン抵抗 VON VOFF RPD 総合特性 消費電流 スタンバイ時消費電流 -4- IDD IDD_STB RL=無負荷, VIN-=0.9V, VFB=0.65V VON/OFF=0V Ver.2011-10-26 NJW4131 ■アプリケーション回路例 L SBD COUT V OUT V IN CFB ON/OFF High: ON Low: OFF (Standby) CIN2 R2 RFB CIN1 4 3 2 1 RT V+ ON/OFF SW NJW4131 RT RNF Ver.2011-10-26 R1 IN- FB AGND PGND 5 6 7 8 CNF -5- NJW4131 ■特性例 発振周波数対タイミング抵抗特性例 最大デューティーサイクル対発振周波数特性例 o (V+=12V, Ta=25 C) o 1000 (V+=12V, VIN-=0.9V, Ta=25 C) 95 90 AX 発振周波数 UTY fOSC (kHz) 最大デューティーサイクル M D (%) 100 80 100 100 1000 タイミング抵抗 RT (kΩ) 発振周波数 f OSC (kHz) 発振周波数対電源電圧特性例 基準電圧対電源電圧特性例 o (Ta=25 C) 1.01 基準電圧 VB (V) 発振周波数 fosc (kHz) o (RT=27kΩ, Ta=25 C) 710 705 700 695 690 0 10 20 30 + 電源電圧 V (V) 1.005 1 0.995 0.99 40 0 + o 消費電流 I -6- 60 電圧利得 Av (dB) 3 DD (mA) (RT=27kΩ, RL=無負荷, VIN-=0.9V, VFB=0.65V, Ta=25 C) 4 2 1 0 10 20 30 + 電源電圧 V (V) 20 30 + 電源電圧 V (V) 40 誤差増幅器部 電圧利得,位相特性例 消費電流対電源電圧特性例 0 10 40 o (V =12V, Gain=40dB, Ta=25 C) Phase 45 180 135 Gain 30 90 15 45 0 0.1 1 10 100 1000 周波数 f (kHz) 位相 Φ (deg) 100 10 85 0 10000 Ver.2011-10-26 NJW4131 ■特性例 発振周波数温度特性例 基準電圧温度特性例 + (V =12V, RT=27kΩ) 1.005 720 700 1 0.995 680 660 -50 -25 0 0.99 -50 -25 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 2.4 2.2 2 + V =35V 1.8 1.6 1.4 1.2 1 -50 -25 0.5 出力ON抵抗 RON (Ω) V+=12V + V =4.0V 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 出力ON抵抗温度特性例 (A ver., I SW =1A) 0.4 V+=4.0V,12V,35V 0.3 0.2 0.1 0 -50 -25 スイッチング電流制限 I LIM (A) 2.6 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) スイッチング電流制限温度特性例 (B ver.) 2.2 2 1.8 V+=12V 1.6 V+=35V 1.4 1.2 1 + V =4.0V 0.8 0.6 -50 -25 0.5 出力ON抵抗 RON (Ω) スイッチング電流制限 I LIM (A) スイッチング電流制限温度特性例 (A ver.) Ver.2011-10-26 (V+=12V) 1.01 基準電圧 VB (V) 発振周波数 f OSC (kHz) 740 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 出力ON抵抗温度特性例 (B ver., I SW =1A) 0.4 0.3 V+=4.0V, 12V, 35V 0.2 0.1 0 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) -7- NJW4131 ■特性例 ソフトスタート時間温度特性例 低電圧誤動作防止回路部温度特性例 8 3.95 V T_ON 3.9 3.85 3.8 V 3.75 T_OFF 3.7 -50 -25 0 ソフトスタート時間 Tss (ms) スレッシホールド電圧 (V) 4 (V+=12V, VB=0.95V) 7 6 5 4 3 2 -50 -25 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 0 最大デューティーサイクル温度特性例 SWリーク電流温度特性例 (V =12V, RT=27kΩ. VIN-=0.9V) + + SWリーク電流 I LEAK ( µA) 94 92 90 88 86 84 -50 -25 0 (mA) 2 DD 消費電流 I V+=35V 1.5 V+=4.0V V =12V 1 0.5 0 -50 -25 -8- + 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) (V =12V,V ON/OFF =0V, VSW =40V) 2.5 2 1.5 1 0.5 0 -50 -25 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 消費電流温度特性例 (R =27kΩ, RL=無負荷, V =0.9V, V =0.65V) T INFB 3 2.5 3 スタンバイ時消費電流 IDD_STB ( µA) 最大デューティーサイクル MAXDUTY (%) 96 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) 1 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) スタンバイ時消費電流温度特性例 (VON/OFF=0V) 0.8 0.6 0.4 V+=35V V+=12V 0.2 0 -50 -25 V+=4.0V 0 25 50 75 100 125 150 o 周囲温度 Ta ( C) Ver.2011-10-26 NJW4131 ApplicationNJW4131 Manual 技 術 資 料 ■端子説明 端子番号 1 端子名称 SW 2 ON/OFF 3 V+ 4 RT 5 IN- 6 FB 7 8 AGND PGND Exposed PAD – 機能 パワーMOSFET のスイッチ出力端子です。 NJW4131 の動作・停止を制御する端子です。 内部は 400kΩでプルダウンされています。 High レベルで動作、Low レベルまたはオープンでスタンバイモードとなります。 IC の制御回路への電源供給端子です。電源供給のインピーダンスを下げるため、 IC の近傍にバイパスコンデンサを接続してください。 タイミング抵抗を接続して、発振周波数を決める端子です。 発振周波数は、300k∼1MHz の間で設定してください。 出力電圧を検出する端子です。 IN-端子電圧が基準電圧 1.0V typ.となるように出力電圧を抵抗分割して入力しま す。 フィードバック設定端子です。 FB 端子−IN-端子間にフィードバック抵抗・コンデンサを接続します。 接地 接地 GND 端子に接続されています。 (HSOP8 パッケージのみ) ■各ブロックの機能説明 1.スイッチングレギュレータ基本機能 ●エラーアンプ部 (ER⋅AMP) エラーアンプ部の非反転入力は、1.0V±1%の高精度基準電圧が接続されています。アンプの反転入力(IN-端子)に、 抵抗分割されたコンバータ出力を入力することで出力電圧を設定します。 アンプ部は高利得のゲインを持ち、フィードバック(FB 端子)が外部に出ております。FB 端子−IN-端子間にフィード バック抵抗・コンデンサを設けることが容易なため、各種アプリケーションにおける最適なループ補償を設定できま す。 ●発振回路部 (OSC) RT 端子-GND 間に抵抗を接続することで発振周波数を設定します。 「発振周波数対タイミング抵抗」特性例を参考に 300kHz∼1MHz の間で設定してください。 Ver.2011-10-26 -9- NJW4131Application Manual NJW4131 技 術 資 料 ■各ブロックの機能説明(続き) ●PWM 比較器部 (PWM) エラーアンプと三角波の信号を受け、スイッチングのデューティー比をコントロールします。 PWM 比較器部でエラーアンプと三角波の信号を受け、 スイッチングのデューティー比 0∼90% typ.までコントロール します。タイミングチャートを図1に示します。 Max Duty setting FB pin Voltage OSC Waveform (IC internal) Maximum duty: 90% ON SW pin OFF 図1 PWM 比較器部と SW 端子のタイミングチャート ●パワーMOSFET 内蔵されたパワーMOSFET のスイッチ動作によって、インダクタへ電力を供給します。過電流保護機能によって、 パワーMOSFET に流せる電流は、ILIM に制限され、A バージョンで 1.4A min. 、B バージョンで 1.0A min.です ●電源、GND 端子 (V+, PGND, AGND) スイッチング動作に伴い、周波数に応じた電流が IC に流れます。電源ラインのインピーダンスが高いと電源供給が不 安定になり、IC の性能を十分に引き出せません。V+端子−AGND 端子間の近傍にバイパスコンデンサを挿入し、高 周波インピーダンスを下げてください。 - 10 - Ver.2011-10-26 NJW4131 ApplicationNJW4131 Manual 技 術 資 料 ■各ブロックの機能説明(続き) 2.保護機能、付加機能 ●低電圧誤動作防止(UVLO)回路 電源電圧が低い場合、UVLO 回路によって動作を停止し、電源電圧 3.9V typ.以上で UVLO 回路が解除されて IC の動 作が開始します。電源電圧の立ち上がりと立ち下がりに 100mV typ.のヒステリシス電圧幅を持たせています。これに より、UVLO の解除と動作のばたつきを防止し、NJW4131 を安定して動作させます。 ●ソフトスタート機能 ソフトスタート機能によって、コンバータの出力電圧は設定値まで緩やかに電圧を上昇します。ソフトスタート時間 は 4ms typ.であり、エラーアンプの基準電圧が 0∼0.95V になるまでの時間で定義されます。 (図2)ソフトスタート 回路は、UVLO 解除、サーマルシャットダウンからの復帰後に動作します。IN-端子が約 0.4V になるまで、低発振周 波数にコントロールされ、タイミング抵抗によって設定された発振周波数の約 40%で動作します。 1.0V Vref, IN- pin Voltage Max Duty setting FB pin Voltage OSC Waveform ON SW pin OFF UVLO(3.9V typ.) の解除、 スタンバイ、 サーマルシャットダウン からの復帰 低発振周波数動作 VIN- =約0.4V Soft Start時間 Tss=4ms typ. VB=0.95Vまで 通常動作 Soft Start効果時間 VB=1.0Vまで 図2 ソフトスタートのタイミングチャート Ver.2011-10-26 - 11 - NJW4131 NJW4131Application Manual 技 術 資 料 ■各ブロックの機能説明(続き) ●過電流保護機能 (OCP) 内蔵のパワーMOSFET に ILIM 以上の電流が流れると、過電流保護機能によってパワーMOSFET を OFF にし、次の三 角波周期でスイッチング動作を復帰します。パルス毎に過電流保護を行うため、過電流の異常状態から回復にとも ない、スイッチングレギュレータの出力電圧を自動的に復帰させることができます。 過電流検出動作時のタイミングチャートを図3に示します。 また IN-端子電圧が 0.4V 以下になると、低発振周波数にコントロールされ、発振周波数を設定値の約 40%で動作しエ ネルギーの消費を抑えます。 Max Duty setting FB pin Voltage OSC Waveform ON SW pin OFF Sw itching Current ILIM 0 定常状態 過電流保護 動作状態 定常状態 図3 過電流保護動作時のタイミングチャート スイッチング電流制限値 ILIM は、温度上昇に伴い低下する傾向があります。 (スイッチング電流制限温度特性例参照) 高温条件下でも出力電流を確保するためには、インダクタに流れるピーク電流を考慮して設計してください。 ●サーマルシャットダウン機能 (TSD) サーマルシャットダウン機能は、NJW4131 のチップ温度が 170℃*を超えると SW 動作を停止します。 チップ温度を 150℃*以下になると、ソフトスタートによる SW 動作が開始されます。 なおサーマルシャットダウン機能は、高温時における IC の熱暴走を防止するための予備回路であり、不適切な熱設 計を補うためでは有りません。IC のジャンクション温度(∼+150°C)範囲内で動作させるように、十分な余裕を満 たすことをお奨めします。 (* 参考値) ●ON/OFF 機能 ON/OFF 端子を 0.5V max.以下にすることで NJW4131 の機能を停止させスタンバイ状態にします。 内部は 400kΩでプルダウンされており、端子オープン時はスタンバイモードに移行します。 スタンバイ機能を使用しない場合は、ON/OFF 端子を V+に接続してください。 - 12 - Ver.2011-10-26 NJW4131 ApplicationNJW4131 Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション情報 ●インダクタ 電流値 ピーク電流 Ipk インダクタには大電流が流れるため、飽和しない電 インダクタ 流能力を持たせる必要があります。 ①連続モード L 値を小さくするとインダクタのサイズも小さくな 電流 ΔIL ります。しかし、ピーク電流が大きくなり効率が悪 ②臨界モード 化します。 ③断続モード 反面、L 値が大きくなると、スイッチング時のピー 0 ク電流は低下します。よって変換効率の改善、出力 tON tOFF リップル電圧の低下につながります。あるレベル以 周波数 fOSC 上では、インダクタンスの巻数増加により、抵抗成 分による損失(銅損)が大きくなります。 図4 インダクタ電流の状態偏移 理想的には、インダクタンス電流が連続モードになる様にL値を設定します。しかし負荷電流が小さくなる程、①連 続モード → ②臨界モード → ③断続モードと電流波形が変化(図4)していきます。 断続モードにおいては、出力電流に対するピーク電流が大きくなり、変換効率が低下しやすくなります。場合によっ ては L 値を大きくし、連続モードの維持できる負荷電流領域を広げます。 ●キャッチ・ダイオード パワーMOSFET が OFF サイクルの時は、インダクタに蓄えられた電力がキャッチ・ダイオードを経由して出力コン デンサに流れます。そのためダイオードにはサイクル毎に、負荷電流に応じた電流が流れます。ダイオードの順方向 飽和電圧と電流の積が電力損失となるため、順方向飽和電圧の低い SBD (Schottky Barrier Diode)が最適です。 また SBD は、逆回復時間が短い特徴を併せて持っています。逆回復時間が長くなると、パワーMOSFET が OFF か ら ON サイクルに移行した時、貫通電流が流れてしまいます。この電流によって効率の低下、ノイズの発生等に影響 を及ぼす可能性が有ります。 スイッチング素子が ON サイクルの時は、 ダイオードに逆電圧が印可された状態になります。 ダイオードの耐圧には、 最大出力電圧以上の余裕を持たせてください。また高温時は SBD の逆電流が増加する特徴があり、出力コンデンサ に蓄えたエネルギーを損失しやすくなります。アプリケーションの動作条件によっては順方向飽和電圧よりも逆電流 特性を重視したほうが、効率向上につながる場合があります。 ●入力コンデンサ スイッチングレギュレータの入力部には、周波数に応じた過渡的な電流が流れます。電源回路に供給される電源イン ピーダンスが大きいと入力電圧の変動につながり、NJW4131 の性能を十分に引き出せません。よって入力コンデン サは、できる限り IC の近くに挿入してください。 ●出力コンデンサ 出力コンデンサは、インダクタンスからの電力を蓄え、出力への供給電圧を安定させる役割をします。 出力コンデンサの選定には、ESR(等価直列抵抗:Equivalent Series Resistance)の特性、リップル電流、耐圧を考慮 に入れる必要が有ります。 特にリップル電流、耐圧は、入力コンデンサ同様、コンデンサの定格以下で使用しなければいけません。 また周囲温度によっては、コンデンサの容量低下、ESR の増加(低温時) 、寿命(高温時)へ影響を与えます。出力 コンデンサの定格には、十分なディレーティングを持たせるのが望ましい使い方です。 出力コンデンサの ESR 特性は、 出力リップルノイズへ大きな影響を与えます。 低 ESR タイプのコンデンサであれば、 更にリップル電圧を下げることが出来ます。 Ver.2011-10-26 - 13 - NJW4131 NJW4131Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション情報(続き) ●基板レイアウト スイッチングレギュレータは、インダクタの充放電によって出力へ電力供給を行います。発振周波数に応じて電流が 流れるため、基板のレイアウトは重要な項目です。大電流の流れるラインは太く、短くし、ループ面積を最小限にし てください。図5に昇圧回路における電流ループを示します。 L V IN SBD CIN L COUT NJW4131 内蔵 SW V IN CIN (a) 昇圧回路 SW ON 状態 SBD NJW4131 内蔵 SW COUT (b) 昇圧回路 SW OFF 状態 図5 昇圧回路における電流ループ GND ラインは、パワー系と信号系を分離した上で1点アースをとるのが望ましい接続です。 また電圧検出のフィードバックラインは、できるだけインダクタンスから離します。本ラインはインピーダンスが高 いため、インダクタンスからの漏れ磁束でノイズの影響を避けるように配線します。 図6に昇圧回路での配線例、図7にレイアウト例を示します。 L SBD V OUT SW V IN CIN V COUT + RL(負荷) PGND (バイパス用) NJW4131 RFB RT RT CFB INR2 AGND R1 負荷近傍で電圧を検出し、 電圧降下が負荷へ影響を与え ないように配慮する。 ICのインピーダンスが高いため、 信号系の GNDを パワー系と分離する。 電圧検出抵抗 R1,R2はできるだけ ICの近くに配置する。 図6 昇圧回路での配線例 - 14 - Ver.2011-10-26 NJW4131 ApplicationNJW4131 Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション情報(続き) ON/OFF L SBD Signal GND Area VIN CIN2 RT VOUT COUT CFB RFB R1 R2 RNF CNF CIN1 GND IN Feed back signal Power GND Area GNDOUT 裏面にてパワー系 GND と信号系 GND を接続 図7 レイアウト例(上面パターン) Ver.2011-10-26 - 15 - NJW4131Application Manual NJW4131 技 術 資 料 ■パッケージパワーの計算 昇圧回路の損失の多くは、スイッチ動作を行う NJW4131 のパワーMOSFET によって発生します。そのため下記式を 目安に NJW4131 の損失として考えます。 入力電力 :PIN = VIN × IIN [W] 出力電力 :POUT = VOUT × IOUT [W] ダイオードの損失 :PDIODE = VF × IL(avg) × OFF duty [W] NJW4131 の消費電力 :PLOSS = PIN − POUT − PDIODE [W] ただし、 VIN VOUT VF OFF duty :コンバータの入力電圧 :コンバータの出力電圧 :ダイオードの順方向飽和電圧 :スイッチ OFF デューティー IIN IOUT IL(avg) :コンバータの入力電流 :コンバータの出力電流 :インダクタ平均電流 変換効率 η は、下記式によって求められます。 η = (POUT ÷ PIN) × 100 [%] 求めた消費電力 PD に対して温度ディレーティングを考慮します。 消費電力対周囲温度特性例(図8)を参考に、定格内に収まるか確認してください。 NJW4131GM1 (HSOP8 Package) Power Dissipation vs. Ambient Temperature NJW4131R (VSP8 Package) Power Dissipation vs. Ambient Temperature o At on 4 layer PC Board At on 2 layer PC Board 800 D Power Dissipation P Power Dissipation P (mW) At on 4 layer PC Board At on 2 layer PC Board 2500 (Tj= ~150 C) 1000 D (mW) o (Tj= ~150 C) 3000 2000 1500 1000 500 0 -50 -25 0 25 50 75 100 125 Ambient Temperature Ta (oC) 150 600 400 200 0 -50 -25 0 25 50 75 100 125 Ambient Temperature Ta (oC) 150 基板実装時 76.2mm×114.3mm×1.6mm(2 層 FR-4)で EIA/JEDEC 準拠による 基板実装時 76.2mm×114.3mm×1.6mm(4 層 FR-4)で EIA/JEDEC 準拠による (4層基板内箔:74.2×74.2mm) 図8 消費電力対周囲温度特性例 - 16 - Ver.2011-10-26 NJW4131 ApplicationNJW4131 Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション設計例 ●昇圧アプリケーション仕様 IC :NJW4131GM1-A 入力電圧 :VIN=12V 出力電圧 :VOUT=24V 出力電流 :IOUT=0.3A 発振周波数 :fosc=700kHz L 47µH/1.52A SBD COUT 10µF/50V V OUT =24V V IN=12V ON/OFF High: ON Low: OFF (Standby) CIN1 10µF/50V RT 27kΩ IC L D CIN1, COUT CIN2 CNF CFB R1 R2 RT RNF RFB Ver.2011-10-26 数量 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 RFB 27kΩ 4 3 2 1 RT V+ ON/OFF SW R2 300kΩ R1 13kΩ NJW4131 IN- FB AGND PGND 5 6 7 8 RNF 8.2kΩ 記号 CFB 120pF CIN2 0.1µF/50V CNF 6,800pF 部品番号 NJW4131GM1-A CDRH8D38NP-470N CMS11 UMK325BJ106MM 0.1µF 6,800pF 120pF 13kΩ 300kΩ 27kΩ 8.2kΩ 27kΩ 概要 40V MOSFET 内蔵 SW.REG. IC Inductor 47µH, 1.52A Schottky Diode 40V, 2A Ceramic Capacitor 3225 10µF, 50V, X5R Ceramic Capacitor 1608 0.1µF, 50V, B Ceramic Capacitor 1608 6,800pF, 50V, B Ceramic Capacitor 1608 120pF, 50V, CH Resistor 1608 13kΩ, ±1%, 0.1W Resistor 1608 300kΩ, ±1%, 0.1W Resistor 1608 27kΩ, ±1%, 0.1W Resistor 1608 8.2kΩ, ±5%, 0.1W Resistor 1608 27kΩ, ±5%, 0.1W メーカー New JRC Sumida Toshiba Taiyo Yuden Std. Std. Std. Std. Std. Std. Std. Std. - 17 - NJW4131 NJW4131Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション設計例(続き) ●発振周波数の設定 「発振周波数対タイミング抵抗特性例」より、fosc=700kHz のとき、RT=27 [kΩ], t=1.43[µs]となります。 昇圧回路のデューティー比は、 ⎛ V Duty = ⎜⎜1 − IN ⎝ VOUT ⎞ ⎛ 12 ⎞ ⎟⎟ × 100 = ⎜1 − ⎟ × 100 = 50 [%] ⎝ 24 ⎠ ⎠ より、tON=0.72 [µs], tOFF=0.71 [µs]で動作します。 ●インダクタの決定 インダクタに流れる平均電流は入力電流 IIN となるため、変換効率をη=90%と想定して入力電流を決定します。 IIN = VOUT × IOUT 24 × 0.3 = = 0.67 [A ] η × VIN 0.9 × 12 最大出力電流 0.3A を想定するため、スイッチング電流制限最小値 ILIM=1.4A(min)にかからないように、インダクタ・ リップル電流を設定します。本アプリケーションでは、インダクタ・リップル電流を、入力電流の 30%として設計し ます。 リップル電流をΔIL とすると、 ΔIL = 0.3 × IIN = 0.3 × 0.67 = 0.2 [A] インダクタンス L を求めます。 L= 12 VIN × 0.72µ = 43.2 ⇒ 47 [µH] × t ON = 0 .2 ∆IL インダクタンス L は、理論上の値であり、アプリケーションの仕 様、部品等によって最適な値は異なりますので、最終的には実機 で微調整を行います。 ピーク電流 Ipk インダクタ電流 ΔIL 入力電流 IIN 0 定常動作時のピーク電流 Ipk を求めます。 Ipk = IIN + ∆I L 0.2 = 0.67 + = 0.77 [ A ] 2 2 周期 t 周波数 fOSC=1/t tON tOFF 図9 インダクタ電流波形 インダクタンスに流せる電流は、スイッチング時のピーク電流に対して十分な余裕を持たせます。 アプリケーション回路では、47µH/ 1.52A,を使用します。 - 18 - Ver.2011-10-26 NJW4131 ApplicationNJW4131 Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション設計例(続き) ●出力コンデンサの決定 出力コンデンサは、出力のリップルノイズを決める重要な部品です。 出力コンデンサは、ESR、リップル電流、コンデンサ耐圧に重点をおいて決定します。 出力リップル電圧は、下記計算式で表せます。 ESR = Vripple(p −p ) ∆IL また出力容量の選定には、十分なリップル電流を許容できる物を選びます。 コンデンサに流れるリップル電流の実効値(Irms)は、 Irms = IPK − IOUT = 0.77 2 − 0.3 2 = 0.71 [ Arms ] 2 2 となります。 ここでは十分なマージンをふまえて、上記スペックを満たせるコンデンサを使用します。アプリケーション回路では、 セラミックコンデンサ COUT=10µF/50V を使用します。 ●電圧検出回路部の決定 出力電圧 VOUT は、R1,R2 の抵抗比で決まります。R1,R2 に流れる電流は、Error AMP に流れるバイアス電流を無視 できるような値とします。 ⎛ R2 ⎞ ⎛ 300k ⎞ VOUT = ⎜ + 1⎟ × VB = ⎜ + 1⎟ × 1 = 24.07 [ V ] ⎝ R1 ⎠ ⎝ 13k ⎠ NJW4131 のエラーアンプ出力は、FB 端子に接続されているため、フィードバックを容易にかけることが出来ます。 エラーアンプにおける電圧検出は、DC ゲインを重視します。AC ゲインは、スイッチングノイズ、商用リップルノイ ズ等の成分が多いため、ゲインを大きくするとスイッチングレギュレータの安定性に影響を与えます。 エラーアンプの帰還方法は、DC ゲインを十分に上げ、AC ゲインを下げる接続方法をとります。 本アプリケーションでは、帰還抵抗 RNF=8.2kΩとコンデンサ CNF=6,800pF を直列接続します。 ただし AC ゲインを下げ過ぎますと、急激な負荷変動に追従できなくなる可能性があります。アプリケーションの部 品、レイアウト、環境などによって異なる為、カットアンドトライで最適化することをお奨めします。 Ver.2011-10-26 - 19 - NJW4131 NJW4131Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション特性例 :NJW4131GM1-A Efficiency vs. OutputCurrent (VOUT=24V) 100 f=700kHz L=47µH 90 Efficiency [%] 80 70 60 VIN =9V 50 VIN =12V 40 VIN =18V 30 20 10 0 1 10 100 1000 Output Current IOUT [mA] Load Regulation 25.0 Output Voltage VOUT [V] 24.8 f=700kHz L=47µH 24.6 24.4 24.2 24.0 23.8 23.6 VIN =9V 23.4 VIN =12V 23.2 VIN =18V 23.0 1 10 100 1000 Output Current IOUT [mA] <注意事項> このデータブックの掲載内容の正確さには 万全を期しておりますが、掲載内容について 何らかの法的な保証を行うものではありませ ん。とくに応用回路については、製品の代表 的な応用例を説明するためのものです。また、 工業所有権その他の権利の実施権の許諾を伴 うものではなく、第三者の権利を侵害しない ことを保証するものでもありません。 - 20 - Ver.2011-10-26