特定テーマ 2 ヒューマンインターフェースデバイスの要素技術開発

特定テーマ 2 ヒューマンインターフェースデバイスの要素技術開発
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特定テーマ
2 ヒューマンインターフェースデバイスの要素技術開発
Technical Development of the Human Interface Device
森川 智宏
Tomohiro Morikawa
システム機器事業部 技術部
1 まえがき
携帯電話やデジタルスチルカメラの普及、 また車内環境ではカーナビゲーションシステムの
搭載など様々なシーンで人と機器とがインターフェース(以降、ヒューマンインターフェースと称
します)する機会が増えております。ヒューマンインターフェースの形は多岐に渡りますが、機器
への入力動作を行う環境に絞ると、これまでシステム機器事業で培ってきた接触技術を様々な
形で応用でき、多彩な技術ソリューションを提供することができます。
入力デバイスの分野で常に求められることは、操作ミスが無く高速に入力出来ることであり、
かつ当然のことながら小型・軽量化の追求も必要となります。また、 近年のコンシューマー市
場を見ると、製品のライフサイクルが非常に短くなり、デザイン性を重視する傾向が強くなって
きております。そのため入力デバイスの開発においては、コアとなる要素技術を確立し、これを
様々な製品にオンデマンドで提供していくことを重視して開発に取り組んでおります。
本論では、まずシステム機器事業の発端となったスイッチ製品のコア技術に関して接触技術
の原理とその応用製品を紹介し、次にタッチパネル技術の概要、さらに後半では近未来のヒュー
マンインターフェースデバイスを創造し、今後の技術的な取り組みの方向について紹介します。
写真 1 スイッチブロック製品
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写真 2 タッチパネル応用製品
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2 入力デバイスのコア技術
2.1 接触技術を基底としたスイッチブロック製品の開発
2.1.1 接触の原理
接触技術を利用した製品として、複数のスイッチを同一基盤上に集積化したスイッチブロック
と称する製品群を展開しております。ここで搭載される各種スイッチの接触技術の基本は
① 接触抵抗特性(接点圧、コンタクト材料、表面処理)
② 絶縁抵抗特性(絶縁材料)
③ 耐電圧特性(絶縁材料、絶縁距離)
④ 操作特性(バネ特性、バネ構造)
⑤ 実装特性(実装工法、端子表面処理)
を設計することにあります。上記の中でも、特に接触抵抗特性の設計が重要となります。そ
の原理を理解するために接触部を拡大して見ると、 コンタクトとなる金属表面には酸化や腐食
などによる汚染物質が表面に付着しており、真の接触(金属接触)部は写真 3 で示す部分のみ
であることが分かります。したがって、 実際に接触部を流れる電流は真の接触部を流れる電流
と汚染物質が付着した部分で起きるトンネル効果等による電流(皮膜接触)の和となり、 これ
を接触抵抗で言い換えると、金属接触部の抵抗(集中抵抗)と皮膜接触部の抵抗(境界抵抗)
の和となります(写真 4 参照)。写真 4 の部分を等価回路で表すと図 1 のようになります。
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����
�����
写真 3 接点部分の拡大写真
���� Rc
���� Rf
� � �
写真 4 接触抵抗と境界抵抗
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図 1 接触抵抗の等価回路
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ここで、 集中抵抗 Rc はコンタクト材料の抵抗率に依存し、 境界抵抗 Rf はコンタクト表面
に付着した汚染物質の影響に依存します。
この原理に従うと、 接触抵抗の特性改善を図るには境界抵抗部を極力減らし、その分を集
中抵抗に変えることが必要です。そのため、 実際の設計では接触部のバネ特性を改善して集
中抵抗部を増加させ、 また接触の安定化向上と境界抵抗部の低減(集中抵抗部を増加)のた
め汚染皮膜の発生防止策として金属端子の表面処理を施します。
2.1.2 メタルドーム接点における接触技術の適用
接触技術の具体的適用例として、メタルドーム製品における設計事例を紹介致します。
メタルドームは様々なスイッチ製品の接触部として広く使われおり、 高い接触信頼性と、 用
途毎に適した操作感触(クリック感など)が求められます。まず接触部の特性に関して説明い
たします。メタルドームにおける接触部の表面処理の差異による接触抵抗特性の変化を測定し
た結果をグラフ1に示します。測定サンプルは写真 5 で示す構造のドーム接点部分で、 メタル
ドームはステンレス材料が基材となっており、評価ではメッキ無し(ステンレス基材のみ)、ニッ
ケルメッキのみ、ニッケルメッキ上に銀メッキを施したときの 3 種類で比較を行いました。
基盤側は FPC で、パターン(メタルドームとのコンタクト部)
の表面仕様は金メッキ処理を施
しております。
この結果から、 メッキ仕様を施すことで著しく接触抵抗を低減させる効果があることが分か
ります。また、サンプル毎の接触抵抗値のバラツキも小さくなっており、 個々の接触抵抗の低
減効果だけでなく、大量生産時の接触抵抗値の安定性向上も図れることが分かります。
������
FPC �������
��������������
FPC
写真 5 FPC 上に搭載したドーム接点の構造(断面写真)
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4
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グラフ 1 メッキ仕様と接触抵抗値の相関
次にメッキ違いの 3 種類を環境評価試験にかけたときの測定結果を表1に示します。評価
方法に関しては JIS 規格で規定されている「電子機器用スイッチの試験方法」 C 5441-1994
に準拠した試験で行いました。
ここで、 接触抵抗の試験前後の変化率を比較すると、メッキ無しおよびニッケルメッキ仕様
では試験前後で大幅に変化していることが分かりますが、一方、ニッケル上銀メッキ処理を施し
たものは、いずれの評価結果を見ても変化率の変動が小さいことが分かります。この結果を前
述した原理の上から考えると、金属表面に付着する汚染物質を抑制する効果がメッキ処理にあ
ることになります。よってメッキ処理には環境特性を改善する効果もあり、信頼性を向上させる
ことが出来ると言えます。
表 1 環境評価試験結果
試験項目
メッキ仕様
メッキ無し
高温高湿
ニッケルメッキ
ニッケル上銀メッキ
高温
90
250
3
ニッケル上銀メッキ
3
ニッケルメッキ
メッキ無し
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2
ニッケルメッキ
ニッケル上銀メッキ
Copyright
4
ニッケルメッキ
メッキ無し
温度サイクル
170
15
メッキ無し
温湿度サイクル
15
メッキ無し
ニッケル上銀メッキ
低温
変化率[%]
20
200
1
150
ニッケルメッキ
60
ニッケル上銀メッキ
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これまで上述したように、 表面処理により接触抵抗の低減化や信頼性の向上を図ることが
出来ますが、接触する金属同士の親和性の考慮も必要となります。表 2 に異種金属間の接触
親和性を示します。表 2 において、白丸は同じ金属同士の接触であり親和性が最も良く、黒丸
は比較的好ましいものとなります。
入力デバイス用メタルドームの設計では、 基盤側接点がプリント基板もしくは FPC となりま
すので接触部の平滑度や耐腐食性の面から金メッキ処理されることが多いです。そこで表 2 か
らメタルドーム側の金属種候補を見ると、Group 番号で 1から 3 が好ましいことが分かります。
そのなかでも、 Au 系が最も親和性が良いのは当然ですが、コストが高いというデメリットがあ
り、逆に Ag 系は Au 系よりも親和性は劣りますが、コスト面でメリットがあります。つまり、こ
の点で要求仕様(接触親和性)と許容されるコストとのトレードオフが存在します。現在、設計
しているメタルドームでは、最終的な使用環境から判断して銀系の表面処理を選択する場合が
主流となっております。
表 2 異種金属間の接触親和性
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2.1.3 スイッチブロック製品への応用例
上述した接触技術を入力デバイスのコア技術として活用し、ドームシートや 4 方向スイッチ
等の入力デバイス製品に応用した例を紹介いたします。写真 6 は 4 方向スイッチ、 写真7はシ
ャッタースイッチ、写真 8 は携帯電話用ドームシートとなります。
前述したように、近年これらの製品においてはデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ
向けの需要が多く、 スイッチ単体で製品化するよりも複数のスイッチを同一基盤上に集積化し
た製品(「スイッチブロック」と呼んでいる製品)に展開する場合が増えております。
写真 6 4 方向スイッチ
写真 7 シャッタースイッチ
写真 8 携帯電話用ドームシート
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2.2 ヒューマンインターフェースデバイスの開発
表示器に直接入力機能を付加するタッチパネル技術の取り組みに関して紹介します。
タッチパネルの入力検出方法としては、抵抗膜方式や光学方式などがありますが、本稿では
光学式を利用したタッチパネルについて紹介いたします。まず、 光学方式での入力検出の原理
を図 2 に示します。光学式タッチパネルは、赤外線 LED などの発光素子とフォトトランジスタ
やフォトダイオードなどの受光素子を対向して配置し、平面上に光線を格子状に配置した構造
として、光線が遮断された位置を検出することでタッチした位置を求めています。
図 2 光学式タッチパネルの構造と入力検出方式の原理
この技術を応用した製品展開として、 車載用カーナビゲーションシステムに適用した例を写真
9、 10 に紹介します。
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写真 9 光学式タッチパネル応用製品
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写真 10 実際に車に搭載した時の外観
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光学式タッチパネルの開発においても低消費電力化や狭額縁化、また低価格化の要求があ
るため、受光・発光素子を片側に集め、その反対側に高効率の反射板を配置した構造の反射
式タッチパネルなど更に新しい技術開発に取り組んでおります。
図 3 反射式タッチパネルの構造と入力検出方式の原理
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3 近未来ヒューマンインターフェースデバイスの技術開発動向
3.1 接触技術の革新
本稿で紹介したメタルドームでは長年培ってきた接触技術を応用することで、 安定した接触
信頼性と適した操作感触を実現しており、 現在様々な市場にスイッチ製品の一部として供給し
ております。近年では、 携帯電話やデジタルスチルカメラといった市場向けにスイッチブロック
製品としての需要が非常に増えております。この分野においては、 一般コンシューマー向け製
品となるため、市場価格の激化から一部品に対するコストも非常に厳しく、また、製品出荷台
数が多いため、品質的にも数量的にも安定提供し続けることが重要となります。そのため、現
在この市場に特化したメタルドーム製品の開発が急務であると捉えております。
コンシューマー市場の要求スペックの中で着目すべきは接触抵抗値です。現在われわれが提
供している製品で実現している抵抗値よりも1桁程度高くても許容されることが分かっており、
ここでの余裕度をコストに反映させる技術開発が、現在最も大きな課題となっております。
接触抵抗値の緩和から考えると表面処理工程を減らし、 コストに反映する手段が効果的で
すが、前述の通り、接触抵抗値のバラツキを抑える技術が表面処理であることから、それを省
略することは大量生産時の安定供給という面で不安が残ります。
そこで、具体的には
① ニッケルメッキ処理の技術革新
② メッキ材料の検討(ニッケル以外)
③ 基材自体の検討
の改善・新規開発に取り組んでおります。
また、 将来(究極的)にはメッキ処理を施さずに基材のみで現状と同等の品質を実現するこ
とを目指し、材料の研究と最良な接触部形状の研究を行っております。
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3. 2 スイッチブロック製品のインテリジェント化
単体スイッチの開発以来、 これまでにわれわれが描いてきた入力デバイスの開発ロードマッ
プは図 4 のようになります。現在では、本稿で紹介したような各種スイッチを集積化したスイッ
チブロックと呼ぶ製品群にまで発展・実現することが出来ており、今後はスイッチブロックの更
なる進化形として、 制御機能を搭載したインテリジェントな製品展開(システムスイッチと呼ん
でいる製品群)を考えております。
図 4 入力デバイスの開発ロードマップ
スイッチブロック製品では複数のスイッチが混載されていくと共に、 信号として出力する端子
数が増加します。そこで、携帯機器などの物理的なスペースの確保が難しい製品向けに、制御
機能の搭載よる信号本数の削減、且つ高付加価値な技術ソリューションの提供を目的としたイ
ンテリジェントなスイッチブロック製品の開発を考えております。また、 携帯機器の傾向として
メモリー増加などの目的でメモリーカードを搭載するものが増えてきており、 メモリーカード制
御までをスイッチブロックの同一基盤上で行うことも可能と考えております。
機能イメージ(ブロック図)は図 5 のようになります。スイッチブロックとマザーボード側の通
信はシリアル転送などの汎用インターフェースを用い、信号の本数を極端に減らすことを想定し
ております。メモリーカード制御を含む場合は、 転送レートが重要になりますので高速な USB
インターフェース等を採用することが有効と考えます。ただし、 LSI の内蔵化はマザーボードと
の接続信号本数を低減させる効果がありますが、 逆にスイッチブロック内の実装が高密度化さ
れますので生産技術的課題は大きくなりますが、これまでに培った高密度な SMT 実装や半導
体ベアチップ実装技術を保有しておりますので、 COB(Chip On Board) 実装やベアチップ実
装技術を駆使し、実現化を図ります。
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図 5 インテリジェントなスイッチブロック製品の機能ブロック図
写真 11 COB 実装の透過写真
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写真 12 フリップチップ実装応用製品
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3.3 近未来ヒューマンインターフェースデバイスへの取り組み
ここまでは長年培ってきた接触技術を中心に現状の要素技術、今後の展開に関して紹介し
てきましたが、 次により広義に入力デバイスを捉え、 近未来のヒューマンインターフェースを創
造し、今後取り組んでいこうとする技術開発の動向に関して紹介します。
本稿の冒頭でも触れましたが、人と機器とがインターフェースするシーンが様々な場所と時間
で増えており、 携帯電話に代表されるように「常に身に付ける」ことが一つのキーワードとして
挙げられます。また、 車載環境ではカーナビゲーションシステムの搭載率が増え、今後更にイ
ンターネット接続が普及するなど高機能化されていき、「いつでも どこでも すぐに つなが
る」ことが重要になります。一般的に「ユビキタス」と称されておりますが、その時代の到来によ
り、マシン−マシン間の接続環境は大きく向上すると思われます。ですが、最終的な人とマシン
とのインターフェースが改善されない限り、ユビキタス社会が多くの人々に喜ばれる社会とはな
り得ないと考えます。この観点から、これから 4 ∼ 5 年先に訪れるユビキタス時代に発揮する
近未来ヒューマンインターフェースデバイス開発の指標として、「操作性の未来を創造」をコン
セプトに掲げております。
図 6 操作性の分析
ここで、ヒューマンインターフェースの基礎である操作性の分析に関して図 6 で紹介します。
われわれが分析した結果では、操作とは目標から始まり、評価で終わる 7 つの一貫した認知活
動であると捉えます。
この分析結果を踏まえ、操作し易い入力デバイス、理想的な入力デバイスを考えると、
① 最速入力操作
② フルブラインド操作
の 2 点がキーワードで挙げられます。
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この 2 点がユビキタス時代に欠かせない入力デバイスの具体的キーワードになると位置付
け、最も重要視する項目に捉えております。
次に、表示機器のみに着目して未来予測してみると、表示を見ながら入力を行う場合、タッ
チパネル技術が今後も有効と考えられます。この分野では表示器の技術進歩に合わせた技術
開発が重要となります。表示器の進化には、画面の縮小化の流れと、相反する拡大化の流れ
があり、画面の縮小化では小さい画面の中で高精細な表示をするため、それに伴った高密度な
入力検出方式の開発が必要となります。現行の抵抗膜方式で考えると、抵抗体の材料技術の
進歩が必要になります。また、大画面化に対しては持ち運びの問題がありますので、色々な形
状をした表示器が創造出来ます。極端には新聞のように折りたたんで持ち運んだり、 図面のよ
うに丸めたりすることが出来るようになり、 表示器自体が紙に近づいていくのではないかと予
想されます。これを予見するとタッチパネルの薄型化、フレキシブル化に大きな需要があると考
えられます。これに向け、フレキシブルな材料で実現できる入力方式の開発と材料の研究を行っ
ております。また、 駅の券売機などで多くタッチパネルが使われていますが、 入力されるときの
感触が無いため、つい画面を強く押し過ぎてしまい画面に指紋や傷がつき表示品質が落ちてし
まうことがあります。これを解消するために、 指紋がつかないタッチパネルや操作感触をお客
様に与えるタッチパネルの開発に取り組んでおります。
また、デバイス全般に共通する事項として、機器が小型多機能化されていくことを考えると、
部品個々においても単に小型軽量化するだけでなく、 搭載する機能の多彩化したインテリジェ
ントタイプも必要になるのではないかと予見されます。前述したスイッチブロックのインテリジェ
ント化と同様の予見となりますが、機能を集積化するという面においては、やはり半導体を利用
すること(内蔵すること)が最も現実的です。半導体の微細加工技術は既にナノオーダーまで進
歩しており、 かなり大規模なシステムを数ミリ角のチップに内蔵することができます。一般的に
システムLSIと呼ばれる分野となりますが、この分野においてはHDL言語やC言語を用いたハー
ドウェア記述によるオリジナルな IP(設計資産)の開発と蓄積に取り組んでおり、近未来ヒュー
マンインターフェースデバイスに特化した LSI 開発が実現可能な段階に来ております。
メモリーカードリーダー/ライ
ター用で開発したシステム LSI
LSI
��������������������������
図 13 当社カスタムで開発したシステム LSI
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上述したように、ユビキタス社会の到来によりマシンーマシン間の接続環境は飛躍的に向上
しても、 人とマシン間のインターフェースが改善されないと多くの人々に喜ばれる社会になり得
ないとの観点から、入力デバイスのユビキタス対応を必要不可欠と考えると、セキュリティー技
術も視野に入れ、 技術的に対応できることが重要となります。セキュリティー技術は情報交換
を行う双方向の問題となるので、ハードウェアのみでは実現できず、高いソフトウェア技術が必
要です。また、様々な OS(オペレーションシステム)上での互換性等も確立していなければユビ
キタスになり得ないため、ドライバソフト開発技術等も保有することが必要と考えられます。そ
のため、現在では写真 13 にあるメモリーカードリーダー/ライター製品等で、ドライバソフトを
含めたソフトウェア開発にも注力しており、更なる技術革新を行っております。
システム機器事業におけるヒューマンインターフェースデバイス開発は、 スイッチ製品におけ
る接触技術に始まり、小型・薄型化と集積化の展開を経て、今後のユビキタス社会に向けて
は高機能化へと向かうものと考えており、「操作性の未来を創造」をコンセプトにこれから 5
年、10 年先にどのように社会が変わっていくのかを常に創造し、お使いいただくお客様の付加
価値向上に貢献できる製品を提供し続けていきたいと考えております。
4 むすび
システム機器事業部では接触技術をコアとしたスイッチ製品の開発を発端に、現在まで様々
な入力デバイスを開発してきました。本稿では各種スイッチの接点部分で利用しているメタル
ドームの接触要素技術に関して紹介しましたが、 この製品ではこれまでに培ってきた接触技術
を余すところ無く応用しており、非常に高い接触信頼性を実現・提供することが出来ておりま
す。今後も更に材料の研究、表面処理の技術革新を行い、より安価で接触信頼性の高い製品
を提供し続けていくことを目標に取り組んでおります。
また、本稿では製品群の紹介程度でしか触れることが出来ませんでしたが、タッチパネルや
ポインティングデバイスなど人と機器とがインターフェースする部分に着目した製品開発も数多
く手掛けており、 特に車載機器や産業機器向けに提供してまいりました。今後はより広義に
ヒューマンインターフェースを捉え、 現在保有している要素技術の応用や全く新しい技術開発
に取り組み、市場のトレンドとニーズに対して常に同期した製品をリアルタイムに提供すること、
また提供可能な技術を多彩に揃えオンデマンドであることを重視して開発を行っていきます。
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