NJW4170 高速発振周波数 カレントモード 1A MOSFET 内蔵 降圧用スイッチングレギュレータ IC ■概 要 NJW4170 は、40V, 1A のパワーMOSFET を内蔵した高速発振周波 数 降圧用スイッチングレギュレータ IC です。カレントモード制御 方式を採用し、出力セラミックコンデンサを容易に使用できます。位 相補償回路を内蔵し、最小限の外付け部品で降圧アプリケーションを 実現します。 外部クロックを入力することで、スイッチング周波数を同期して動 作させることが可能です。 またソフトスタート機能による安定した回路起動が可能であり、過 電流・過熱保護機能で異常時の回路保護を行います。 スイッチング周波数が 2.1MHz, 2.4MHz に設定されており、AM ラ ジオ帯の干渉を最小限に抑えることができるため、カーアクセサリ、 オーディオ機器などの高電圧からロジック電圧の生成に最適です。 ■特 長 ●高速発振周波数 ●最小 ON time ■外 形 NJW4170U2 NJW4170KV1 2.4MHz typ. (A ver.) 2.1MHz typ. (B ver.) 80ns typ. (A ver.) 85ns typ. (B ver.) ●カレントモード制御 ●外部クロックに同期可能 ●広動作電圧範囲 4.5V~40V ●スイッチング電流 1.4A min. ●PWM 制御方式 ●位相補償回路内蔵 ●セラミックコンデンサ対応 ●ソフトスタート機能 4ms typ. ●低電圧誤動作防止回路内蔵 ●過電流保護機能(ヒカップ方式) ●サーマルシャットダウン機能 ●スタンバイ機能 ●外形 NJW4170U2 : SOT-89-5 NJW4170KV1 : ESON8-V1 ■製品分類 製品名 NJW4170U2-A NJW4170KV1-A NJW4170U2-B Ver.2016-01-25 バージョン A A B 発振周波数 2.4MHz typ. 2.4MHz typ. 2.1MHz typ. パッケージ SOT-89-5 ESON8-V1 SOT-89-5 動作温度範囲 一般:-40~+125 C 一般:-40~+125 C 一般:-40~+125 C -1- NJW4170 ■端子配列 5 V+ EN/SYNC 1 GND 2 (2) GND IN- 3 SW N.C. V+ N.C. 1 2 3 4 8 7 6 5 INN.C. GND EN/SYNC 4 SW 8 7 6 5 Exposed PAD on backside connect to GND. (Top View) NJW4170U2 1 2 3 4 (Bottom View) NJW4170KV1 ■端子説明 端子名称 端子番号 SOT-89-5 ESON8 EN/SYNC 1 5 GND 2 6 IN- 3 8 SW 4 1 V+ 5 3 N.C. Exposed PAD – 2, 4, 7 – – -2- 機能 NJW4170 の動作・停止を制御する端子です。 内部は 100k でプルダウンされています。High レベルで動作、Low レベル またはオープンでスタンバイモードとなります。 またクロック信号を入力することで、信号に同期した発振周波数で動作し ます。 接地 出力電圧を検出する端子です。IN-端子電圧が基準電圧 0.8V typ.となるよう に出力電圧を抵抗分割して入力します。 パワーMOSFET のスイッチ出力端子です。 IC への電源供給端子です。電源供給のインピーダンスを下げるため、IC の 近傍に入力コンデンサを接続してください。 未接続 GND 端子に接続されています。 (ESON8 パッケージのみ) Ver.2016-01-25 NJW4170 ■ブロック図 V+ SLOPE COMP. CURRENT SENSE UVLO OCP EN/SYNC High: ON Low: OFF(Standby) Enable (Standby) SYNC OSC S Q Buffer R SW TSD PWM INER·AMP Soft Start Vref 0.8V GND Ver.2016-01-25 -3- NJW4170 ■絶対最大定格 (Ta=25 C) 項 目 入力電圧 V+-SW 端子電圧 EN/SYNC 端子電圧 IN-端子電圧 記 号 V+ VV-SW VEN/SYNC VINPD 消費電力 定 格 -0.3~+45 +45 -0.3~+45 -0.3~+6 SOT-89-5 625 (*1) 2,400 (*2) 単 位 V V V V mW ESON8-V1 600 (*3) 1,800 (*4) -40~+150 -40~+125 -50~+150 Tj Topr Tstg C C C (*1): 基板実装時 76.2×114.3×1.6mm(2 層 FR-4)で EIA/JEDEC 規格サイズ、且つ銅箔面積 100mm2 (*2): 基板実装時 76.2×114.3×1.6mm(4 層 FR-4)で EIA/JEDEC 準拠による (4 層基板内箔:74.2×74.2mm、JEDEC 規格 JESD51-5 に基づき、基板にサーマルビアホールを適用) 接合部温度範囲 動作温度範囲 保存温度範囲 (*3): 基板実装時 101.5×114.5×1.6mm (2 層 FR-4)で EIA/JEDEC 規格サイズ、且つ Exposed Pad 使用 (*4): 基板実装時 101.5×114.5×1.6mm (4 層 FR-4)で EIA/JEDEC 規格サイズ、且つ Exposed Pad 使用 (4 層基板内箔:99.5×99.5mm、JEDEC 規格 JESD51-5 に基づき、基板にサーマルビアホールを適用) ■推奨動作条件 項 目 電源電圧 外部クロック入力範囲 A バージョン B バージョン -4- 記 号 V+ 最 小 4.5 標 準 – 最 大 40 単 位 V fSYNC 2.3 2.0 – – 2.8 2.5 MHz Ver.2016-01-25 NJW4170 ■電気的特性 (V+=VEN/SYNC=12V, Ta=25 C) 項 目 低電圧誤動作防止回路部 ON スレッショルド電圧 OFF スレッショルド電圧 ヒステリシス幅 ソフトスタート部 ソフトスタート時間 記 号 VT_ON VT_OFF VHYS tSS 条 件 最小 標準 最大 単位 V+= L → H V+= H → L 4.2 4.11 70 4.35 4.26 90 4.5 4.41 – V V mV VB=0.75V 2.5 4 8 ms A バージョン, VIN-=0.7V B バージョン, VIN-=0.7V A バージョン, VIN-=0.2V B バージョン, VIN-=0.2V V+=4.5V~40V Ta=-40 C~+85 C 2.2 1.9 – – – – 2.4 2.1 340 290 1 5 2.6 2.3 – – – – MHz MHz kHz kHz % % -1.0% -0.1 0.8 – +1.0% 0.1 V A 77.5 – – – – 82 80 85 80 85 – 115 120 115 120 % ns ns ns ns 発振器部 発振周波数 fOSC 発振周波数 fOSC_LOW (低発振周波数コントロール時) 周波数電源電圧変動 周波数温度変動 fDV fDT 誤差増幅器部 基準電圧 入力バイアス電流 VB IB PWM 比較器部 最大デューティーサイクル MAXDUTY 最小 ON 時間1 (内蔵発振時) tON-min1 最小 ON 時間2 (外部同期時) tON-min2 Ver.2016-01-25 A, B バージョン, VIN-=0.7V A バージョン B バージョン A バージョン fSYNC =2.6MHz B バージョン fSYNC =2.3MHz -5- NJW4170 ■電気的特性 (V+=VEN/SYNC=12V, Ta=25 C) 項 目 記 号 過電流保護回路部 COOL DOWN 時間 tCOOL 出力部 出力 ON 抵抗 スイッチング電流制限 SW リーク電流 RON ILIM ILEAK スタンバイ制御部/同期入力部 EN/SYNC 端子 VTHH_EN/SYNC High スレッショルド電圧 EN/SYNC 端子 VTHL_EN/SYNC Low スレッショルド電圧 入力バイアス電流 IEN (EN/SYNC 端子) 条 件 最小 標準 最大 単位 – 75 – ms VEN/SYNC=0V, V =40V, VSW=0V – 1.4 – 0.4 1.9 – 0.65 2.4 1 A A VEN/SYNC= L → H 1.6 – V+ V VEN/SYNC= H → L 0 – 0.5 V VEN/SYNC=12V – 270 390 A – 2.0 2.4 mA – – 1 A ISW=1A + 総合特性 消費電流 スタンバイ時消費電流 -6- IDD IDD_STB A, B バージョン, RL=無負荷, VIN-=0.9V VEN/SYNC=0V Ver.2016-01-25 NJW4170 ■消費電力-周囲温度特性例 NJW4170U2 (SOT89-5 Package) Power Dissipation vs. Ambient Temperature (Tj=~150°C) NJW4170KV1 (ESON8 Package) Power Dissipation vs. Ambient Temperature (Tj=~150°C) 3000 At on 4 layer PC Board (*6) At on 2 layer PC Board (*5) 2500 Power Dissipation PD (mW) Power Dissipation PD (mW) 3000 2000 1500 1000 500 At on 4 layer PC Board (*8) At on 2 layer PC Board (*7) 2500 2000 1500 1000 500 0 0 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 -50 Ambient Temperature Ta (°C) -25 0 25 50 75 100 125 Ambient Temperature Ta (°C) (*5): 基板実装時 76.2×114.3×1.6mm(2 層 FR-4)で EIA/JEDEC 規格サイズ、且つ銅箔面積 100mm2 (*6): 基板実装時 76.2×114.3×1.6mm(4 層 FR-4)で EIA/JEDEC 準拠による (4 層基板内箔:74.2×74.2mm、JEDEC 規格 JESD51-5 に基づき、基板にサーマルビアホールを適用) (*7): 基板実装時 101.5×114.5×1.6mm (2 層 FR-4)で EIA/JEDEC 規格サイズ、且つ Exposed Pad 使用 (*8): 基板実装時 101.5×114.5×1.6mm (4 層 FR-4)で EIA/JEDEC 規格サイズ、且つ Exposed Pad 使用 (4 層基板内箔:99.5×99.5mm、JEDEC 規格 JESD51-5 に基づき、基板にサーマルビアホールを適用) ■アプリケーション回路例 L VIN VOUT CIN V+ CFB SW R2 NJW4170 EN/ SYNC GND IN- SBD COUT R1 EN/SYNC High: ON Low: OFF (Standby) Ver.2016-01-25 -7- 150 NJW4170 ■特性例 (A, B version) Reference Voltage vs. Supply Voltage (Ta=25ºC) Reference Voltage :VB (V) 0.81 0.805 0.8 0.795 0.79 Switching Current Limit :ILIM (A) 10 20 30 Supply Voltage :V+ (V) 0.795 40 -50 Switching Current Limit vs. Temperature 2.4 2.2 2 V+=12V V+=40V 1.8 1.6 V+=5V 1.4 1.2 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Output ON Resistance vs. Temperature (ISW=1A) 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 V+=5V V+=40V V+=12V 0.3 0.2 0.1 0 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Maximum Duty Cycle vs. Temperature (V+=12V, VIN-=0.7V) 90 Maximum Duty Cycle :MAXDUTY (%) 0.8 0.79 0 2.6 0.805 Output ON Resistance :RON (Ω) Reference Voltage :VB (V) 0.81 Reference Voltage vs. Temperature (V+=12V) 88 86 84 82 80 78 76 -50 -8- -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Ver.2016-01-25 NJW4170 ■特性例 (A,B version) Under Voltage Lockout Voltage vs. Temperature 4.5 8 Soft Start Time :tSS (ms) Threshold Voltage : (V) 4.45 4.4 4.35 VT_ON 4.3 4.25 4.2 VT_OFF 4.1 6 5 4 2 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) -50 Switching Leak Current vs. Temperature (V+=40V, VEN/SYNC=0V, VSW=0V) 1.5 1 0.5 0 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Standby Current vs. Temperature (VEN/SYNC=0V) 1 Standby Current :IDD_STB (μA) 2 Switching Leak Current :ILEAK (μA) 7 3 4.15 0.8 0.6 0.4 V+=40V V+=12V V+=4.5V 0.2 0 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) -50 Quiescent Current vs. Supply Voltage (RL=no Load, VIN-=0.9V, Ta=25ºC) 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Quiescent Current vs. Temperature (RL=no Load, VIN-=0.9V) 3 Quiescent Current :IDD (mA) Quiescent Current :IDD (mA) Soft Start Time vs. Temperature (V+=12V, VB=0.75V) 2.5 2 V+=4.5V, 12V, 40V 1.5 1 0.5 0 0 Ver.2016-01-25 10 20 30 Supply Voltage :V+ (V) 40 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) -9- NJW4170 ■特性例 (A version) Oscillating Frequency vs. Supply Voltage (A ver., VIN-=0.7V, Ta=25ºC) 2.8 Oscillating Frequency :fOSC (MHz) Oscillating Frequency :fOSC (MHz) 2.8 2.7 2.6 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2 2.7 2.6 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2 0 10 20 30 Supply Voltage : V+ (V) 40 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Minimum ON Time1 vs. Temperature (A ver., V+=12V) 120 Minimum ON Time1 :tON-min1 (ns) Oscillating Frequency vs Temperature (A ver., V+=12V, VIN-=0.7V) 110 100 90 80 70 60 50 40 -50 - 10 - -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Ver.2016-01-25 NJW4170 ■特性例 (B version) Oscillating Frequency vs. Supply Voltage (B ver., VIN-=0.7V, Ta=25ºC) 2.4 Oscillating Frequency :fOSC (MHz) Oscillating Frequency :fOSC (MHz) 2.4 2.3 2.2 2.1 2 1.9 1.8 2.3 2.2 2.1 2 1.9 1.8 0 10 20 30 Supply Voltage :V+ (V) 40 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) Minimum ON Time1 vs. Temperature (B ver., V+=12V) 120 Minimum ON Time1 :tON-min1 (ns) Oscillating Frequency vs Temperature (B ver., V+=12V, VIN-=0.7V) 110 100 90 80 70 60 50 40 -50 Ver.2016-01-25 -25 0 25 50 75 100 125 150 Temperature : (ºC) - 11 - NJW4170 NJW4170Application Manual 技 術 資 料 ■各ブロックの機能説明 スイッチングレギュレータ基本機能 ●エラーアンプ部 (ER AMP) エラーアンプ部の非反転入力は、0.8V±1%の高精度基準電圧が接続されています。 アンプの反転入力(IN-端子)にコンバータの出力を入力することで、出力電圧 0.8V からのアプリケーション設計を容 易にできます。出力電圧を 0.8V 以上にする場合は、出力電圧を抵抗分割することで設定します。 アンプ部では、最適なフィードバックが内蔵されているため、最小限の外付け部品でアプリケーション回路を構成で きます。 ●PWM 比較器部 (PWM)、発振回路部 (OSC) NJW4170 は、固定周波数のカレントモード制御方式で動作します。 発振回路は、A バージョン:2.4MHz typ.、B バージョン:2.1MHz に設定されています。 PWM 比較器部では、出力電圧とスロープ補償されたスイッチング電流のフィードバックにより、PWM 信号を出力 します。最大デューティー比は、82% typ.です。 NJW4170 の最小 ON 時間 tON-min は、A バージョン:80ns typ.、B バージョン:85ns typ.に制限されています。 降圧回路の ON 時間は、下記式によって決まります。 ton VOUT s VIN fOSC VIN は入力電圧、VOUT は出力電圧を表します。ON 時間が tON-min 以下となる場合は、出力電圧を安定状態に保つために デューティーの変動やパルススキップ動作を行う可能性があります。 ●パワーMOSFET 内蔵されたパワーMOSFET のスイッチ動作によって、インダクタへ電力を供給します。過電流保護機能によって、 パワーMOSFET に流せる電流は、ILIM =1.4A min.に制限されます。降圧回路では、パワーMOSFET の OFF 時にイン ダクタ電流が外付けの回生ダイオードに流れて、順方向バイアス電圧を発生します。SW 端子は、V+-SW 端子間電 圧で 45V まで許容されますが、ショットキーダイオードの順方向飽和電圧が十分に低いものを使用してください。 ●電源、GND 端子 (V+, GND) スイッチング動作に伴い、周波数に応じた電流が IC に流れます。電源ラインのインピーダンスが高いと電源供給が 不安定になり、IC の性能を十分に引き出せません。V+端子-GND 端子間の近傍にバイパスコンデンサを挿入し、高 周波インピーダンスを下げてください。 - 12 - Ver.2016-01-25 NJW4170 Application Manual NJW4170 技 術 資 料 2.保護機能、付加機能 ●低電圧誤動作防止(UVLO)回路 電源電圧が低い場合、UVLO 回路によって動作を停止し、電源電圧 4.35V typ.以上で UVLO 回路が解除されて IC の 動作が開始します。電源電圧の立ち上がりと立ち下がりに 90mV typ.のヒステリシス電圧幅を持たせています。これ により、UVLO の解除と動作のばたつきを防止し、NJW4170 を安定して動作させます。 ●ソフトスタート機能 ソフトスタート機能によって、コンバータの出力電圧は設定値まで緩やかに電圧を上昇します。ソフトスタート時間 は 4ms typ.であり、エラーアンプの基準電圧が 0~0.75V になるまでの時間で定義されます。 (図1)ソフトスタート 回路は、UVLO 解除、サーマルシャットダウンからの復帰後に動作します。IN-端子が約 0.4V になるまで、低発振周 波数にコントロールされ、発振周波数は A バージョンで 340kHz typ.、B バージョンで 290kHz typ.で動作します。 0.8V Vref, IN- pin Voltage OSC Waveform ON SW pin OFF UVLO(4.35V typ.)の解除、 スタンバイ、 サーマルシャットダウン からの復帰 低発振周波数動作 VIN-=約0.4V Soft Start時間 Tss=4ms typ. VB=0.75Vまで 通常動作 Soft Start効果時間 VB=0.8Vまで 図1 ソフトスタートのタイミングチャート Ver.2016-01-25 - 13 - NJW4170 NJW4170Application Manual 技 術 資 料 ■各ブロックの機能説明(続き) ●過電流保護機能 (OCP) NJW4170 にはヒカップ(Hiccup)方式の過電流保護機能を内蔵しており、過負荷時の発熱を低減するとともに、過電流 の異常状態から回復にともない、スイッチングレギュレータの出力電圧を自動的に復帰させることができます。 内蔵のパワーMOSFET に ILIM 以上の電流が流れると、過電流保護機能によってパワーMOSFET を OFF にし、次の周 期でスイッチング動作を復帰します。 IN-端子電圧が 0.3V 以下になると、低発振周波数にコントロールされ、発振周波数を A バージョンで 340kHz typ.、B バージョンで 290kHz typ.で動作します。 同時にパルスカウントを開始し、過電流検出を 128 パルス継続するとスイッチング動作を停止します。 停止後は、クールダウン時間 75ms typ.経過後、ソフトスタートによる再起動を行います。 IN- pin Voltage 0.8V 0.3V 0V 発振周波数 A ver.=2.4MHz typ. B ver.=2.1MHz typ. 低発振周波数コントロール A ver.=340kHz typ. B ver.=290kHz typ. ON SW pin OFF Switching Current ILIM 0 パルス・バイ・ パルス 定常状態 パルスカウント 128パルス クールダウン時間 75ms typ. 過負荷状態 ソフトスタート動作 図2 過電流保護動作時のタイミングチャート ●サーマルシャットダウン機能 (TSD) サーマルシャットダウン機能は、NJW4170 のチップ温度が 165℃*を超えると SW 動作を停止します。 チップ温度が 150℃*以下になると、ソフトスタートによる SW 動作が開始されます。 なおサーマルシャットダウン機能は、高温時における IC の熱暴走を防止するための予備回路であり、不適切な熱設 計を補うためでは有りません。IC のジャンクション温度(~+150 C)範囲内で動作させるように、十分な余裕を満 たすことをお奨めします。 (* 参考値) ●スタンバイ機能 EN/SYNC 端子を 0.5V max.以下にすることで NJW4170 の機能を停止させスタンバイ状態にします。 内部は 100k でプルダウンされており、端子オープン時はスタンバイモードに移行します。 スタンバイ機能を使用しない場合は、EN/SYNC 端子を V+に接続してください。 - 14 - Ver.2016-01-25 NJW4170 Application Manual NJW4170 技 術 資 料 ■各ブロックの機能説明(続き) ●外部同期機能 EN/SYNC 端子に方形波を入力することで、NJW4170 の発振器を外部周波数に同期させることができます。 方形波は、表1の仕様を満たす必要があります。 表1 EN/SYNC 端子に入力する方形波 A バージョン B バージョン (fOSC =2.4MHz) (fOSC =2.1MHz) 入力周波数 2.3MHz~2.8MHz 2.0MHz~2.5MHz デューティー 40%~60% サイクル 1.6V 以上(High レベル) 電圧振幅 0.5V 以下(Low レベル) 外部同期時のスイッチング動作は、入力信号の立ち上がりエッジに対してトリガを行います。 またスタンバイ状態や非同期動作と外部同期動作の切り替わりでは、誤動作を防止するために約 5~10 s の遅延時間 を設けています。 (図3) High EN/SYNC pin Low ON SW pin OFF スタンバイ 遅延時間 外部同期動作 図3 外部同期信号によるスイッチング動作 Ver.2016-01-25 - 15 - NJW4170 NJW4170Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション情報 ●インダクタ インダクタには大電流が流れるため、飽和しない電流能力を持たせる必要があります。NJW4170 では、位相補償が 内蔵されており、最適な L 値は、入力電圧と出力電圧によって決まります。 L 値が小さくなると、出力電流に対するピーク電流が大きくなり、変換効率が低下しやすくなります。 (図4) また過電流リミットに掛かりやすくなるため、出力電流が制限される点に注意しなければいけません。 ピーク電流は、下記式によって求められます。 IL Ipk VIN VOUT VOUT [A] L VIN f OSC IOUT IL [A] 2 アプリケーションの仕様、部品等によって最適な値は異なりますので、最終的には実機で微調整を行ってください。 Current Peak Current IPK Indunctor Ripple Current IL Peak Current IPK Output Current IOUT Indunctor Ripple Current IL 0 tON tOFF L 値が小さいとき tON tOFF L 値が大きいとき 図4 インダクタ電流の状態(電流連続モード動作時) - 16 - Ver.2016-01-25 NJW4170 Application Manual NJW4170 技 術 資 料 ■アプリケーション情報(続き) ●入力コンデンサ スイッチングレギュレータの入力部には、周波数に応じた過渡的な電流が流れます。電源回路に供給される電源イン ピーダンスが大きいと入力電圧の変動につながり、NJW4170 の性能を十分に引き出せません。よって入力コンデン サは、できる限り IC の近くに挿入してください。 NJW4170 の入力コンデンサには、セラミックコンデンサが適しており、リップル電流を容易に満たすことが出来ま す。入力実効電流は、下記計算式で表せます。 IRMS VOUT IOUT VIN VOUT VIN [A] 上記計算式は、VIN=2×VOUT 時が最大になり、その時の結果は、IRMS=IOUT(MAX)÷2 です。 入力コンデンサの選定は、アプリケーションで評価の上、十分なマージンを持った物をご使用ください。 ●出力コンデンサ 出力コンデンサは、インダクタンスからの電力を蓄え、出力への供給電圧を安定させる役割をします。 NJW4170 は、低 ESR の出力コンデンサが使用できるように位相補償を設定しており、セラミックコンデンサが最適 です。 セラミックコンデンサは、DC 電圧印加や温度変化によって容量が低下するため、スペックシート等で特性を確認し てください。 出力コンデンサの選定には、ESR(等価直列抵抗:Equivalent Series Resistance)の特性、リップル電流、耐圧を考慮 に入れる必要が有ります。 低 ESR タイプのコンデンサであれば、リップル電圧を下げることが出来ます。 出力リップル電圧は、下記計算式で表せます。 Vripple( p p) IL ESR 1 8 fOSC C OUT [V] コンデンサに流れるリップル電流の実効値(Irms)は、下記計算式で表せます。 Irms IL 2 3 Ver.2016-01-25 [ Arms ] - 17 - NJW4170 NJW4170Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション情報(続き) ●キャッチ・ダイオード パワーMOSFET が OFF サイクルの時は、インダクタに蓄えられた電力がキャッチ・ダイオードを経由して出力コン デンサに流れます。そのためダイオードにはサイクル毎に、負荷電流に応じた電流が流れます。ダイオードの順方向 飽和電圧と電流の積が電力損失となるため、順方向飽和電圧の低い SBD (Schottky Barrier Diode)が最適です。 また SBD は、逆回復時間が短い特徴を併せて持っています。逆回復時間が長くなると、スイッチングトランジスタ が OFF から ON サイクルに移行した時、貫通電流が流れてしまいます。この電流によって効率の低下、ノイズの発 生等に影響を及ぼす可能性が有ります。 ●出力電圧設定抵抗、補償用コンデンサ 出力電圧 VOUT は、R1, R2 の抵抗比で決まります。R1, R2 に流れる電流は、Error AMP に流れるバイアス電流を無視 できるような値とします。 R2 R1 VOUT 1 VB [ V ] R2 と CFB によって、ゼロ点(fZ1)が形成され、スイッチングレギュレータの位相を補償します。 ゼロ点は、下記計算式で表せます。 f Z1 2 1 [Hz] R2 C FB fZ1 は、60k~80kHz 程度を目安に設定してください。 - 18 - Ver.2016-01-25 NJW4170 Application Manual NJW4170 技 術 資 料 ■アプリケーション情報(続き) ●基板レイアウト スイッチングレギュレータは、インダクタの充放電によって出力へ電力供給を行います。発振周波数に応じて電流が 流れるため、基板のレイアウトは重要な項目です。大電流の流れるラインは太く、短くし、ループ面積を最小限にし てください。図5に降圧回路における電流ループを示します。 特にスイッチングにおける高速な電流変化を伴う CIN-SW-SBD 間は、最優先でループを構成します。 寄生インダクタによって発生するスパイクノイズを低減するのに効果的です。 NJW4170 内蔵SW VIN CIN NJW4170 内蔵SW L SBD COUT VIN CIN (a) 降圧回路 SW ON 状態 L SBD COUT (b) 降圧回路 SW OFF 状態 図5 降圧回路における電流ループ GND ラインは、パワー系と信号系を分離した上で1点アースをとるのが望ましい接続です。 また電圧検出のフィードバックラインは、できるだけインダクタンスから離します。本ラインはインピーダンスが高 いため、インダクタンスからの漏れ磁束でノイズの影響を避けるように配線します。 図6に降圧回路での配線例、図7にレイアウト例を示します。 L V+ VIN VOUT SW CIN SBD COUT RL(負荷) NJW4170 CFB ICの近傍に 挿入する。 INR2 GND 信号系のGNDを パワー系と分離する。 R1 負荷近傍で電圧を検出し、 電圧降下が負荷へ影響を与え ないように配慮する。 ICのインピーダンスが高いため、 電圧検出抵抗 R1,R2はできるだけ ICの近くに配置する。 図6 降圧回路での配線例 Ver.2016-01-25 - 19 - NJW4170 NJW4170Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション情報(続き) GNDOUT VOUT Power GND Area COUT GND IN L SBD CIN1 VIN CIN2 Feed back signal 1pin R2 EN/SYNC R1 RFB CFB Signal GND Area 裏面にてパワー系 GND と信号系 GND を接続 図7 レイアウト例(上面パターン) - 20 - Ver.2016-01-25 NJW4170 Application Manual NJW4170 技 術 資 料 ■パッケージパワーの計算 降圧回路の損失の多くは、スイッチ動作を行う NJW4170 のパワーMOSFET によって発生します。そのため下記式を 目安に NJW4170 の損失として考えます。 入力電力 :PIN = VIN IIN [W] 出力電力 :POUT = VOUT IOUT [W] ダイオードの損失 :PDIODE = VF IL(avg) OFF duty [W] NJW4170 の消費電力 :PLOSS = PIN POUT PDIODE [W] ただし、 VIN VOUT VF OFF duty :コンバータの入力電圧 :コンバータの出力電圧 :ダイオードの順方向飽和電圧 :スイッチ OFF デューティー IIN IOUT IL(avg) :コンバータの入力電流 :コンバータの出力電流 :インダクタ平均電流 変換効率 は、下記式によって求められます。 = (POUT PIN) 100 [%] 求めた消費電力 PD に対して温度ディレーティングを考慮します。 「Power Dissipation vs. Ambient Temperature」特性例を参考に、定格内に収まるか確認してください。 Ver.2016-01-25 - 21 - NJW4170 NJW4170Application Manual 技 術 資 料 ■アプリケーション設計例 ●降圧アプリケーション仕様 IC :NJW4170U2 入力電圧 :VIN=12V 出力電圧 :VOUT=5V 出力電流 :IOUT=1A 発振周波数 :A version fOSC=2.4MHz :B version fOSC=2.1MHz L 3.3 H/2.33A VIN=12V CIN 10mF/50V V+ VOUT=5V CFB 120pF SW R2 16kW NJW4170 EN/ SYNC GND IN- SBD COUT 22mF/6.3V R1 3kW EN/SYNC High: ON Low: OFF (Standby) 記号 IC L SBD CIN COUT CFB R1 R2 - 22 - 数量 1 1 1 1 1 1 1 1 部品番号 NJW4170U2 VLF504015MT-3R3M CMS16 UMK325BJ106MM GRM31CB30J226ME18 120pF 3k 16k 概要 1A MOSFET 内蔵 SW.REG. IC Inductor 3.3 H, 2.33A Schottky Diode 40V, 3A Ceramic Capacitor 3225 10 F, 50V, X5R Ceramic Capacitor 3216 22 F, 6.3V, B Ceramic Capacitor 1608 120pF, 50V, CH Resistor 1608 3k , 1%, 0.1W Resistor 1608 16k , 1%, 0.1W メーカー New JRC TDK Toshiba Taiyo Yuden Murata Std. Std. Std. Ver.2016-01-25 NJW4170 Application Manual NJW4170 技 術 資 料 ■アプリケーション特性例 ●A version Efficiency vs. Output Current (VOUT=5V, Ta=25ºC) f=2.4MHz L=3.3 H 90 6 Efficiency : (%) 80 70 VIN=18V 60 VIN=12V 50 f=2.4MHz L=3.3 H 5.8 VIN=8V 40 30 20 Output Voltage :VOUT (V) 100 Output Voltage vs. Output Current (Ta=25ºC) 5.6 5.4 5.2 VIN=8V, 12V, 18V 5 4.8 4.6 4.4 4.2 10 4 0 1 10 100 Output Current :IOUT (mA) 1 1000 10 100 Output Current :IOUT (mA) 1000 ●B version Efficiency vs. Output Current (VOUT=5V, Ta=25ºC) f=2.1MHz L=3.3 H 90 Efficiency : (%) 80 70 6 VIN=18V 60 VIN=12V 50 f=2.4MHz L=3.3 H 5.8 VIN=8V Output Voltage :VOUT (V) 100 Output Voltage vs. Output Current (Ta=25ºC) 40 30 20 10 5.6 5.4 5.2 VIN=8V, 12V, 18V 5 4.8 4.6 4.4 4.2 0 4 1 Ver.2016-01-25 10 100 Output Current :IOUT (mA) 1000 1 10 100 Output Current :IOUT (mA) 1000 - 23 - NJW4170 MEMO <注意事項> このデータブックの掲載内容の正確さには 万全を期しておりますが、掲載内容について 何らかの法的な保証を行うものではありませ ん。とくに応用回路については、製品の代表 的な応用例を説明するためのものです。また、 工業所有権その他の権利の実施権の許諾を伴 うものではなく、第三者の権利を侵害しない ことを保証するものでもありません。 - 24 - Ver.2016-01-25