低歪み、広帯域 電圧帰還型クランプ・アンプ AD8036/AD8037 特長 機能ブロック図 優れたクランプ性能 8ピン・プラスチック・ミニDIP(N) 、サーディップ(Q) 、 3 mVのクランプ誤差 およびSO(R)パッケージ 1.5 nsのオーバードライブ回復性能 クランプ領域のリニア部分が大きい 240 MHzクランプ入力帯域幅 ±3.9 Vクランプ入力範囲 広帯域 AD8036 AD8037 小信号 240 MHz 270 MHz 大信号(4 VP−P) 195 MHz 190 MHz 優れたDC性能 2 mVオフセット 10μV/℃ドリフト AD8036は、20 MHzで−66 dBcの2次高調波歪みと240 MHzの小信 超低歪み、低ノイズ 号帯域幅および195 MHzの大信号帯域幅を実現しています。 AD8036 −72 dBc(typ)@20 MHz とAD8037は、 クランプの2倍のオーバードライブから1.5 ns未満で回 4.5 nV/√Hzの入力電圧ノイズ 復します。この特性により、AD8036とAD8037はフラッシュ型の高 高速 分解能ADCのバッファおよび駆動に適した製品といえます。 1500 V/μsのスルーレート 従来の出力クランプ・アンプの応用とは異なり、この製品は入力 0.1%まで10 ns、0.01%まで16 nsのセトリング 信号をクランプする入力クランプ構造を採用しています。 このクラ ±3 V∼±5 V電源動作 ンプ端子にはDCクランプ・レベルだけでなく最高240 MHzの信号を 入力できます。 またクランプ電圧値は出力電圧の範囲内で任意に設 アプリケーション 定できます(VHは必ずVLより大きくします) 。このようなクランプ ADCバッファ 特性により、 AD8036とAD8037を全波整流器、 パルス発生器または振 IF/RF信号処理 幅変調器等の新たな応用に使用できます。これらの応用は、入力ク 高品質画像処理 ランプを使用して設計できる応用の中の一例です。 放送局用ビデオ・システム AD8036は、産業(−40∼+85℃)およびミリタリ(−55∼+125℃) ビデオ・アンプ 温度範囲の製品が供給されます。 AD8037は産業温度範囲のみです。 全波整流器 産業用は、プラスチックDIPとSOICがあります。またミリタリ用は サーディップ・パッケージで供給されます。AD8036はチップでの 概要 供給もあります(産業温度範囲) 。 AD8036とAD8037は、広帯域、低歪みのクランプ・アンプです。 AD8036はユニティ・ゲインで、AD8037は2以上のゲインで安定で す。高(VCH)および低(VCL)出力クランプ電圧を設定できます。出 力信号はこの設定したレベルでクランプします。 特許申請中の独自 のクランプ入力(CLAMPIN)構造を採用しているため、AD8036と AD8037は、従来の出力クランプ・アンプと比べて約10倍のクランプ 性能を示します。特にクランプ誤差は3 mV以下で、クランプ領域の 歪みは最小限に抑えています。この製品は従来のオペアンプとし て、また最大および最小出力電圧が決められたクランプ・アンプと して使用できます。 電圧帰還型のAD8036とAD8037は、従来は電流帰還型アンプを使 用していた多くの応用にも使用できます。AD8036とAD8037は、高 速で精度の良いパルス応答(0.01%まで16 ns) 、 広い小信号と大信号 帯域幅、および低い歪み特性を持ちます。 図1. クランプDC精度と入力電圧 CLAMPINはアナログ・デバイセズ社の登録商標です。 アナログ・デバイセズ社が提供する情報は正確で信頼できるものを期していますが、 当社はその情報の利用、また利用したことにより引き起こされる第3者の特許または権 利の侵害に関して一切の責任を負いません。さらにアナログ・デバイセズ社の特許また は特許の権利の使用を許諾するものでもありません。 REV.0 アナログ・デバイセズ株式会社 本 社/東京都港区海岸1 - 1 6 - 1 電話03(5402)8200 〒105−6891 ニューピア竹芝サウスタワービル 大阪営業所/大阪市淀川区宮原3 - 5 - 3 6 電話06(6350)6868㈹ 〒532−0003 新大阪第2森ビル AD8036/AD8037 電気的特性(特に指定のない限り±VS=±5 V;RLOAD=100Ω;AV=+1(AD8036);AV=+2(AD8037)、VHとVLはオープン) パラメータ ダイナミック性能 帯域幅(−3 dB) 小信号 大信号1 0.1dB平坦性の帯域幅 スルーレート、平均+/− 立上り/立下り時間 セトリング時間 0.1%まで 0.01%まで 高調波/ノイズ性能 2次高調波歪み 3次高調波歪み 3次インターセプト ノイズ指数 入力電圧ノイズ 入力電流ノイズ 平均等価積分入力ノイズ電圧 微分ゲイン誤差(3.58 MHz) 微分位相誤差(3.58 MHz) 位相非直線性 クランプ性能 クランプ電圧範囲2 クランプ精度 条件 Min VOUT≦0.4 Vp−p 8036、VOUT=2.5 Vp−p;8037、VOUT=3.5 Vp−p VOUT≦0.4 Vp−p 8036、RF=140Ω; 8037、RF=274Ω VOUT=4 Vステップ、10 ∼ 90% VOUT=0.5 Vステップ、10 ∼ 90% VOUT=4 Vステップ、10 ∼ 90% 150 160 900 AD8036A Typ Max 240 195 10 16 2 Vp−p; 20 MHz、RL=100Ω RL=500Ω 2 Vp−p; 20 MHz、RL=100Ω RL=500Ω 25 MHz RS=50Ω 1 ∼ 200 MHz 1 ∼ 200 MHz 0.1 ∼ 200 MHz RL=150Ω RL=150Ω DC ∼ 100 MHz −59 −66 −68 −72 +46 18 6.7 2.2 95 0.05 0.02 1.1 VCHまたはVCL ±3.3 2倍オーバードライブ、VCH=+2 V、VCL=−2 V TMIN ∼ TMAX ±3.9 ±3 クランプ非直線性範囲3 クランプ入力バイアス電流(VHまたはVL) 8036、 VH,L=±1 V;8037、VH,L=±0.5 V TMIN ∼ TMAX クランプ入力帯域幅(−3 dB) VCHまたはVCL=2 Vp−p クランプ・オーバーシュート 2倍オーバードライブ、VCHまたはVCL=2 Vp−p オーバードライブ回復 2倍オーバードライブ 100 ±40 150 DC性能4、 RL=150Ω 入力オフセット電圧5 240 1 1.5 2 TMIN ∼ TMAX オフセット電圧ドリフト 入力バイアス電流 ±10 4 TMIN ∼ TMAX 入力オフセット電流 同相除去比 オープンループ・ゲイン 0.3 TMIN ∼ TMAX VCM=±2 V VOUT=±2.5 V TMIN ∼ TMAX 66 48 40 入力特性 入力抵抗 入力容量 入力同相電圧範囲 1100 −52 −59 −61 −65 0.09 0.04 ±3.3 ±10 ±20 180 5 7 11 電源 動作範囲 無負荷時電源電流(静止時) ±3.2 ±3.9 70 0.3 240 ±3.0 ±5.0 20.5 50 60 TMIN ∼ TMAX TMIN ∼ TMAX 130 1500 1.2 2.2 MHz V/μs ns ns 10 16 ns ns ±3.9 ±3 270 1 1.3 ±10 3 0.1 70 54 46 ±6.0 21.5 25 MHz MHz 2 10 15 3 5 単位 270 190 100 ±50 ±60 ±80 90 55 AD8037A Typ Max −52 −72 −70 −80 +41 14 4.5 2.1 60 0.02 0.02 1.1 500 1.2 ±2.5 出力特性 出力電圧範囲、RL=150Ω 出力電流 出力抵抗 短絡回路電流 電源変動除去比 200 160 130 1200 1.4 2.6 VOUT=2 Vステップ VOUT=2 Vステップ Min −45 −65 −63 −73 0.04 0.04 ±10 ±20 ±70 ±90 5 7 10 9 15 3 5 90 60 dBc dBc dBc dBc dB dB nV/√Hz pA/√Hz μVrms % Degrees Degrees V mV mV mV μA μA MHz % ns mV mV μV/℃ μA μA μA μA dB dB dB 500 1.2 ±2.5 kΩ pF V ±3.2 ±3.9 70 0.3 240 V mA Ω mA ±3.0 ±5.0 18.5 56 66 ±6.0 19.5 24 V mA mA dB 注 1 このデータ・シートの絶対最大定格と動作の原理の項を参照。 2 絶対最大定格を参照。 3 非直線性は、設定した入力クランプ電圧(VHまたはVL)とVOUTがVINからズレ始める電圧(図73を参照)との電圧差と定義されます。 4 AV=50で測定。 5 反転入力に関して測定。 仕様は予告なしに変更する場合があります。 −2− REV.0 AD8036 / AD8037 絶対最大定格1 電源電圧 ……………………………………………………… 12.6 V 電圧振幅×帯域幅積 ………………………………… 350 V・MHz |VH−VIN| ………………………………………………… ≦6.3 V |VL−VIN| ………………………………………………… ≦6.3 V 内部消費電力2 注 1 “絶対最大定格”を超えるストレスはデバイスに永久破壊をもたらすことがあります。この 定格はデバイスの単なるストレスの度合いであり、 基本的な動作あるいは動作の項に示す他 の条件においてこの定格は考慮されていません。デバイスをある項目についての絶対最大 定格の状態に長時間さらすとデバイスの信頼性に影響を与えます。 2 仕様は空冷のない状態; 最大消費電力 プラスチック・パッケージ(N) ………………………… 1.3 W このデバイスが安全に消費できる最大電力は接合温度の制約を SOパッケージ(R) ………………………………………… 0.9 W 受けます。プラスチック・パッケージの場合、最大安全接合温度は、 入力電圧(同相) ……………………………………………… ±Vs プラスチックの融点温度によって決まります。これは約+150℃で 差動入力電圧 ……………………………………………… ±1.2 V す。この限度を一時的に超えた場合、パッケージ内のチップ上に掛 電力ディレーティング曲線を参照 かるストレスの変動によってプラメトリック性能が変化します。 ま 保管温度範囲 N、R ……………………………… −65 ∼ +150℃ たかなり長い時間接合温度が+175℃を超えた場合、デバイスの機 動作温度範囲(Aグレード)………………………… −40 ∼ +85℃ 能が損なわれます。 出力短絡回路期間 ………… AD8036とAD8037は、 内部で短絡回路保護を施していますが、 これ リード温度範囲(ハンダ付け、10秒) …………………… +300℃ だけではすべての条件下で最大接合温度 (+150℃) を超えない保証 メタライゼーション写真 寸法はインチと(mm)で示します。 となりません。適切に動作させるために、最大電力ディレーティン グ曲線を参照する必要があります。 基板は−VSに接続。 図2. 最大消費電力と温度の関係 オーダ−・ガイド パッケージ オプション★ モデル 温度範囲 パッケージ AD8036AN −40 ∼ +85℃ プラスチックDIP N−8 AD8036AR −40 ∼ +85℃ SOIC AD8036SQ/883B −55 ∼ +125℃ サーディップ AD8036ACHIPS −40 ∼ +85℃ チップ AD8036−EB 評価用ボード AD8037AN −40 ∼ +85℃ AD8037AR −40 ∼ +85℃ AD8037−EB R−8 Q−8 プラスチックDIP N−8 SOIC R−8 評価用ボード ★ N=プラスチックDIP;Q=サーディップ;R=SOIC。 注意 ESD(静電放電)の影響を受けやすいデバイスです。4000 Vもの高圧の静電気が人体やテスト装置に容易に帯電し、検知さ れることなく放電されることもあります。このAD8036/AD8037には当社独自のESD保護回路を備えていますが、高エネル ギーの静電放電にさらされたデバイスには回復不能な損傷が残ることもあります。したがって、性能低下や機能喪失を避 けるために、適切なESD予防措置をとるようお奨めします。 REV.0 −3− WARNING! ESD SENSITIVE DEVICE AD8036/AD8037 AD8036―代表的特性 図3. 非反転構成、G=+1 図4. 大信号過渡応答;Vo=4 Vp−p、G=+1、RF=140Ω 図6. 非反転クランプ構成、G=+1 図7. クランプされた大信号過渡応答(2倍のオーバードライ ブ) ;Vo=2Vp−p、G=+1、RF=140Ω、VH=+1V、VL=−1 V 図5. 小信号過渡応答;Vo=400 mVp−p、G=+1、RF=140Ω 図8. クランプされた小信号過渡応答(2倍のオーバードライブ) ; Vo=400 mVp−p、G=+1、RF=140Ω、VH=+0.2 V、VL=−0.2 V −4− REV.0 AD8036 / AD8037 AD8037―代表的特性 図12. 非反転クランプ構成、G=+2 図9. 非反転構成、G=+2 図10. 大信号過渡応答;Vo=4 VP−P、G=+2、RF=RIN=274Ω 図13. クランプされた大信号過渡応答(2倍のオーバードライブ); Vo=2 VP−P、G=+2、RF=RIN=274Ω、VH=+0.5 V、VL=−0.5 V 図11. 小信号過渡応答;Vo=400 mVP−P、G=+2、RF=RIN=274Ω 図14. クランプされた小信号過渡応答(2倍のオーバードライブ); Vo=400 mVP−P、G=+2、RF=RIN=274Ω、VH=+0.1 V、VL=−0.1 V REV.0 −5− AD8036/AD8037 AD8036―代表的特性 図15. AD8036小信号周波数応答、G=+1 図18. AD8036小信号−3 dB帯域幅とRF 図16. AD8036 0.1 dB平坦性、Nパッケージ(Rパッケージの場 図19. AD8036大信号周波数応答、G=+1 合RFに20Ω追加) 図17. AD8036開ループ・ゲインと位相余裕度の周波数特性、RL=100Ω 図20. AD8036クランプ入力帯域幅、VH、VL −6− REV.0 AD8036 / AD8037 図21. AD8036高調波歪みの周波数特性、RL=500Ω 図24. AD8036微分ゲインと位相誤差、G=+1、RL=150Ω、F=3.58 MHz 図22. AD8036高調波歪みの周波数特性、RL=100Ω 図25. AD8036セトリング時間(短時間:0.01%まで)、2 Vステッ プ、G=+1、RL=100Ω 図23. AD8036 3次インターセプトの周波数特性 図26. AD8036セトリング時間(長時間)、 2 Vステップ、G=+1、RL=100Ω REV.0 −7− AD8036/AD8037 AD8037―代表的特性 図27. AD8037小信号周波数応答、G=+2 図28. 図30. AD8037小信号−3 dB帯域幅とRF、RIN AD8037 0.1 dB平坦性、Nパッケージ(Rパッケージの場合 図31. AD8037大信号周波数応答、G=+2 RFに20Ω追加) 図29. AD8037オープンループ・ゲインと位相余裕度の周波数特 図32. AD8037クランプ入力帯域幅、VH、VL 性、RL=100Ω −8− REV.0 AD8036 / AD8037 図33. AD8037高調波歪みの周波数特性、RL=500Ω 図36. AD8037微分ゲインと位相誤差、G=+2、RL=150Ω、 F=3.58 MHz 図34. AD8037高調波歪みの周波数特性、RL=100Ω 図37. AD8037セトリング時間(短時間:0.01%まで)、2 V ステップ、G=+2、RL=100Ω 図35. AD8037 3次インターセプトの周波数特性 REV.0 図38. AD8037セトリング時間(長時間)、2 Vステップ、RL=100Ω −9− AD8036/AD8037―代表的特性 図39. AD8036ノイズの周波数特性 図42. AD8037ノイズの周波数特性 図40. AD8036PSRRの周波数特性 図43. AD8037PSRRの周波数特性 図41. AD8036CMRRの周波数特性 図44. AD8037CMRRの周波数特性 − 10 − REV.0 AD8036 / AD8037 REV.0 図45. AD8036出力抵抗の周波数特性 図48. オープンループ・ゲインの温度特性 図46. AD8037出力抵抗の周波数特性 図49. PSRRの温度特性 図47. AD8036/AD8037出力振幅の温度特性 図50. AD8036/AD8037CMRRの温度特性 − 11 − AD8036/AD8037―代表的特性 図51. 電源電流の温度特性 図54. 短絡回路電流の温度特性 図52. 入力オフセット電圧の温度特性 図55. 入力バイアス電流の温度特性 図53. AD8036入力オフセット電圧分布 図56. AD8037入力オフセット電圧分布 − 12 − REV.0 クランプ特性− AD8036 / AD8037 図57. 入力誤差電圧とクランプ出力電圧 図60. クランプ電圧近くの出力の高調波歪み;Vo=2 VP−P、 RL=100Ω、f=20 MHz 図58. AD8036/AD8037クランプ電圧近くの非直線性 図61. AD8036/AD8037クランプ入力バイアス電流対入力クランプ 電圧 図59. AD8036クランプ・オーバードライブ回復(2倍) REV.0 図62. AD8037クランプ・オーバードライブ回復(2倍) − 13 − AD8036/AD8037−クランプ特性 図63. AD8036クランプ・セトリング(0.1%) 、VH=+1 V、 図66. AD8037クランプ・セトリング(0.1%) 、VH=+0.5 V、 V L=−1 V、2倍のオーバードライブ VL=−0.5 V、2倍のオーバードライブ 図64. AD8036クランプ回復セトリング時間(HI) 、2倍のオーバー 図67. AD8037クランプ回復セトリング時間(HI) 、2倍のオーバー ドライブから0 Vまで ドライブから0 Vまで 図65. AD8036クランプ回復セトリング時間(LO) 、 図68. AD8037クランプ回復セトリング時間(LO) 、 −2倍のオーバードライブから0Vまで −2倍のオーバードライブから0 Vまで − 14 − REV.0 AD8036 / AD8037 動作の原理 概要 +2/−1またはそれ以下のゲインの時、 アンプのダンピング比に AD8036とAD8037は、広帯域の電圧帰還型クランプ・アンプです。 よりこの近似式の精度は低下します。このような“低ゲイン”の場 この製品の開ループ周波数応答は従来通り6 dB/オクターブのロー 合、実際の帯域幅は式から求めた計算値よりずっと大きくなりま ル・オフ特性のため、ゲイン帯域幅積は基本的に一定です。閉ルー す。 (図15と図27の閉ループ帯域幅を参照)。 プ・ゲインを増加させると、小信号帯域幅は減少します。このこと はAD8036(ゲイン1)とAD8037(ゲイン2)の帯域幅の仕様に示され パルス応答 ています。AD8036/AD8037は通常65°(typ)の位相余裕度を維持し スルーレートがフロント・エンドのDC静止電源電流とゲイン帯 ます。この高い余裕度は信号とノイズ・ピーキングの影響を抑えま 域幅積によって決まる従来の電圧帰還型アンプとは異なり、 AD8036 す。 とAD8037は入力“ステップ” 信号振幅に比例して増加する電流を備 AD8036とAD8037は反転構成または非反転構成で動作させること えています。これにより広帯域電流帰還型の製品と同様なスルー ができますが、クランプ機能は非反転モードの時のみ動作します。 レート(1200 V/μs)を保ちます。この特性と比較的低い入力ノイ したがってこの項では非反転構成のときの接続だけを示していま ズ電流(2.1pA/√Hz)特性により、AD8036とAD8037は電圧帰還型お す。反転構成については応用の項で後述します。またクランプ処理 よび電流帰還型アンプ両方の長所を備えた製品といえます。 の必要のない応用では、端子5と端子8(それぞれVLとVH)を無接続 にして下さい。その他の場合については入力クランプ・アンプの動 大信号性能 作と応用の項を参照して下さい。 AD8036とAD8037は独特の内部構造により、優れた大信号性能を 示します。この優れた性能を保つために、最大350 V−MHzの積(つ フィードバック抵抗の選択 まり@100 MHzで、Vo≦3.5 VP−P)を満足しなければなりません。 フィードバック抵抗の値は、 AD8036 (ゲイン+1) の最適な性能を 得るうえで重要です。 しかしゲインを増加すれば重要度は減少しま 電源と入力クランプ・バイパス 高周波回路で最適な動作を得るには適切な電源バイパス処理が す。 したがってこの項では特にAD8036に重点を置いて説明します。 最小安定ゲイン(+1)の場合、AD8036はRF=140Ωで最適なダイ 重要です。電源リードのインダクタンスは、アンプ応答にピーキン ナミック性能を示します。この抵抗は、リード(入力、フィードバッ グを発生する共振回路を形成します。 負荷に大きな過渡電流が流れ ク) インダクタンスと寄生容量によって引き起こされる減衰RF発振 るとき、 最高のセトリング時間と最低の歪みを実現するにはバイパ を抑制するように動作します。このRFの値によって、広い帯域幅、 ス・コンデンサ(通常1μF以上)が必要となります。最低4.7μFと 低い寄生ピーキングおよび高速セトリングの最高の組み合わせがも 0.1∼0.01μF程度のコンデンサを並列に配置することを推奨します。 たらされます。 いくつかの電解コンデンサの中には最適な性能を得るために、 小さ また同様な理由でAD8036非反転構成の場合の正入力に直列に100 な直列ダンピング抵抗(≈ 4.7Ω)を必要とするものがあります。 AD8036とAD8037をクランプ・モードで使用しクランプ入力VHと ∼130Ω抵抗を配置して下さい。図69は正しい接続方法です。 VLにDC電圧をかけるとき、安定性を維持するために各入力端子と グラウンドの間に0.1μFのバイパス・コンデンサを設ける必要があ ります。 容量負荷の駆動 AD8036とAD8037は基本的に非反応性負荷を駆動するように設計 されています。しかし容量成分を持つ負荷を駆動する場合、図70に 示すように小さな値の直列抵抗を付け加えると最適な周波数応答が 得られます。そして図71は容量負荷に対する適切なRSERIESの値を示 しています。しかし大きな容量負荷を駆動するとき、回路の周波数 応答はRSERIESとCLのロールオフで支配されますので、 RSERIESの効果は 無意味なものになります。 6 pF以下の容量負荷の場合、RSERIESは必要 ありません。 図69. 非反転動作 通常の電圧ゲイン応用の場合、 アンプの帯域幅は次式で近似でき ます: ωO f3dB ≅ ――――――― RF 2π 1+ ―― RG [ ( )] 図70. 容量負荷の駆動 REV.0 − 15 − AD8036/AD8037 負の電圧でVLが負のクランプ・レベルのときもAD8036は同じよ うに動作します。この場合、コンパレータCLがS1を制御します。2 個のコンパレータはコモン・リファレンス・レベルとして+VIN端 子上の電圧を参照しますので、電圧VHとVLは+VINに対して“HI”ま たは“LO”と決まります。例えばVINを0 Vに設定し、VHはオープン、 VLは+1 Vにした場合、コンパレータCLはスイッチS1を“C”に切り 換え、AD8036はV L 上の電圧をバッファし、+V INを無視します。 AD8036とAD8037の性能は前述したようにほぼ同じです。コンパ レータのスレッショルドは、VHとVLの電圧によって決まるクラン プ・ウィンドウの60 mV内側から60 mV外側までです。スイッチS1 は電流で駆動されます、 これによりVH=1.0 Vの場合に入力電圧が0.9 Vから1.0 Vのコンパレータの入力スレッショルドを横切るようにA1 の+入力がVINからVHまで連続的に遷移します。 そのため、増幅モードからクランプ・モードへの遷移を緩やかに 図71. 推奨するRSERIESと容量負荷 するように働きます。図73は、出力クランプ・アンプとAD8036のVIN に対するVOUTを示したものです。アンプは両方共にG=+1、VH=+ 入力クランプ・アンプの動作 1 Vに設定されています。 特許申請中のCLAMPIN入力クランプ構造によって、AD8036と VOUT(理想的クランプ)とVOUT(実際)の誤差の最悪値は、通常は AD8037の独自の高速で精度の高いクランプ機能とアンプ性能を実 アンプの閉ループ・ゲインを18 mVで乗じたものです。この最悪値 現しています。この新しい設計方法は、従来の出力クランプ回路よ は、VINがVH(またはVL)と等しいときに発生します。またVINがこの り10倍以上クランプ誤差を低減しています。さらに帯域幅を増加 限度を超えるか、 未満の値ならばVOUTは理想値の5 mV内に納まりま し、精度が高く簡単に使用できるクランプ入力も設けています。 す。 図72はユニティ・ゲインの電圧フォロワとして接続したAD8036 逆に出力クランプ・アンプの伝達曲線は、入力が0.8 Vに達したと の内部ブロック図です。主要な信号ラインは、A1(1200 V/μs、240 きから抑えられ、クランプ限度を200 mV超えた値に落ちつきます。 MHzの高い電圧ゲインの差動−シングル・エンド・アンプ)とA2(G さらにこの出力クランプはアンプをクランプ・モードの開ループで =+1の高電流ゲイン出力バッファ)を通ります。AD8037は、2以上 動作するようにしますので、 アンプの出力インピーダンスが増加し の閉ループ・ゲインに最適化されたA1のみについてAD8036と異な 誤差がより大きくなる場合があります。 ります。 AD8036とAD8037のCLAMPIN入力クランプ構造は非反転または CLAMPIN部は、デコーダを通じてスイッチS1を駆動するコンパ フォロワ・アプリケーションに対してのみ動作します。そして入力 レータCHとCLで構成されています。 +VIN、VHとVL入力に直列のユニ に対して動作しますので、 クランプ電圧レベルVHとVLおよび入力誤 ティ・ゲインのバッファは、帯域幅と精度を低下させないようにコ 差限度はアンプ出力の閉ループ・ゲインで乗じられます。 ンパレータおよびS1と入力端子を絶縁しています。 2個のコンパレータは、AD8036の帯域幅内の信号を追従できるよ うにA1(240 MHz)とほぼ同じ帯域幅を持ちます。CLAMPIN回路の 動作を説明するために、 VHを+1 Vのリファレンス接続し、 VLはオー プン、そして推奨する140Ωのフィードバック抵抗を非反転入力と 出力の間に接続してAD8036をゲイン+1に設定していると考えま す。CLAMPIN回路はA1の非反転入力だけに影響を与えますので、 主要な信号ラインは常に閉ループ動作を行います。 前述のAD8036接続回路の+VINに0 Vから+2 Vの電圧ランプを入 力すると、VOUTは+1 Vまで完全に+VINに追従します。そして+VIN が+1∼+2 Vのときに、VOUTは+1 Vに制限されます。 AD8036は実際には次のような動作を行います。+VIN入力電圧が 0∼1Vのとき、高い方の制限用のコンパレータCHの出力はCLの出力 と同様にOFF状態です。そして+VINがVINを超えたとき(理想的に は1μV、実際は約18 mV) 、CHはON状態になり、S1を“A”から“B”リ ファレンス・レベルに切り換えます。ここでA1の+入力はVHと接 続しますので、+VINが増加してもAD8036の出力電圧は変わりませ ん。この場合、AD8036はVH入力のユニティ・ゲイン・バッファとし 図72. AD8036/AD8037クランプ・アンプ・システム て動作しています。VH>1 VでVHが変化すると、 その値を忠実にVOUT 上に出力します。 − 16 − REV.0 AD8036 / AD8037 例えばAD8037が3.0のゲインで動作する場合に出力限度を±1 Vに 設定するためには、 VHとVLをそれぞれ+0.333 Vと−0.333 Vに設定す る必要があります。 AD8036とAD8037の+VIN、VL、VH端子を入力として使用する場合 の制限は、 +VINとVHまたはVLの間の最大電圧差が6.3 Vを超えてはな らないということと、この3つの端子の電圧が電源電圧の範囲内で あるということです。例えばVLを−3 Vにした場合、VINは+3.3 Vを 超えてはいけません。 図74. ユニティ・ゲイン非反転クランプ この場合、出力の上限のクランプ・レベルは2×VHとなり、また 下限のクランプレベルは2×VHとなります。非反転ゲインに構成し たこの回路の出力クランプ・レベルを求める式は: VCH=G×VH VCL=G×VL ここで:VCHは上限の出力クランプ・レベル 図73. 出力クランプ誤差と入力クランプ誤差 VCLは下限の出力クランプ・レベル Gはアンプのゲイン AD8036/AD8037の応用 VHは高入力クランプ・レベル(ピン8) AD8036とAD8037は、クランプ機能を実現するために独自の入力 クランプ回路を採用しています。この結果従来の出力クランプ・デ VLは低入力クランプ・レベル(ピン5) ★アンプのオフセットはゼロと仮定。 バイスより良いクランプ性能を備えています。 さらに他の応用でも 使用できる汎用性も兼ね備えています。 しかし回路を構成する上でいくつかの制限があります。そして 入力段でクランプを実行するクランプ・レベルを決めるために計算 を行う必要があります。 AD8036/AD8037のクランプ機能の大きな制限として、非反転 モードでアンプを使用するときだけクランプ処理を行えるというこ とです。反転回路でクランプを行うには、反転ゲイン段を追加する 必要があります。もう1つの制限として、VHをVLより大きくするこ とと、それぞれがアンプの出力範囲内(±3.9 V)になければならな いことです。またVHがVLより大きければ、VHをグラウンド以下にで きますし、またVLをグラウンド以上にできます。 ユニティ・ゲインのクランプ処理 クランプ・レベルを計算するための最も簡単な回路は図74に示す 図75. ゲイン2の非反転クランプ ユニティ・ゲインのフォロワです。この場合、非反転ユニティ・ゲ インを備えるAD8036を使用します。 この回路は、V(端子8に入力する電圧) で設定する上限の電圧と H V(端子5に入力する電圧) で設定する下限の電圧でクランプされま L す。 オフセットがある場合のクランプ オペアンプ回路にはオフセット電圧といっしょに動作させる必 要があるものもあります。通常、オフセット電圧を一方の入力に加 算する場合は反転モードに構成します。しかしAD8036/AD8037ク ランプ機能は反転モードでは動作しません。 ゲインがある場合のクランプ処理 図76は、 オフセットのある場合にクランプ動作をさせるAD8037の 図75は2の非反転ゲインに構成したAD8037です。この回路は、2以 上のゲインと大きな帯域幅を実現するAD8037を使用しています。 非反転構成を示しています。この回路でAD8037は、8ビット、125 MspsのA/DコンバータAD9002を駆動します。 そしてAD8037を使用 してオフセットがある場合のクランプ機能を実現しています。 REV.0 − 17 − AD8036/AD8037 図76. AD9002 8ビット、125 Msps、A/Dコンバータを駆動するゲイン2のオフセットを持たせた非反転AD8037 出力のクランプ・レベルは以下のようにして計算できます: AD9002のアナログ入力範囲は、グラウンドから−2 Vの間です。 A /Dコンバータの内部動作を混乱させないため、また異常に電流を VCH=VOFF+G×VH 引き込まないために入力はこの範囲から0.5 V以上出ないようにしな VCL=VOFF+G×VL ければなりません。このため信号コンディショニングにAD8037を ここでVOFFは出力に現れるオフセット電圧です。 使用します。 VHとVLの電圧を発生するために使用する抵抗は、クランプ・バイ 非反転オペアンプ回路にオフセットを加える場合、反転入力に1 アス電流により生じる誤差を抑えるためにできるだけ小さな値のも 個の抵抗を接続します。この結果、オペアンプを1以上の閉ループ・ のにして下さい。このバイアス電流はVHとVLに関係があり(図61を ゲインで動作させなければなりません。この回路の場合、AD8037を 参照) 、クランプ入力に直列した抵抗成分があれば電圧降下を発生 使用するためにゲイン2を選択します。またゲイン2でAD8037を最 します。この誤差電圧はアンプの閉ループ・ゲインと乗じられま 適に動作させるために、フィードバック抵抗R2を301Ωにしていま す。つまり閉ループ・ゲインが高ければ大きな問題になります。安 す。 定した動作を保証するために、 入力クランプ端子VHおよびVLとグラ ゲインとオフセットは関連性があります。したがって適切なR1 ウンドの間に0.1μFバイパス・コンデンサを配置して下さい。 とR3を求めるために計算を行わなければなりません。ゲインが2の また電源投入時にAD9002の基板ダイオードが順方向にバイアス 場合、 R1とR3を並列にした抵抗値はフィードバック抵抗R2の値と等 されることを防ぐために1N5712ショットキー・ダイオードを使用し しくなければなりません。つまり、 ています。 R1×R3/R1+R3=R2=301Ω オフセットを供給しているリファレンスはAD780で、 このデバイ プログラム可能なパルス発生器 スの出力は2.5 Vです。 希望する1 Vオフセットを発生するために、 こ の出力を分圧しなければなりません。つまり、 AD8036/AD8037のクランプ出力は精度が高く、正確に設定でき ます。この特性と広帯域幅および高スルーレートにより、プログラ 2.5 V×R1/(R1+R3)=1 V ム可能なパルス発生器の応用に適しています。 上の2式を解くと、 R1=499ΩとR3=750Ωが求まります (すべてに 図77は、入力にTTLタイミング信号を直接受け入れ、スルーレー 1%誤差の抵抗を使用する場合) 。入力の1Vのオフセットは、出力で ト2500 V/μsで最高24 Vp−pのパルスを出力します。出力レベル は−1 Vのオフセットになります。 は、−12 Vから+12 Vの範囲で任意にプログラムできます。 AD9002の使用できる入力信号振幅は2 VP−Pです。 これは使用でき 回路は、 出力を±12 Vの範囲にブーストするAD811とゲインを2で る信号範囲が−1 Vオフセットを中心として0 Vから−2 Vというこ 動作させるAD8037を使用しています。AD811は±15 V電源動作と高 とです。 そして信号をこの範囲から100 mV以上が超えないようにク スルーレートの性能があります。 ランプしたい場合、図76のAD9002の入力(AD8037の出力)に示され R1とR2はレベル・シフタとして動作し、TTL信号をグラウンドを ているように高クランプ・レベルを+0.1 Vに設定し、低クランプ・ 中心に対称的な信号にします。 これにより信号の高および低ロジッ レベルを−2.1 Vに設定します。 ク・レベルがAD8037によってクランプされます。出力パルスの信 AD8037の入力段でクランプを行うために、 出力のクランプ・レベ 号レベルを最適に制御するには後段のアンプではなく、 AD8037のク ルは前述したように回路のゲインだけでなくオフセットの影響も受 ランプ動作によって出力パルスの高または低信号レベルを制御しま けます。つまり希望するクランプ・レベルを実現するために、VHを す。 +0.55 V、またVLを−0.55 Vにバイアスしなければなりません。 − 18 − REV.0 AD8036 / AD8037 図77. プログラム可能なパルス発生器 入力が負のとき、アンプは通常のユニティ・ゲインの反転アンプ また出力レベルが高速の立上りおよび立下り時間特性を保つた めに、高速なエッジを持つロジック・ファミリを使用して下さい として動作します。出力は、入力と極性が反対で振幅が同じ信号で 高ロジック・レベルはVHの電圧の2倍でクランプされ、また低ロ す。VLも入力で駆動されますが、クランプ動作は行いません。なぜ ジック・レベルはVLの電圧の2倍でクランプされます。AD8037の出 なら正の出力信号は常にVLを駆動する負のレベルより常に高くなる 力は、ゲイン5で動作するAD811によって増幅されます。 全体のゲイ からです。 ンは10ですので、高出力レベルはVHの10倍、低出力レベルはVLの10 入力が正の時、出力は2つの異なる効果を加算したものです。ま ず第一に反転アンプは入力値を−1倍にします。これはユニティ・ 倍になります。 ゲインの反転構成のためです。 これにより前述したオフセットを効 高速、全波整流器 果的に発生しますが、ダイナミック・レベルは入力の−1倍です。 次に正入力はグラウンド(100Ωを通して)に接続されています クランプ入力はオペアンプのもう1つの入力と考えることができ ます。 この入力はオペアンプの入力と同程度の入力帯域幅を備えて が、 出力はVLに入力される電圧 (この場合は正のダイナミック電圧) いますので、 この入力をダイナミックに駆動すると極めて面白い機 の2倍にクランプされます。アンプのノイズ・ゲインが2だからで 能を実現できます。 す。 図78は、絶対値発生器ともいわれる全波整流器の回路図です。こ この2種類の効果が組み合わさった結果、正入力信号の場合の出 の回路は最高20 MHzで動作し、 性能の多少の低下を許せばより高い 力はユニティ・ゲインと入力信号を乗じたものと等しくなります。 周波数で動作できます。しかし性能が低下しても、特に高周波でダ 図79を参照。また図80は振幅が±1 Vで20 MHzの入力信号の入力/ イオードを使用した全波整流器より優れた歪み性能を示します。 出力写真です。 図78. 全波整流器 図79. この回路はゲイン1の反転アンプに構成されています。入力は反 転アンプを駆動します。さらにVL、低レベル・クランプ入力も駆動 します。しかし高レベル・クランプ入力、VHは無接続のままで、こ の回路では何の働きもしません。 REV.0 − 19 − AD8036/AD8037 変調信号は、ユニティ・ゲインの反転アンプの入力と低クランプ 入力VL両方に入力されます。VHは+0.5 V DCでバイアスされていま す。 回路の動作を理解するために、まず簡単な回路を考えます。もし VLとVH両方が−0.5 VにDCバイアスされ、搬送および変調入力を前 述したように駆動した場合、出力は搬送周波数の2 VP−Pの方形波に 変調周波数の波形が乗ったものになります。また反転入力(変調信 号)は、出力の2 VP−P方形波に対してオフセットを変化させるよう に動作します。高および低クランプ・レベルは入力レベルの2倍に なります。これは回路のノイズ・ゲインが2だからです。 VLをDCレベルの代わりに変調信号で駆動すれば、より複雑な動 作を行います。この結果、出力は上方包絡波、下方包絡波およびこ 図80. 全波整流の写真 の2波の間の搬送方形波で構成される波形になります。この上方お よび下方包絡波の波形は、通常のAM波形と同様に位相が180°ズレ つまり入力信号が正または負、いずれの場合でも出力はユニ たものです。 ティ・ゲインと入力信号を乗じたものになります。またVLの代わり 上方包絡波は、 反転入力に入力される波形でオフセットされた高 にVHに入力するように回路を変更すれば、 入力の負の絶対値を出力 クランプ・レベルによって生じます。このオフセットは、反転構成 するようにできます。 のために入力波形とは逆の極性です。 この回路は、 入力が0を交差するときにグラウンドから約40 mVの 下方包形波は2つの異なる効果を加算したものです。まず第一に 範囲内で動作を開始します。 この電圧は広い周波数範囲に渡って固 前述の簡単化した回路と同様に反転入力に入力する波形によって生 定されたもので、 オペアンプ入力とクランプ入力が切り換わること じるオフセットです。このオフセットの極性は、上方包絡波と同じ によって生じるものです。 しかし順方向バイアスから逆方向バイア です。次に変調信号をVLに入力するために、出力はオフセットと逆 スに急速に切り換わるダイオードが存在しないため、 ダイオードで の極性へオフセット電圧の2倍に駆動されます。これは2に等しいノ 構成した全波整流器より優れた性能を示します。 イズ・ゲインによるものです。この接続では反転がありませんの 上記の40 mVオフセットを、 回路に他のオフセットを加えること によって取り除けます。 反転入力の27.4 kΩ入力抵抗は0.01のゲイン で、オフセットとは逆の極性です。振幅変調波形の下方包形波はこ れら2つの異なる効果を加算したものです。図82を参照。 を持ちますが、この回路全体のゲインを1%変えるだけです。+ま たは−の4V DCレベル(整流器の極性に応じて)をこの抵抗に入力 すればオフセットを補正します。 AM信号検出、 高周波AC電圧計および演算動作等の多くの応用で 全波整流器を使用できます。 振幅変調器 AD8037を振幅復調器(AM検出器) だけでなく、 図81に示すように 振幅変調器に構成できます。 図82. 振幅変調波形 変調信号の振幅を変えることでこの回路の変調度を変更できま す。上方および下方包絡波の波形の振幅が変わります。 さらにVHに入力するDCバイアスを変えることによっても変調度 を変更できます。この場合、上方及び下方包絡波の波形の振幅は一 定のままですが、この2波形の間隔が変わります。これにより包括 波の振幅と波形全体の振幅の比率が変わります。 図81. 振幅変調器 高および低レベル両方のクランプを行うのに十分な振幅を持つ 方形波によってAD8037の正入力を駆動します。これはより高い周 波数の搬送信号です。 − 20 − REV.0 AD8036 / AD8037 レイアウトの注意 AD8036とAD8037の規定された高速性能を引き出すためには、 ボード・レイアウトと部品選択に注意しなければなりません。適切 なRF回路設計技術と低寄生容量部品を選択することが重要です。 低インピーダンスの信号ラインを設けるために、 プリント回路基 板の部品面の使用しない部分はすべてグラウンド面で囲むようにし て下さい。 浮遊容量を減らすために入力端子近くにグラウンド面は 設けないで下さい。 電源と入力クランプのバイパス用にチップ・コンデンサを使用 して下さい(図83参照) 。一方はグラウンド面に接続し、もう一方は 電源およびクランプ端子の1/8インチ内に接続して下さい。 出力に 高速で大きな信号変化に対して電流を供給するために、 これと並列 に大容量(0.47μF∼10μF)の電解コンデンサを接続して下さい。こ れは端子のそれほど近くに配置する必要はありません。 フィードバック抵抗は、 反転入力端子の浮遊容量を抑えるために 反転入力端子の近くに配置して下さい。 この反転入力の容量の変化 を1 pF以下に抑えることは、デバイスの高速性能を実現します。導 線の長さが1インチ (2.54 cm) を超えるときはストリップライン技術 を使用します。50Ωまたは75Ωのインピーダンス特性をもたせ、各 端を適切に終端します。 評価用ボード AD8036とAD8037の評価用ボードが供給可能です。 このボードは、 規定されたデバイスの高速性能を評価できるように注意深くレイア 図83. 評価ボードの非反転構成 ウトし、検査しています。評価用ボードの注文方法についてはオー ダ・ガイド(P.3)を参照して下さい。 参考のため次頁に評価用ボードのレイアウトを示します。 表1. AD8036A AD8037A ゲイン ゲイン 部品 +1 +2 +10 +100 +2 +10 +100 RF 140Ω 274Ω 2kΩ 2kΩ 274Ω 2kΩ 2kΩ 274Ω 221Ω 20.5Ω 274Ω 221Ω 20.5Ω R(定格) O 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω RS 130Ω 100Ω 100Ω 100Ω 100Ω 100Ω 100Ω R(定格) T 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 49.9Ω 小信号帯域幅(MHz) 240 90 10 1.3 275 21 3 RG REV.0 − 21 − AD8036/AD8037 図84. 評価用ボード・シルクスクリーン(上面) 図86. 基板レイアウト(ハンダ面) 図85. 評価用ボード・シルクスクリーン(裏面) 図87. 基板レイアウト(部品面) − 22 − REV.0 AD8036 / AD8037 外径寸法 サイズはインチと(mm)で示します。 8ピン・プラスチックDIP (Nパッケージ) 8ピン・プラスチックSOIC (Rパッケージ) 8ピン・サーディップ (Qパッケージ) REV.0 − 23 − うにやさ ゅ い し ちき PRINTED IN JAPAN AD8036/AD8037 み る 「この取扱説明書はエコマーク認定の再生紙を使用しています。」 ど りをまも − 24 − REV.0