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The World Leader in High Performance Signal Processing Solutions
SPICEツールでロー・ノイズ
OPアンプ回路を実現するテクニック
その2 【実践編】
アナログ・デバイセズ株式会社
石井 聡
1
アジェンダ
1. 抵抗の熱ノイズを測定する回路をシミュレーションで考える
2. AD797を用いて抵抗の熱ノイズを測定してみる
3. 信号源インピーダンスに適したOPアンプを選定する
4. I-Vアンプのローノイズ設計ノウハウ
5. コンバータ・システムにおけるノイズ特性の考え方
6. カスケード接続とNFの考え方
7. まとめ
2
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その1 【基礎編】をご覧いただいた
うえで本セッションをご覧いただくと
理解がより深まります
3
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1. ローノイズOPアンプ AD797で
抵抗の熱ノイズを測定する回路を
シミュレーションで考える
4
使用するSPICEシミュレータについて
このセッションではNational
InstrumentsのNI Multisim
Ver.11 Analog Devices Edition (無償版)を用いる
5
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弊社サイトで検索
してみてください
スーパー・ローノイズOPアンプAD797のノイズ特性
AD797A
AD797B
AD797の入力換算ノイズ特性 @1 kHz
電圧性ノイズ= 0.9 nV/√Hz typ (1.2 nV/√Hz max)
電流性ノイズ = 2.0 pA/√Hz typ
6
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AD797でのノイズ・シミュレーション (ex. 1: R1 = 1k,
R2 = 9k)
信号源イン
ピーダンス
ほぼゼロ
7
AD797でのノイズsim (ex. 1: R1 = 1k, R2 = 9k)
マーカ・リードアウト
1/f
ノイズ
10Hz
8
1kHz
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1MHz
AD797でのノイズsim (ex. 1: R1 = 1k, R2 = 9k)
onoise_rr1
onoise_rr2
onoise_spectrum
R1から出力に現
れるノイズ
R2から出力に現
れるノイズ
出力での全ノイズ
36.6nV/√Hz
大きい
レベル
12.2nV/√Hz
影響は低めだ
が大きい
inoise_
spectrum
入力V1換算
V = 44.4nV/√Hz
V = 4.44nV/√Hz
AD797の入力換算ノイズ特性 @1 kHz
電圧性ノイズ= 0.9 nV/√Hz typ (1.2 nV/√Hz max)
電流性ノイズ = 2.0 pA/√Hz typ
R1とR2から大きいノイズ(38nV/√Hz)が発生している
9
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AD797でのノイズsim (ex. 2: R1 = 10, R2 = 90)
R1, R2からの熱ノイズを
低減させる!
抵抗値
を低く
10
AD797でのノイズsim (ex. 2: R1 = 10, R2 = 90)
出力での全ノイズ
V = 9.96nV/√Hz
入力(V1)換算量
V = 0.99nV/√Hz
AD797の入力換算ノイズ特性 @1 kHz
電圧性ノイズ= 0.9 nV/√Hz typ (1.2 nV/√Hz max)
電流性ノイズ = 2.0 pA/√Hz typ (2nV @1kΩ)
ノイズ量がAD797自体の特性に近くなっている
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AD797 SPICEノイズ・モデル
EN
VCVS
x 0.1
非反転入
力端子
* INPUT VOLTAGE NOISE GENERATOR
VN1 40 0 DC 2
DN1 40 41 DEN
DN2 41 42 DEN
VN2 0 42 DC 2
* +INPUT CURRENT NOISE GENERATOR
VN3 43 0 DC 2
DN3 43 44 DIN
DN4 44 45 DIN
反転入力端子のノイ
VN4 0 45 DC 2
EN 3 1 41 0 0.1
GN1 0 1 44 0 1E-3
ズ発生源については
示してない
GN
VCCS
x 1E-3
ホワイト・ノイズのパラメータ
* DIODE MODEL USED
.MODEL DEN D(IS=1E-12 RS=6.3708E3 AF=1 KF=1.59E-15)
12
1/fノイズのパラメータ
非反転入
力端子
2. (実験)ローノイズOPアンプ AD797を用いて
抵抗の熱ノイズを測定してみる
13
実験回路:AD797カスケード80dBゲイン段
R0
1kΩ被
測定抵抗
14
2
IC1
-
7
3 +
4
5
8 AD797
C1 47P
10
R-UT
R1
1K
-10V
R3
6
R5
R4
1K
2
10
IC2
-
7
3 +
100
4
5
8 AD797
C2 47P
+10V
R2
+10V
1段目のノイズ特性が
支配的。この2段目の
影響は無視できる(後
半のスライドで説明)
C3 271
R1 // R2 < 10Ωとしてノイズ
が無視( Vn & In = 0 )できる
ようにする
-10V
想定外の過剰ノイズが発生しないように、金属被膜抵抗を
被測定抵抗に用いている
6
80dBの利得を確認(-40dB ATTつき)
+39.75dB
15
1kΩの被測定抵抗をマーカで計測(50回のアベレージング)
-28.36dBmとなる・・・
しかし、この値は何を
意味するのか?
16
スペアナのマーカ・リードアウトをノイズ・マーカ・モードに
変更する
17
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1kΩの被測定抵抗をノイズ・マーカで計測してみる
-72.42dBm/Hz
18
測定結果と計算値を比較してみる
測定結果から
1Vrms = 13dBm なので -72.42dBm は
差分が-85.4dB = 1/18664、故に 56.23μV/√Hz
G = 10,000(80dB)なので入力換算ノイズは5.36nV/√Hz
理論値による計算値
1.2dB(14%)の違い程度
√[(4.07)2 + (1.20)2 + (2.0)2] = 4.69nV/√Hz
R 1kΩ
被測定抵抗の
熱ノイズ
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AD797の
電圧性
ノイズ
1kΩ×AD797の
電流性ノイズ
(電圧に変換)
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この差分はノイズの
クレスト・ファクタによる
計測器で生じる誤差と
考えられる
3. 信号源インピーダンスに適した
OPアンプを選定する
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(再掲) OPアンプAD797のノイズ特性
AD797A
AD797B
AD797の入力換算ノイズ特性 @1 kHz
電圧性ノイズ= 0.9 nV/√Hz typ (1.2 nV/√Hz max)
電流性ノイズ = 2.0 pA/√Hz typ
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AD797は低信号源インピーダンスの回路に適する
VN =
0.9nV/√Hz
R = 1kΩでは
INにより、2nV/√Hz
のノイズ電圧が発生
22
IN =
2.0pA/√Hz
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信号源インピーダンスに適したOPアンプを選定する
電圧
発生
電圧
発生
小
VNが
支配的
信号源インピーダンス
が低い場合
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大
信号源インピーダンス
が高い場合
信号源インピーダンスZが・・・
低い場合 ⇒ VN に注意をはらい
高い場合 ⇒ IN×Z に注意をはらう
INによる電圧降
下(ノイズ電圧)
が支配的
異なる信号源インピーダンスに対し適切なアンプを選定
する
アンプのノイズ抵抗
Rnは
Vnoise
Rn 
Inoise
24
参考文献 “最適ノイズ性能を得るための低ノイズ・アンプ選択の手引き”, AN-940
4. I-Vアンプのローノイズ設計ノウハウ
25
高速FET ADA4627-1(GBW = 19MHz)のIVアンプ
ADA4627-1
補償コンデンサは
最適な大きさ
を選択。
1.3pF接続
(現実は浮遊容量
が影響大!)
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Rfbが単独1MΩのときと100kΩ+10倍のときのノイズ量を比較
Rfb = 1MΩとRfb = 100kΩ+10倍ではIVアンプとしての
利得(トランスインピーダンス)は同じになりますが・・・
1MΩから100kΩに変更
コンデンサも4pFを接続
ゲインが低下するので10倍
のポスト・アンプを接続
ここを観測
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I-VアンプのRfbが単独1MΩのときと100kΩ+10倍のときのノイ
ズ量を比較(つづき)
100kΩ + 10
倍アンプ
100kΩ+10倍アンプ
411nV/√Hz @10kHz
28
1MΩ
単独アンプ
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1MΩ単独アンプ
134nV/√Hz @10kHz
5. コンバータ・システムにおける
ノイズ特性の考え方
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ADCの信号レベルとSN比の考え方(1Hzあたりではな
く全ノイズ量として考えている)
LSBspanから
は-10.8dB
量子化ノイズ
量子化ノイズレベル
ADC
理論的SN比 = 6.02 x N + 1.76[dB]
入力アンプでのノイズ
Vpk = FS/2
ADC FS
Vrms = FS/(2√2)
 一例とすると
 12bit
SAR ADC AD7276
 SN比スペック = 70dB typ
 フルスケールFS = 3.5V (@Vdd = 3.5V)
 理論的SN比
= 6.02 x 12 + 1.76 = 74dB (スペック+4dB)
 実際のノイズレベル=
30
Vrms (1.24V) – 70dB = 392uV
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rms
フロント・エンド回路からADC入力までの回路図
(システム全体でノイズ解析)
ADCとの接続箇所
信号源イン
ピーダンス
10kΩセンサ
ここでどれだけの
ノイズ量があるか?
プリアンプ
LPF段
ゲイン段
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入力換算計算用
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フロント・エンドの全rmsノイズ量をSPICEツールで得る
(1Hzあたりのノイズ密度ではなく、本来のrms値)
 この積分は難しいのでMultisimを活用して全積分ノイズ量を求
3
1/f
ノイズ
ホワイ
トノイズ
フィルタ
カーブ
2
0
1
-10
-20
Value [V or A]
フィルタの減衰量 [dB]
ノイズ電力 [dBm]
める
積分
-1
1
10
100
1k
10k 100k
周波数 (Hz)
-2
-3
全rmsノイズ量はノイズ電力スペク
トルを周波数領域で積分したもの
32
rms ノイズ
レベル
0
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0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Time [s]
0.6
Multsimを使えば全ノイズ量を簡単に求められる
全rmsノイズ量
√(97×1012)
= 9.8uV rms
「ノイズの合計値
を計算」ラジオ・
ボタンを選択
33
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シミュレーション結果
36dB
ノイズスペクトル密度
出力ノイズ
小信号利得
入力換算ノイズ20nV/√Hz
(R 10kΩ = 12.9nV/√Hz)
全rmsノイズ量
√(76-E9) =
276uV rms
3dB
の差異
ADC(AD7276)入力換算ノイズ = 392uV rms
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ADC入力で低ノイズであれば良いのか?
8 bit ADC f = 100Hz; 0.64 LSB p-p (-52dB FS)の正弦波
ノイズが全くない場合
0
-10
Level FS = 0dB
-20
-30
フルスケール
(FS)振幅レベル
= 0dB
理論的SN比
= 50dB
-40
-50
-60
100Hzの信号は何
も検出されない
サンプリング周
波数の½
-70
-80
0
35
500
1000
Frequency [kHz]
1500
2000
ADC入力で低ノイズであれば良いのか?(つづき)
8 bit ADC f = 100Hz; 0.64 LSB p-p (-52dB FS)の正弦波
Vrms = 0.5 LSBのノイズが加えられた場合
0
-10
Level FS = 0dB
-20
-30
-40
フルスケール
(FS)振幅レベル
= 0dB
理論的SN比
= 50dB
若干ノイズがあると
理論SN比より低い
信号も検出できる
-52dB FS
-50
サンプリング周
波数の½
-60
-70
-80
0
36
500
1000
Frequency [kHz]
1500
2000
6. カスケード接続とNFの考え方
37
ローノイズ回路で使われるNoise Figure, NF (電力で
計算する)
入力信号の
SN比 (SNin)
Sig in
増幅された出力のSN比 (SNout)
アンプ自体で発生したノイズも含まれる
アンプ
利得 G
Sig out
Nadd = アンプの入力換算ノイズ
38
NFは大体 dB値に
変換され
表記される
信号源抵抗とNF
アンプの入力インピーンダンスZINが高く、Nadd が一定であれば
※ここでは説明を簡略にするためにこのように仮定
(実際は信号源抵抗RとZINの関係になる)
● NFはNi (つまり信号源抵抗 R )が高い方がよくなる
●信号源抵抗Rの高低で同じNFなら、高い方がノイズ自体は大きい
NI
(電力)
VN
(電圧)
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従属接続の場合は初段のアンプが一番重要
アンプ1
G1, NF1
アンプ2
G2, NF2
アンプ3
G3, NF3
Sig in
1段目のアンプ
のNFが支配的
G1で割られる
ためあまり
重要でない
G1G2
で割られるため
ほぼ無関係
利得Gは電力利得 = (電圧利得)2
入出力インピーダンスが等しくない場合は計算は複雑
40
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Sig out
7. まとめ
41
まとめ
抵抗素子は熱ノイズ源である
複数のノイズ源の合成はRoot
Sum Square (RSS)の計
算でおこなう
帯域を広くするとノイズが増える(適切に帯域制限する)
SPICEツールのノイズ・シミュレーションで、各素子が出
力に与えるノイズの影響を予測できる
onoise_rr1などで個別素子の影響度がわかる
V^2(二乗)で表示されるので変換に注意
 信号源インピーダンスに適したノイズ特性のOPアンプを選定
全rmsノイズ量を得るのは難しいのでSPICEツールの
機能を有効に活用する
42
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1次RCフィルタの等価ノイズ帯域(矩形フィルタ相当に変換
する。しかしSPICEツールで簡単に答えが出る)
減衰量 [dB]
1次RCフィルタの等価ノイズ帯域
= 1.57× f @-3dB
1次RCフィルタ
-3dB (10kHz)
0
-10
-20
1
10
100
1k
10k 100k
周波数 (Hz)
矩形フィルタ
(等価ノイズ帯域
= 15.7kHz)
1.57
43
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