AN58815 65nm プロセス技術を使った QDR® ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 作成者: Jayasree Nayar 関連プロジェクト: なし 関連製品ファミリ: CY7C13xxKV18、CY7C14xxKV18 CY7C15xxKV18、CY7C25xxKV18、CY7C16xxKV18、CY7C26xxKV18 ソフトウェアバージョン: なし 関連アプリケーション ノート: AN42468、AN54908 このアプリケーション ノートでは、65nm QDR® ファミリ SRAM の 90nm QDR® SRAM に対する優位性を説明します。 はじめに 概要 65nm プロセス技術の QDR ファミリのデバイスは、90nm ファ ミリより大幅な利点をもたらします。このアプリケーション ノート では、これらの利点と、90nm から 65nm へのデバイス移行の ためのガイドラインを説明します。 表 1 では、65nm と 90nm QDR デバイス ファミリの特長と相 違点が強調表示されています。 表 1. 65nm、90nm QDR ファミリのデバイスの特長 QDRII DDRII DDRII SIO QDRII+ QDRII+ DDRII+ DDRII+ DDRII+ SIO DDRII+ SIO 読み出しレイテンシ – 90nm と 65nm 1.5 1.5 1.5 2 2.5 2 2.5 2 2.5 書き込みレイテンシ – 90nm と 65nm 1 1 1 1 1 1 1 1 1 65nm 333MHz 333MHz 該当なし 450MHz 550MHz 450MHz 550MHz 該当なし 該当なし 90nm 300MHz 300MHz 該当なし 400MHz 450MHz 400MHz 450MHz 該当なし 該当なし 65nm 48Gbps 24Gbps 該当なし 64Gbps 80Gbps 32Gbps 40Gbps 該当なし 該当なし 90nm 44Gbps 22Gbps 該当なし 58Gbps 64Gbps 29Gbps 32Gbps 該当なし 該当なし Idd - アクティブ電流[2、4] (4 ワード バースト) 65nm 850mA 510mA 該当なし 1100mA 1310mA 630mA 740mA 該当なし 該当なし 90nm 1040mA 900mA 該当なし 1300mA 1475mA 950mA 1050mA 該当なし 該当なし Iddq - I/O スイッチング 電流 [3、4] (4 ワード バースト) 65nm 90mA 90mA 該当なし 120mA 150mA 120mA 150mA 該当なし 該当なし 90nm 80mA 80mA 該当なし 110mA 120mA 110mA 120mA 該当なし 該当なし 65nm 90nm 周波数 (4 ワード バースト) 帯域幅[1] (4 ワード バースト) 1 65nm、90nm 最大の帯域幅 = 最大周波数 x データレート x 最大バス幅 x ポート数 2 上記に指定された比較用アクティブ電流は、72M QDRII/DDRII/QDRII+/DDRII+ファミリの SRAM の値です。容量が違う SRAM のアクティブ電流 (Idd) に関しては、以下のリンクで、関連製品データシ ートを参照してください。 http://www.cypress.com/?id=95 3 ちなみに、前に述べた I/O スイッチング電流の値は、1.5V Vddq、5pF 負荷静電容量、36 のスイッチング I/O、および前述した最高周波数という仮定に基づいています。 4 SRAM が消費する電力を計算するためには、以下のリンクに掲載されているツールを使ってください。 http://www.cypress.com/?docID=23984 www.cypress.com 文書番号: 001-92735 Rev. *A 1 ® 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 表 1. 65nm、90nm QDR ファミリのデバイスの特長 QDRII DDRII DDRII SIO QDRII+ QDRII+ DDRII+ DDRII+ DDRII+ SIO DDRII+ SIO 65nm 333MHz 333MHz 333MHz 333MHz 333MHz 450MHz 550MHz 450MHz 550MHz 90nm 300MHz 300MHz 300MHz 300MHz 300MHz 400MHz 450MHz 該当なし 該当なし 65nm 48Gbps 24Gbps 24Gbps 48Gbps 48Gbps 32Gbps 40Gbps 64Gbps 80Gbps 90nm 44Gbps 22Gbps 22Gbps 44Gbps 44Gbps 29Gbps 32Gbps 該当なし 該当なし Idd - アクティブ電流 [2、4] (2 ワード バースト) 65nm 990mA 640mA 640mA 990mA 990mA 820mA 970mA 820mA 970mA 90nm 1215mA 1020mA 980mA 該当なし 1150mA 1420mA 1420mA 該当なし 該当なし Iddq - I/O スイッチング電流[3、4] (2 ワード バースト) 65nm 90mA 90mA 90mA 90mA 90mA 120mA 150mA 120mA 150mA 90nm 80mA 80mA 80mA 該当なし 80mA 110mA 120mA 該当なし 該当なし 65nm 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 4pF/4pF 90nm 5.5pF/6pF 5.5pF/6pF 5.5pF/6pF 5pF/7pF 5pF/7pF 5pF/8pF 5pF/8pF 該当なし 該当なし 周波数 (2 ワード バースト) 帯域幅[1] (2 ワード バースト) 入力/出力静電容量[5] 出力データの入力クロック (C、C#) — 90nm と 65nm 有 無 QVLD (有効な出力データ表示) — 90nm と 65nm 無 有 ODT (オンダイ終端) — 65nm のみ適用可能。 90nm に対応しない。 無 有 65nm 18Mb、36Mb、72Mb、144Mb 90nm 18Mb、36Mb、72Mb 容量 構成 (バス幅) – 90nm と 65nm x9、x18、x36 VDD (コア) – 90nm と 65nm 1.8V±0.1V VDDQ (I/O) – 90nm と 65nm 1.8V±0.1V または 1.5V±0.1V SER (FIT/Mb)[6] 単一論理ビット反転 (LSBU) - 65nm 単一論理ビット反転 (LSBU) - 90nm 複数論理ビット反転 (LMBU) – 90nm、65nm 216 (85°C の場合) 368 (85°C の場合) 0.01 (85°C の場合) SEL (FIT/Dev) – 90nm、65nm クロックの生成及びロック 時間 フェーズロック ループ (PLL) – 65nm[7] 遅延ロックループ (DLL) – 90nm 0.1 (85°C の場合) 有 (PLL のロック時間): 20µs [8] 有り (DLL ロック時間): 1024 クロック サイクル (QDRII/DDRII の場合)、2048 クロック サイクル (QDRII+/DDRII+の場合) エコー クロック (CQ、CQ#) 有 PKG—90nm、65nm 165 ボール FBGA 65nm 90nm 65nm、90nm 5 ちなみに、前述した容量の値は、72M QDRII/DDRII/QDRII+/DDRII+ファミリの SRAM の値です。容量の異なる SRAM の関連製品データシートは、以下のリンクを参照してください。 http://www.cypress.com/?id=95 詳細は、「Accelerated Neutron SER Testing and Calculation of Terrestrial Failure Rates – AN54908」のアプリケーション ノートを参照してください。 7 PLL の 20µs のロック時間は、QDR 協会が定義する仕様です。サイプレスの 65nm QDR ファミリのデバイスは、90nm QDR ファミリ デバイスと下位互換性を備えています。このデバイスでは、PLL ロック時間は、QDRII、DDRII デバイスの場合は 1024 クロック サイクルで、QDRII+、DDRII+ デバイスの場合は 2048 クロック サイクルです。 6 8 クロック サイクルの数= 周波数 x 20µs www.cypress.com 文書番号: 001-92735 Rev. *A 2 ® 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 65nm プロセス技術を使ったデバイスの利点 より高速な動作周波数 65nm プロセス技術を使ったデバイスは、550MHz までの動作 周波数および 80Gbps1 までの合計データレートで動作するこ とが可能です。これにより、450MHz までの最大周波数で動作 できる 90nm QDR ファミリのデバイスに比べて帯域幅を 25 パーセントまで大幅に改善できます。動作周波数の向上は、ア プリケーション ネットワークにおける高帯域幅の要求を満たし ます。 低消費電力 65nm QDR デバイスの消費電力は、同等の 90nm QDR デ バイスより低いです。最悪の場合でさえ電力は 30%節約でき ます。 データ有効ウィンドウの改善 65nm QDR デバイスの出力用のデータ有効ウィンドウは 90nm QDR デバイスより約 21%広いです。この改善は、 90nm デバイスの遅延ロックループ (DLL) の代わりに低ジッタ クロックを生成する位相ロックループ (PLL) を使用して達成さ れます。PLL は、入力ジッタをフィルタ処理し、入力のデューティ サイクル歪を補正します。改良されたデータ有効ウィンドウは、 65nm プロセス技術を使ったデバイスがより良いタイミング マ ージンを実現するのに役立っています。 図 1 では、500MHzでの 90nm QDRII+と 65nm QDRII+ デ バイス間のデータ有効ウィンドウの比較をしています。この図 が示しているように、65nm QDRII+デバイスのデータ有効ウィ ンドウの大幅な改善 (~21%) が見られます。 図 1. データ有効ウィンドウの比較 (実験室で採ったデータ) 信号品質 (シグナル インテグリティ) の改善 低入出力容量 65nm QDRII+、DDRII+ デバイスは、データ入力、バイト書き 込み信号、および入力クロック (K/Kb) などの入力用のオンダ イ終端を持っています。90nm プロセス技術を使った QDRII+、 DDRII+デバイスはこの機能がありません。オンダイ終端は、 外部終端抵抗のニーズを排除するため信号の堅固性を向上 させます。それによって、基板の配線が簡易化され、費用、基 板面積、そして外部抵抗が消費する電力を減少させます。オ ンダイタ終端に関する詳細情報は、アプリケーション ノート 「AN42468、On-Die Termination for QDRII+/DDRII+ SRAMs」を参照してください。 前身である 90nm プロセス技術を使ったデバイスと比べて 65nm QDR ファミリの SRAM は、約 50%低い入出力容量を 持っています。これにより、反射減衰量が少なくなって、入力に おける反射と不連続も少なくなります。容量が低ければ低いほ ど入力での AC 消費電力は低くなります。 www.cypress.com 文書番号: 001-92735 Rev. *A 3 ® 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 低消費電力および接合部の温度 消費電力 (Pd) 以下の式に基づいて消費電力を計算します: Pd = コア消費電力 + I/O 切り替え消費電力 Pd = VDD IDD + α f CL VDDQ2 N ここで: VDD = コア電圧 IDD = 有効電流 α = 動作係数、つまり出力が切り替わる周波数とクロック周波数の比率 f = 動作周波数 CL = 外部負荷容量 VDDQ = I/O 電圧 N = スイッチングする I/O の数 表 2 に、65nm デバイスは 90nm デバイスより電力定格が優れていることを示します。 表 2. 65nm と 90nm QDR-II+デバイスの消費電力の比較 65nm QDR-II+ SRAM (18Mb) 90nm QDR-II+ SRAM (18Mb) CY7C1165KV18-400BZC CY7C1165V18-400BZC VDD = 1.8V VDD = 1.8V IDD = 850mA IDD = 1080mA α=1 α=1 f = 400MHz f = 400MHz CL = 5pF CL = 5pF VDDQ = 1.5V VDDQ = 1.5V N = 36 N = 36 よって: よって: 2 2 Pd = VDD IDD + α f CL VDDQ N Pd = VDD IDD + α f CL VDDQ N 2 2 Pd = 1.8V x 850mA + 1 x 400MHz x 5pF x (1.5V) x 36 Pd = 1.8V x 1080mA + 1 x 400MHz x 5pF x (1.5 V ) x 36 総消費電力 = 1692mW 総消費電力 = 2106mW 接合部温度 (TJ) 以下の式を使って接合部の温度を計算します。 TJ = Pd θJA + TA ここで: θJA = 接合部から周囲の熱抵抗 TA = 周囲温度 Pd = 消費電力 www.cypress.com 文書番号: 001-92735 Rev. *A 4 ® 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 表 3 に、65nm デバイスは 90nm デバイスより接合部温度の定格が低いことを示します。 表 3. 65nm と 90nm QDR-II+デバイスの接合部温度 (TJ ) の比較 65nm QDR-II+ SRAM (18Mb) 90nm QDR-II+ SRAM (18Mb) CY7C1165KV18-400BZC (165 BGA) CY7C1165V18-400BZC (165 BGA) θJA = 18.96°C/W θJA = 17.2°C/W TA = 60°C TA = 60°C Pd = 1692mW Pd = 2106mW よって: よって: TJ = Pd θJA + TA TJ = Pd θJA + TA TJ = (1692m x 18.96) + 60 TJ = (2106m x 17.2) + 60 接合部温度 = 92.08°C 接合部温度 = 96.22°C まとめ 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリのデバイスでは、既存の基板の少しの変更で、より高い性能と高い帯域幅を実現することが できます。90nm プロセス技術を使ったデバイスに比べて、65nm プロセス技術を使ったデバイスはオンダイ終端を備えたデバイスがつ いているため、消費電力や入出力容量がより低く、データ有効ウィンドウと信号品質 (シグナル インテグリティ) が改善されています。 www.cypress.com 文書番号: 001-92735 Rev. *A 5 ® 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 改訂履歴 文書名: AN58815 – 65nm プロセス技術を使った QDR®ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 文書番号: 001-92735 版 ECN 番号 変更者 発行日 ** 4395709 HZEN 06/12/2014 これは英語版 001-58815 Rev. *D を翻訳した日本語版 92735 Rev. **です。 *A 4722966 HZEN 04/25/2015 これは英語版 001-58815 Rev. *E を翻訳した日本語版 92735 Rev. *A です。 www.cypress.com 変更内容 文書番号: 001-92735 Rev. *A 6 ® 65nm プロセス技術を使った QDR ファミリ SRAM の 90nm 製品に対する優位性 ワールドワイドな販売と設計サポート サイプレスは、事業所、ソリューション センター、メーカー代理店および販売代理店の世界的なネットワークを持っています。お客様の 最寄りのオフィスについては、サイプレスのロケーション ページをご覧ください。 PSoC®ソリューション 製品 車載用 cypress.com/go/automotive psoc.cypress.com/solutions クロック & バッファ cypress.com/go/clocks PSoC 1 | PSoC 3 | PSoC 5 インターフェース cypress.com/go/interface サイプレス開発者コミュニティ 照明 & 電源管理 cypress.com/go/powerpsoc メモリ cypress.com/go/memory 光学式ナビゲーション センサー cypress.com/go/ons PSoC cypress.com/go/psoc タッチ センシング cypress.com/go/touch USB コントローラー cypress.com/go/usb 無線/RF cypress.com/go/wireless コミュニティ | フォーラム | ブログ | ビデオ | トレーニング テクニカル サポート cypress.com/go/support QDR は、サイプレス セミコンダクタ社の登録商標です。本書で言及するその他すべての商標または登録商標は、各社の所有物です。 Cypress Semiconductor 198 Champion Court San Jose, CA 95134-1709 Phone Fax Website : 408-943-2600 : 408-943-4730 : www.cypress.com © Cypress Semiconductor Corporation, 2010-2015. 本文書に記載される情報は予告なく変更される場合があります。Cypress Semiconductor Corporation (サイプレス セミコンダクタ社) は、サイプレス製品に組み込まれた回路以外のいかなる回路を使用することに対して一切の責任を負いません。サイプレス セミコン ダクタ社は、特許またはその他の権利に基づくライセンスを譲渡することも、または含意することもありません。サイプレス製品は、サイプレスとの書面による合意 に基づくものでない限り、医療、生命維持、救命、重要な管理、または安全の用途のために使用することを保証するものではなく、また使用することを意図したもの でもありません。さらにサイプレスは、誤動作や故障によって使用者に重大な傷害をもたらすことが合理的に予想される生命維持システムの重要なコンポーネント としてサイプレス製品を使用することを許可していません。生命維持システムの用途にサイプレス製品を供することは、製造者がそのような使用におけるあらゆる リスクを負うことを意味し、その結果サイプレスはあらゆる責任を免除されることを意味します。 このソースコード (ソフトウェアおよび/またはファームウェア) はサイプレス セミコンダクタ社 (以下「サイプレス」) が所有し、全世界の特許権保護 (米国およびそ の他の国)、米国の著作権法ならびに国際協定の条項により保護され、かつそれらに従います。サイプレスが本書面によりライセンシーに付与するライセンスは、 個人的、非独占的かつ譲渡不能のライセンスであり、適用される契約で指定されたサイプレスの集積回路と併用されるライセンシーの製品のみをサポートするカ スタム ソフトウェアおよび/またはカスタム ファームウェアを作成する目的に限って、サイプレスのソース コードの派生著作物をコピー、使用、変更そして作成す るためのライセンス、ならびにサイプレスのソース コードおよび派生著作物をコンパイルするためのライセンスです。上記で指定された場合を除き、サイプレスの 書面による明示的な許可なくして本ソースコードを複製、変更、変換、コンパイル、または表示することは全て禁止します。 免責条項: 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