S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide

S1R72U16
USB2.0 PCB Design Guide
Rev.1.00
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適用範囲
本ドキュメントは、IDE デバイス-USB2.0 ホストブリッジ LSI 「S1R72U16」に適用されます。
目次
1 目的..................................................................................................................................................... 1
2 ボードデザインガイドライン ............................................................................................................. 2
2.1
DP/DM 信号配線 .......................................................................................................................................2
2.1.1
基本的な配線...................................................................................................................................3
2.1.2
基板層構成.......................................................................................................................................4
2.2
USB 周辺回路 ............................................................................................................................................5
2.2.1
QFP14-80 パッケージの場合 .........................................................................................................5
2.2.2
PFBGA8UX81 パッケージの場合 .................................................................................................6
2.2.3
電源間デカップリング容量と VDD・GND プレーン................................................................7
2.2.4
VBUS 供給制御回路 .......................................................................................................................7
2.2.5
発振回路...........................................................................................................................................8
3 DP/DM 信号ライン上での部品使用について ....................................................................................... 9
3.1
コモンモードチョークコイル .................................................................................................................9
3.2
チップバリスタ .........................................................................................................................................9
3.3
信号ラインの配線 .....................................................................................................................................9
3.4
High-Speed 送信波形の立上りおよび立下り特性への影響 ...............................................................10
3.5
レセプタクル・コネクタ・ケーブル ...................................................................................................10
4 差動信号特性事例 ............................................................................................................................. 11
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
EPSON
i
1 目的
1 目的
本ドキュメントは、基板設計を行う際に、USB2.0 トランシーバマクロ周辺部のガイドラインとして
用いていただくことを目的としています。したがって、USB2.0 機能の実現に特化した内容となって
おり、一般的な基板設計における注意事項は包含していません。
なお、本ドキュメントで示す回路、部品および定数に関しては参考であり、保証するものではあり
ません。したがって、システムに合わせた適切な回路方式は、お客様で判断してください。また、
部品の仕様および使用方法等は部品メーカに、基板の仕様は基板メーカにお問合せください。
本ドキュメントと併せて、USB Implementers Forum(USB-IF)から公開されている以下の関連ドキュ
メント(※)も参照してください。
※ 以下の関連ドキュメントは予告なく変更されることがあります。
関連ドキュメント
High Speed USB Platform Design Guidelines Rev.1.0 (Apr 01)
http://www.usb.org/developers/docs/
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
EPSON
1
2 ボードデザインガイドライン
2 ボードデザインガイドライン
2.1
DP/DM 信号配線
DP/DM 信号は、以下の点に配慮して配線を行ってください。
• 信号ラインの差動インピーダンスを 90Ωにすること。特に本 LSI と A レセプタクル間に
他のコネクタやケーブルが挿入される場合には、特性インピーダンスの合わせ込みに十
分配慮すること。
• 信号ライン直下の内層は、分離のない GND プレーンとすること。
• 本 LSI 端子と A レセプタクル端子間の信号伝搬遅延を 3ns 以内とするため、信号ライン
は短く配線すること
• スキューの防止、差動インピーダンスの安定化を図るため、信号ラインは等長かつ平行
に配線すること。
• 信号の反射を抑えること。
¾ 信号ラインの分岐は最小限に留めること(3.3 信号ラインの配線を参照)。
¾ 信号ラインを曲げて配線する場合は曲線処理を行うこと。
• 信号ラインの差動インピーダンスが妨害されないようにするため、他の信号ラインを近
接して配線しないこと。特に以下の信号ラインは、DP/DM 信号ラインから十分に離すこ
と。
¾ クロック信号ライン
¾ 高速信号ライン
¾ VBUS ライン
2
EPSON
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
2 ボードデザインガイドライン
2.1.1
基本的な配線
本 LSI と A レセプタクル間の DP/DM 信号配線例を示します。各寸法は、弊社
Evaluation Board(「株式会社キョウデン」製)における製造実績に基づいています。
なお、この例では基本的な配線を示すことが目的ですので、本 LSI と A レセプタ
クル間に付加される部品の配置および配線は省略します。
伝搬遅延1ns以内
伝播遅延 3ns 以内
VBUS
DM
DM
DP
DP
USB2.0
S1R72U16
コントローラ
Aレセプタクル
GND
(スルーホールタイプ)
※1
※
DP、DM線幅0.28mm、線間0.30mm
(差動90Ω)
USB2.0コントローラ
と同面に実装の場合
この点線内の直下は分離のない
この点線部分の直下はベタGNDGND プレーン
S1R72U16 と A レセプタクルは
同面に実装
Aレセプタクル
(スルーホールタイプ)
図 2-1
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
S1R72U16
USB2.0
コントローラ
DP/DM 信号配線例
EPSON
3
2 ボードデザインガイドライン
2.1.2
基板層構成
4 層および 6 層構造の 1.6mm 厚プリント基板の層構成例を示します。各寸法は、弊
社 Evaluation Board(「株式会社キョウデン」製)における製造実績に基づいてい
ます。
L1
L2
L1
層間(仕上り)
L2
≒1600μm 層間(仕上り)
L3
層間(仕上り)
L4
PP (プリプレグ)
CORE
L3
L4
PP (プリプレグ)
:
:
:
:
:
:
:
48 μm
200 μm
35 μm
1000μm
35 μm
200 μm
48 μm
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
48
200
35
300
35
300
35
300
35
200
48
(Cu/Signal 1,DP,DM)
(Cu/GND)
(Cu/VDD)
(Cu/Signal 2,GND)
※材料:FR-4
図 2-2
L1
L2
L4
L5
L6
L1
層間(仕上り)
L2
層間(仕上り)
L3
≒1600μm 層間(仕上り)
L4
層間(仕上り)
L5
層間(仕上り)
L6
PP (プリプレグ)
CORE
L3
4 層プリント基板の層構成
PP (プリプレグ)
CORE
PP (プリプレグ)
μm
μm
μm
μm
μm
μm
μm
μm
μm
μm
μm
(Cu/Signal 1,DP,DM)
(Cu/GND)
(Cu/Signal 2)
(Cu/Signal 3)
(Cu/VDD)
(Cu/Signal 4,GND)
※材料:FR-4
図 2-3
4
6 層プリント基板の層構成
EPSON
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
2 ボードデザインガイドライン
2.2
USB 周辺回路
本 LSI の USB 周辺回路については、以下の点に配慮してください。
• R1 端子に接続する 6.2kΩ±1%の抵抗は、可能な限り R1 端子近傍に配置すること。
• USB2.0 トランシーバマクロ部に属する VSS 端子(図 2-4、図 2-5 参照)は、分離のない
共通 GND に低インピーダンスで接続すること。
• 各デカップリングコンデンサは、対応する電源端子の近傍に配置すること。
2.2.1
QFP14-80 パッケージの場合
QFP14-80 パッケージの USB 周辺回路例を示します。
C2
C1
C3
11 VSS
10 LVDD
9 HVDD
8 DP
7 VSS
6 DM
5 HVDD
4 VSS
3 R1
2 VSS
1 LVDD
S1R72U16
C4
6.2k
±1%
バリスタ
HVDD (3.3V±0.3V)
LVDD (1.8V±0.15V)
コモンモード
チョークコイル
VSS
図 2-4
QFP14-80 パッケージの USB 周辺回路
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
EPSON
5
2 ボードデザインガイドライン
2.2.2
PFBGA8UX81 パッケージの場合
PFBGA8UX81 パッケージの USB 周辺回路例を示します。
S1R72U16
B2
C2
E2
VSS
VSS
B1
VSS
C1
D1
R1
LVDD
HVDD
C1
F2
HVDD
E1
DM
G2
VSS
F1
DP
G1
LVDD
C2
C3
C4
6.2k±
1%
バリスタ
HVDD (3.3V±0.3V)
LVDD (1.8V±0.15V)
コモンモード
チョークコイル
VSS
図 2-5
6
PFBGA8UX81 パッケージの USB 周辺回路
EPSON
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
2 ボードデザインガイドライン
2.2.3
電源間デカップリング容量と VDD・GND プレーン
各電源間デカップリングコンデンサの容量の参考値を示します。
なお、プリント基板の状況によっては、C2 および C3 に比べて容量の大きなコンデ
ンサを HVDD-VSS 間に配置することにより、USB 信号のジッターを良化できるこ
とがあります。ただし、その場合は C2 および C3 を HVDD 端子の直近に配置して
ください。
表 2-1
電源間デカップリングコンデンサの容量
容量名(図 2-4、図 2-5)
C1(uF)
C2, C3(uF)
C4(uF)
参考値
1
0.1
1
また、VDD・GND プレーンの特性が良好でないと、ジッターの増加など差動信号
特性に影響を及ぼします。したがって、スイッチングレギュレータを使用する場合
は、スイッチングノイズが小さくなるよう考慮してプリント基板を設計してくださ
い。
2.2.4
VBUS 供給制御回路
VBUS 電源(+5V)を供給するための制御回路例を示します。ここでは、過電流保護
機能および逆電流保護機能(※)付き USB パワースイッチ IC として、Maxim 社製
MAX8586ETA+を用いた場合の接続例を示します。
※ 逆電流保護機能を持たない USB パワースイッチ IC では、OUT 端子の電圧が IN
端子の電圧よりも高い場合に、OUT 端子側から IN 端子側への逆電流が生じる
ことが考えられますので、注意してください。
VBUSFLG
VCC(5.0V±0.25V)
S1R72U16
VSS
*1
*2
MAX8586ETA+
5
6
7
8
OUT
IN
FAULT
ON
GND
ISET
ENRESET
SEL
4
VBUSEN
3
2
1
*3
*1:, USB2.0規格7.2.4項において、
「USBダウンストリーム側ポートのVBUSラインは、120μF 以上の容量でバイパスすること」
が規定されています。弊社Evaluation Boardでは、122μF相当を実装しています。
*2:上記した120μF以上のコンデンサに蓄積された電荷をディスチャージするための抵抗です。
弊社Evaluation Boardでは、100kΩを実装しています。
*3:過電流検出値を決める抵抗です。詳細は、USBパワースイッチICの仕様を参照してください。
図 2-6
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
VBUS 供給制御回路
EPSON
7
2 ボードデザインガイドライン
2.2.5
発振回路
水晶振動子の発振周波数は、24MHz および 12MHz のいずれかを選択することがで
きます。High-Speed データレートの許容誤差は±500ppm ですが、良好な波形品質
を実現するために、水晶振動子の周波数精度は±100ppm 以内を推奨します。
なお、ノイズによる発振クロックの乱れは誤動作の原因となるため、以下の点に配
慮して配線を行ってください。
• XI、XO 信号は最短で配線すること。
• 発振回路近くには大電流信号線や高速動作信号線を配置しないこと。
図 2-7 に水晶振動子接続回路例を、表 2-1 にエプソントヨコム社製水晶振動子を使
用した弊社 Evaluation Board での回路定数例を示します。
ただし、発振特性は使用部品や基板パターン等の条件により変化するため、振動子
メーカーでのマッチング評価を行ったうえで回路定数を確定してください。
S1R72U16
1MΩ内蔵
XI
水晶振動子
XO
Rd
Cg
Cd
GND
図 2-7
表 2-2
水晶振動子接続回路
弊社 Evaluation Board での回路定数
エプソントヨコム社製
水晶振動子
発振周波数
(MHz)
FA-128(CL=10pF±50ppm)
24
FA-238V(CL=10pF±50ppm)
12
回路定数
Cg (pF)
Cd (pF)
Rd (Ω)
9
9
1000
15
15
470
なお、水晶振動子の発振周波数に応じて CLKSEL 端子の設定が必要です。CLKSEL
端子の設定については、『S1R72U16 Data Sheet』 6 端子機能説明を参照してくだ
さい。
8
EPSON
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
3 DP/DM 信号ライン上での部品使用について
3 DP/DM 信号ライン上での部品使用について
DP/DM 信号ライン上での部品使用について紹介します。
3.1
コモンモードチョークコイル
DP/DM 信号ラインにコモンモードチョークコイルを使用することにより、スキューの改善、
不要輻射ノイズの低減等の効果が得られます。コモンモードチョークコイルの例を以下に示
します。なお、コモンモードチョークコイルを使用する際は、DP/DM 信号ラインに直線的
に配置することを推奨します。配線例は、3.3 信号ラインの配線を参照してください。
3.2
[ TDK 製
ACM2012-900-2P ]
[ 村田製作所製
DLW21SN900SQ2 ]
[ TOKO 製
985BH-1007 ]
チップバリスタ
DP/DM 信号ラインにチップバリスタを使用することにより、静電気やサージから本 LSI の
DP/DM 端子を保護することができます。USB2.0 の High-Speed に対応したチップバリスタの
例を以下に示します。なお、チップバリスタを使用する際は、DP/DM 信号ラインからチッ
プバリスタまでの分岐ラインが最短となることを推奨します。配線例は、3.3 信号ラインの
配線を参照してください。
[ TDK 製
AVR シリーズ]
[ 松下電器産業製 EZJZ シリーズ]
3.3
信号ラインの配線
DP/DM 信号ラインに上記の部品を付加する場合、信号ラインの分岐を最小限に留める配線
例を示します。
DP/DM信号ライン
コモンモード
チョークコイル
バリスタ
図 3-1
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
信号ラインの配線
EPSON
9
3 DP/DM 信号ライン上での部品使用について
3.4
High-Speed 送信波形の立上りおよび立下り特性への影響
DP/DM 信号ライン上に容量成分を持つ部品を付加した場合、信号ライン上の容量が増大し、
特に High-Speed 送信波形の立上りおよび立下り特性(THSR/THSF)が緩やかになります。
High-Speed アイパターンが Fail 判定にならないように注意してください。
3.5
レセプタクル・コネクタ・ケーブル
USB 認証を取得していないレセプタクル・コネクタおよびケーブルを使用した場合、DP/DM
の差動信号特性が劣化する恐れがあります。差動信号特性の劣化は、アイパターンの品質に
悪影響を与える要因になりますので、USB 認証を取得したレセプタクル・コネクタおよび
ケーブルを使用することを推奨します。
10
EPSON
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
4 差動信号特性事例
4 差動信号特性事例
本ドキュメントにしたがって設計された弊社 Evaluation Board は、USB-IF の Embedded Host 認証試
験に合格しました。弊社 Evaluation Board における Hi-Speed アイパターンの波形を示します。
図 4-1
Hi-Speed アイパターン波形
※ アイパターン波形は、基板上の伝送線路特性、電源特性、および測定環境等によって観測される
波形が異なります。
S1R72U16 USB2.0 PCB Design Guide (Rev. 1.00)
EPSON
11
改訂履歴
改訂履歴
改訂内容
年月日
頁
種別
07/06/01
0.79
全頁
新規
新規作成
07/07/01
1.00
2.2.5
修正
FA-128 に対する回路定数値を修正
2.2.5
修正
FA-238V に対する回路定数値を記載
4
修正
認証試験合格事例を紹介
Rev.
内 容
半導体事業部
IC 営業部
<IC 国内営業グループ>
東京
〒191-8501
東京都日野市日野 421-8
TEL(042)587-5313(直通)
大阪
〒541-0059
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ドキュメントコード:411137501
2007 年 6 月 作成
2007 年 7 月 改訂