Apex-AN08 出力の最適化

AN08
APEX – AN08
AN08
出力の最適
Product Innovation From
化
出力の最適化
最新のパワー・オペアンプ
パワー・オペアンプは、回路設計の時間を大幅に短縮でき
るため広く使用されています。パワー・オペアンプを使用して
設計された機器の組み立てコストは、部品点数が大幅に削減
できるため、ディスクリート部品で設計した同等品に比べて低
くなります。低電力デバイスに基づいたオペアンプの設計ルー
ルは良く知られていますが、回路におけるパワーの側面に注
意深く目を向ける必要があります。信頼性を最高にする一方
で、出力電力とシステム効率を最適化することが目標となりま
す。このアプリケーション・ノートでは、いくつかの最適化テ
クニックと注意すべき領域について説明します。
仕様書の解釈
まず仕様書の範囲内で動作させることが、ハイ・パワー
のレベ ルに到 達するための 第 一 歩です。 つまり、 最 初に
データ・シートを確認する必要があるということです。Apex
Precision Power のデータ・シートは、次のように分かれて
います。製品概要、絶対最大定格、仕様一覧表、代表的な
性能特性グラフ、およびアプリケーションについてのヒントで
す。関連情報については、各セクションを参照してください。
絶対最大定格とは、永久的な損傷を起こさないストレス・レ
ベルのことです。この場合、アンプに加わるストレスは単一で
あることを条件としています。ただし、仕様一覧表に記載さ
れている範囲でのみ正常動作が保証されます。たとえば、多
くのアンプでは、絶対最大ケース温度が –55℃~ 125℃と
なっています。仮に規定の動作温度範囲が狭い場合、たとえ
ば –25℃~ 85℃の場合、+85℃を超える温度で動作すると、
アンプは電源レールのどちらかにラッチする可能性がありま
す。しかし、このラッチ状態が安全動作領域内であれば、デ
バイスが永久的な損傷を受けることはありません。最大電力
と最大温度などの最大ストレス・レベルが同時に 2 つ以上加
わると、アンプに対しての永久的な損傷を引き起こす可能性
があります。
一般に認められている絶対最大電力損失を規定するための
業界標準の方法は、ケース温度が 25℃に維持され、接合部
が絶対最大定格の温度で動作していることを前提としていま
す。この標準化された基準によって、様々なメーカーの定格
を比較することが可能になります。しかし、これは信頼できる
動作点とは言えません。理想的なヒートシンクが必要となり、
最良のヒートシンクを使用した場合でも、極端な温度での動
作によって、製品寿命を縮める結果となる可能性もあります。
Apex Precision Power では、最大接合温度 150℃以下
を推奨しています。
アプリケーションの設計中は、仕様一覧表が最も信頼でき
る作業文書である必要があります。最大 / 最小パラメータ
(電
圧オフセット、出力能力、その他)に加え、この一覧表には
コモン・モード電圧、温度範囲、電源、およびその他の直線
動作保証範囲が掲載されています。
代表的な性能特性グラフは、動作条件の変化に伴う性能の
変化量を判断するのに非常に便利なものです。たとえば、最
大電流定格時の最小電圧出力は、すべてのアンプで規定され
ています。この電流の 75% のみを必要とするアプリケーショ
ンの場合、このレベルでは 0.5V 増加するということがこの
グラフから判断できます。安全な設計では、このグラフの数
値をそのまま使用せずに、出力能力を仕様一覧表の数値より
も 0.5V 分抑えて想定します。代表的な性能特性グラフに基
づいて設計した場合、その設計が正常に動作する確率は統計
的には 50% であることに注意してください。
AN08U
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電源の最適化
最大出力電力と最高効率を達成するには、内部電力損失を
最小化する必要があります。電源電圧が、必要とする出力を
得るための必要最小限の電圧に選択されている場合に、この
条件が満足されます。内部電力損失は、自己消費電力の総
和プラス「電源と出力の電圧差」と出力電流の積です。設計
者が最適化できる可変部分は電源電圧のみです。製品デー
タ・シートに規定された、「電源と出力の電圧差」の最小値を
参照してください。ここに余分な電圧が 1V あると、出力電
流 1A につき 1W 多く消費することになります。この領域に
おけるトレードオフは推奨しません。既存のシステム電源と必
要な出力の電圧差がオペアンプの「電源と出力の電圧差」を
超える場合、このシステム電源から必要な出力を引き出すと、
効率が低下します。また、非安定化電源の使用を是認する場
合は、この電源と効率のトレードオフもよく検討する必要があ
ります。非安定化電源を使用する場合、電源のリップル含有
量とともに、ラインと負荷の変動を考慮する必要があります。
その結果は、必要な出力を生成するためにパワー・オペアン
プに必要とされる最低動作電圧に上乗せされる、ある電圧幅
となります。この幅に相当する電力は消費される必要があり
ます。最低動作電圧に上乗せされる電圧によって、パワー・
オペアンプの電力処理能力が減少します。
選択肢として、その電力をパワー・オペアンプの中で消費
させるか、別のレギュレータで消費させる手段があります。
電流レベルが増加するにつれて、1 ワット当たりのコストの増
加率は一般的に、DC レギュレータよりもパワー・オペアンプ
の方が高いです。
通常、非安定化電源は、過渡保護を備えていないため経
済的ではありません。電源ラインは、きわめて雑音が多いこ
とで知られています。電源ラインでは、電源トランスを通過し
てきた高電圧で高速のスパイクが正弦波の上に乗っています。
さらに、平滑用に使用される大容量の電解コンデンサは、高
い周波数領域における等価直列抵抗が低くない場合がよくあ
ります。引込み線上に 1KV のスパイクがあると、アンプの
電源ピンにおける過剰な電圧スパイクをもたらすことがありま
す。結果としてオペアンプが損傷する可能性があります。し
たがって、電圧スパイクを取り除くため、ライン・フィルタとツェ
ナー・クランプが必要となり、非安定化電源の経済性は低下
します。
一旦、前述のような最小限の電源電圧が選択されると、IR
損失を最小化する手段が必要となります。現在の最新ハイブ
リッド・パワー・オペアンプには、住宅用配線における多くの
分岐回路よりも大電流を処理できるものがあります。アンプ
と負荷の間と同様に、電源とアンプの間のリード線が可能な
限り短ければ、特に周波数が高くなるにつれて、損失を最小
限に保つことができます。ビデオ周波数の領域では、数イン
チの電線であっても大きなインダクタンスを持ち、高周波に
おいて表皮効果のために太い電線の抵抗が増加する場合は、
Multistrand Litz Wire(リッツ線)が推奨されます。
単電源または非対称電源による動作
非対称の出力スイングによって、電源を最適化する別の方
法が提供されます。図 1 の回路について検討してみます。仮
に対称電源が使用されていた場合には、電力損失はかなり増
加し、より高い電圧定格のパワー・オペアンプが必要とされ、
出力電力は減少していたと考えられます。
幸いに、大多数のパワー・オペアンプは単電源電圧からの
動作に適しています。しかし、「入力電圧は電源レールのどち
らに対しても 5 ~ 10V より近づけない」というコモン・モー
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2009
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2009年5月
35
APEX − AN08UREVD
AN08
+26V
REF
2
.2Ω
5
TEMP.
SET
POINT
R CL+
.15Ω
6
–.9VP-P
1
8
47µF
.2Ω
R CL–
.15Ω
RD
2K
6.5mH
3Ω
1.8AP-P
–5V
.1µF
YOKE DRIVER: –V =
1K
L • ∆I
∆t
RS
.5Ω
図1. 大電流非対称電源
MAX INTERNAL POWER
1/2 VS = 18V
I OUT = 1.8A
POUT = 32.4W
PINT = 32.4W
ド動作要件による制約があります(コモン・モード電圧仕様に
よって規定されています)。したがって、単電源動作では、入
力信号はいずれかの電源レールから 5 ~ 10V バイアスする
必要があります。図 2A に、これを行うためのバイアス手法
の 1 つを示します。
図 2B は単電源動作に対してきわめて実用的な代替手法を
示しています。この例では、別の 1 つの低電位の電源を備え
ています。この方法では、接地基準の入力信号を使用するこ
とができる上に、ユニポーラ出力の電圧スイングを最大化で
きます。負荷がリアクティブ負荷であったり起電力を発生する
ものでない限り、図 2B における 12V の電源は、通常、
パワー・
オペアンプの静止電流のみを供給することになります。
50K
2.5K
自動試験装置用のプログラマブル電源(PPS)は、被試
験デバイスにおける短絡に対し、多くの場合耐える必要があ
ります。図 4 に示す PPS では、DUT の 24V 電源の 1 カ
所に短絡していた場合に、PPS が逆の電圧にプログラムされ
ていると、ワースト・ケースの電力損失が発生します。24V
電源の電流制限が PPS の電流制限より大きいと仮定すると、
PPS は、通常動作時における電力レベルに比べて相当に高
い電力レベルで電流制限状態になります。PPS の電源電圧
と DUT の電源電圧の合計に電流制限値を乗じたものが、ア
ンプに対するワースト・ケースとなる可能性があります。
+210V
7.2K
+210V
+40V
50K
MAX OUTPUT POWER
VOUT = 28V
I OUT = 2.8A
POUT = 78.4W
PINT = 22.4W
図3. 温度コントローラ回路の電力レベル
50K
+210V
10Ω
TEMP.
SENSOR
RF
–7V
2.5K
PA73
PA02
7
2.5/10V
D/A
+36V
.1µF
47µF
±5V
+24V
1.3Ω
+50/+200V
PA82J
1K
PA10
50K
D.U.T.
1.3Ω
図2A. 単電源動作
–40V
50K
2K
高いパワー・レベルを可能にするAC出力
PA81J
AC の駆動周波数が 60Hz 以上であれば、電力を消費す
る波形の半サイクルの時間は、パワー・アンプの熱時定数よ
りも短くなります。出力トランジスタ間に結果として生じる平
均電力は、熱抵抗が低い場合と同様の結果をもたらします。
この低い熱抵抗によって、既定のアンプの電力処理能力がす
ぐに増加します。
Apex Precision Power のデータ・シートには、熱抵抗に
関する AC および DC 両方の定格が記載されています。絶対
最大定格および電力ディレーティングの代表的な性能特性グ
ラフの両方で規定された電力レベルは、DC 熱抵抗に基づい
ています。このことは、AC のみのアプリケーションであれば、
より多くの電力を供給できる、またはより低い温度で(より確
実に)動作させることができることを意味しています。
正弦波を扱う回路は、
DC を扱う回路と類似しています。ピー
ク出力電圧が電源電圧の 63.7% までスイングしたとき、最
0/–125V
–130V
図2B. 非対称電源
ユーザー・アプリケーションにおける電力損失の検討
負荷の電力要件は、多くの場合わかっていますが、アンプ
内部で消費される電力の算出はいつも簡単であるとは限りま
せん。
純抵抗負荷の場合、出力電圧が電源電圧の半分になったと
きに、内部電力損失が最大となります。仮に、アンプが短絡
に耐える必要がなければ、これが検討すべきワースト・ケース
になります。DC アプリケーションの一例として温度コントロー
ラを図 3 に示します。
36
–24V
図4. PPSの電力損失に関する考察
+12V
0/5V
D/A
ICL = .5A * 64V = 32W
AN08U
AN08
大の内部 RMS 電力損失となります。内部電力損失の最大
値は、次のように算出することができます。
P = VSS2/(2 π 2 * RL)
ここで : VSS = 全レールツーレール電源電圧
RL = 負荷抵抗
リアクティブ負荷による損失の増加
リアクティブ負荷を駆動する場合、V O と I O の位相差があ
るので、さらに注意が必要です。実際の電力損失は、等価
の抵抗負荷の場合に比べて数倍多くなる可能性があります。
そのような場合、電力損失(P)を算出するには、次のよう
に、まったく異なっていながら、同じように簡単なアプロー
チを使用するのが最もよい方法です。
P = P1 – PO
ここで : P1 = 電源から取り出した電力
PO = 実際に負荷に供給した電力
P1 の計算においては、DC 電源電圧と AVERAGE 出力
電流を使用します(RMS * 0.9003 [0.9003 = AVG/
RMS または 2/ π ÷ √ 0.5])。たとえば、1A RMS の出
力電流で、電源電圧が± 15V であれば、0.9003 * 1 *
15 = 13.5W と静止電流 * 30V の和となります。
純リアクティブ負荷を駆動するということは、負荷の力率
がゼロに減少するため、電源からの全電力がアンプで消費
されることを意味します。
モーター駆動への対処
モーター制御アプリケーションでは、多くの場合、駆動回
路に対して過酷な要件が課されます。図 5 のセクション A に、
パワー・アンプの 2 つの出力トランジスタとモーターおよび
その定格を示します。モーターの巻線抵抗と電圧定格だけ
では運転電流が決まらないということを認識することが重要
です。運転電流を算出する際には、モーターの逆起電力も
考慮に入れる必要があります。図 5 のセクション B に示す
ように、この起電力は、ある瞬間の速度に比例した電圧を持
つ電池としてモデル化することができます。
+28V
アンプが逆転の命令を受けると、その出力を瞬間的に切
り替えますが、実際の速度と起電力は、機械系の慣性が消
失する程度の速さでしか減少しません。電気系と機械系の
応答時間の差が非常に大きいことによる初期の結果を図 5
のセクション C に示します。アンプは新規の駆動命令に応答
していますが、起電力はまだ切り替えるだけの時間を持つこ
とができていません。
アンプが、
プログラムされた –24V を出力していれば、
トー
タル 36V が巻線抵抗に印加され、9A の電流を流すことを、
このモデルは示しています。この状況においては、出力電
圧は、制御電圧ではなくアンプの電流制限によって決まりま
す。プログラムされた制限電流の 4A が巻線抵抗を通って、
16V が生成されます。初期起電力 12V が上乗せされるこ
とによって、アンプの出力電圧は -4V になります。 導通し
ているトランジスタの両端電圧が 24V あるため、内部電力
損失は、定常動作時のレベルの 8 倍に上ります。この問題
の分析をしなかったために、今まで数多くのパワー・オペア
ンプが損傷しています。
通常運転の要件に対して利用可能な電力を最大化する実
用的な手法は、駆動電圧の変化率を制限し、機械系の慣性
によって課される制約と同程度にすることです。このように
して、前述の極端なハイパワー・レベルは避けることが可能
となります。言い換えると、短い反転時間と高いレベルの
回転トルクはトレードオフの関係になるということです。
出力電力を増大させるための回路設計
ブリッジ回路に構成した 2 つのパワー・オペアンプを使用
すれば、パワー・レベルを倍増することができます。ブリッジ
回路の利点を説明するため、接続の切り替えによって回路を
シングル・エンドからブリッジに変形させることができる複合
回路を、図 6 に示します。A1 は、4 Ωのスピーカーを駆動
できる標準的なシングル・エンドのパワー・オペアンプです。
A2 が加わればブリッジ回路になります。電圧の駆動力を 2
倍にすることは、8 Ωのスピーカーに適するようになります。
この手法を使用すれば、パワー・レベルが 2 倍になるだけで
なく、同じ電源でどちらの回路にも電力を供給することがで
きます。シングル・エンド回路におけるピーク時に必要とな
る電流でも、電源能力の 50% しか使用しないために、この
ことが可能になります。対照的に、同等かつ正反対の駆動
特性を持つブリッジ回路では、信号の各半サイクルの間、正
負両電源レールに対して等しく負荷を与えます。
150K
24V @ 3A
RW = 4Ω
EMF = 12V
セクションA
18K
150K
.47µF
+15V
.2Ω
–28V
150K
+15V
.16Ω
1nF
STEADY STATE
+28V
3A * 4V = 12W
2.2K
4Ω
12V
.2Ω
I OUT
セクションB
1nF
A1
+24V
A2
4Ω
18W
RMS
–15V
+12V
8Ω
36W RMS
2.2K
.16Ω
–15V
図6. ブリッジ構成による出力の倍増
REVERSAL
–28V
4A * 24V = 96W!
並列動作は、出力電流またはワット数を増加させるために
頻繁に使用されます。しかし、出力インピーダンスが低いた
め、パワー・オペアンプは回路の修正無しには並列接続する
ことができません。 図 7 は、並列動作のための 1 つの方
法を示しています。回路機能を満足するために構成された、
この制約のないマスター・アンプには、小さなセンス抵抗
があり、帰還ループの中に置かれています。スレーブ・アン
4Ω
12V
I LIM
セクションC
–4V
–16V
図5. モーター駆動回路内の電力損失
AN08U
37
AN08
す。サーマル・シャットダウンは、あらゆる問題の解決策にな
るわけではありません。安全動作領域の二次降伏曲線を無視
することはできません。サーマル・シャットダウンの動作に対
しての時定数を 250 ~ 500ms と仮定してください。これ
は、ワースト・ケースの電力レベルが、SOA 曲線の中の定常
状態での二次降伏ラインを超えてはならないことを意味して
います。
RF
R1
RS
MASTER
チームの取り組みとしての最適化
Apex Precision Power のパワー・オペアンプは、内部
電流の優れた制御能力を備えた独特なサーミスタを採用して
おり、比類のない仕様に加えて特に優れた品質実績を示すこ
とができます。アプリケーションの設計に注意深く配慮するこ
とによって、最終結果は、より大きな価値を持った先進的な
製品となります。
RS
SLAVE
I LOSS = VOS /RS
V LOSS = I OUT *R S
図7. 並列動作
プは、ユニティー・ゲイン・バッファとなっています。したがって、
これら 2 つのアンプの出力電圧は等しくなります。負荷に接
続された 2 つのセンス抵抗が等しければ、これらのアンプは、
電流を均等に分担します。必要に応じて、スレーブをさらに
追加することができます。
センス抵抗の選択に当たっては、検討すべき 2 つの要素が
あります。まず、出力電流によって電圧降下が発生し、この
電圧降下によって電源要件が厳しくなります。次に、スレー
ブの電圧オフセットが 2 つのセンス抵抗を介してその両端に
現れます。したがって、小さな電流が完全に 2 つのアンプの
間で循環することになります。これは電力の無駄です。この
手法を使用する場合は、アンプの代表的なスルー・レートの
50% しか必要としないように入力を制限することが推奨され
ます。このことによって、異なったスルー・レートを持ったア
ンプが、高速な過渡状態のときに、お互いの間で大電流を発
生させるのを防止することができます。
適切なヒートシンクによる出力電力の増大
既定のパワー・オペアンプで、より大きなヒートシンクを使
用すれば、より高出力を達成することができます。さらに、パ
ワー・レベルの増大に伴って、より大きなヒートシンクを使用
することで費用対効果がより高くなります。
スペースと重量を最小化するために、パワー・アンプには
強制空冷または水冷でさえ頻繁に使用されます。強制空冷は、
明らかに導入が容易ですが、最大でも 2:1 程度しか改善でき
ません。さらに高いパワー・レベルにおいては、水冷がより
魅力的な選択肢となります。既定の 6 インチ角で高さ 2 イ
ンチの寸法によって得られるヒートシンクの妥当な定格は、自
由大気に対して 0.85℃ / ワット、強制空冷に対して 0.4℃ /
ワット、水冷システムに対して 0.05℃ / ワットとなります。ヒー
トシンクに関する詳細は、「Apex Precision Power アプリ
ケーション・ノート」を参照してください。
サーマル・シャットダウンによる保護
サブストレート温度が安全の限界を超えるとアンプがシャッ
ト・オフするため、内部の熱保護によって通常の動作条件下
での出力を増大させることができます。このことによって、通
常の条件のみに基づいてアンプ回路の設計を行うことができ
ます。それでも、異常な高電力状態での過剰な温度は防止さ
れます。
サーマル・シャットダウン機能は、
プログラマブル電源(PPS)
のような回路で特に真価を発揮します。ここで、出力電圧は、
被試験ユニットの通常動作電圧となっています。時々、被試
験ユニットが、PPS の出力を接地に短絡させる可能性のある
不良が発生します。これによって、電力レベルは相当に上昇
します。サーマル・シャットダウン機能によって、PPS 自体を
損傷させることなく、容易にシャット・オフさせることになりま
38
AN08U