HAMA HOT! vol.7 (2010 冬)

発行元
〒430-8587 静岡県浜松市中区砂山町325-6 日本生命浜松駅前ビル TEL:053-452-2141 FAX:053-456-7889
jp.hamamatsu.com
キリトリ線
国内営業体制変更のご案内
POST CARD
料金受取人払郵便
浜北支店承認
MEMS技術による世界最小のホトマル
これまで製品ごとの担当営業が窓口となりお客様への対応をさせていただ
いておりましたが、このたび弊社ではお客様へのサービスの向上、営業力
の強化を図るため、原則として地域担当の営業所が全製品の窓口となり対
応させていただきます。
営業所と製品担当部署との連携を密にし、今まで以上にお客様のご要望に
迅速に対応させていただく所存でございます。
434 8790
201
が
光センサの歴史を変える
お近くの営業所までお問合せください。
[ 営業本部 国内統括部 ]
仙台営業所
差出有効期間
平成23年10月
31日まで
(切手不要)
〒980-0011 宮城県仙台市青葉区上杉一丁目6-11 日本生命仙台勾当台ビル2階
TEL:022-267-0121 FAX:022-267-0135
筑波営業所
〒300-2635 茨城県つくば市東光台五丁目9-2
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東京営業所
静岡県浜松市浜北区平口5000
浜松ホトニクス株式会社 行
〒105-0001 東京都港区虎ノ門三丁目8-21 虎ノ門33森ビル5階
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キ
リ
ト
リ
線
中部営業所
〒430-8587 静岡県浜松市中区砂山町325-6 日本生命浜松駅前ビル4階
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大阪営業所
〒541-0052 大阪府大阪市中央区安土町二丁目3-13 大阪国際ビルディング10階
TEL:06-6271-0441 FAX:06-6271-0450
1台のカメラに2つのCCD素子を搭載、
2波長画像・2焦点画像を同時に取得!
ORCA -D2
新連載
第1回
超高真空
拡散接合技術
不思議なナノホトニクスの世界 第3回
プラズモニクス[前編]
FSC認証紙と植物油インキを使用しています。
photo:秋葉山本宮秋葉神社(浜松市天竜区春野町)
と、
キセノンフラッシュランプモジュール
MEMS技術による世界最小のホトマル
目標は増倍率100万倍、
そしてフォトン一つ一つが識別できること
が
光センサの歴史を変える
人差し指の先に乗る13 × 10ミリ角の光電子増倍管(ホトマル)
が完成間近だ。名前は「μ(マイクロ)PMT」
。十数年前、当時
の社長や事業部長の夢を背負ってスタートした開発が、MEMS
技術による世界最小のホトマルに結実する。来年1月には、研究
小さなホトマルを作ろうという話は、
どこから生まれたのですか?
μPMTのアイデアを実現するために、
まずは何から始めましたか?
下井
下井 ホトマルの増倍部にはシリコンを使おうと思っていましたので、
実は最初は小さいホトマルを作ろうではなく、たくさん作ろ
うから始まったのです。当時の社長(現会長)から「1モデル当たり
まずシリコンの加工方法から検討し始めました。ホトマルというから
年間100万個作るにはどうすればいいか考えろ」と言われたのがそも
には、光電子の増倍率100万倍で、フォトン一つ一つの検出性能は確保
そもの発端です。当時の生産量はせいぜい数万個。既に半導体製品
したいと考えていましたので、計算上、増倍部の厚さは900 μm以上欲
では数百万個単位の大量生産をしていましたから、
「同じことがどう
しいことがわかっていました。ところが当時の技術では50∼100 μm
してホトマルでできないのか?」と。
の深さの加工がやっと。幸い、国がMEMS関連のプロジェクトを始め
ていましたから、シリコン加工装置の性能は数年後には格段に上がる
開発向けに評価キットの提供も始まる。ここに至るまでにどん
そこで最初に考えたのが、
な紆余曲折があったのか。開発に関わった4人の社員に聞いた。
図1:μPMTの初期スケッチ
だろうと。
小型のメタルパッケージ
型ホトマルの生産工程を
小玉 私は5年前に入社してすぐにチームに参加し、ホトマルの評価
自動化し、1日5,000個、
を担当しました。当時のプロトタイプは深さ200∼250 μm程度の加
年間100万個作ろうという
工で、増倍率は100倍。外からは、ちゃんと動いているかどうかもわ
アイデア。ところがこれでは莫大な設備投資が必要で実現困難とわ
からない状態で、
「本当にできるのかな?」と不安になったのを覚え
かり、次に現在のμPMTの発想が出てきました。それが十数年前で
ています。その後、深さ450 μm加工のシリコンを用いてプロトタ
す。当時描いた絵が残っていますのでお見せしましょう
(図1)
。面板、電子増倍部、回路の3層構造で、
電子増倍部と真空容器を兼ねること、部品点数
イプを作ってみたら、増倍率が1万倍になり、少し
光が見えてきました。これ以上の加工はなか
なか困難でしたので、それを2枚貼り合わせ
を減らすこと、組み立て工程をなくすこと、
てトータル深さ900 μmのプロトタイプを
という3つの条件を設定していました。
作ったら、100万倍という増倍率を得ること
ができました。
小玉
現在のμPMTがシリコン基板を2枚の
ガラス基板で挟み込んだシンプルな3層構造で
左から 電子管事業部 電子管技術部 電子管設計第1グループ
電子管事業部 電子管技術部 電子管設計第1グループ
電子管事業部 電応システム部 第37部門
電子管事業部 電子管営業推進部 第1グループ
電子軌道
すから、最初のアイデアがほぼそのまま
下井 英樹
小玉 剛史
久朗津 崇徳
後藤 幹人
第2ダイノード
第2
活かされたことがわかります。これま
でのホトマルのように増倍部の部品
を人手で組み立てる必要もなくな
りますので、量産効率も格段に
上がります。
集束電極
01
HAMA HOT !
下井
この結果によって、予測と実験値が一
致し、1 mm厚のシリコンを使って深さ900 μm
の加工が実現できれば、100万倍の増倍率が
得られるという確信を持つことができま
した。シリコンを深く加工する技術をな
んとしてでも実現しなければとの想い
も強くなりました。
第1ダイノード
第1
HAMA HOT !
02
MEMS技術による世界最小のホトマル
お問合せ先
が光センサの歴史を変える
電子管事業部 電子管営業推進部
「とんでもないことをやり始めたな」
から一気に加速
加工の深さに加え、
真空度と耐電圧が課題に
必要な条件は加工の深さのほかに何があったのでしょう。
久朗津
そこでモジュール化にあたって、μPMTのサイズに合わ
どのあたりから「これはいける」と思えるようになりましたか?
せたコンパクトなものにしようと、最初に専用ソケットを作ったの
下井
真空度と耐電圧です。光を電子に変換する光電面が酸素に対
してセンシティブであることを利用して、光電面の感度を真空度の
E-mail:[email protected]
れていないような大がかりな計測装置が手軽に使えるようになれば、
こちらも新しいビジネスが生まれる可能性があります。
ですが、コストがかかりすぎると却下。現在は導電性ゴムでμPMT
下井
を挟み込み、基板とつなげる方式で落ち着いています。
ある程度シリコンの加工ができた頃に発表をしたら、当時の社長か
久朗津
当社には定期的に社内の試作研究成果を発表する場があり、
世の中の技術革新の例を見れば、カバンのように大きかっ
ら「とんでもないことをやり始めたな」と。当社の場合はこれが褒
た携帯電話が小型化、高機能化され、現在では、PCなみの高性能な
他部門との連携も力になったと聞きました。
め言葉で、そのあたりから社内的な評価も高まってきました。
携帯電話を一人1台持つ時代となっています。夢のような話ですが、
下井
シリコンの加工プロセス、貫通電極の製作、活性・真空気密
後藤 本格的なお客様へのお披露目は昨年2月のフォトンフェア(当
まさにいつでもどこでも意識せず健康管理をチェックする携帯機器、
パッケージなど必要な技術を社内の多くの部門から提供してもらい
社の製品・技術・方向性を示すプライベート展示会)でした。この
ユビキタス・ヘルスケアとでもいうべきものが、実現できると思って
イズになって増倍されてしまう。発光は、枠と構造物との距離や、
ました。このうち貫通電極はガラス基板に配線を埋め込んだもの。
頃にはだいぶ形になっていて、お客様との接点で話題に上ることも
います。そのためには、私が関わる周辺回路技術でも、従来より格段
シリコン加工時にできるバリによって引き起こされていました。距
当初別の方法を考えていたのですが、ある時、ガラスにリードピン
多く、市場からの期待感が大きいことを強く感じました。
に小さいサイズの回路などを検討していく必要があると考えています。
離を調整したり、シリコン加工装置の条件や製造工程を工夫したり
を埋め込む技術が社内にあることに気づき、この技術を数10 μm単
して解決の道を探りました。
位の精度にまで上げてもらって貫通電極の実現にこぎつけることが
μPMTの登場によって変わることは何でしょうか?
下井
目安にしました。最後まで難題だったのが耐電圧です。13 × 10 mm
角のホトマルに1000ボルトの高電圧をかけるわけですので、ノイズ
は出るわ、構造物は壊れるわ……。
小玉
μPMTもそのように実用化されるのもそう遠くないと確信しています。
ノイズの元は発光でした。増倍率が増えると微小な発光がノ
できました。
小玉
久朗津
当社では光センサの単体を設計して終わりではなく、お客
様が使う用途・条件に合わせて高圧電源、アンプ、
回路などを組み合わせモジュールとして提供し
製造工程では当社のステルスダイシング技術を使ってチップ
(PMT)を使えばもっと成果が上がる研究もあると思いますので、
我々はこれを後押ししていきたいと思っています。若い研究者から
んが、μPMTはまだスタートラインに立ったばか
出すことができるため、生産効率や歩留まりに貢献します。
ベテランの研究者の方たちまでが「増倍率100万倍の高感度なμPMT」
りですから、これに満足することなく、さまざま
を使っていただくことで、光センサの新しい用途が開拓できると思
なお客様のニーズに対応できるよう性能向上に
いますし、社会にも貢献できるのではと思っています。
取り組んでいきたいと思います。
後藤 たとえば医療分野では、大病院や検査センターにしかない高価な
後藤
検査装置が、小型化されて診療所クラスの病院に導入できたり、もっと
の種類や大きさ、感度、チャンネル数などの
言えば各家庭に1台となることで、病院に通わなくても健康状態を常に
カスタマイズが可能です。来年1月か
チェックすることができるようになります。これまで検査といえば、かか
ら研究開発向けに評価キットを準
ってしまった病気の状態を調べるのが主でしたが、これからは健康の度合
備していく予定ですので、ご評
いを調べて病気を未然に防ぐ方向へと市場が変化していくと思われます。
価いただけるお客様にはまずは
製造プロセスのコンセプト
ガラス基板
ドライエッチング
加工
光電面
二次電子面
作製
陰極接合
小玉
評価の段階でも、端子が出ていない
ので信号を取るのに苦労しましたね。最
シリコン
ウェーハ
初はペースト状の導電性のものを塗っ
真空気密
パッケージ
たり、針状のプローブを組み込んだ
りして大がかりな治具で測定し
ていました。
HAMA HOT !
果的に検出効率も上がるというメリットもあるはずです。
きます。半導体センサありきで部品を選定していると。ホトマル
ットし、一般的なブレードダイシングよりも精度よくチップを切り
ことになりました。苦労したのは基板につなげ
る端子が出ていなかったところです。
今の若い研究者、開発者の方たちはホトマルを知らないと聞
を切り出します。ステルスダイシングはレーザでシリコン内部をカ
ています。μPMTについても同様にモジュール化
が必要となり、チームに参加させていただける
検出器が小型になると、蛍光を発しているサンプルのすぐそ
ばに配置できますから、余分な光学部品などを使わなくてすみ、結
下井
久朗津さんはモジュール設計からチームに参加したのですね。
03
〒438-0193 静岡県磐田市下神増314-5
TEL:0539-62-5245 FAX:0539-62-2205
ダイシング
電気配線
基盤
小玉 新たな市場展開には期待せずにはいられませ
μPMTはお客様のご要望に応じて、受光面
基本特性や使い勝手について確
また環境分野や保安分野など、今は研究機関・公共機関にしか置か
認いただければと思っています。
HAMA HOT !
04
1台のカメラに2つのCCD素子を搭載、
2波長画像・2焦点画像を同時に取得!
特長
用途
2つのCCD素子搭載により 2波長画像を同時取得
FRET
レシオイメージング
蛍光顕微鏡イメージング
赤∼近赤外蛍光を用いたアプリケーション
蛍光 in situ ハイブリダイゼーション
(FISH)
透過光と蛍光の同時観察
タイムラプス蛍光イメージング
TIRF顕微鏡、
リアルタイム共焦点顕微鏡イメージング
異なる焦点位置画像の同時取得
優れた画像(位置)精度と広視野を実現
オルカ - ディー ツー
CCD素子移動方式により 2焦点画像を同時取得
R
ER-150 CCD素子の採用により
DUAL CCD CAMERA
ORCA-D2カメラヘッ
2
ドの内部構造図
CCD素子
D 子2
検出2波長の選択が可能な光学ブロック
撮像例
光学ブロック
YellowCameleon 3.6 を用いたCa2+測定(DM 510 nmの光学ブロック使用例)
CFP、YFPを2つのCCDにそれぞれ分離して測定し、
レシオイメージングを行った例です。
を発現したIns-1細胞を脱分極刺激した際のCa2+応答をとらえることができました。
YC 3.6(CFP-YFP FRETに基づくCa2+センサ)
CCD素子
D 子1
CFPチャンネル(CCD1)
YFPチャンネル(CCD2)
輝度とレシオの経時変化
4000
2
3000
1.5
2000
1
Ratio
レンズマウント
Intensity
ORCA-D2は、1台のカメラに2つのCCD素
子を搭載したデュアルCCDカメラです。
2つのCCDでとらえることにより、従来の
FRETやレシオイメージングでは困難であっ
た、全視野での2波長画像の同時取得を実現
します(特許出願中)。検出する2波長は、着
脱可能な光学ブロックの交換により容易に選
択が可能。さらに、フォーカスとアライメン
トの自動調整機能を搭載しているため、画像
取得時の色ズレや位置ズレを抑え、高品位な
画像が得られます。
また、専用ソフトウェアとCCD素子の移動
機構により、フォーカス位置の変更も可能で
す(特許出願中)
。これにより、焦点位置の異
なる画像を同時に取得することができます。
ORCA-D2は、レシオイメージングをはじ
め、透過光による明視野とフィルタを通した
蛍光の同時観察や、厚さのある細胞の2焦点
での同時観察など、新たな観察手法としても
期待されています。
最大量子効率70 %以上、
可視∼近赤外領域まで高感度を実現
Intensity CFP
Intensity YFP
Ratio YFP/CFP
Time
試料ご提供
● 浜松医科大学 生理学第2講座
● 岡崎統合バイオサイエンスセンター 生命環境研究領域
最上 秀夫 先生
お問合せ先
【試料】Ins-1細胞(インスリン産生細胞)
【ORCA-D2光学ブロック】A11400-03(DM 510 nm、Em1 483 nm / 32 nm、Em2 542 nm / 27 nm)
【使用顕微鏡】オリンパス社 IX71
【対物レンズ】オリンパス社 LUCPlanFLN 60x NA0.70
システム事業部 システム営業推進部
〒431-3196 静岡県浜松市東区常光町812 TEL:053-431-0150(営業推進部直通)
FAX:053-433-8031 E-mail:[email protected]
05
HAMA HOT !
HAMA HOT !
06
原 理
金属と石英ガラスを拡散接合し
第1回
超高真空 拡散接合技術
今号からスタートする新企画HAMATECH
では、浜松ホトニクスに息づく広範な要素
技術をシリーズで紹介していきます。
第1回は光電子増倍管の製造技術で培った
超高真空用途の 拡散接合技術です。
10 パスカル の
※
-11
超高真空の
世界をのぞく
拡散接合とは、金属やガラスなどの接合材を加熱、加圧し、
原子の拡散を利用して接合する技術。ハンダや鑞付けなどもその類です。
ガラスと金属との接合にアルミ(Al)を用いる方法は半世紀以上前に提唱されていましたが、
石英ガラスという超低熱膨張材料と金属の接合は困難とされてきました。
当社の石英ガラスをはじめとする各種窓材との拡散接合は、
温度、圧力、形状などの条件、素材の純度や研磨状態などの
微妙なバランスの上で成立
当社の拡散接合技術は物理的な原理が実はよくわかっていません。温度、圧力などの条件、素
材の純度や研磨状態、応力緩和形状などの微妙なバランスの上で成立しているため、経験則がモ
ノをいう世界といえます。重要なのは、拡散接合後に、想定したレベルの真空環境下でリークや
ガス漏れのない状態を維持できること。そして問題が起こったときに的確に対処できること。当
社は光電子増倍管の製造技術として拡散接合を数多く経験し、お客様の要求スペックを実現する
最適な設計ノウハウを培ってきました。この豊富な経験とノウハウが、10 -11 Pa・m3/sという漏
洩量を実現し超高真空にも耐えうる製品の提供を可能にしています。
特 徴
超高真空合成石英ビューイングポート 断面図
コバール金属
石英ガラス
コバール金属
アルミ
(AI)
フランジ部
放出ガスや汚れ、劣化がほとんどない
非常にクリーンな拡散接合です
石英ガラスと金属を接着するだけなら、接着剤やインジウム(In)シールなどを用いること
はできます。ところが、ベーキング温度の制約やガス放出、コンタミ(混入物)の問題があり、
真空環境下で使用するのに適切とはいえません。拡散接合技術を使った当社の代表製品である
「超高真空合成石英ビューイングポート」の場合、接合剤は石英ガラスと高純度のアルミ(Al)
だけなので、不純物が入る余地がありません。しかもベーキング温度は350 ℃まで対応。他社
の同様の製品でベーキング温度が250 ℃程度であることと見比べると、かなり高レベルの技術
であることがわかります。
■ ■ ■
超高真空という特殊な環境に適しており、
世界に類を見ない技術として
応 用
“知る人ぞ知る”存在となっています。
真空内の温度を計測する放射温度計から
核融合のプラズマ計測窓まで
高真空状態を維持したい場面は学術研究や産業界に数多くあり、当社の超高真空拡散接合技
術はさまざまな用途で利用されています。産業関連では、高真空環境での薄膜形成の観察や、
放射温度計を使っての真空チャンバ内の温度計測などのニーズに対応。核融合のプラズマ状態
を計測したいというご要望に対してオリジナルの設計図面を起こし、提供したケースもありま
す。他方、当社の製品でも、石英の低放射性同位元素性(Radioisotope)が要求されるダーク
マター検出用光電子増倍管の光電面窓部や、冷却CCDカメラ「ORCA」の真空封じ切り窓にも
拡散接合技術が適用されています。
真空環境下での金属とガラスの接着に
超高真空合成石英ビューイングポート
※10-11 パスカル:
現在の技術で到達可能な最高真空度です。1 m3の中に2700個の気体分子がある程度の極高真空状態。
地上200 kmの宇宙空間で10-7 Pa、太陽系外では10-15 Pa(1 m3の中に1∼2個)
07
HAMA HOT !
課題をお持ちのお客様は右記までお問合せください。
ダークマター検出用光電子増倍管
電子管事業部 木戸工房
TEL:0539-62-3151 E-mail:[email protected]
HAMA HOT !
08
不思議なナノホトニクスの 世界
解説:浜松ホトニクス 中央研究所 材料研究室
金属微粒子のプラズモン共鳴
廣畑 徹
−−−
なぜ金が赤色に見えるのか
入射光
当然のことながら、金の塊に光を当てても、金は金色です。ところが、こ
第3回 プラズモニクス[ 前編 ]
教会などで見かけるステンドグラス。これには、赤・青・緑といったカラフル
な色が付けられていますが実はこのガラス工芸品、無意識のうちに職人たちが、
れを非常に小さなナノレベルの粒子にして、このナノ粒子に光を当てると様
光の電界
+++
子が変わってきます。
偏った
自由電子
電子が
揺さぶ
られる
ステンドグラスに含まれる金の粒子に光を当てたときのことを考えてみ
ましょう。
金属微粒子に光が当たると、内部の電子が揺さぶられ電
場に変化が起き、
プラズモンと呼ばれる状態になります。
金属の表面には、偏った自由電子の影響による強い電
場が発生します。
“プラズモン”と呼ばれるナノの世界特有の光の性質を埋め込んで作り上げたも
光は電場を伴っている ことから、金属の中にある自由電子の動きに影響を
のでした。現在では、このプラズモンの性質が解明され、化学センサやバイオ
与えることができます。金の粒子に光を当てることによって、金の内部の電
検出器などに利用されています。さらにはがんの治療やコンピュータチップ内
子が揺さぶられ電子集団の波ができます。いわゆる、電子が行ったり来たり
の光伝送にも応用されようとしています。
の振動状態=電荷を持った粒子が飛びまわっている状態=プラズマ状態になっています。この状態をプラズモンと
今回は、このプラズモンの性質を利用したプラズモニクスの世界を紹介します。
※1
呼びます。金属粒子の場合では、この状態は物質の表面でのみ見られるため、表面プラズモンとも呼ばれます。
さらにこのプラズモンは、ある条件のもとに光の振動と共鳴することがあります。光の振動がプラズモンと共鳴
したとき、光のエネルギーは金属の中に吸収されます。これは、光のエネルギーがプラズモンのエネルギーに移る
と言い換えられます。
ステンドグラスの赤の正体
カラフルなステンドグラスは、ガラスに金属の粒子を混ぜ、混ぜ
る金属の種類を変えることで、赤や青や緑といったさまざまな色を
赤色のステンドグラスの場合では、入射した光がすべて共鳴し吸収されるわけではなく、光のRGB成分のうちの
G=緑の成分だけが、金の内部の電子と共鳴し吸収されます。このときB=青い光は散乱してしまい、残ったR=
金の塊に光が当たった場合
金のナノ粒子に光が当たった場合
表現しています。その中でもひときわ目を惹くのが赤色のステンド
赤色成分だけが透過します。これが、金
の混ざったステンドグラスが赤く見える
理由です。
グラス。混ぜられている金属は「金」です。
青は
吸収・散乱
Au
緑は表面
プラズモン
共鳴で吸収
Au
青は
吸収・散乱
このように、光と物質内のプラズモンの
共鳴は、どんな光でも起こるというわけで
R G
はありません。 物質に対し、ある決まっ
B
た波長の光でしか共鳴しないのです。これ
=赤+緑 =黄
黄色に金属光沢が加わって黄金色に見えます。
赤色のみ反射もしくは透過します。
がプラズモン共鳴と呼ばれる現象です。
(※1)
光はマクスウェルの方程式に従います。そのことから、光は時間的に振動する電場と磁場が互いに誘起し合う波からなっています。
09
HAMA HOT !
HAMA HOT !
10
不思議なナノホトニクスの 世界
2つの微粒子間でのプラズモン共鳴
電子管
事業部
5Wキセノンフラッシュランプモジュール
L11316/L11317シリーズ
ピーク出力を2倍にした小型で高安定な光源
小型の5Wキセノンフラッシュランプと高安定な電源、ランプ点灯用トリ
ガソケットを一体化したモジュールで、長年培ったランプ開発のノウハウに
プラズモン共鳴の応用
基づく最適な電源設計により、5W入力で業界一高出力の現行製品をさらに
プラズモンの状態も、光と金属粒子内の電子集団が共鳴するプラズモン共鳴も、す
べて金属の表面で起こります。このとき、金属の表面には、偏った自由電子の影響に
入射光
高出力化し、1フラッシュにおけるピーク出力を2倍に高めました。
+++
高安定で長寿命なことや、モジュールのため電源とトリガソケットの設計
−−−
や配線の煩わしさがなく装置への組み込みや交換が容易です。用途に応じて、
よる強い電場が発生しています。
高入力エネルギータイプと高繰り返しタイプを用意しています。
さらに、金属粒子が2つ重なった状態でプラズモン共鳴が起こった場合は、金属粒
子と金属粒子の間に非常に強い電場が発生します。今日では、この強い電場の状態を
この高出力化によって、半導体検査に用いられているハロゲンランプの置
距離が近いため、金属粒子と金属粒子の間
に非常に強い電場が発生します。
き換えが可能になり、小型で発熱が少なく低消費電力、長寿命によるメリッ
トが得られます。また、S/N比(信号対雑音比)が良くなるため高精度なハ
利用したセンサが多く提案され、実用化されています。そのひとつとして、ラマン散
ンディタイプの大気汚染や水質・汚水分析装置用の光源として最適です。FA
乱の検出への応用例を紹介します。
ラインでは高速化が実現し、生産性の向上に貢献します。
ラマン散乱とは、ある物質に光を照射したとき、照射した光の波長と少し異な
表面増強ラマン散乱概念図
表面増強ラマン
散乱光
入射光
る波長の光すなわち振動数の異なる光(ラマン光)が見られる現象です。元の光
との振動数のずれは、光が照射されている物質が持っている固有の振動数に由来
しています。このラマン光を検出し分光することで物質を特定できます。
お問合せ先
Au, Ag等の粒子
※お問合せ先の詳細につきましては、冊子裏面をご覧ください。
通常、このラマン光は非常に弱いためそのままの強度での検出は難しいのですが、
基盤
金などの金属の上でレーザを照射し、プラズモン共鳴を意図的に発生させ、この強
ナノ∼マイクロメーターオーダーの微細構造を持つ金・銀・銅などの
金属表面に吸着した分子のラマン散乱が増強されます。
金ナノ粒子に吸着した有機分子の
表面増強ラマンスペクトル/イメージング
Intensity (a.u.)
い電場※2を利用することによって、検出しやすいレベルまでラマン光を強めること
ができます。これにより、現在では単一分子の検出さえ可能になっています。
CMOSリニアイメージセンサ
固体
事業部
高速・小型・高感度の3タイプを新発売
S11105は、高速ビデオデータレート50 MHzを実現したCMOSイメー
ジセンサです。DIPタイプと表面実装タイプの2タイプを用意しています。
(※2)
ラマン光の強度は光電場の4乗に比例します。表面プラズモン共鳴によって電界強度が10倍上がると、ラマ
ン光は10 4 倍つまり10000倍になります。表面プラズモン共鳴によって生じる強い電場により、ラマン光を
極めて強めることができます。
ラマンイメージ
ラマンスペクトル
営業本部 国内統括部
S11106/S11107は小型・低価格のCMOSイメージセンサです。複数
配列することにより200dpi/400dpiのラインセンサを構築することがで
きます。
金ナノ粒子
p-MBA溶液添加後 ③
S11108は、アクティブピクセルタイプの高感度CMOSイメージセンサです。
金ナノ粒子
p-MBA溶液添加前 ②
POINT
1800 1600 1400 1200 1000 800
Si基板
p-MBA溶液添加後 ①
Stokes shift (cm -1)
①物質に直接レーザを当てた場合の検出結果
→ラマン光の出力強度が弱く物質が特定できません
②金粒子は敷いてあるが、見ようとする物質がない場合
③金粒子を敷き、物質を入れた場合
→電場によって増強されたラマン光が出力されます
タイプ
□プラズモンは金属ナノ粒子に光が当たると金属の表面に発生する
DIPタイプ
□プラズモン共鳴はある決まった波長の光で発生し、光のエネルギーを吸収する
型番
ッチ 画素高さ データレート
画素数 画素ピ
(Max.)
(μm)
(μm)
S11105
512
高速タイプ
12.5
250
50 MHz
位置検出
各種イメージ読み取り
10 MHz
位置検出
物体測定
ロータリーエンコーダ
各種イメージ読み取り
10 MHz
位置検出
各種イメージ読み取り
表面実装タイプ S11105-01
□プラズモン共鳴は2つの微粒子間で局所的に著しく増強された電場も発生させる
□その増強された電場により、
微弱なラマン光を検出可能なレベルにまで強めることができる
S11106
63.5
63.5
128 (400 dpi)
(400 dpi)
S11107
64
小型・表面実装タイプ
高感度タイプ[50 V/
(lx・s)
] S11108
2048
127
127
(200 dpi)
(200 dpi)
14
14
アプリケーション
次回は、
『プラズモニクス』の後編です。
プラズモンのさらなる応用と、プラズモニクスに対する浜松ホトニクスの取り組みについて紹介します。
お問合せ先
営業本部 国内統括部
※お問合せ先の詳細につきましては、冊子裏面をご覧ください。
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HAMA HOT !
HAMA HOT !
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ア ン ケ ート に ご 協 力 く だ さ い
システム
事業部
Optical MicroGauge C11011- 01
マイクロゲージ
10μm∼900μmの厚みを非接触・リアルタイム測定
フィルム・ガラス・ウェーハなど多様な試料に対応
下記アンケートにお答えいただいた方、先着
100名様に、社名入りボールペンをプレゼント
Optical MicroGauge C11011-01は、分光干渉法を利用した膜厚測定装置
です。光学式の非接触計測ですので、大切な試料を傷つけることなく、再現
性の良い高精度な計測を行うことができます。
高速計測が可能なため、生産現場でのインライン計測にも対応します。ま
た、オプションのマッピングシステムにより試料の厚み分布を計測すること
も可能です。
製品の製造工程モニタから品質管理まで、幅広い用途にご利用いただけます。
特長
■ 赤外光計測により
非透明サンプルに対応
■ 厚み分布測定が可能
(オプション)
■ 製造工程の
インラインモニタが可能
■ パターン付/保護フィルム付
ウェーハの計測可能
システム構成例
計測用光ファイバ
プローブ
ヘッド
A8653-02
標準構成
オプション
制御ソフトウエア
SCSI I/F
対象物
エッチング装置 I/F(RS232-C)
グラインディング装置
C11011-01
データ解析装置
※20 nm ∼ 2.55 mmの厚さに対応したOptical Gaugeシリーズを用意しております。
お問合せ先
μPMTのインタビューに私も同席しました。話は途切
れることなく、終始和やかなムードでした。前々から
面識のある小玉君に、実質的な開発の中心人物で一緒
に仕事をしてきた下井さんについて聞いてみました。
「応用力、疑問点を見つけ出したりする着眼力に優れて
いる」とのこと。これは、新製品・新技術の開発に不
可欠な要素ですね。
さて、浜松で知らない人はいない「秋葉神社」ですが、
私はいまだに行ってないことに気付きました! 同じ
浜松市内といっても、自宅から車で1時間半もかかっ
てしまうんですよね……。
秋葉神社のある春野町には、ほかにも見所があります。
日本一大きな天狗面、気田川(けたがわ)の清流でア
ユ釣りや川遊び、白井鐵造記念館。故白井氏は春野町
犬居の出身で、「すみれの花咲く頃」の作詞など、「宝
塚歌劇団育ての親」で有名です(といっても、私も今
回初めて知りました)。
(編集部/玉置)
超短パルスレーザ MOIL-ps L11590
事業化推進
プロジェクト
表紙写真について
小型、高安定、高効率な固体レーザ
L11590は、当社独自の光MEMS技術を適用したLD直接励起型Yb:YAGピコ
秒パルスレーザです。超短パルスレーザでありながら、コンパクトで高い安
定性に加え、全プログラム制御により、簡便な操作を実現しました。
マイクロチップレーザシリーズ L11037 / L11038
特長
用途
■ 簡便なオペレーション
■ 繰返し周波数可変
1 kHz∼50 kHz
■ パルス幅可変
1.5 ps∼10 ps
■ 各種精密・微細加工
- 穴あけ加工
- 周期構造の形成
- 薄膜除去
■ 透明材料への内部加工
メンテナンスフリー、コンパクトな固体レーザ
L11037、L11038は当社独自の光MEMS技術によりレーザ共振器を一体的
に形成することで、メンテナンスフリー・コンパクトを実現した、受動Qス
イッチ型のナノ秒パルスレーザです。
特長
L11037
いたします。
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本アンケートによって集めた個人情報は、弊社からのプレゼント送付や、より良い誌面づくりに反映するた
めに利用いたします。それ以外にも、弊社の販売促進に関わる情報をお客様にお届けする場合、もしくは何
らかの理由でお客様に連絡をとる必要が生じた場合に利用いたします。
下記のアンケートにお答えください。
「 HAMA HOT !」について伺います。
Q. 過去にHAMA HOT!をご覧になったことはありますか?
□ない □いくつか読んだ □すべて読んだ
Q. 今号の掲載内容について
□面白かった
□つまらなかった
□どちらとも言えない
Q. 今号の「HAMA HOT !」で興味を持たれた項目はどれですか?(複数回答可)
営業本部 国内統括部
※お問合せ先の詳細につきましては、冊子裏面をご覧ください。
お問合せ先
編集後記
L11038
L11037
■ 高繰返し出力
周波数∼10 kHz
用途
L11038
■ ハイピークパワー
∼MWレベル
L11037
■ バイオ応用
■ 理化学実験
■ 顕微鏡搭載可能
営業本部 企画開発部 営業開発グループ
〒430-8587 静岡県浜松市中区砂山町325-6 日本生命浜松駅前ビル4階 TEL:053-459-1113 FAX:053-459-1114
E-mail:[email protected]
L11038
■ 精密加工用光源
■ LIBS用光源
■ OPO励起光源
表紙の写真は秋葉山
(あきはさん)とも
呼ばれる秋葉神社の
本宮社殿です。今か
らおよそ1300年前
の和銅2年(西暦
709年)に最初の
社殿が建立されたそうです。全国に存在する秋葉神社
の総本山として火幸を恵み、悪火を鎮め、火を司り給
う火防(ひぶせ)の神様として信仰を集めています。
大火に見舞われることが多かった江戸時代にとても人
気があったそうで、お伊勢参りにも匹敵するほどであ
ったともいわれています。
秋葉山に通じる道は秋葉街道や秋葉路(あきはみち)
と呼ばれ、各地から秋葉神社をめざす参拝者のために
設置された常夜灯が現在も多く残っています。石でで
きた灯篭の形状が一般的ですが、遠州地方には「龍灯
(龍燈)」という社かお堂のような形状の独特の常夜灯
も多くあります。浜松市内から秋葉神社は北に約
40kmと距離がありますが、浜松や遠州地方において
秋葉神社が身近なものである証といえると思います。
※表紙の製品については、12ページのNew Products
をご覧ください。
□表紙 □μPMT
□ORCA-D2
□HAMATECH
□不思議なナノホトニクスの世界
□New Products(新製品ニュース) □その他[
]
Q.「HAMA HOT !」で今後とりあげて欲しい情報やご意見などありましたら、
ご記入ください。
浜松ホトニクスについて伺います。
Q. 浜松ホトニクスの製品をお使いですか?
□現在使用している
□過去に使用したことがある
□使用したことがない
Q. 浜松ホトニクス自体のイメージをお聞かせください。
技術力がある
顧客へのサービスが厚い
信頼できる
親しみが持てる
□はい □いいえ □どちらとも言えない
□はい □いいえ □どちらとも言えない
□はい □いいえ □どちらとも言えない
□はい □いいえ □どちらとも言えない
Q. 浜松ホトニクスのイメージを自由にご記入ください。
Q. 今後も引き続き「HAMA HOT !」の送付をご希望ですか?
□はい □いいえ
御名前(フリガナ)
勤務先
(または学校)
名
役 職
御住所
〒
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HAMA HOT !
ありがとうございました。