軽負荷時のステージ・シェディング・モード、アクティブ電圧ポジショニング、 低 RSENSE およびリモートVOUT 検出を備えた 2 フェーズ同期整流式 降圧コントローラ - デザインノート486 Charlie Zhao、Jian Li はじめに 今日のコンピュータ、データコムおよびテレコム・システム は、効率が高く、負荷変動に対して高速に応答し、負荷の ところで電圧を精確にレギュレーションする電源を必要とし ています。たとえば、インダクタの DCR を使って負荷電流 を測定することができるので、専用のセンス抵抗は不要で す。 インダクタの DCR による検出は(特に重負荷で)効 率を上げ、部品コストと必要な基板スペースを削減します。 シングル出力 2 フェーズ同期整流式降圧コントローラである LTC®3856 は、温度による DCR の変化を補償することに より、インダクタの DCR による検出の精度を改善します。 圧ポジショニングを備えています。LTC3856 は、広い入力 電圧範囲(4.5V ~ 38V)を 0.6V ~ 5V の出力に変換す ることができます。多くの機能を備えているにもかかわらず、 このデバイスは小型で、32 ピン 5mm × 5mm QFN および 38 ピン TSSOP パッケージで供給されます。 高効率、2 フェーズ、4.5V ~ 14V 入力、 1.5V/50A 出力のコンバータ 4.5V ~ 14V 入 力、1.5V/50A 出 力 の コ ン バ ー タ に LTC3856 を使った標準的アプリケーションを図 1 に示しま す。LTC3856 の 2 つのチャネルは逆相で動作するので、 入力の RMS 電流リップルが減少し、したがって必要な入力 DCR の温度補償は、LTC3856 が提供する多くの性能強 容量を減らせます。最多 6 個の LTC3856 を並列接続して、 化機能の 1 つにすぎません。さらに、内蔵ゲート・ドライバ、 12 フェーズ動作を実現することができます。 リモート出力電圧検出、軽負荷での効率を改善する Stage L、LT、LTC、LTM、Linear Technology、Linear の ロ ゴ お よ び Burst Shedding™ モードおよび高速過渡応答のための適応型電 Mode はリニアテクノロジー社の登録商標です。Stage Shedding はリニアテクノ ロジーの商標です。他の全ての商標はそれぞれの所有者に所有権があります。 VIN 1nF 0.1µF 2.2Ω S 5.6k 100pF 100Ω Q1 RJK0305DPB S S CLKOUT 100k, 1% 0.1µF VIN PLLIN TG1 RUN SW1 AVP 30.1k LTC3856 BOOST1 BG1 INTVCC ITEMP PHASMD TG2 DIFFOUT BOOST2 D1, CMDSH-3 INTVCC 4.7µF D2, CMDSH-3 PGOOD SW2 EXTVCC BG2 Q7 RJK0305DPB Q4 RJK0330DPB L2 0.22µH 0.001Ω Q8 RJK0330DPB SENSE2+ MODE S 22µF 22µF INTVCC 0.1µF ISET ILIM 100µF 6.3V + ×4 VIN Q3 RJK0305DPB 1nF PGOOD PGND SGND SENSE2– 100Ω 100Ω S 10Ω 10Ω 図 1.LTC3856 を使用した、1.5V/50A、2 フェーズ同期整流式降圧コンバータ 01/11/486 180µF 16V ×2 VIN 4.5V TO 14V GND VOUT 1.5V/ 50A 0.001Ω INTVCC DIFFP 100k L1 0.22µH Q6 RJK0330DPB Q2 RJK0330DPB DIFFN INTVCC 22µF 0.1µF TK/SS VFB S 22µF Q5 RJK0305DPB 1nF SENSE1+ FREQ ITH 20k SENSE1– + VIN 100Ω 330µF 2.5V ×4 4.7µF 6.3V LTC3856 はフェーズロック・ループ(PLL)を備えており、 250kHz ~ 770kHz の入力周波数に同期することができま す。図 2 に示されているように、そのピーク電流モード制御 アーキテクチャにより、LTC3856 はサイクルごとの高速な 動的電流分担および精確な DC 電流分担を行います。 ステージ・シェディング・モード 電流モード制御により、LTC3856 は 2 フェーズ動作から 1 フェーズ動作へ、またその逆方向へスムーズに移行すること ができます。 アクティブ電圧ポジショニング ユーザーが 選 択 可 能 なアクティブ 電 圧 ポジショニング (AVP)は、LTC3856 が内蔵するもう 1 つのユニークな 機能です。AVP は、電流負荷に応じて出力電圧レギュレー ションを微調整することにより、全体の過渡応答を改善し、 必要な出力容量を減らします。適切な設計をすれば、AVP は負荷変動によって生じるピーク・トゥ・ピーク電圧スパイク を 50% 減らすことができます。 LTC3856 は、軽負荷では 3 つの動作モードの 1 つで動作 するようにプログラムすることができます。 つまり、Burst Mode® 動作、強制連続モードまたはステージ・シェディ ング・モードです。 ステージ・シェディング・モードでは、 LTC3856 は 1 つのチャネルをシャットダウンして、軽負荷 で支配的な損失であるスイッチングに関連した損失を減らし ます。ステージ・シェディング・モードは単に、MODE ピン インダクタ DCR 検出の温度補償 ここでは使用されませんが、インダクタ DCR 検出は、損失 を INTVCC に接続することによって選択されます。 のない負荷電流の検出方法を提供します。問題は、インダ ステージ・シェディング・モードによって達成される効率の改 クタの DCR が一般に正の温度係数を持っているため、コン 善を図 3 に示します。 強力なゲート・ドライバと短いデッド バータの実効的な電流制限がインダクタの温度に従って変 タイムにより、同等のシングル出力 2 フェーズ・コントロー 化することです。LTC3856 は NTC サーミスタによってイ ラである LTC3729 に比べて、LTC3856 は全負荷範囲で ンダクタの温度を検出することができるので、温度に基づい 4% ~ 5% 高い効率を達成することができます。ステージ・ て電流制限を調整することができます。その結果、広い温 シェディング・モードでは、軽負荷でさらに大きな効率の改 度範囲で電流制限が一定になります。これにより、大電流 善が達成されます。5% 負荷では、 効率は 13% 改善されます。 アプリケーションでのインダクタ DCR 検出の信頼性が改善 されます。 VOUT 50mV/DIV 出力電圧のリモートセンス IL1 10A/DIV IL2 10A/DIV ILOAD 20A/DIV dn486 F02 100µs/DIV 図 2.負荷過渡と電流分担:VIN = 12V、25A から 50A の負荷ステップ 95 1-PHASE まとめ 2-PHASE 90 EFFICIENCY (%) 1.7% AT 20% LOAD 85 7% AT 10% LOAD 80 LTC3856, CCM LTC3856, PHASE SHEDDING LTC3729, CCM 75 13% AT 5% LOAD 70 0 10 20 30 LOAD CURRENT (A) 大出力電流で低電圧アプリケーションでは、基板や配線の 接続抵抗によってロード・レギュレーションに問題が生じる ことがあります。この問題を解決するために、真のリモート センスのための低オフセット、ユニティゲイン、広帯域の差 動アンプが LTC3856 には内蔵されています。特に、負荷 とコンバータの出力の間に長いトレースが配線されていると き、同相ノイズとグランド・ループの乱れを除去することがで き、ロード・レギュレーションが大幅に改善されます。 40 50 dn486 F03 LTC3856 は、機能豊富なシングル出力 2 フェーズ同期整 流式降圧 DC/DC コントローラです。温度補償された DCR 検出およびステージ・シェディング・モードまたはバースト・ モード動作により、重負荷と軽負荷の両方の条件で高効率 を達成します。AVP は、出力容量を減らしても過渡応答を 改善します。他の特長として、リモート検出、全温度範囲に わたる精密な± 0.75%リファレンス電圧精度、電圧トラッキ ング、強力な内蔵ドライバ、マルチチップ動作および外部同 期能力を備えています。LTC3856 は大電流アプリケーショ ンに最適であり、テレコムやデータコム、産業用やコンピュー タ・アプリケーションに向けて、今日の電源の高い基準を満 たしています。 図 3.効率の比較:VIN = 12V、VO = 1.5V、 FSW = 400kHz、L = 220nH、RSENSE = 1mΩ、 QT = RJK0305DPB、QB = 2xRJK0330DPB データシートのダウンロード:http://www.linear-tech.co.jp リニアテクノロジー株式会社 102-0094 東京都千代田区紀尾井町 3-6 紀尾井町パークビル 8F TEL(03)5226-7291 FAX(03)5226-0268 http://www.linear-tech.co.jp dn486f LT/AP 0111 • PRINTED IN JAPAN © LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2010