スーパーキャパシタによる電源バックアップ・システム

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スーパーキャパシタによる電源バックアップ・システムが携帯電子機器の
電源喪失時に揮発性データを保護
デザインノート498
Jim Drew
はじめに
携帯電子機器は、私たちの日常生活において大きな役割を
果たしています。 信頼性が最も重視されることから、携帯
電子機器は、通常の条件下で高い信頼性を発揮できるよう、
軽量電源を使用して慎重に設計されます。しかし、いかに
慎重な設計を行ったとしても、人間の誤操作を防ぐことは
できません。たとえば、工場の作業者がバーコード・スキャ
ナを落として、バッテリが外れてしまったらどうなるでしょう。
このような出来事を電気的に予測することはできず、何らか
の安全策を講じなければ、揮発性メモリに保存された重要
なデータは失われてしまいます。つまり、バッテリを元通り取
り付けるまで、あるいはデータを永久メモリに保存するまで
の間、スタンバイ電力を供給できるだけの十分なエネルギー
を保存しておく短期的な電源保持システムが必要です。
スーパーキャパシタ・チャージャで、バックアップ・システム
の設計を簡素化します。具体的には、出力電圧をプログラ
ム可能で自動セル電圧バランシング機能を備えたチャージポ
ンプ・スーパーキャパシタ・チャージャ、低損失レギュレータ、
および通常モードとバックアップ・モードの切り替えを行うパ
ワーフェイル・コンパレータを内蔵しています。 低入力ノイ
ズ、低静止電流、および実装面積が小さい LTC3226 は、
バッテリ駆動の小型携帯電子機器のアプリケーションに最適
です。LTC3226 は、
3mm×3mm の 16 ピン QFN パッケー
ジで供給されます。
バックアップ電源アプリケーション
スーパーキャパシタ・スタックを組み込んだ電源保持システム
を図 1 に示します。これは、バッテリ電源が失われた場合に
165mW のスタンバイ電力を約 45 秒間供給できる容量を
スーパーキャパシタは小型・堅牢で、しかも信頼性が高く、 持っています。バックアップ・モードでは、
LDO がスーパーキャ
短時間の電源喪失に対するバックアップ・システムの電源要 パシタ・スタックの出力を変換して、定電圧を供給します。
求を満たすことができます。バッテリと同様に、スーパーキャ
L、LT、LTC、LTM、Linear Technology および Linear のロゴはリニアテク
パシタにも慎重な充電と出力電力の安定化が必要です。 ノ
ロジー社の登録商標です。 PowerPath はリニアテクノロジー社の商標です。他
®
LTC 3226 は PowerPath™コントローラ付き 2 セル直列 の全ての商標はそれぞれの所有者に所有権があります。
Q1
FDC604P
13
VIN
VIN
LTC3226EUD
GATE
VOUT
R1
191k
CPO
3
15
C1
4.7µF
6.3V
X5R
0603
R2
121k
C2
2.2µF
10V
X5R
0603
VMID
+
CPO_FB
C
LDO_FB
12
8
9
R3
100k
PFI
RST_FB
–
C
RST
EN_CHG
PFO
PROG
GND
CAPGOOD
5
VOUT
1
16
14
10
4
6
7
2
11
C3
0.1µF
16V
X7R
C4
0.1µF
16V
X7R
+
+
*C5
3F
2.7V
R4
3.83M
R10
1.07M
R6
255k
*C6
3F
2.7V
R9
475k
R5
1.21M
R7
80.6k
C7
47µF
6.3V
X5R
1206
20%
4
LT6703HV-3
1
2
dn498 F02
D2
D1N4148
*NESS CAP ESHSR-0003C0-002R7
図 1.スーパーキャパシタを使用した標準的な電源バックアップ・システム
01:12:498
+
R11
154k
17
R8
348k
3
R12
475k
VSB
LTC3226 を使用すれば、簡単に電源バックアップ・システ
ムを設計できます。たとえば、動作電流 150mA、スタンバ
イ電流(ISB)50mA のデバイスを 1 個のリチウムイオン・バッ
テリで使用する場合を考えます。常に充電済みのバッテリが
接続されているように、パワーフェイル・コンパレータ(PFI)
のハイ・トリガ・ポイントは 3.6V に設定します。デバイスは
バッテリ電圧が 3.15V に達するとスタンバイ・モードになり、
3.10V(VBAT(MIN)) でバックアップ・モードになって、約
45 秒の間 (tHU)、保持電力を使用します。
R4 =
VCPO – VCPO(FB)
VCPO(FB)
•R5 = 3.78MΩ
R4 は 3.83M にします。
バックアップ・モードではスーパーキャパシタ・スタックの電
圧が VOUT に近づき始めるので、tHU 終了時におけるスー
パーキャパシタの最小電圧の計算においては、2 個のスー
パーキャパシタの ESR と LDO の出力抵抗を考慮しなけ
ればなりません。それぞれのスーパーキャパシタの ESR を
スタンバイ・モードのトリガ・レベルは外付けのコンパレータ 100mΩ、LDO 出力抵抗を 200mΩとすると、50mA のス
回路によって制御されますが、バックアップ・モードのトリガ・ タンバイ電流によって、V
OUT(MIN) にはさらに 20mV が追
レベルは PFI コンパレータによって制御されます。バックアッ 加されます。V
スーパーキャ
OUT(MIN) を 3.1V に設定すると、
プ・モードでは、スーパーキャパシタの放電が速くなり過ぎる パシタ・スタックの放電電圧 (∆V
SCAP) は 1.88V になりま
のを防ぐために、デバイスを完全な動作モードにすることは す。 以上で、それぞれのスーパーキャパシタの容量を決定
できません。
することができます。
設計は、PFI のトリガ・レベルを設定することから開始します。
R2 は 121k に設定し、R1 は、PFI ピンにおける PFIトリガ・ レベル (VPFI) が 1.2V になるように計算します。
R1=
VBAT(MIN) – VPFI
VPFI
•R2 = 191.6kΩ
R1 は 191k に設定します。
CSCAP = 2 •
ISB • tHU
= 2.39F
∆VSCAP
それぞれのスーパーキャパシタには、Nesscap の 3F/2.7V
のキャパシタ(ESHSR-0003C0-002R7)を使用します。
負荷 50mA のシステムの実際のバックアップ時間を図 2 に
示します。実際の回路には少し大きめの 3F のキャパシタが
使われているので、バックアップ時間は 55.4 秒となります。
VIN ピンのヒステリシスは、3.6V のトリガ・レベルを満たせ
るように拡張する必要があります。これは、PFI ピンと PFO まとめ
ピンの間に抵抗とダイオードを直列に追加することによって
高性能携帯機器では、バッテリが突然外れてしまった場合に
実 現 できます。VIN(HYS) は 0.5V、VPFI(HYS) は 20mV、
揮発性データを安全に保存できるように、十分な時間、デ
および Vf は 0.4V です。
バイスに電力を供給できる電源バックアップ・システムが必
要です。このようなシステムでは、スーパーキャパシタが
VPFI + VPFI(HYS) – Vf
R8 =
•R1= 349.3kΩ
コンパク
トで信頼性が高いエネルギー源となりますが、充
VPFI(HYS)
VIN(HYS) –
•(R1+R2)
電と出力電圧レギュレーションのために特別な制御システ
R2
ムが必要です。2 セル・スーパーキャパシタ・チャージャ、
PowerPath コントローラ、LDO レギュレータ、およびパワー
R8 は 348k に設定します。
フェイル・コンパレータを 3mm×3mm の 16 ピン QFN パッ
バックアップ・モードの LDO 出力電圧は、R7 を 80.6k に
ケージに集積した LTC3226 を使用すれば、完全なバック
設定して R6 を計算することにより、3.3V に設定します。
アップ・ソリューションを簡単に作り上げることができます。
VLDO(FB) は 0.8V です。
R6 =
VOUT – VLDO(FB)
VLDO(FB)
•R7 = 251.9kΩ
R6 は255kに設定します。
直列に接続されたスーパーキャパシタの満充電電圧は 5V
に設定します。これは、CPO ピンと CPO_FB ピンの間に
ある抵抗分割器ネットワークによって行います。R5 は 1.21M
に設定し、R4 は計算により求めます。VCPO(FB) は 1.21V
です。
VIN = 3.6V
IOUT = 50mA
LDO = 3.3V
VSCAP
1V/DIV
VIN
10s/DIV
dn498 F02
図 2.50mA 負荷でのバックアップ時間
データシートのダウンロード:http://www.linear-tech.co.jp
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