印刷用ファイル(PDF/A4/3頁/217KB)

NTCG
RoHS指令対応:EU Directive 2002/95/ECにもとづき、免除さ
れた用途を除いて、
鉛、
カドミウム、水銀、
六価クロム、および特定臭素
系難燃剤のPBB、PBDEを使用していないことを表します。
Series
この稿では、各種モバイル機器用高性能二次電池パックに組み
囲は一般的に0∼60℃といわれています。そこで、充電開始
込まれる温度パラメータ管理用チップNTCサーミスタについ
時や充電途中に充電器やパックの温度がこの温度範囲から外
て説明いたします。
れた場合、警告信号を出したり、充電を強制的に止める対策が
不可欠となります。とくに、
セル内部の電解質が凍結した状態
電池パック用NTCサーミスタの現況
での充電は非常に危険なため、低温時の温度検知精度と動作
充電用の二次電池としては、ニカド電池、ニッケル水素電池、
リ
の確実性は極めて重要です。どのタイプも、充電時に温度が上
チウムイオン電池、ポリマー電池などが用いられていますが、
がる性質を利用してこのような充電電圧制御を行っています
とりわけリチウムイオン電池パックの市場は、携帯電話やデジ
が、充電制御のほかにも、機器に表示される電池残量表示の計
タルカメラをはじめとする携帯機器市場の拡大にともない大
算補正などにも、NTCサーミスタによる温度情報が用いられて
きな伸びを示しています。
います。
電池パック形態では、たとえば小型化を推進するセルラ用の場
電池パック用NTCサーミスタの条件
合、角型セル1個に温度管理用制御回路を組み合わせたタイプ
が主流となっていますが、
これらには主にチップタイプのNTC
危険な状況を未然に防ぐ重要な役割はもちろん、過充電によ
サーミスタが用いられています。一方、ノートパソコンに使用
る電池寿命の短縮や残量表示の狂いなどを確実に防止するた
される電池パックには、
インテリジェントタイプと呼ばれる通信
めに、電池パックに使用されるNTCサーミスタには、一般の温
制御回路を内蔵したものもあり、セルの数も4∼12個と多く、
度検知用途より高い温度検知精度が要求されます。
パック形状、サイズも多様です。一般的には丸型のセルが使用
ご承知のとおり、NTCサーミスタの基本特性は、基準温度にお
されることが多く、
セルとセルの間にできる空間に、
リードタイ
ける抵抗値と、異なる基準温度間(2点)の温度係数を表すB定
プまたはチップタイプのNTCサーミスタが搭載されています。
数で表されますが、当然ながらこの2つ値には、許容差があり
ます。そして、次のグラフに示すとおり、NTCサーミスタの抵
不可欠な充電電圧制御機能
抗値と環境温度の対応精度(すなわち実際に検知する全温度
範囲における検知精度)は、
この2つの基本特性値の許容差に
危険性がなく寿命の著しい劣化も回避できる充電時の温度範
1
けるそれぞれの抵抗値偏差を比較しました(基準温度25℃に
大きく支配されます。
つまり、基準温度における抵抗値とB定数
の許容差が小さいほど実用上の検知精度が大幅に向上します。
おける抵抗値は3種とも同じです)。主成分と添加物が同じで
具体的な数値目標としては、それぞれの許容差を±1%まで抑
も、その混合比率の違いで温度特性に大きな変化が現れてい
制することが求められます。
ます。
抵抗値偏差(%)
30
15
抵抗値偏差(%)
21wt%
40
20
10
5
0
20
10
0
-10
-20
-5
-30
-60 -40 -20
-10
-15
-20
28wt%
35wt%
添加物A材
許容差A:抵抗値1%,B定数1% [at 25℃](目標特性)
許容差B:抵抗値3%,B定数2% [at 25℃]
許容差C:抵抗値5%,B定数3% [at 25℃]
0
20 40
温度(℃)
60
80 100 120
25
-40
-20
0
20
40
60
温度(℃)
80
100
120
このような検討を繰り返し、最終的な特性合わせを行った結果、
業界標準とされている電池パック用高精度サーミスタと抵抗-
さらに、電池パックに使用されるNTCサーミスタには、静電気
温度特性が同等の1608タイプおよび1005タイプの製品化
放電に起因する異常電圧にめげないイミュニティ特性も要求
を達成できました。
されます。これは、電池パックを機器へ装着する際や充電器に
電池パック温度管理用に適用される業界標準高精度サーミス
接続するときに発生する人体からの静電気放電により、電池
タの抵抗値スペックを基準にした場合の開発品(NTCGシリー
パック内の電子部品が破壊されるおそれがあるためで、NTC
ズ2品種)の抵抗値偏差と電気的特性を下に示します。
サーミスタにも確かな耐性が求められます。
抵抗値偏差(%)
当社では、
これらの要求に応えるため、積層チップNTCサーミ
スタ1608タイプ、および1005タイプにおいて、抵抗値、B定数
ともに±1%の狭許容差と優れた耐静電気特性を有する品種
を開発しました。
抵抗値偏差抑制への取り組み
0.5
0.0
-0.5
-40
-20
0
20
40
温度(℃)
60
80
電池パックに使用されるNTCサーミスタは、マイコンと組み合
わせて使用されるため、抵抗-温度特性の整合をとることが必
須となります(抵抗値が違った場合、検知する温度がずれてしま
B定数[+25/+85℃]
3435K±1%
うため)。
最大定格電力[at25℃]
30mW(1005タイプ )
耐電圧(耐静電気)
30kV
使用温度範囲
−40∼+125℃
別稿で触れたとおり、
NTCサーミスタは、
Mn(マンガン)、
Co(コ
バルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)などの遷移金属からなる酸化物
半導体です。これら材料の最適組成の追求とさまざまな添加
1005タイプ : L1.0±0.05×W0.5±0.05×T0.5±0.05 mm
物を用いた微細構造制御により、比抵抗値やB定数など、目標
1608タイプ : L1.6±0.1×W0.8±0.1×T0.8±0.1 mm
とする諸特性を作り込んでいきます。もちろん、焼成条件の微
調整も結晶構造の生成コントロール上重要な制御ファクタとな
品名
形状タイプ
ります。そのような制御の一例として、抵抗-温度特性が添加物
NTCG103JF103F
1005
の比率によって変化する様子を次のグラフに示します。
NTCG163JF103F
1608
主成分に対し添加物を21wt%、26wt%、35wt%と、異なっ
NTCG104KF104F
1005
た比率で添加した材料を3種作り、−40∼+110℃範囲にお
NTCG164KF104F
1608
2
公称抵抗値[at25℃]
10kΩ±1%
100kΩ±1%
そして、
もう一つの課題、静電気放電に対する十分な耐性の付
与に関しては、チップ内部構造の作り込み、
すなわちプロセス制
御技術のさらなる高度化、高精度化が不可欠となります。
供試品:NTCG103JF103F n=20
耐静電気特性の強化
抵抗変化率(%)
1.0
前稿でご説明したとおり、チップNTCサーミスタには単板タイ
プと積層タイプがありますが、耐静電気特性においては、単板
タイプの方が有利です。端子電極間にはサーミスタ素体しかな
く、その全体にサージ電流が流れるので特別な対策を施さなく
0.5
0.0
-0.5
-1.0
ても深刻なダメージは受けません。しかし、積層タイプの場合、
0
1
2
3
4
5 6 7
試験回数
8
9
10 11
0
1
2
3
4
5 6 7
試験回数
8
9
10 11
端子電極部から侵入したサージ電流は単板タイプよりはるかに
1.0
B定数変化率(%)
薄い内部電極間のサーミスタ層を通って、対向する端子電極へ
抜けるため、内部電極間に直接電圧が印加されます。
そこで、十分な耐静電気特性を備えるためには、サーミスタ結
晶の均一かつ緻密な生成と内部電極のマイクロストラクチャを
ミクロンオーダーで制御する量産技術の確立が不可欠となり
0.5
0.0
-0.5
-1.0
ます。とりわけ、
極小形状の1005タイプの量産化にあたっては、
内部電極の形成プロセスに高度な制御が要求されます。
もちろん、
このたび開発した高精度品はそれらの技術課題をす
べてクリアし、優れた耐静電気放電特性を達成しています。その
耐静電気試験結果を右に示します。
供試品:NTCG163JF103F n=20
1608タイプはもちろん、
1005タイプにおいても抵抗値、B定
抵抗変化率(%)
1.0
数ともに秀逸な安定性を発揮しています。
今後の取り組み
電池パックを使用する携帯機器の分野では、送受信データの
0.5
0.0
-0.5
-1.0
処理量の増加とともに、各種機能の複合搭載やさらなる小型、
0
1
2
3
4
5 6 7
試験回数
8
9
10 11
0
1
2
3
4
5 6 7
試験回数
8
9
10 11
軽量化が追求されています。また、他の機器分野においても、
さまざな製品がデジタル化され、画像もデジタル信号で記録さ
B定数変化率(%)
1.0
れる時代になり、大量の情報を個人や家庭に高速に伝達するた
めの光通信網や放送網、移動体通信環境の整備も加速してい
ます。しかしその一方で、
目覚ましい技術革新による機器、回路
の小型・薄型化に伴い、熱放散設計が困難になったり、ICパッケ
0.5
0.0
-0.5
-1.0
ージ内に周辺部品を取り込むことにより、ICチップが直接温度
の影響を受けるなど、さまざまな"熱問題"も発生しています。
総じて、エレクトロニクス機器、回路の温度環境は、今後ますま
す厳しくなるものと考えられます。
50M to 100M
SW1
このような環境の中、今後ますます高まる高精度温度管理ニー
ズに応えるべく、
さらなる極小化、狭許容差化、
ローコスト化を
30kV
目標に、サーミスタ用新材料組成の開発から量産システムに至
C0
150pF
330
+
−
SW2
NTCG series
1)1005 type
2)1608 type
る研究開発・製造技術の全プロセスを通して一層の技術革新
に努めてまいります。
1
2
3
SW1を閉じC 0 へ充電(このときSW2は開)。
SW2を閉じる。
SW1を開き、
TFL-SA02JA 2011.01.05