NTCDS, NTCGP, NTCDP Series RoHS指令対応:EU Directive 2002/95/ECにもとづき、免除さ れた用途を除いて、 鉛、 カドミウム、水銀、 六価クロム、および特定臭素 系難燃剤のPBB、PBDEを使用していないことを表します。 NTCサーミスタは、 Mn(マンガン)、 Co(コバルト)、 Ni(ニッケル)、 理用途を中心に当該製品ファイルにて詳しくご説明することと Cu(銅)、 Fe(鉄)などの遷移金属酸化物を2∼4種混合し、 1200∼ し、本ファイルでは、温度検知回路の基本的な事柄を踏まえな 1500℃の高温で焼結した複合酸化物半導体です。 がら、家電機器、産業機器、医療機器、カーエレクトロニクス、 セ 半導体は一般的に負の温度係数(温度上昇に伴い電気抵抗が キュリティシステムなど、広範な分野で温度検知用としてご採 減少する性質)を示しますが、NTCサーミスタは、右のグラフに 用いただいている高信頼性ガラスダイオード型アキシァルリー 示すように、温度上昇に伴い対数的に抵抗値が減少する物性を ドタイプをはじめとする小型タイプの3シリーズおよび過酷な使 持ち、マイコンと組み合わせることにより温度センサあるいは 用条件に対応した各種ケースタイプ(Assy品)の特長と優位性 温度補償用として幅広く用いられています。 についてまとめました。 NTCサーミスタの種類 NTC (Negative Temperature Coefficient) 各種の形状、構造が開発されていますが、家電製品をはじめさ 5 10 まざまな機器、装置に温度センサとして採用されるNTCサー ミスタのほとんどは、耐環境性や過酷な使用条件に対応する必 104 要から樹脂やガラスなどで封止したリードタイプやケース内蔵 抵抗値(Ω) タイプです。 これに対して、液晶テレビのパネル温度補償用として製品化さ れたチップタイプは、その後、 ビデオカメラのビューファインダ、 103 オートフォーカスドライブの温度補償用に採用され、近年では 102 セルラ、PHSなどのTCXO(温度補償型水晶発振器)温度補償 用、基板部温度モニタ、 およびパワーアンプ、電池パックの温度 101 -50 管理用などに多数使用されています。 TDKの積層チップタイプについては、最新の温度補償、温度管 1 0 50 100 温度(℃) 150 200 NTCサーミスタの抵抗-温度特性 サンプル : NTCG164BH103J R25:10kΩ±5% B25/85:4100K±3% NTCサーミスタ特性を規定する項目として、抵抗-温度特性、熱 放散定数、熱時定数などが挙げられますが、 この中で、最も基本 温度(℃) 的な抵抗-温度特性について簡単に説明します。 このため、自己発熱が無視できる程度の微小な印加電力で測 定した抵抗値を 「ゼロ負荷抵抗値」 と定義しています。ある温度 範囲におけるゼロ負荷抵抗値と温度との関係は以下の近似式 で表されます。 T1、T2 : 任意の絶対温度(K) R1、R2 : T1、T2 時のゼロ負荷抵抗値(Ω) B : B定数 この式から逆に、ある2点の温度と抵抗値よりB定数を算出す ることができます。 ∼ 己発熱によっても抵抗値が変化します。 450.3 317.1 228.0 163.0 118.0 87.54 65.14 48.93 37.10 28.37 21.87 17.00 13.31 10.50 8.453 6.848 5.582 4.578 3.773 ∼ 変化により抵抗値が変化しますが、測定時の電力印加による自 最大値 384.4 273.4 196.8 143.3 105.4 78.37 58.83 44.56 34.06 28.25 20.39 15.86 12.59 10.00 7.997 6.437 5.213 4.248 3.481 ∼ 前頁下のグラフに示すとおり、NTCサーミスタは、周囲温度の 327.3 235.2 171.0 125.7 93.33 70.00 52.99 40.48 31.18 24.22 18.96 14.95 11.88 9.500 7.548 6.034 4.857 3.933 3.204 ∼ −40 −35 −30 −25 −20 −15 −10 −5 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 抵抗値(kΩ) 中央値 最小値 125 0.265 0.310 0.381 検出回路例 このB定数が大きいほど、温度変化に対する抵抗変化率が大き NTCサーミスタの場合、温度に対する抵抗の変化が対数曲線 いことを意味しています。 のため、固定抵抗と組み合わせて出力電圧特性を直線化させ なお、 下のグラフに示すとおり、 B定数はあくまで2点の温度(T1、 る回路構成が一般的です。下にNTCサーミスタと固定抵抗を T2)と、その温度に対応した抵抗値(R1、R2)の値により算出さ 直列接続した温度センサ回路例を示します。 れるものであり、 この値を他の温度(T3)における抵抗値(R3)を 求めるために用いるのは適切ではありません。 E (Edc Line ) R1 特定温度2点に対応した VRT ゼロ負荷抵抗値を求めます。 NTC ゼロ負荷抵抗値R(Ω) IC R1 RT R2 この回路において、ある温度におけるサーミスタ抵抗値をRT T1 温度T(K) (kΩ)、固定抵抗値をR1(kΩ)、印加電圧E(V)とした場合、NTC T2 サーミスタ端子間電圧VRT(V)は次式で表されます。 したがって、実際には、抵抗-温度特性表における最小値、中央 値、最大値を参照し、各温度ごとに適用します(次表参照)。 2 いま、R1=20kΩ、E=5V、そして25℃における抵抗値が20 3.0 kΩのNTCサーミスタを使用した場合、25℃のとき、下式は、 V max. V typ. V min. 2.5 2.0 電圧(V) E → 5V R 1 → 20kΩ VRT = 2.5V NTC IC NTCサーミスタ回路 1.5 温度IC回路 1.0 0.5 R T → 20kΩ at 25°C 0 -50 0 50 温度(℃) 100 150 温度センサとして用いられる際のNTCサーミスタの一般的特 長は次のようになります。 となります。逆から見ると、端子間の電圧値が2.5Vのときに 1)ある温度範囲内(一般的に100℃以内)の温度を連続的に 検知できます。 NTCサーミスタの温度が25℃になっていることがわかります。 このように、NTCサーミスタの抵抗-温度特性と回路定数によ 2)温度に対する抵抗変化率が大きいため増幅回路が不要です (したがってノイズ干渉に対しても強く、安定しています)。 り設計された温度検知回路上の所定の電圧を取り出すことで 3)ある規定温度1点に対する抵抗値精度を±1%、さらに、そ れ以下に設定することも可能です。 温度を特定する方法が一般的です。 しかし、特定された固定抵抗とNTCサーミスタの組み合わせ そこで実際には、 あらかじめ検知したい温度範囲を特定し、 NTC 4)抵抗値、B定数のバリエーションが豊富で温度範囲、回路定 数に最適な特性を選択できます。 サーミスタと固定抵抗の特性値を選定することで、検知温度範 5)比較的小型で高応答性センサを実現できます。 囲の出力電圧を直線化します。 6)比較的安価です。 この点、温度ICの場合は、それ自体の出力電圧が温度に対して 以下、代表的な製品の構造と特長についてご説明いたします。 では、 出力が直線に近似できる温度範囲に有限な幅があります。 直線的に変化するため、 回路定数を検討する必要はありません。 ガラスダイオード型アキシァルリードタイプ ただし、 コスト的にNTCサーミスタを用いた補正回路の方が圧 NTCサーミスタ単品の代表例として、DHD(Duble Heat-sink 倒的に有利なため、上記の直線化手順により温度ICとの置き換 えも行われています。NTCサーミスタと抵抗の組み合わせに Diode)と同一形状のガラスダイオード型アキシァルリードタイ よる置き換え回路例(HDDアッセンブル例)を以下に示します。 プ(NTCDSシリーズ)があります。下のモデルに示すように、極 小NTCサーミスタ素体の両面に形成した電極とジュメット部 を電気的に接続し、全体をガラス管で溶着した信頼性の高い Edc Line 封止構造です。 Edc Line IC IC R25 :10kΩ±5% B25/85 : 4100K±3% NTC 温度IC 10kΩ ジュメット部 10kΩ ガラス管 φ2mm×L4mm max. CP線 サーミスタ素体 電極 3 電極 エポキシ樹脂ケースタイプ NTCサーミスタは、組成や焼成条件のごくわずかなズレなど により比抵抗値が微妙に変化します。そのため、ガラス管に封 基本的な構造は、ABSケース品と同様ですが、 ケース材質と充 止するサーミスタ素体の形状寸法(厚み0.15∼0.25mm/ 填樹脂が異なります。無機物フィラーを多く含んだ低膨張率の 1辺の長さ0.3∼0.5mm)を高精度に調整し、規定温度におけ エポキシ樹脂ケースと、それとほぼ同等の膨張率、特性を有す る所定の抵抗値を実現しています。 るエポキシ充填樹脂の使用により、優れた熱応答性とともに、 堅牢なヒートサイクル性(+3℃←→+90℃、水中各1分間、 30000サイクル)を達成しています。自動販売機、冷蔵庫、エ アコンなど、温度変動が大きく、高い信頼性を要求される機器 このガラスダイオード型NTCサーミスタを用いたAssy製品 に多く使用されています。使用温度範囲も電線の被覆材質の の代表例として、高度な耐環境性を要求される用途に最適な 選択により−40∼+150℃まで対応できます。 リード線付きケースタイプ(NTCDPシリーズ)を紹介します。 PPS成型タイプ(油温センサ) 自動車ミッションオイル(ATF)、オイルヒータなど、高温オイル の温度センサとして最適な高耐熱性・耐油性を備えたスーパ ーエンプラ樹脂のひとつであるポ リフェニレンサルファイド樹脂(PP S)成型タイプです。ATFには塩素 やイオウ分が含まれており、かつ、 最高温度が165℃に達するため、 化学的に高安定な材質で構成する 必要があります。このため、電線に もテフロン電線を適用し、使用温 度範囲 : −40∼+165℃を実現 しています。 積層チップNTCサーミスタ内蔵エポキシディップタイプ また、特性変動が小さく、特性バリエーションも豊富な1005タ ABS樹脂ケースタイプ イプ積層チップNTCサーミスタを内蔵した小型タイプ(NTCGP ガラスダイオード型アキシァルリードタイプをU字に曲げ、塩ビ シリーズ)も広くご採用いただいています。モールド成型工法の 電線とカシメ接続した後、 食品衛生法に準拠したABS樹脂ケー 採用により、多様な形状デザインに対応でき、室温検知用(エア スに封止したロープライス品です。ABS樹脂および塩化ビニー コン、 ファンヒータ、 温水洗浄便座、 カーエアコンなど)、 保温検知 ル被覆電線と接着性の良いエポキシ樹脂の充填により、優れ 用(温水洗浄便座の便座保温シートなど)、水温検知用(ジャーポ た耐水性を発揮し、冷蔵庫の庫内温度検知回路などに数多く ットなど)、温度検知用(冷蔵庫内、ホットカーペットなど)に最適 使用されています。使用温度範囲は、−40∼+85℃です。 です。 使用温度範囲:−40∼+80℃ ガラスダイオード型アキシァルリードタイプ 下塗り樹脂 カシメ接続 ABSケース 塩化ビニール被覆電線 エポキシ樹脂充填 4 TFL-SA03JA 2011.01.05