RoHS指令対応:EU Directive 2002/95/ECにもとづき、免除さ れた用途を除いて、 鉛、 カドミウム、水銀、 六価クロム、および特定臭素 系難燃剤のPBB、PBDEを使用していないことを表します。 新開発材PC90のコアロスは、実用温度80∼100℃におい て、PC44の秀逸なラインにきわどく迫り、数多くの採用実績 たとえば、低損失フェライトコアで軽量・小型化を追求した電源 トランス。そのコアより重量比20%減の小サイズコアで、駆動 条件、 スペックはそのままに、 一次側巻線数の低減により総損失 のいでいます。 1200 これまでの パワーフェライトには成し得なかったそんな大仕事を軽々とこ なし、なお余裕を残す最新鋭パワーフェライトです。 PC44 1000 コアロス Pcv(kW/m3) を最小化し、 トランス容積を1/3以上削減する を重ねているPC40の低損失特性を70∼120℃で大きくし 800 PC33 High-Bs 材 600 PC40 Low-Loss材 PC90 PC44 Low-Loss材 400 200 Low-Loss 0 PC90 0 20 40 60 80 温度 ( °C) 100 120 つまり、PC90は、 どこから見ても筋金入りの低損失材なので サイズ比較 例:PC44を適用したトランスと同一 使用条件下で同一性能を得ることができます。 すが、 しかし、 この新材質の優位性は、パワーフェライトを二分 する「低損失材」と「高飽和磁束密度材」の枠組みを超えた革 各種電源トランス用コア材として業界トップレベルの低損失特 新的な磁気特性から生まれます。 性を誇るPC44。グラフに示すとおり、そのコアロスは、90∼ 業界最高レベルの飽和磁束密度を誇るPC33。その能力を、 110℃において300kW/m 3 水準にまで抑制されていますが、 次頁のグラフに示すとおり、PC90は、25∼120℃の広い温 度範囲で超えています。つまり、PC90は、秀逸な低損失材で あると同時に、これまでのトップレコードを塗り替えた最も先鋭 的な高飽和磁束密度材でもあるのです。 フェライトの飽和磁束密度は、基本的にフェライト単位体積あた りの磁気モ−メント量に依存します。 したがって、空孔などの欠 陥因子を極力排除し、緻密な結晶構造を得ることで飽和磁束密 度を向上させることができます。 600 飽和磁束密度 Bs (mT ) High-Bs しかし、一般的な焼成プロセスにおいて高い焼結密度を得よう とすると、 フェライトを構成する微小結晶粒が肥大化する傾向が 500 PC90 PC33 High-Bs 材 400 PC40 Low-Loss材 PC44 Low-Loss材 300 あり、 微小結晶粒の半径の二乗に比例する渦電流損失が増大し てしまいます。このように、高飽和磁束密度を狙う制御と、低損 失を追求する操作は、多くの場合において二律背反的な様相を 帯びてきます。 つまり、フェライト物性制御のこれまでのセオリーにしたがう限 り、低損失特性を極めるほどに、飽和磁束密度の向上は困難と 200 0 20 40 60 80 温度 ( °C) 100 120 なり、パワートランスなどでは、大きな励磁条件に対応できなく なる課題が生じます。 また、 その裏返しになりますが、 高飽和磁束密度材は、 Bs値を極 PC33 材質名 特長 初透磁率 *1 μi コアロス *2 Pcv (kW/m3) 飽和磁束密度 *3 Bs (mT ) High-Bs 1400 1100 800 600 680 510 490 440 420 [at 25 °C] [at 25 °C] [at 60 °C] [at 100 °C] [at 120 °C] [at 25 °C] [at 60 °C] [at 100 °C] [at 120 °C] PC90 Low-Loss High-Bs 2200 680 470 320 460 540 500 450 420 PC44 Low-Loss 限まで高めようとする微細構造、 組成比率の追求から、 低損失材 と比較して渦電流損失やヒステリシス損失の徹底抑制が困難と なります。その結果として、ギャップ調整によるハイパワー駆動 2400 600 400 300 380 510 450 390 350 *1. ±25%, at 100kHz, 0.1A/m *2. at 100kHz, 200mT *3. at 1194A/m など、高飽和磁束密度材ならではの優位性も、損失に起因する 温度上昇とのかねあいで十分に生かし切れない課題が残され てきました。 PC90の直流重畳特性は、高飽和磁束密度材PC33のそれを、 約8%ほどしのいでいます。しかし、 100℃における両者のBs 値の間には、 それほどの開きはありません。PC33が440mTで あるのに対してPC90が450mTですから、 その差はわずか2% 程度。それにもかかわらず、直流重畳特性には8%の差をつけ、 0.5 目にも鮮やかな伸びを示しています。 0.4 PC33 PC44 0.3 -1500 -1000 - 500 2 0.1 1.8 0 1.6 0 - 0.1 - 0.2 - 0.3 500 1000 1500 インダクタンス (mH) 磁束密度B ( T ) PC90 0.2 1.4 1.2 PC33 1 0.8 0.6 - 0.4 0.4 - 0.5 0.2 磁界 H (A/m) PC90 0 0 200 400 600 800 1000 1200 直流重畳電流 Idc (mA) 1400 1600 この理由は、両者の磁化曲線を比べることで明らかになります。 そのメリットは、重量ベースで 約20%の軽量化。しかも、高飽 冒頭の「コアロス-温度特性比較」 グラフで確認していただいた 和磁束密度のため、 巻線数を減らしてもギャップ調整でトランス とおり、PC90のコアロスはPC33のそれよりはるかに小さな に要求されるインダクタンス値を維持できますので、パワートラ レベルに抑制されているため、磁束密度の立ち上がりが急峻で、 ンスの損失因子として一般にコアロスより大きな割合を占める しかも、飽和に達するぎりぎりまで、マイナーループを縦方向に 銅損(巻線抵抗)をコアロスと同等レベルに設定し、 トランスの総 きっちり描く直線性をよく維持しています(マイナーループと直 損失を最小レベルに抑制することも可能になりました。 線性については文末の付記をご参照ください)。 増 0.5 トランス総損失 PFE + PCU 最小ポイント 一次側巻線数 増 損失 磁束密度B ( T ) 0.4 PC90 0.3 鉄損 PFE PC33 0.2 銅損 PCU 減 0.1 減 0 0 100 200 磁界 H (A/m) 300 400 その方向で作り込んだパワートランスが下の写真です。小さい 方がPC90による最新鋭タイプ。大きい方は、低損失材PC40 つまりPC90は、 これまでの高飽和磁束密度材PC33が体験し たことのない磁化曲線の"シェイプアップ効果" により、 チョーク コイルの大胆な小型化を可能にする秀逸な直流重畳特性を得 を適用した従来タイプです。もちろん、サイズと重量以外のス ペックはすべてそのまま。損失の徹底改善で、 従来タイプを上回 るパフォーマンスを発揮します。 ています。 特性比較に明らかなように、PC90の飽和磁束密度は、 トップス PC40 ペックを誇る低損失材、 PC40、 PC44のそれを約15%も上回 っています。したがって磁束密度など、PC40、PC44と同じ条 件で駆動する場合、 コアの断面積を小さく設定できます。 PC90 0.5 磁束密度B ( T ) 0.4 PC90 0.3 PC44 PC90適用最新鋭パワートランスです。コアの小型化とともに一次側巻線の 0.2 巻数を少なくすることにより、銅損とコア損失の比率も理想的な1:1に近づけ ました。その結果、低損失材PC40を適用した従来タイプを、体積比で一気 0.1 に36%も削減しました。 0 0 100 200 磁界 H (A/m) 300 400 の温度条件、 酸素濃度条件の抜本的な改良に鋭意取り組んでき ました。 一般に、ある温度Tにおけるフェライトの飽和磁束密度Bsは、 以下の式で表すことができます。 その結果、 これまでの水準を超える高飽和磁束密度化を達成し ながら、 損失要因の増大を抑制できる緻密かつ高品位な微細構 造生成技術を確立。秀逸な低損失特性を誇るPC44と同等レ ベルの引き締まった磁化曲線を示す「ローロス&ハイBs材」 を 完成しました。 このうち、Bs(0)、 Tc、 ρがハイBs化のパラメータということに なりますが、Bs(0)は、焼結プロセスで生成されるフェライト組 初透磁率 *1 μi コアロス *2 Pcv (kW/m3) 飽和磁束密度 *3 Bs (mT ) 残留磁束密度 *3 Br (mT) 保磁力 *3 Hc (A/m) 成の比率に支配され、MnZn系フェライトの場合は、 マンガンフ ェライト(MnFe2O4)、亜鉛フェライト(ZnFe2O4)、 マグネタイト (Fe3O4)の比率でこの値が確定的となります。そこで、 Bs(0)の 大きなマグネタイトの生成比率を高める方向でハイBs化をは かる取り組みが一般的に行われています。 しかし、パワートランスやチョークコイルに用いられるコア材は、 それらの製品の駆動温度帯域において高飽和磁束密度化を追 求する必要があり、 そこで重要となるのが Tcの制御です。Tc以 上の温度では、 熱擾乱作用で強磁性機構そのものが消失してし まいますが、Tcが低目に設定された場合、電源回路の駆動温度 領域においてもその影響が無視できなくなります。 つまり、Bs(0)をいくら高めても、Tcを最適な温度に設定でき なければ高飽和磁束密度化の成果は期待できません。しかし、 キュリー温度もまた組成に全面的に依存するパラメータなので、 Bs (0)を強化しながらTc を最適化する作業は容易ではありま キュリー温度 Tc (°C) 体積抵抗率 ρv (Ω・m) かさ密度 δ (kg/m3 ) [at 25 °C] [at 25 °C] [at 60 °C] [at 100 °C] [at 120 °C] [at 25 °C] [at 60 °C] [at 100 °C] [at 120 °C] [at 25 °C] [at 60 °C] [at 100 °C] [at 120 °C] [at 25 °C] [at 60 °C] [at 100 °C] [at 120 °C] [at 25 °C] 2200±25% 680 470 320 460 540 500 450 420 170 95 60 65 13 9 6.5 7 250 min. 6 4.9×10 3 *1. at 100kHz, 0.1A/m *2. at 100kHz, 200mT *3. at 1194A/m せん。 そこで私たちは、第4の金属イオンを組み込み、キュリー温度を スイッチング電源、 最適化する組成制御を展開。量産レベルにおいて安定した再 DC-DCコンバータ、 現性を確保できる独自の高飽和磁束密度化プロセス技術を確 LCDインバータ、 ノートPC 電源回路 立しました。 など、各種パワーサ また、 これまでの制御ノウハウのフィールドでは、高飽和磁束密 プライのトランス、 度化の施策が低損失化を阻害する要因になることも少なくあり チョークコイルの小 ません。 たとえばマグネタイトの生成比率を増していくと磁気ひ 型・軽量化、 低損失・ 高効率化に、これま ずみ(磁歪)も大きくなるため、 ヒステリシス損失が増大し、体積 でにない 設 計優位 抵抗率も次第に低下する傾向となるので渦電流損失も無視で 性を提供します。 きなくなってきます。 しかも、ヒステリシス損失は電源回路の駆動周波数に比例し、 渦電流損失はその二乗に比例して巨大化しますので、スイッチ ング電源など、比較的高い周波数で駆動するパワーサプライに おいては、このほか類似の課題も含め、高飽和磁束密度材の低 損失化を困難にしていました。 TDK-EPCでは、二律背反的なこれらの課題を解決する手法と して、微量添加物による微細構造制御の見直しを進め、焼成時 INFORMATION EER、PQ、ELT、EPC、RMシリーズなど、各種用途に最適なコア形状、サイズ をラインナップしています。また、標準形状以外のご要請にも対応できますの でお気軽にお問い合わせください。 フェライトコアを用いたチョークコイルといえば、直流電流が印 加された状態でどこまでインダクタとしての機能を発揮できる か、 という点、 すなわち直流重畳特性の優劣が、 設計上の重大な 関心事となります。この特性を左右する直接的なファクタは、 磁化曲線 (ヒステリシスループ)上に描かれるマイナーループの 傾き(増分透磁率μΔ)ですが、直流を印加されたトランスのイン ダクタンスは、このマイナーループの傾きに依存し、傾きが横に 寝てくる(磁気飽和が始まる)のに伴い、 インダクタンスは急激に B(mT ) 低下してしまいます。 1 μΔ1 2 μΔ2 3 0 Hdc H(A/m) 直流バイアス磁界 2 のような磁化曲線を有するコアを使用すると、 実際に駆動される 磁化曲線部分は大きく湾曲しているため(すなわち、磁束密度Bが飽 和に近づいているため)、このポイントにおけるインダクタンス(μΔ2 ) は、大きく減退してしまいます。 また、 3 のコアは、 Hdcにおいて、ほぼ完全な飽和状態となり、磁心 としての機能を喪失してしまいます。 最もBsの大きな 1 の磁化曲線は、 バイアス磁界下においても直線 性がよく保たれているため、 2 のコアよりはるかに大きなインダクタ ンス(μΔ1)を発揮できます。 TFL-D06 2011.06.01