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1
目次
はじめに ダイオード— ノイズそして電源の効率—————参考 整流ノイズ————————————————————————–
3シリーズのSBD—————————————————————————
SBDのサーマルランナウェイ—————————————————–
1
2
3
4
5
6
7
8
9
2
5
7
8
10
10
12
15
15
4-1 逆回復特性の波形上の定義———————————
15
4-2 逆回復特性測定回路——————————————
16
4-3 逆回復特性の温度依存性————————————
4-4 逆回復特性の - di / dt 依存性——————————– 17
17
4-5 逆回復特性の順電流依存性———————————
17
4-6 逆回復波形——————————————————
6-7 逆回復損失の求め方——————————————– 17
順回復特性——————————————————–————————- 18
定格と特性———————————————————————————— 18
許容電流————————————————————————————— 18
7-1 フィン熱抵抗—————————————————— 19
7-2 ケース温度基準点———————————————– 19
7-3 温度測定———————————————————– 20
7-4 接合部 - リード間熱抵抗 Rth(j-l)————————— 21
7-5 パッケージ表面温度——————————————— 21
7-6 リード温度・フィン温度実測値を基にした接合温度の計算- 21
7-7 過渡温度上昇の計算——————————————— 21
逆電圧定格の考え方—————————————————————— 24
出荷品の検査、信頼性——————————————–—————- 25
高速ダイオードとは————————————————–—————
FRDとSBD———————————————————–———————–
応用回路と日本インターSBD・FRD————————————–
逆回復特性———————————————————–———————-
実装上の注意点—————————————————–————————- 28
日本インター株式会社
1
2004.10 橋詰伸一
Rev. 3.0
2
ダイオード
ダイオード—
— ノイズそして電源の効率
る」「スペアナを見ればどれがダイオードの
ノイズかすぐわかる」など耳にします。低周
波整流であればダイオードにCR(またはC
のみ)を並列接続すればノイズを抑えること
ができます。しかし高周波スイッチング回路
ではスナバ損失が増加するので、そう簡単
には処理できません。さて、合金型に較べ
て拡散型のノイズが大きかったのでしょう
か? 写真1に逆回復特性を比較しました。こ
0
電流
電圧
合金型
Line Frequency Rectifiers
Back in the 1960's when I designed my first threephase 400 Hz transformer rectifier sets I used alloy
junction 1N538 diodes for the low power outputs.
The modules passed EMI tests with no problem. A
couple of years later, I got a call that all my modules
were failing EMI tests.
What I found was that the manufacturer had
"improved" the diode by using faster diffused junctions.
(by Jerrold Fout / http://www.smpstech.com/qa/
qa0005.htm)
1960年代に私が最初に設計した3相400Hz トランス入
力整流装置の2次側には1N538という合金型ダイオー
ドを使用した。このモジュールは何の問題もなくEMI
試験に合格した。ところが2・3年後に全セットともEMI
試験に通らないとの連絡を受けた。調べてみると、より
速い拡散型に切り換えることでメーカがダイオードを
進歩させたことがわかった。
イ
ンターネットで見つけたスイッチング電源
技術に関するフォーラムの一節です。「ダ
イオードは意外にノイズを出す」「50/60Hz
単相半波整流回路のダイオードが一般用(trrが長
い)とFRDとでは聴覚上の違いとして聞き分けられ
日本インター株式会社
2
0
電流
電圧
拡散型
写真1 合金型と拡散型の逆回復特性
V: 5A/div., 2V/div. H:200ns/div.
こで注目していただきたいのは矢印で示し
た電圧です。これはダイオード自身が逆回
復時に発生する電圧であり、ノイズ源となり
ます。合金型はほとんどオーバシュートして
いないのに、拡散型では格段に大きくオー
バシュートしています。これが拡散型に切り
替わってEMI試験が通らなかった元凶と考
えられます。現在のダイオードはほとんどが
拡散型ないしは、これをさらに発展させたも
のです。一般ダイオードに較べて高速ダイ
オードはスパイク電圧を発生させるエネル
ギーが小さく、結果としてノイズも小さくなり
ます。さらに逆回復時間が同程度でも回復
がソフトであればノイズが小さくなります。次
ページ写真2と3は逆回復時間が同程度で
TO-247AC (TO-3P)
3
ソフトリカバリーとそうではないものとの比較例で
す。(IFM=10A) FRDの逆回復時間trrは25℃で
規定されており、比較したFRDはいずれも40~
50nsです。写真2で当社FRDは逆回復がソフトで
100℃でも電圧オーバシュートはほとんどありま
せん。これに対して他社品では盛大なリンギング
が起きています。ダイオードによってはこのような
ことも起きます。
次
に150V SBDと200V FRDとを実回路動作
でのノイズと効率とを比較します。組み込
んだのは24V2.5A出力のフォワードコン
バータです。SBDとFRDとはともに5Aツインチップ
品でFCH10A15とFCF10A20です。主要電気的特
性が表1、また24V 2A出力時(負荷抵抗12Ω)出力
ノイズが写真4と5です。
150V SBD
Io
0
25℃ 電流
100℃ 電流
25℃ 電圧
100℃ 電圧
200V FRD
5A ×2
VF
5A 25℃
0.88V
Max.
0.98V
Max.
IR
VRRM 25℃
1mA
Max.
20µA
Max.
trr
5A 50A/µs
25℃
-
35ns
Max.
表1 主要電気的特性
写真2 当社 600V FRD 逆回復特性
Ver. 5A, 100V/DIV. Hor. 20ns/DIV.
サンプル FSF10A60
0
0
25℃ 電流
100℃ 電流
写真4 150V SBD出力ノイズ
Ver. 100mV/div.、Hor. 2µs/div.
25℃ 電圧
100℃ 電圧
写真3 他社 600V FRD 逆回復特性
Ver. 5A, 100V/DIV. Hor. 20ns/DIV.
比較
0
写真5 200V FRD出力ノイズ
図1 実動作比較回路
Ver. 100mV/div.、Hor. 2µs/div.
日本インター株式会社
3
4
150V SBDのノイズピーク値は200V FRDに較べ
て約50mV小さい結果となりました。別回路でダ
イオードの逆回復特性を比較したのが写真6と7
25℃
5A×2 150V SBD (FCH10A15)
0
電流
電圧
出力電流
(A)
出力電力
(W)
入力電力
(W)
効率
(%)
0.5
12
15.2
78.9
1
24
28.5
84.2
1.5
36
42.0
87.5
2
48
55.6
86.3
2.5
60
69.7
86.9
5A×2 200V FRD (FCF10A20)
100℃ 0
電流
電圧
写真6 150V SBD逆回復特性
Ver. 0.5A、10V/div.、Hor. 10ns/div.
出力電流
(A)
出力電力
(W)
入力電力
(W)
効率
(%)
0.5
12
15.4
77.9
1
24
28.9
83.0
1.5
36
42.5
84.7
2
48
56.1
85.6
2.5
60
70.3
85.3
表2 効率測定結果
25℃
なからず影響します。特にノイズに関して顕著
な効果を見ることがあります。進歩した技術・・・
イオンインプランテーションや電子線照射など
の技術を利用して最新ダイオードでは冒頭紹
介した合金型のようなソフトリカバリ特性が実現
されています。
0
電流
電圧
100℃ 0
アルミ合金によるP層
電流
電圧
N型シリコン
写真7 200V FRD逆回復特性
合金型
Ver. 0.5A、10V/div.、Hor. 10ns/div.
です。SBDはソフトリカバリであり、跳ね上がり電
圧が小さいことが出力ノイズ小に反映していま
す。ま た 跳 ね 上 が り が 小 さ い こ と で FRD で は
150V以上のピーク電圧が発生していてもSBD
で は 150V 以 内 に 収 ま る 可 能 性 が あ り ま す。
200V FRD使用回路で150V以上の電圧がか
かっていても150V SBDが使えることもあります。
N+
P+
P+
P+
P+
P+
P+
+
N
Uシリーズ FRED
図2 ダイオードチップ断面の比較
効
率の比較結果が表2です。20~100%
負 荷 の 全 域 で 150V SBD は 200V
FRD よ り 効 率 で 1% 程 度 勝 っ て い ま
す。単に出力ダイオードを置き換えるだけで効
率が向上することになります。
回路設計でダイオードは脇役にしか過ぎませ
ん。しかしダイオードといえども回路の性能に少
日本インター株式会社
P+
4
N+
5
参考 整流ノイズ
50
asahi/fa/efu/soft/ws/ws.html)でスペクトラム表示
しました。次ページの図は300回平均化処理をし
たものです。
Hz/60Hz整流回路のノイズが意外
に大きいことはよく知られている。整流ノイズは一
般整流ダイオードのかわりに高速ダイオードを使
えば小さくなります。輻射ノイズとして捉えた整流
ノイズを紹介します。ここでの比較はあくまで相対
比較です。
ブリッジ整流ダイオードをソケットで交換できる
ようにした12V出力リニア定電圧回路を使い、負
荷が300Ωなので出力電流は40mA程度です。
ここでは磁気シールドされていない巻線がむき
出しのトランスを使い、ノイズ(磁界の変化)を最大
限放出させ、この微弱な磁界の変化を高感度
AMレシーバで捉えました。このノイズは、ほんの
少し離れただけでも検出できなくなります。40mA
という小電流しか流さなかったためです。
12V
AC100V
50Hz
LM317
定電圧回路
C’s Kit
TW-157
図3 比較回路
300Ω
実験したような条件ではノイズの大きな一般整
流用ダイオードに1,000pF程度のセラミックコンデ
ンサを並列に付け加えればノイズを消すことがで
きます。この手法でダンピングが効かないとリンギ
ングが発生してMHz~100MHzの高周波分を増
加させることになります。その意味ではじめからノ
イズ源エネルギーが格段に少ない高速ダイオー
ドを使うのが大元を激減させるという意味で賢明
な選択といえます。
ソケットで交換可能
AMレシーバ SONY ICF-SW77の内蔵バーアン
テナをトランスにできる限り近づけ、聞こえるノイ
ズが最大になる位置に固定しました。
AMレシーバ
定電圧回路
温度変化を考えれば、このようなリンギングは
外付けCRでは十分にとりきれない
写真8 (25℃と100℃)
ダイオード
比較したダイオードは次の3種です。
一般整流用
1A/600A
200V FRED
FCF/FRF10A20
(5A×2/200V)
200V SBD
FCH/FRH10A20
(5A×2/200V)
AMレシーバ出力はデジタル化し、フリーソフト
ウ ェ ア WaveSpectra V1.30 (http://www.ne.jp/
日本インター株式会社
5
6
図4 AMラジオ捉えた整流ノイズ
一般整流用ダイオード
図5 AMラジオ捉えた整流ノイズ
200V FRD (FCF/FRF10A20)
図6 AMラジオ捉えた整流ノイズ
200V SBD (FCH/FRH10A20)
日本インター株式会社
6
7
3シリーズの
シリーズのSBD
SBD
VRRM (V)
10
20
30
40
60
100
150
Lシリーズ
200
図7 日本インターのSBDシリーズ
低 VF
標準シリーズ
Hシリーズ
逆電流 小
日
的な順電力損失 PF、逆電流 IR、そして、逆電力
損失 PRは次の通りです。
表3
本インターでは3系列のSBDを製品化
しています。標準シリーズ、ローVFのL
シリーズ、そして、低逆電流のHシリー
ズ で す。例 え ば、EP10QY03、EP10LA03、そ し
て、EP10HY03がこれら系列に対応し、いずれ
も、1Aで30VのSOD-123パッケージSBDです。こ
れらから用途に合った選択をすれば、ダイオー
ドでの損失を低減できる可能性があります。具体
的には順電流が流れる比率が大き用途には順
電圧VF の低いLシリーズが、逆に逆電圧のかか
る比率が大きい用途には逆電流IR の小さなHシ
リーズが、それぞれ適しています。
それでは、次の例で全損失を見積もってみま
す。下図は代表的なDC-DCステップダウンコン
バータです。
P/N
PF (W)
@0.2A
IR (mA)
@15V
PR (W)
@15V
EP10LA03
0.0315
9.93
0.148
EP10QY03
0.0490
0.554
0.00831
EP10HY03
0.0626
0.0881
0.00132
出力電圧が12Vと1.5Vとの2つの条件で全損
失を見積もります。
図9 Input :15V Output :12V / 0.2A
Forward 0.21 Reverse 0.79
IF
図8 降圧DC-DCコンバータ
0
入力 15V
Tj=100℃
0
出力電流
0.2A
VR
SOD
SOD--123 1A / 30V
EP10LA03
EP10QY03
EP10HY03
表4
入 力 電 圧 15V、出 力 電 流 0.2A、動 作 温 度
100℃ を 想 定 し ま す。順 電 流 IF=0.2A、逆 電 圧
VR=15V、Tj=100℃における3種のSBDの代表
日本インター株式会社
7
P/N
全損失(W)
EP10LA03
0.124
EP10QY03
0.0168
EP10HY03
0.0141
8
このように順電流の流れる比率が高ければ
(ORing回路は前者の典型的な例です)順電圧
VF の低いLシリーズが、逆電圧がかかる比率が
高ければ逆電流IR の小さなHシリーズが有利な
ことが分かります。
SBDでは、とかくVF の低さに目が向きがちで
す。これは、必ずしも正しいとはいえず、IR が低
いことに、より価値があることも少なくありません。
図10 Input :15V Output :1.5V / 0.2A
Forward 0.904 Reverse 0.096
IF
0
0
VR
表5
P/N
全損失(W)
EP10LA03
0.0427
EP10QY03
0.0450
EP10HY03
0.0567
SBD
とサーマルランナウェイ
SBDとサーマルランナウェイ
S
BDの逆電流は大きく、逆電力損失も大
きなものです。逆電流は温度が上がれば
指数関数的に増加します。そして、ある
温度を越えるとサーマルランナウェイが起こりま
す。逆電力損失とジャンクション温度とが正帰還
の関係となるためです。
Tj : ジャンクション温度
Rth : 熱抵抗
図12
電力損失
逆電流
dP/dTj
図11
増加
ジャンクション温度
ジャンクション温度
逆電力損失
上昇
当社のSOD-123外形 1A/30V SBD3製品につ
いてサーマルランナウェイが起きる平均的温度
を計算してみます。ここでは逆電圧が100%デュ
ティでかかるとしました。これは、多くの動作条件
より厳しいものです。
次ページの計算結果の表から、周囲温度が高
かったり、熱抵抗が高い場合にはサーマルラン
ナウェイが重要検討事項であることが分かりま
す。
増加
次の式は熱の発生と放散のバランスを表して
おり、この条件が成り立つとサーマルランナウェ
イが起きます。
dP / dTj < 1 / Rth
P : 全損失
日本インター株式会社
8
9
P/N
サーマルランナウェイが起きる温度
表6
100℃/W
200℃/W
270℃/W
300℃/W
EP10LA03
91.5
75.7
68.9
66.5
EP10QY03
138.5
127.2
122.4
120.7
EP10HY03
165.8
153.3
147.9
146.0
ウェイを起こしにくくなっています。
日本インターのSBDはサーマルランナウェイを
起こしにくい優位点があります。順電圧 VF と逆
電流 IR とは二律背反の関係にありますが、適正
に設計されたSBDは両特性のバランスがとれた
ものとなり、あわせてサーマルランナウェイを起こ
す温度が高くなります。
SMA 外 形 で 2A/40V SBD で あ る SB240、
FM240、そして、当社EC21QS04の3種を比較し
ます。下表に示すように、VF が一番低いもので
はなく、バランスがとれたものが、サーマルランナ
IRM
50% duty
107.3℃
サーマルランナウェイを考える上で、もう一つ
重要なのがデバイス自体の熱抵抗です。写真に
あるようなダイアタッチが悪い製品では規定され
た熱抵抗を満足しない恐れがあります。当社製
品は十分にコントロールされているので半田ボイ
ドは最小であり、仕様値を確実に満足していま
す。
当社製品をお使いいただければ、機器の性能
と信頼性とを高めることにつながります。
表7
サーマルランナウェイが起きる温度
Rth=157℃/W
SB240
VF @2A
20V
40V
100℃
1.51mA
2.62mA
25℃
0.484V
125℃
6.13mA
10.68mA
125℃
0.438V
123.6℃
FM240
20V
40V
100℃
2.44mA
4.27mA
25℃
0.427V
125℃
10.21mA
19.17mA
125℃
0.353V
VF @2A
114.1℃
EC21QS04 (NIEC)
20V
40V
100℃
0.677mA
1.438mA
25℃
0.468V
125℃
2.862mA
5.875mA
125℃
0.425V
図13 ダイアタッチ
VF @2A
137.1℃
(銅フレームとシリコンチップ間のハンダづけ—白ぽく見えるのがボイド)
No Solder
Big Voids
当社品
他社品
日本インター株式会社
9
10
としても無視できません。
本資料は実用性を第一として、できる限り簡
略化した平易な説明にしました。従って、厳密に
は諸条件との兼ね合いから、さらに検討を必要
とする場合などもありますので、あらかじめご了
承ください。
1, 高速ダイオードとは
FRD(Fast Recovery Diode)、SBD(Schottky
Barrier Diode)は、50/60Hz商用周波整流など
に使用される一般整流ダイオードと区別するた
め高速ダイオードと呼ばれます。
写真9に一般整流ダイオードと高速ダイオー
ドの動作電流波形例を示します。ダイオードは
順方向に電流が流れていた直後に逆電圧が
印加されると、本来のダイオードの性質を取り戻
すまで、すなわち、逆方向が高抵抗状態になる
までには、ある時間が必要です。この間、ダイ
オードには外部回路条件とダイオード特性で
決まる大きな電流が流れます。
この例では、3Aの順電流が流れていたところ
に逆電圧を印加されたことにより、電流は100ns
あたり5Aの率で減少し(-di/dt=50A/µs)、一般整
流ダイオードでは約400ns間、高速ダイオードで
は約100ns間逆電流が流れています。この時間
は逆回復時間、そして、この現象は逆回復現象
と呼ばれます。逆回復時間は回路にとってデッ
ドタイムになり、また、本条件では一般整流ダイ
オードでは14Aものピーク逆回復電流が流れ
ていますから、高速・高周波回路では電力損失
0
FRD
一般ダイオード
写真9 一般整流ダイオードと高速ダイオードの
動作波形例
Ver. 5A/DIV. Hor. 100ns/DIV.
サンプル:一般 30D4, 高速 30DL4
この例のように、逆回復時間が一般整流ダイ
オードと比較して大幅に短いダイオード、それ
が高速ダイオードです。
2 FRDとSBD
FRDとSBDはともに高速ダイオードですが、
チップ構造と電気的特性には違いがあります。
まず、FRDとSBDの簡略化したチップ断面図
を、各々図15と図16に示します。
FRDは N型シリコン中に熱拡散で P層を形成
しており、PN接合ダイオードともよばれます。一
逆バイアス
抵抗
順バイアス
+
+
-
抵抗ゼロ
順方向 (低抵抗)
逆方向 (高抵抗)
時間
逆回復時間
図14 逆回復を抵抗で表すと
日本インター株式会社
10
11
方の SBDはシリコン基板にモリブデンなどの金
属を接触させた構造となっており、シリコンと金
属との電位障壁(バリア)の差によって整流作用
を得ています。
ます。
SBDは順電圧が低いかわりに、逆耐圧は高く
ても 200V程度です。さらに、逆電圧印加時の漏
れ電流、すなわち逆電流も FRDに比較して桁違
いに大きくなっています。
写真11は 40V SBDと 200V FRDの逆特性を
SBD
図15 FRDのチップ断面図
FRD
0
写真11 SBDとFRDの逆特性比較
Ver. 10µA/DIV. Hor. 50V/DIV.
サンプル:SBD 31DQ04, FRD 31DF2
比較したものです。
次にFRDとSBDの逆回復特性を比較します。
写真12はFRDの中でも逆回復が比較的遅いも
のと、40V SBDとを同一回路で動作させた時の
逆 回 復 電 流・電 圧 波 形 で す。こ こ で は、trr が
100nsのFRDでは 28V、そして、trrが20ns以下の
SBDでは 16Vのピーク逆回復電圧が各々発生
しています。これらの電圧はダイオード自体が発
生するスイッチングノイズであり、trrの短いダイ
オードは逆電力損失だけではなくノイズ面でも
図16 SBDのチップ断面図
伝導作用を担う媒体(キャリア)の違いから、前者
は少数キャリア素子、後者は多数キャリア素子に
分類され、両者は異なった電気的特性を示しま
す。
・ 写真10は 3AクラスのFRDとSBDの順電圧特
性を比較したものです。3Aでの順電圧は FRD
が 0.87Vであるのに対して SBDは 0.46Vと、SBD
はFRDの半分近くになっています。これは、その
ままダイオードの順電力損失の大小に結びつき
FRD
0
電流
電圧
SBD
FRD
SBD
電流
0
電圧
0
写真10 SBDとFRDの順電圧特性比較
写真12 FRDとSBDの逆回復特性 その1
Ver. 500mA/DIV. Hor. 100mV/DIV.
サンプル:SBD 31DQ04, FRD 31DF2
Ver. 2A, 10V/DIV. Hor. 20ns/DIV.
サンプル:FRD 30DL4, SBD 31DQ04
日本インター株式会社
11
12
有利なことがわかります。
写真13ではFRDの中でも超高速に分類される
ものと、SBDとの逆回復特性を比較しました。逆回
復時間の短い順に、40V SBD、200V FRD、そし
て、600V FRDです。後述しますが、逆回復時間は
FRDでは温度依存性があり、150゚Cになると 25゚C
の 2.5~3倍に増加するのに対して、40V SBDで
は 温 度 が 上 が っ て も ほ と ん ど 変 化 し ま せ ん。
(SBDでも、耐圧の高いものでは、FRDに近い温
度特性を持ちます—後述)
3 応用回路と日本インターSBD・FRD
日本インターでは各種外形、電圧系列の製
品を取り揃えるともに回路に合った特性の製
品を標準化しています。SBDでは標準的な系
列を基準として、より順電圧VFの低いもの、そし
て、より逆電流IRの低いものを用意しています。
順電圧と逆電流とはトレードオフの関係にあり、
VF 低いものはIR 大、IR 小ものはVF 大の欠点が
あります。しかし、使用回路や条件にあってい
れば全電力損失が低減でき電源の効率を例
えば1~2%向上させることができます。同様の
効果がPFC用FRDでも期待できます。
代表的応用回路と当社適合製品例を紹介し
ます。
図17と18は代表的な絶縁型DC・DCコンバータ
回路です。適合する2次ダイオードの一般的な耐
電流
40V SBD
0
図17 DC-DCコンバータ(フィードフォワード)
200V FRD
600V FRD
写真13 FRDとSBDの逆回復特性 その2
Ver. 0.5A/DIV. Hor. 10ns/DIV.
サンプル:FRD 30DF2/6 SBD 31DQ04
FRDとSBDの電気的特性を概観しました。FRD
に対する SBDの特性上の違いをまとめると次の
通りです。
1 順電圧が低い
2 逆回復時間が短く、温度が上がってもFRDの
ようには増加しない
3、 逆耐圧が低く、逆電流が大きい
図18 DC-DCコンバータ (フライバック)
ノートPCのACアダプタ等
SBDは出力20V程度以下の回路でその特長を
生かし、FRDは SBDでは逆耐圧が不足する領域
をカバーしています。また、FRDでも trr が100ns
オーダのものはスイッチング電源では 50kHz以
下の低価格電源で使われます。この資料ではtrr
が100ns以下のFRED (Fast Recovery Epitaxial
Diode) を話題の中心とします。
適合素子例
C10T10Q-11A
C20T10Q-11A
C30T10Q-11A
QHシリーズ
150V SBD
出力電圧 (DC V)
3V
5V
12V
18V
24V
48V
2次ダイオード
20・30V
SBD
30・40V
SBD
100V SBD
150V SBD
200V FRD
200V FRD
400V FRD
表8 一般的な適合2次側ダイオード
日本インター株式会社
12
13
DCコンバータです。図19と20の降圧回路はバッ
クコンバータ、図21の昇圧回路はブーストコン
バータとよばれることがあります。バッテリ機器で
はバッテリが少しでも長持ちするようにDC-DCコ
ンバータは特に高効率が求められます。この点
でダイオード選択も重要です。出力ダイオード
耐圧は降圧回路では入力電圧、昇圧回路では
出力電圧を基準として選択します。現在のバッ
テリ機器やACアダプタを使用するノートパソコ
ンでは30V LシリーズSBDが適しています。図9
の 同 期 整 流 回 路 で は EC21QS03L や
EC31QS03Lが特に大きな市場実績を持ってい
ます。
図22はノートPCに内蔵されるACアダプタと
バッテリとのOR回路です。3A・30V SBD 2素子
入りDpak外形品、または、1素子入り2個使いで
お使いいただいています。
圧は表8の通りです。
図18のフライバック回路はACアダプタによく
使われています。ノートPC用ACアダプタは小型
のために内部は高温になります。このため順電
圧は高めでも逆電流の小さなHシリーズSBDの
方が損失を抑えられます。
図19~21は近年よく見かける5Vや12V、そして、
3.3V、あるいはそれ以下の電圧を出力するDC・
図19 降圧(ステップダウン)DC-DCコンバータ
IN
OUT
IC
図22 ノートPC AC / バッテリOR回路
ACアダプタ
図20 同期整流回路
IN
適合素子例
EA60QC03L
NSQ03A03L×2
OUT
IC
サーバなど電源の信頼性が重視される場合
に は 複 数 電 源 が 冗 長 使 用 さ れ ま す。図 23 の
Oringダイオードは常時通電されるので順電圧
が低いことが最優先されます。電源電圧の20%
増しが一般的なダイオード耐圧です。12V電源
用としては専用開発した15V耐圧のLシリーズが
適合素子例
EC21QS03L
EC31QS03L
図23 ORing ダイオード
図21 昇圧(ステップアップ)DC-DCコンバータ
IN
バッテリ
電源
OUT
電源
IC
適合素子例
12V電源用
15V SBD
電源
日本インター株式会社
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14
最適です。
高調波を抑制する力率改善(PFC)回路は社会
的要求を背景として電源に取り入れられていま
す。600V FRDには標準系列のほかにPFC用に
特化したAおよびBシリーズを製品化しました。前
者は比較的動作周波数が低め(50kHz以下)向
けに、また、後者は高めの動作周波数向けに順
電圧と逆回復時間のバランスを整えています。標
準シリーズ600V品と較べて例えば200W出力電
源で1~2W損失を減らすことができます。
適用するダイオードの電流容量は、(レギュレ
使い方とはいえません。しかし、コスト、あるいは、
納期面でユーザに有利になることもあります。た
だし、チップ間の逆回復特性差がEMI増大につ
ながることがあります。
図24 力率改善(PFC)回路
DC OUT
IN
適合素子例
600V A&B
シリーズ
ターの出力電力)/(レギュレータの出力電圧)の
1~2倍が目安となります。
これはあくまで目安であり、実装時温度などを
十分ご確認ください。
例1、5V 50W出力フィードフォワード型
40V SBDで電流容量は 50(W)/ 5(V) = 10Aの
カソードコモン ツインダイオードが目安となり、当
社 製 品 で は 10A 定 格(5A チ ッ プ 2 個)の
GCQ10A04 (TO-220外形)、FCQ10A04 (Fully
molded TO-220外形) がこれに該当します。
例2、15V 30W出力フライバック型
100V SBDで電流容量 2Aを基準にして、当社
製品では5A定格のFSH05A10 (Fully molded
TO-220 外 形)や タ ブ レ ス TO220 外 形 品 で は
C10T10Q-11Aが目安になります。
なお、フライバックコンバータの出力ダイオード
はシングルですが、ツインチップダイオードのパ
ラ使いで損失(温度上昇)を抑える、あるいは、
フォワードコンバータでも同様の理由でツイン
チップ品の 2個使いをすることがあります。パラ使
用はダイオード間の電流分担が均一にはなり得
ないので、ダイオードメーカ側からすると好ましい
日本インター株式会社
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15
4 逆回復特性
冒頭に逆回復(リバースリカバリー)特性につい
て触れました。ここでは逆回復特性の実使用に
役立つ詳細情報を提供します。
4-1 逆回復特性の波形上の定義
逆回復特性の波形上の定義は図25の通りで
す。逆回復時間の前半 taはジャンクションリカバ
リー時間、後半 tbはバルクリカバリー時間とよば
れることがあります、
図27 測定回路タイミングチャート
2、 約10µs後にQ2にオンゲート信号を与えます。
E2はDUTの逆電圧として印加されようとして、
ダイオードは逆回復現象を起こします。電流
の減少率(-di/dt)は、E2でコントロールされま
す。(-di / dt = E2 / L) E2は DUTに印加され
るピーク逆電圧が、その逆電圧定格をこえな
い範囲でコントロールされます。
なお、逆回復特性は、各社まちまちの条件で規
定しています。しかし、国内メーカの製品であれ
ば、規定している条件が異なっていても、同等の
規格値の製品であれば特性もほぼ同等と見て差
し支えないようです。
図25 逆回復時間の定義
4-2 逆回復特性測定回路
図26と図27は当社の超高速FRD用trr測定回
路とタイミングチャートです。回路動作の簡単な
説明を添えます。
4-3 逆回復特性の温度依存性
FRD(SBD)の逆回復特性は通常、25゚Cでの逆
回復時間で規定されています。実動作時には温
度上昇の影響を受けて特にFRDではかなり異
なった特性となります。
5Aチップの 200V FRDと 40V SBDの同一条件
での逆回復特性 温度依存例を各々、写真14と
15に示します。
このように40V SBDでは逆回復特性がほとんど
温度の影響を受けないのに対して、FRDでは温
度上昇とともに逆回復時間、電荷が増加します。
また、写真16と17には5A 60V SBDと5A 100V
SBDの同様の特性例を示します。SBDでも耐圧
が高くなるほど、FRDと同じPNダイオードに近い
性質を示す様になり150V SBDでは200V FRDと
同等の温度依存性となります。
ユーザが逆回復損失を含むダイオード損失、あ
図26 逆回復時間(特性)測定基本回路
・回路動作
図26の基本回路でQ1、Q2にはMOSFETを使
用しています。回路動作は次の通りです。
1、 Q1にオンゲート信号を与えます。Q1がオンし、
被測定ダイオード(DUT)に順電流が流れま
す。電流値 IFMは E1とQ1のオン抵抗でコント
ロールされ、所定の値となります。
日本インター株式会社
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16
0
0
25℃
50℃
25, 50, 75,100℃
75℃
100℃
写真17 5A 100V SBD 逆回復特性の温度依存性
(IFM=5A, -di/dt=50A/µs)
Ver. 0.2A/DIV. Hor. 5ns/DIV.
サンプル:FSH05A10
写真14 5A 200V FRD逆回復特性の温度依存性
(IFM=5A, -di/dt=50A/µs)
Ver. 0.2A/DIV. Hor. 5ns/DIV.
サンプル:FSF05A20
0
25~100℃
写真15 5A 40V SBD逆回復特性の温度依存性
(IFM=5A, -di/dt=50A/µs)
Ver. 0.2A/DIV. Hor. 5ns/DIV.
サンプル:FSQ05A04
図28 600V FRD 逆回復時間の温度依存性
4-4 逆回復特性の - di / dt 依存性
当社FRDでは逆回復時間を - di / dt= 50A /µs
で規定しています。写真18に5A 200V FRD逆回
復特性の - di / dt 依存性を示します。この依存性
0
25, 50, 75,100℃
0
10A/µs
20A/µs
写真16 5A 60V SBD 逆回復特性の温度依存性
(IFM=5A, -di/dt=50A/µs)
Ver. 0.2A/DIV. Hor. 5ns/DIV.
サンプル:FSQ05A06
50A/µs
るいは、スイッチングノイズの評価をする場合に
は、このような温度依存性も考慮しください。
100A/µs
写真18 5A 200V FRD 逆回復特性の-di/dt依存性
(IFM=5A, Tj=25℃)
Ver. 0.2A/DIV. Hor. 5ns/DIV.
サンプル:FSF05A20
日本インター株式会社
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は、FRD、SBDの耐圧のいかんにかかわらず概ね
同様です。逆回復時間は - di / dtの増加とともに
減少しますが、ある限度以上には短くなりません。
なり正確な結果が得られます。ディジタルオシロ
スコープを使用すれば、その演算機能を生かし、
電力損失の算出は容易です。
もう一つの方法は、回路定数などとダイオード
の逆回復特性資料とから計算で求めるもので
す。計算式は
4-5 逆回復特性の順電流依存性
写真19に 5A 200V FRDの逆回復特性 順電流
依存性例を示します。実用的電流レベルでは
FRD、SBDともに、この依存性は事実上無視して
も差し支えありません。
E = 1/ 6×ta×tb×VRM× di/dt
(単位はジュールまたは watt・sec/pulse)
であり、上式で1パルスあたりの損失を求めること
ができます。これを周波数倍すれば平均損失と
なります。
0
1, 2, 5, 10A
写真19 5A 200V FRD 逆回復特性の順電流依存性
(-di/dt=50A/µs, Tj=25℃)
Ver. 0.2A/DIV. Hor. 5ns/DIV.
サンプル:FSF05A20
順電流依存性を 600V FRDについてまとめた
のが図29です。温度、順電流依存性は200V、
400V などのFRDでも同様です。
図30 逆回復損失の計算
両方法には一長一短がありますが、正確な逆
回復損失の評価が必要な場合には実測を含め
た評価をお願いします。
5 順回復特性
ダイオードの順電圧特性、すなわち、ダイオード
に順電流をいくら流せば最大いくらの順電圧が
発生するかは、カタログ・仕様書に記載してある
通りです。一般には問題になりませんが、順電流
の立ち上がりが速い場合、ダイオードには順回復
と呼ばれる現象があり、定常的な電圧より高い順
電圧が観測されます。回路上ではダイオードにイ
ンダクタンス分が直列に存在すると見なせます。
写真20に 40V SBDと 600V FRDの順回復現象
例を示します。
順回復電圧は逆耐圧の高いダイオードほど高
くなりますが、逆耐圧に比例するわけではありま
せん。
写真21では 600V FRDについて順電流を一定
とし、その立ち上がりを変えて順回復電圧を比較
しています。この図から順回復現象は約 100ns間
で終わり、順回復電圧ピーク値は、ほぼ順電流立
ち上がりに比例していることが分かります。この現
象は期間が短いため電力損失としては無視でき
ますが、特定の応用、例えばスナバダイオードとし
図29 600V FRD 逆回復時間の順電流依存性
4-6 逆回復損失の求め方
逆回復電力損失を知るには2つの方法があり
ます。1つは実測で求める方法、他方は計算で求
める方法です。逆回復時にはダイオード電流・電
圧波形が複雑な時間的変化をするため、それぞ
れの方法には一長一短があります。実測による
方法では電流ループに高速シャントを挿入する
必要があります。実動作とは違いがでるものの、か
日本インター株式会社
17
18
いか、そして、素子にかかる応力はいくらまでなら
壊れないかを表しています。これらの定格をこえ
たストレスがダイオードに加わった場合、直ちに
素子破壊に至る場合と、信頼性が損なわれる場
合とがあります。いずれの結果となるかはケース
バイケースですが、定格を順守するのを設計上
の基本としてください。実使用上では 2つ以上の
定 格 が 絡 む こ と が あ り ま す が、こ の 場 合 は
NAND、すなわち、どれも超えてはならないとされ
ています。
これに対して特性は、例えばいくら電流を流せ
ばどれだけの電圧が発生するか、いくら逆電圧を
印加すればどれだけの逆電流が流れるかを表し
たもので、素子破壊や信頼性とは直接関係しま
せん。
順電圧
順電流
600V FRD
0
順電圧
順電流
40V SBD
0
写真20 600V FRDと40V SBDの 順回復特性
Ver. 5A, 2V/DIV. Hor. 100ns/DIV.
サンプル:FRD FSF10A60、SBD FSQ10A04
7 許容電流
許容電流、すなわち、素子信頼性を確保した上
で流せる電流はダイオード内部温度(接合温度)
と密接に関係します。これは、大きな電流を流そう
とするほどダイオード損失が大きくなり、これに
伴って素子内部の温度も上昇するからです。接
合温度は素子信頼性に対する主要ファクターで
あり、定格最高接合温度以内に納めなければな
りません。このため、電流が連続あるいはパルス
状であるにかかわらず、接合温度が最高でいくら
まで上昇するかを知らねばなりません。ここでは
許容電流の計算、実測(検証)関連情報を紹介し
ます。
なお、SBDは逆電力損失が大きく、これが許容
電流に影響します。このため SBDではこの損失も
熱設計に盛り込む必要があります。
順電流
順電圧
di/dt が 高 い ほ ど
順回復電圧 大
0
写真21 順回復特性のdi/dt依存性
Ver. 2A, 2V/DIV. Hor. 100ns/DIV.
サンプル:FRD FSF10A60
て使用する場合には重要な特性です。どの程度
の順回復電圧が発生するかはダイオードの基本
設計に関わり、特定品種での実用的な個体差は
ありません。また、同一設計のダイオードであれば
チップの大きい、すなわち定格電流の大きなダイ
オードほど順回復電圧は低くなります。ただし、
チップ面積に反比例して小さくなるわけではあり
ません。
スナバダイオードは実回路で動作させた上で
ご選択ください。
7-1 フィン熱抵抗
ダイオードの損失が大きいほど、その温度上昇
が大きくなります。温度上昇∆Tは、損失Pに比例
Tjmax
Tj
6 定格と特性
Tc
定格と特性に簡単に触れます。FRD、SBDをは
じめとするダイオードの代表的定格には電流、逆
電圧、温度、そして、機械的定格があります。各々、
電流をどれだけ流せるか、逆電圧をどれだけ印
加できるか、温度はどの範囲で使わねばならな
日本インター株式会社
データシートで
規定された温度
10W
Ta
150℃
110℃
Rthj-c
3℃/W
Rthc-a
2℃/W
80℃
60℃
図31 熱抵抗と温度差との関係
18
19
し、その係数が熱抵抗です。どこを基準として、ど
こが、どれだけ上昇するかを異なった熱抵抗が規
定されています。、例えば、周囲温度を基準にして
フィン温度を知るための熱抵抗がフィン熱抵抗
です。図のように、 2゚C/Wのフィンでは、これに取
り付けた素子に 10Wの損失が発生すれば 20゚C
だけフィン温度が上昇することになります。温度
上昇計算の最終的目的は、ジャンクション温度が
規定以内に収まるか否かです。
フィン熱抵抗の大小はその放熱の良し悪しの
度合いを表します。表面積の大きなフィンほど冷
却効果が高く、その熱抵抗は小さくなります。
図32に自冷(ファンを使った強制空冷をしない)
時の 1mm厚 AlとCu平板の熱抵抗を示します。た
だし、このフィン熱抵抗は種々の前提の基に求め
られたもので、あくまでも目安と考えてください。隣
接して発熱体がある、周囲(匡体内)温度が高い
などは前提を逸脱するもので、現実の熱抵抗値
はかなり違ったものになります。したがって温度実
測による検証は不可欠です。
0
フィンと周囲温度との温度差で熱抵抗がどの
程度影響を受けるかを示すのが図33です。同図
から匡体内温度が高く、30゚Cの温度差しか見込
めないとすると、図26比フィン熱抵抗は 35%大き
くなります。以上は板フィンの説明ですが、市販ブ
ロックフィンについても事情は同じで、規定された
熱抵抗がそのまま熱設計に適用できるとは限り
ませんのでご注意ください。
なお、フィンを使用しないTO-220外形品(Fully
molded品を含む)単体での熱抵抗 Rth(j-a)は 80゚
C/Wを、また、TO-247(3P)外形品単体では 60゚C/
Wを見込んでください。これは TO-247(3P)外形
品に 2Wの損失を与えれば接合温度が120゚C上
昇することを意味します。
80℃/W
60℃/W
図34 フィンなしでは
7-2 ケース温度基準点
FRDや SBDの定格電流は対 周囲温度、あるい
は、ケース温度で規定されています。周囲温度は
文字通りダイオード動作時の周囲の温度です
が、ややもすると誤解されやすいのがケース温度
です。
JEDECで規定されたケース温度測定点を図35
に示します。ケース温度は樹脂モールド部にドリ
ルで穴をあけ、チップ直近のフレーム温度を熱電
対で測って得られます。実際には測定のしやす
さからチップ裏側のフレーム温度を測る、あるい
図32 自冷時板フィン熱抵抗
図35 ケース温度基準点 (断面図)
(TO-220外形品の例)
図33 フィン温度上昇と熱抵抗変化
日本インター株式会社
19
20
TO-220、TO-247(3P)などの3端子ダイオードで中
央端子の温度を測る理由は、この端子がチップ
を搭載したフレームの一部だからです。この様子
は図37を参照ください。
はフレーム厚手方向から穴を開けてチップ下の
フレーム温度を測るなどのバリエーションがあり
ます。
ユーザからすれば、ほとんど測定不能なこのよ
うな場所がケース温度基準点とされた理由は、1
つは外部条件の影響を受けにくいこと、そして、も
う一つは接合・ケース間の熱抵抗として小さな数
字がうたえるからです。
ケース温度はパッケージの表面温度ではない
ことをご理解ください。
7-3 温度測定
本来、信頼性や特性に直接関わるのは接合温
度ですが、回路内動作時にこれを測定するのは
困難です。ユーザが測定可能なのはリード温度、
パッケージ表面温度およびフィン温度ですから、
この測定値に接合温度との温度差を上乗せして
接合温度を推定してください。接合温度との温度
差の計算法は後述することにして、まず温度測定
法に触れます。
温度測定時の注意点は次の通りです。
図37 3端子ダイオードの内部構造
ツインチップ品の例
TO-220、TO-247(3P)関係外形品のフィン温度
測定点を図38に示します。フィンに穴開け加工を
し、これに熱電対を挿入して温度を測定します。
1、 実使用状態で動作させ温度が十分平衡状態
に達した後に測定する
2、 本来の熱平衡条件をできるだけ乱さない
3、温度測定は、センサーの取り付け・接触状態を
変えながら何度か測定し、安定した結果が得
られるようになってから最も高い測定値を採
用する
図38 フィン温度測定点
2については熱容量のできるだけ小さな温度セ
ンサーを使用し、その取り付けに工夫してくださ
い。熱容量の大きな温度センサー、例えば市販
シース型熱電対は、センサーから熱が逃げるた
め正確な測定ができません。
安定したフィン温度測定値を得るため、製品には
サーマルコンパウンドを必ず塗布してください。
パッケージ温度測定用センサーとして考えられ
リード温度測定は、熱電対をリード線の樹脂直
近にはんだ付けします。熱電対はできるだけ細
いもの(例 単独線径 0.25~0.32mm)とし、はんだ
の量は最少にしてください。
外形別リード温度測定点を図36に示します。
写真22 表面温度測定用熱電対センサ部
写真23 示温ラベルの例
THERMOGRAPHICS MEASUREMENT社製
図36 リード温度測定点
日本インター株式会社
20
21
るのは、箔状熱電対をプラスティックフィルムで封
じ込めたもの、および指温ラベルです。それぞれ
の例を写真22と23に示します。熱容量の大きな
表面温度計の使用は好ましくありません。
表10に示します。本来、接合 - パッケージ間熱
抵抗という表現がユーザにとって好ましいもので
すが、動作条件、測定法に大きく左右される数字
なので、参考例として実測結果を記すにとどめま
す。
7-4 接合部 - リード間熱抵抗 Rth(j-l)
表9に代表的使用条件を想定した場合の接合
部 - リード間熱抵抗(代表値)を示します。
7-6 リード温度・フィン温度実測値を基にした接
合温度の計算
リード温度・フィン温度実測値と熱抵抗規格値
とから接合温度が計算できます。2つの例で計算
結果を図示します。個別計算の参考としてくださ
い。(図39・40)
外形
Rth(j-l) (℃/W)
10JDA、10EDB外形
23
10DDA、20KDA外形
17
30PDA外形
8
SOD-123 (EP)外形
70
SMA (EC)外形
23
図32 接合温度計算例 その1
NS外形
13
(アキシャルリード品でリード温度から接合温度を計算)
TO-251/252
17
TO-220外形
25*
Fully Molded TO-220外形
30*
TO-247 (TO3P)
図39 接合温度計算例 その1
(アキシャルリード品でリード温度から接合温度を計算)
15*
*は参考値
表9 接合部 - リード間熱抵抗 Rth(j-l)
TO-220、TO-247(3P)外形品関係の値はリード
自体の発熱が無視できる状態で求めました。しか
し、これらのパッケージ品については実使用状態
でのこの発熱の影響が大きく、表3中の値は参考
値であり、実用的な意味合いはありません。
TO-220、TO-247(3P)外形品関係ではリード線
発熱の影響を避けるために、フィン温度を測定
し、これを基に接合温度を推定してください。
図40 接合温度計算例 その2
(Fully Molded TO-220外形品でフィン温度から接合温度を計算)
7-5 パッケージ表面温度
TO-220、Fully molded TO-220、TO-247(3P)外
形品について、パッケージ表面温度の実測例を
外形
接合温度
(℃)
フィン温度
(℃)
パッケージ
温度
(℃)
TO-220外形
101
90
75~80
Fully Molded
TO-200外形
101
80~83
TO-247
(TO3P)
100
83~87
TO-220、TO-247(3P) 外 形 品 関 係 の Rth(c-f)
(接触熱抵抗)は Fully molded品では仕様規定
値を用います。これはサーマルコンパウンド塗布
時の値です。また非絶縁外形品で絶縁板を使用
する場合は、当該製品の規格値を参照ください。
一般的には 0.5~1゚C / W程度の値です。
・ 以上二つの例では定常熱抵抗を用い、一定
電力が印加される場合の温度上昇、あるいは平
均電力損失から平均温度上昇を計算しました。
7-7 過渡温度上昇の計算
ダイオードにパルス状電流が流れると、電流の
表10 パッケージ表面温度実測例(ご参考)
日本インター株式会社
21
22
変化に応じて接合温度も変化します。このように
接合温度にリップルがあれば、その瞬時最高温
度を定格最高接合温度以下に抑えねばなりま
せん。この場合には熱抵抗として過渡熱抵抗が
用いられます。
過渡熱抵抗 rthは(パルス)時間をパラメータと
する熱抵抗で、接合温度上昇 ∆Tjは電力損失 P
とrth;から次式で計算できます。(図41参照)
rth = ∆Tj / P
表11では使用チップ毎に定数を示しましたが、
表12にはいくつかの製品の組み込みチップ数
と、特定の時間で過渡熱抵抗計算結果を表9に
示します。
品名
組み込み
チップ
時間(s)
rth
(℃/W)
FCQ10A04
5A SBD
2チップ
0.001
0.158
FCF10A20
5A FRD
2チップ
0.01
0.792
KCF25A40
12A FRD
2チップ
0.1
1.52
KSQ60A04
60A SBD
1チップ
0.001
0.0979
(1)
表12 過渡熱抵抗計算例
製品毎の組み込みチップに関する情報が必要
な場合はお問い合わせください。
・ 過渡熱抵抗を用いた過渡温度上昇計算は方
形波電力パルスに対して有効です。しかし、現実
の電流波形はほとんどの場合、これとはかけ離れ
ています。この扱いに触れます。
過渡熱抵抗の有効時間範囲下限は通常 1ms、
ないしは、せいぜい 10µs程度です。時間が短くな
るほど精度は低くなります。従ってµsオーダーの
電力変化、これに伴う温度変化を追いかけてもあ
まり意味はありません。
正弦波と三角波電流の扱いは次の通りです。
ピーク電力を揃えた同一面積方形波電力に置き
換えます。図42と43を参照ください。
次に二つの計算例を紹介します。(図44・45参
照)計算例2では連続パルス電流の最後の 2パ
ルス以前は平均値として扱っています。これは慣
図41 過渡熱抵抗の定義
当社樹脂パッケージダイオード仕様書には過
渡熱抵抗特性は含まれていません。次式と表11
の個別定数から計算してください。このようにして
得られる過渡熱抵抗有効範囲は時間上限 1秒
程度までで、定常熱抵抗を上回らない範囲です。
rth = a×tb
(2)
t は時間 (s)です
a
b
1
17
0.5
3
10
0.5
5
5
0.4
8
4.5
0.4
12
4.1
0.43
30
1.5
0.4
1
17
0.5
3
10
0.5
5
5
0.5
8
4
0.34
15
3
0.34
30
1.5
0.34
60
1.05
0.34
使用チップ
FRD or SBD 電流(A)
FRD
SBD
図42 正弦波電流の扱い
表11 過渡熱抵抗計算のための定数
日本インター株式会社
22
23
図43 三角波電流の扱い
FCQ10A04
FCQ10A04
図44 過渡温度計算例 1
例であり、パルス巾が短い応用では最後の 1パル
ス以前を平均値として扱う、さらに温度リップルは
無視しても実用的には問題のない場合が多いと
思われます。
温度測定、および計算には避けられない誤差が
あります。個々の応用に対する許容電流の最終
的検証は組み込みセットの長期寿命試験、さらに
は、市場実績でなされるものと考えます。
日本インター株式会社
図45 過渡温度計算例 2
23
24
ダイオードが過電圧破壊した場合、どの程度の
電圧が印加されて破壊したかが誤解されること
があります。例えば「40V SBDに 400V印加したら
壊れた」とする場合、 400Vは電圧源の電圧であ
り、ダイオードは400V印加される前に破壊してし
まい、 400V印加されることはありえません。
説明のため簡略化した回路図を図48に示しま
す。Rsは回路図に値が特定されていなくとも必ず
存在する電源の内部抵抗であり、ダイオード特性
と は 無 関係な 回 路要 素で す。ま た、RD;は ダ イ
オードの逆方向等価内部抵抗であり、逆電流が
大きくなるにつれて SBDであれば数100kΩから
1Ω以下まで変化します。
8 逆電圧定格の考え方
逆電圧定格に簡単に触れます。ダイオードの
逆方向抵抗はある電圧までは高抵抗で、この電
圧を超えると急激に低抵抗になります。すなわ
ち、ダイオードはある逆電圧までは阻止能力があ
り、これを超えた逆電圧が印加されるとダイオード
は電圧破壊を起こします。この境界電圧はブレー
クダウン電圧と呼ばれ、これが定格逆電圧以上
になるよう素子は設計されています。
逆電圧定格は時間に対する条件が規定されて
いないのが普通です。これは瞬時たりとも、言い
換えるとどんな短時間であっても動作時にこれ
超える電圧が印加されてはいけないことを意味
します。(図46参照)
図46 逆電圧定格の考え方
図48 ダイオードにかかる電圧
ここでは電源オン時を想定したダイオード逆電
圧を模式的に表しました。このように、例え0.1µsと
いえども逆電圧定格は守られねばなりません。
ダイオード逆電圧特性の温度依存性を図47に
示します。温度上昇に伴い、ブレークダウン電圧、
逆電流とも増加します。この図から、コールドス
タート時ほどダイオードにとっては電圧的に厳し
いことが、また、高温時に逆電流の大きいSBDで
は、逆電力損失を熱設計に盛り込まねばならな
いことが分かります。ブレークダウン電圧の温度
係数は + 0.1%/ ゚C程度であり、電圧面での設計
余裕が少ない場合の低温動作には注意を要し
ます。
SW1が閉じられると(過電圧がかかると)流れる
電流 iは (E - VR) / (Rs + RD)です。VRはダイオー
ド逆電圧であり、ダイオード特性からある回路バラ
ンスが成り立とうとします。(図49参照)
図49 ダイオードに印加されようとする電圧
先の例で Rs = 30Ωとすると 、i = 10A程度でバラ
ンスが成り立ちます。図50を参照ください。
結果としてダイオードが破壊するか否かはエネ
ルギー量である電力・印加時間積の大小により
ます。(図51参照)同一設計ダイオードであれば、
チップ面積の大きなダイオードほど破壊しにくい
傾向があります。このエネルギーが管理されてい
図47 ダイオード逆特性の温度依存性
日本インター株式会社
24
25
減用としてアモルファスビーズが用いられるよう
になりました。これは写真24のようにダイオード
リード線に装着し、吸収されたエネルギーはビー
ズ中で熱となって消費されます。写真25はアモル
ファスビーズの効果をダイオード逆回復現象で
確かめたもので、超高速FRDのスイッチングノイ
ズ低減に効果があることが分かります。
9 出荷品の検査、信頼性
当社 FRD、SBDは全数、次のような項目を含む
電気的特性検査が実施されています。
図50 ダイオードにかかる電圧例
サージ電流
逆電圧(逆電流)
順電圧
IFSM
VR (IR)
VF
逆回復時間
trr (FRDのみ)
当社樹脂パッケージ品は FRDでは 0.8Aから
30A、SBDでは 0.5Aから60Aの製品がラインアッ
プされています。さらに大電流のモジュールも製
品化しています。
現在の出荷数量はアキシャルリード品、SMD、
TO-220系・TO-247(3P)などの樹脂パッケージ品
が主流となっていますので、ここではこれら樹脂
パッケージ品の信頼性試験にふれます。
信頼性試験は所定の設計品質が確保されて
いるか否かを確認するために行われます。試験
には温度、湿度、熱、機械的応力など、デバイス使
用環境に関する試験と、電流、電力、電圧などの
デバイス内チップに加わるストレスに関する試
験、および両者を組み合わせた試験があります。
これらの試験ではデバイスの最大定格を保証す
るための条件設定がなされています。
試験条件・方法・手順などは EIAJ ED-4701に
準拠しています。この規格は国際的規格である
IEC規格と整合性が保たれていますから、基本的
に国際的に通用するものです。
図51 過電圧印加時ダイオードエネルギー
るのはアバランシェダイオードのみで、FRD、SBD
では規定できません。
ダイオードの過電圧保護、スイッチングノイズ低
写真24 アモルファスビーズをつけたダイオード
0
電流
ビーズなし
樹脂パッケージ品は汎用的な用途から次第に
高信頼性が要求される用途にその使用範囲が
拡大してきました。これはコスト面はもとより、実用
的信頼性面でも不安なくお使いいただけるから
だと思われます。ただし、そのためには、本資料の
注意事項を十分ご理解いただき、実践していた
だくようお願いします。
電圧
0
電流
ビーズあり
電圧
写真25 アモルファスビーズによる
スイッチングノイズ低減
-
Ver. 5A, 50V/DIV. Hor. 20ns/DIV.
サンプル:他社600V FRD
日本インター株式会社
25
26
Fully Molded TO-220外形SBDの信頼性試験実施例です。
FCQ10A04 (Fully Molded TO-220外形 10A 40V SBD) 信頼性試験結果
表10 ▼環境試験
試験項目
半田耐熱
試験条件の概要
1)はんだ槽内温度 260±5℃
2)浸漬時間
10±1秒
3)試験回数
1回
-40+3-5℃
+125±5℃
10回
温度サイクル 1)低温側
2)高温側
3)回数
端子強度
(引っ張り)
1)荷重
2)保持時間
3)回数
端子強度
(曲げ)
1)荷重
2)90度
9.8N (1kgf)
5±1秒
1回
4.9N (0.5kgf)
往復1回
次ページにつづく
日本インター株式会社
26
準拠規格
EIAJ ED-4701
試料数
(個)
故障数
(個)
A-132
条件 A
22
0
A-131
22
0
A-111
22
0
A-111
22
0
27
表11 ▼耐久試験
試験項目
試験条件の概要
準拠規格
EIAJ ED-4701
試料数
(個)
故障数
(個)
高温保存
1) 周囲温度
2) 時間
125±2℃
1,000時間
B-111
22
0
低温保存
1) 周囲温度
2) 時間
-40±3℃
1,000時間
B-112
22
0
耐湿性
1) 周囲温度
2)相対湿度
3) 時間
60±3℃
90+5-10%
1,000時間
B-121
条件B
22
0
断続通電
1) IF=10A
2)∆Tj≧60℃
3) 段通回数
D-403
22
0
D-404
22
0
高温電圧印加 1) 印加逆電圧
2) Ta = 80℃
3) 時間
4) その他
5,000サイクル
40V DC
1,000時間
ブロックフィン使用
表12 ▼電気的特性測定項目および故障判定基準
判定項目
試験条件
上限
逆電流 IR
VR=40V、Ta=25℃
USL×2.0
順電圧 VF
IF=5A、Tj=25℃
USL×1.2
USL 最大規格値
試験終了後にこの基準を超えたものを故障と判定します。
日本インター株式会社
27
使用上の注意
28
い。
・フォーミングの回数は1回までとしてください。
ご使用上の注意
●運送・運搬方法
・梱包箱の上下、および、積み重ね数の指定を
守ってください。
・投げたり,落としたりして、強い振動や衝撃を加
えないでください。
5mm
●保管
保管条件が悪いと,ハンダ付け性の低下、電気
的特性の劣化、そして、信頼性が低下する恐れ
があります。
納入時のマガジン,リール,収納袋等に入れた
ままで,次の一般的条件で保管してください。
・常温,常湿中(一般には5~35℃,45~70%RH)
・有害ガス(腐食性ガス)や塩害の発生しない場
所
・温度変化が少ない場所(水分の結露防止)
・荷重がかからない状態
・直射日光が当たらない場所
5mm
開封後はなるべく1ヶ月以内でのご使用をお奨
めします。また未開封のものでも当社出荷後6ヶ
月以内の早い時期にご使用ください。
なお,上記期間を過ぎてご使用の際は,外観に
傷,汚れ,錆などがないことの確認と、ハンダ付け
性や電気的性能の確認を必ず行ってください。
図1 リード線のフォーミング
なお,フォーミング後は電気的特性や外観に問
題のないことをお確かめください。
●静電気(ESD)対策
半導体製品は静電気により破損や特性が劣化
することがあります。特に、MOS構造を有する製
品は充分ご注意下さい。静電気に対する一般的
注意事項はつぎの通りです。
フォーミング品をご希望の場合は弊社標準品
をお奨めします。
●放熱体への取り付け
放熱板への取り付けが不適切な場合,放熱効
果が損なわれたり、特性の劣化や信頼性の低下
を招いたりすることがあります。一般的要件は次
の通りです。
・放熱体の取り付け面はバリや凹凸の少ない平
坦な面にしてください。
・放熱体の表面や半導体製品の取り付け面はき
れいにし,熱伝導性コンパウンドを薄く均一に塗
布してください。この時,ネジに付着しないよう特
にご注意下さい。
・締め付けトルクは規定値を遵守してください。
・作業服、梱包材、容器、治工具等は帯電防止を
施したものをご使用ください。
・作業環境は充分な湿度を保ち (40~60%RH)、
静電気の発生を抑えてしてください。
・作業領域内の作業者、装置、作業机、棚や治具
は0.5~1MΩの抵抗を介して接地してください。
また作業台と床に導電マットを敷き接地すること
をお奨めします。
●リード線のフォーミング
半導体製品のリード線や端子のフォーミング
は,リードの折れや特性の劣化を招くことがありま
すので以下のような条件で行ってください。
・モールド部から5mm以上離れたところで,モー
ルド側のリード線をラジオペンチ等ではさみ,しっ
かり固定してください。
・フォーミングの曲げ角度は90°以内にしてくださ
日本インター株式会社
プラスチックモールド品の熱伝導性コンパウンド
としては、モールドレジンとの親和性が少ないオ
イルをベースとした信越化学工業製 G746、また
は、同等品を使用を推奨します。
KSQ60とKSF30の末尾に「E」が付き、フィン取り
付け面がカソード電極をかねている製品では、
28
使用上の注意
29
く、電気伝導にも配慮したコンパウンド)をご使用
いただくか、フィンに直接はんだ付けしてくださ
い。
下図のようなクリップによる取り付けは簡便で組
み立て工数が削減できます。クリップはダイオ^度
に過大な機械的ストレスがかからないように、ま
た、長期的に締め付け圧力が安定に維持される
ものをお選びの上でお使いください。クリップにど
の よ う な も の が あ る か は、例 え ば http://
www.fujicon-tb.co.jp/ - フジコン㈱ホームページ
でご覧いただけます。(推奨ではありません)
図2 TO-220外形品の取り付け
図5 クリップによる取り付け
●自動搭載
自動搭載機等で実装する場合,過度の衝撃力
が加わると半導体製品が破損や劣化する原因
になります。過度の衝撃が加わらないよう確認し
てご使用ください。
図3 Fully Molded TO-220外形品の取り付け
●ハンダ付け
プラスチックパッケージ製品のリード線や実装
には温度管理されたリフローハンダ付け,フロー
ハンダ付けによる方法をお奨めします。各方法の
一般的条件は次の通りです。なお,フラックスは
低塩素系をお使いください。
図4 TO-247 (3P)外形品の取り付け
ジョイントコンパウンド(熱伝導だけではな
外形
表1
取り付け穴径 使用ねじ 推奨締め付け
(φmm)
トルク
(Nm/kgf-cm)
TO-220
3.6
Fully molded
TO-220
3.2
TO-247 (3P)
3.5
M3
日本インター株式会社
0.5 / 5.1
29
使用上の注意
30
a)リフローハンダ付け法(Sn-37Pb共晶ハンダ)
d)フローハンダ付け法(鉛フリーハンダ)
240~250℃
温度
温度
100~140℃
図6
図9
e)ハンダゴテによるハンダ付け
一般的な要件は次の通りです。
b)フローハンダ付け法(Sn-37Pb共晶ハンダ)
温度
・プラスチックパッケージ品では、こて先温度(接
続部)は350℃以下で,3秒以内で処置してくださ
い。
・アキシャルリードタイプのリード根元でのハンダ
付けは行わないで下さい。
・こて先を直接樹脂等へ触れさせないでくださ
い。
・ハンダ付け後は急冷せず、自然冷却としてくだ
さい。
図7
実験や修正以外での手ハンダはできるだけ避け
てください。また、SMDはご相談ください。
●鉛フリーの対応
2004年12月末までに鉛フリー対応を完了いたし
ます。
c)リフローハンダ付け法(鉛フリーハンダ)
240~250℃
●ハンダ付け後の洗浄
ハンダ付け後にフラックス等の洗浄をする場
合,洗浄液の特性や洗浄条件により素子の特性
劣化,リード端子の腐食,捺印マーク消えなどを
引き起こすことがありますので予め洗浄方法をご
確認ください。
なお,洗浄液にはアルコール系をお奨めしま
す。なるべく短時間で処理してください。
230℃
10~30s
温度
150~180℃
図8
超音波洗浄方法をご使用になる場合,装置の
大きさや基板等への取り付け方によっては共振
現象によりリード切れを招くことがありますので,
予めご確認ください。
一般的洗浄条件は次の通りです。
・共振しないこと。
・超音波出力
:10W/liter以下
日本インター株式会社
30
使用上の注意
31
・時間 :60秒以下
・振動子に直接製品や基板を触れさせないでく
ださい。
●リモールド(再封止)
半導体製品をリモールドする場合,リモールド
の温度や樹脂の収縮等のストレスで半導体製品
の特性劣化や信頼性低下の原因になります。リ
モールドを行う場合は樹脂の選定や作業条件を
十分ご検討ください。
●超音波振動による溶着・カシメ
基板実装加工で,超音波振動を利用した溶着・
カシメ等を行う場合,同一基板上の製品が共振
現象によりリード切れを起こすことがありますの
で,予めご確認ください。
●特性検査
受け入れ検査などで製品の特性検査を行う場
合は,測定器からのサージ電圧の印加,誤接続
には十分ご注意ください。また,定格以上の測定
は避けてください。
日本インター株式会社
31